特許第6894934号(P6894934)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6894934
(24)【登録日】2021年6月8日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/52 20060101AFI20210621BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   H01R13/52 301B
   F16J15/10 B
   F16J15/10 D
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-43287(P2019-43287)
(22)【出願日】2019年3月11日
(65)【公開番号】特開2020-149766(P2020-149766A)
(43)【公開日】2020年9月17日
【審査請求日】2020年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】特許業務法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】南野 祐也
【審査官】 井上 信
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−165328(JP,A)
【文献】 特開平5−326066(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状のシール部と、前記シール部から突出しており、かつ貫通孔を有する片部と、を有するパッキンと、
端子を保持しており、かつ前記パッキンが装着され、嵌合対象との間が前記パッキンによってシールされるように前記嵌合対象と嵌合する嵌合部と、
を備え、
前記嵌合部は、
筒状部を有し、前記筒状部の外側面に前記シール部が装着される第一部材と、
前記筒状部に取り付けられる第二部材と、
前記第一部材および前記第二部材のうちの一方の部材に設けられ、前記貫通孔に挿通され、かつ先端が前記貫通孔から突出する突起部と、
前記第一部材および前記第二部材のうちの他方の部材に設けられ、前記先端が挿入される開口部と、
を有し、
前記片部は、前記嵌合部と前記嵌合対象とが嵌合する方向に沿って前記シール部から突出した基部と、前記基部から前記シール部の中心側に向けて突出した先端部と、を有し、
前記貫通孔が前記先端部に形成されている
ことを特徴とするコネクタ。
【請求項2】
前記嵌合部と前記嵌合対象とが嵌合する方向において、前記貫通孔が前記シール部よりも前記嵌合対象の近くに位置している
請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記他方の部材は、前記嵌合部と前記嵌合対象とが嵌合する方向に沿って前記他方の部材を貫通しており、かつ一端が前記開口部である第二貫通孔を有し、
前記突起部は、前記第二貫通孔に挿通されている
請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記第一部材は、前記端子を保持するハウジングであり、
前記第二部材は、前記筒状部と嵌合するホルダである
請求項1からの何れか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パッキンを有するコネクタがある。特許文献1には、第1の物品と第2の物品との間に設けられ、これらの物品間を水密に保つパッキンを有するコネクタの技術が開示されている。特許文献1のパッキンは、パッキン本体の厚みを二分する位置から突出した突出片と、突出片に設けられかつ第1の物品に固定される固定部と、を有する。特許文献1のパッキンによれば、小型化を図ることができるとともに物品間を確実に防水できるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−327169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パッキンの位置ずれや外れを抑制することについて、なお改良の余地がある。例えば、パッキンに対して力が作用した場合の位置ずれや外れをより確実に抑制できることが好ましい。
【0005】
