(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記球面屈折力測定値の極値は、前記矯正レンズが収束レンズである場合、前記複数の球面屈折力測定値の間の最大絶対値であり、前記球面屈折力測定値の極値は、前記矯正レンズが発散レンズである場合、前記複数の球面屈折力測定値の間の最小絶対値である、請求項1に記載のプロセス。
前記第1の取込み画像を処理して前記第1の球面屈折力測定値を求めることは、該第1の取込み画像を理想座標系に変換することを含み、前記第2の取込み画像を処理して前記第2の球面屈折力測定値を求めることは、該第2の取込み画像を理想座標系に変換することを含む、請求項1に記載のプロセス。
前記第1の取込み画像及び前記第2の取込み画像の各々は、前記パターンを含みかつ前記矯正レンズを通過する光によってもたらされる第1の領域と、前記矯正レンズを通過しない光によってもたらされる第2の領域とを含み、前記矯正レンズに起因する取込みパターンの歪みを求めることは、少なくとも一部には前記第2の領域に関して行われる、請求項1に記載のプロセス。
前記第1の取込み画像及び前記第2の取込み画像は、カメラレンズを有するカメラによって取り込まれ、前記カメラレンズは、前記第1の取込み画像及び前記第2の取込み画像の取込み中、前記パターンから固定距離に位置決めされる、請求項1に記載のプロセス。
前記パターンは第1のパターンであり、前記矯正レンズは第1の矯正レンズであり、前記第1の取込み画像を取り込むことは、該第1の取込み画像において、第2の矯正レンズを通して第2のパターンを取り込むことを更に含み、前記第1のパターン及び前記第2のパターンは、前記第1の矯正レンズ及び前記第2の矯正レンズが前記第1のパターン及び前記第2のパターンに対して既知の位置に配置されるとき、前記第1の取込み画像において取り込まれることが可能であるように、互いに間隔を空けて配置される、請求項1に記載のプロセス。
前記球面屈折力測定値の極値は、前記矯正レンズが収束レンズである場合、前記複数の球面屈折力測定値の間の最大絶対値であり、前記球面屈折力測定値の極値は、前記矯正レンズが発散レンズである場合、前記複数の球面屈折力測定値の間の最小絶対値である、請求項17に記載のレンズメータ。
前記プロセッサは、前記矯正レンズについて、前記変換から円柱屈折力測定値及び乱視角度測定値を求めるように更に構成されている、請求項21に記載のレンズメータ。
前記球面屈折力測定値の極値は、前記矯正レンズが収束レンズである場合、前記複数の球面屈折力測定値の間の最大絶対値であり、前記球面屈折力測定値の極値は、前記矯正レンズが発散レンズである場合、前記複数の球面屈折力測定値の間の最小絶対値である、請求項25に記載のプロセス。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
1つの態様によれば、レンズの特性を確定するプロセスは、矯正レンズを通してパターンの取込み画像を取得することと、取込み画像を理想座標系に変換することと、取込み画像を処理して、基準パターンから取込み画像のパターンへの全体的な歪みを求めることと、矯正レンズに起因する取込みパターンの歪みを求めることと、矯正レンズの少なくとも1つの特性を測定することとを含む。1つの実施形態によれば、取込み画像は、パターンを含みかつ矯正レンズを通過する光によってもたらされる第1の領域と、矯正レンズを通過しない光によってもたらされる第2の領域とを含み、矯正レンズに起因する取込みパターンの歪みを求めることは、少なくとも一部には第2の領域に関して行われる。更なる実施形態によれば、パターンはチェッカーボードパターンであり、第2の領域は境界を含む。別の実施形態によれば、取込み画像を理想座標系に変換することは、取込み画像の第2の領域において複数の取込み基準ランドマークを検出することと、複数の理想基準ランドマークから複数の取込み基準ランドマークへの変換を求めることと、取込み画像にその変換を適用することとを含む。
【0006】
別の実施形態によれば、パターンは第1のパターンであり、矯正レンズは第1の矯正レンズであり、矯正レンズを通してパターンの取込み画像を取得することは、第1の矯正レンズを通して第1のパターンの取込み画像を取得することと、第2の矯正レンズを通して第2のパターンの取込み画像を取得することとを含む。
【0007】
更に別の実施形態によれば、取込み画像を処理して基準パターンから取込み画像のパターンへの全体的な歪みを求めることは、取込み画像において、複数の取込みパターンランドマークを検出することと、複数の理想パターンランドマークから複数の取込みパターンランドマークへの変換を求めることと、矯正レンズについて、前記変換から、球面屈折力測定値、円柱屈折力測定値及び乱視角度測定値を求めることとを含む。更なる実施形態によれば、その変換は屈折度数のマトリックスである。
【0008】
また、更なる実施形態によれば、矯正レンズを通して少なくとも1つのパターンの取込み画像を取得することは、少なくとも1つのパターンに対するカメラレンズの第1の位置で行われ、少なくとも1つのパターンに対するカメラレンズの第2の位置において、矯正レンズを通して少なくとも1つのパターンの第2の取込み画像を取り込むことと、第2の取込み画像において複数の取込みパターンランドマークを検出することと、複数の理想パターンランドマークから複数の取込みパターンランドマークへの第2の変換を求めることと、矯正レンズについて、第2の変換から、球面屈折力測定値、円柱屈折力測定値及び乱視角度測定値を求めることと、第1の変換及び第2の変換から、球面屈折力測定値及び円柱屈折力測定値が最大絶対値を有する好ましい変換を選択することとを更に含む。
【0009】
また、更なる実施形態によれば、取込み画像は、カメラレンズを有するカメラによって取り込まれ、矯正レンズは、カメラレンズ及びパターンに対して既知の位置に配置される。更なる実施形態によれば、矯正レンズに起因する取込み画像の歪みを求めることは、カメラレンズとパターンとの間の距離を求めることと、距離、球面屈折力測定値及び円柱屈折力測定値に関して矯正レンズの少なくとも1つの焦点距離を求めることとを含む。
【0010】
1つの実施形態によれば、矯正レンズの少なくとも1つの特性を測定することは、矯正レンズの処方を確定することを含み、該処方は、少なくとも球面値、円柱値及び軸値を含む。別の実施形態によれば、矯正レンズを通してパターンの取込み画像を取得することは、カメラレンズを通して、第1の矯正レンズを通して第1のパターンの取込み画像を取得することと、第2の矯正レンズを通して第2のパターンを取得することとを含み、2つのパターンは、第1の矯正レンズを通して第1のパターンの取込み画像を取得することと第2の矯正レンズを通して第2のパターンの取込み画像を取得することとが、第1の矯正レンズ及び第2の矯正レンズがカメラレンズ並びに第1のパターン及び第2のパターンに対して既知の位置に配置されるときに行うことができるように、互いに対して間隔をあけて配置される。
【0011】
