特許第6894953号(P6894953)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6894953C.I.ピグメントイエロー155とその製造方法、その顔料を用いた顔料組成物と着色剤組成物、及びそれらの着色剤としての使用
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  • 特許6894953-C.I.ピグメントイエロー155とその製造方法、その顔料を用いた顔料組成物と着色剤組成物、及びそれらの着色剤としての使用 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6894953
(24)【登録日】2021年6月8日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】C.I.ピグメントイエロー155とその製造方法、その顔料を用いた顔料組成物と着色剤組成物、及びそれらの着色剤としての使用
(51)【国際特許分類】
   C09B 33/153 20060101AFI20210621BHJP
   C09B 67/20 20060101ALI20210621BHJP
   C09B 35/22 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   C09B33/153
   C09B67/20 K
   C09B67/20 E
   C09B35/22
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2019-170405(P2019-170405)
(22)【出願日】2019年9月19日
(62)【分割の表示】特願2014-224569(P2014-224569)の分割
【原出願日】2014年11月4日
(65)【公開番号】特開2020-59844(P2020-59844A)
(43)【公開日】2020年4月16日
【審査請求日】2019年10月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】596081005
【氏名又は名称】クラリアント・インターナシヨナル・リミテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100139527
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 克礼
(74)【代理人】
【識別番号】100164781
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 一郎
(72)【発明者】
【氏名】茅野 智裕
(72)【発明者】
【氏名】原田 大輔
【審査官】 青鹿 喜芳
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−179799(JP,A)
【文献】 特開平11−242357(JP,A)
【文献】 特開2011−197032(JP,A)
【文献】 特開平05−045931(JP,A)
【文献】 特開2013−049831(JP,A)
【文献】 特表2005−535738(JP,A)
【文献】 特開2003−026951(JP,A)
【文献】 特表2003−524686(JP,A)
【文献】 特開平11−293139(JP,A)
【文献】 特開平08−209017(JP,A)
【文献】 特開平06−166825(JP,A)
【文献】 特開平01−104662(JP,A)
【文献】 特表2008−542482(JP,A)
【文献】 特表2010−508406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B1/00−69/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アゾ顔料の製造方法であって、水溶液中でのジアゾニウム化合物のカップリング反応によるピグメントイエロー155を含むアゾ顔料合成工程、及び
分枝状で飽和の一価アルコールによる当該アゾ顔料のフィニッシング処理工程、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記分枝状で飽和の一価アルコールの沸点が95℃以上である、請求項1に記載のアゾ顔料の製造方法。
【請求項3】
前記フィニッシング処理工程における分枝状で飽和の一価アルコールが、ピグメントイエロー155の懸濁液の10重量部に対して、10重量部から100重量部である、請求項1または2に記載のアゾ顔料の製造方法。
【請求項4】
前記分枝状で飽和の一価アルコールが、イソブタノールである、請求項1〜3のいずれか一つに記載のアゾ顔料の製造方法。
【請求項5】
前記フィニッシング処理工程後のアゾ顔料の有機溶剤残留含有率が500ppm未満である、請求項1〜4のいずれか一つに記載のアゾ顔料の製造方法。
【請求項6】
前記フィニッシング処理工程後のアゾ顔料のTEM法による一次粒子径が50nm〜300nmである、請求項1〜5のいずれか一つに記載のアゾ顔料の製造方法。
【請求項7】
前記フィニッシング処理工程後のアゾ顔料のBET表面積が25〜100m/gである、請求項1〜6のいずれか一つに記載のアゾ顔料の製造方法。
【請求項8】
前記フィニッシング処理工程後のアゾ顔料のアスペクト比が好ましくは1〜10である、請求項1〜7のいずれか一つに記載のアゾ顔料の製造方法。
【請求項9】