本発明の目的は、パッキンの位置ずれやパッキンの外れを抑制することができるコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のコネクタは、環状のシール部と、前記シール部から突出しており、かつ貫通孔を有する片部と、を有するパッキンと、端子を保持しており、かつ前記パッキンが装着され、嵌合対象との間が前記パッキンによってシールされるように前記嵌合対象と嵌合する嵌合部と、を備え、前記嵌合部は、筒状部を有し、前記筒状部の外側面に前記シール部が装着される第一部材と、前記筒状部に取り付けられる第二部材と、前記第一部材および前記第二部材のうちの一方の部材に設けられ、前記貫通孔に挿通され、かつ先端が前記貫通孔から突出する突起部と、前記第一部材および前記第二部材のうちの他方の部材に設けられ、前記先端が挿入される開口部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係るコネクタは、環状のシール部と、シール部から突出しており、かつ貫通孔を有する片部と、を有するパッキンと、端子を保持しており、かつパッキンが装着され、嵌合対象との間がパッキンによってシールされるように嵌合対象と嵌合する嵌合部と、を備える。嵌合部は、筒状部を有し、筒状部の外側面にシール部が装着される第一部材と、筒状部に取り付けられる第二部材と、第一部材および第二部材のうちの一方の部材に設けられ、貫通孔に挿通され、かつ先端が貫通孔から突出する突起部と、第一部材および第二部材のうちの他方の部材に設けられ、突起部の先端が挿入される開口部と、を有する。
【0008】
本発明に係るコネクタによれば、一方の部材に設けられた突起部がパッキンの貫通孔に挿通され、かつ突起部の先端が他方の部材の開口部に挿入される。従って、突起部によってパッキンの位置ずれが抑制される。また、突起部の先端が他方の部材の開口部に挿入されることから、パッキンの片部が突起部から容易に外れない。従って、本発明に係るコネクタは、パッキンの外れをより確実に抑制できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るコネクタおよびオスコネクタの斜視図である。
図2図2は、実施形態に係るコネクタの分解斜視図である。
図3図3は、実施形態に係るハウジングの側面図である。
図4図4は、実施形態に係る第一パッキンの側面図である。
図5図5は、実施形態における第一パッキンの組み付け手順について説明する図である。
図6図6は、第一パッキンおよびフロントホルダが組み付けられたコネクタの平面図である。
図7図7は、第一パッキンおよびフロントホルダが組み付けられたコネクタの断面図である。
図8図8は、実施形態のコネクタに対するオスコネクタの嵌合を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の実施形態に係るコネクタにつき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものあるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
[実施形態]
図1から図8を参照して、実施形態について説明する。本実施形態は、コネクタに関する。図1は、実施形態に係るコネクタおよびオスコネクタの斜視図、図2は、実施形態に係るコネクタの分解斜視図、図3は、実施形態に係るハウジングの側面図、図4は、実施形態に係る第一パッキンの側面図、図5は、実施形態における第一パッキンの組み付け手順について説明する図、図6は、第一パッキンおよびフロントホルダが組み付けられたコネクタの平面図、図7は、第一パッキンおよびフロントホルダが組み付けられたコネクタの断面図、図8は、実施形態のコネクタに対するオスコネクタの嵌合を説明する図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係るコネクタ1は、メス端子6を有するメスコネクタである。コネクタ1は、嵌合対象であるオスコネクタ100と嵌合する。メス端子6は、コネクタ1がオスコネクタ100と嵌合することによって、オスコネクタ100のオス端子と電気的に接続される。本明細書では、コネクタ1とオスコネクタ100とが嵌合する方向を「第一方向X」と称する。
【0013】
図1および図2に示すように、コネクタ1は、第一嵌合部2、第二嵌合部3、第一パッキン4、第二パッキン5、およびメス端子6を有する。第一嵌合部2は、オスコネクタ100のハウジング101と嵌合する嵌合部である。第二嵌合部3は、インバータ等の機器の筐体と嵌合する嵌合部である。以下の説明では、コネクタ1の固定対象である機器を単に「固定対象機器」と称する。本実施形態のコネクタ1は、固定対象機器の筐体に嵌合し、当該筐体に対して固定される。オスコネクタ100は、固定対象機器に固定されているコネクタ1に対して接続される。オスコネクタ100は、例えば、電源と接続される。この場合、電源から出力される電力がオスコネクタ100およびコネクタ1を介して固定対象機器に供給される。
【0014】
