特許第6894961号(P6894961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6894961
(24)【登録日】2021年6月8日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】空気式放射空調機
(51)【国際特許分類】
   F24F 5/00 20060101AFI20210621BHJP
   F28D 1/053 20060101ALI20210621BHJP
   F28F 1/02 20060101ALI20210621BHJP
   F24D 5/02 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   F24F5/00 101B
   F24F5/00 102
   F28D1/053 A
   F28F1/02 A
   F24D5/02 A
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-216246(P2019-216246)
(22)【出願日】2019年11月29日
(65)【公開番号】特開2021-85629(P2021-85629A)
(43)【公開日】2021年6月3日
【審査請求日】2019年11月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000244958
【氏名又は名称】木村工機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石田 貴之
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英数
【審査官】 町田 豊隆
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−145045(JP,A)
【文献】 特開2002−031369(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/037214(WO,A1)
【文献】 特開2018−146118(JP,A)
【文献】 特開2012−154611(JP,A)
【文献】 特開2012−088042(JP,A)
【文献】 特開2010−249340(JP,A)
【文献】 特開2008−304096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 5/00
F24D 5/02
F28D 1/053
F28F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調用空気を被空調空間(S)に出しつつ前記空調用空気の熱を放射する放射ユニット(1)と、前記空調用空気と冷水又は温水の熱交換媒体とを熱交換させる熱交換器(2)と、前記空調用空気を前記放射ユニット(1)に送るファン(3)と、を備え、
前記熱交換器(2)は、前記熱交換媒体が流通する伝熱管群(16)を複数のグループ(G)に分配しかつ前記分配の割合を相違させて成る分流回路(14)を、備え、
前記分流回路(14)の最少分配割合の第1のグループ(G1)の前記熱交換媒体の流量と前記第1グループ(G1)を除いた前記分流回路(14)の第2の前記グループ(G2)の前記熱交換媒体の流量とを別個に調整するバルブ(19)を、備え、
前記伝熱管群(16)が前記熱交換器(2)を通る空気の気流方向を横切るように蛇行しつつ前記気流方向に向かって延伸し、かつ、前記気流方向から見たときに、前記第2グループ(G2)と前記第1グループ(G1)が重ならず前記第2グループ(G2)のみが含まれる不重複ゾーン(F)と、前記第2グループ(G2)と前記第1グループ(G1)が重なる重複ゾーンと、が積層状に形成され、かつ、前記重複ゾーンが前記不重複ゾーン(F)で挟まれるように前記分流回路(14)を構成し、
冷房時に前記冷水を前記熱交換器(2)の前記分流回路(14)の前記第1グループ(G1)に流通させて前記第2グループ(G2)に流通させないように前記バルブ(19)を制御する制御装置(6)を、備えたことを特徴とする空気式放射空調機。
【請求項2】
前記伝熱管群(16)を楕円管にて構成した請求項1に記載の空気式放射空調機。
【請求項3】
前記放射ユニット(1)が、前記空調用空気を前記被空調空間(S)に出す貫孔(7)の群と、蓄熱部(8)と、を備え、
