(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。なお、すべての図面において、同様な構成要素には共通の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
【0015】
[成形膜の製造方法]
はじめに、本実施形態に係る成形膜の製造方法について説明する。
図1〜
図4は、本実施形態の成形膜100の製造工程の一例を模式的に示した工程断面図である。
本実施形態に係る成形膜の製造方法は、下記(A)および(B)の工程を含み、必要に応じて(C)の工程をさらに含む。
(A)粉末状の成形材料101を多孔体103の空隙に充填する工程
(B)多孔体103の空隙に充填された成形材料101を金型105のキャビティ表面107上または基材表面上に篩い落とすことにより、金型のキャビティ表面107上または基材表面上に成形材料101を膜状に堆積させる工程
(C)膜状に堆積した成形材料101を加圧する工程
【0016】
従来、厚みが薄い成形膜は、金型のキャビティ表面上または基材表面上に粉末状の成形材料を直接供給した後に高圧でプレスすることにより作製していた。しかし、本発明者らの検討によれば、このような方法で作製された成形膜は厚みが不均一であることが明らかになった。
上記知見を元に、本発明者らは、厚みが均一で、かつ、薄い成形膜100を提供するため、成形膜100の製造方法について鋭意検討した。その結果、多孔体103の空隙に充填された成形材料101を金型のキャビティ表面107上または基材表面上に篩い落とすことにより、厚みが均一で、かつ、薄い成形膜100が得られることを見出し、本発明に至った。
本実施形態の成形膜100の製造方法を用いることにより、厚みが均一で、かつ、薄い成形膜100が得られる理由は明らかではないが、本発明者らは粉末状の成形材料101が多孔体103の開口部を通過しながら少量ずつ篩い落とされるため、金型のキャビティ表面107上または基材表面上に均一な厚さで膜状に堆積することができるからだと推察している。
本実施形態の成形膜100の製造方法を用いることにより、例えば、100μm以下の薄い成形膜100を均一な厚みで得ることが可能である。
以下、各工程について詳細に説明する。
【0017】
はじめに、(A)粉末状の成形材料101を多孔体103の空隙に充填する。粉末状の成形材料101を多孔体103の空隙に充填する方法としては特に限定されないが、例えば、空気中または不活性雰囲気中で多孔体103の空隙内に粉末状の成形材料101を直接供給する方法や、粉末状の成形材料101を溶媒に分散させてスラリー状態にし、次いで、そのスラリーを多孔体103上に塗布し、空隙内にスラリーを浸透させた後、溶媒を乾燥する方法等が挙げられる。
【0018】
空気中または不活性雰囲気中で多孔体103の空隙内に粉末状の成形材料101を直接供給する方法としては、多孔体103上に成形材料101を粉体塗工し、スキージ109により、多孔体103上の過剰な成形材料101を取り除きつつ、空隙内に成形材料101を充填する方法等が挙げられる。
上記スラリーを塗布する方法としては、ドクターブレード塗工法、浸漬塗工法、スプレー塗工法、バーコーター塗工法等の一般的に公知の方法を使用できる。
これらの方法により、多孔体103の空隙内に成形材料101を連続的に充填することができる。
ここで、多孔体103において、多孔体103の空隙に充填された成形材料101を所望の位置のみに篩い落とす観点から、粉末状の成形材料101を充填させたくない部分の空隙にはあらかじめ樹脂等を埋め込んでおき、粉末状の成形材料101が充填されないようにしておくのが好ましい。こうすることにより、工程(B)において、所望の位置のみに成形材料101篩い落とすことができるため、所望のサイズを有する成形膜100をより容易に得ることができる。
【0019】
つづいて、必要に応じて、加圧することにより、空隙内に充填されずに多孔体103の表面に付着している成形材料101を空隙内に充填する。多孔体103を加圧する方法は特に限定されず、例えば、ロールプレス等を用いることができる。これにより、連続的に加圧することができ、生産性を向上させることができる。
【0020】
また、
図2に示すように、多孔体103の一方の面に成形材料101を収容する空間部115が設けられていることが好ましい。この場合、工程(A)では空間部115にも成形材料101を充填する。これにより、空間部115にも成形材料101を充填することができるため、成形材料101の搭載量を増やすことができる。
空間部115は成形材料101を充填することができる構造のものであれば特に限定されないが、例えば、多孔体103の一方の面にスペーサ111を介して支持体113を設けることにより形成される構造を挙げることができる。この場合、多孔体103と支持体113とスペーサ111とにより囲まれた部分が空間部115となる。
【0021】
スペーサ111としては特に限定されないが、例えば、マスキングテープ等が挙げられる。支持体113としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)製板等の樹脂板、金属板等が挙げられる。内部が確認できる観点から、透明な樹脂板が好ましい。
【0022】
空間部115の大きさは特に限定されず、成形材料101の充填量や、成形膜100の所望の厚みによって適宜設定される。空間部115の大きさは、例えば、スペーサ111の厚みにより調整することができる。
【0023】
ここで、多孔体103は、空隙内に成形材料101を充填できるものである。
多孔体103の形状は特に限定されないが、取り扱いのし易さの観点から、好ましくはシート状である。
【0024】
多孔体103の形態としては、例えば、織布、不織布、メッシュクロス、多孔性膜、エキスパンドシート、パンチングシート等から選択される一種または二種以上が挙げられる。これらの中でも、成形材料101の充填性に優れるとともに、成形材料101を篩い落とす性能に優れる観点からメッシュクロスが好ましい。
