【課題を解決するための手段】
【0006】
このように、本発明の第一の態様は、以下を具備している、タッチ制御グレージング、特に乗物用の、特に自動車用のタッチ制御グレージングに関する:
−好ましくは鉱物ガラスの、乗物(自動車)用の場合には好ましくは湾曲している、第一の透明グレージング;
−第一の透明グレージングの第一の主面に適用されている、導電層、好ましくは、タッチ制御グレージングの透明な領域における場合、又は任意選択的に、第一の主面若しくは第二の主面上の、エナメル層等の隠蔽層を有する(局所的な)周囲領域における場合には、透明な(視認を可能とする)導電層;
−導電層に作られているタッチ感知構造を具備している、特に交流電源により給電される、容量性タッチ感知装置、ここで、タッチ感知構造は、接地電極及びタッチ感知領域を有するタッチ電極を具備しており;タッチ電極は、接地電極により包囲されており、タッチ電極と接地電極とは、分離線により互いに電気的に絶縁されている、
−導電層に配置されており、タッチ感知領域を表示するための、及び好ましくは、機能要素、好ましくはタッチ制御グレージングと連動している機能要素、特に(第二の主面側よりも寧ろ)第一の主面側において、機能要素の状態(オン/オフ又はそのレベル)を表示するための発光ダイオード、ここで、発光ダイオードは、タッチ感知領域に少なくとも部分的に面している発光面を有しており、発光ダイオードは、接地電極に電気的に接続されている第一の電極領域である第一の端子、及びタッチ感知領域に電気的に接続されている第二の電極領域である第二の端子を有する。
【0007】
本発明においては、透明との用語は、可視スペクトル領域に含まれる光の透過率が、好ましくは70%以上、80%以上、又は90%以上であることを意味する。しかしながら、グレージングを通した視認性が推奨されないときには、光透過率は、より低くてよく、例えば1%超又は5%超であってよい。
【0008】
それによれば、発光ダイオード及びタッチ感知構造は、導電層とともに追加の層を配列することを必要としないように配置されており、それによって、製造プロセスを単純化している。更には、タッチ制御グレージングの厚さを低減させることができる。タッチ感知構造と発光ダイオードとの間に配置されている他の層は存在していない。更には、この構成においては、部材、例えばコネクター又はワイヤーが、以前よりも少ない。このことは、製造プロセスの単純化と相まって、製造コストの低減をもたらす。
【0009】
第一の透明グレージングは、好ましくはプレストレスされているか、部分的にプレストレスされているか、又はプレストレスされていないガラス、特に好ましくは平坦なガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、又は透明なプラスチック、特にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、及び/又はこれらの組合せを含有している。
【0010】
第一の透明グレージングの厚さは、広範囲で変更することができ、かつそれによれば、理想的には個別的事例の要求に適合させることができる。第一の透明グレージングは、好ましくは10mm以下、8mm以下、特に好ましくは5mm以下、より特に、自動車用途(特に陸上・路上の乗物)については、3mm未満、1.1mm未満の厚さを有する。厚さが1.1mm未満である場合には、この第一の透明グレージングは、強化されていてよく、特に化学的に強化されていてよい。この第一の透明グレージングは、好ましくは第二の透明グレージングがより厚い厚さを有する状態である、積層グレージングの内部グレージングとなり得る。第一の透明グレージングの面積は、広範囲で変更することができ、例えば100cm
2〜18m
2である。好ましくは、第一の透明グレージングは、自動車グレージング、並びに構造及び建築グレージングのために一般的であるように、400cm
2〜4m
2の面積を有する。
【0011】
タッチ制御要素は、タッチ感知装置により制御する機能要素を具備していてよく、機能要素が、一式の無機発光ダイオード等の光源、加熱要素、懸濁粒子装置、液晶装置、エレクトロクロミック装置、表示装置、乗物(屋根、トランク、ドア等)又は建物の施錠システム、乗物のワイパー又は空調装置の中から選択される。
【0012】
