【実施例】
【0079】
計測方法:
(1)走査型電子顕微鏡;
計測方法:得られた試料を5倍希釈してから凍結乾燥し、乾燥したサンプルを走査型電子顕微鏡(SEM、JEOL JEM−6700F、日本)で走査型電子顕微鏡分析を行った。
【0080】
(2)誘導結合プラズマ原子発光;
計測方法:得られた試料について、原子発光スペクトルメーター(OPTIMA 7000DV)で金属イオンCo
2+の含有量を計測した。
【0081】
(3)レオロジー性分析;
計測方法:得られた試料をレオメーター(TA AR−G2)で計測し、半径が40mmでテーパー角が1°のテーパー盤を用いて、スリット幅を1mmとして、計測温度を20℃として、歪みを1%として、貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”が周波数Fに従って変化する関係を計測した。
【0082】
(4)化学発光スペクトル;
計測方法:得られた試料について、蛍光分光光度計(F−7000、Hitachi、日本)を用いて、光源を消して、酸化剤溶液(H
2O
2溶液)を添加して、試料の化学発光スペクトルを計測した。
【0083】
(5)デジタルカメラによる発光図の撮影:
計測方法:得られた試料を2ml取り、小型ビーカーに入れ、酸化剤溶液(H
2O
2溶液)を2ml添加し、暗室中において25sの遅延で撮影し、所定の時間で間隔をあけ、発光状況を記録した。
【0084】
(6)化学発光顕微イメージング;
計測方法:得られた試料を20μl取り、セルに入れ、酸化剤溶液(H
2O
2溶液)を20μl添加し、暗室中において顕微鏡(Olympus IX83広域蛍光顕微鏡)で観察し、10sの遅延で撮影し、微視的状態での発光状況を記録した。明視野において、酸化剤溶液を添加する前の、及び所定の期間の発光反応後の試料の顕微イメージング図をそれぞれ記録した。
【0085】
(7)化学発光特性;
静的注射ルミノメーター(BPCL、北京)で二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の化学発光特性を検討した。ガラス製セルに、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を注入し、その後ディスポーザブルシリンジで0.1M H
2O
2溶液(pH範囲7.0〜11.92のブリトンロビンソン緩衝液(即ちB−R緩衝液)やpH範囲12.0〜13.0のNaOH溶液に溶解され、好ましい結果はpH=10.88であった)を添加し、静的注射の負高圧を450〜1000Vとした。静的注射ルミノメーターで化学発光強度と発光の持続性を計測したと共に、化学発光動態曲線を記録した。
【0086】
実施例1:金属イオンCo
2+・N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造し、ただし、Co
2+とABEIのモル比を1:1とし、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数を99.36重量%とした(材料1)。
【0087】
本実施例において、一般式(I)の化合物はN−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール(「ABEI」)であり、発光増強剤は金属イオンCo
2+であり、ただし、Co
2+とABEIのモル比は1:1であり、キトサンの質量分数は99.36重量%であった。製造方法は以下の通りであった:
【0088】
(i)ビーカー中において、室温で塩基性溶液を配合し、即ちLiOH、KOH、尿素及びH
2Oを質量比4.5:7:8:80.5で混合した。他のビーカーにおいて、前記塩基性溶液を15ml取り、10mM CoCl
2水溶液を600μL添加し、さらにキトサン粉末(市販品として獲得し、平均分子量>1000kDa、脱アセチル化度>90%)を塩基性溶液におけるキトサンの質量分数が2.5重量%になるように添加し、マグネチックスターラーで5分間攪拌してから、冷蔵庫に入れて−30℃で凍結し、完全に固形になるまで凍結した。凍結した材料を取り出し、室温で解凍し、金属イオンCo
2+単機能性ヒドロゲルポリマーを得た。
【0089】
(ii)室温・攪拌状態で、工程(i)で得られた金属イオンCo
2+単機能性ヒドロゲルポリマーに、0.1M NaOH溶液に溶解された4mM ABEI水溶液を1.5ミリリットル速やかに添加し、マグネチックスターラーで10時間攪拌し、ABEI・金属イオンCo
2+二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料(材料1)を得、ただし、Co
2+とABEIのモル比は1:1であり、キトサンの質量分数は99.36重量%であった。
【0090】
前記計測方法(1)、(3)、(4)によって材料1の様態、レオロジー性及び化学発光スペクトルをそれぞれ計測したと共に、計測方法(5)〜(7)の方法によって、それぞれデジタルカメラ、顕微鏡及び静的注射ルミノメーターを用いて材料1の化学発光特性を調査し、結果はそれぞれ
図1〜6に示す。
【0091】
実施例2:金属イオンNi
2+・N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造し、ただし、Ni
2+とABEIのモル比を1:1とし、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数を99.36重量%とした(材料2)。