【0025】
また、多孔体103を構成する材料としては、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ビニロン、ポリベンズイミダゾール、ポリイミド、ポリフェニレンサルファイト、ポリエーテルエーテルケトン、セルロース、アクリル樹脂等の樹脂材料;麻、木材パルプ、コットンリンター等の天然繊維;鉄、アルミニウム、チタン、ニッケル、ステンレス等の金属材料;ガラス、カーボン等の無機材料等から選択される一種または二種以上が挙げられる。
これらの中でも、柔軟性に優れる点から、樹脂材料や天然繊維が好ましく、樹脂材料がより好ましく、ナイロンが特に好ましい。柔軟性に優れる多孔体103は振動を与えると目開きが微妙に変化する。そのため、このような柔軟性に優れる多孔体103を使用することで、目詰まりが起こるのを抑制しながら成形材料101をより容易に落下させることができ、成形材料101をより均一に堆積させることが可能となる。
【0026】
また、多孔体103の空隙率は、10%以上90%以下が好ましく、25%以上70%以下がより好ましく、30%以上55%以下が特に好ましい。空隙率が上記下限値以上であると、空隙に充填できる成形材料101を増やすことができるため、成形膜100の生産性を向上させることができる。
また、空隙率が上記上限値以下であると、成形材料101を篩い分ける性能を向上させることができるため、得られる成形膜100の厚みをより一層均一にすることができる。
ここで、本実施形態における空隙率は、多孔体103の形態によって算出法が異なる。例えば、空隙が単調な規則形状からなるメッシュクロス、エキスパンドシート、パンチングシート等は開口率を意味する。
多孔体103の開口率は、形態の違い毎に以下の式に準じて算出できる。例えばパンチングシートなどの打抜き板の場合、穴の形状と配置の違いにより通称名が付けられ、それぞれ算出式が提供される。一例を挙げると60°千鳥型:開口率(%)=90.6×D
2/P
2、角千鳥型:開口率(%)=157×D
2/P
2、並列型:開口率(%)=78.5×D
2/P
2、長丸穴千鳥型:開口率(%)={(2×W×L)−(0.43×W
2)}×100/(2×SP×LP)、長丸穴並列型:開口率(%)={(2×W×L)−(0.43×W
2)}×100/(2×SP×LP)、角穴千鳥型:開口率(%)=W
2×100/(SP
1×SP
2)、角穴並列型:開口率(%)=W
2×100/(SP
1×SP
2)、六角形60°千鳥型:開口率(%)=W
2×100/P
2、長角穴千鳥型:開口率(%)=(W×L×100)/(SP×LP)、長角穴並列型:開口率(%)=(W×L×100)/(SP×LP)、以上の算出式でDは丸穴の直径、Pは丸穴または六角穴の中心間距離、Wは長丸穴、角穴、六角穴または長角穴の短め方向長さ、Lは長丸穴または長角穴の長め方向長さ、SPは長丸穴または長角穴の短め方向における中心間距離、LPは長丸穴または長角穴の長め方向における中心間距離、SP
1は角穴の短め方向における中心間距離、SP
2は角穴の長め方向における中心間距離を示す。
エキスパンドシートのような千鳥状に切れ目を入れた後で引張り加工した板の場合、開口率(%)=〔{SWO×(LWO+B)}/(SW×LW)〕×100で提供される。ここでSWOは開口部の短め方向長さ、LWOは開口部の長め方向長さ、SWはメッシュの短め方向の中心間距離、LWはメッシュの長め方向の中心間距離、Bはボンドの長さである。
また、メッシュクロスでは、開口率(%)={A/(A+d)}
2×100で提供される。ここでAは目開き(mm)であり、A=(25.4/M)−dによって算出できる。Mはメッシュ、dは線径(mm)である。
また、空隙が3次元的に複雑な形状からなる織布、不織布、多孔性膜の場合、空隙率は、多孔体103の全体積に占める空隙の総体積の割合を意味する。すなわち、空隙率は(1−多孔体103中の構成素材の体積/多孔体103の体積)×100(%)で示される。
【0027】
また、多孔体103の目開きは、40μm以上300μm以下が好ましく、50μm以上150μm以下がより好ましい。目開きが上記下限値以上であると、空隙に充填できる成形材料101を増やすことができるため、成形膜100の生産性を向上させることができる。
また、目開きが上記上限値以下であると、成形材料101を篩い分ける性能を向上させることができるため、得られる成形膜100の厚みをより一層均一にすることができる。
【0028】
また、多孔体103の通気度は、1cm
3/cm
2/sec以上30cm
3/cm
2/sec以下が好ましく、2cm
3/cm
2/sec以上20cm
3/cm
2/sec以下がより好ましい。通気度が上記下限値以上であると、空隙に充填できる成形材料101を増やすことができるため、成形膜100の生産性を向上させることができる。また、通気度が上記上限値以下であると、成形材料101を篩い分ける性能を向上させることができるため、得られる成形膜100の厚みをより一層均一にすることができる。
ここで、多孔体103の通気度は、JIS L1096−A(フラジール形法)に従って測定できる。
【0029】
多孔体103の厚みは、好ましくは10μm以上300μm以下であり、より好ましくは20μm以上200μm以下である。多孔体103の厚みが上記下限値以上であると、空隙に充填できる成形材料101を増やすことができるため、成形膜100の生産性を向上させることができる。
また、多孔体103の厚みが上記上限値以下であると、成形材料101の未充填領域を低減することができ、成形材料101を篩い分ける性能を向上させることができるため、得られる成形膜100の厚みをより一層均一にすることができる。
【0030】
成形材料101としては粉末状であれば特に限定されないが、例えば、全固体型リチウムイオン電池に用いられる、固体電解質材料、正極材料、または負極材料等が挙げられる。
【0031】
レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における、粉末状の成形材料101の平均粒子径d
50は、好ましくは1μm以上40μm以下であり、より好ましくは5μm以上20μm以下である。
成形材料101の平均粒子径d
50を上記範囲内とすることにより、良好なハンドリング性を維持すると共に、より薄い成形膜を実現することができる。
【0032】
上記固体電解質材料としては、イオン伝導性および絶縁性を有するものであれば特に限定されないが、一般的に全固体型リチウムイオン電池に用いられるものを用いることができる。例えば、硫化物系固体電解質材料、酸化物系固体電解質材料等の無機系固体電解質材料を挙げることができる。これらの中でも、硫化物系固体電解質材料が好ましい。これにより、固体電解質材料間の界面抵抗がより一層低下し、リチウムイオン伝導性により一層優れた成形膜100(固体電解質膜や固体電解質層)にすることができる。
【0033】
硫化物系固体電解質材料としては、例えば、Li
2S−P
2S
5材料、Li
2S−SiS
2材料、Li
2S−GeS
2材料、Li
2S−Al
2S
3材料、Li
2S−SiS
2−Li
3PO
4材料、Li
2S−P
2S
5−GeS
2材料、Li
2S−Li
2O−P
2S
5−SiS
2材料、Li
2S−GeS
2−P
2S
5−SiS
2材料、Li
2S−SnS
2−P
2S
5−SiS
2材料等が挙げられる。これらは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも、リチウムイオン伝導性に優れ、かつ広い電圧範囲で分解等を起こさない安定性を有する点から、Li
2S−P
2S
5材料が好ましい。ここで、例えば、Li
2S−P
2S
5材料とは、少なくともLi
2S(硫化リチウム)とP
2S
5とを含む混合物をメカノケミカル処理等の混合粉砕することにより得られる材料を意味する。
【0034】
上記固体電解質材料の形状としては、例えば粒子状を挙げることができる。粒子状の固体電解質材料は特に限定されないが、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における平均粒子径d
50が、好ましくは1μm以上20μm以下であり、より好ましくは1μm以上10μm以下である。
固体電解質材料の平均粒子径d
50を上記範囲内とすることにより、良好なハンドリング性を維持すると共に、リチウムイオン伝導性をより一層向上させることができる。
【0035】
上記正極材料は、全固体型リチウムイオン電池を構成する正極層に用いられ、正極活物質を必須成分として含んでいる。
【0036】
正極活物質としては特に限定されず、全固体型リチウムイオン電池の正極層に使用可能な一般的に公知の正極活物質を用いることができる。例えば、リチウムコバルト酸化物(LiCoO
2)、リチウムニッケル酸化物(LiNiO
2)、リチウムマンガン酸化物(LiMn
2O
4)、固溶体酸化物(Li
2MnO
3−LiMO
2(M=Co、Ni等))、リチウム−マンガン−ニッケル酸化物(LiNi
1/3Mn
1/3Co
1/3O
2)、オリビン型リチウムリン酸化物(LiFePO
4)等の複合酸化物;ポリアニリン、ポリピロール等の導電性高分子;Li
2S、CuS、Li−Cu−S化合物、TiS
2、FeS、MoS
2、Li−Mo−S化合物、Li
−Ti
−S化合物、Li
−V
−S化合物等の硫化物系正極活物質;硫黄を含浸したアセチレンブラック、硫黄を含浸した多孔質炭素、硫黄と炭素の混合粉等の硫黄を活物質とした材料;等を用いることができる。これらの正極活物質は1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、より高い放電容量密度を有し、かつ、サイクル特性により優れる観点から、硫化物系正極活物質が好ましく、Li−Mo−S化合物、Li
−Ti
−S化合物、Li
−V
−S化合物から選択される一種または二種以上がより好ましい。
【0037】
ここで、Li−Mo−S化合物は構成元素としてLi、Mo、およびSを含んでいるものであり、通常は原料であるモリブデン硫化物および硫化リチウムをメカノケミカル処理等の混合粉砕することにより得ることができる。
また、Li−Ti−S化合物は構成元素としてLi、Ti、およびSを含んでいるものであり、通常は原料であるチタン硫化物と硫化リチウムをメカノケミカル処理等の混合粉砕することにより得ることができる。
Li−V−S化合物は構成元素としてLi、V、およびSを含んでいるものであり、通常は原料であるバナジウム硫化物と硫化リチウムをメカノケミカル処理等の混合粉砕することにより得ることができる。
【0038】
また、正極活物質は特に限定されないが、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における平均粒子径d
50が、好ましくは0.5μm以上20μm以下であり、より好ましくは1μm以上10μm以下である。
正極活物質の平均粒子径d
50を上記範囲内とすることにより、良好なハンドリング性を維持すると共に、より一層高密度の正極を作製することができる。
【0039】
上記正極材料は特に限定されないが、正極活物質以外の成分として、例えば、固体電解質材料、バインダー、導電助剤等から選択される一種または二種以上の材料を含んでもよい。
正極材料中の各種材料の配合割合は、電池の使用用途等に応じて、適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
【0040】
上記負極材料は、全固体型リチウムイオン電池を構成する負極層に用いられ、負極活物質を必須成分として含んでいる。
【0041】