発光ダイオードは、機能要素、好ましくはタッチ制御グレージングと連動している機能要素の状態を表示することが可能であり、特に第一の主面側に表示することができる。
【0013】
建物の場合には、特に第一の透明グレージングは、単独で(パーティション等)用いられ得るか、又は乗物の屋根(例えばポリカーボネート屋根等のプラスチック屋根)となり得るか、又は乗物のリアウィンドウ若しくはサイドライトとなり得る。第一の透明グレージングは、可撓性(プラスチック箔又は薄いガラスシート)であってもよく、又は可撓性でなくてもよい。この第一の透明グレージングは、複層の絶縁グレージング、通常は二重グレージングユニット又は三重グレージングユニットの一部ともなり得る。この第一の透明グレージングは、内部グレージングであることが好ましい。
【0014】
この第一の透明グレージングは、複層の絶縁グレージング、通常は冷蔵庫のドアの二重グレージングユニットの一部となり得る。
【0015】
好ましい実施態様においては、特に乗物のフロントガラス若しくは屋根若しくはサイドウィンドウ、又は建物のドア若しくは窓を作るために構成されている、タッチ制御グレージングは、熱可塑性材料製の中間層を介して第一の透明グレージングに積層されている、好ましくは鉱物ガラス製の、第二の透明グレージングを具備している積層グレージングであり、第一の透明グレージングが、第一の主面に対向している第二の主面を有しており、第二の透明グレージングが、第一の主面、及び積層されている層の側の第一の主面に対向している第二の主面を有しており、導電層が、第一の透明グレージングの第一の主面と第二の透明グレージングの第二の主面との間に配置されている。
【0016】
建物の場合には、積層グレージングは、複層の絶縁グレージング、通常は二重グレージングユニット又は三重グレージングユニットの一部であってもよい。この第一の透明グレージングが最内のグレージングであることが好ましい。
【0017】
乗物は、個々の路上・陸上の乗物(車)、水による(ボート)、陸による(トラック、バス、路面電車、鉄道車両)、又は空による(航空機)輸送用の乗物であってよい。
【0018】
本発明は、(陸上の、路上の)乗物のフロントガラス若しくは屋根若しくはサイドウィンドウ(特に熱源又は光源である機能要素のための)、又は建物のドア若しくは窓のために好ましい。
【0019】
特異的には、タッチ制御グレージングは、特に乗物のフロントガラス若しくは屋根、又は建物のドア若しくは窓を作るために構成されており、タッチ制御グレージングは、熱可塑性材料の中間層を介して第一の透明グレージングに積層されている、第二の透明グレージングを具備している積層グレージングである。導電層は、第一の透明グレージングと第二の透明グレージングとの間に配置されている。第一の透明グレージングは、第一の主面に対向している第二の主面を有しており、第一の透明グレージングの第二の主面は、乗物又は建物の内部を向くことを意図している。第二の透明グレージングは、乗物又は建物の外部を向くことを意図している第一の主面、及び第一の主面に対向する第二の主面を有している。
【0020】
中間層は、好ましくは少なくとも1つの熱可塑性樹脂、好ましくはポリビニルブチラール(PVB)、エチレンビニルアセテート(EVA)、及び/又はポリエチレンテレフタレート(PET)を含有している。しかしながら、熱可塑性中間層は、例えばポリウレタン(PU)、ポリプロピレン(PP)、ポリアクリレート、ポリエチレン(PE)、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリアセテート樹脂、注型樹脂、アクリレート、フッ素化エチレンプロピレン、ポリフッ化ビニル、及び/又はエチレンテトラフルオロエチレン、又はこれらの共重合体若しくは混合物を含有していてもよい。熱可塑性中間層は、上下に配置されている1又は複数の熱可塑性フィルムで作られており、1つの熱可塑性フィルムの厚さは、好ましくは1mm以下、特に0.25mm以上又は0.5mm以上で1mm以下又は0.9mm以下、典型的には0.4mm付近又は0.7mm付近である。
【0021】
陸上の乗物については、中間層は、好ましくはポリビニルブチラール(PVB)である。屋根又はサイドウィンドウ又はフロントガラスについては、中間層は、着色されているか又はされていない吸音PVBであり得る。フロントガラスについては、中間層は、着色されているか又はされていない、吸音又は非吸音の楔形PVBであり得る。
【0022】