前記フィニッシング処理工程後のアゾ顔料のメタノール・ウエッタビリティ(MW値)が2%〜10%以下である、請求項1〜8のいずれか一つに記載のアゾ顔料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は適度な疎水性を有し、着色剤製造工程における取り扱い性、画像定着性能に優れたC.I.ピグメントイエロー155に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷インキ、塗料、トナー、インクジェットなどの減色法による画像形成/表示方法は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の三原色の組み合わせによって一般的に行われる。そのような三原色着色剤用の顔料のそれぞれには、次のような特性が必要とされる。
1)色相、彩度、明度などによって表示される高い演色性能
2)優れた製造適性
3)印刷紙上での画像品質、耐久性
【0003】
第一の演色性能については、カラーディスプレイ上で表現した画像をカラープリンターで印刷する場合、カラーディスプレイ上での色再現領域(RGB色空間)に比べプリンターインキの色再現領域(YMC色空間)が狭いため、画像が鮮明さに欠けやすい。その一つの原因として、顔料の明度や彩度が低いことが挙げられており、その改良が広く進められている。
【0004】
第二の製造適性については、インキやトナーを製造するために、顔料は各種物理化学的特性を満たす必要がある。例えば、顔料分散液が適度な粘性を有することが必要である。また特許文献1に示されるような乳化重合法によるトナー製造の場合、顔料表面にモノマーが吸着できるような適切な表面特性が必要とされている。
【0005】
第三の印刷紙上での品質としては、カラー画像性能以外に耐光性や、耐摩擦強度などの物理強度を得るための樹脂バインダーとの強い親和性等も求められている。
【0006】
上記のようなニーズに対応すべく、従来からそれぞれの色相において顔料の改良が進められてきている。例えば、イエロー顔料については、顔料製造の選択の幅が広く、そのために色相などの演色性の制御が比較的容易であり、且つ製造適性なども優れていることから多くのアゾ顔料が開発されてきている。そのようなアゾ顔料としては、色力を大きくし、また結果として分子量が大きくなるために凝集性も高まり、耐光性などにも好ましいことから、分子内に複数のアゾ基を持たせたアゾ顔料が多く開発されている。その場合、吸収スペクトル幅を小さくすることができ、鮮明度を向上させやすいという理由から、それぞれのアゾ基が分子内で対称な位置に存在する分子構造を持った顔料が多く開発されてきている。例えば特許文献2には、C.I.ピグメントイエロー155が記載されている。
【0007】
C.I.ピグメントイエロー155のような分子構造は、高い演色性を持たせる上では好ましいとしても、製造適性や画像強度を考えると必ずしも好ましいとは限らない。例えば、上述したような2個のアゾ基を対称位置に有するアゾ顔料であるC.I.ピグメントイエロー155を溶剤に分散させると、バインダーがなくともその粘度が非常に高くなる。そのために、顔料の水分散液中にモノマーを添加して乳化重合させようとしても、均一な撹拌が難しく、結果として均一な性能をもったトナーを得ることが難しい。
【0008】
上記のように樹脂が存在しない系でも粘度が高いため、例えばインクジェットインキやカラーフィルター用レジスト作成などを目的としてバインダー樹脂を添加すると更に粘度が増加する。そのような高粘度の顔料分散液は、適切な分散(顔料粒子サイズとその分布の調整)を難しくし、また大型の分散装置や、長時間の分散作業などを必要とし、顔料を利用した製品製造にとっては大きな負担となる。また、顔料分散液の粘度が高すぎてインクジェットヘッドでのインク吐出が困難になったり、分散不良となると、粗大顔料粒子が残留して、画質不良やインクジェットノズルの目詰まりを引き起こしやすくなる問題点がある。
【0009】
上記の背景から、顔料分散液の粘度を低減させるために溶剤の種類変更や、顔料濃度を低くするなど種々の工夫が従来からなされてきているが、十分に応えきれていないのが実情である。
【0010】
以上述べた如く、演色性が優れたC.I.ピグメントイエロー155について、その分散液の粘度を低下させたいという強いニーズがある。そのような分散液の低い粘度をもたらすC.I.ピグメントイエロー155を製造できるようになると、従来の電子写真用トナーやインキジェットインキの顔料を置き換えて、より鮮やかな色彩を持つカラー画像を、低コストで得ることを可能とするであろう。また、従来のプロセスインキのC,M,Y,KインキのCインキを、彩度の高いものに置き換えることが出来れば、それを用いた緑色などの高彩度二次色用着色剤など、多くの用途が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−309035
【特許文献2】特許3917764
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の第一の課題は、C.I.ピグメントイエロー155に関して、その分散液の粘度を適切な範囲に調整することにより、その顔料を用いた着色剤の製造時の操作性、取り扱い性を向上させると共に、その着色剤の品質の均一性、再現性を高めることにある。また本発明に至る過程で、本発明により作成された顔料を用いた画像を評価するとその強度が比較的低い場合がある、という結果を得たため、本発明はその画像強度の低下を防ぐことのできる顔料を提供することを他の追加的な課題とした。本発明の他の課題は、以下の記載から当業者には明らかとなろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、上記の実状に鑑み、従来技術の欠点を解決すべく鋭意検討した結果、本発明の課題を解決するために次のような指針を得た。
(1)顔料分散液の高粘度の原因は当初、顔料と樹脂の相互作用にあると考えたが、樹脂を除いても分散液が高い粘度を示すことから、顔料粒子間、及び/又は顔料―溶剤分子間の相互作用が大きいと推定された。