負極活物質としては特に限定されず、全固体型リチウムイオン電池の負極層に使用可能な一般的に公知の負極活物質を用いることができる。例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、樹脂炭、炭素繊維、活性炭、ハードカーボン、ソフトカーボン等の炭素質材料;スズ、スズ合金、シリコン、シリコン合金、ガリウム、ガリウム合金、インジウム、インジウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金等を主体とした金属系材料;ポリアセン、ポリアセチレン、ポリピロール等の導電性ポリマー;金属リチウム;リチウムチタン複合酸化物(例えばLi
4Ti
5O
12)等が挙げられる。これらの負極活物質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0042】
負極活物質の形状としては、例えば粒子状や箔状を挙げることができる。
本実施形態に係る粒子状の負極活物質は特に限定されないが、レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における平均粒子径d
50が、好ましくは1μm以上50μm以下であり、より好ましくは5μm以上30μm以下である。
負極活物質の平均粒子径d
50を上記範囲内とすることにより、良好なハンドリング性を維持すると共に、より一層高密度の負極を作製することができる。
【0043】
上記負極材料は特に限定されないが、負極活物質以外の成分として、例えば、固体電解質材料、バインダー、導電助剤等から選択される一種または二種以上の材料を含んでもよい。
負極材料中の各種材料の配合割合は、電池の使用用途等に応じて、適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
【0044】
次に、(B)多孔体103の空隙に充填された成形材料101を金型105のキャビティ表面107上または基材表面上に篩い落とすことにより、金型のキャビティ表面107上または基材表面上に成形材料101を膜状に堆積させる。ここで、所望の厚みが得られるまで、多孔体103の空隙に充填された成形材料101を金型105のキャビティ表面107上または基材表面上に篩い落とす。
成形材料101は多孔体103の開口部によって少量ずつ篩い落とされるため、金型のキャビティ表面107上または基材表面上に成に均一な厚さで膜状に堆積することができる。
【0045】
成形材料101を金型105のキャビティ表面107上または基材表面上に篩い落とす方法としては、例えば、多孔体103を振動させることにより、多孔体103の空隙に充填された成形材料101を金型105のキャビティ表面107上または基材表面上に篩い落とす方法等が挙げられる。
【0046】
また、
図2に示すように、多孔体103の一方の面に成形材料101を収容する空間部115を設けた場合、多孔体103の空隙および空間部115に充填された成形材料101を金型105のキャビティ表面107上または基材表面上に篩い落とすことにより、金型105のキャビティ表面107上または基材表面上に成形材料101を膜状に堆積させる。これにより、成形材料101を連続的に篩い落とすことができるため、成形膜100の生産性をより向上させることができる。
【0047】
また、
図3に示すように、工程(B)では、膜状に堆積した成形材料101を振動させることにより、粉末状の成形材料101を流動させて、膜状に堆積した成形材料101を緻密化させる工程をさらに含むことが好ましい。これにより得られる成形膜100の厚みをより一層均一にすることができる。振動させる方法としては、例えば、超音波振動やハンマーによる軽い打撃のような小さな振幅の振動が挙げられる。
【0048】
上記基材としては、例えば、正極層、負極層、金属箔、プラスチックフィルム、カーボン等が挙げられる。
成形材料101が固体電解質材料の場合、上記基材としては、例えば、正極層、負極層、金属箔、プラスチックフィルム等が好ましい。
成形材料101が正極材料または負極材料の場合、上記基材としては、例えば、金属箔、プラスチックフィルム、カーボン、固体電解質層等が挙げられる。特に集電体として使用できる金属箔や、固体電解質層が好ましい。
金属箔としては特に限定されず、例えば、銅箔、アルミニウム箔、ステンレス箔等を用いることができる。
【0049】
次いで、必要に応じて、
図4に示すように、(C)膜状に堆積した成形材料101を加圧する。これにより、成形材料101同士のアンカー効果で一定の強度を有する成形膜100になる。ここで、粉末状の成形材料101を基材表面上に堆積させた場合、基材が積層された状態で加圧してもよいし、基材を剥離してから加圧してもよい。
加圧を行えば成形材料101同士の結合が起こり、得られる成形膜100の強度はより一層高くなる。その結果、成形材料101の欠落や、成形材料101表面のひび割れをより一層抑制できる。
上記成形材料101を加圧する方法は特に限定されず、例えば、金型105のキャビティ表面107上に成形材料101を堆積させた場合は金型と押し型によるプレス、粉末状の成形材料101を基材表面上に堆積させた場合は金型と押し型によるプレスやロールプレス、平板プレス等を用いることができる。
成形材料101を加圧する圧力は、例えば、10MPa以上500MPa以下である。
【0050】
また、必要に応じて、膜状に堆積した成形材料101を加圧するとともに加熱してもよい。加熱加圧を行えば成形材料101同士の融着・結合が起こり、得られる成形膜100の強度はより一層高くなる。その結果、成形材料101の欠落や、成形材料101表面のひび割れをより一層抑制できる。
成形材料101を加熱する温度は、例えば、40℃以上500℃以下である。
【0051】
成形膜100の厚みは、例えば、100μm以下であり、好ましくは70μm以下であり、より好ましくは50μm以下である。本実施形態の成形膜100の製造方法によれば、このような薄い成形膜100を均一な厚みで得ることが可能である。
【0052】
