(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6894954
(24)【登録日】2021年6月8日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】医療用マニピュレータおよびこれを備えた外科手術システム
(51)【国際特許分類】
A61B 34/35 20160101AFI20210621BHJP
B25J 13/00 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
A61B34/35
B25J13/00 Z
【請求項の数】12
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2019-171985(P2019-171985)
(22)【出願日】2019年9月20日
(65)【公開番号】特開2020-58793(P2020-58793A)
(43)【公開日】2020年4月16日
【審査請求日】2019年9月20日
(31)【優先権主張番号】特願2018-189768(P2018-189768)
(32)【優先日】2018年10月5日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】514063179
【氏名又は名称】株式会社メディカロイド
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】特許業務法人 有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 康彦
(72)【発明者】
【氏名】吉田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】▲土▼井 航
【審査官】
宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第106236276(CN,A)
【文献】
米国特許出願公開第2017/0079728(US,A1)
【文献】
特開2015−27722(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/35
B25J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科手術システムに使用される医療用マニピュレータであって、
先端部に医療器具を保持するように構成され、6以上の自由度を有する第1の多自由度マニピュレータアームと、
先端部に医療器具を保持するように構成され、6以上の自由度を有する第2の多自由度マニピュレータアームと、
先端部に医療器具を保持するように構成され、6以上の自由度を有する第3の多自由度マニピュレータアームと、
先端部に医療器具を保持するように構成され、6以上の自由度を有する第4の多自由度マニピュレータアームと、
前記第1乃至第4の多自由度マニピュレータアームのそれぞれの基端部を順番に保持すると共に、前記第1および第4の多自由度マニピュレータアームのそれぞれの基端部を移動可能に保持し、前記第2および第3の多自由度マニピュレータアームのそれぞれの基端部を固定保持するように構成された長尺状のアームベースと、
前記第1の多自由度マニピュレータアームの基端部を移動させることにより、前記アームベースに固定保持された前記第2の多自由度マニピュレータアームの基端部との間隔を変更するように構成された第1の移動機構と、
前記第4の多自由度マニピュレータアームの基端部を移動させることにより、前記アームベースに固定保持された前記第3の多自由度マニピュレータアームの基端部との間隔を変更するように構成された第2の移動機構と、
前記アームベースを移動させるように構成されたポジショナと、を備え、
前記第1の移動機構は、前記アームベース内に固定配置された複数の第1のローラと、前記複数の第1のローラの各々に張架された第1のスライド用ベルトと、前記複数の第1のローラのうち少なくとも一つを回動させる第1の駆動モータと、前記第1のスライド用ベルトと前記第1の多自由度マニピュレータアームの基端部とを連結する第1の連結部材と、を備えており、
前記第2の移動機構は、前記アームベース内に固定配置された複数の第2のローラと、前記複数の第2のローラの各々に張架された第2のスライド用ベルトと、前記複数の第2のローラのうち少なくとも一つを回動させる第2の駆動モータと、前記第2のスライド用ベルトと前記第4の多自由度マニピュレータアームの基端部とを連結する第2の連結部材と、を備えている、医療用マニピュレータ。
【請求項2】
前記アームベースは、長尺状のベース本体部と、前記ベース本体部の第1端部に前記ベース本体部に対して傾斜して接続された第1傾斜部と、前記ベース本体部の第2端部に前記ベース本体部に対して傾斜して接続された第2傾斜部と、を備え、
前記第1傾斜部が前記第1の多自由度マニピュレータアームの基端部を保持し、前記ベース本体部が前記第2および第3の多自由度マニピュレータアームのそれぞれの基端部を固定保持し、前記第2傾斜部が前記第4の多自由度マニピュレータアームの基端部を保持するように構成されている、請求項1に記載の医療用マニピュレータ。
【請求項3】
前記第1の移動機構は、前記第1の多自由度マニピュレータアームを移動させるために前記第1傾斜部に配置され、前記第2の移動機構は、前記第4の多自由度マニピュレータアームを移動させるために前記第2傾斜部に配置される、請求項2に記載の医療用マニピュレータ。
【請求項4】