(2)その原因を探るために電子顕微鏡により結晶形態の観察をしたところ、微小、且つ細長い針状の結晶であることが判明した。
(3)針状であることから、結晶粒子間の相互作用が強いこと、また表面積が大きいことから結晶と溶剤の間の相互作用が大きいことが予想され、それらのいずれか、もしくは両者が分散液の粘度を上昇させていると推察された。
(4)そこで、これら顔料粒子間、及び顔料―溶剤間の相互作用を小さくする方法を種々検討した。具体的な方針は、顔料粒子の形状を針状から変化させてそのアスペクト比を小さくすること、顔料粒子サイズを大きくすること、更には顔料表面の性質を、粒子間、もしくは粒子―溶剤間の相互作用が小さくなるように変化させることである。
(5)上記を指針として、主としてアゾカップリング反応以後の工程について、種々条件を検討した結果、顔料調製後に高沸点溶剤によるフィニッシング処理を行うことにより、上述したニーズを満たせる顔料を得ることができた。
(6)その理由を解析したところ、フィニッシングより顔料の結晶の形状が変化すると同時に、その成長が進み、結晶サイズが大きくなることが判明した。
(7)このような結晶形状変化、粒子成長により、粒子間の接触が小さくなり、且つ顔料−溶剤間の相互作用が小さくなると推測された。
(8)そのようにして作成された顔料を樹脂、溶剤と混合したところ、低い液粘度を達成でき、分散液の取り扱い性などが改良されるという効果を確認できた。
(9)そのようにして得られた着色剤分散液を印刷紙に塗布、乾燥した膜を評価したところ、顔料のフィニッシング条件によっては印刷紙の着色剤膜(印刷における画素に相当)の摩擦強度(定着性と相関)が比較的低くなる場合があることを見出した。低い摩擦強度の原因としては、塗工膜と紙との接着性低下、樹脂と顔料粒子の接着性低下が主要因と予想された。
(10)そこで顕微鏡観察などにより、低い画像強度の原因を検討した結果、顔料と樹脂との接着性が主要因と判断された。樹脂は疎水性の高い樹脂であることから、この顔料と樹脂の接着性の変化は顔料表面の疎水性の低下、親水性の増加、もしくは表面積の変化に起因すると予想された。
(11)そこで顔料粒子表面特性を定量化するための手段を探索した結果、後述するメタノール・ウエッタビリティ法による測定値(MW値)が本発明の顔料の表面特性を把握し、顔料の性能を制御する上で良好な手段であることを見出した。そのMW値を適切な範囲とすることにより、顔料分散液の粘度を制御できるばかりでなく、画像の摩擦強度のコントロールが可能なことを見出した。
(12)即ち、顔料のフィニッシング条件を調整して、そのMW値を特定の値以下とすることにより、顔料分散粘度が低下し、また追加的に、MW値を特定の値以上とすることにより、向上した摩擦強度の顔料塗膜が得られることを見出した。
上記の指針を基に、アゾ顔料のフィニッシング条件を中心に、顔料分散液の粘度低下に効果があり、更に印刷紙上での画像強度を向上させることができるピグメントイエロー155の製造方法等の条件探索を行った。
【0014】
すなわち本発明は、
1.粉体のメタノール・ウエッタビリティ(MW値)が10%以下の範囲にあるピグメントイエロー155、
2.粉体のメタノール・ウエッタビリティ(MW値)が2%以上の範囲にある、上記1のピグメントイエロー155、
3.TEM法による一次粒子径が50nm〜300nm、およびアスペクト比が1〜10の範囲にある上記1または2のピグメントイエロー155、
4.TEM法による一次粒子径が50〜250nm、顔料のアスペクト比が1〜7の範囲にある上記1〜3のピグメントイエロー155、
5.有機溶剤残留含有率が500ppm未満である、上記1〜4のピグメントイエロー155、
6.有機溶剤残留含有率が100ppm未満である、上記5のピグメントイエロー155、
7.有機溶剤が沸点95℃以上の有機溶剤である、上記5または6のピグメントイエロー155、
8.有機溶剤が炭素数3以上の直鎖状、分枝状もしくは環状で、飽和もしくは不飽和の一価もしくは多価アルコール溶剤である、上記5〜7のピグメントイエロー155、
9.アルコール溶剤が、1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−へプタノール、エチレングリコールおよびグリセリンからなる群から選択される一種または二種以上の溶剤である、上記8のピグメントイエロー155、
10.有機溶剤が、製造工程で使用されたフィニッシング溶剤である、上記5〜9のピグメントイエロー155、
11.上記1〜10のピグメントイエロー155に加え、他の着色顔料、及び/又は黄色蛍光染料を含む顔料組成物、
12.他の着色顔料が、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー194、C.I.ピグメントイエロー198、C.I.ピグメントイエロー213、C.I.ピグメントイエロー214、C.I.ピグメントイエロー217からなる群から選択される一種または二種以上の顔料であり、他の黄色蛍光染料がソルベントイエロー33、ソルベントイエロー98、ソルベントイエロー131、ソルベントイエロー135、ソルベントイエロー160:1からなる群から選択される一種または二種以上の染料である上記11の顔料組成物、
13.上記1〜10のピグメントイエロー155、ポリマー、ワックスを少なくとも含む着色剤組成物、
14.上記11または12の顔料組成物、ポリマー、ワックスを少なくとも含む着色剤組成物、
15.上記1〜10のピグメントイエロー155の製造方法であって、
1)水溶液中でのジアゾニウム化合物のカップリング反応によるアゾ顔料合成工程、
2)沸点95℃以上のアルコール溶剤によるアゾ顔料のフィニッシング処理工程、
を含む、顔料製造方法、
16.
