(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6894928
(24)【登録日】2021年6月8日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】スペクトル及び非スペクトル物質分解を組み合わせることによる定量的撮像の精度及び分解能の向上
(51)【国際特許分類】
A61B 6/00 20060101AFI20210621BHJP
A61B 6/02 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
A61B6/00 330Z
A61B6/00 331A
A61B6/00 333
A61B6/00 350P
A61B6/02 301A
【請求項の数】17
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2018-563732(P2018-563732)
(86)(22)【出願日】2017年5月31日
(65)【公表番号】特表2019-520885(P2019-520885A)
(43)【公表日】2019年7月25日
(86)【国際出願番号】EP2017063079
(87)【国際公開番号】WO2017211625
(87)【国際公開日】20171214
【審査請求日】2019年12月10日
【審判番号】不服2020-15356(P2020-15356/J1)
【審判請求日】2020年11月5日
(31)【優先権主張番号】16173360.5
(32)【優先日】2016年6月7日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】KONINKLIJKE PHILIPS N.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】特許業務法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】フレデンベルグ ジョン エリック
(72)【発明者】
【氏名】バーグレン カール エリック レナソン
【合議体】
【審判長】
三崎 仁
【審判官】
伊藤 幸仙
【審判官】
▲高▼見 重雄
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2015/074916(WO,A1)
【文献】
特開2007−167663(JP,A)
【文献】
特表2014−524301(JP,A)
【文献】
特表2016−537099(JP,A)
【文献】
米国特許第10561378(US,B2)
【文献】
欧州特許第3429474(EP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 6/00
A61B 6/03
G16H 30/40
G06T 7/00
G01N 23/087
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
関心物体に向けられるX線を生成するX線源と、
前記関心物体のスペクトル画像データ及び非スペクトル画像データを取得するX線検出器と、
前記関心物体の前記スペクトル画像データ及び前記非スペクトル画像データを受信する受信ユニットと、
プロセッサと、
を含むX線撮像システムであって、
前記非スペクトル画像データは、前記X線検出器において複数のエネルギー区間の各々で検出された光子カウント数の総和であり、
前記プロセッサは、
前記スペクトル画像データ及び前記非スペクトル画像データから、位置の関数として物質特性を計算し、
計算された前記物質特性の重み付けされた組み合わせに基づく前記関心物体の物質特性のマップを生成するように、画像内の空間周波数に依存して、前記スペクトル画像データ及び前記非スペクトル画像データに重みを付けることによって、前記スペクトル画像データ及び前記非スペクトル画像データから計算された前記物質特性を、空間周波数の関数として組み合わせる、X線撮像システム。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記非スペクトル画像データの低空間周波部分と比べて、前記スペクトル画像データの低空間周波部分により強い重みを与え、
前記プロセッサは、前記スペクトル画像データの高空間周波部分と比べて、前記非スペクトル画像データの高空間周波部分により強い重みを与える、請求項1に記載のX線撮像システム。
【請求項3】
前記スペクトル画像データ及び/又は前記非スペクトル画像データは、位相コントラスト画像データ、微分位相コントラスト画像データ、又は、暗視野画像データである、請求項1に記載のX線撮像システム。
【請求項4】
X線撮像システムにおける定量的画像データ処理のための方法であって、
関心物体のスペクトル画像データを取得するステップと、
前記スペクトル画像データから、位置の関数として物質特性を計算するステップと、
前記関心物体の非スペクトル画像データであって、前記X線撮像システムのX線検出器において複数のエネルギー区間の各々で検出された光子カウント数の総和である非スペクトル画像データを取得するステップと、
前記非スペクトル画像データから、位置の関数として物質特性を計算するステップと、
計算された前記物質特性の重み付けされた組み合わせに基づく前記関心物体の物質特性のマップを生成するように、画像の空間周波数に依存して、前記スペクトル画像データ及び前記非スペクトル画像データに重みを付けることによって、前記スペクトル画像データ及び前記非スペクトル画像データから計算された前記物質特性を、空間周波数の関数として組み合わせるステップと、
を含む、方法。
【請求項5】
前記スペクトル画像データは、スペクトルトモシンセシスデータであり、及び/又は、前記非スペクトル画像データは、非スペクトルトモシンセシスデータである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記非スペクトル画像データを取得する前記ステップは、追加的な先験的前提及び/又は追加データ入力を使用するステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記スペクトル画像データ及び前記非スペクトル画像データから計算された前記物質特性を、空間周波数の関数として組み合わせる前記ステップは、空間周波数領域において少なくとも部分的に行われる、請求項4に記載の方法。