前記第1乃至第4の多自由度マニピュレータアームは、それぞれ7自由度以上の自由度を有している、請求項1乃至3の何れか1項に記載の医療用マニピュレータ。
【請求項5】
前記ポジショナは、垂直多関節ロボットにより構成されている、請求項1乃至4の何れか1項に記載の医療用マニピュレータ。
【請求項6】
前記第1および第4の多自由度マニピュレータアームのそれぞれの基端部を前記アームベースに対して移動させる指示を行う操作入力部をさらに備える、請求項1乃至5の何れか1項に記載の医療用マニピュレータ。
【請求項7】
前記操作入力部は、前記ポジショナによって前記アームベースを移動させる指示を行うように構成されている、請求項6に記載の医療用マニピュレータ。
【請求項8】
前記第1および第4の多自由度マニピュレータアームのそれぞれの基端部を前記アームベースに対して自動的に移動させるように前記第1および第2の移動機構を制御するように構成された制御部を備える、請求項1乃至7の何れか1項に記載の医療用マニピュレータ。
【請求項9】
先端部に医療器具を保持するように構成され、6以上の自由度を有する第1の多自由度マニピュレータアーム、先端部に医療器具を保持するように構成され、6以上の自由度を有する第2の多自由度マニピュレータアーム、先端部に医療器具を保持するように構成され、6以上の自由度を有する第3の多自由度マニピュレータアーム、および先端部に医療器具を保持するように構成され、6以上の自由度を有する第4の多自由度マニピュレータアームを備える医療用マニピュレータと、
前記第1乃至第4の多自由度マニピュレータアームの動作を指示する指示装置と、を備えており、
前記医療用マニピュレータは、
前記第1乃至第4の多自由度マニピュレータアームのそれぞれの基端部を順番に保持すると共に、前記第1および第4の多自由度マニピュレータアームのそれぞれの基端部を移動可能に保持し、前記第2および第3の多自由度マニピュレータアームのそれぞれの基端部を固定保持するように構成された長尺状のアームベースと、
前記第1の多自由度マニピュレータアームの基端部を移動させることにより、前記アームベースに固定保持された前記第2の多自由度マニピュレータアームの基端部との間隔を変更するように構成された第1の移動機構と、
前記第4の多自由度マニピュレータアームの基端部を移動させることにより、前記アームベースに固定保持された前記第3の多自由度マニピュレータアームの基端部との間隔を変更するように構成された第2の移動機構と、
前記アームベースを移動させて所定の位置に位置づけるように構成されたポジショナと、を備え、
前記第1の移動機構は、前記アームベース内に固定保持された複数の第1のローラと、前記複数の第1のローラの各々に張架された第1のスライド用ベルトと、前記複数の第1のローラのうち少なくとも一つを回動させる第1の駆動モータと、前記第1のスライド用ベルトと前記第1の多自由度マニピュレータアームの基端部とを連結する第1の連結部材と、を備え、
前記第2の移動機構は、前記アームベース内に固定配置された複数の第2のローラと、前記複数の第2のローラの各々に張架された第2のスライド用ベルトと、前記複数の第2のローラのうち少なくとも一つを回動させる第2の駆動モータと、前記第2のスライド用ベルトと前記第4の多自由度マニピュレータアームの基端部とを連結する第2の連結部材と、を備える、外科手術システム。
【請求項10】
前記医療用マニピュレータは、前記第1および第4の多自由度マニピュレータアームのそれぞれの基端部を前記アームベースに対して移動させる指示を行う操作入力部を備える、請求項9に記載の外科手術システム。
【請求項11】
前記操作入力部は、手術前の段階であるセットアップ時に、前記第1および第4の多自由度マニピュレータアームのそれぞれの基端部を前記アームベースに対して移動させる指示を行うように構成されている、請求項10に記載の外科手術システム。
【請求項12】
前記第1および第4の多自由度マニピュレータアームのそれぞれの基端部を前記アームベースに対して自動的に移動させるように前記第1および第2の移動機構を制御するように構成された制御部を備える、請求項9乃至11の何れか1項に記載の外科手術システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用マニピュレータおよび当該医療用マニピュレータを備えた外科手術システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数のマニピュレータアームを備え、施術者の操作に基づいて複数のマニピュレータアームを動かして外科手術を行うマスタ−スレーブ型の外科手術システムが知られている(例えば、特許文献1,2,3参照)。このような外科手術システムにおいて、1つの施術部位に対して複数のマニピュレータアームが協動して細かい施術を行うことが可能なように、複数のマニピュレータアームは互いに近接して配置される。
【0003】
特許文献1,2の外科手術システムにおいては、複数のマニピュレータアームの基端部分(支持部分)はプラットホームに固定されている。また、特許文献3の外科手術システムにおいては、2つのマニピュレータアームがアームベースに取り付けられており、このアームベースがレール上を移動する構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2017−515522号公報
【特許文献2】特表2008−528130号公報