成形膜100は特に限定はされないが、例えば、全固体型リチウムイオン電池に用いられる、固体電解質層、正極層、または負極層である。本実施形態の成形膜100の製造方法によれば、得られる固体電解質層、正極層、または負極層の薄膜化を実現できるため、固体電解質層、正極層、または負極層のインピーダンスを低下させることができ、その結果、得られる全固体型リチウムイオン電池の充放電特性をより一層向上できる。
ただし、本実施形態の成形膜100の製造方法はこれらに限定されず、薄く、均一な厚みが求められる成形膜の製造に適用することが可能である。
【0053】
上記固体電解質層は、例えば、前述した固体電解質材料により得ることができる。
また、上記固体電解質層にはバインダーが含まれてもよいが、バインダーの含有量は、固体電解質層の全体を100質量%としたとき、好ましくは0.5質量%未満であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下である。また、本実施形態に係る固体電解質層は、バインダーを実質的に含まないことがさらに好ましく、バインダーを含まないことが特に好ましい。
これにより、固体電解質材料間の接触性が改善され、固体電解質層の界面接触抵抗をより一層低下させることができる。その結果、固体電解質層のリチウムイオン伝導性をより一層向上させることができる。
なお、「バインダーを実質的に含まない」とは、本発明の効果が損なわれない程度には含有してもよいことを意味する。
【0054】
上記バインダーとは、電極活物質同士および電極活物質と集電体とを結着させるために、リチウムイオン電池に一般的に使用される結着剤のことをいい、例えば、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)微粒子、スチレン・ブタジエン系ゴム微粒子等の水系バインダー;ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリイミド等の溶剤系バインダー等である。
【0055】
上記正極層は、例えば、前述した正極材料により得ることができる。負極層は、例えば、前述した負極材料により得ることができる。
正極層や負極層の厚みや密度は、電池の使用用途等に応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
【0056】
[全固体型リチウムイオン電池の製造方法]
つぎに、本実施形態の全固体型リチウムイオン電池200の製造方法について説明する。
まず、全固体型リチウムイオン電池200について説明する。
図5は、全固体型リチウムイオン電池200の構造の一例を模式的に示した断面図である。全固体型リチウムイオン電池200はリチウムイオン二次電池であるが、リチウムイオン一次電池であってもよい。
【0057】
全固体型リチウムイオン電池200は、正極層210と、固体電解質層220と、負極層230とがこの順番に積層されてなる。そして、正極層210、固体電解質層220、および負極層230から選択される少なくとも一つが、本実施形態の成形膜100の製造方法を用いて作製されたものである。
全固体型リチウムイオン電池200の形状は特に限定されず、円筒型、コイン型、角型、フィルム型その他任意の形状が挙げられる。
【0058】
正極層210は特に限定されず、全固体型リチウムイオン電池に一般的に用いられている正極を使用することができる。正極層210は特に限定されないが、一般的に公知の方法に準じて製造することができる。例えば、前述した正極材料をアルミ箔等の集電体上に形成することにより得ることができる。
正極層210の厚みや密度は、電池の使用用途等に応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
また、正極層210は本実施形態の成形膜100の製造方法を用いて製造されたものであってもよい。
【0059】
固体電解質層220は特に限定されず、全固体型リチウムイオン電池に一般的に用いられている固体電解質層を使用することができる。固体電解質層220は特に限定されないが、一般的に公知の方法に準じて製造することができる。例えば、前述した固体電解質材料を正極層や負極層上に形成することにより得ることができる。
固体電解質層220の厚みや密度は、電池の使用用途等に応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
また、固体電解質層220は本実施形態の成形膜100の製造方法を用いて製造されたものであることが好ましい。
【0060】
負極層230は特に限定されず、全固体型リチウムイオン電池に一般的に用いられているものを使用することができる。負極層230は特に限定されないが、一般的に公知の方法に準じて製造することができる。例えば、負極活物質を含む負極活物質層を銅等の集電体上に形成することにより得ることができる。
負極活物質層の厚みや密度は、電池の使用用途等に応じて適宜決定されるため特に限定されず、一般的に公知の情報に準じて設定することができる。
また、負極層230が本実施形態の成形膜100の製造方法を用いて製造されたものであってもよい。
【0061】
全固体型リチウムイオン電池200の製造方法は、本実施形態の成形膜100の製造方法により、正極層210、固体電解質層220、および負極層230から選択される少なくとも一つの成形膜100を形成する工程を含む。
【0062】
本実施形態に係る全固体型リチウムイオン電池200の製造方法は、正極層210と、固体電解質層220と、負極層230とがこの順番に積層された積層体を得る工程と、積層体を加圧することにより正極層210と、固体電解質層220と、負極層230とを一体化する工程と、を含むことが好ましい。これにより、各層間のアンカー効果で一定の強度を有する全固体型リチウムイオン電池200になる。
上記積層体を加圧する圧力は、例えば、40MPa以上500MPa以下である。
上記積層体を加圧する方法は特に限定されず、例えば、平板プレス、ロールプレス等を用いることができる。
【0063】