更に別の実施形態によれば、プロセスは、取込み画像から、取込み画像が取り込まれたレンズメータのカメラレンズの第1の位置を求めることと、第1の位置に対する第2の位置への方向を特定することと、レンズメータのユーザを第2の位置に誘導することと、矯正レンズを通してパターンの第2の取込み画像を取り込むこととを更に含む。
【0012】
別の態様によれば、レンズメータは、カメラと、視覚的ディスプレイと、カメラに結合され、かつ矯正レンズを通してパターンの取込み画像を取得し、取込み画像を理想座標系に変換し、取込み画像を処理して、基準パターンから取込み画像のパターンへの全体的な歪みを求め、矯正レンズに起因する取込みパターンの歪みを求め、矯正レンズの少なくとも1つの特性を測定するように構成されたプロセッサとを備える。
【0013】
1つの実施形態によれば、取込み画像は、パターンを含みかつ矯正レンズを通過する光によってもたらされる第1の領域と、矯正レンズを通過しない光によってもたらされる第2の領域とを含む。更なる実施形態によれば、プロセッサは、取込み画像の第2の領域において複数の取込み基準ランドマークを検出し、複数の理想基準ランドマークから複数の取込み基準ランドマークへの変換を求め、取込み画像にその変換を適用するように構成されていることにより、取込み画像を理想座標系に変換するように更に構成されている。
【0014】
別の実施形態によれば、プロセッサは、取込み画像において、複数の取込みパターンランドマークを検出し、複数の理想パターンランドマークから複数の取込みパターンランドマークへの変換を求め、矯正レンズについて、その変換から、球面屈折力測定値、円柱屈折力測定値及び乱視角度測定値を求めるように構成されていることにより、取込み画像を処理して基準パターンから取込み画像のパターンへの全体的な歪みを求めるように更に構成されている。更なる実施形態によれば、プロセッサは、第1の位置において矯正レンズを通して少なくとも1つのパターンの取込み画像を取得するように更に構成され、プロセッサは、第2の位置において、矯正レンズを通して少なくとも1つのパターンの第2の取込み画像を取り込み、第2の取込み画像において、複数の取込みパターンランドマークを検出し、複数の理想パターンランドマークから複数の取込みパターンランドマークへの第2の変換を求め、矯正レンズについて、第2の変換から、球面屈折力測定値、円柱屈折力測定値及び乱視角度測定値を求め、第1の変換及び第2の変換から、球面屈折力測定値及び円柱屈折力測定値が最大絶対値を有する好ましい変換を選択するように更に構成されている。また、更なる実施形態によれば、取込み画像は、カメラのカメラレンズを通して取り込まれ、プロセッサは、カメラレンズとパターンとの間の距離を求め、距離、球面屈折力測定値及び円柱屈折力測定値に関して矯正レンズの少なくとも1つの焦点距離を求めるように構成されていることにより、矯正レンズに起因する取込み画像の歪みを求めるように更に構成されている。
【0015】
1つの実施形態によれば、プロセッサは、矯正レンズの処方を確定するように構成されていることにより、矯正レンズの少なくとも1つの特性を測定するように更に構成されており、処方は、少なくとも球面値、円柱値及び軸値を含む。別の実施形態によれば、パターンは物理的な媒体に印刷されている。更に別の実施形態によれば、パターンは、電子表示装置に表示される。
【0016】
これらの例示的な態様及び実施形態の更に他の態様、実施形態、及び利点は、以下で詳細に論述される。また、上述の情報及び以下の詳細な説明の双方は、様々な態様及び実施形態の単なる説明のための例にすぎず、請求項に記載の主題の本質及び特性を理解するための概略又は枠組みを提供することを意図している。「一実施形態」、「一例」、「1つの例」、「別の実施形態」、「別の例」、「幾つかの実施形態」、「幾つかの例」、「他の実施形態」、「代替の実施形態」、「様々な実施形態」、「1つの実施形態」、「少なくとも1つの実施形態」、「この実施形態及び他の実施形態」等の例及び実施形態への特定の言及は、必ずしも相互に排他的なものではなく、その実施形態又は例に関して説明された特定の特徴、構造、又は特性が、その実施形態又は例及び他の実施形態又は例に含まれ得ることを示すことを意図している。そのような用語が本明細書に登場した場合、これは、必ずしも全てが同じ実施形態又は例を指しているとは限らない。
【0017】
さらに、本明細書と、引用によって本明細書に組み込まれている文書との間の用語の使用が一貫していない場合、組み込まれた参考文献における用語の使用は、本明細書の用語の使用を補足するものであり、相容れない不一致の場合、本明細書における用語の使用が優先される。加えて、添付図面は、様々な態様及び実施形態の図解及び更なる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれて、本明細書の一部を構成する。図面は、本明細書とともに、説明及び特許請求される態様及び実施形態の原理及び動作を説明するように機能する。
【0018】
本発明の実施形態は、以下の記載において述べられ又は図面に示されている構成の詳細及び構成部材の配置構成に限定されない。本発明の実施形態は、様々な方法で実施又は実行することができる。また、本明細書において用いた言い回し及び用語は、説明のためのものであり、限定するものとしてみなされるべきではない。本明細書における「有する、含む、備える(including)」、「有する、含む、備える(comprising)」又は「有する(having)」、「含む(containing)」、「伴う(involving)」という用語及びそれらの変形の使用は、その前に記載される事項及びそれらの均等物並びに更なる事項を包含することが意図される。
【0019】
少なくとも1つの実施形態の様々な態様が、添付した図面を参照して以下に論述される。これらの図面は、一律の縮尺で描くことを意図したものではない。図面は、様々な態様及び実施形態の図解及び更なる理解を提供するために含まれており、本明細書に組み込まれて、本明細書の一部を構成するが、どの特定の実施形態の限定の定義としても意図されていない。図面は、本明細書とともに、説明及び特許請求される態様及び実施形態の原理及び動作を説明するように機能する。図面において、様々な図に示された各同一の構成要素又はほぼ同一の構成要素は、同様の参照符号によって表される。明瞭にするために、あらゆる構成要素があらゆる図においてラベル付けされているとは限らない。
【発明を実施するための形態】
【0021】
1つ以上の実施形態によれば、開示するプロセス及びシステムにより、1つ以上の矯正レンズの処方等の特性を確定することができる。幾つかの実施形態では、カメラ機器により矯正レンズを通して1つ以上のパターンの画像が取り込まれ、専用ソフトウェアを備えて接続されたコンピュータデバイスにより、パターンの歪みが測定されて、矯正レンズの特性が確定される。本明細書において論じる実施形態は、既知のレンズメータにより必要とされかつそれらを組み込む固定具により強制される特定の間隔及び構成を必要とすることなく、1つ以上の矯正レンズの特性を測定するように構成された機器として、レンズメータについて記載する。本レンズメータは、請求項に記載の方法を実行する専用のソフトウェア(例えば、アプリケーション)がインストールされるスマートフォン又はタブレット機器とすることができる。代替的に、レンズメータは、矯正レンズ及びパターンがレンズメータに対して正確に間隔が空けられかつ配置されることを必要とすることなく、矯正レンズの特性を測定することができる固定位置(例えば、壁又は固定具に埋め込まれたカメラ)を有することができる。こうした構成は、例えば、検眼士の職場又は眼鏡小売店等、小売環境において、好適である可能性がある。