【特許文献3】特開2012−024920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1,2の外科手術システムでは、マニピュレータアームがプラットホームに固定されているため、マニピュレータアームが動作している際に、術式や緊急度に応じてマニピュレータアームの自由度を向上させることが困難である。また、マニピュレータアーム同士の干渉を防ぐことができない恐れもある。また、上記特許文献3の外科手術システムでは、マニピュレータアーム群としての移動は可能となっているものの、特許文献1,2と同様にマニピュレータアームの自由度を向上させることは困難であるし、マニピュレータアーム同士の干渉を防ぐことができない恐れもある。
【0006】
そこで、本発明は、患者に対して複数の多自由度マニピュレータアームを配置する際の自由度を向上させることができ、多自由度マニピュレータアーム同士の干渉を防ぐことができる医療用マニピュレータおよびこれを備えた外科手術システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の医療用マニピュレータは、
外科手術システムに使用される医療用マニピュレータであって、先端部に医療器具を保持するように構成され
、6以上の自由度を有する第1の多自由度マニピュレータアームと、先端部に医療器具を保持するように構成され
、6以上の自由度を有する第2の多自由度マニピュレータアームと、
先端部に医療器具を保持するように構成され、6以上の自由度を有する第3の多自由度マニピュレータアームと、先端部に医療器具を保持するように構成され、6以上の自由度を有する第4の多自由度マニピュレータアームと、前記第1
乃至第
4の多自由度マニピュレータアームのそれぞれの基端部を
順番に保持する
と共に、前記第1および第4の多自由度マニピュレータアームのそれぞれの基端部を移動可能に保持し、前記第2および第3の多自由度マニピュレータアームのそれぞれの基端部を固定保持するように構成された長尺状のアームベースと、前記第1の多自由度マニピュレータアームの基端部
を移動させることにより、前記
アームベースに固定保持された前記第2の多自由度マニピュレータアームの基端部との間隔を変更するように構成された
第1の移動機構と、
前記第4の多自由度マニピュレータアームの基端部を移動させることにより、前記アームベースに固定保持された前記第3の多自由度マニピュレータアームの基端部との間隔を変更するように構成された第2の移動機構と、前記アームベースを移動させるように構成されたポジショナと、を備え、前記
第1の移動機構は、
前記アームベース内に固定配置された複数の第1のローラと、前記複数の第1のローラの各々に張架された第1のスライド用ベルトと、前記複数の第1のローラのうち少なくとも一つを回動させる第1の駆動モータと、前記第1のスライド用ベルトと前記第1の多自由度マニピュレータアームの基端部とを連結する第1の連結部材と、を備えて
おり、前記第2の移動機構は、前記アームベース内に固定配置された複数の第2のローラと、前記複数の第2のローラの各々に張架された第2のスライド用ベルトと、前記複数の第2のローラのうち少なくとも一つを回動させる第2の駆動モータと、前記第2のスライド用ベルトと前記第4の多自由度マニピュレータアームの基端部とを連結する第2の連結部材と、を備えているものである。
【0008】
本発明に従えば、移動機構によって、第1の多自由度マニピュレータアームの基端部と第2の多自由度マニピュレータアームの基端部との間隔が変更されるようになっている。これにより、術式や緊急度に応じて患者に対する複数のマニピュレータアームの配置の自由度を向上させることができると共に、多自由度マニピュレータアーム同士の干渉を防ぐことができる。特に、手術中にマニピュレータアームが動作している際にも、マニピュレータアームの自由度を向上させることができ、また多自由度マニピュレータアーム同士の干渉を防ぐことができる。
【0011】
上記発明において、前記アームベースは、長尺状のベース本体部と、前記ベース本体部の第1端部に前記ベース本体部に対して傾斜して接続された第1傾斜部と、前記ベース本体部の第2端部に前記ベース本体部に対して傾斜して接続された第2傾斜部と、を備え、前記第1傾斜部が前記第1の多自由度マニピュレータアーム
の基端部を保持し、前記ベース本体部が前記第2および第3の多自由度マニピュレータアーム
のそれぞれの基端部を
固定保持し、前記第2傾斜部が前記第4の多自由度マニピュレータアーム
の基端部を保持するように構成されていることが好ましい。
【0012】
上記構成に従えば、患者に対する多自由度マニピュレータアームのアプローチが容易となる。
【0013】
上記発明において、前記第1および第2の多自由度マニピュレータアームは6自由度以上の自由度を有していることが好ましい。
【0014】
上記構成に従えば、多自由度マニピュレータアーム同士の干渉を防ぎ易くなり、また患者に対するアプローチも行い易くなる。
【0015】
本発明の外科手術システムは、先端部に医療器具を保持するように構成され
、6以上の自由度を有する第1の多自由度マニピュレータアーム
、先端部に医療器具を保持するように構成され
、6以上の自由度を有する第2の多自由度マニピュレータアーム
、先端部に医療器具を保持するように構成され、6以上の自由度を有する第3の多自由度マニピュレータアーム、および先端部に医療器具を保持するように構成され、6以上の自由度を有する第4の多自由度マニピュレータアームを備える医療用マニピュレータと、前記第1
乃至第
4の多自由度マニピュレータアームの動作を指示する指示装置と、を備えており、前記医療用マニピュレータは、前記第1
乃至第
4の多自由度マニピュレータアームのそれぞれの基端部を
順番に保持する