図1および図2に示すように、第一嵌合部2は、ハウジング7およびフロントホルダ8を含む。ハウジング7およびフロントホルダ8は、例えば、絶縁性の合成樹脂により成型される。ハウジング7は、本体部71、第一筒状部72、第二筒状部73、端子カバー74、および取付部75を有する。本体部71は、筒形状の外殻部71aと、壁部71bとを有する。外殻部71aの軸方向は、第一方向Xと一致する。壁部71bは、外殻部71aと一体に形成されている。壁部71bは、外殻部71aの内部空間を仕切る隔壁状の構成部である。
【0015】
第一筒状部72は、筒状の構成部である。第一筒状部72は、本体部71から第一方向Xに沿って突出している。第一筒状部72の断面形状は、略矩形である。より詳しくは、第一筒状部72の断面形状は、矩形の各辺を外側に向けて湾曲させ、かつ矩形の四隅を円弧状とした形状である。
【0016】
第一筒状部72は、突起部76を有する。突起部76は、第一筒状部72における先端の縁部72aに設けられた凸状の構成部である。突起部76は、縁部72aにおける隣接する部分と比較して第一方向Xに沿って突出している。本実施形態の第一筒状部72は、二つの突起部76を有する。突起部76は、第一筒状部72における長辺部に配置されている。より詳しくは、突起部76は、第一筒状部72の長辺部における中央部に配置されている。
【0017】
以下の説明では、第一筒状部72の長辺方向を「第二方向Y」と称し、第一筒状部72の短辺方向を「第三方向Z」と称する。第二方向Yと第三方向Zとは互いに直交しており、かつそれぞれ第一方向Xと直交している。なお、後述する第二筒状部73の長辺方向は、第二方向Yであり、第二筒状部73の短辺方向は、第三方向Zである。
【0018】
二つの突起部76は、第三方向Zにおいて互いに対向している。縁部72aには、突起部76の両側に隣接して切り欠き72bが設けられている。図3に示すように、突起部76の先端76aは、縁部72aにおける突起部76以外の部分よりも第一方向Xに沿って突出している。本実施形態の突起部76の形状は、板状である。第一方向Xと直交する断面における突起部76の断面形状は、略矩形であり、第三方向Zの外側に向けてわずかに湾曲している。突起部76の先端76aは、平面である。
【0019】
第二筒状部73は、筒状の構成部である。第二筒状部73は、本体部71から第一方向Xに沿って突出している。第二筒状部73の突出方向は、第一筒状部72の突出方向とは逆向きである。第二筒状部73の断面形状は、第一筒状部72の断面形状と同様の形状である。
【0020】
第二筒状部73は、突起部77を有する。突起部77は、第二筒状部73における先端の縁部73aに設けられた凸状の構成部である。第二筒状部73は、二つの突起部77を有する。突起部77は、第二筒状部73における長辺に配置されている。より詳しくは、突起部77は、第二筒状部73の長辺における中央部に配置されている。
【0021】
二つの突起部77は、第三方向Zにおいて互いに対向している。縁部73aには、突起部77の両側に切り欠き73b(図5参照)が設けられている。図3に示すように、突起部77の先端77aは、縁部73aにおける突起部77以外の部分よりも第一方向Xに沿って突出している。
【0022】
端子カバー74は、本体部71の壁部71bから第一方向Xに沿って突出している。端子カバー74の突出方向は、第一筒状部72の突出方向と同じである。端子カバー74は、メス端子6を覆い、作業者の手指や工具が誤ってメス端子6に接触することを防ぐ。本実施形態のコネクタ1は、二つの端子カバー74を有する。二つの端子カバー74は、第二方向Yに沿って配列されている。
【0023】
取付部75は、固定対象機器に対して固定される部分である。取付部75は、第一方向Xと直交する方向に向けて外殻部71aから突出している。本実施形態のハウジング7は、四つの取付部75を有する。取付部75は、外殻部71aの四隅に一つずつ配置されている。取付部75は、ネジ等の締結部材が挿通される孔75aを有する。孔75aに挿通された締結部材によって、固定対象機器の筐体に対して取付部75が固定される。
【0024】
フロントホルダ8は、ハウジング7の第一筒状部72に取り付けられる部材である。図2に示すように、フロントホルダ8は、本体部81、柱状部82、および係合部83を有する。本体部81、柱状部82、および係合部83は、一体に形成されている。本体部81は、環状の構成部である。第一方向Xから見た場合の本体部81の形状は、第一筒状部72の断面形状と対応している。本体部81の外縁の形状は、矩形の各辺を外側に向けて湾曲させ、かつ矩形の四隅を円弧状とした形状である。本体部81の外縁部は、第一筒状部72の縁部72aと当接する。
【0025】