【請求項8】
前記スペクトル画像データ及び前記非スペクトル画像データから計算された前記物質特性を、空間周波数の関数として組み合わせる前記ステップは、空間領域において少なくとも部分的に行われ、フィルタカーネル、及び/又は、ローパス、バンドパス若しくはハイパスフィルタリングを用いた畳み込みを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項9】
空間周波数の関数として重み付けする前記ステップは、前記非スペクトル画像データの低空間周波部分と比べて、前記スペクトル画像データの低空間周波部分により強い重みを与え、前記スペクトル画像データの高空間周波部分と比べて、前記非スペクトル画像データの高空間周波部分により強い重みを与える、請求項4に記載の方法。
【請求項10】
前記スペクトル画像データ及び前記非スペクトル画像データから、位置の関数として物質特性を計算する前記ステップは、
嚢胞、腫瘍、又は、微小石灰化といった病変を特定する特性、
腺乳房組織及び脂肪乳房組織、又は、皮膚を特定する特性、並びに
前記関心物体内の造影剤の濃度、
のうちの少なくとも1つを特定する又は特徴付けるステップを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのプロセッサによって実行されるときに、前記少なくとも1つのプロセッサにX線撮像システムにおける定量的画像データ処理のための方法を実行させる、1つ以上の実行可能な命令で符号化された非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記方法は、
関心物体のスペクトル画像データを取得するステップと、
前記スペクトル画像データから、位置の関数として物質特性を計算するステップと、
前記関心物体の非スペクトル画像データであって、前記X線撮像システムのX線検出器において複数のエネルギー区間の各々で検出された光子カウント数の総和である非スペクトル画像データを取得するステップと、
前記非スペクトル画像データから、位置の関数として物質特性を計算するステップと、
計算された前記物質特性の重み付けされた組み合わせに基づく前記関心物体の物質特性のマップを生成するように、組み合わされた画像データを生成するための画像データの空間周波数に依存して、前記スペクトル画像データ及び前記非スペクトル画像データに重みを付けることによって、前記スペクトル画像データ及び前記非スペクトル画像データから計算された前記物質特性を、空間周波数の関数として組み合わせるステップと、
を含む、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項12】
前記スペクトル画像データは、スペクトルトモシンセシスデータであり、及び/又は、前記非スペクトル画像データは、非スペクトルトモシンセシスデータである、請求項11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項13】
前記方法は、追加的な先験的前提及び/又は追加データ入力を使用するステップを更に含む、請求項11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項14】
前記方法は、前記スペクトル画像データ及び前記非スペクトル画像データから計算された前記物質特性を、少なくとも部分的に空間周波数領域において空間周波数の関数として組み合わせるステップを更に含む、請求項11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項15】
前記方法は、前記スペクトル画像データ及び前記非スペクトル画像データから計算された前記物質特性を、フィルタカーネルを用いた畳み込みを使用して、少なくとも部分的に空間領域において空間周波数の関数として組み合わせるステップを更に含む、請求項11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項16】
前記方法は、前記非スペクトル画像データの低空間周波部分と比べて、前記スペクトル画像データの低空間周波部分により強い重みを提供するように空間周波数の関数として重み付けするステップと、前記スペクトル画像データの高空間周波部分と比べて、前記非スペクトル画像データの高空間周波部分により強い重みを提供するように空間周波数の関数として重み付けするステップとを更に含む、請求項11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項17】
前記方法は、病変を特定する特性、腺乳房組織及び脂肪乳房組織、又は、皮膚を特定する特性、並びに、前記関心物体内の造影剤の濃度のうちの少なくとも1つを特定する又は特徴付けることによって、前記スペクトル画像データ及び前記非スペクトル画像データから、位置の関数として物質特性を計算するステップを更に含む、請求項11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定量的画像データを処理する計算ユニット、X線撮像システム、定量的画像データ処理方法、コンピュータプログラム要素及びコンピュータ可読媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
臨床X線撮像、例えばマンモグラフィにおいて、定量的撮像は、リスク評価、検出、診断及び治療の向上のための入力として使用される組織といった様々な種類の物質の量を測定するために使用される。例えば定量的撮像を使用したボリュメトリック乳房密度の測定は、乳がん発症のリスクを評価し、マンモグラフィ効率を評価し、放射線量推定を向上させ、経時的に薬物療法の効果をモニタリングして、薬物用量を適応させることを可能にする。定量的撮像のマンモグラフィにおける別の応用は、より良い診断を提供するために、例えば嚢腫性病変や充実性病変である様々な病変の種類を区別することである。
【0003】