1)水溶液中でのジアゾニウム化合物のカップリング反応によるアゾ顔料合成工程、
2)沸点95℃以上のアルコール溶剤によるアゾ顔料のフィニッシング処理工程、
を含み、
フィニッシング前もしくは後に、他の顔料および蛍光染料を添加する、上記11または12の顔料組成物の製造方法、
17.沸点95℃以上のアルコール溶剤が、直鎖状、分岐状もしくは環状で、飽和もしくは不飽和の一価もしくは多価の炭素原子数3〜8のアルコールからなる群から選択される一種または二種以上の溶剤である、上記15または16の方法、
18.フィニッシング処理工程が、有機溶剤の沸点より0〜100℃高い温度で、10分以上、合成されたアゾ顔料と有機溶剤とを接触させる、好ましくは混合することによって行われる、上記15〜17の方法、
19.上記1〜10のピグメントイエロー155の、着色剤としてのまたは画像形成用途への使用、
20.上記11または12のアゾ顔料組成物の、着色剤としてのまたは画像形成用途への使用、
である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、顔料のメタノール・ウエッタビリティ値(MW値)を特定の値以下とすることにより、顔料分散液の粘度を低下させることができる。更にそのMW値を特定の値以上とすることにより、その着色材料の擦過耐久性を向上させることができる。これらの結果から、着色材料製造工程での製造適性に優れ、また画像の物理強度に優れた着色材料を提供することができる。本顔料を用いた着色剤は、印刷インキ、トナー、インクジェットインクを始め様々な画像形成用途に使用できるばかりでなく、塗料などの他の用途でも使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施例2の顔料形態を示す電子顕微鏡(TEM)写真(11,000倍)
図2】比較例1(フィニッシング処理無し)の顔料形態を示す電子顕微鏡(TEM)写真(11,000倍)。極めて細い針状結晶と、分散が十分になされていない大きな粒状の顔料粒子が混在している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のアゾ顔料は、分子内の対称な位置にアゾ基を二つ以上含有し、後述するメタノール・ウエッタビリティ測定法による値(MW値)が10以下であり、より好ましくはMW値が2以上であるアゾ顔料である。
【0018】
本発明に使用できるアゾ顔料には、C.I.ピグメントイエロー155が挙げられる。
【0019】
前述の特許文献1のC.I.ピグメントイエロー155(PY−155)(フェニレンジアミンの両側にアゾ基)のように、画像形成用アゾ顔料として優れたものには、その分子内の対称な位置にアゾ顔料を2個以上有するものがある。その分子形状は、フタロシアニン顔料などに比べ、細長い。そのように細長い分子は、結晶化する際に、針状となりやすく、それは表面積の増大を伴う。そのような顔料の粒子表面は、結晶構造などにより変化するため、例えば分子内に大きな極性基が存在する場合には、その疎水性はその結晶構造によっても影響を受けると考えられる。
【0020】
また、細長い分子構造の顔料粒子は、分散液中の顔料濃度上昇に伴い粒子間の接触が増え、またその表面積が大きいことから、溶剤との相互作用や粒子間相互作用により分散液の粘度が増大しやすい。その結果、顔料分散液の粘度が増加し、それを用いた着色剤製造工程でのハンドリング性が著しく低下し、大量生産が困難となり、コストアップにつながりやすい。
【0021】
上記のような顔料分散液の高粘度化は、メタノール・ウエッタビリティ値(MW値)を10%以下に調整された本発明によるアゾ顔料により解決することができる。MW値が10%を超えると、後述する実施例、比較例で示すように、顔料分散液の粘度が増加するため、顔料分散を長時間行っても、均一分散が困難となり、大きな顔料粒子が残りやすく、擦過テストによる画像強度の低下などの性能低下を招くために好ましくない。
【0022】
本願のアゾ顔料のMW値は、2%以上であることが好ましい。MW値が小さくなると、後述の実施例で見られるように、擦過テストによる画像強度が低下傾向を示し、MWが2%未満ではその強度が急減する。
【0023】
分散液の低粘度化及び画像強度の向上の面での両方の性能を考慮した場合、MWの好ましい範囲は、3%〜7%である。
【0024】
本発明における顔料のメタノール・ウエッタビリティ(MW値)測定法は、後述する測定法で述べるように、顔料が浮遊している水中に、メタノールを添加して水と顔料の親和性を高めることにより顔料を沈降させ、その時のメタノール添加量を測定する方法である。疎水性の大きな顔料は、水との親和性が小さいため、顔料が水で十分に濡れず、水の表面張力により浮遊した状態となる。そこにメタノールを添加すると、水の親水性の低下、表面張力低下により、顔料との親和性が高まる。メタノールの添加量が特定の値を超えると、その表面張力による浮力よりも重力の方が大きくなり、顔料が沈降するようになる。この疎水性顔料が沈降するまでに加えたメタノール添加量(水100mlに対して加えたメタノールの体積)を測定して得た値を%単位で表示した値がメタノール・ウエッタビリティ値である。
【0025】
本発明の目的の一つである顔料分散液の粘度低下は、トナー用途に適した方法として知られる従来の方法により作成された顔料を、フィニッシング処理によりそのMW値を特定の値以下、具体的には10%以下とすることにより達成される。
【0026】
アゾ顔料製造におけるフィニッシングとは、カップリング反応により合成された顔料を、更に色相や耐光性などを改良する目的で行われる最終処理工程であり、それぞれの顔料、目的に応じた方法により行われている。
【0027】
C.I.ピグメントイエロー155の場合、アゾカップリング反応後に水洗、乾燥して、特にフィニッシングしないでそのまま使用する場合と、例えばDMFのような高沸点、高極性溶剤で処理する方法の二通りが従来から行われてきた。