また、必要に応じて上記積層体を加圧するとともに加熱してもよい。加熱加圧を行えば成形材料101同士の融着・結合が起こり、得られる各層の強度はより一層高くなる。その結果、各材料の欠落や、各層表面のひび割れをより一層抑制できる。
上記積層体を加熱する温度は、例えば、150℃以上500℃以下である。
【0064】
本実施形態に係る全固体型リチウムイオン電池200の製造方法は、例えば、下記例1〜4等が挙げられる。
【0065】
(例1)
例1は、本実施形態の成形膜100の製造方法により、固体電解質層220を形成する場合である。
はじめに、本実施形態の成形膜100の製造方法を用いて、金型105内に固体電解質層220を形成する。次いで、固体電解質層220上に正極層210および負極層230のいずれか一方を重ねる。次に、反対の面に正極層210および負極層230の残りの一方を重ねて積層体を得る。次いで、押し型を挿入し、圧力をかけることにより正極層210、固体電解質層220、および負極層230を一体化する。これにより全固体型リチウムイオン電池200を得ることができる。
なお、例1において、固体電解質層220をはじめに形成したが、正極層210および負極層230のいずれか一方を金型105内にあらかじめ配置しておき、その上に本実施形態の成形膜100の製造方法を用いて固体電解質層220を形成してもよい。
【0066】
(例2)
例2は、本実施形態の成形膜100の製造方法により、正極層210または負極層230および固体電解質層220を形成する場合である。
はじめに、本実施形態の成形膜100の製造方法を用いて、金型105内に固体電解質層220を形成する。次いで、本実施形態の成形膜100の製造方法を用いて、金型105内に作製した固体電解質層220上に正極層210および負極層230のいずれか一方を形成する。次に、反対の面に正極層210および負極層230の残りの一方を重ねて積層体を得る。次いで、押し型を挿入し、圧力をかけることにより正極層210、固体電解質層220、および負極層230を一体化する。これにより全固体型リチウムイオン電池200を得ることができる。
なお、例2において、固体電解質層220をはじめに形成したが、正極層210または負極層230を先に形成してもよい。
【0067】
(例3)
例3は、本実施形態の成形膜100の製造方法により、正極層210または負極層230を形成する場合である。
はじめに、本実施形態の成形膜100の製造方法を用いて、金型105内に正極層210および負極層230のいずれか一方を形成する。次いで、正極層210または負極層230上に固体電解質層220を重ねる。次に固体電解質層220上に正極層210および負極層230の残りの一方を重ねて積層体を得る。次いで、押し型を挿入し、圧力をかけることにより正極層210、固体電解質層220、および負極層230を一体化する。これにより全固体型リチウムイオン電池200を得ることができる。
なお、例3において、正極層210または負極層230をはじめに形成したが、固体電解質層220を金型105内にあらかじめ配置しておき、その上に本実施形態の成形膜100の製造方法を用いて正極層210または負極層230を形成してもよい。
【0068】
(例4)
例4は、本実施形態の成形膜100の製造方法により、正極層210、固体電解質層220および負極層230を形成する場合である。
はじめに、本実施形態の成形膜100の製造方法を用いて、金型105内に固体電解質層220を形成する。次いで、本実施形態の成形膜100の製造方法を用いて、金型105内に作製した固体電解質層220上に正極層210および負極層230のいずれか一方を形成する。次に、反対の面に、本実施形態の成形膜100の製造方法を用いて、正極層210および負極層230の残りの一方を形成し、積層体を得る。次いで、押し型を挿入し、圧力をかけることにより正極層210、固体電解質層220、および負極層230を一体化する。これにより全固体型リチウムイオン電池200を得ることができる。
なお、例4において、固体電解質層220をはじめに形成したが、正極層210または負極層230を先に形成してもよい。
【0069】
(例5)
例5は、本実施形態の成形膜100の製造方法により、正極層210、固体電解質層220および負極層230を形成する場合である。
はじめに、本実施形態の成形膜100の製造方法を用いて、金型105内に固体電解質層220を形成する。次いで、本実施形態の成形膜100の製造方法を用いて、別に用意した金型105内に正極層210を形成し、正極層210を取り出す。さらに、本実施形態の成形膜100の製造方法を用いて、正極層210を使用した金型105内、あるいは別に用意した金型105内に負極層230を形成し、負極層230を取り出す。次に、固体電解質層220上に正極層210および負極層230のいずれか一方を重ねる。次に、反対の面に正極層210および負極層230の残りの一方を重ねて積層体を得る。次いで、押し型を挿入し、圧力をかけることにより正極層210、固体電解質層220、および負極層230を一体化する。これにより全固体型リチウムイオン電池200を得ることができる。
【0070】
(例6)
例6は、本実施形態の成形膜100の製造方法により、正極層210および固体電解質層220を形成する場合である。
はじめに、本実施形態の成形膜100の製造方法を用いて、金型105内に固体電解質層220を形成する。次いで、本実施形態の成形膜100の製造方法を用いて、別に用意した金型105内に正極層210を形成し、正極層210を取り出す。次に、固体電解質層220上に正極層210および負極層230のいずれか一方を重ねる。次に、反対の面に正極層210および負極層230の残りの一方を重ねて積層体を得る。次いで、押し型を挿入し、圧力をかけることにより正極層210、固体電解質層220、および負極層230を一体化する。これにより全固体型リチウムイオン電池200を得ることができる。
【0071】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、参考形態の例を付記する。
1.