と共に、前記第1および第4の多自由度マニピュレータアームのそれぞれの基端部を移動可能に保持し、前記第2および第3の多自由度マニピュレータアームのそれぞれの基端部を固定保持するように構成された長尺状のアームベースと、前記第1の多自由度マニピュレータアームの基端部
を移動させることにより、
前記アームベースに固定保持された前記第2の多自由度マニピュレータアームの基端部との間隔を変更するように構成された
第1の移動機構と、
前記第4の多自由度マニピュレータアームの基端部を移動させることにより、前記アームベースに固定保持された前記第3の多自由度マニピュレータアームの基端部との間隔を変更するように構成された第2の移動機構と、前記アームベースを移動させて所定の位置に位置づけるように構成されたポジショナと、を備え、前記
第1の移動機構は、
前記アームベース内に固定保持された複数の
第1のローラと、前記複数の
第1のローラの各々に張架された
第1のスライド用ベルトと、前記複数の
第1のローラのうち少なくとも一つを回動させる
第1の駆動モータと、前記
第1のスライド用ベルトと前記第1の多自由度マニピュレータアームの基端部とを連結する
第1の連結部材と、を備え
、前記第2の移動機構は、前記アームベース内に固定配置された複数の第2のローラと、前記複数の第2のローラの各々に張架された第2のスライド用ベルトと、前記複数の第2のローラのうち少なくとも一つを回動させる第2の駆動モータと、前記第2のスライド用ベルトと前記第4の多自由度マニピュレータアームの基端部とを連結する第2の連結部材と、を備えるものである。
【0016】
本発明に従えば、外科手術システムが上述の医療用マニピュレータを備える構成において、移動機構によって、第1の多自由度マニピュレータアームの基端部と第2の多自由度マニピュレータアームの基端部との間隔が変更されるようになっている。これにより、術式や緊急度に応じて、患者に対する複数のマニピュレータアームの配置の自由度を向上させることができると共に、多自由度マニピュレータアーム同士の干渉を防ぐことができる。特に、手術中にマニピュレータアームが動作している際にも、多自由度マニピュレータアーム同士の干渉を防ぐことができる。
【0017】
上記発明において、前記医療用マニピュレータは、前記第1
および第4の多自由度マニピュレータアームの
それぞれの基端部を前記アームベースに対して移動させる指示を行う操作入力部を備えてもよい。また、前記操作入力部は、手術前の段階であるセットアップ時に、前記第1
および第4の多自由度マニピュレータアームの
それぞれの基端部を前記アームベースに対して移動させる指示を行うように構成されていることが好ましい。
【0018】
上記構成に従えば、セットアップ時にアームベースを患者に対して位置づける操作を容易に行うことができる。また、セットアップ時にアーム同士の干渉が生じないように当該アーム同士の間隔を移動機構により容易に変更することができる。
【0019】
上記発明において、前記移動機構は、手術中に、前記第1の多自由度マニピュレータアームと前記第2の多自由度マニピュレータアームとが干渉することを防止するために前記第1多自由度マニピュレータアームの基端部を前記アームベースに対して移動させるように構成されていることが好ましい。
【0020】
上記構成に従えば、手術中に、医師により第1および第2アームが操作されているときに、アーム同士の干渉が生じないように当該アーム同士の間隔を移動機構により容易に変更することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、患者に対する複数の多自由度マニピュレータアームの配置の自由度を向上させることができ、多自由度マニピュレータアーム同士の干渉を防ぐことができる医療用マニピュレータおよびこれを備えた外科手術システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の一実施形態に係る外科手術システムを示す斜視図である。
【
図2】
図1の外科手術システムにおけるマニピュレータアームの構成を示す図である。
【
図3】
図1の外科手術システムにおける制御系統の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図1のアームベースの構成を示す正面図である。
【
図6】(a)はアームベースの変形例を示す正面図であり、(b)はアームベースの別の変形例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態に係る外科手術システムについて図面を参照して説明する。以下に説明する外科手術システムは、本発明の一実施形態に過ぎない。従って、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で追加、削除および変更が可能である。
【0024】
図1に示すように、外科手術システム100は、ロボット支援手術やロボット遠隔手術などのように、医師などの施術者が医療用マニピュレータ1を用いて患者に内視鏡外科手術を施すシステムである。
【0025】
外科手術システム100は、患者側システムである医療用マニピュレータ1と、この医療用マニピュレータ1の多自由度マニピュレータアーム(以下、単にアームと記載)3を操るための指示装置2とを備えている。指示装置2は医療用マニピュレータ1から離れて配置され、アーム3は指示装置2によって遠隔操作される。施術者はアーム3に行わせる動作を指示装置2に入力し、指示装置2はその動作指令を医療用マニピュレータ1に送信する。医療用マニピュレータ1は、指示装置2から送信された動作指令を受け取り、この動作指令に基づいて医療用マニピュレータ1のアーム3が具備する内視鏡アセンブリやインストゥルメントなどの長軸状の医療器具4を動作させる。