本体部81は、第一筒状部72と嵌合する筒状部81aを有する。筒状部81aは、本体部81の外縁部に配置されており、第一方向Xに沿って突出している。筒状部81aの断面形状は、第一筒状部72の断面形状と対応する形状である。筒状部81aは、筒状部81aの外周面と第一筒状部72の内周面とが対向するように第一筒状部72と嵌合する。柱状部82は、第三方向Zに沿って延在する棒状または板状の構成部である。柱状部82は、本体部81の長辺同士をつないでいる。
【0026】
係合部83は、ハウジング7に設けられた係合部と係合することにより、フロントホルダ8をハウジング7に対して固定する。係合部83は、本体部81の対向面から第一方向Xに沿って突出している。本体部81の対向面は、第一筒状部72の縁部72aと対向する面である。係合部83は、本体部81の各長辺部および各短辺部に一つずつ配置されている。係合部83は、孔83aを有する。孔83aは、ハウジング7の内面に設けられた突起と係合し、当該突起によって係止される。
【0027】
本体部81は、二つの第二貫通孔84を有する。第二貫通孔84は、本体部81の各長辺部に一つずつ配置されている。第二貫通孔84は、第一方向Xに沿って本体部81を貫通している。第二貫通孔84は、ハウジング7の突起部76と対応する位置に配置されている。第一方向Xから見た場合の第二貫通孔84の形状は、第二方向Yが長手方向となる略矩形の形状である。第二貫通孔84における第二方向Yの幅および第三方向Zの幅は、それぞれ突起部76の幅および厚さよりもわずかに大きい。つまり、第二貫通孔84は、第二貫通孔84に突起部76が挿入されたときに、突起部76との間にわずかに隙間が存在するように形成されている。
【0028】
第一パッキン4は、ゴム等の樹脂によって成形された防水部材である。第一パッキン4は、シール部41および片部42を有する。シール部41および片部42は、一体に形成されている。シール部41は、環状に形成されており、第一筒状部72における外側の面に装着される。第一方向Xから見た場合のシール部41の形状は、第一筒状部72の断面形状と対応した形状である。シール部41は、オスコネクタ100のハウジング101と第一筒状部72との間をシールする。
【0029】
片部42は、シール部41から突出しており、かつ貫通孔45を有する。本実施形態の第一パッキン4は、二つの片部42を有する。片部42は、シール部41の長辺部に一つずつ配置されている。より詳しくは、片部42は、シール部41の長辺部における中央部に配置されている。二つの片部42は、第三方向Zにおいて互いに対向している。
【0030】
片部42は、基部43および先端部44を有する。基部43は、第一方向Xに沿ってシール部41から突出している。基部43は、板状に形成されている。基部43の突出方向は、嵌合対象であるオスコネクタ100へ向かう方向である。基部43は、シール部41における第一側面41aから突出している。第一側面41aは、シール部41が有する二つの側面のうち、オスコネクタ100側を向く側面である。言い換えると、第一側面41aは、シール部41が有する二つの側面のうち、フロントホルダ8の本体部81と対向する側面である。
【0031】
先端部44は、基部43の先端から、シール部41の中心側に向けて第三方向Zに沿って突出している。言い換えると、先端部44は、シール部41で囲まれる空間部に向けて基部43から突出している。先端部44は、板状に形成されている。本実施形態の先端部44は、基部43に対して直交する方向に向けて突出している。従って、二つの先端部44は、先端部44の先端面同士が第三方向Zにおいて対向するように突出している。
【0032】
貫通孔45は、片部42を貫通している。本実施形態の貫通孔45は、基部43および先端部44を貫通している。つまり、片部42には、基部43から先端部44まで連続した貫通孔45が形成されている。貫通孔45のうち、先端部44に形成された部分の形状は、突起部76の断面形状に対応した形状である。第一方向Xから見た場合の貫通孔45の形状は、第二方向Yが長手方向となる略矩形の形状である。貫通孔45は、貫通孔45に突起部76が挿入されたときに、突起部76との間にわずかに隙間が存在するように形成されている。
【0033】
リアホルダ9は、ハウジング7の第二筒状部73に取り付けられる部材である。リアホルダ9は、例えば、絶縁性の合成樹脂により成型される。第二嵌合部3は、ハウジング7およびリアホルダ9を含む。図2に示すように、リアホルダ9は、本体部91および筒状部92を有する。本体部91および筒状部92は、一体に形成されている。本体部91は、環状の構成部である。第一方向Xから見た場合の本体部91の形状は、第二筒状部73の断面形状と対応している。本体部91の外縁の形状は、矩形の各辺を外側に向けて湾曲させ、かつ矩形の四隅を円弧状とした形状である。本体部91は、第二筒状部73の縁部73aと当接する。