【0022】
パターンは、1枚の紙の上に表示することができ、又は、ラップトップコンピュータ等の別の機器のディスプレイに表示することができる。幾つかの実施形態では、モバイル機器(すなわち、モバイルレンズメータ)と他の機器(例えば、パターンを表示する他の機器)を対にして、測定プロセス中にそれらの機器が通信しインタラクトするのを可能にすることができる。本明細書においてモバイルレンズメータをモバイル機器自体として描く例は、単に例示を目的とし、本明細書において「モバイルレンズメータ」に関して論じる機能は、モバイルレンズメータシステムの一部としてこのような他の機器で、又はこのような他の機器に関連して実行することができることが理解される。
【0023】
幾つかの実施形態では、2つのパターンは、矯正レンズがパターンとレンズメータとの間のおよそ中間点に配置されかつ適切に向けられたとき、(各々眼鏡フレームにおける一対の矯正レンズのうちの1つを通して)モバイルレンズメータに可視であるように、間隔が空けられかつ構成される。このような構成により、モバイルレンズメータ、パターン及び矯正レンズの容易な、直観的な位置決めが可能になる。さらに、モバイルレンズメータは、パターンまでの距離を求め、処方を確定するときにその測定値を考慮するように構成される。この設計により、要素の手動による位置決めが容易になり、固定具が不要になる。1つの実施形態では、パターンは、物理的な媒体に又はコンピュータディスプレイに表示される矩形である。幾つかの実施形態では、パターンは、取込み画像を方向付けるために使用される基準ランドマーク又は他の特徴を有する境界によって包囲される。
【0024】
1つ以上の実施形態によれば、開示したプロセス及びシステムは、取込み画像を理想座標系に変換して、画像取込みプロセス中にパターンに対するレンズメータの向きを補償する。幾つかの実施形態では、変換は、基準パターン群における基準ランドマークの位置に対する取込み画像における基準ランドマークの位置に関してなされる。
【0025】
1つ以上の実施形態によれば、開示するプロセス及びシステムは、取込み画像を処理して、取込み画像における複数の取込みパターンランドマークの位置を検出しかつ求めることにより、全体的な歪みを求める。システムは、取込み画像における対応する取込みパターンランドマークに対する(理想座標系における)複数の基準パターンランドマークの位置から歪みを記述する変換を求める。変換の式(例えば、屈折度数のマトリックス)を使用して、球面屈折力、円柱屈折力及び乱視角度を含む、矯正レンズの測定値を求めることができる。全体的な歪みの(レンズメータのレンズとは対照的に)矯正レンズによる部分は、一部には、矯正レンズの少なくとも1つの焦点距離を求めることによって求めることができる。矯正レンズの他の特性も測定することができる。本実施形態は、球面円柱レンズに限定されず、単焦点レンズ、二重焦点レンズ、三重焦点レンズ、累進レンズ、焦点調節可能レンズ、又はより高次の収差を矯正するレンズ等、他の特性を有するレンズに好適である可能性がある。
【0026】
1つ以上の実施形態によれば、複数の画像を取り込みかつ分析して、好ましい向きで、例えば、矯正レンズがレンズメータとパターンとの間の中間点に最も近い場合に取り込まれた画像を識別することができる。
【0027】
1つ以上の実施形態によれば、カメラと、視覚的ディスプレイと、本明細書に記載するプロセスを実行するように構成されたプロセッサとを備えるレンズメータが提供される。レンズメータは、専用のレンズメータとすることができ、又は、ダウンロード可能なアプリケーション等、レンズメータソフトウェアを実行するモバイル機器(例えば、スマートフォン又はタブレット機器)とすることができる。
【0028】
図1は、矯正レンズ130の処方及び/又は他の未確定の特性を確定する従来の光学レンズメータシステム100を示す。光源110が、パターン120(例えば、既知の寸法及び配置の印刷されたパターンを有する透明なターゲット)と矯正レンズ130(及び図示していない複数の標準レンズ及び対物レンズ)とを通して接眼レンズ140に向けられる。接眼レンズ140を覗いている観察者は、矯正レンズ130がパターン120を通過する光を歪める様子を観察することができる。矯正レンズ130の歪み効果を測定することにより、ユーザは、矯正レンズ130の球面屈折力、円柱屈折力及び軸の測定値を含む、矯正レンズ130の幾つかの特定の特性を確定することができる。レンズメータシステム100では、パターン120、矯正レンズ130及び接眼レンズ140を正確に間隔が空けられかつ向けられた配置で維持するために、レンズホルダ152を備える固定具150が必要である。レンズメータシステム100の動作の基礎となる光学原理では、固定具150により特定の間隔及び向きが維持されることが必要である。
【0029】
同様に、デジタルレンズメータを使用して、単一の矯正レンズを通してパターンを画像化することができ、デジタルレンズメータは、画像における歪みを使用して、矯正レンズの処方及び/又は他の未確定の特性を確定することができる。従来の光学レンズメータと同様に、現時点で入手可能なデジタルレンズメータでは、矯正レンズ、レンズメータのレンズ及びパターンを正確に間隔が空けられかつ向けられた配置で保持するための固定具が必要である。
【0030】
図2は、1つ以上の実施形態によるレンズメータシステム200のブロック図を示す。
図2に示す実施形態では、レンズメータシステム200は、レンズメータ210、矯正レンズ220及びパターン230を備える。動作時、レンズメータ210は、矯正レンズ220を通してパターン230の画像を取り込む。矯正レンズ220は、パターン230からレンズメータ210内に反射する光を歪め、歪み効果は、球面、円柱及び軸の測定値を含む、矯正レンズ220の1つ以上の未確定の特性を確定するために、測定することができる。
【0031】
パターン230の取込み画像は、パターン230の近くの基準ランドマークを使用して理想座標系に変換することによって正規化される。正規化は、レンズメータ210、矯正レンズ220及びパターン230の間の間隔及び向きにおける回転、傾き又は距離のばらつきを補償する。したがって、レンズメータシステム200に固定具は不要である。そして、正規化されたパターン230は、同様に理想座標系において基準パターンと比較することができ、矯正レンズの歪み効果を、レンズメータ210自体のレンズの歪み効果から隔離することができる。
【0032】