【0026】
指示装置2は、外科手術システム100と施術者とのインターフェースを構成し、アーム3を操作するための装置である。指示装置2は、手術室内に又は手術室外に配置されている。指示装置2は、施術者が動作指令を入力するための操作用マニピュレータアーム51、操作ペダル52、タッチパネル53、内視鏡アセンブリで撮影された画像を表示するモニタ54、医師などの操作者の顔の高さ位置にモニタ54を支持する支持アーム55、およびタッチパネル53が配されたバー56等を含む。施術者は、モニタ54で患部を視認しながら、操作用マニピュレータアーム51および操作ペダル52を操作して指示装置2に動作指令を入力する。指示装置2に入力された動作指令は、有線又は無線により医療用マニピュレータ1のコントローラ6に伝達される。アーム3はコントローラ6により動作制御される。なお、コントローラ6は例えばマイクロコントローラ等のコンピュータにより構成されている。
【0027】
医療用マニピュレータ1は、外科手術システム100と患者とのインターフェースを構成する。医療用マニピュレータ1は、滅菌された滅菌野である手術室内に配置されている。
【0028】
医療用マニピュレータ1は、ポジショナ7と、ポジショナ7の先端部に取り付けられた長尺状のアームベース5と、アームベース5にその基端部が着脱可能に取り付けられた複数(本実施形態では4本)のアーム3とを備えている。医療用マニピュレータ1は複数のアーム3が折り畳まれた収納姿勢をとるように構成されている。上記4本のアーム3をそれぞれアーム3A,3B,3C,3Dとする。これらアーム3A,3B,3C,3Dは、アームベース5の長手方向にこの順で並んで保持されている。
【0029】
ポジショナ7は、垂直多関節形ロボットとして構成されており、手術室の所定位置に配置された台車70のベース本体70aに設けられており、アームベース5の位置を3次元的に移動させることができる。ポジショナ7およびアームベース5は、図略の滅菌ドレープで覆われ、ポジショナ7およびアームベース5が手術室内の滅菌野から遮蔽されている。台車70のハンドル74には、操作入力部であるタッチパネルディスプレイ48が設けられている。タッチパネルディスプレイ48は、医療用マニピュレータ1の状態に関連する情報データ、特定の手術に関する情報、及び、外科手術システム100の全体に関する情報を表示するように構成される。タッチパネルディスプレイ48は、アーム3A,3Dの基端部をアームベース5に対して移動させる指示を行うものである。また、タッチパネルディスプレイ48は、医療用マニピュレータ1のポジショナ7に関する操作の入力を受け付ける入力装置として構成される。すなわち、タッチパネルディスプレイ48は、ポジショナ7によってアームベース5を移動させる指示を行うように構成される。
【0030】
複数のアーム3のうちアーム3Aの先端部には、医療器具4として、例えば取り替え用のインストゥルメント(例えば鉗子など)が保持される。アーム3Bの先端部には、医療器具4として、例えば鉗子などのインストゥルメントが保持される。また、アーム3Cの先端部には、医療器具4として、例えば内視鏡アセンブリが保持される。アーム3Dの先端部には、医療器具4として、例えば取り替え用の内視鏡アセンブリが保持される。
【0031】
医療用マニピュレータ1において、アームベース5は、複数のアーム3の拠点となるハブとしての機能を有している。本実施形態では、ポジショナ7およびアームベース5によって、複数のアーム3を移動可能に支持するマニピュレータアーム支持体Sが構成されている。ただし、マニピュレータアーム支持体Sは少なくともアームベース5を含んでいればよく、ポジショナ7に代えて、例えば直動レール、昇降装置、あるいは、天井または壁に取り付けられたブラケットに支持されたアームベース5によってマニピュレータアーム支持体Sが構成されてもよい。
【0032】
医療用マニピュレータ1では、ポジショナ7から医療器具4まで、要素が一連に繋がっている。以下、本明細書では、上記一連の要素において、ポジショナ7へ向かう側の端部を基端部といい、その反対側の端部を先端部という。
【0033】
図2に示すように、医療器具4がインストゥルメントである場合、当該医療器具4はその基端部に設けられた駆動ユニット89を有している。このインストゥルメントの先端部に設けられたエンドエフェクタは、動作する関節を有する器具(例えば、鉗子、ハサミ、グラスパー、ニードルホルダ、マイクロジセクター、ステープルアプライヤー、タッカー、吸引洗浄ツール、スネアワイヤ、および、クリップアプライヤー等)、ならびに、関節を有しない器具(例えば、切断刃、焼灼プローブ、洗浄器、カテーテル、および、吸引オリフィス等)を含む群より選択される。
【0034】
医療用マニピュレータ1を用いた施術においては、最初に、タッチパネルディスプレイ48から動作指令を受けたコントローラ6が、アームベース5と手術台又は患者とが所定の位置関係となるように、ポジショナ7を動作させてアームベース5の位置決めを行う。次に、コントローラ6が、患者の体表に留置されたスリーブ(カニューレスリーブ)と医療器具4とが所定の初期位置関係となるように、各アーム3を動作させて医療器具4の位置決めを行う。加えて、コントローラ6によってアーム3がスライドされることで、アーム3の基端部同士の間隔が適宜調整される。詳細は後述する。なお、ポジショナ7の位置決め動作と各アーム3の位置決め動作とは同時に行われてもよい。そして、コントローラ6は、原則としてポジショナ7を静止させた状態で、指示装置2からの動作指令に応じて、各アーム3により医療器具4を動作させて適宜変位および姿勢変化させつつ施術を行う。