【0034】
筒状部92は、本体部91の外縁部から第一方向Xに沿って突出している。筒状部92は、筒状の構成部であり、ハウジング7の第二筒状部73と嵌合する。筒状部92の断面形状は、第二筒状部73の断面形状と対応する形状である。筒状部92は、筒状部92の内周面と第二筒状部73の外周面とが対向するように第二筒状部73と嵌合する。つまり、筒状部92は、第二筒状部73の先端部を外側から覆う。
【0035】
本体部91は、二つの第二貫通孔93を有する。第二貫通孔93は、本体部91の各長辺部に一つずつ配置されている。第二貫通孔93は、第一方向Xに沿って本体部91を貫通している。第二貫通孔93は、ハウジング7の突起部77と対応する位置に配置されている。第一方向Xから見た場合の第二貫通孔93の形状は、第二方向Yが長手方向となる略矩形の形状である。第二貫通孔93における第二方向Yの幅および第三方向Zの幅は、それぞれ突起部77の幅および厚さよりもわずかに大きい。つまり、第二貫通孔93は、第二貫通孔93に突起部77が挿入されたときに突起部77との間にわずかに隙間が存在するように形成されている。
【0036】
第二パッキン5は、ゴム等の樹脂によって成形された防水部材である。第二パッキン5は、シール部51および片部52を有する。シール部51および片部52は、一体に形成されている。シール部51は、環状に形成されており、第二筒状部73の外側面に装着される。第一方向Xから見た場合のシール部51の形状は、第二筒状部73の断面形状と対応した形状である。シール部51は、固定対象機器の筐体と、第二筒状部73との間をシールする。
【0037】
片部52は、シール部51から突出しており、かつ貫通孔55を有する。本実施形態の第二パッキン5は、二つの片部52を有する。片部52は、シール部51の長辺部に一つずつ配置されている。より詳しくは、片部52は、シール部51の長辺部における中央部に配置されている。二つの片部52は、第三方向Zにおいて互いに対向している。
【0038】
片部52は、基部53および先端部54を有する。基部53は、第一方向Xに沿ってシール部51から突出している。基部53の突出方向は、嵌合対象機器の筐体へ向かう方向である。基部53は、シール部51における第一側面51aから突出している。第一側面51aは、シール部51が有する二つの側面のうち嵌合対象機器の筐体を向く側面である。言い換えると、第一側面51aは、シール部51が有する二つの側面のうち、リアホルダ9の本体部91と対向する側面である。
【0039】
先端部54は、基部53の先端から、シール部51の中心側に向けて第三方向Zに沿って突出している。言い換えると、先端部54は、シール部51で囲まれる空間部に向けて基部53から突出している。本実施形態の先端部54は、基部53に対して直交する方向に向けて突出している。従って、二つの先端部54は、先端部54の先端面同士が第三方向Zにおいて対向するように突出している。
【0040】
貫通孔55は、片部52を貫通している。本実施形態の貫通孔55は、先端部54を貫通している。貫通孔55の形状は、突起部77の断面形状に対応した形状である。第一方向Xから見た場合の貫通孔55の形状は、第二方向Yが長手方向となる略矩形の形状である。貫通孔55は、貫通孔55に突起部77が挿入されたときに、突起部77との間にわずかに隙間が存在するように形成されている。
【0041】
図5および図6を参照して、実施形態における第一パッキン4の組み付け手順について説明する。図5に示すように、まず、ハウジング7に対して第一パッキン4が取り付けられる。第一パッキン4のシール部41は、第一筒状部72の外周面に装着される。第一パッキン4は、片部42をハウジング7の本体部71とは反対側に向けた姿勢で第一筒状部72に装着される。従って、第一筒状部72に装着された第一パッキン4において、片部42は、シール部41から第一筒状部72の先端側に向けて突出している。
【0042】
第一筒状部72の突起部76は、片部42の貫通孔45に挿通され、貫通孔45から第一方向Xに沿って突出する。本体部71から見て、突起部76の先端76aは、片部42よりも第一方向Xにおける遠い位置にある。片部42の先端部44は、第一筒状部72の切り欠き72bに入り込み、切り欠き72bに収容される。切り欠き72bの奥行きの深さは、先端部44の厚さよりも大きい。従って、片部42が他の部材と干渉しにくいため、片部42の損傷が抑制される。
【0043】