粉末状の成形材料を多孔体の空隙に充填する工程(A)と、
前記多孔体の空隙に充填された前記成形材料を金型のキャビティ表面上または基材表面上に篩い落とすことにより、前記金型のキャビティ表面上または前記基材表面上に前記成形材料を膜状に堆積させる工程(B)と、
を含む成形膜の製造方法。
2.
1.に記載の成形膜の製造方法において、
膜状に堆積した前記成形材料を加圧する工程(C)をさらに含む成形膜の製造方法。
3.
1.または2.に記載の成形膜の製造方法において、
前記工程(B)は、膜状に堆積した前記成形材料を振動させることにより、粉末状の前記成形材料を流動させて、膜状に堆積した前記成形材料を緻密化させる工程をさらに含む成形膜の製造方法。
4.
1.乃至3.いずれか一つに記載の成形膜の製造方法において、
前記多孔体の一方の面に前記成形材料を収容する空間部が設けられており、
前記工程(A)では前記空間部にも前記成形材料を充填する成形膜の製造方法。
5.
4.に記載の成形膜の製造方法において、
前記工程(B)では、前記多孔体の空隙および前記空間部に充填された前記成形材料を前記金型のキャビティ表面上または前記基材表面上に篩い落とすことにより、前記金型のキャビティ表面上または前記基材表面上に前記成形材料を膜状に堆積させる成形膜の製造方法。
6.
1.乃至5.いずれか一つに記載の成形膜の製造方法において、
前記成形材料が全固体型リチウムイオン電池に用いられる、固体電解質材料、正極材料、または負極材料である成形膜の製造方法。
7.
1.乃至6.いずれか一つに記載の成形膜の製造方法において、
前記成形膜が全固体型リチウムイオン電池に用いられる、固体電解質層、正極層、または負極層である成形膜の製造方法。
8.
1.乃至7.いずれか一つに記載の成形膜の製造方法において、
前記多孔体の空隙率が10%以上90%以下である成形膜の製造方法。
9.
1.乃至8.いずれか一つに記載の成形膜の製造方法において、
前記多孔体の目開きが40μm以上300μm以下である成形膜の製造方法。
10.
1.乃至9.いずれか一つに記載の成形膜の製造方法において、
レーザー回折散乱式粒度分布測定法による重量基準粒度分布における、前記粉末状の成形材料の平均粒子径d50が1μm以上40μm以下である成形膜の製造方法。
11.
1.乃至10.いずれか一つに記載の成形膜の製造方法において、
前記多孔体はシート状である成形膜の製造方法。
12.
11.に記載の成形膜の製造方法において、
前記多孔体は織布、不織布、メッシュクロス、多孔性膜、エキスパンドシート、パンチングシートから選択される一種または二種以上である成形膜の製造方法。
13.
1.乃至12.いずれか一つに記載の成形膜の製造方法において、
前記成形膜の厚みが100μm以下である成形膜の製造方法。
14.
正極層と、固体電解質層と、負極層とがこの順番に積層された全固体型リチウムイオン電池を製造するための製造方法であって、
1.乃至13.いずれか一つに記載の成形膜の製造方法により、前記正極層、前記固体電解質層、および前記負極層から選択される少なくとも一つの成形膜を形成する工程を含む、全固体型リチウムイオン電池の製造方法。
15.