【0035】
続いて、アーム3の詳細な構成について説明する。
図2に示すように、アーム3は、アーム本体30と、アーム本体30の先端部に連結された並進アーム35とを備え、基端部に対し先端部を3次元空間内で移動させることができるように構成されている。なお、本実施の形態では、医療用マニピュレータ1が具備する複数のアーム3はいずれも同様または類似の構成を有するが、複数のアーム3のうち少なくとも1本が他のアームと異なる構成を有してもよい。アーム3の先端部には、医療器具4を保持可能なホルダ36が設けられている。
【0036】
アーム3はアームベース5に対し着脱可能に構成されている。アーム3は、洗浄処理および滅菌処理のための耐水性、耐熱性、および耐薬品性を備えている。アーム3の滅菌処理には様々な方法があるが、例えば、高圧蒸気滅菌法、EOG滅菌法、消毒薬による化学滅菌法などが選択的に用いられる。
【0037】
アーム本体30は、アームベース5に着脱可能に取り付けられるベース80と、ベース80から先端部に向けて順次連結された第1リンク81〜第6リンク86とを含む。より詳細には、ベース80の先端部に、捩り関節J31を介して第1リンク81の基端部が連結されている。第1リンク81の先端部に、捩り関節J32を介して第2リンク82の基端部が連結されている。第2リンク82の先端部に、曲げ関節J33を介して第3リンク83の基端部が連結されている。第3リンク83の先端部に、捩り関節J34を介して第4リンク84の基端部が連結されている。第4リンク84の先端部に、曲げ関節J35を介して第5リンク85の基端部が連結されている。第5リンク85の先端部に、捩り関節J36を介して第6リンク86の基端部が連結されている。第6リンク86の先端部に、曲げ関節J37を介して並進アーム35の基端部が連結されている。これにより、アーム3は、冗長軸(本実施の形態においては捩り関節J32)を含む7軸関節アームとして構成される。すなわち、アーム3は6自由度以上の自由度を有している。したがって、アーム3は、当該アーム3の先端部の位置を変化させることなく姿勢を変えることができるようになっている。
【0038】
アーム本体30の外殻は、主にステンレスなどの耐熱性および耐薬品性を有する部材で形成されている。また、リンク同士の連結部には、耐水性を備えるためのシール(図略)が設けられている。このシールは、高圧蒸気滅菌法に対応する耐熱性や、消毒薬に対する耐薬品性を備えている。なお、リンク同士の連結部において、連結される一方のリンクの端部の内側に他方のリンクの端部が挿入されており、これらのリンクの端部同士の間を埋めるようにシールが配置されることによって、シールが外観から隠蔽されている。これにより、シールとリンクとの間から水、薬液、蒸気の浸入が抑制されている。
【0039】
並進アーム35は、その先端部に取り付けられたホルダ36を医療器具4の軸方向に移動させることにより、このホルダ36に取り付けられた医療器具4をその軸方向に並進移動させる。
【0040】
並進アーム35は、アーム本体30の第6リンク86の先端部に、曲げ関節J37を介して連結される基端側リンク61と、先端側リンク62と、基端側リンク61と先端側リンク62を連結する連結軸63と、図略の連動機構とを有する。また、並進アーム35の先端部、すなわち先端側リンク62の先端部には、回動軸68が設けられている。並進アーム35の駆動源は、アーム本体30の先端部すなわち第6リンク86に設けられている。連結軸63は、曲げ関節J37と平行に配置され、先端側リンク62は、基端側リンク61に対して連結軸63回りに回動可能に構成されている。上記の連動機構は、公知のリンク機構を採用可能であり、例えばプーリおよびタイミングベルトを用いた構成でもよいし、ギアトレインを含む機構でもよい。
【0041】
先端側リンク62の基端部(第6リンク86との連結部)には、曲げ関節J37と同軸に配置される第1並進アーム駆動軸および第2並進アーム駆動軸(共に図略)が設けられている。第2並進アーム駆動軸は、連動機構に連結されており、第2並進アーム駆動軸が第1並進アーム駆動軸に対して差動することにより、基端側リンク61の曲げ関節J37回りの回動角度、先端側リンク62の連結軸63回りの回動角度、および、ホルダ36の回動軸68回りの回動角度が所定の比率(例えば1:2:1)を保持するように、並進アーム35が並進動作する。第1並進アーム駆動軸および第2並進アーム駆動軸が同期して回動することにより、並進アーム35全体がアーム本体30に対して曲げ関節J37回りに回動する。
【0042】
続いて、
図3に示すように、アーム本体30には、各関節J31〜J36に対応して、駆動用のサーボモータM31〜M36、サーボモータM31〜M36の回転角を検出するエンコーダE31〜E36、および、サーボモータM31〜M36の出力を減速させてトルクを増大させる減速機(図略)が設けられる。なお、
図3では、関節J31〜J36のうち、捩り関節J31と捩り関節J36との制御系統が代表的に示され、その他の関節J33〜J35の制御系統は省略されている。さらに、アーム本体30には、並進アーム35が並進動作または回動動作する関節J37に対応して、第1並進アーム駆動軸を駆動するためのサーボモータM37aおよび第2並進アーム駆動軸を駆動するためのサーボモータM37bと、サーボモータM37a,M37bの回転角を検出するエンコーダE37a,E37bと、サーボモータM37a,M37bの出力を減速させてトルクを増大させる減速機(図略)とが設けられる。