幾つかの実施形態では、パターン230は、コンピュータモニタ、タブレット若しくは他のモバイル機器等、電子ディスプレイ(図示せず)に表示され、又は、プロジェクタにより表面上に投影される。例えば、パターン230は、レンズメータシステム200によってアクセス可能なウェブサイト上で提供することができ、又は、モバイル機器上で実行しているモバイルアプリケーションにより若しくはそれを通して提供することができる。他の実施形態では、パターン230は、1枚の紙又はプラスチック等の物理的媒体上に印刷される。
【0033】
幾つかの実施形態では、2つ以上のパターンを用いて、2つ以上の矯正レンズの特性を同時に確定することができる。好ましい実施形態では、2つの間隔を空けて配置されたパターンが使用され、各パターン230は、交互の黒色の正方形及び白色の正方形の回転変形チェッカーボード格子であり、そこでは、チェッカーボードにおける行の数は、列の数と1だけ異なる。この回転変形の特質により、レンズメータ210は、パターン230が正しい直立位置で見られているか、又は代替的に横に回転しているかを判断することができる。1つの実施形態では、パターン230は、8つの行と7つの列とを有する黒白チェッカーボード設計である。別の実施形態では、パターン230は16の行と15の列とを有する。他の構成又は色の組合せもあり得る。
【0034】
図3は、幾つかの実施形態によるレンズメータ210のブロック図である。幾つかの実施形態では、レンズメータ210は、本明細書に記載する動作を実行するための専用ソフトウェアを実行する、消費者モバイル機器(例えば、スマートフォン又はタブレット機器)又はコンピュータ(例えば、ラップトップコンピュータ)である。他の実施形態では、レンズメータ210は、専用のレンズメータ機器である。レンズメータ210は、レンズ312を有するカメラ310を備え、プロセッサ320、ユーザインタフェース330、ネットワークインタフェース340、メモリ350及びレンズメータソフトウェア360を更に備える。幾つかの実施形態では、カメラ310は、レンズメータ210の一体化した構成要素である。他の実施形態では、カメラ310は、アドオン構成要素又は付属品とすることができる。プロセッサ320は、カメラ310に結合され、レンズメータ210によって実行される画像取込み機能のためのレンズメータソフトウェア360を実行する。幾つかの実施形態では、レンズメータ210の機能は、より広いレンズメータシステムの一部として他の機器に関連して実行することができる。例えば、レンズメータ210の機能がユーザのスマートフォンによって実行される一実施形態では、パターンの表示を制御するために、スマートフォンをユーザのラップトップコンピュータと対にすることができる。その例では、レンズメータ210は、ユーザのスマートフォン及びラップトップコンピュータの両方を備えるようにみなすことができる。
【0035】
ユーザインタフェース330は、レンズメータ210のユーザから入力を受け取り、レンズメータ210のユーザに出力を提供する。幾つかの実施形態では、ユーザインタフェース330は、カメラ310のレンズ312を通してその時点で可視の画像をユーザに表示し、ユーザがレンズメータ210の位置又は向きを調整するのを可能にする。幾つかの実施形態では、ユーザインタフェース330は、画像を取り込むためにインタラクトするための物理的なボタン又は画面上のボタンをユーザに提供する。他の実施形態では、画像においてパターン230が検出され、幾つかの特定の位置合せ、サイズ、照明及び解像度等の条件が満たされると、画像は自動的に取り込まれる。
【0036】
ユーザインタフェース330は、レンズメータ210、矯正レンズ220及びパターン230のうちの任意のものを異なる絶対位置若しくは向きに、又は互いに対して異なる位置若しくは向きに移動させる指標をユーザに提供することもできる。例えば、ユーザインタフェース330は、ユーザが、矯正レンズ220がレンズメータ210及びパターン230に対して最適な既知の位置に位置決めされるようにレンズメータ210を位置決めするまで、かつレンズメータ210、矯正レンズ220及びパターン230が、パターン230がレンズメータ210において矯正レンズ220を通して可視であるように位置合せされるまで、グラフィックス及びイラストレーションとともに伝えられる「前方に移動」、「後方に移動」、「レンズメータを前方に傾ける」という命令、又は他のこのような指示等を提供することができる。幾つかの実施形態では、レンズメータ210のユーザインタフェース330及び/又は他の構成要素は、このような命令を、記録された音声命令、又は正しい位置からのレンズメータ210の距離に比例する(又は反比例する)周波数で発せられる可聴音等により、聴取可能に提供することができる。他の実施形態では、ユーザインタフェース330は、ユーザが、レンズメータ210、矯正レンズ220及びパターン230を正しく位置決めすると、例えば、「緑色光」又は承認アイコンを表示することにより、ユーザに対して指標を提供することができる。ユーザインタフェース330はまた、ユーザが、ユーザの医師に矯正レンズの処方情報を送信する命令を与えること等により、他のシステム又は構成要素とインタラクトすることも可能にする。
【0037】
幾つかの実施形態では、ネットワークインタフェース340は、レンズメータソフトウェア360のダウンロード及びアップグレードに対するアクセスを可能にする。幾つかの実施形態では、後述するプロセスの1つ以上のステップは、レンズメータ210とは別個のサーバ(図示せず)又は他の構成要素で実行することができ、ネットワークインタフェース340を介してレンズメータ210とサーバとの間でデータを渡すことができる。ネットワークインタフェース340は、別のエンティティ、例えば、ユーザの検眼士又は別の矯正レンズ提供者にレンズ特性又は処方情報を自動的にアップロードするのを更に可能にすることができる。
【0038】
本明細書に記載するプロセスとともに他の機能のうちの幾つか又は全ては、レンズメータ210上で実行しているレンズメータソフトウェア360により、又は(例えば、ネットワークインタフェース340を介して)レンズメータ210と通信する他のシステムにより、実行することができる。
【0039】
図4は、1つ以上の実施形態による矯正レンズの特性を確定するプロセス400のフローチャートである。このような実施形態は、
図2及び
図3に示すシステム等を使用して実施することができる。
【0040】
プロセス400は、ステップ410において開始する。
【0041】
ステップ420において、矯正レンズを通して、パターンの取込み画像が取得される。画像は、カメラ(例えば、カメラ310)によって取り込まれる。幾つかの実施形態では、カメラは、専用レンズメータ機器の一部であるか、又はそれに取り付けられている。他の実施形態では、カメラは、モバイル機器(例えば、スマートフォン又はタブレット機器)の一部である。幾つかの実施形態では、ユーザは、パターンが矯正レンズを通して見られるように、カメラがパターンの方に向けられた状態で、モバイル機器を保持するように指示される。そして、カメラにより、パターンの画像が取り込まれる。画像は、モバイル機器の物理的なボタン又は画面上のインタフェース要素をクリックすること等、ユーザ指示に応じて取り込むことができる。他の実施形態では、安定した比較的静的な画像が取得されて焦点が合い、レンズメータ、矯正レンズ及びパターンが適切に位置合せされると、画像を自動的に取り込むことができる。例えば、モバイル機器の加速度計を用いて、カメラが比較的静止していると判断することができる。焦点のあった画像を取得することができる場合、システムは、既知の画像処理及び検出技術を用いて、画像内のパターンの存在を識別しようと試みることができる。幾つかの実施形態では、複数の画像を取り込むことができ、パターンの焦点が最も合っている画像、要素が適切に位置合せされているか否か等の基準に基づいて、複数の画像の間から更なる処理のために画像を選択することができる。