【0028】
本発明では、顔料分散液の粘度がその粒子サイズや形状に大きく影響を受けると考え、それらを調節するための手段としてフィニッシング処理に注目して検討を行った。具体的には、フィニッシング溶剤を多種類の溶剤について検討し、また加熱温度や時間などの条件を探索した。その結果、従来知られていた一般的な溶剤に代えて、沸点95℃以上のアルコール溶剤を使用することが好ましいことを見出した。その理由は不明であるが、顔料表面を親水化するためには溶剤にも親水性、疎水性の適度なバランスが必要なのではないかと推察される。
【0029】
本発明のフィニッシング溶剤としては、好ましくは、沸点95℃以上のアルコールであり、より具体的には特に、直鎖状、分岐状もしくは環状で、飽和もしくは不飽和の一価もしくは多価の炭素原子数3〜8、好ましくは4〜7のアルコール、例えば1−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、2−ヘキサノール、1−ヘプタノール、2−へプタノール、エチレングリコール、グリセリンの1種、もしくはそれらを複数種混合した溶剤を使用することができる。その中でも、分枝状で飽和の一価アルコール、就中イソブタノール(沸点108℃)が特に好ましい。またこれらのアルコールに、別の溶剤、例えばケトン系溶剤、エーテル系溶剤などを混合添加して行うことも可能である。
【0030】
本発明のフィニッシング処理は、後述する実施例で示されるように、顔料化したピグメントイエロー155とフィニッシング溶剤を容器に入れて、加熱して行われる。ピグメントイエロー155の重量10重量部に対して、フィニッシング溶剤を好ましくは10重量部〜100重量部加えて行われる。フィニッシング溶剤が10重量部未満では、フィニッシング処理が十分、均一に行われない恐れがあり、100重量部超では、粒子結晶の成長が早すぎて粒径制御が難しくなり好ましくない。
【0031】
フィニッシング処理の加熱温度は、フィニッシング溶剤の沸点以上とすることにより、フィニッシング処理時間を短縮化できる。加熱温度はフィニッシング溶剤の沸点に比べ通常は0〜100℃高い温度、より好ましくはフィニッシング溶剤の沸点に比べ10〜80℃高い温度の範囲である。沸点との温度差が0℃未満ではフィニッシングに長時間を要し、100℃超では顔料の分解など副反応を伴いやすい上に、耐圧性容器などが必要となり好ましくない。
【0032】
本発明のフィニッシング処理時間は、加熱温度により大きく変化するが、通常は10分以上、好ましくは20分〜15時間、特に20分〜5時間である。時間が短いとフィニッシングが不均一となりやすい。上限は特にないが、15時間超では製造コストが大きくなり好ましくない。
【0033】
本発明の範囲に入るメタノール・ウエッタビリティを得るアゾ顔料の製造は、前記特許文献などに記載された従来の方法で行い、その最後の工程でフィニッシング処理を行えばよい。もしくはフィニッシング処理によらず、アゾ合成後の不溶化、顔料化の段階で、例えば塩析などの処理によって、メタノール・ウエッタビリティの調整をおこなってもよい。
【0034】
上記のフィニッシング処理を行った顔料は、水洗、乾燥、粉砕など必要な処理を行った上で、次工程の用途に供される。
【0035】
本発明のC.I.ピグメントイエロー155は、フィニッシング条件により顔料一次粒子径、BET表面積、アスペクト比も変化する。MW値が12%より小さくなるにつれて、相関度は高くないものの大雑把な傾向として、一次粒子径が大きくなり、表面積は低下、アスペクト比が大きくなる傾向を示す。一次粒子径としては好ましくは50nm〜300nm、特に好ましくは50〜250nm、BET表面積は好ましくは25〜100m/g、アスペクト比は好ましくは1〜10の範囲、特に好ましくは2〜7の範囲である。
【0036】
一次粒子径を50nm未満とするためには、長時間の分散を必要とすると共に、分散液が高粘度化、ゲル化などを起こしやすくなる。BET表面積が25m/g未満となると粒径が大きすぎて、着色力の低下などを伴いやすく、また100m/g超では、分散液の粘度が増加して好ましくない。またアスペクト比については、前述したような針状結晶のようにアスペクト比が10を超えて大きくなると粘度が急増すると共に、分散不良となり、着色力の低下、画質の低下などを招きやすい。またアスペクト比の理論上の下限値は1であるが、2以下まで小さくしても性能の大きな低下は認められていない。
【0037】
本発明のC.I.ピグメントイエロー155の性能は、顔料中の残留溶剤の濃度により影響を受け得る。有機溶剤は、顔料の合成に使用された溶剤、フィニッシング溶剤などに由来して顔料中に残存し得る。後述する比較例で示されるように、残留溶剤濃度が高くなると、擦過テストによる画像強度が低下し得る。残留溶剤濃度として好ましい範囲は、最大で500ppm、特に好ましくは最大で100ppm、特に最大で50ppmである。500ppm超では画像強度の低下などの副作用を伴いやすい。下限は、特に制限はないが、乾燥に長時間必要とするためコスト的に好ましくないという理由から、例えば0.5ppmであり得る。
【0038】
本発明の顔料は、その用途、必要性に応じて二種以上の着色材料を加えて使用されてもよい。そのような着色材料は、本発明のイエロー顔料の彩度、明度、もしくは色相角を変える等の目的で使用される。上述したC.I.ピグメントイエロー155に他の顔料、もしくは染料を組み合わせて使用することができる。
【0039】
本発明のピグメントイエロー155と組み合わせて使用できる顔料としては種々の顔料がある。例えば該ピグメントイエロー155と組み合わせて黄色の色相として使用する場合には、他の黄色顔料Y2として、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー194、C.I.ピグメントイエロー198、C.I.ピグメントイエロー213、C.I.ピグメントイエロー214、C.I.ピグメントイエロー217などが例示される。