【0043】
なお、エンコーダE31〜E36,E37a,E37bは、サーボモータM31〜M36,M37a,M37bの回転位置(回転角)を検出する回転位置検出手段の一例として設けられており、エンコーダE31〜E36,E37a,E37bに代えてレゾルバなどの回転位置検出手段が用いられてもよい。また、アーム3の駆動系統の上記の各要素およびこれらのための配線ならびに制御部は、耐高温材料で構成され、滅菌処理のための耐熱性が備えられている。
【0044】
コントローラ6は、動作指令に基づいて複数のアーム3の移動(スライド移動以外の移動)を制御するアーム制御部601と、アーム3のスライド移動を制御するアームスライド制御部610とを含む。アーム制御部601にはサーボ制御部C31〜C36,C37a,C37bが電気的に接続され、図略の増幅回路などを介してサーボモータM31〜M36,M37a,M37bが電気的に接続されている。
【0045】
指示装置2に入力された動作指令に基づいて、アーム制御部601にアーム3の先端部の位置姿勢指令が入力される。アーム制御部601は、位置姿勢指令とエンコーダE31〜E36,E37a,E37bで検出された回転角とに基づいて、位置指令値を生成して出力する。この位置指令値を取得したサーボ制御部C31〜C36,C37a,C37bは、エンコーダE31〜E36,E37a,E37bで検出された回転角および位置指令値に基づいて駆動指令値(トルク指令値)を生成して出力する。この駆動指令値を取得した増幅回路は、駆動指令値に対応した駆動電流をサーボモータM31〜M36,M37a,M37bへ供給する。このようにして、アーム3の先端部が、位置姿勢指令と対応する位置および姿勢に到達するように、各サーボモータM31〜M36,M37a,M37bがサーボ制御される。
【0046】
コントローラ6には、アーム制御部601にデータを読み出し可能な記憶部602が設けられている。記憶部602には、指示装置2又はタッチパネルディスプレイ48を介して入力された手術情報が予め記憶されている。
【0047】
記憶部602には、アーム3の先端部に保持される医療器具4の長さ等の情報が記憶されている。これにより、アーム制御部601は、アーム3の先端部の位置姿勢指令に基づいて、当該アーム3の先端部に保持された医療器具4の先端部の位置を把握可能となっている。また、記憶部602には、アーム3同士の干渉の判定処理を行うための処理用データが記憶されている。
【0048】
外科手術システム100を用いた施術中において、アーム制御部601は、指示装置2からの動作指令に基づいて、複数のアーム3の動作を制御するように構成されている。このときアーム制御部601は、記憶部602に記憶されている上記処理用データを用いて、複数のアーム3同士が干渉を生じるか否かを判定する処理を行う。そして、アーム制御部601は、上記干渉が生じると判定される場合には、その干渉が生じないように各アーム3の動作を制御するように構成されている。
【0049】
アームスライド制御部610は、術式等の条件に応じて、手術前の段階であるセットアップ時に、アーム3同士の干渉を防ぐために、手術助手などによるタッチパネルディスプレイ48の操作により生成される動作指令に基づきアーム3の基端部同士の間隔を予め変更する。また、アームスライド制御部610は、施術中におけるアーム3同士の干渉を防ぐために、医師の操作による指示装置2からの動作指令を基に、記憶部602に記憶されている上記処理用データを用いて干渉の判定処理を行う。そして、アームスライド制御部610は、アーム3同士の干渉が生じると判定される場合には、その干渉が生じないようにアーム3の基端部同士の間隔を変更するように構成されている。
【0050】
次に、アームベース5の構成およびアーム3の基端部同士の間隔を変更する構成について説明する。
図4に示すように、アームベース5は2つの移動機構47を有する。この移動機構47は、4つのアーム3のうちの一端側のアーム3Aの基端部とこれと隣り合うアーム3Bの基端部との間隔を変更する第1移動機構47Aと、他端側のアーム3Dの基端部とこれと隣り合うアーム3Cの基端部との間隔を変更する第2移動機構47Bとを含む。第1移動機構47Aはアーム3Aを移動させるために後述の傾斜部5cに配置され、第2移動機構47Bはアーム3Dを移動させるために後述の傾斜部5bに配置される。以下、詳細に説明する。
【0051】
図4に示すように、アームベース5は、正面視において略V字状に形成されている。詳しくは、アームベース5は、長尺状のベース本体部5aと、このベース本体部5aに対して傾斜して接続された長尺状の傾斜部5b,5cとを有している。傾斜部5bはベース本体部5aの第2端部(
図4では右端)5a2に一体的に接続されており、傾斜部5cはベース本体部5aの第1端部(
図4では左端)5a1に一体的に接続されている。傾斜部5bは、ベース本体部5aが患者に対向する位置に配置された場合に当該患者に近づく方に傾斜されている。また、傾斜部5cは、ベース本体部5aが患者に対向する位置に配置された場合に当該患者に近づく方に傾斜されている。このような構成によって、アームベース5は、患者の腹部に対向する位置に配置されたときに当該患者の腹部の曲線に沿うような形状となっている。
【0052】
ここで、本実施形態では、4本のアーム3のうちアーム3Bおよびアーム3Cはアームベース5(アームベース5のベース本体部5a)に固定された状態で設けられている。これに対して、アーム3Dは傾斜部5bの傾斜方向にスライド可能にアームベース5に設けられており、アーム3Aは傾斜部5cの傾斜方向にスライド可能にアームベース5に設けられている。すなわち、アーム3Dは隣り合うアーム3Cに対して近づく方向および離れる方向に移動するように構成されており、アーム3Aは隣り合うアーム3Bに対して近づく方向および離れる方向に移動するように構成されている。