第二方向Yにおいて、突起部76と片部42との間には、わずかな隙間が生じていてもよい。この隙間の大きさは、例えば、突起部76や貫通孔45の寸法公差により生じる程度である。従って、突起部76は、第二方向Yにおいて第一パッキン4を精度よく位置決めすることができる。また、第一パッキン4が第一筒状部72に対して相対回転しようとした場合に、突起部76および切り欠き72bが片部42を係止する。よって、突起部76および切り欠き72bは、第一筒状部72に対する第一パッキン4の相対回転を規制することができる。
【0044】
第一筒状部72に第一パッキン4が装着された後に、フロントホルダ8がハウジング7に対して取り付けられる。フロントホルダ8は、係合部83をハウジング7に向けた姿勢でハウジング7に対して取り付けられる。第一筒状部72に対してフロントホルダ8が奥まで差し込まれると、フロントホルダ8の係合部83がハウジング7によって係止される。これにより、フロントホルダ8がハウジング7に対して固定される。また、フロントホルダ8が第一筒状部72に差し込まれるときに、第一筒状部72の突起76は、フロントホルダ8の第二貫通孔84に挿入される。
【0045】
図5に示すように、第二貫通孔84は、開口部84aを有する。開口部84aは、第二貫通孔84が有する二つの開口部のうち、筒状部81aの突出方向を向いて開口している開口部である。突起76は、開口部84aから第二貫通孔84に挿入される。フロントホルダ8がハウジング7に対して固定された状態において、突起部76の先端76aは、第二貫通孔84の内部に位置していてもよく、第二貫通孔84から突出していてもよい。本実施形態のコネクタ1は、突起部76の先端76aが第二貫通孔84から突出するように構成されている。
【0046】
第二貫通孔84は、突起部76のうち第二貫通孔84に挿入されている部分を保持する。第二貫通孔84と突起部76との隙間の大きさは、第一パッキン4の片部42がこの隙間を通過できないように定められている。従って、突起部76が第二貫通孔84に挿入されることで、片部42が突起部76から外れてしまうことが規制される。
【0047】
図5に示すように、フロントホルダ8の筒状部81aは、切り欠き81bを有する。切り欠き81bは、筒状部81aにおいて、片部42と対応する位置に形成されている。第二方向Yにおいて、切り欠き81bの幅Wdzは、片部42の幅Wd1よりもわずかに大きい。筒状部81aの突出高さは、切り欠き81bの部分において実質的に0となっている。すなわち、筒状部81aは、切り欠き81bによって二つに分断されている。
【0048】
図6に示すように、フロントホルダ8がハウジング7に対して固定されると、片部42の一部が切り欠き81bに収容される。切り欠き81bは、第二方向Yにおいて片部42の側面と対向している。フロントホルダ8の本体81は、片部42を覆い、片部42を保護する。例えば、本体81は、コネクタ1がオスコネクタ100と嵌合する際に、片部42がオスコネクタ100と干渉しないように片部42を保護する。
【0049】
図7には、図6のVII−VII断面が示されている。ハウジング7の突起部76は、第一パッキン4の貫通孔45に挿通され、更にフロントホルダ8の第二貫通孔84に挿通されている。突起部76の先端76aが貫通孔45から突出していることにより、片部42に対する突起部76の掛かり代が大きくなっている。よって、片部42が突起部76から外れにくくなっている。更に、突起部76が第二貫通孔84の開口部84aに挿入されていることで、片部42が突起部76から外れてしまうことが効果的に抑制される。
【0050】
また、フロントホルダ8の本体部81は、第一方向Xにおいて片部42と近接している。より詳しくは、本体部81は、第一方向Xにおいて片部42の先端部44の近傍に位置しており、かつ先端部44と対向している。従って、本体部81は、第一パッキン4が第一筒状部72に対して第一方向Xに相対移動することを規制する。本体部81は、第一パッキン4の位置ずれを規制し、第一パッキン4による止水性能の低下を抑制する。
【0051】
また、ハウジング7およびフロントホルダ8は、以下に説明するように、第一パッキン4のめくれや浮き上がりを抑制することができる。図8には、コネクタ1に対して嵌合されるオスコネクタ100が示されている。オスコネクタ100のハウジング101は、コネクタ1に対して第一方向Xに沿って相対移動しながらコネクタ1と嵌合する。ハウジング101は、コネクタ1の第一筒状部72と嵌合する筒状部102を有する。筒状部102の断面形状は、第一筒状部72の断面形状と対応した形状である。筒状部102は、第一筒状部72を内部に収容しながら第一筒状部72と嵌合する。第一パッキン4のシール部41は、第一筒状部72の外側面と筒状部102の内側面との間に挟まれて両者の間をシールする。