【0042】
幾つかの実施形態では、物体は、コンピュータディスプレイ上に表示された画像とすることができる。物体は、既知の形状及び容易に検出可能な特徴点を有するパターンとすることができる。幾つかの実施形態によれば、チェッカーボードパターンが使用される。
【0043】
図5Aは、パターン510、520が、眼鏡フレーム内の2つの眼鏡レンズ等、2つの矯正レンズの特性を同時に検出する際に使用されるように位置決めされるパターン群500を示す。パターン510、520は、境界530内に配置されている。境界530は、境界530における既知の位置で境界基準ランドマーク532、533、534、535を含む。境界530及び/又は境界基準ランドマーク532、533、534、535は、後続するステップにおいて、取込み画像の向きを補正するために使用される。好ましい実施形態では、4つの境界基準ランドマークが使用されるが、幾つかの実施形態は、2つ程度の境界基準ランドマークを使用することができる。1つの実施形態では、境界基準ランドマーク532、533、534、535は、境界530の4つの内側コーナの各々に配置されている。境界基準ランドマーク532、533、534、535は、コンピュータビジョン技法を用いて、取込み画像において認識可能なマーカとすることができ、又は、コンピュータビジョン技法により、及び/又はパターン群500の既知の形状に関して検出される、固有のランドマークとすることができる。例えば、境界530は、4つの内側コーナを有する矩形であることが既知である場合、それらの4つの内側コーナは、境界基準ランドマーク532、533、534、535として配置し使用することができる。
【0044】
また、パターン510、520は、複数のパターン基準ランドマーク512も含む。取込み画像における複数のパターン基準ランドマーク512の位置は、後続するステップにおいて、矯正レンズによって導入される歪みの性質を求めるために使用される。幾つかの実施形態では、パターン基準ランドマーク512は、チェッカーボードパターン内の正方形の隣接するコーナに配置されている。パターン基準ランドマーク512は、コンピュータビジョン技法を用いて、取込み画像において認識可能なマーカとすることができ、又は、コンピュータビジョン技法により、及び/又はパターン群500の既知の形状に関して検出された、ランドマークとすることができる。
【0045】
境界基準ランドマーク532、533及びパターン基準ランドマーク512の位置は、パターン群500において既知である。それらの既知の位置により、パターン群500を、後続するステップにおいて基準パターン群として使用することができ、それに対して、取込み画像におけるそれらと同じ点の位置を比較することができる。
【0046】
幾つかの実施形態では、レンズメータは、眼鏡フレームにおける矯正レンズがレンズメータとパターン510、520との間の中間点になると動作するように構成される。パターン510、520は、パターン510、520の各々が、矯正レンズがレンズメータとパターン510、520との間の中間点にあるときに、レンズメータと矯正レンズのうちの1つとを位置合せされるように、構成されかつ間隔が空けられる。こうした構成は、例えば、パターン510、520の中心の間の距離が矯正レンズの中心の間の距離の2倍であるときに達成することができる。例えば、眼鏡フレームにおける矯正レンズの中心の間の距離が77.5mmである場合、パターン510、520は、パターン510、520の中心の間の距離が77.5×2=155mmであるように間隔を空けることができる。
【0047】
パターン510、520及び/又は境界530は、レンズメータが矯正レンズを通してパターンの画像を取り込むとき、通常サイズの眼鏡フレームにおける開口部が取込み画像におけるパターンを完全に包囲する(矯正レンズがパターンの上に完全に重なることを意味する)ようなサイズであり、かつそのように構成されている。眼鏡フレームの開口部は、さらに、境界530内に完全に含まれる。取込み画像は、矯正レンズを通過する(すなわち、矯正レンズによって歪められる)光からもたらされる1つ以上の第1の領域と、矯正レンズの周囲を通過する(すなわち、矯正レンズによって歪められない)光からもたらされる1つ以上の第2の領域とを有するものとしてみなすことができる。
【0048】
このような構成を示す取込み画像550は、
図5Bに見ることができる。パターン510は、眼鏡フレーム540の開口部542内に完全に含まれ、パターン520は、眼鏡フレーム540の開口部544内に完全に含まれる。取込み画像550におけるパターン510、520は、眼鏡フレーム540における矯正レンズによって歪められている。眼鏡フレーム540は、境界530内に完全に含まれる。このような構成を採用することにより、矯正レンズによる取込み画像におけるパターン510、520の歪みを測定することができ、一方で、境界基準ランドマーク532、533は歪められないままである。
【0049】
図5A及び
図5Bに示すパターン群500は、例示を目的とし、本開示の範囲内で、パターン及び/又は境界の異なる構成、サイズ若しくはタイプを採用することができ、又は完全に省略することができる。幾つかの実施形態では、2つ以上の画像を取り込むことができ、各画像は、1つのパターンのみを含むように、切り取られるか又は他の方法で制限される。他の実施形態では、両パターンの1つの画像が取り込まれ、画像は、後続するステップにおいて各パターンに対する並列処理のために2つの画像に分割される。更に他の実施形態では、パターンのビデオクリップを取り込むことができ、又は、複数の静止画像を間断なく取り込むことができる。
【0050】
異なる特性を有するレンズは、取込み画像におけるパターンを異なるように歪めることもまた理解される。例えば、正の屈折力を有するレンズは、取込み画像におけるパターンを拡大し、パターンが矯正レンズを通してより大きく見えるようにする。その状況では、パターンは、取込み画像におけるパターンが矯正レンズによって完全に境界が付けられるには大きすぎないようなサイズとすることができる。同様に、負の屈折力を有するレンズは、取込み画像においてパターンを縮小し、パターンが矯正レンズを通してより小さく見えるようにする。その状況では、パターンは、取込み画像におけるパターンが、後のステップにおいて識別されかつ処理されるには小さすぎないようなサイズとすることができる。したがって、幾つかの実施形態では、表示装置にパターンを表示することができ、それにより、レンズの特性又は他の考慮事項に従ってパターンサイズを構成することができる。幾つかの実施形態では、ユーザに対して、パターンをサイズ変更するために、又はレンズの特性を選択し好適なサイズのパターンが表示されるようにするために、(表示装置又はレンズメータ210のいずれかを介して)インタフェースを提供することができる。他の実施形態では、システムによりパターンを、そのパターンが取込み画像において正しいサイズであるように、自動的にサイズ変更することができる。