スペクトル撮像方法及び非スペクトル撮像方法を含む幾つかの定量的撮像方法が利用可能である。スペクトル撮像は、複数の光子エネルギースペクトル(例えば少なくとも2つの異なるエネルギースペクトル)において物体を撮像することを指す。国際特許公開WO2013/076662に、X線撮像におけるスペクトル画像処理方法が説明されている。所与の放射線量において、スペクトル撮像は、通常、非スペクトル撮像と比べて、高いノイズに関連付けられる。これは、1)利用可能な放射線量が幾つかのスペクトルに亘って分割され、2)スペクトル処理には、しばしば、様々なスペクトル間の差を取ることが含まれ、これは、ノイズを増加させる演算だからである。ノイズの増加は、通常、検出及び定量化できる構造のサイズの限界を低くする。スペクトル撮像とは対照的に、非スペクトル定量的撮像方法は、しばしば、先験的情報及び追加的前提、又は、コンピュータ断層撮影によって取得されたようなフル非スペクトル3D画像データに依存する。
【0004】
定量的撮像は、しばしば、大域レベルで適用され、例えば1つの画像又は乳房全体に対して単一値を報告する。しかし、例えば治療モニタリングのより優れた差別化のためにリスクが高まっている領域を見つけることや、腫瘍組織、嚢胞液及び造影剤を含む特定の物質の広がりといった局所的物質特性を分類又は定量化するために、例えば乳房全体の物質特性のマップである局所的定量的情報が有益である。しかし、スペクトル撮像を用いて得られる局所的定量的情報は、妥当な放射線量レベルで有用であるにはノイズが多過ぎる。非スペクトル撮像を用いて得られる定量的情報は、所与の放射線量においてノイズが少ないが、前提及び/又は先験的情報を生得的に必要とすることから、しばしば、スペクトル撮像と比べて、測定の精度全体が低くなる。
【0005】
米国特許出願公開第2007/147574A1号は、エネルギー積分(EI)データ測定値及びエネルギー弁別(ED)データ測定値を含む画像データセットを取得する方法について説明している。当該方法は、取得サイクル中に、EI測定データ及びED測定データを得るステップを含む。当該方法は次に、再構成の前、再構成中又は再構成の後に、EI測定データ及びED測定データを組み合わせるステップを含む。最後に、当該方法は、EI画像及び1つ以上のED成分画像のうちの1つ以上を得るために、元のデータセット又は組み合わせられたデータセットに再構成を行うステップを含む。
【0006】
国際特許公開WO2015/011587A1は、検査領域を横断する放射線を検出する検出器アレイを含む撮像システムについて説明している。検出器アレイは、少なくとも1組の非スペクトル検出器を含む。非スペクトル検出器は、検査領域を横断する放射線の第1のサブ部分を検出し、それを示す第1の信号を生成する。検出器アレイは更に、少なくとも1組のスペクトル検出器を含む。スペクトル検出器は、検査領域を横断する放射線の第2のサブ部分を検出し、それを示す第2の信号を生成する。撮像システムは更に、第1の信号及び第2の信号を処理して、ボリュメトリック画像データを生成する再構成器を含む。
【0007】
米国特許出願公開第2015/348258A1号は、組み合わせられた第3世代エネルギー積分コンピュータ断層撮影投影データ及び第4世代スペクトル分解コンピュータ断層撮影投影データを使用して画像を再構成する装置について説明している。当該装置は、エネルギー積分検出器からの投影データを表す第1の投影データを取得し、光子計数スペクトル弁別検出器からの投影データを表す第2の投影データを取得し、第1の投影データ及び第2の投影データを使用して、組み合わせられたシステム行列方程式を解くことによって、第1の組み合わせられたシステムベースの画像及び第2の組み合わせられたシステムベースの画像を再構成する処理回路を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、画像内の位置分解された定量的情報である局所レベルでのエンハンスされた定量的画像データを提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、独立請求項の主題によって解決される。更なる実施形態は、従属請求項及び以下の説明に組み込まれる。
【0010】
なお、以下に説明される本発明の態様は、計算ユニット、X線撮像システム、方法、コンピュータプログラム要素及びコンピュータ可読媒体にも適用される。
【0011】
本発明の第1の態様によれば、定量的画像データを処理する計算ユニットが提供される。計算ユニットは、受信ユニットと、処理ユニットとを含む。受信ユニットは、関心物体のスペクトル画像データを受信する。受信ユニットは更に、関心物体の非スペクトル画像データを受信する。処理ユニットは、スペクトル画像データから、位置の関数として物質特性を計算する。同様に、処理ユニットは、非スペクトル画像データから、位置の関数として物質特性を計算する。更に、処理ユニットは、スペクトル画像データから計算された物質特性と、非スペクトル画像データから計算された物質特性とを組み合わせる。
【0012】
本発明の上記第1の態様によれば、位置の関数としての物質特性の組み合わせは、処理ユニットによって、画像内の空間周波数に依存して、スペクトル画像データ及び非スペクトル画像データに重みを付けることによって、空間周波数の関数として物質特性を組み合わせることによって行われる。
【0013】
一実施形態によれば、スペクトル画像データから計算された物質特性と、非スペクトル画像データから計算された物質特性とを組み合わせることによって、処理ユニットは、非スペクトル画像データの低空間周波部分と比べて、スペクトル画像データの低空間周波部分により強い重みを与える。したがって、処理ユニットは更に、スペクトル画像データの高空間周波部分と比べて、非スペクトル画像データの高空間周波部分により強い重みを与える。
【0014】
本発明は、様々な定量的撮像方法の制限を解決するために、当該様々な定量的撮像方法、具体的にはスペクトル撮像及び非スペクトル撮像からの情報を組み合わせ、これにより、高められた分解能及び精度、最終的には向上された情報を得ることに着想している。具体的には、例えばトモシンセシス及び/又は非スペクトル2次元(2D)方法から得られた高空間周波情報は、スペクトル撮像から得られた低空間周波情報と組み合わされて、例えば物質特性のマップを作成するための局所的定量的撮像に使用できる高精度及び低ノイズデータがもたらされる。このようにすると、エンハンスされた定量的画像データを、局所的レベルで提供することができる。つまり、画像内の位置分解された定量的情報を提供することができる。
【0015】