前記蓄熱部(8)が、前記空調用空気が通る隙間をあけて配置されると共に前記空調用空気を分流拡散させながら整流状に通過させて前記貫孔(7)から前記被空調空間(S)へ出させかつ前記空調用空気の熱を蓄めて前記貫孔(7)から前記被空調空間(S)へ放射する伝熱板(9)の群を、備えた請求項1又は2に記載の空気式放射空調機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気式放射空調機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2011−145045号公報に示す空気式放射空調機は、熱交換器で冷却又は加熱した空気が噴流するように設けられた空気供給部と、空気供給部から出た噴流空気の誘引作用にて被空調空間の空気を引き込むように設けられた空気誘引部と、空気供給部の噴流空気と空気誘引部の誘引空気との混合空気を被空調空間へ放出しかつ混合空気の熱を被空調空間へ放射するように設けられた空気混合部と、を備えている。この構造で生じる放射作用と誘引再熱作用にて、ドラフト感や温度ムラのない快適空調を行えるが、構造が複雑でコスト高となるため、誘引再熱機能を省略して露点温度を超える吹出温度で冷房できる簡易な空気式放射空調機を検討した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−145045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
その空気式放射空調機は、空調用空気と熱交換媒体との間で熱交換させる熱交換器を備え、その熱交換器の伝熱管群を2つのグループに等分することで熱交換媒体の下限流量を減らして、熱交換器の下限能力制御範囲を広げる構造であった。しかしながら、伝熱管群を等分しているため熱交換媒体の下限流量に限度があり、僅少な熱交換量(貫流熱量)で足りる低空調負荷の場合、能力過多となって冷やし過ぎや温め過ぎが生じ、快適性が損なわれる問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上記課題を解決するため、空調用空気を被空調空間に出しつつ前記空調用空気の熱を放射する放射ユニットと、前記空調用空気と熱交換媒体を熱交換させる熱交換器と、前記空調用空気を前記放射ユニットに送るファンと、を備え、前記熱交換器は、前記熱交換媒体が流通する伝熱管群を複数のグループに分配しかつ一部又は全部の前記グループの前記熱交換媒体の限界流量の割合が異なるように分配した分流回路を、備え、低空調負荷の場合に前記分流回路の最少限界流量の第1の前記グループで前記熱交換媒体の流量を増減させる前記制御装置を、備えたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1の発明によれば、低空調負荷の場合に最少限界流量の第1グループで熱交換媒体の流量を増減させて下限流量をさらに最少化できる。そのため、熱交換器の下限能力制御範囲が広がって低空調負荷の場合でも能力過多とならず、エネルギー浪費及び冷やし過ぎや温め過ぎが無くなって省エネ性と快適性が向上する。
熱交換媒体が冷温水で低空調負荷の場合でも冷温水の温度差を一定に制御できるので空調機の少水量大温度差運転ができ、少水量化による配管や空調設備の簡略化と、大温度差化による熱源機の省エネ化を図れる。
【0007】
さらに、冷房時に熱交換媒体を第1グループに流通させて第2グループに流通させないようにし、第1グループを通過して過冷却除湿した空気を、不重複ゾーンを通過した前記過冷却除湿空気よりも高温のバイパス空気で再熱し、不快な冷感がないドライエアーを得ることができる。このとき、前記過冷却除湿空気が逃げないように前記バイパス空気で挟むので混合が促進されて確実に再熱することができる。そのため、湿度が高くてジメジメする中間期でも、コールドドラフトのないカラッとした気流で空調ができ快適性が向上する。しかも、バイパスダンパ等の機器が不要でコストダウンとコンパクト化を図れる。
【0008】
請求項の発明によれば、伝熱管群の死水領域が減少し、伝熱管群の通風抵抗が小さくて省エネとなり、空調用空気との接触面積(貫流熱量)が増して熱交換効率が向上する。そのため、熱交換媒体が冷温水の場合、熱交換器の伝熱面積を増加(大型化)させずに少水量大温度差運転ができる。
請求項の発明によれば、熱交換器、ファン及び放射ユニットを一体化した空調機なので、製作及び施工が簡単でコストダウンできる。蓄熱部を、空調用空気の蓄熱と整流に兼用でき、熱放射能力が向上し風量ムラと温度ムラのない快適空調を行える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の空気式放射空調機の底面側斜視図である。
図2図1に示す空気式放射空調機の底面図である。
図3図2に示す空気式放射空調機のA−A断面図である。
図4図3に示す空気式放射空調機のB−B断面図である。
図5】熱交換器を示す斜視図である。
図6図5のD矢視の簡略説明図である。
図7図5のE矢視の簡略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0010】
図1から図7は、本発明の空気式放射空調機の一実施例を示している。この空気式放射空調機は、空調用空気を被空調空間Sに出しつつ空調用空気の熱を放射する放射ユニット1と、外気や還気又はこれらの混合空気を空調用空気として熱交換する熱交換器2と、空調用空気を放射ユニット1に送るファン3と、ドレンパン4と、ケーシング5と、制御装置6と、を備えている。この放射ユニット1の底面を被空調空間Sに向けた状態で、被空調空間Sの天井等に放射空調機を設置する。各図の太い点線の矢印は空調用空気の流れる方向を示す。