【0092】
工程(i)でCoCl
2の代わりに同じモル量のNiCl
2を用いた以外に、実施例1において材料1を製造した方法と同じ方法により材料2を得た。前記計測方法(7)によって材料2の化学発光動態曲線を計測し、結果は
図4B)における曲線cに示す。
【0093】
実施例3:金属イオンFe
3+・N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造し、ただし、Fe
3+とABEIのモル比を1:1とし、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数を99.36重量%とした(材料3)。
【0094】
工程(i)でCoCl
2の代わりに同じモル量のFeCl
3を用いた以外に、実施例1において材料1を製造した方法と同じ方法により材料3を得た。前記計測方法(7)によって材料3の化学発光動態曲線を計測し、結果は
図4B)における曲線dに示す。
【0095】
実施例4:金属イオンFe
2+・N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造し、ただし、Fe
2+とABEIのモル比を1:1とし、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数を99.36重量%とした(材料4)。
【0096】
工程(i)でCoCl
2の代わりに同じモル量のFe
2SO
4を用いた以外に、実施例1において材料1を製造した方法と同じ方法により材料4を得た。前記計測方法(7)によって材料4の化学発光動態曲線を計測し、結果は
図4B)における曲線eに示す。
【0097】
実施例5:金属イオンCo
2+・N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造し、ただし、Co
2+とABEIのモル比を1:10とし、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数を99.55重量%とした(材料5)。
【0098】
工程(i)で10mM CoCl
2溶液の代わりに1mM CoCl
2溶液を用いた以外に、実施例1において材料1を製造した方法と同じ方法により材料5を得た。前記計測方法(7)によって材料5の化学発光動態曲線を計測し、結果は
図7における曲線bに示す。
【0099】
実施例6:金属イオンCo
2+・N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造し、ただし、Co
2+とABEIのモル比を1:2とし、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数を99.51重量%とした(材料6)。
【0100】
工程(i)で10mM CoCl
2溶液の代わりに5mM CoCl
2溶液を用いた以外に、実施例1において材料1を製造した方法と同じ方法により材料6を得た。前記計測方法(7)によって材料6の化学発光動態曲線を計測し、結果は
図7における曲線cに示す。
【0101】
実施例7:金属イオンCo
2+・N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造し、ただし、Co
2+とABEIのモル比を2:1とし、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数を99.37重量%とした(材料7)。
【0102】
工程(i)で10mM CoCl
2溶液の代わりに20mM CoCl
2溶液を用いた以外に、実施例1において材料1を製造した方法と同じ方法により材料7を得た。前記計測方法(7)によって材料7の化学発光動態曲線を計測し、結果は
図7における曲線eに示す。
【0103】
実施例8:金属イオンCo
2+・N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造し、ただし、Co
2+とABEIのモル比を3:1とし、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数を99.28重量%とした(材料8)。
【0104】
工程(i)で10mM CoCl
2溶液の代わりに30mM CoCl
2溶液を用いた以外に、実施例1において材料1を製造した方法と同じ方法により材料8を得た。前記計測方法(7)によって材料8の化学発光動態曲線を計測し、結果は
図7における曲線fに示す。
【0105】
実施例9:金属イオンCo
2+・ルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造し、ただし、Co
2+とルミノールのモル比を1:1とし、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数を99.62重量%とした(材料9)。
【0106】
工程(ii)でN−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノールの代わりに同じモル量のルミノールを用いた以外に、実施例1において材料1を製造した方法と同じ方法により材料9を得た。前記計測方法(7)によって材料9の化学発光動態曲線を計測し、結果は
図4Cにおける曲線fに示す。
【0107】