スペクトル画像データは、関心物体を少なくとも2つの異なるX線エネルギースペクトルにおいて撮像し、様々な物質の減衰は、対応する様々なエネルギー依存性を有する相互作用機構の様々な組み合わせからなるという事実を利用することによって取得される。一例として、乳房組織といった軟組織の減衰は、主に光電吸収及びコンプトン散乱からなり、これは、翻って、組織の原子番号及び電子密度に依存する。これらの2つの成分から、それらの対応するエネルギー依存性を使用して、減衰全体へのそれぞれの寄与を抽出することによって、撮像された組織を、脂肪組織と線維−腺乳房組織といった2つの構成要素に分解することができる。例えばスペクトル画像データは、関心物体に少なくとも2つの異なるX線スペクトルを照射して、例えば高エネルギースペクトル画像及び低エネルギースペクトル画像が得られることによって取得される当該関心物体の少なくとも2つのX線画像から得られる。
【0016】
本発明の第2の態様によれば、エンハンスされた定量的画像情報を提供するX線撮像システムが提供される。当該システムは、上記態様及び上記実施形態による定量的画像データを処理する計算ユニットを含む。更に、システムは、スペクトル画像データ及び非スペクトル画像データを計算ユニットに提供する撮像ユニットを含む。X線撮像装置は更に、X線源と、上記撮像ユニットを含むX線検出器装置とを含む。X線源は、X線をX線検出器装置に向けて提供する。X線検出器装置は、スペクトル画像データを提供するために、少なくとも2つの異なるX線エネルギースペクトルを用いて放射線を検出する。例えばX線源は、第1の固定エネルギースペクトルを有する放射線を提供し、X線検出器装置は、当該放射線を、関心物体を通過した後に検出する。X線源は、次に、第1の固定エネルギースペクトルとは異なる第2の固定エネルギースペクトルを有する放射線を提供し、X線検出器装置は、放射線が関心物体を通過した後に、第2の固定エネルギースペクトルに対応する信号を検出する。非スペクトル画像データは、例えばX線源によって提供される少なくとも2つの異なるX線エネルギースペクトルに関するスペクトル画像データに亘る合計又は積分に関して、スペクトル画像データから導出される。非スペクトル画像データは、別個に提供されてもよい。例えば非スペクトル画像データを提供するために、X線源は、X線の追加のスペクトルを提供し、X線検出器装置は、当該放射線を、関心物体を通過した後に検出する。
【0017】
一実施形態によれば、X線撮像システムは、位相コントラスト画像、微分位相コントラスト画像、又は、暗視野画像を取得する。この場合、スペクトル画像データ及び/又は非スペクトル画像データは、位相コントラストデータ、微分位相コントラストデータ、又は、暗視野データである。
【0018】
一実施形態によれば、スペクトル画像データ及び/又は非スペクトル画像データは、X線の吸収に関する情報の代わりに又は加えて、関心物体を通過したX線の位相に関する情報を含む。当該情報は、位相コントラストと呼ばれる。また、幾つかの構成では、画像内の位置に関する位相の微分として取得され、この場合、当該情報は、微分位相コントラストと呼ばれる。
【0019】
一実施形態によれば、スペクトル画像データ及び/又は非スペクトル画像データは、X線の吸収に関する情報の代わりに又は加えて、物体の小角X線散乱特性に関する情報を含む。当該情報は、いわゆる暗視野画像を形成するために使用することができる。
【0020】
スペクトル画像データ及び非スペクトル画像データの取得は、例えばエネルギー分解光子計数検出器を用いて同時に行われてよい。後者の場合、スペクトル画像データは、特定のエネルギー区間における光子のカウント数を指し、非スペクトル画像データは、積分された、したがって、合計された/全体の光子カウント数データを指す。しかし、スペクトル画像データ及び非スペクトル画像データの取得は、例えば2つの異なるX線撮像システム又は2つの異なるX線撮像方法によって別々に行われてもよい。
【0021】
なお、本発明は、特に、2次元(2D)データ及び/又はトモシンセシスデータとして取得された画像データの向上に関する。しかし、フル3次元(3D)情報を有するコンピュータ断層撮影(CT)撮像は、本発明の範囲ではない。
【0022】
本発明の第3の態様によれば、定量的画像データ処理方法が提供される。当該方法は、関心物体のスペクトル画像データを取得するステップと、スペクトル画像データから、位置の関数として物質特性を計算する後続のステップとを含む。更に、関心物体の非スペクトル画像データが取得され、当該非スペクトルデータから、位置の関数として物質特性が計算される。最終的に、スペクトル画像データから計算された物質特性と、非スペクトル画像データから計算された物質特性とは、空間周波数の関数として組み合わされる。
【0023】
当然ながら、上記方法のステップは、異なる順序で行われてもよい。非スペクトル画像データが、スペクトル画像データの前に取得されても、スペクトル画像データ及び非スペクトル画像データが同時に取得されてもよい。更に、スペクトル画像データ及び非スペクトル画像データの処理、即ち、位置の関数として物質特性を計算することは、異なる順序で行われてもよい。例えば非スペクトル画像データが、スペクトル画像データの処理の前に処理されても、スペクトル画像データ及び非スペクトル画像データの処理が並列/同時に行われてもよい。
【0024】
一実施形態によれば、スペクトル画像データ及び非スペクトル画像データから計算された物質特性は、視覚表現として提供される。視覚表現は、例えば関心物体の構造全体を示し、また、様々な(下位)構造及び/又は物質を様々な色で表現する関心物体のマップによって与えられる。
【0025】
一実施形態によれば、スペクトル画像データ及び/又は非スペクトル画像データは、トモシンセシスデータである。トモシンセシスは、少なくとも180度の角度範囲から物体を撮像することによってフル3D情報を提供するCTとは対照的に、限られた角度範囲から物体を撮像することによる3D情報を提供する技術である。トモシンセシス取得は、しばしば、スクロール可能なスライスのスタックとして視覚化される。トモシンセシスにおける限られた角度範囲の結果、スライスの面内分解能とは対照的に、奥行き分解能が比較的悪くなる。
【0026】