【0040】
ピグメントイエロー155と組み合わせる相手の顔料としては黄色顔料に限定されない。青色顔料と組み合わせることにより、グリーンを表色したい場合には、ピグメントイエロー155とシアン顔料、例えばフタロシアニンブルー顔料であるC.I.ピグメントブルー15:3、ピグメントブルー15:1、ピグメントブルー15:2、ピグメントブルー15:4、ピグメントブルー15:6から選択される少なくとも一種の顔料を組み合わせて使用することも可能である。
【0041】
ピグメントイエロー155と組み合わせる相手の顔料との組成比については、目的とする色相、用途によって大きく変化するため、一概には決められないが、例えばピグメントイエロー155が100重量部に対して、他の顔料が1重量〜200重量部の範囲で使用することができる。他の顔料が1重量部未満の場合には、組み合わせによる効果が十分に期待できず。また他の顔料が200重量部を超えると、ピグメントイエロー155の持つ色相から大きく外れたり、また高い彩度などの特徴が失われやすい。
【0042】
本発明の顔料と一緒に使用される好ましい他の着色材料として、蛍光染料がある。蛍光染料、特に黄色蛍光染料は、黄色から緑色の蛍光を発する能力が高いために、着色剤の彩度を著しく高めることが出来る。また、黄色蛍光染料は、イエロー顔料の彩度を向上させると共に、青味を持ったイエローにシフトさせる場合に好適に使用され、その詳細については本発明者による特許出願2014−157613号に記載されている。
【0043】
蛍光染料は、この蛍光染料と樹脂のみを用いて塗膜を形成した場合に、前述した特許出願2014−157613号に記載されている後述する反射スペクトル測定において、その塗膜の最大波長が490〜550nmの範囲にあり、その最大反射率が90%以上であることが好ましい。蛍光染料が併存しない場合の同波長域での最大反射率は20〜80%程度であり、この反射率と蛍光染料を含む系の反射率90%以上との差が、人間の視覚に高い彩度と青みを感じさせることになる。
【0044】
黄色蛍光染料は、前述の反射スペクトル特性が、前述の波長範囲において130%以下であることが好ましい。130%を超える反射率は、光源の色温度差などにより、視覚による色差が大きくなるため好ましくない。
【0045】
本発明に使用される黄色蛍光染料としては、ペリレン系、フルオロセイン系、ベンゾチアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾオキサゾール系、ルブレン系、スチルベン系化合物、ビフェニル系、ピラゾリン系、クマリン系、ナフタルイミド系、オキサゾリン系、ピラニン系染料などから適宜選択される。そのような染料としては、油溶性染料、分散染料、水溶性染料などと分類されるものが多く、その中から適宜選択して使用される。
【0046】
本発明においては、黄色蛍光染料としては、C.I.ソルベントイエロー33、98、131、135、及び160:1などの油溶性染料、C.I.ディスパースイエロー82などの分散染料、C.I.ベーシックイエロー40などの水溶性染料などが特に好適に使用される。
【0047】
本発明において、蛍光染料はピグメントイエロー155顔料100重量部に対して、0.05〜30重量部の組成で使用することができる。この範囲より少ないと彩度向上の効果が小さく、またこの範囲より多いと、光源の違いによる色差が大きくなるなどの副作用が大きくなる。
【0048】
本発明の蛍光染料とピグメントイエロー155顔料のより好ましい組成は、イエロー顔料100重量部に対して、0.1〜20重量部、更に好ましくはピグメントイエロー155顔料100重量部に対して、0.1〜10重量部である。これらの範囲内は、色温度の異なる光源の下で色差△Eを小さくするという観点で好ましい。
【0049】
本発明の顔料は、主として画像形成用などの着色剤組成物の構成成分として使用される。その着色剤組成物の製造方法は、その用途により大きく変化する。例えば、電子写真用乾式トナーの場合には溶剤、バインダー樹脂と混合、乾燥した上で粉砕される。またインクジェットインキの場合には水、もしくは有機溶剤、樹脂、必要な添加剤を加えられて分散される。
【0050】
本発明の顔料と組み合わせて使用される樹脂としては特に限定されないが、画像形成用途の場合には画像の機械的強度、耐水性等を高めるために一般には疎水性樹脂が好んで使用される。そのような樹脂としてはポリエステル系、アクリル系、ポリオレフィン系、スチレン系、ゴム系、ポリアミド系、ウレタン系など各種樹脂から適宜選択されて使用できる。これらの中でも特に、ポリエステル系、アクリル系、スチレン−アクリル系、ウレタン系樹脂が好ましい。
【0051】
本発明の顔料と組み合わせて使用される樹脂としては上記の熱可塑性樹脂に限らず、例えば多官能性アクリル樹脂、エポキシ系など、光や熱により三次元的に架橋する、硬化性樹脂もその用途に合わせて使用可能である。
【0052】
本発明の着色剤組成物中の顔料と樹脂の組成は、その用途により大きく異なるが、一般的には樹脂100重量部に対して顔料0.5〜30重量部、好ましくは1〜15重量部である。この範囲以下では、必要とする着色度を得ようとすると膜厚を大きくする必要があり、乾燥・定着性能を低下させたり、画質を低下させることがある。また上記範囲を越えると、着色材料で形成された画素などの機械的強度、密着性などが低下して好ましくない。
【0053】