N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノールの代わりにルミノールを化学発光試薬として用いると、発光強度が少ししか低下せず、持続的な発光効果が保持していることは分かった。
【0108】
実施例10:金属イオンCo
2+・イソルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造し、ただし、Co
2+とイソルミノールのモル比を1:1とし、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数を99.62重量%とした(材料10)。
【0109】
工程(ii)でN−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノールの代わりに同じモル量のイソルミノールを用いた以外に、実施例1において材料1を製造した方法と同じ方法により材料10を得た。前記計測方法(7)によって材料10の化学発光動態曲線を計測し、結果は
図4Dにおける曲線gに示す。
【0110】
N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノールの代わりにイソルミノールを化学発光試薬として用いると、発光強度が少ししか低下せず、持続的な発光効果が保持していることは分かった。
【0111】
実施例11:金属イオンCo
2+・N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造し、ただし、Co
2+とABEIのモル比を1:1とし、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数を99.83重量%とした(材料11)。
【0112】
工程(i)で、キトサンをその質量分数が99.83重量%になるような質量で添加した以外に、実施例1において材料1を製造した方法と同じ方法により材料11を得た。前記計測方法(7)によって材料11の化学発光動態曲線を計測し、結果は
図10に示す。
【0113】
実施例12:第2の方法により金属イオンCo
2+・N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造した(材料12)。
【0114】
本実施例において、一般式(I)の化合物はN−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノールであり、発光増強剤は金属イオンCo
2+であり、ただし、Co
2+とABEIのモル比は1:1であり、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数は99.36重量%であった。製造方法は以下の通りであった:
【0115】
(i)ビーカー中において、室温で塩基性溶液を配合し、即ちLiOH、KOH、尿素及びH
2Oを質量比4.5:7:8:80.5で混合した。他のビーカーにおいて、前記塩基性溶液を15ml取り、さらにキトサン粉末を塩基性溶液におけるキトサンの質量分数が2.5重量%になるように添加し、マグネチックスターラーで5分間攪拌してから、冷蔵庫に入れて−30℃で凍結し、完全に固形になるまで凍結した。凍結した材料を取り出し、室温で解凍し、キトサンヒドロゲルポリマーを得た。
【0116】
(ii)室温・攪拌状態で、工程(i)で得られたキトサンヒドロゲルポリマーに、4mM ABEI水溶液(0.1M NaOH溶液に溶解されたもの)を1.5ミリリットル、及び10mM CoCl
2水溶液を600μL速やかに添加し、マグネチックスターラーで10時間攪拌し、ABEI・金属イオンCo
2+二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を得、ただし、Co
2+とABEIのモル比は1:1であり、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数は99.36重量%であった(材料12)。
【0117】
前記計測方法(7)によって材料12の化学発光動態曲線を計測し、結果は
図11に示す。
【0118】
実施例13:第3の方法により金属イオンCo
2+・N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造した(材料13)。
【0119】
本実施例において、一般式(I)の化合物はN−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノールであり、発光増強剤は金属イオンCo
2+であり、ただし、Co
2+とABEIのモル比は1:1であり、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数は99.36重量%であった。製造方法は以下の通りであった:
【0120】
ビーカー中において、室温で塩基性溶液を配合し、即ちLiOH、KOH、尿素及びH
2Oを質量比4.5:7:8:80.5で混合した。他のビーカーにおいて、前記塩基性溶液を15ml取り、10mM CoCl
2水溶液を600μL、及び4mM ABEI水溶液(0.1M NaOH溶液に溶解されたもの)を1.5ミリリットル添加し、さらにキトサン粉末を塩基性溶液におけるキトサンの質量分数が2.5重量%になるように添加し、マグネチックスターラーで5分間攪拌してから、冷蔵庫に入れて−30℃で凍結し、完全に固形になるまで凍結した。凍結した材料を取り出し、室温で解凍し、ABEI・金属イオンCo