第二の透明グレージングは、プレストレスされているか、部分的にプレストレスされているか、又はプレストレスされていないガラス、特に好ましくは平坦なガラス、フロートガラス、石英ガラス、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、又は透明なプラスチック、特にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、及び/又はこれらの組合せを含有している。第二の透明グレージングは、好ましくは10mm以下、8mm以下、特に好ましくは5mm以下、より特に、自動車用途(特に車)については、3mm未満の厚さを有する。この第二の透明グレージングは、強化されていてよい。第一の透明グレージングと同様に、第二の透明グレージングの面積は、広範囲で変更することができ、例えば100cm
2〜18m
2である。好ましくは、第二の透明グレージングは、自動車グレージング、並びに構造及び建築グレージングのために一般的であるように、400cm
2〜4m
2の面積を有する。同一のサイズを有する第一の及び第二のグレージングを選択することが好ましい。
【0023】
例として、(陸上の、路上の、輸送用の…)乗物のフロントガラスのためのタッチ制御積層グレージングは、以下を具備している:
−任意選択的に透過性であり、高透過性であり、又は、特に灰色若しくは緑色に着色されており、かつ好ましくは湾曲している、鉱物ガラスで作られており、外部グレージングペインを作っており、それぞれS1及びS2と称される上記の第一の及び第二の主面を有する、好ましくは最大で2.5mm、最大で2mm、特に1.9mm、1.8mm、1.6mm、1.4mm、又は最大で1.3mm若しくは最大で1mmの厚さの、第一のグレージング;
−任意選択的に透過性であり、高透過性であり、又は、特に灰色若しくは緑色に着色されており、好ましくは熱可塑性ポリマー材料、更に良いのはポリビニルブチラール(PVB)で作られている、最大で1.8mm、更に良いのは,最大で1.2mm、最大で0.9mm(更に良いのは少なくとも0.38mm、少なくとも0.5mm)の厚さの、特に第一のグレージングの端面から最大で2mm後退しており、かつ第二のグレージングの端面から最大で2mm後退している、積層中間層;並びに
−好ましくは湾曲しており、かつ好ましくは透過性であり、又は高透過性であり、又は着色されている鉱物ガラスで作られており、内部グレージングペインを作っており、それぞれS3及びS4(最も内側の面)と称される上記の主面を有しており、好ましくは第一のグレージングの厚さよりも薄い、最大で2mm、特に1.9mm、1.8mm、1.6mm、1.4mm又は最大で1.3mm又は最大で1mmの厚さの、第二のグレージング、ここで、第一の及び第二のグレージングペインの合計の厚さは、好ましくは厳密に4mm未満、3.7mm未満であり、表面S2及びS3は、積層グレージングユニットの内面である。
【0024】
タッチ制御積層グレージングは、(路上の、陸上の)乗物の(湾曲しており四分された窓を包含している)サイドウィンドウともなり得る。
【0025】
本発明によるタッチ制御グレージングの一実施態様においては、発光ダイオードは、分離線をまたいで配置されている。
【0026】
好ましい実施態様においては、タッチ感知領域へと突出している接地経路を含むようにして、分離線がパターン形成されている。接地経路は、分離線の第一の部分により画定されている。発光ダイオードは、分離線の第一の部分をまたいで配置されており、発光ダイオードの第一の端子が、接地経路に電気的に接続されている。
【0027】
タッチ感知領域は、所与の幅を有している。好ましくは、接地経路は、タッチ感知領域の幅以下の長さを有する。
【0028】
好ましくは、タッチ感知領域は、中心点に関して対称な形状を有しており、発光ダイオードは、好ましくは(実質的に)中心点をまたいで配置されている。
【0029】
本発明による容量性タッチ制御グレージングのより好ましい実施態様においては、導電層は、加熱領域を作るように構成されており、タッチ感知構造は、分離線(別の分離線)により加熱領域から電気的に絶縁されている。タッチ感知構造及び加熱領域は、同一の導電層の一部である。かかる配置は、特に製造するのが容易かつ経済的である。
【0030】