【0053】
アームベース5は筐体状に構成されており、上述の移動機構47A,47Bはアームベース5内に設けられている。詳細には、移動機構47A,47Bは、4つのローラ40と、この4つのローラ40に張架されて回動可能に構成されたスライド用ベルト41と、このスライド用ベルト41とアーム3Dとを連結する連結部材42と、駆動モータ611(
図5参照)と、駆動ベルト45(
図5参照)とを有している。なお、駆動モータ611の出力を減速させる減速機(図略)および当該駆動モータ611の回転角を検出するエンコーダ(図略)が設けられている。
【0054】
各ローラ40は、スライド用ベルト41が正面視で略矩形状に張架されるように当該矩形の各頂点位置に配置されている。連結部材42は、傾斜部5bの傾斜方向に配置された一対のローラ40(
図4では下側の一対のローラ40)間で張架されたスライド用ベルト41の部分に連結されている。また、
図5に示すように、駆動ベルト45は、駆動モータ611の回転軸と一のローラ40(
図4で例えば左上のローラ40)とに張架されている。つまり、
図4の左上のローラ40が駆動ローラとして構成され、他の3つのローラ40が従動ローラとして構成されている。
【0055】
以上のような構成において、アーム3Dの基端部とアーム3Cの基端部との間隔を変更する際には、アームスライド制御部610により駆動モータ611が駆動されることで、各ローラ40が駆動ベルト45を介して時計回又は反時計回りに回動する。これにより、スライド用ベルト41が回動するため、連結部材42が傾斜部5bの傾斜方向の一方側又は他方側に移動する。これによって、アーム3Dを傾斜部5bの傾斜方向に沿ってスライドさせることができる。これにより、アーム3Dをアーム3Cに対して近づく方向および離れる方向に移動させることができ、アーム3Dの基端部とアーム3Cの基端部との間隔を変更することができる。なお、アーム3Aを移動機構47Aにより傾斜部5cの傾斜方向に沿ってスライドさせて当該アーム3Aの基端部とアーム3Bの基端部との間隔を変更する構成は、アーム3Dを移動機構47Bによりスライドさせる構成と同じであるため、それ以上の説明を省略する。
【0056】
以上説明したように、本実施形態の医療用マニピュレータ1を備える外科手術システム100によれば、移動機構47によって、アーム3Dをスライドさせることで当該アーム3Dの基端部とアーム3Cの基端部との間隔が変更され、アーム3Aをスライドさせることで当該アーム3Aの基端部とアーム3Bの基端部との間隔が変更されるようになっている。これにより、術式に応じて各アーム3の患者に対する配置の自由度を向上させることができると共に、アーム3同士の干渉を防ぐことができる。
【0057】
また、本実施形態では、アームベース5は略V字状に形成されている。これにより、アーム3の患者に対するアプローチが容易となる。
【0058】
さらに、本実施形態では、移動機構47は、手術中に、アーム3の基端部同士の間隔を変更することができるように構成されている。これにより、例えば予期し得なかった緊急対応が必要な場合でも、アーム3の基端部同士の間隔を変更することができ、アーム3同士の干渉を防ぐことができる。
【0059】
(他の実施形態)
上記実施形態の他にも、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で次のような種々の変形も可能である。
【0060】
上記実施形態では、アームベース5を正面視で略V字状に形成することとしたが、これに限定されるものではなく、例えば
図6(a)に示すように、正面視で直線状に形成されたアームベース55を採用してもよく、また
図6(b)に示すように、正面視で円弧状に形成されたアームベース56を採用してもよい。
図6(b)の構成によれば、患者に対するアーム3のアプローチが容易となる。さらに、アームベース5を長手方向の中央で山折りするような形状に形成してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、4つのアーム3のうち両端に位置するアーム3A,3Dのみをスライド可能に構成したが、これに限定されるものではなく、4つアーム3全てをスライド可能に構成してもよい。
【0062】
さらに、上記実施形態では、スライド用ベルト41によりアーム3A,3Dをスライドさせる構成の移動機構47を採用することとしたが、これに限定されるものではなく、例えばシリンダ等の他のアクチュエータにより移動機構47を構成してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 医療用マニピュレータ
2 指示装置
3 多自由度マニピュレータアーム
3A 多自由度マニピュレータアーム(第1の多自由度マニピュレータアーム)
3B 多自由度マニピュレータアーム(第2の多自由度マニピュレータアーム)
3C 多自由度マニピュレータアーム(第3の多自由度マニピュレータアーム)
3D 多自由度マニピュレータアーム(第4の多自由度マニピュレータアーム)
4 医療器具
5 アームベース
5a ベース本体部
5a1 ベース本体部の第1端部
5a2 ベース本体部の第2端部
5b 傾斜部(第2傾斜部)
5c 傾斜部(第1傾斜部)
7 ポジショナ
47 移動機構
47A 第1移動機構
47B 第2移動機構
48 タッチパネルディスプレイ(操作入力部)
100 外科手術システム