【0051】
図5Bにおいて取込み画像550に見ることができるように、境界530は、
図5Aに示す水平矩形構成から反時計回りに回転し、
図5Bにおけるパターン510、520及び境界530は、
図5Aにおけるそれらに対応するものより小さい。これらの変化により、取込み画像550のパターン群500を基準パターン群500と直接比較することが困難になる。
【0052】
したがって、
図4に戻ると、ステップ430において、取込み画像は、理想座標系に変換される。幾つかの実施形態では、取込み画像は、
図5Aの基準パターン群500によって表される理想座標系に変換される。この変換は、画像取込みプロセスによって導入されるいかなる歪み又は不正確も除去するように、画像を回転させ、サイズ変更し、切り取り、スキューすることを含むことができる。幾つかの実施形態では、取込み画像は、取込み画像550における境界基準ランドマーク532’、533’、534’、535’を検出し、画像操作技法を用いて取込み画像550を変換して、境界基準ランドマーク532’、533’、534’、535’が、取込み画像において、
図5Aの基準パターン群500における対応する境界基準ランドマーク532、533、534、545と同じ位置で現れるようにすることにより、理想座標系に変換される。境界基準ランドマーク532’、533’、534’、535’は、コンピュータビジョン技法により検出することができ、境界基準ランドマーク532’、533’、534’、535’又はそれらを構成する画素は、こうしたコンピュータビジョン技法を実行するのに好適な形状、色又は他の特性を有するように構成することができる。
【0053】
幾つかの実施形態では、取込み画像550における境界基準ランドマーク532’、533’、534’、535’と
図5Aの基準パターン群500における対応する境界基準ランドマーク532、533、534、545との間の距離から、行列変換が求められる。そして、行列変換は、変換をもたらすように、取込み画像550の画素の一部又は全てに適用される。
【0054】
図5Cに、理想座標系に変換された後に見えるような取込み画像550を見ることができる。この変換された取込み画像550における境界基準ランドマーク532’、533’、534’、535’は、
図5Aの基準パターン群500における境界基準ランドマーク532、533、534、545と同じ位置にある。
【0055】
ステップ440において、取込み画像は、基準パターンから取込み画像のパターンへの全体的な歪みを求めるように処理される。全体的な歪み(すなわち、画像を取り込むために使用されるカメラのレンズとともに矯正レンズによって導入された歪み)は、取込み画像550におけるパターン510、520を基準パターン群500におけるパターンと比較することによって求めることができる。幾つかの実施形態では、比較は、取込み画像550における複数のパターン基準ランドマーク512を基準パターン群500における複数のパターン基準ランドマーク512と比較することによって行われる。
【0056】
図6は、基準パターン群500における複数のパターン基準ランドマーク512の位置の上に重ねられた例示的な取込み画像550における複数のパターン基準ランドマーク512’の位置を示す。取込み画像における各パターン基準ランドマーク512a’、512b’と基準パターン群におけるその対応する基準ランドマーク512a、512bとの間の距離を用いて、理想座標系から取込み画像への歪みを記述する屈折度数のマトリックスP(すなわち、変換)を求めることができる。
【0057】
プレンティスの法則は、レンズにおける誘導されたプリズムの量を記述する。屈折度数のマトリックスPを用いて、x
test=Px
refとしてマトリックス形式でプレンティスの法則を表現することができ、式中、x
testは、取込み画像におけるパターン基準ランドマーク512a’、512b’の位置のマトリックスであり、x
refは、基準パターン群における対応する基準ランドマーク512a、512bの位置のマトリックスである。
【0058】
屈折度数のマトリックスPは、
【数1】
によって与えられ、式中、
P
x=S+Csin
2θ
P
y=S+Ccos
2θ
P
t=−Csinθcosθ
である。代数的に解くことにより、レンズの球面屈折力に関する値S、レンズの円柱屈折力に関する値C、及びレンズの乱視角度θを求めることができる。
【0059】
S及びCの値は、矯正レンズとレンズメータのカメラのレンズとの両方により取込み画像に導入された歪みを表す。したがって、ステップ450において、矯正レンズに起因する取込み画像におけるパターンの歪みが求められる。特に、θ及び(θ+90°)に対応する2つの直交軸に沿った矯正レンズの焦点距離f
θ及びf
θ+90°は、以下の式によって求められ、
【数2】
式中、lはパターンとレンズメータのカメラのレンズとの間の距離である。lの値を求めるために、カメラ及び/又はレンズのパラメータを求め、又はデータストアから直接アクセスすることができる。幾つかの実施形態では、カメラレンズの焦点距離fは、取込み画像におけるメタデータから、又はレンズメータについての構成情報において求めることができる。パターンの高さhは既知とすることができる。距離lは、焦点距離f及び他のパラメータから求めることができる。物体(例えば、パターン)からの距離を求める方法及びシステムは、2016年1月15日に出願された「SMARTPHONE RANGE FINDER」という発明の名称の米国特許出願第14/996,917号に記載されており、その出願の開示全体が、その出願を引用することにより全体として本明細書の一部をなすものとする。
【0060】
ステップ460において、矯正レンズの少なくとも1つの特性が確定される。幾つかの実施形態では、矯正レンズの球面、円柱及び軸の測定値を求めることができ、矯正レンズの処方を確定することが可能になる。球面測定値は、ジオプタで測定されるレンズ屈折力の量を示す。矯正レンズに対して、眼の全ての経線において近視又は遠視を矯正するために或る特定の球面値を処方することができる。幾つかの実施形態では、球面値に符号をつけることができ、負の値は近視処方を表し、正の値は遠視処方を表す。
【0061】
円柱値は、乱視に対して処方されるレンズ屈折力の量を示す。乱視に対して矯正が処方されない場合、円柱値はゼロとすることができる。円柱測定値は、矯正レンズが、曲率が加えられていない第1の経線と、乱視を矯正するために最大レンズ曲率を含み、第1の経線に対して垂直な第2の経線とを有することを示す。
【0062】
軸値は、円柱の第2の経線の向きを表す。軸値は、1°〜180°の範囲とすることができ、90°は眼の垂直経線に対応し、180°は水平経線に対応する。