分離線の幅は、好ましくは30μm〜200μm、特に好ましくは70μm〜140μmである。かかる薄い分離線は、安全かつ十分に高い電気絶縁性を可能とし、同時にタッチ制御グレージングを通した視認を僅かにのみ阻害するか、又は全く阻害しない。分離線の製造は、好ましくはレーザーパターニング又は化学的若しくは物理的除去により行う。
【0031】
有利には、加熱領域は、加熱電流のための電流経路がブスバーの間に作られるように電圧源に接続することを意図している、少なくとも2つのブスバーに接続されている。かかる構成は、例えば国際公開第2015162107号パンフレットから公知である。
【0032】
導電層は、好ましくは透明導電性コーティングを含有している。本発明による導電層は、例えば独国実用新案第202008017611号公報、欧州特許出願公開第0847965号明細書、又は国際公開第2012/052315号明細書から公知である。導電層は、典型的には1つ又は複数、例えば2つ、3つ又は4つの導電性の機能層を含有している。機能層は、好ましくは、少なくとも1つの金属、例えば、銀、金、銅、ニッケル及び/若しくはクロム、又は金属合金を含有している。機能層は、特に好ましくは少なくとも90重量%の金属、特に少なくとも99.9重量%の金属を含有している。機能層は、金属合金用の金属で作られていてもよい。機能層は、特に好ましくは、銀又は銀含有合金を含有している。かかる機能層は、特に有利な導電性、及び同時に可視スペクトル範囲における高い透過率を有する。機能層の厚さは、好ましくは5nm〜50nm、特に好ましくは8nm〜25nmである。機能層の厚さについてのこの範囲においては、可視スペクトル範囲における有利に高い透過率、及び特に有利な導電性が得られる。
【0033】
典型的には、少なくとも1つの誘電層は、各々の場合において、導電層の2つの隣接する機能層の間に配置されている。好ましくは、第一の機能層の下方、及び/又は最後の機能層の上方に、別の誘電層が配置されている。誘電層は、誘電材料、例えば窒化物、例えば窒化ケイ素、又は酸化物、例えば酸化アルミニウムを含有している誘電材料で作られている少なくとも1つの個別の層を含む。しかしながら、誘電層は、複数の個別の層、例えば誘電材料の個別の層、平滑層、整合層、遮断層、及び/又は反射防止層を含んでもよい。誘電層の厚さは、例えば10nm〜200nmである。
【0034】
この層構造は、概して真空法、例えば磁場支援カソードスパッタリングにより行う一連の堆積操作により得られる。
【0035】
他の適した導電層は、透明導電性酸化物(TCOとして知られている)、特に酸化インジウム錫(ITO)層、フッ化酸化錫(SnO
2:F)層、又はガリウム及び/又はアルミニウムでドープされた酸化亜鉛(ZnO:Al;ZnO:Ga)…である。
【0036】
導電層は、原則として、電気的に接触できる随意のコーティングであってよい。例えば窓領域におけるグレージングの場合のように、本発明によるタッチ制御グレージングがそれを通した視認を意図している場合、導電層は、好ましくは透明である。有利な実施態様において、導電層は、2μm以下、特に好ましくは1μm以下、又は300nm未満若しくは100nm未満の厚さを有する、層又は複数の個別の層の層構造である。
【0037】
導電層は、好ましくは0.4Ω/□〜200Ω/□のシート抵抗を有する。実際には、タッチ感知装置のタッチ感知構造が流さなければならないのは、弱い電流であり、それによれば、この層のシート抵抗は、広い範囲の値において選択することができる。本発明による有利な導電層は、0.4Ω/□〜10Ω/□のシート抵抗を有する。特に好ましい実施態様においては、本発明による導電層は、シート抵抗0.5Ω/□〜1Ω/□のシート抵抗を有する。かかるシート抵抗を有するコーティングは、特に、12V〜48Vの典型的な車内電圧、又は電気自動車の場合には、500Vまでもの典型的な車内電圧で、乗物の窓グレージングを加熱するのに適している。
【0038】
導電層は、透明であり、かつ第一の透明グレージングの(実質的に)表面全体にわたって延在していてよく(時折、例えば、特にS4(若しくはS3)上の隠蔽層の後ろ、又はS2上の隠蔽層とS3若しくはS4との間の周縁での随意の除去を除く)、幾らかの局所的な除去が可能である(電磁波を通過させるための、好ましくは視認できないか又は殆ど視認できない露光線等)。しかしながら、代替的には、導電層は、第一の透明グレージングの表面の一部のみに延在していてもよく(局在している)、これは、積層グレージングについては、S4(若しくはS3)上の又はS2上の隠蔽層(エナメル)である。この場合、導電層は、例えば不透明であり、銅等の金属製であってよい。更には、導電層は、例えば透明なキャリアではない局所的なキャリア、特に随意の印刷回路カード(PCB)ともなり得る。