本発明の着色剤組成物には、アゾ顔料、樹脂バインダー以外に、その用途に必要な機能、物性を満たすために他の材料を適宜添加することが可能である。そのような添加剤としては、顔料分散剤、耐光性改良のための紫外線吸収剤、塗工性を改良するための界面活性剤、基材との密着性などを改良するための粘着付与剤、着色塗工膜の熱特性や表面特性を制御するためのワックス類などがある。またプリンター用トナーの場合には、静電特性を制御するための帯電制御剤を添加することが好ましい。また上記添加剤の添加量は、それぞれの用途に応じて適切とされる範囲で加えられる。
【0054】
本発明のアゾ顔料の提供方法は、その用途や使用する立場によって種々の方法が可能である。例えば
1)反応容器中でアゾカップリング反応を起こし、水洗して不純物を除去、乾燥、粉砕したアゾ顔料を、必要に応じて別工程で本発明のフィニッシング処理を行う。
2)アゾカップリングさせた後、水洗、低沸点溶剤などで水を置換した後、本発明のフィニッシング処理を行う。
3)アゾカップリングさせた後、水洗、低沸点溶剤などで水を置換した後、他の着色顔料や蛍光染料を添加した上で、フィニッシング処理を行う、
などの工程が可能である。
【0055】
前者1)の工程は、例えば一旦製造したアゾ顔料に、他の顔料や蛍光染料を添加して、フィニッシングすることにより、用途に適した特性を持たせたい場合に好適に行われる。2)の工程は、顔料製造工程に続けてフィニッシング処理をおこなうため、製造コストが低くなる。3)の場合には、種々の着色剤により顔料の特性を調整したい場合に好ましい。
【実施例】
【0056】
実施例1
登録特許公報3917764号公報(特許文献2)実施例1に記載される通りにジアゾ化ジメチル2−アミノテレフタレートをビス(アセトアセチルアミノ)−ベンゼンとカップリングさせた後、濾過、水洗することにより顔料懸濁液を得た。その顔料懸濁液(顔料濃度約20%)100重量部を、イソブタノール(沸点108℃)500mlと容器中で混合し、150℃で1時間加熱するフィニッシング処理を行った後、蒸留、水洗、乾燥することによって、目的とする顔料を得た。
【0057】
実施例2
実施例1と同様の方法によりカップリング反応、濾過、水洗を行った後、フィニッシング処理の条件を150℃で30分とした以外は、実施例1と同じ条件でC.I.ピグメントイエロー155の顔料を得た。
【0058】
実施例3
実施例1と同様の方法によりカップリング反応、濾過、水洗を行った後、フィニッシング処理の条件を150℃で2時間とした以外は、実施例1と同じ条件でC.I.ピグメントイエロー155の顔料を得た。
【0059】
実施例4
実施例1と同様の方法によりカップリング反応、濾過、水洗を行った後、フィニッシング処理の条件を150℃で4時間とした以外は、実施例1と同じ条件でC.I.ピグメントイエロー155の顔料を得た。
【0060】
実施例5
実施例1と同様の方法によりアゾカップリング反応、濾過、水洗を行った後、その顔料100重量部に対してC.I.ピグメントイエロー180(クラリアント製、Toner Yellow HG)の顔料プレスケーキを100重量部添加、混合し、その粗製顔料をイソブタノール中、150℃で2時間加熱、その後、蒸留、水洗、乾燥することによって2種の顔料が混合したイエロー顔料を得た。
【0061】
実施例6
実施例1と同様の方法によりアゾカップリング反応、濾過、水洗した。そのフィニッシング未処理顔料プレスケーキ(ピグメントイエロー155)の100重量部に対して、黄色蛍光染料(C.I.ソルベントイエロー160:1、Lancsess社、Macrolex Fluorescent Yellow 10GN)を10重量部添加し、混合、水洗した。その粗製顔料をイソブタノール中、150℃で2時間加熱し、その後、蒸留、水洗、乾燥することによって、C.I.ピグメントイエロー155と黄色蛍光染料とが混合したイエロー顔料を得た。
【0062】
比較例1
フィニッシング処理を行わなかったこと以外は、実施例1と同じ条件でカップリング反応、濾過、水洗、乾燥を行い、比較例1の顔料サンプルとした。このサンプルの粒子形態は、図2の透過型電子顕微鏡(TEM)写真のように、極めて細長い針状結晶であり、そのアスペクト比が10を超えることは明らかであるが、定量的に短径の測定が困難なため、一次粒子径、アスペクト比の測定は困難であった。
【0063】
比較例2
フィニッシング処理をジメチルホルムアミド(沸点153℃)中、150℃で2時間加熱することによって行った以外は、実施例1と同様の方法、条件により比較例2の顔料サンプルを得た。
【0064】
(一次粒子径およびアスペクト比の測定)
一次粒子は顔料の透過型電子顕微鏡(TEM)写真を撮って測定する。この目的のために15分間、顔料をジエチルエーテル中に分散し、次いでPETフィルムに噴霧して塗布する。顕微鏡写真を13,000x及び29,000x倍率で撮る。1000個の粒子に関して、粒子径と長径・短径をカウントし、長径と短径から算出される面積と同等の円の直径を一次粒子径とした。
【0065】
アスペクト比に関しても同様に長径・短径の比率を平均化し、表中に記載した。図1は、拡大倍率11,000倍における実施例2のピグメントイエロー155粒子の形態観察写真、図2は同様の条件での比較例1(フィニッシング処理無し)の場合の形態観察写真である。
【0066】
(メタノール・ウエッタビリティMW値の測定)
顔料0.1gを100mLのイオン交換水の入ったビーカーに入れ、市販の測定装置WET101P(レスカ社製)にてメタノール・ウエッタビリティを測定した。マグネットスターラーの回転速度は200rpm,メタノールの滴下速度は3ml/min.として、水槽下部にレーザー光を入射し、水槽の反対側でレーザー光強度を測定することにより透過率を測定した。メタノール添加前は、顔料が水面で浮遊しており、レーザー光の透過率は100%であるが、メタノール添加と共に、顔料が沈降しはじめ、透過率が低下し始める。表中には水相の透過度が95%を下回った時のメタノール濃度を測定し、その値をMW値とした(例えば、100mLの水に対して5mLのメタノールを添加した時に沈降すれば、そのMW値は5%)。