【0063】
多焦点(例えば、二重焦点又は三重焦点)レンズの底部に適用される加入度数を表すADD値等、矯正レンズについて他の値も求めることができる。
【0064】
幾つかの実施形態では、矯正レンズの球面、円柱及び軸の測定値は、以下の式によって求めることができ、
【数3】
AXIS(軸)の確定は、矯正レンズの着用者の視点から行われる。
【0065】
SPH(球面度数)、CYL(円柱度数/乱視度数)及びAXISの値は、レンズメータの画面に表示することができ、レンズメータのメモリ(例えば、データベース又はファイル)に記憶することができ、及び/又はレンズメータのネットワークインタフェースを介して、矯正レンズの所有者に関連する眼科医等の他の当事者に、確認のために又は処方箋を記入するために、提供することができる。例えば、プロセスは、眼鏡を持っているが自身の眼鏡の処方を知らない人が行うことができる。本明細書において論じた方法を通して取得される情報は、その人のアイケア(eye care)の専門家に送信することができ、そうした専門家は、その情報を用いて、適切な処方を有する新たな眼鏡を注文することができる。
【0066】
ステップ470においてプロセス400は終了する。
【0067】
幾つかの実施形態では、矯正レンズをレンズメータとパターンとの間の中間点に配置するという要件を緩和することができる。代わりに、レンズメータ及び/又は矯正レンズを互いにパターンに対して移動させることができ、レンズメータは複数の画像を取り込む。各画像に対して、上述したように、S及びCの値を求めることができる。矯正レンズがレンズメータとパターンとの間の中間点に配置されるとき、S及び(S+C)は極値(すなわち、最小値又は最大値)を有することが知られている。S及び(S+C)が極値を生成する画像は、本明細書に記載したプロセスについての基礎として使用することができる。
【0068】
本明細書に記載した例は、眼鏡の形態の矯正レンズを伴うが、プロセス及びシステムは、コンタクトレンズ等の他のタイプの矯正レンズに対して、請求項に記載のプロセスを行うために好適な向き及び位置でコンタクトレンズを保持することができると想定して、適用可能とすることができる。
【0069】
幾つかの実施形態では、取込み画像は、理想座標系に変換されない。代わりに、2つの画像、すなわち、本明細書における様々な実施形態において論じたような、矯正レンズがレンズメータとパターンとの間に配置される第1の画像と、矯正レンズが配置されないことを除き第1の画像と同一である第2の画像(基準)とが取り込まれる。第2の画像には矯正レンズの歪み効果が存在しないため、第2の画像に対して第1の画像を直接比較して、プロセス400におけるステップ440に関して論じた技法を用いて、歪みの量を求めることができる。
【0070】
上記で論述したように、本明細書において開示された態様及び機能は、これらのコンピュータシステムのうちの1つ以上においてハードウェア又はソフトウェアとして実施することができる。現在使用されているコンピュータシステムの多くの例が存在する。これらの例は、とりわけ、ネットワークアプライアンス、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、メインフレーム、ネットワーククライアント、サーバ、メディアサーバ、アプリケーションサーバ、データベースサーバ及びウェブサーバを含む。コンピュータシステムの他の例は、セルラフォン及びパーソナルデジタルアシスタント等のモバイルコンピューティングデバイス、並びにロードバランサ、ルータ及びスイッチ等のネットワーク機器を含むことができる。さらに、態様は、単一のコンピュータシステム上に配置することもできるし、1つ以上の通信ネットワークに接続された複数のコンピュータシステム間に分散させることもできる。
【0071】
例えば、様々な態様及び機能は、1つ以上のクライアントコンピュータにサービスを提供するように構成された1つ以上のコンピュータシステム間に分散させることができる。加えて、態様は、クライアントサーバ、又は様々な機能を実行する1つ以上のサーバシステム間に分散された構成要素を備える多層システム上で実行することができる。その結果、例は、どの特定のシステム又はシステム群における実行にも限定されるものではない。さらに、態様は、ソフトウェア、ハードウェア若しくはファームウェア、又はそれらの任意の組み合わせにおいて実施することができる。したがって、態様は、様々なハードウェア構成及びソフトウェア構成を用いたプロセス、動作、システム、システム要素及び構成要素内で実施することができ、例は、どの特定の分散アーキテクチャ、ネットワーク、又は通信プロトコルにも限定されるものではない。
【0072】
図3に示すように、レンズメータ210は、ネットワークに接続されたネットワークインタフェース340を介して他のシステムと相互接続することができ、他のシステムとデータを交換することができる。ネットワークは、コンピュータシステムがデータを交換することができる任意の通信ネットワークを含むことができる。ネットワークを用いてデータを交換するために、レンズメータ210及びネットワークは、とりわけ、ファイバチャネル、トークンリング、Ethernet(登録商標)、Wireless Ethernet(登録商標)、Bluetooth(登録商標)、IP、IPV6、TCP/IP、UDP、DTN、HTTP、FTP、SNMP、SMS、MMS、SS7、JSON、SOAP、CORBA、REST及びウェブサービスを含む、様々な方法、プロトコル及び標準規格を使用することができる。データ転送が安全であることを確実にするために、レンズメータ210は、例えば、TSL、SSL又はVPNを含む種々のセキュリティ対策を用いてネットワークを介してデータを送信することができる。
【0073】
様々な態様及び機能は、1つ以上のコンピュータシステムで実行する専用のハードウェア又はソフトウェアとして実装することができる。
図3に示すように、レンズメータ210は、カメラ310、プロセッサ320、ユーザインタフェース330、ネットワークインタフェース340、メモリ350及びレンズメータソフトウェア360を備える。
【0074】
プロセッサ320は、操作されたデータをもたらす一連の命令を実行することができる。プロセッサ320は、Intel(登録商標) Xeon、Itanium、Core、Celeron(登録商標)、Pentium、AMD Opteron、Sun UltraSPARC、IBM(登録商標) Power5+、又はIBM(登録商標)メインフレームチップ等の市販のプロセッサとすることができるが、任意のタイプのプロセッサ、マルチプロセッサ又はコントローラとすることができる。プロセッサ320は、メモリ350、カメラ310等を含む他のシステム要素に接続される。
【0075】