【0039】
導電層は、透明であり、かつ第一の透明グレージングの(実質的に)表面全体にわたって延在しているか、又は局在していてよい。それによれば、導電層は、好ましくは加熱要素、日射調整層、低e層の中から選択され、導電層は、第一の透明グレージングの第一の主面に接触しているか又は接触していない(例えばPVB等の熱可塑性層により分離されている)。
【0040】
乗物のための積層グレージングにおいては、(乗物の内側からのタッチ制御のため)導電層は、第二の透明グレージング(外部グレージング)よりも、第一の透明グレージングに近接していることが好ましい。我々は、PVB及び外部グレージングの厚さをこの目的で選択することができる。感受性の適合及び/又は使用者から離れる方向にあるPVB及びより厚い外部の(外側の)グレージングに起因して、外部からのより広範なスイッチは不可能となり得る。
【0041】
導電層は、好ましくは透明グレージングの表面の少なくとも50%、特に好ましくは少なくとも70%、特に最も好ましくは少なくとも90%にわたって延在している。導電層は、1又は複数のコーティングされていない領域を有していてもよい。これらの領域は、電磁放射に対して透過性であってよく、例えばデータ伝送ウィンドウ又は通信ウィンドウとして知られている。
【0042】
積層グレージングとしての本発明によるタッチ制御グレージングの有利な実施態様においては、第一の透明グレージングの内側の表面(S3)は、2mm〜50mm、好ましくは5mm〜20mmの幅を有する、導電層を備えていない周縁領域を有する。この場合、導電層は、大気に接触しておらず、有利には、ペインの内側において、熱可塑性中間層(PVB等)により、損傷及び腐食に対して保護されている。
【0043】
本発明によるタッチ制御グレージングは、導電層が配置されている第一のグレージングを具備している。層の種類に応じ、この層を保護層、例えばラッカー、ポリマーフィルム、及び/又は第二の透明グレージングで保護することが有利である。
【0044】
本発明によるタッチ制御グレージングの有利な実施態様においては、容量性タッチ感知装置は、タッチ感知構造を制御するように構成されているセンサー電子部材アセンブリ、及びタッチ感知構造を通して発光ダイオードへと電源電圧を供給するように構成されている電圧源(好ましくはDC電圧源)を具備している。センサー電子部材アセンブリ及び/又は電圧源は、好ましくは第一の透明グレージングの外側に、より好ましくは第一のグレージングの周縁領域(1つの縁)において配置されている。有利には、容量性タッチ感知装置は、一方の側で、センサー電子部材アセンブリ及び電圧源を接地電極へと接続している第一の線状の導電要素、並びにセンサー電子部材アセンブリ及び電圧源をタッチ電極へと接続している第二の線状の導電要素を具備している。
【0045】
線状の導電要素は、好ましくは導電性ワイヤーである。必要に応じ、ワイヤーがタッチ制御グレージングを通した視認を阻害しないか又は僅かにしか阻害しないように、ワイヤーを有利には非常に薄く提供する。好ましいワイヤーは、0.25mm以下、特に好ましくは0.02mm〜0.15mmの厚さを有する。ワイヤーは、好ましくは、特に銅、タングステン、金、銀、若しくはアルミニウム、若しくはこれらの金属のうちの少なくとも2つの合金を含有しているか、又はこれらから作られている金属性のワイヤーである。この合金は、モリブデン、レニウム、オスミウム、イリジウム、パラジウム、又は白金を含有していてもよい。
【0046】
ワイヤーは、好ましくは、例えばプラスチック製の電気絶縁体を被覆することにより、電気的に絶縁されている。このことは、タッチ制御グレージングの導電層又は他の導電要素上にワイヤーが及ぶ場合に特に有利である。
【0047】
タッチ感知構造は、好ましくは1cm
2〜200cm
2、特に好ましくは1cm
2〜10cm
2の面積を有する。タッチ感知領域は、例えば卵形、長円形、楕円形又は円形、三角形、長方形、正方形、又は他のタイプの四辺形又はそれ以上の多角形の形状を有していてよい。
【0048】