【0052】
筒状部102が第一筒状部72と嵌合する際には、シール部41に対して図8に示す力F1が作用する。力F1は、シール部41を第一筒状部72の外側面から引き離す向きの力である。シール部41に対して力F1が作用した場合に、突起部76は第一パッキン4の先端部44を係止してシール部41の浮き上がりやめくれを抑制する。本実施形態の片部42は、シール部41から第一方向Xにおけるオスコネクタ100側に向けて突出している。よって、力F1が作用すると、片部42が矢印Y1で示す方向に向けて移動しようとする。突起部76は、矢印Y1へ向かう片部42の移動を規制し、その結果としてシール部41の浮き上がりやめくれを抑制する。
【0053】
このように、本実施形態のコネクタ1では、第一筒状部72に対する第一パッキン4の相対回転、およびシール部41の浮き上がりやめくれが抑制される。従って、本実施形態のコネクタ1は、第一パッキン4による止水性能の低下を抑制することができる。
【0054】
第二パッキン5の組み付け手順は、第一パッキン4の組み付け手順と同様である。すなわち、ハウジング7の第二筒状部73に対して第二パッキン5が取り付けられ、その後に第二筒状部73に対してリアホルダ9が取り付けられる。図2に示すように、第二パッキン5のシール部51は、片部52をハウジング7の本体部71とは反対側に向けた姿勢で第二筒状部73に装着される。このときに、第二筒状部73の突起部77は、片部52の貫通孔55に挿通される。
【0055】
リアホルダ9が第二筒状部73に取り付けられると、突起部77がリアホルダ9の第二貫通孔93に挿入される。リアホルダ9は、ハウジング7に対して直接固定されてもよく、他の部材を介してハウジング7に対して固定されてもよい。突起部77およびリアホルダ9は、第二筒状部73に対する第二パッキン5の相対回転を規制することができ、かつシール部51の浮き上がりやめくれを抑制することができる。
【0056】
以上説明したように、本実施形態に係るコネクタ1は、パッキン(第一パッキン4および第二パッキン5)と、嵌合部(第一嵌合部2および第二嵌合部3)と、を有する。第一パッキン4および第一嵌合部2の組み合わせによる止水構造を例に詳細について説明する。第一パッキン4は、環状のシール部41と、シール部41から突出しており、かつ貫通孔45を有する片部42と、を有する。第一嵌合部2は、内部にメス端子6を保持しており、かつ第一パッキン4が装着される。第一嵌合部2は、オスコネクタ100との間が第一パッキン4によってシールされるようにオスコネクタ100と嵌合する。
【0057】
第一嵌合部2は、第一部材としてのハウジング7と、第二部材としてのフロントホルダ8と、突起部76と、開口部84aと、を有する。ハウジング7は、第一筒状部72を有し、第一筒状部72の外側面にシール部41が装着される。フロントホルダ8は、第一筒状部72に取り付けられる部材である。突起部76は、ハウジング7に設けられており、貫通孔45に挿通され、かつ先端76aが貫通孔45から突出する。開口部84aは、フロントホルダ8に設けられ、突起部76の先端76aが挿入される。
【0058】
以上のコネクタ1の構成によれば、突起部76の先端76aが貫通孔45から突出しており、かつ開口部84aに挿入されることで、突起部76から片部42が外れてしまうことが抑制される。従って、第一筒状部72からの第一パッキン4の外れが抑制される。また、突起部76が貫通孔45に挿入されていることで、第一筒状部72に対する第一パッキン4の位置ずれが抑制される。例えば、第一筒状部72に対する第一パッキン4の相対回転が規制される。
【0059】
本実施形態のコネクタ1では、第一嵌合部2とオスコネクタ100とが嵌合する第一方向Xにおいて、貫通孔45がシール部41よりもオスコネクタ100の近くに位置している。従って、第一嵌合部2とオスコネクタ100とが嵌合するときのシール部41のめくれや外れが好適に抑制される。
【0060】
本実施形態の片部42は、基部43と、先端部44と、を有する。基部43は、第一方向Xに沿ってシール部41から突出している。先端部44は、基部43からシール部41の中心側に向けて突出している。貫通孔45は、先端部44に形成されている。従って、突起部76は、第一パッキン4に対して第一方向Xと直交する向きの力が作用した場合に、片部42を支持してシール部41のめくれや外れを規制することができる。
【0061】
本実施形態のフロントホルダ8は、第二貫通孔84を有する。第二貫通孔84は、第一方向Xに沿ってフロントホルダ8を貫通しており、かつ第二貫通孔84の一端が開口部84aである。突起部76の側面が第二貫通孔84によって覆われることで、突起部76からの第一パッキン4の外れが好適に抑制される。また、開口部84aから挿入された突起部76は、第二貫通孔84における反対側の開口部から突出することができる。この場合、突起部76からの第一パッキン4の外れがより確実に抑制される。