【0067】
(分散液粘度測定用サンプル作成)
水非含有溶媒系における特性を評価するのにアルキド−メラミン(AM樹脂)ワニスを選択した。顔料3.6g、分散ワニス26.4g、140gの3mmガラスビーズを150mLのプラスチックボトルに入れ、ペイントシェ−カーにて30分間分散する。その後、希釈ワニスを60gいれ、ペイントシェ−カーで5分間混合することにより、分散液を得る。
【0068】
用いた分散ワニスは以下の組成を有している:
50.0部のVialkydAC451n/70SNB(AM樹脂および添加物、Esser−Lacke社製)
50.0部のSolvent Naphtha
希釈ワニスは以下の組成を有する:
26.4部のVialkyd AC451n/70SNB(AM樹脂および添加物、Esser−Lacke社製)
29.4部のVialkyd AC451/60SNA(AM樹脂および添加物、Esser−Lacke社製)
35.8部のMaprenal MF600/55BIB(AM樹脂および添加物、Esser−Lacke社製)
2.17部のn−ブタノール
2.17部のDepanolI
1.86部のブチルジグリコール
2.2部のSolvent Naphtha
【0069】
(分散液粘度測定)
粘度は、この分散液をHaake製のコーンプレート粘度計(Roto Visco 1)(チタンコーン:60mm径、1°)を用いて、0から250s−1の範囲の剪断速度への粘度の依存を調べることによって決定した。表1に報告される粘度値は250s−1の剪断速度で測定した。
【0070】
(有機溶剤の含有量の測定方法)
100mlプラスチックボトルに20gの3mmガラスビーズを秤量し、3gの顔料サンプルを秤量する。そこにテトラヒドロフラン30gを添加し、軽く撹拌したのち、ペイントシェーカーで1時間分散を行う。分散後0.2μmの目開きのメンブレンフィルターで吸引濾過し、濾液を採取する。その濾液をGC−MSにて分析し、顔料中の有機溶剤を定量した。
【0071】
(着色力の評価方法)
0.6gの顔料、10gのポリエステル樹脂(ファイントーン(Finetone)(登録商標)382ES、Reichhold Chemical(株)製)、及び20gの溶媒(テトラヒドロフラン)を量り取り、70mlのガラスボトルに入れ、直径2mmのガラスビーズを70g量り取り、縦形ペイントシェーカーで60分分散させる。出来上がったインキ(顔料濃度6%)を、バーコーターNo.2にてコート紙に展色する。展色後の乾燥にはホットプレートを用いる。バーコーターNo.2を用いた時のウエット塗布量は12μmであった。この展色物を、分光光度計〔SPECTRA FLASH SF600(データカラーインターナショナル社製)〕を用い、測定用光源としてD65光源、視野角10°で測色を行い、着色力(%)を定量的に評価した。
【0072】
(画像強度(擦過テスト残存率)の評価)
上記着色力評価方法で作成した展色、乾燥したサンプルを使用して、擦過性試験器(ヤスダ(株)製、タイプNo.162 SLIP TESTER)で、荷重200g、100往復、普通紙を相手として摩擦にかけ着色塗膜(印刷物)を摩耗させる。擦過性試験前後の印刷物のイエロー濃度をスペクトロアイ(GretagMacbeth社製)にて測定し、印刷物の濃度残存率を算出し表1中に記載した。
得られた評価結果を表1に示した。
【0073】
【表1】
【0074】
表1の結果を纏めると以下のようになる。
1)メタノール・ウエッタビリティ値(MW値)が10%以下(実施例1)で、実用的な粘度である400mPas以下となる。MW値が10%を超えると(比較例1)、粘度が700と非常に高くなる(分散が不良あるいはハンドリング性(生産性)の問題が生じる)。
2)擦過テストによる画像濃度残存率は、MW値が低下するにつれ、その残存率が小さくなる。この一つの要因として、顔料表面の親水性が高く(MW値小)なると、樹脂との親和性が低下し、擦過強度が低下すると推測された。
3)擦過テストによる画像濃度残存率は高い程好ましい。その許容される下限値は明確ではないが、他のマゼンタやシアン顔料の特性を考慮すると余り低い値はゆるされず、本発明者らは、その下限値を70%と判断した。そのように考えると、画像強度を達成する上でのMW値の下限値は、実施例4の2%と考えられる。
4)比較例2(MW値が1)は、実施例4(MW値が2、残存率70.8%)に比べると、MW値が1低下するだけでも、擦過テスト残存率が52.6%と著しく低くなることを示している。これは、顔料表面の疎水性低下による樹脂―顔料間の親和性低下が主因と考えられる。
5)また、他の要因として残留溶剤による樹脂の可塑化等が並行して起きて、擦過テスト強度を著しく低下させているとも考えられ、そのため顔料中の残留溶剤濃度は低い程好ましく、500ppm未満、好ましくは300ppm以下、更に好ましくは100ppm以下、就中50ppm以下が好ましい。
6)比較例1(本発明のフィニッシング処理無し)は、MW値が12%と高く、また高沸点溶剤の残留が無いにも関わらず、その擦過テスト残存率が69.6%と、実施例1などに比べて低い。この原因は、図2の写真で見られるように、大きな塊状粒子の存在し、その顔料が印字表面に露出していることが推測される。このことからMW値が10%を超えると、粗大粒子が発生し、MW値が2%以下となると、顔料表面が親水化して樹脂との接着性が低下することにより、擦過テスト残存率が低下するものと理解される。
7)実施例5のように異なった顔料(PY180)の混合系でも、上記と同様の効果が認められ、着色剤の色相改良などにも有効である。
8)実施例6のように蛍光染料(SY160:1)の添加系でも、上記と同様の効果が認められ、着色剤の彩度や明度向上にも有効である。
図1
図2