有利な実施態様において、容量性タッチ感知装置は、発光ダイオード及び電圧源の作動を制御するための手段を具備している。有利には、発光ダイオード及び電圧源の作動を制御するための手段は、発光ダイオード及び電圧源に直列に接続されている。
【0049】
接地電極及びタッチ電極は、タッチ感知装置を作動させる物体、好ましくは人の指又は人の指の誘電率付近の誘電率を有する物体の近接又は接触により変化する電気容量を有するキャパシタを作ることができる。当然、タッチは、1若しくは複数の指又は人体の他の部分により行うことができる。本発明において、「タッチ」は、測定信号、すなわちこの場合、電気容量の測定可能な変化をもたらす、タッチ感知領域との随意の相互作用を意味する。
【0050】
電気容量は、外部の電気容量センサー電子部材により測定することができる。電気容量の変化は、例えば回路配置又はセンサー電子部材により測定され、閾値を超えたときに、スイッチ信号が作動する。容量性スイッチのための回路配置は、例えば独国実用新案第202006006192号公報、欧州特許出願公開第0899882号明細書、米国特許第6,452,514号明細書、及び欧州特許出願公開第1515211号明細書から公知である。センサー電子部材は、好ましくは容量性センサー電子部材である。
【0051】
発せられたスイッチ信号は、随意のタイプであってよく、また個別の用途の要求に適合していてよい。それによれば、スイッチ信号正の電圧、例えば12Vを示すことができ、例えば0Vを示すことができるスイッチ信号は存在せず、別のスイッチ信号は、例えば+6Vを示すことができる。スイッチ信号はまた、CAN−Busで通例の電圧CAN_High及びCAN_Lowに対応していてよく、またそれらの間の電圧値により変化する。スイッチ信号は、パルス状であり、かつ/又はデジタル符号化されていてもよい。
【0052】
センサー電子部材の感受性は、単純な実験との関係で、タッチ感知領域のサイズの関数として、並びに第一の透明グレージング、中間層、及び第二の透明グレージングの厚さの関数として測定することができる。
【0053】
発光ダイオード(例えば無機ダイオード)は、連続的な又は点滅する光を生み出すことができる。
【0054】
本発明によるタッチ制御グレージングの有利な実施態様においては、容量性タッチ感知装置は、タッチ感知構造を制御するように構成されているセンサー電子部材アセンブリ、及びタッチ感知構造を通して発光ダイオードへと電源電圧を供給するように構成されている電圧源、好ましくはDC電圧源を具備している。センサー電子部材アセンブリ及び電圧源は、好ましくは第一のグレージングの外側に配置されている。センサー電子部材アセンブリは、人によるタッチ感知領域のタッチの際に、スイッチ信号が生み出されるように構成されていてよい。
【0055】
有利には、容量性タッチ感知装置は、発光ダイオード及び電圧源、好ましくはDC電圧源の作動を制御するための手段を具備している。有利には、発光ダイオード及び電圧源の作動を制御するための手段は、発光ダイオード及び電圧源に直列に接続されている。
【0056】
更には、電圧源、好ましくはDC電圧源は、センサー電子部材アセンブリから分離されていてよい。好ましくは、DC電圧源は、例えばタッチ感知構造に交流のスイッチ信号を、特に好ましくは少なくとも60Hz、より好ましくは100Hzまでもの周波数で供給するセンサー電子部材アセンブリから、キャパシタにより分離されている。
【0057】
本発明によるタッチ制御グレージングは、タッチ感知領域を表示する発光ダイオードを具備している。これは、特に透明な、視認できない、又は殆ど視認できないタッチ感知領域の場合には、特に、同一の導電層に発光ダイオードが配置されたときに、透明性を害する追加的な周縁部を有することなく、タッチ感知領域を確実にタッチすること、及びスイッチ操作を確実に作動させることを、発光ダイオードが可能とするために、特に有利である。発光ダイオードは、特に夜に又は暗闇で、これがタッチ感知領域を迅速に見つけることを可能とするので有利である。特に、本発明を乗物のグレージングとして用いるときに、交通状況から長い間注意を逸らすことなく、運転者がタッチ感知領域を発見してタッチすることが非常に容易である。発光ダイオードは、その強度により、スイッチされた機能の状況(例えば、加熱層等については、オン/オフ)を表示することもできる。
【0058】