一実施形態によれば、非スペクトル画像データは、スペクトル画像データの取得の一部として取得される。つまり、非スペクトル画像データは、スペクトル画像データの取得中に取得される。つまり、非スペクトル画像データは、スペクトル画像データから導出されるデータとして取得される。これは、光子計数検出器を使用して行うことができる。この場合、非スペクトル画像データは、光子の総カウント数を指す。しかし、画像データ取得は、光子計数検出器の使用に限定されない。非スペクトル部分を、スペクトルデータ取得の一部として取得するために、他のタイプの検出器を使用してもよい。他の検出器の例としては、サンドイッチ検出器が挙げられ、他の撮像構成の例としては、光子計数又は積分検出器との組み合わせで、kVp(ピークキロ電圧、X線管の加速電圧を指す)及び/又はX線フィルトレーションをスイッチングする間の複数回の照射である。
【0027】
一実施形態によれば、非スペクトル画像データを取得するステップは、追加的な先験的前提及び/又は追加データ入力を使用するステップを含む。例えば、このコンテキストにおいて、関心物体の形状モデル、画像の特定の場所における厚さ測定値又は既知の物質特性を使用することができる。例えば乳房密度が乳房内の線維−腺組織の割合量を指す乳房密度測定値の場合、圧迫パドルの高さを、場合によっては乳房形状モデルとの組み合わせで、非スペクトル画像を正規化するために使用し、これにより、当該画像を定量的にする。非スペクトル画像データに先験的情報を提供する別のオプションは、例えば脂肪乳房組織である1種類の物質しか含まない画像内の領域を探し、当該領域におけるピクセル値を画像の正規化に使用することである。画像内のヒストグラム情報を使用して、ピクセル値を、撮像される物体の特定の物理的態様に相関させることも可能である。
【0028】
一実施形態によれば、スペクトル画像データから計算された物質特性と、非スペクトル画像データから計算された物質特性とを、空間周波数の関数として組み合わせるステップは、例えば画像のフーリエ変換によって規定される空間周波数領域において少なくとも部分的に行われる。
【0029】
別の実施形態によれば、スペクトル画像データから計算された物質特性と、非スペクトル画像データから計算された物質特性とを、空間周波数の関数として組み合わせるステップは、空間領域において少なくとも部分的に行われる。これは、ローパス、バンドパス若しくはハイパスフィルタリングによる及び/又はフィルタカーネルを用いた畳み込みのステップを含んでもよい。
【0030】
本発明の上記第3の態様によれば、スペクトル画像データから計算された物質特性と、非スペクトル画像データから計算された物質特性とを組み合わせるステップは、画像の空間周波数に依存して、対応するデータに重みを付けるステップを含む。このステップでは、非スペクトル画像データの低空間周波部分と比べて、スペクトル画像データの低空間周波部分により強い重みを与える重み関数が使用される。更に、重み関数は、スペクトル画像データの高空間周波部分と比べて、非スペクトル画像データの高空間周波部分により強い重みを与える。
【0031】
重み関数は、線形重み関数であってよい。スペクトルデータ及び非スペクトルデータから物質特性を計算するステップにおいて、嚢胞、腫瘍、又は、微小石灰化といった病変を特定又は特徴付ける特性が、特定及び/又は定量化される。代わりに又は更に、腺乳房組織及び脂肪乳房組織、又は、皮膚を特定する特性が、特定及び/又は定量化されるか、又は、画像データが取得される際に関心物体内に使用される造影剤の総ボリューム又は濃度が、特定及び/又は定量化される。
【0032】
本発明の第4の態様によれば、上述され、以下にも説明される方法ステップを行うように適応されたコンピュータプログラム要素が開示される。
【0033】
本発明の第5の態様によれば、本発明の上記態様によるプログラム要素を含むコンピュータ可読媒体が開示される。
【0034】
本発明の主旨は、スペクトル画像データからの情報と非スペクトル画像データからの情報とを組み合わせて、特にマンモグラフィといった臨床的応用において、局所的撮像における精度及び分解能を高めることであることが分かるであろう。
【0035】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に説明される実施形態から明らかとなり、また、当該実施形態を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
本発明の例示的な実施形態は、次の図面を参照して以下に説明される。
【0037】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態による計算ユニットを有するX線撮像システムを示す。
【
図2】
図2は、本発明の例示的な実施形態による計算ユニットを示す。
【
図3】
図3は、本発明の一実施形態によるエンハンスされた定量的画像データ処理の例示的な方法の基本ステップを示す。
【
図4】
図4は、本発明の一実施形態による方法の更なる例を示す。
【
図5A】
図5Aは、本発明の一実施形態による方法を用いずに得られたボリュメトリック乳房密度マップを示す。
【
図5B】
図5Bは、本発明の一実施形態による方法を用いて得られたボリュメトリック乳房密度マップを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、例えば光子カウンタを使用するマンモグラフィシステムによって与えられるX線撮像システム1を示す。X線撮像システム1は、垂直支持構造体12に取り付けられるX線源10を含む。更に、X線検出器装置20が、垂直支持構造体12に取り付けられ、第1の支持面22を含む。患者は、この第1の支持面22上に、例えば乳房を置くことができる。調節可能な圧迫プレート又は圧迫パドル24が、第1の支持面22の上方に配置され、これにより、乳房が圧迫プレート24と第1の支持面22との間に配置される。圧迫プレートは、第1の支持面と圧迫プレートの乳房接触面との間の距離を適応させるために、二重矢印14によって示されるように、高さが調節可能である。X線検出器装置は、以下に説明されるX線撮像システムの計算ユニットに、スペクトル画像データだけでなく非スペクトル画像データも提供する撮像ユニットを含む。更に、X線検出器装置も、患者の高さに適切に合うように、二重矢印16によって示されるように、高さが調節可能である。
【0039】