2+二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を得、ただし、Co
2+とABEIのモル比は1:1であり、キトサンの質量分数は99.36重量%であった(材料13)。
【0121】
前記計測方法(7)によって材料13の化学発光動態曲線を計測し、結果は
図12に示す。
【0122】
実施例14:金属イオンCo
2+・N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造し、ただし、Co
2+とABEIのモル比を1:100とし、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数を95.76重量%とした(材料14)。
【0123】
工程(i)で10mM CoCl
2溶液の代わりに1mM CoCl
2溶液を用い、4mM ABEI溶液の代わりに40mM ABEI溶液を用いた以外に、実施例1において材料1を製造した方法と同じ方法により材料14を得た。前記計測方法(7)によって材料14の化学発光動態曲線を計測し、結果は
図14における曲線aに示す。
【0124】
実施例15:金属イオンCo
2+・N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造し、ただし、Co
2+とABEIのモル比を1:1,000とし、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数を95.76重量%とした(材料15)。
【0125】
工程(i)で10mM CoCl
2溶液の代わりに0.1mM CoCl
2溶液を用い、4mM ABEI溶液の代わりに40mM ABEI溶液を用いた以外に、実施例1において材料1を製造した方法と同じ方法により材料15を得た。前記計測方法(7)によって材料15の化学発光動態曲線を計測し、結果は
図14における曲線bに示す。
【0126】
実施例16:金属イオンCo
2+・N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造し、ただし、Co
2+とABEIのモル比を1:10,000とし、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数を95.76重量%とした(材料16)。
【0127】
工程(i)で10mM CoCl
2溶液の代わりに0.01mM CoCl
2溶液を用い、4mM ABEI溶液の代わりに40mM ABEI溶液を用いた以外に、実施例1において材料1を製造した方法と同じ方法により材料16を得た。前記計測方法(7)によって材料16の化学発光動態曲線を計測し、結果は
図14における曲線cに示す。
【0128】
実施例17:金属イオンCo
2+・N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造し、ただし、Co
2+とABEIのモル比を1:100,000とし、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数を95.76重量%とした(材料17)。
【0129】
工程(i)で10mM CoCl
2溶液の代わりに0.001mM CoCl
2溶液を用いた以外に、実施例1において材料1を製造した方法と同じ方法により材料17を得た。前記計測方法(7)によって材料17の化学発光動態曲線を計測し、結果は
図14における曲線dに示す。
【0130】
実施例18:金属イオンCo
2+・N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造し、ただし、Co
2+とABEIのモル比を1:1とし、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数を60.00重量%とした(材料18)。
【0131】
工程(i)で、キトサンをその質量分数が60.00重量%になるような質量で添加した以外に、実施例1において材料1を製造した方法と同じ方法により材料18を得た。該発光材料は材料1と殆ど完全に同様な発光効果を有した。
【0132】
実施例19:金属イオンCo
2+・N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造し、ただし、Co
2+とABEIのモル比を1:1とし、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数を70.00重量%とした(材料19)。
【0133】
工程(i)で、キトサンをその質量分数が70.00重量%になるような質量で添加した以外に、実施例1において材料1を製造した方法と同じ方法により材料19を得た。該発光材料は材料1と殆ど完全に同様な発光効果を有した。
【0134】
比較例1:金属イオンCo
2+単機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造した(比較材料1)。
【0135】
工程(ii)を省略した、即ち工程(i)のみを実施した以外に、実施例1において材料1を製造した方法と同じ方法により、Co
2+単機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を得た(比較材料1)。前記計測方法(7)によって比較材料1の化学発光動態曲線を計測したが、化学発光は観察されなかった。