メモリ350は、レンズメータ210の動作中にプログラム及びデータを記憶するのに用いることができる。したがって、メモリ350は、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)等の比較的高性能の揮発性ランダムアクセスメモリ又はスタティックメモリ(SRAM)とすることができる。ただし、メモリ350は、ディスクドライブ又は他の不揮発性記憶デバイス等の、データを記憶する任意のデバイスを含むことができる。様々な例が、個別化され、かつ、幾つかの場合には特有の構造にメモリ350を組織化して、本明細書に開示された機能を実行することができる。
【0076】
メモリ350は、プロセッサ320が実行することができるプログラムを規定する命令が記憶されたコンピュータ可読及び書き込み可能な不揮発性(非一時的)データ記憶媒体も含むことができる。メモリ350は、媒体上又は媒体内に記録された情報も含むことができ、この情報は、プログラムの実行中にプロセッサ320が処理することができる。より具体的には、情報は、記憶空間の保存又はデータ交換性能の向上を行うように特に構成された1つ以上のデータ構造体に記憶することができる。命令は、符号化された信号として永続的に記憶することができ、命令は、本明細書において説明した機能のうちの任意のものをプロセッサ320に実行させることができる。媒体は、例えば、とりわけ、光ディスク、磁気ディスク又はフラッシュメモリとすることができる。種々の構成要素が、記憶媒体の間のデータ移動を管理することができ、他のメモリ要素及び例は、特定のデータ管理構成要素に限定されない。さらに、例は、特定のメモリシステム又はデータ記憶システムに限定されない。
【0077】
レンズメータ210は、1つ以上のユーザインタフェース330も備える。これらのユーザインタフェース330は、入力を受信又は出力を提供することができる。より詳細には、出力デバイスは、情報を外部に提示するためにレンダリングすることができる。入力デバイスは、外部ソースから情報を受け取ることができる。インタフェースデバイスの例には、キーボード、マウスデバイス、トラックボール、マイクロフォン、タッチ画面、印刷デバイス、表示画面、スピーカ、ネットワークインタフェースカード等が含まれる。
【0078】
レンズメータ210は、様々な態様及び機能を実施することができる1つのタイプのコンピュータデバイスとして例示されているが、態様は、
図2及び
図3に示すようなレンズメータ210上で実施されることに限定されるものではない。様々な態様及び機能を、
図3に示すものとは異なるアーキテクチャ又は構成要素を有する1つ以上のコンピュータ上で実施することができる。例えば、レンズメータ210は、例えば本明細書に開示された特定の動作の実行に適合するように作製された特定用途向け集積回路(ASIC)等の特別にプログラミングされた専用ハードウェアを備えることができる。一方、別の例は、Motorola PowerPCプロセッサを用いてMAC OS System Xを実行する幾つかの汎用コンピューティングデバイス並びに独自のハードウェア及びオペレーティングシステムを実行する幾つかの専用化されたコンピューティングデバイスのグリッドを用いて同じ機能を実行することができる。
【0079】
レンズメータ210は、当該レンズメータ210に含まれるハードウェア要素の少なくとも一部分を管理するオペレーティングシステムを備えることができる。通常、プロセッサ320等のプロセッサ又はコントローラは、オペレーティングシステムを実行する。このオペレーティングシステムは、例えば、Microsoft Corporation社から入手可能なWindows NTオペレーティングシステム、Windows 2000(Windows ME)オペレーティングシステム、Windows XPオペレーティングシステム、Windows Vistaオペレーティングシステム若しくはWindows 7オペレーティングシステム等のWindowsベースのオペレーティングシステム、Apple Computer社から入手可能なMAC OS System Xオペレーティングシステム、Red Hat Inc.社から入手可能な多くのLinux(登録商標)ベースのオペレーティングシステムディストリビューションのうちの1つ、例えば、Enterprise Linuxオペレーティングシステム、Sun Microsystems社から入手可能なSolarisオペレーティングシステム、又は様々なソースから入手可能なUNIX(登録商標)オペレーティングシステムとすることができる。他の多くのオペレーティングシステムを用いることができ、例は、どの特定の実施態様にも限定されるものではない。
【0080】
プロセッサ320及びオペレーティングシステムは、ともに高水準プログラミング言語によるアプリケーションプログラムを記述することができるコンピュータプラットホームを規定する。これらのコンポーネントアプリケーションは、通信プロトコル、例えばTCP/IPを用いて、通信ネットワーク、例えばインターネットを介して通信する実行可能中間バイトコード又はインタプリット型コードとすることができる。同様に、態様は、Net、SmallTalk、Java(登録商標)、C++、Ada、又はC#(C−Sharp)等のオブジェクト指向型プログラミング言語を用いて実施することができる。他のオブジェクト指向型プログラミング言語も用いることができる。代替的に、関数型言語、スクリプト言語、又は論理プログラミング言語を用いることができる。
【0081】
さらに、種々の態様及び機能は、非プログラム環境、例えば、ブラウザプログラムのウィンドウにおいて視認されるときに、グラフィカルユーザインタフェースの態様をレンダリングするか、又は他の機能を実行する、HTML、XML又は他のフォーマットにおいて作成された文書において実施することができる。さらに、種々の例を、プログラム式要素又は非プログラム式要素、又はその任意の組み合わせとして実施することができる。例えば、ウェブページはHTMLを用いて実施される場合があり、一方、ウェブページ内から呼び出されたデータオブジェクトはC++で記述することができる。したがって、例は、特定のプログラミング言語には限定されず、任意の適切なプログラミング言語を用いることができる。したがって、本明細書に開示された機能構成要素は、説明した機能を実行するように構成された多種多様な要素、例えば実行可能コード、データ構造体又はオブジェクトを含むことができる。
【0082】
上述した実施形態は、モバイル機器のカメラを用いて矯正レンズの特性を確定するプロセスを利用する。他の実施形態を用いて、レンズにおける傷を検出することと、2つの異なるレンズの特性を比較することと、検出された回折(すなわち、歪み)の量に基づいてレンズの構造的特性を確定すること、又はレンズの特性を確定することを必要とする他の用途を含む、複数の異なる用途において、レンズの特性を確定することができる。
【0083】
少なくとも1つの例の幾つかの態様を上記のように説明してきたが、当業者には、様々な変形形態、変更形態、及び改良形態が容易に思いつくことが理解されるであろう。例えば、本明細書に開示した例は、他の状況においても用いることができる。そのような変形形態、変更形態、及び改良形態は、本開示の一部であることが意図され、本明細書において説明した例の範囲内にあることが意図されている。したがって、上記説明及び図面は、単なる例にすぎない。