X線撮像システム1は更に、データ及び供給接続部30を含む。これらの接続部によって、X線検出器装置、具体的には、撮像ユニットを用いて取得された未加工画像データが、計算ユニットCに提供される。計算ユニットCは、例示的に
図1では、ハウジング構造体32内に含まれている。なお、データ及び供給接続部は、例えばWLAN又はブルートゥース(登録商標)接続といったように有線及び/又は無線接続部であってよい。更に、画像データは、CD、DVD、携帯フラッシュドライブ又は携帯ハードディスクドライブといったコンピュータ可読媒体に記憶され、また、例えば計算ユニットCに接続されたCD若しくはDVDドライバ又はUSBポートといった適切なデータ提供ユニットによって、計算ユニットCに提供されてよい。
【0040】
計算ユニットCは、ディスプレイハウジング構造体34内に含まれる表示ユニットDに接続されてよい。表示ユニットDは、計算ユニットCによって処理された定量的画像データの視覚表現のために調整される。例えば表示ユニットDによって視覚化される定量的画像データは、X線検出器装置によって取得され、計算ユニットCによって処理されたスペクトル画像データ及び非スペクトル画像データから計算される乳腺含有率(glandularity)マップとも呼ばれるボリュメトリック乳房密度マップ、又は、任意の他の物質の組み合わせのマップであってよい。
【0041】
なお、本発明は、例えば生検システムといったように、患者が顔を下に向けた状態で支持構造体上に横たわるシステムといった他のタイプのマンモグラフィX線撮像システムにも関する。更に、X線撮像システムは更に、X線源及びX線検出器装置が取り付けられる更なる可動構造体を含んでもよい。これにより、例えば画像フィールドに亘って細い検出器を走査することによって画像が取得されるか、及び/又は、X線管が円弧に沿って動かされて、複数の角度から画像データが得られる。
【0042】
更に、本発明は、マンモグラフィシステムに限定されない。X線システムは、スペクトル画像データ及び非スペクトル画像データを提供する任意のタイプの2D又はトモシンセシスX線撮像システムであってよい。
【0043】
図1に示される構成は、概略的且つ例示的である。本発明によるX線撮像システムは、例えば撮像ユニットを含むX線検出器装置、計算ユニット及び表示ユニット用の共通ハウジングを有してもよい。
【0044】
図2は、本発明の例示的な実施形態による計算ユニットCを概略的に示す。計算ユニットは、受信ユニット31と、処理ユニット33とを含む。受信ユニットは、撮像ユニット26からスペクトル画像データ及び非スペクトル画像データを受信する。従って、撮像ユニット26は、
図1に例示的に示されるX線検出器装置内に含まれていてよい。
図2における受信ユニット31によってスペクトル画像データ及び非スペクトル画像データが受信される順序は、任意である。受信は、連続であっても同時であってもよい。受信ユニット31は、次に、スペクトル画像データ及び非スペクトル画像データを処理ユニット33に供給する。なお、受信ユニット31は、前に取得され、対応する画像データを受信ユニット31に提供するために計算ユニットに接続されていてよい記憶媒体に記憶されているスペクトル画像データ及び/又は非スペクトル画像データを受信してもよい。処理ユニット33は、スペクトル画像データ及び非スペクトル画像データから、位置の関数として材料特性を計算する。これは、同時に行われても連続して行われてもよい。処理ユニットによって計算が行われる順序は任意である。処理ユニット33は更に、空間周波数の関数として、スペクトル画像データ及び非スペクトル画像データから計算された物質特性を組み合わせる。組み合わされた結果は、表示ユニット34に提供される。任意選択的に、表示ユニット34は、空間周波数の関数としての物質特性の組み合わせられた結果を表示する。
【0045】
図3に関して、定量的画像データを処理する例示的な方法の基本ステップについて以下に説明する。なお、X線検出器装置は、
図1に示される計算ユニットCと合わせて、以下に説明される方法ステップを行うように構成される。方法は、次の基本ステップを含む。第1のステップ110において、関心物体のスペクトル画像データが取得される。関心物体は、患者の乳房又はその一部であってよい。スペクトル画像データは、例えば光子計数検出器を含むX線検出器装置によって取得されてよい。スペクトル画像データは、例えばX線管内で複数の加速電圧及び/又は複数のフィルトレーションを使用することによって得られる様々なX線エネルギースペクトルで関心物体を複数回照射することによって取得される。或いは、スペクトル画像データは、1つのX線スペクトルを使用する1回の照射と、検出された光子を、それらの対応するエネルギーに応じて幾つかのビンに分けるエネルギー感応検出器とによって取得される。これらの2つのアプローチを組み合わせること、即ち、2つの異なるスペクトルと、エネルギー感応検出器とを使用してスペクトル情報を更に高めることも想到可能である。次の方法ステップ112において、スペクトル画像データから、位置の関数として物質特性が計算される。位置は、物理的な空間、例えば2D又は3D座標における位置を指す。時間次元が任意選択的に追加されてもよい。更に、方法ステップ114において、関心物体の非スペクトル画像データが取得される。ステップ116において、これらの非スペクトル画像データから、位置の関数として物質特性が計算される。
【0046】
なお、スペクトル画像データ及び/又は非スペクトル画像データは、X線の吸収に関する情報の代わりに又は加えて、関心物体を通過したX線の位相に関する情報を含む。このような位相コントラスト情報は、画像内の位置に関して位相の微分として取得される。後者の場合、当該微分は、微分位相コントラストと呼ばれる。更に、スペクトル画像データ及び/又は非スペクトル画像データは、X線の吸収に関する情報の代わりに又は加えて、物体の小角X線散乱特性に関する情報を含む。当該情報を使用して暗視野画像が形成される。
【0047】
スペクトルデータ及び非スペクトルデータの取得は、逆の順序であっても、非スペクトルデータがスペクトルデータから導出される単一のステップに組み合わされてもよい。方法ステップ118において、スペクトル画像データ及び非スペクトル画像データから計算された物質特性は、空間周波数の関数として組み合わされる。空間周波数は、ここでは、画像内の構造のサイズを表す。空間周波数は、基本的に、画像の正弦波成分が単位距離当たりで繰り返す頻度の尺度である。