【0136】
比較例2:N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール単機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造した(比較材料2)。
【0137】
本比較例の目的は、該N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノールヒドロゲル複合物に対する金属イオンCo
2+の触媒作用を調査することにある。
【0138】
工程(i)でCoCl
2溶液の代わりに同じ体積の水を添加した以外に、実施例1において材料1を製造した方法と同じ方法により、ABEI単機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を得た(比較材料2)。前記計測方法(7)によって比較材料2の化学発光動態曲線を計測し、結果は
図4B)における曲線bに示す。
【0139】
比較例3:N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノールと金属イオンCo
2+の混合溶液を製造した(比較材料3)。
【0140】
本比較例の系において、N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノールと金属イオンCo
2+は互いに混合されただけであり、ヒドロゲルポリマー内に存在していなかった。本比較例の目的は、化学発光の持続性に対するヒドロゲルポリマーマトリックスの影響を調査することにある。
【0141】
前記特定の塩基性溶液に、実施例1と同じ量のCoCl
2溶液とN−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール溶液を添加し、均一に混合し、比較材料3を得た。前記計測方法(7)によって比較材料3の化学発光動態曲線を計測し、結果は
図4E)における曲線hに示す。
【0142】
比較例4:金属イオンCo
2+・N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造し、ただし、Co
2+とABEIのモル比を1:1とし、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数を50.00重量%とした(比較材料4)。
【0143】
工程(i)で、キトサンをその質量分数が50.00重量%になるような質量で添加した以外に、実施例1において材料1を製造した方法と同じ方法により比較材料4を得た。前記計測方法(7)によって比較材料4の化学発光動態曲線を計測したが、ヒドロゲルが形成されたのではなく、フロック様の液状懸濁材料が得られた。
【0144】
比較例5:金属イオンCo
2+・N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造し、ただし、Co
2+とABEIのモル比を1:1とし、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数を99.85重量%とした(比較材料5)。
【0145】
工程(i)で、キトサンをその質量分数が99.85重量%になるような質量で添加した以外に、実施例1において材料1を製造した方法と同じ方法により比較材料5を得た。前記計測方法(7)によって比較材料5の化学発光動態曲線を計測したが、該材料が持続的に発光できないことは発見され、結果は
図13A)に示す。
【0146】
比較例6:金属イオンCo
2+・N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料を製造し、ただし、Co
2+とABEIのモル比を5.5:1とし、二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数を99.05重量%とした(比較材料6)。
【0147】
工程(i)で10mM CoCl
2溶液の代わりに55mM CoCl
2溶液を用いた以外に、実施例1において材料1を製造した方法と同じ方法により比較材料6を得た。前記計測方法(7)によって比較材料6の化学発光動態曲線を計測したが、持続的に発光できず、結果は
図13B)に示す。
【0148】
図1は材料1の走査型電子顕微鏡写真である。
図1から分かるように、材料1は均一な多孔質スポンジ状構造であり、これらのマイクロメートル、ひいてはナノメートルレベルの空孔は、発光試薬及び発光増強剤を有効に富化し、且つこれらの物質の徐放を実現することができるため、該複合材料は高強度で且つ持続的な化学発光特性を有する。
【0149】
図2A)は材料1のレオロジー性の計測結果である。周波数走査の結果から分かるように、周波数が0.1Hz〜10Hzの範囲内にある場合、貯蔵弾性率G’と損失弾性率G”は周波数の上昇に従って上昇する。しかも、該周波数範囲内において、貯蔵弾性率G’の数値は常に損失弾性率G”より大きく、これによって材料1がゲルであることを証明できる。
図2B)は材料1の入れた瓶を倒置する場合の実物図であり、材料1が流動していないことが示され、これによって材料1のゲル性質を証明できる。
【0150】
図3は材料1の化学発光スペクトルである。