【0011】
放射ユニット1は、空調用空気が流れるチャンバ部12と、チャンバ部12の底部に形成された貫孔7の群と、チャンバ部12内に設けられた蓄熱部8と、を備える。蓄熱部8は、空調用空気が通る隙間をあけて配置されると共に空調用空気を分流拡散させながら整流状に通過させて貫孔7から被空調空間Sへ出させかつ空調用空気の熱を蓄めて貫孔7から被空調空間Sへ放射する伝熱板9の群を、備える。空調用空気の熱は伝熱板9の群に熱伝達し、貫孔7の群を通して伝熱板9の群から被空調空間Sへ放射される。
【0012】
放射ユニット1、熱交換器2及びファン3は、ケーシング5の内部に設ける。ケーシング5は、天井チャンバTや図示省略のダクト等を介して被空調空間Sの空気(還気)を取入れる還気入口部10と、外気を取入れる外気入口部11と、を有している。外気取入口11は、ダクト23を介して屋外に接続する。
【0013】
熱交換器2は、冷水又は温水の熱交換媒体で空調用空気を熱交換する構造、フロンなどの冷媒の熱交換媒体で空調用空気を熱交換する構造、その他の構造のものが利用可能であるが、図例では冷水又は温水で空調用空気を熱交換する構造のものを例示している。熱交換器2は、空調用空気と熱交換媒体を熱交換させて空調用空気を冷却又は加熱する。熱交換器2は、フィン群13と分流回路14とを備えている。フィン群13は、空調用空気が通る隙間をあけて配置した多数のプレートフィン15から成る。
【0014】
分流回路14は、熱交換媒体が流通する伝熱管群16を複数のグループGに分配しかつ一部又は全てのグループGの熱交換媒体の限界流量(熱交換量)の割合が異なるように分配して構成する。たとえば、図6の太い一点鎖線で示す単独かつ最少限界流量の第1のグループG(G1)と、第1グループ(G1)を除いた図6の細い一点鎖線で示す限界流量が第1グループ(G1)よりも多い第2のグループG(G2)と、に分ける。伝熱管群16は空調用空気の気流方向を横切るように蛇行させてフィン群13と接続する。伝熱管群16の直管部は楕円管にて構成するのが望ましいが円形管としてもよい。
【0015】
第1グループG1の熱交換媒体入口は第1の分岐ヘッダ17に接続し、第2グループG2の熱交換媒体入口は第2の分岐ヘッダ17に接続する。第1グループG1と第2グループG2の熱交換媒体出口は両方とも合流ヘッダ18に接続する。分岐ヘッダ17はバルブ19を介して往配管20に接続し、合流ヘッダ18は還配管21に接続する。往配管20と還配管21には熱交換媒体である冷水又は温水が流れ、図示省略のチラーやボイラーなどの熱源機で温度調整される。分流回路14は、伝熱管群16が熱交換器2を通る空気の気流方向を横切るように蛇行しつつ前記気流方向に向かって延伸し、かつ、前記気流方向から見たときに、第2グループG2と第1グループG1が重ならず第2グループG2のみが含まれる不重複ゾーンFと、第2グループG2と第1グループG1が重なる重複ゾーンと、が積層状に形成され、かつ、重複ゾーンが不重複ゾーンFで挟まれるように構成する。制御装置6は、たとえば冷房時に熱交換媒体を熱交換器2の分流回路14の第1グループG1に流通させて第2グループG2に流通させないようにバルブ19を制御する。
【0016】
制御装置6は、熱交換媒体の流量を調整するバルブ19と、制御器22と、分岐ヘッダ17に入る熱交換媒体の温度と合流ヘッダ18から出る熱交換媒体の温度から熱交換器2において空調用空気との熱交換で生じる熱交換媒体の温度差を検出する温度差検出部(図示省略)と、を備えている。バルブ19は流量(弁開度)を無段階に調整することができる比例制御弁とし、分流回路14のグループGごとに設けて別個に流量を調整する。制御器22は、低空調負荷の場合に分流回路14の最少限界流量の第1グループG1のみで熱交換媒体の流量を増減させると共に、熱交換媒体の温度差が一定になるようにバルブ19で流量を制御する。
【0017】
また制御器22は、たとえば高空調負荷の場合に全グループGで熱交換媒体の流量を増減させて熱交換媒体の温度差を一定に制御すると共に、高空調負荷と低空調負荷域との間の通常空調負荷の場合に第2グループG2で熱交換媒体の流量を増減させて熱交換媒体の温度差を一定に制御する。これにより真夏や真冬などのように最大の熱交換量が必要となる高空調負荷の場合から、中間期などのように僅少な熱交換量で足りる低空調負荷の場合まで幅広く、空調機の少水量大温度差運転に対応できる。
【0019】
なお、本発明は上述の実施例に限定されない。図例では分流回路14のグループGを2つのグループG1とG2に分配しているが、3つ以上のグループGに分配してそのうちの1つのグループGを最少限界流量とするも自由である。
【符号の説明】
【0020】
1 放射ユニット
2 熱交換器
3 ファン
6 制御装置
7 貫孔
8 蓄熱部
9 伝熱板
14 分流回路
16 伝熱管群
F 不重複ゾーン
G グループ
S 被空調空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7