発光ダイオードの端子は、それらの各々の電極と直接的に接触していてよい。この場合、発光ダイオードは、導電層へと接着させるか、又は接着層若しくは随意の他の適切な手段により定位置に保持することができる。代替的には、端子は、半田接続、導電接着剤、又は導電ペーストにより、それらの各々の電極と電気的に接続されていてよい。端子は、ワイヤー結合により、それらの各々の電極と電気的に接続されていてよい。
【0059】
本発明によるタッチ制御グレージングの有利な実施態様においては、発光ダイオードは、複数の発光半導体チップ、例えば赤色、緑色、及び青色の発光半導体チップを具備している多色発光ダイオードである。各々の発光半導体チップは、第一の端子及び第二の端子を有する。タッチ感知構造は、分離線により互いに電気的に絶縁されている複数の接地経路を具備している。このようにして、各々の第二の端子は、接地経路のうちの1つと電気的に接続されている。タッチ感知装置は、機能要素を制御することを意図している。それによれば、発光ダイオードの異なる色が、例えば機能要素の異なる状態を表示することを可能とする。
【0060】
無機発光ダイオードは、好ましくは、(配置することがより容易な)包装されている発光ダイオードであってよい。それによれば、無機発光ダイオードは、半導体チップを具備しており、かつ電子部材の(特に反射部を作る)端面を封入し、かつチップ(時折貫通孔を有するキャリア部)を保持する、周囲の(ポリマーの又はセラミックの)包装を備えている。代替的には、無機発光ダイオードは、チップ・オン・ボード発光ダイオードであってよい。
【0061】
一実施態様においては、発光ダイオードは、逆向きに載置されている(包装されている)発光ダイオードであり、これは、第一の及び第二の端子、並びに発光面が、発光ダイオードの同じ側に配置されていることを意味する。
【0062】
無機ダイオードは、例えばリン化ガリウム又はアルミニウムガリウム及び窒化ガリウムをベースとしている。
【0063】
単一の半導体チップを有するダイオード、概して正方形の形状のダイオードの幅(長さ)は、好ましくは最大で5mmである。(典型的には包装により包囲されている)複数の半導体チップを有するダイオード、概して三角形の形状のダイオードの長さは、好ましくは最大で20mmであり、更に良いのは最大で10mmである。
【0064】
代替的な実施態様においては、発光ダイオードは、有機発光ダイオード(OLED)を具備している(特にOLEDである)。
【0065】
好ましくは、有機又は無機発光ダイオードの高さは、最大で1mmであり、最大で0.8mmである。
【0066】
導電層は、第一の透明グレージングに結合しているキャリアに適用されていてよい。
【0067】
キャリアは、局在し得るか、又は好ましくは透明であり、かつ第一の透明グレージングの表面にわたって延在し得る。また、導電層は、透明であり、かつ第一の透明グレージング(及びキャリア)の表面にわたって延在しており、かつ好ましくは加熱要素、日射調整層、低e層の中から選択され、導電層は、第一の透明グレージングの第一の主面S3と接触しているか又は接触していない。
【0068】
キャリア、好ましくは透明であるキャリアは、好ましくはプラスチック箔、特にポリエチレンテレフタレート(PET)箔である。
【0069】
キャリアは、積層グレージングのS2とS3との間において、好ましくは0.2mm未満、0.1mm未満の厚さを有している。上記のプラスチック箔は、好ましくはPVB等の熱可塑性シート若しくは接着剤により、第一の透明グレージングに結合しており、かつ/又はPVB等の熱可塑性シート若しくは接着剤により、第二の透明グレージングに結合している。好ましい場合は、キャリアがPVB等の熱可塑性シート(S3に向いている導電層)により第二の透明グレージングに結合されている場合、及び好ましくはPVB等の熱可塑性シートにより第一の透明グレージングに結合されている場合である。
【0070】
キャリアフィルムは、好ましくは、少なくとも1つのポリエステル及び/又は1つのポリアミド、特に好ましくは熱可塑性ポリエステル、例えばポリエチレンナフタレート(PEN)又はポリエチレンテレフタレート(PET)を含有している。このことは、キャリアフィルムの安定性及び加工性に関して特に有利である。キャリアフィルムは、接着手段により、又は中間層(PVB等)を介して、好ましくは第二の透明グレージングを第一の透明グレージングに結合させる中間層と類似の中間層を介して、第一の透明グレージングに結合させてもよい。キャリアフィルムの厚さは、好ましくは10μm〜1mm、特に好ましくは30μm〜200μmである。この範囲の厚さにおいては、キャリアフィルムは、有利には安定でかつ容易に加工できる。キャリアフィルムの長さ及び幅は、第一の透明グレージングの長さ及び幅と等しくてよい。キャリアフィルムの長さ及び幅は、第一の透明グレージングの長さ及び幅よりも小さくてもよい(例えばPETインレット)。