図3から分かるように、材料1(曲線b)の最大発光波長は450nm程度であり、単独のN−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール溶液(曲線a)の最大発光波長に近い。材料1にN−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノールが含まれ、且つ化学発光がN−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノールから由来することは証明される。また、計測方法(2)に記載の誘導結合プラズマ原子発光によって材料1におけるCo
2+の含有量を計測したところ、13.21μg/gであり、材料1に金属イオンCo
2+が含まれることは証明される。以上の特性データから明らかなように、金属イオンCo
2+及びN−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノールを共に含有する二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料は成功に合成された、即ち本発明にかかる二機能性キトサンヒドロゲルポリマー複合材料が得られた。
【0151】
化学発光性能
図4A)は材料1(曲線a)の化学発光動態曲線である。
図4B)はそれぞれ、比較材料2(曲線b)、材料2(曲線c)、材料3(曲線d)及び材料4(曲線e)の化学発光動態曲線である。
図4C)と4D)はそれぞれ、材料9(曲線f)及び材料10(曲線g)の化学発光動態曲線である。
図4E)は比較材料3(曲線h)の化学発光動態曲線である。曲線aとbの比較から分かるように、材料1は抜群の化学発光性能を有し、ABEI単機能性ヒドロゲルポリマー複合材料(比較材料2)に比べて、化学発光強度は少なくとも40倍向上した。これは、N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール発光系に対する金属イオンCo
2+の良好な触媒効果によるものである。曲線hから分かるように、キトサンが無い場合、強く発光した後すぐに減衰し、70分間の化学反応を経った後、比較材料3(即ちABEIとCo
2+の混合物)の発光は既に0ぐらいに低減した。本発明にかかる材料14〜17との比較から分かるように(下表1に示すように)、本発明にかかるヒドロゲルポリマー複合材料は、高強度で且つ持続的な発光を実現でき、材料14〜17の化学発光強度が初期発光強度の90%の範囲内に保持する発光は22.3〜56.4時間続くことができ、化学発光強度が初期発光強度の50%の範囲内に保持する発光は28.6〜75.0時間も続くことができた。これから分かるように、本発明にかかるヒドロゲル材料は、元々のABEIの「フラッシュ」タイプの発光から新規な「フラット」タイプの発光への変換を実現した。本発明にかかる二機能性複合材料は、高強度で且つ持続的な優れた発光を示し、発光時間を著しく延長し、該持続的で高強度な発光は、キトサンヒドロゲルの特別な多孔質構造の徐放機能によるものである。実験結果から分かるように、本発明にかかる材料1は持続的で高強度に発光するという顕著な効果を有し、新規な優れた発光光源材料である。
【0152】
【表1】
【0153】
備考:材料14〜17において、複合材料の総重量に対して、キトサンの重量百分率はいずれも95.76重量%であった。
【0154】
図4B)における曲線c、d及びeから分かるように、金属イオンNi
2+、Fe
3+、Fe
2+をそれぞれ含有する二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料も、いずれも高強度で且つ持続的な化学発光特性を有し、しかもこれらの材料の化学発光強度はいずれもABEI単機能性ヒドロゲルポリマー複合材料より高い。該特性は、N−(4−アミノブチル)−N−エチルイソルミノール発光系に対する各錯体金属イオンの良好な触媒効果及びキトサンヒドロゲルの徐放作用によるものである。
【0155】
また、
図4C)における曲線f及び
図4D)における曲線gから分かるように、ルミノールとイソルミノールをそれぞれ含有する二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料も、いずれも高強度で且つ持続的な化学発光特性を有する。
【0156】
発明者らは、さらにデジタルカメラ撮影及び化学発光顕微イメージング技術を用いて、材料1の発光強度及び持続性をモニターし、結果はそれぞれ
図5及び
図6に示す。
【0157】
図5は異なる時点でデジタルカメラで記録した材料1の発光状況である。図面に示すように、左右にある2つのビーカーは、それぞれ酸化剤と材料の異なる混合状態での図を示し、図中、左側のビーカーは材料に酸化剤(H
2O
2)溶液を何の攪拌もせずに直接に添加した発光図であり、両者の反応過程を良好に示すことができる。写真の結果によれば、発光は最初に酸化剤H
2O
2溶液とゲル材料の境界で発生し(1分間の図を参照する)、且つ境界における発光層の厚さは増え続け(15分間の図を参照する)、これは、小分子に対するヒドロゲルの徐放作用によって、一般式(I)の化合物の発光断片がヒドロゲルポリマー複合材料から放出されるからである。また、キトサンヒドロゲルに対するH
2O
2水溶液の分解作用により、一般式(I)の化合物の発光断片はヒドロゲルポリマー複合材料からさらに放出され、質量の小さい破片(一般式(I)の化合物も含む)はH
2O
2の分解で生じる酸素ガスによって酸化剤H
2O