14.に記載の全固体型リチウムイオン電池の製造方法において、
前記正極層と、前記固体電解質層と、前記負極層とがこの順番に積層された積層体を得る工程と、
前記積層体を加圧することにより前記正極層と、前記固体電解質層と、前記負極層とを一体化する工程と、
を含む全固体型リチウムイオン電池の製造方法。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0073】
[1]測定方法
はじめに、以下の実施例、比較例における測定方法を説明する。
【0074】
(1)粒度分布
レーザー回折散乱式粒度分布測定装置(マルバーン社製、マスターサイザー3000)を用いて、レーザー回折法により、実施例および比較例で使用した固体電解質材料の粒度分布を測定した。測定結果から、各正極活物質について、重量基準の累積分布における50%累積時の粒径(D
50、平均粒子径)を求めた。
【0075】
(2)厚みのバラつき
マイクロメーターを用いて、得られた固体電解質膜から10ヶ所の厚みを測定し、厚みの(算術)平均値および標準偏差を求めた。標準偏差が6.7以下のものを厚みが均一、標準偏差6.7を超えるものを厚みが不均一とした。
【0076】
[2]材料
つぎに、以下の実施例、比較例において使用した材料について説明する。
【0077】
(1)固体電解質材料(Li
11P
3S
12)
原料には、Li
2S(シグマアルドリッチ製、純度99.9%)、P
2S
5(関東化学製試薬)を使用した。Li
3Nは、以下の手順で作製した。
まず、窒素雰囲気のグローブボックス中で、Li箔(本城金属社製純度99.8%、厚さ0.5mm)にステンレス製の網(150メッシュ)を圧着した。Li箔は網の開口部から黒紫色に変化し始め、そのまま、常温で24時間放置することでLi箔すべてが黒紫色のLi
3Nに変化した。Li
3Nは、メノウ乳鉢で粉砕後、ステンレス製篩で篩い分けし、25μm以下の粉末を回収し固体電解質材料の原料とした。
つづいて、アルゴングローブボックス中で各原料をLi
2S:P
2S
5:Li
3N=67.5:22.5:10.0(モル%)になるように精秤し、これら粉末を20分間メノウ乳鉢で混合した。次いで、混合粉末2gを秤量し、φ10mmのZrO
2製ボール500gとともに、Al
2O
3製ボールミルポット(内容積400mL)に入れ、120rpmで200時間混合粉砕した。混合粉砕後の粉末はカーボンボートに入れアルゴン気流中で330℃、2時間加熱処理し、Li
11P
3S
12を得た。平均粒子径D
50は10μmであった。
【0078】
(2)多孔体
多孔体としては、ナイロンメッシュクロス(田中三次郎商店社製13XX‐100、厚み105μm、空隙率36%、目開き100μm)を用いた。
【0079】
<実施例1>
ナイロンメッシュクロスの一方の面に、厚さ75μmのスペーサ(厚さ60μmのマスキングテープと厚さ15μmのベースレス両面テープ)を介してポリエチレンテレフタレート(PET)板を貼り付けたものを作製した。なお、ナイロンメッシュクロスには25mm×25mm以外の部分の開口部を樹脂で充填し、粉末が25mm×25mmのみを通過できるようにしておいた。
次いで、ナイロンメッシュクロスとPET板の間に設けた空間部(スペーサにより確保した空間)と、ナイロンメッシュクロスの開口部(空隙)に、スキージを使用して粉末状の固体電解質材料(Li
11P
3S
12)を充填した。
次いで、粉末状の固体電解質材料が充填されたナイロンメッシュクロスを反転してプレス金型の上に設置し、PET板を木槌で叩き、振動させることでプレス金型のキャビティ表面上に固体電解質材料60mgを篩い落とすことにより、プレス金型のキャビティ表面上に固体電解質材料を膜状に堆積させた。ここで、固体電解質材料はプレス金型のキャビティ(25mm×25mm)に均一な厚さで膜状に堆積した。
次いで、プレス金型に押し型を入れた後、チタンハンマーを使用してプレス金型の各側面を叩き、プレス金型内の粉末状の固体電解質材料に対し振動を与え、膜状の固体電解質材料を緻密化させた。
その後、油圧平板プレスを使用して、160MPaでプレスすることで固体電解質膜を得た。
作製した固体電解質膜の平均厚さは70μmであり、標準偏差は5.1であった。また、得られた固体電解質膜について、固体電解質材料の欠落や表面の割れは発生しなかった。すなわち、実施例1で得られた固体電解質膜は薄膜化が可能で、かつ、厚みが均一であった。
【0080】
<比較例1>
プレス金型のキャビティ(25mm×25mm)にスキージを使用して粉末状の固体電解質材料(Li
11P
3S
12)60mgを粉体塗工した。
次いで、プレス金型に押し型を入れた後、チタンハンマーを使用してプレス金型の各側面を叩き、プレス金型内の粉末状の固体電解質材料に対し振動を与え、固体電解質材料を緻密化させた。
その後、油圧平板プレスを使用して、160MPaでプレスすることで固体電解質膜を得た。
作製した固体電解質膜の平均厚さは70μmであり、標準偏差は9.2であった。すなわち、比較例1で得られた固体電解質膜は厚みが不均一であった。また、得られた固体電解質膜は固体電解質材料の欠落や表面の割れが発生した。すなわち、比較例1で得られた固体電解質膜は薄膜化が困難であった。
【0081】
<比較例2>
プレス金型のキャビティ(25mm×25mm)にスキージを使用して粉末状の固体電解質材料(Li
11P
3S
12)90mgを粉体塗工した。
次いで、プレス金型に押し型を入れた後、チタンハンマーを使用してプレス金型の各側面を叩き、プレス金型内の粉末状の固体電解質材料に対し振動を与え、固体電解質材料を緻密化させた。
その後、油圧平板プレスを使用して、160MPaでプレスすることで固体電解質膜を得た。
作製した固体電解質膜の平均厚さは105μmであり、標準偏差は8.8であった。
すなわち、比較例2で得られた固体電解質膜は薄膜化が困難であり、厚みも不均一であった。