【0071】
(好ましくは、湾曲した積層グレージングユニットの曲率に追従するのに十分に可撓性である)キャリアは、窓若しくは屋根についてはS2、サイドウィンドウについてはS3に対して接着結合されているか又は押圧されていてよい。
【0072】
一実施態様においては、キャリアは、前方のフロントガラス又は屋根の領域、外部グレージングが(最外の)不透明な層、例えば、好ましくはS2上の、(黒色)エナメルにより全体的に(又は部分的に)不透明にされている領域において配置されていてよい。
【0073】
キャリアは、内部グレージングが(最内の)不透明な層、例えば、好ましくはS4又はS3上の、(黒色)エナメルにより不透明にされている領域において配置されていてよい。その結果、この不透明な層は、(堆積時にマスキングすることにより、又は特にレーザーによって除去することにより)少なくとも発光ダイオードと一直線にある開口部を含む。
【0074】
可撓性キャリアとしては、KREMPELからの製品AKAFLEX(登録商標)の範囲(特にPCL FW)が言及できる。
【0075】
可能性のある最も薄く、かつ好ましくは可能性のある最も目立たない(最小の幅の又は透明な)可撓性キャリア、例えばPET、PEN又はポリアミド等の可撓性キャリアが選択され、かつ(接続軌道が十分に薄く作られていない限り、銅製の接続軌道よりも寧ろ)透明な接続軌道も選択することができる。
【0076】
(特に局所的なキャリアの)S2又はS3への接着結合のため、キャリアは、好ましくは最大で0.15mm、更に良いのは最大で0.1mm、特に0.05mm未満の厚さe3の透明両面接着剤であり、キャリアの全体の表面又は一部が接着結合している。
【0077】
代替的な実施態様においては、タッチ制御グレージングは、複数のタッチ感知構造を具備している。
【0078】
本発明の第二の態様は、本発明の第一の態様によるタッチ制御グレージングを製造するための方法であって、次の工程を含む、方法に関する:
−導電層を、第一の透明グレージングの第一の主面に、特に直接的に又はキャリア、好ましくは透明のキャリアを介して適用すること;
−導電層に、容量性タッチ感知構造を作ること、ここで、タッチ感知構造は、接地電極、タッチ感知領域を有するタッチ電極を具備している;
−導電層に、タッチ感知領域を表示し、タッチ感知領域の機能の状態を表示する発光ダイオードを配置すること、ここで、発光ダイオードは、タッチ感知領域に少なくとも部分的に面している発光面を有しており、発光ダイオードは、接地電極に電気的に接続されている第一の電極領域である第一の端子、及びタッチ感知領域に電気的に接続されている第二の電極領域である第二の端子を有している。
【0079】
導電層の適用は、それ自体公知の方法、好ましくは磁場支援カソードスパッタリングにより行うことができる。これは、特に第一の透明グレージングの単純で、急速で、経済的でかつ一様なコーティングに関して特に有利である。しかしながら、導電層は、例えば物理気相成長(PVD)、化学気相成長(CVD)、プラズマ強化化学気相成長(PECVD)、又は湿式化学法によっても適用することができる。
【0080】
導電層の適用後、第一の透明グレージングに温度処理を施してもよい。導電層を有する第一の透明グレージングを、少なくとも200℃、好ましくは少なくとも300℃まで加熱する。温度処理は、透過性を上昇させ、かつ/又は導電層のシート抵抗を低減させるために作用することができる。
【0081】
導電層の適用後、第一の透明グレージングを、典型的には500℃〜700℃の温度で、湾曲させてもよい。平坦なグレージングをコーティングすることが技術的により容易であるため、第一の透明グレージングを湾曲させるべき場合には、この手順が有利である。しかしながら、代替的には、例えば導電層が損傷することなく曲げ処理に耐えるのに適していない場合には、導電層の適用前に第一の透明グレージングを湾曲させてもよい。