2溶液の上部へ持ち上げられる(該減少を記録した25分間の図を参照する)が、質量の大きい破片(一般式(I)の化合物も含む)はヒドロゲルポリマー複合材料の底部に沈むため、酸化剤溶液相の上部でもコロイド相の底部でも化学発光が見える(120分間の図を参照する)。ヒドロゲルの分解物は系中で上下に動く(
図5に示すように、上部と底部の発光層は厚くなりつつある)ことで、未反応の一般式(I)の化合物を酸化剤とさらに接触して反応させ、新たな発光を発生する。このように、化学発光反応は進行し続くことに従って、持続的で安定な化学発光を発生する。右側のビーカーは材料に酸化剤(H
2O
2)溶液を添加して、振盪して均一に混合した後の発光図であり、それから分かるように、最初の所定の期間では強い可視光があり、且つ発光強度は時間の経過に従ってある程度低下するが、3h後にもまだ比較的に強い可視光がある。発光材料として使用する場合、材料と酸化剤の混合手段は材料の使用に影響を与えないことは分かる。2mlの材料を取るだけでも以上のような発光効果を有することから、該材料が良好な発光強度と持続的な発光という特徴を有し、新規発光光源を製造する優れた材料であることは分かる。
【0158】
図6は顕微鏡下での材料1の化学発光図であり、該材料の様態と化学発光過程は微視的に見える。明視野において、A)では材料1が反応前の透明なコロイド状態であり、B)では材料が所定の期間で反応した後、不透明な沈殿状態に変化したことから、前記材料1が徐放作用及びキトサンに対するH
2O
2の分解作用によって持続的で安定な発光を実現するという推測はさらに証明される。暗視野において、C)から分かるように、化学発光反応の進行に従って、気泡が生じ、且つ発光が暗いから明るくなり、そしてまた暗くなる過程も撮影されたことで、材料の発光の持続性は証明される。材料1は、発光強度が高い且つ持続的に発光するという特徴を有するので、発光マーカーとして顕微イメージングによる物質の分析・測定に適用できる。
【0159】
実験により、材料1の発光は可制御性を有し、適量の体積で添加することだけで、所要の長時間の安定な発光を実現でき、発光光源を製造する良好な材料であることもさらに発見された。
【0160】
図7はCo
2+とABEIのモル比が異なる二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料の化学発光動態曲線であり、曲線a〜fはそれぞれ、比較材料2、本発明にかかる材料5、6、1、7及び8に相応する。Co
2+とABEIの異なるモル比が化学発光強度及び発光の持続性・安定性に与える影響は分かる。Co
2+とABEIのモル比の増加に従って、化学発光強度は増強するが、所定の程度に達した後、発光の持続性は低下する。そのため、適切なCo
2+とABEIのモル比の範囲内に入っていてこそ、高強度で且つ持続的に発光する複合材料が得られる。
【0161】
発明者らはさらに、酸化剤の量も本発明にかかる複合材料の化学発光強度及び持続性にある程度の影響を与えることを見出した。材料1に異なる濃度のH
2O
2(0.1mM〜1000mM)溶液を添加し、化学発光の検出を行い、結果は
図8に示し、上記の異なる濃度のH
2O
2溶液を添加する場合はそれぞれ曲線a、b、c、d、eに相応する。H
2O
2の濃度の増加に従って、化学発光の強度も持続性も相応に増強することは分かる。しかしながら、H
2O
2の濃度が1000mMに増加した場合(曲線e)、発光強度は少し低下し、且つ発光の持続性・安定性も低下したが、これは、H
2O
2濃度が大きすぎて、多すぎる気泡が生じたからであるかもしれない。
【0162】
本発明の発明者らはさらに、本発明にかかる材料1は広い範囲のpH値条件下で化学発光を発生できることを見出し、
図9に示すように、本発明にかかる材料1はpH7.0〜13.0の区間内で優れた発光特性を有する。特に、本発明にかかる材料1は生理的環境(pH7.0〜7.96)の空間内でも優れた発光性能を有する。これにより、本発明にかかる材料1は各種の生物的検出に適用でき、ルミノール及びその類似物系による化学発光の応用範囲は大きく拡大される。
【0163】
発明者らはさらに、キトサンの異なる質量分数が最終の複合材料のレオロジー性にある程度の影響を与えることを見出した。複合材料の総重量に対して、キトサンの質量分数は60重量%未満であると、複合材料の発光持続性は十分に持続的ではないが、キトサンの質量分数は99.83重量%を超えると、瞬時的な強い発光が発生し、その後徐々に低下してしまう(
図13Aに示す)。また、Co
2+イオンの含有量もキトサンのゲル化にある程度の影響を与え、キトサンの質量が一定に保持する場合、Co
2+イオンの含有量は高すぎると、キトサンのゲル化に不利である(
図13Bに示す)。そのため、Co
2+イオン、化学発光分子及びキトサンの三者の相対含有量は所定の範囲内に入っていてこそ、高強度で且つ持続的に発光する複合材料が得られる。
【0164】
図11と12はそれぞれ、他の実施形態の製造方法で製造される二機能性ヒドロゲルポリマー複合材料(それぞれ材料12と13に相応する)の化学発光動態曲線である。これらの二種類の方法はいずれも高強度で且つ持続的な複合材料を製造できることは分かる。
【0165】
本発明の具体的な実施形態は既に詳細に説明されたが、当業者ならば理解できるように、公開された全ての教示に基づき、それらの詳細について各種の変更や置換をすることができ、それらの変更はいずれも本発明の保護の範囲に入る。本発明の全範囲は、添付される特許請求の範囲及びそれらの任意の均等物によって決められる。