【0048】
オプションの方法ステップ120において、スペクトル画像データ及び非スペクトル画像データから計算される物質特性の視覚表現が提供される。
【0049】
ステップ110において取得されるスペクトルデータは、スペクトル光子計数検出器を用いて取得されてよい。この場合、スペクトル検出器は、例えば低エネルギー(例えばスペクトルの下半分)カウント数及び高エネルギー(例えばスペクトルの上半分)カウント数を生成し、したがって、各画像取得において、2つの画像データセットが生成される。フルスペクトルの総(非スペクトル)カウント数は、単に、低エネルギーカウント数と高エネルギーカウント数との合計である。低エネルギーデータセット及び高エネルギーデータセットそれぞれは、1ピクセル当たりに少ないカウント数を有し、したがって、総カウント数データと比べて量子ノイズが高い。総カウント数データは、次に、最大信号対ノイズ比を有する画像を生成する。その一方で、低エネルギーデータ及び高エネルギーデータそれぞれは、異なる平均エネルギーと、総カウント数画像よりも低い信号対ノイズ比を有する画像を生成する。次に、低エネルギーカウント数画像と、高エネルギーカウント数画像とは組み合わされて、スペクトル画像が生成される。この手順によって得られるスペクトル画像は、総カウント数画像と比べてノイズが増加する。これは、1)低エネルギーカウント数画像及び高エネルギーカウント数画像それぞれにおける信号対ノイズ比が低く、2)スペクトル処理は、しばしば、2つの画像間の差を取ることに等しく、これは、画像信号が縮小される間に、2つの画像のノイズを基本的に増大する演算だからである。
【0050】
例示的な実施形態によれば、方法ステップ110におけるスペクトルデータは、スペクトルトモシンセシスデータとして取得される。スペクトルトモシンセシスデータは、光子計数検出器若しくは例えばサンドイッチ検出器、kVpスイッチング、フィルタスイッチング、又は、複数回の照射を使用して取得される。
【0051】
方法ステップ114において取得される非スペクトルデータは、別に取得された非スペクトル画像に関連するデータであるか、又は、非スペクトル画像は、スペクトル画像取得の一部として取得される総カウント数データであってよい。
【0052】
図3による例示的な方法は、非スペクトル画像データの取得において、追加の先験的前提及び/又は追加データ入力を使用するサブステップ115である更なるオプションの方法ステップを含んでもよい。例えば非スペクトル画像データは、例えば圧迫パドルの位置に関連付けられる圧迫高さ、又は、光学センサ若しくは他のセンサによって決定される乳房の厚さ及び/若しくは形状といったといった乳房の独立した厚さ測定値である外部センサからの入力を使用して正規化されてもされなくてもよい。非スペクトル画像データを正規化するための追加情報を提供する他の外部センサには、圧迫力に関連するセンサ、圧迫パドル又は乳房支持体上の圧力センサ、又は、超音波センサ、光学センサ、電波センサ若しくはレーダーセンサといった任意の非放射X線センサが含まれる。更に、均質領域の検出、乳房高さモデル、ヒストグラム解析、セグメンテーション若しくはクラスタリング演算、又は、ピクセル値を撮像された物体の物理特性に変換することを目的とした任意の他の演算を含む画像処理動作が、非スペクトル画像データに行われても行われなくてもよい。
【0053】
一実施形態によれば、ステップ114における非スペクトルデータは、トモシンセシスデータである。トモシンセシスでは、様々な組織の種類の区別は、スライス毎の画像ピクセル値のセグメンテーションによって、3次元(3D)で達成可能である。奥行き方向において平均化することによって、ピクセル毎の2次元(2D)組織マップが計算される。しかし、トモシンセシスは、限られた3D情報しか提供しない。これは、取得の角度範囲が限られ、面内分解能が、通常、奥行き分解能よりもはるかによいからである。更に、奥行き分解能は、面内範囲が小さい構造により好ましく、大きい構造についてはより悪い。したがって、3Dセグメンテーションの精度は、点広がり関数の非対称形状によって、構造の面内(2D)範囲に依存する。セグメンテーションは、高空間周波数に対応する小さい構造にしか有効ではない。低空間周波数に対応する大きい構造は、奥行き方向において不鮮明となり、これらの構造からの寄与は、これらの構造が、高さ方向におけるそれらの実際の範囲に対応するよりも多数のスライスを占有するので、過大評価される。極限の例は、高さ情報がなく、スライスのいずれにもセグメント化することができない面内視野全体を占有する構造である。
【0054】
ステップ114において取得される非スペクトル画像データは、CアームCBCT(コーンビームコンピュータ断層撮影)システムを用いた部分回転によって取得されるトモシンセシスデータであってよい。この場合、ステップ110において取得されるスペクトル画像データは、例えば交互のフィルタ及び/又はkVpを用いた複数の走査によって取得することができる。
【0055】
スペクトル画像データから計算された物質特性と、非スペクトル画像データから計算された物質特性とは、腺乳房組織及び脂肪乳房組織といった正常な乳房組織と皮膚とを含む。更に、物質特性は、ヨードといった造影剤を含む。コントラストエンハンスド撮像では、本発明は、ノイズを低減することによって、ヨード濃度の測定を向上させることができる。本発明は更に、乳房内のヨードの可視性も向上させ、血管及び小さい構造内にヨードが行き渡ることを増進することができる。更に、又は、上記物質特性の代わりに、物質特性には、嚢胞、腫瘍又は微小石灰化といった乳房の病変が含まれてよい。
【0056】
図4に、本発明による方法の更なる例示的な実施形態が示される。
図4は、非スペクトル画像データが、方法ステップ111におけるスペクトル画像データの取得の一部として取得される場合を示している。
図3に示される方法ステップのコンテキストにおいて説明されるように、また、
図4に示される例示的な実施形態の場合において、非スペクトルデータの取得は、方法ステップ115によって示されるように、追加的な先験的情報及び/又は追加データ入力を使用することを含む。例は、