【0062】
[実施形態の変形例]
実施形態の変形例について説明する。上記実施形態では、第一パッキン4において、片部42がシール部41の長辺部に設けられていたが、これに加えて、あるいはこれに代えて、片部42がシール部41の短辺部に設けられてもよい。片部42は、例えば、短辺部の中央に配置される。第二パッキン5についても同様であり、片部52がシール部51の短辺部に設けられてもよい。
【0063】
フロントホルダ8において、突起部76が挿入される部分はフロントホルダ8を貫通していなくてもよい。すなわち、突起部76が挿入される部分は、第二貫通孔84に代えて凹部であってもよい。凹部の一端は、開口部84aにおいてハウジング7に向けて開放している。凹部の他端は、閉塞されているか、または突起部76が通過できないように狭くなっている。リアホルダ9についても同様であり、第二貫通孔93に代えて突起部77が挿入される凹部が設けられてもよい。
【0064】
突起部76,77の形状は、例示した形状には限定されない。突起部76,77の形状は、例えば、棒状や筒状であってもよい。突起部76,77が棒状とされる場合の突起部76,77の断面形状は、多角形や円形とされてもよい。フロントホルダ8やリアホルダ9に設けられる開口部の形状は、突起部76,77の断面形状に応じた形状とされることが好ましい。例えば、突起部76の断面形状が円形である場合、開口部84aの形状も円形とされることが好ましい。
【0065】
突起部76にロック構造が設けられてもよい。例えば、フロントホルダ8に係合突起が設けられ、突起部76に係合突起と係合する係合凹部が設けられてもよい。これとは逆に、突起部76に係合突起が設けられ、フロントホルダ8に係合凹部が設けられてもよい。突起部76にロック構造が設けられることで、部品の簡素化が可能となる。例えば、フロントホルダ8において、係合部83を省略することが可能となる。
【0066】
片部42,52の形状や配置は、例示した形状や配置には限定されない。例えば、片部42,52の突出方向は、例示した方向とは逆であってもよい。すなわち、片部42,52は、ハウジング7の本体部71に向けてシール部41,51から突出していてもよい。
【0067】
第一パッキン4のシール部41は、第一筒状部72に装着されることに代えて、フロントホルダ8に装着されてもよい。この場合、フロントホルダ8には、シール部41を装着可能な筒状部が設けられる。第一パッキン4は、予めフロントホルダ8に対して固定されていてもよい。一例として、第一パッキン4は、二色成形によりフロントホルダ8に対して形成されてもよい。第二パッキン5のシール部51は、第二筒状部73に装着されることに代えて、リアホルダ9に装着されてもよい。この場合、リアホルダ9には、シール部51を装着可能な筒状部が設けられる。第二パッキン5は、予めリアホルダ9に対して二色成形等により固定されていてもよい。
【0068】
上記実施形態とは逆に、フロントホルダ8に突起部が設けられ、ハウジング7に開口部が設けられてもよい。この場合、フロントホルダ8の突起部が第一パッキン4の貫通孔45に挿通され、突起部の先端がハウジング7の開口部に挿入される。ハウジング7の開口部は、第一方向Xに沿って延在する凹部の一端であってもよく、第一方向Xに沿ってハウジング7を貫通する貫通孔の一端であってもよい。
【0069】
上記の実施形態および変形例に開示された内容は、適宜組み合わせて実行することができる。
【符号の説明】
【0070】
1 コネクタ
2 第一嵌合部
3 第二嵌合部
4 第一パッキン
5 第二パッキン
6 メス端子
7 ハウジング
8 フロントホルダ
9 リアホルダ
41 シール部
41a 第一側面
42 片部
43 基部
44 先端部
45 貫通孔
51 シール部
52 片部
53 基部
54 先端部
55 貫通孔
71 本体部
71a:外殻部、 71b:壁部
72 第一筒状部
72a:縁部、 72b:切り欠き
73 第二筒状部
73a:縁部、 73b:切り欠き
74 端子カバー
75 取付部
76,77 突起部
76a,77a 先端
81 本体部
81a:筒状部、 81b:切り欠き
82 柱状部
83 係合部
83a 孔
84 第二貫通孔
84a 開口部
91 本体部
92 筒状部
93 第二貫通孔
100 オスコネクタ
101 ハウジング
102 筒状部
F1 力
X 第一方向
Y 第二方向
Z 第三方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8