図3の説明のコンテキストにおいて与えられている。方法ステップ112において、方法ステップ111において取得されたスペクトル画像データから、位置の関数として物質特性が計算される。非スペクトル画像データは、ステップ111において、スペクトル画像データと共に取得されるので、ステップ116において、非スペクトルデータは、処理され、物質特性がこのデータから計算される。この方法ステップ116は、方法ステップ112と並列に、前に又は後に行われてよい。最終的に、ステップ112においてスペクトル画像データから計算される物質特性と、ステップ116において非スペクトル画像データから計算される物質特性とは、ステップ118において組み合わされる。
図3のコンテキストにおいて既に述べられているように、オプションの方法ステップ120が、
図4における方法ステップ118の後に続いてもよい。オプションの方法ステップ120は、スペクトル画像データ及び非スペクトル画像データからの組み合わされた物質特性の視覚表現の調整を指す。
【0057】
図3及び
図4を参照するに、方法ステップ118は、それぞれ、次のサブステップを更に含んでもよい。スペクトル画像データ及び非スペクトル画像データから計算される物質特性を組み合わせる方法ステップ118は、空間周波数に依存して、スペクトル画像データ及び非スペクトル画像データに重みを付けるサブステップwを含んでもよい。重み付けは、スペクトル画像データの低空間周波部分が、非スペクトル画像データの低空間周波部分よりも強い重みが付けられるように行われる。更に、重み付けは、スペクトル画像データの高空間周波部分と比べて、非スペクトル画像データの高空間周波部分により強い重みを与えることができる。例えば本発明の一実施形態では、重み付けは、低空間周波数については、スペクトル画像データに、高空間周波数については、非スペクトル画像データにより強い重み付けをすることを考慮する線形重み関数を用いて行われる。
【0058】
図3及び
図4における方法ステップ118を更に参照するに、空間周波数の関数としてスペクトル画像データ及び非スペクトル画像データから計算される物質特性の組み合わせは、空間周波数領域において行うことができる。この場合、次の関係を使用して、スペクトル画像データ及び非スペクトル画像データから、組み合わされた定量的画像データが取得される。
I
enhanced=F
−1(w
spectral(f)F(I
spectral(x))+w
non−spectral(f)F(I
non−spectral(x)))
I
enhancedは、スペクトル画像データと非スペクトル画像データとを組み合わせて得られるエンハンスされた定量的画像データを示す。更に、I
spectralは、スペクトル画像データを示し、I
non−spectralは、非スペクトル画像を示す。関数w
spectral及びw
non−spectralは、空間周波数に依存する重み関数を示し、F及びF
−1は、それぞれ、フーリエ変換及び逆フーリエ変換である。上記式による重み付けは、空間領域における次の計算:
I
enhanced=v
spectral(x)
*I
spectral(x)+v
non−spectral(x)
*I
non−spectral(x)
と数学的に等しい。後者の場合、v
spectral(x)=F
−1(w
spectral(f))及びv
non−spectral(x)=F
−1(w
non−spectral(f))は、フィルタカーネルであり、*は、畳み込み演算子を示す。なお、2つの上記計算は、数学的に等価である。最終結果の差は、ソフトウェアの実装の数値精度及び品質によるものであり、方法の選択は、ソフトウェアを実行する速度といった実用性に依存する。なお、例えばウェーブレット方法及びガウス/ラプラシアンピラミッド方法といった空間周波数及び構造サイズの関数として画像を処理する他の方法も存在する。本発明は、任意の特定の処理方法に限定されない。
【0059】
図5A及び
図5Bは、上記実施形態の幾つかの実施の利点を示す。
図5A及び
図5Bは共に、ボリュメトリック乳房密度又は乳腺含有率マップ、即ち、ピクセル毎の全体厚さに対する腺組織の厚さの割合を示す。
図5Aの場合、画像を腺の厚さと脂肪の厚さとに分解することによって、スペクトルトモシンセシスデータから計算された乳腺含有率のマップが示される。当該マップは、構造全体を良く示しているが、詳細の度合いは限られている。
図5Bにおけるマップをもたらす計算の場合、スペクトル画像データ及び非スペクトル画像データの両方が使用され、上述のとおりに、本発明の実施形態に従って組み合わされる。具体的には、非スペクトルデータは、腺構造を見つけ、これらを脂肪背景から分けるために、スライス毎に3Dでトモシンセシスボリュームをセグメント化することによって得られた。セグメンテーションは、小さい構造についてはうまくいったが、大きい構造については、限られた奥行き分解能によって、信頼できなかった。スペクトル画像データ及び非スペクトル画像データは、次に、空間周波数を用いた重み付けによって、上記重み付けステップwに従って、スペクトルデータの低空間周波部分と非スペクトル画像データの高空間周波部分とがより強い重みが与えられるように組み合わせられる。スペクトル画像データから得られる
図5Aにおける画像と比較すると、スペクトル画像データ及び非スペクトル画像データの組み合わせから得られる
図5Bにおける画像は、ノイズを増加させることなく、詳細の度合いが高い。後者の向上された又は高められた画質は、本発明の1つの具体的な目的である。なお、完全を期すために、
図5A及び
図5Bにおける画像は、大きいピクセルサイズ(0.4×0.4mm)で処理されている。
【0060】
本発明は、図面及び上記説明において詳細に例示及び説明されたが、当該例示及び説明は、例示であって、限定と解釈されるべきではない。本発明は、開示された実施形態に限定されない。開示された実施形態の他の変形態様は、図面、開示内容及び添付の請求項の検討から、請求項に係る発明を実施する当業者によって理解され、実施される。
【0061】
請求項において、「含む」との用語は、他の要素又はステップを除外するものではなく、また、「a」又は「an」との不定冠詞も、複数形を除外するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に記載される幾つかのアイテムの機能を果たしてもよい。請求項における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。