(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
回転体の軸部を収容する円柱状の収容空間を有する固定体における前記収容空間の内壁面の周方向に沿って形成された溝部を挟んで一対に形成された案内面に設けられた静圧案内構造であって、
前記案内面のそれぞれには、前記回転体の前記軸部の外周面である摺動面に対向するように形成された凹状のポケット部が周方向に複数配置されており、
前記ポケット部における外縁部には、前記摺動面に向かって突出して前記ポケット部を囲むランド部が設けられており、
前記ランド部における前記溝部の側は内ランド部として設けられ、残りの前記ランド部は外ランド部として設けられており、
前記外ランド部における前記摺動面と対向する位置には、前記摺動面に対して第1所定距離だけ離れた面である外ランド案内面が設けられており、
前記内ランド部における前記摺動面と対向する位置には、前記摺動面に対して第2所定距離だけ離れた面である内ランド案内面が設けられており、
前記ポケット部内には、前記ポケット部内に流体を供給する供給口が設けられており、
前記溝部には前記ポケット部内に供給された流体を回収する回収口が設けられており、
前記第1所定距離は、前記第2所定距離よりも短い、
静圧案内構造。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1に記載の静圧案内構造では、摺動面120に設けられた環状の配置溝121に配置されたシール部材103が案内面128に対して密接することで、シール部材103の外側から異物が混入することを防止している。このシール部材103は、摺動面120に設けられた配置溝121に嵌め込まれており、案内面128と摺動面120のそれぞれに対して直接接触している。従って、移動部材102が案内部材129に対して移動する際に、シール部材103は、摩擦抵抗となり、移動部材102を移動させるための動力を損失させる可能性がある。
【0010】
本発明は、このような点に鑑みて創案されたものであり、動力を損失させることなく、回収した流体(軸受油)に異物が混入することを防止する静圧案内構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、第1の発明は、固定体における摺動方向に沿って形成された溝部を挟んで一対に形成された案内面と、前記案内面に沿って摺動する可動体における一対の前記案内面に対向する一対の摺動面と、に設けられた静圧案内構造であって、対向する一対の前記摺動面のそれぞれにはポケット部が摺動方向に複数設けられており、前記ポケット部における外縁部には、前記案内面に向かって突出して前記ポケット部を囲むランド部が設けられており、前記ランド部における前記溝部の側は内ランド部として設けられ、残りの前記ランド部は外ランド部として設けられており、前記外ランド部における前記案内面と対向する位置には、前記案内面に対して第1所定距離だけ離れた面である外ランド摺動面が設けられており、前記内ランド部における前記案内面と対向する位置には、前記案内面に対して第2所定距離だけ離れた面である内ランド摺動面が設けられており、前記ポケット部内には、前記ポケット部内に流体を供給する供給口が設けられており、前記溝部には前記ポケット部内に供給された流体を回収する回収口が設けられた流体回収溝部が設けられており、前記第1所定距離は、前記第2所定距離よりも短い、静圧案内構造である。
【0012】
第2の発明は、固定体に形成された案内面と、前記案内面に沿って摺動する可動体における前記案内面に対向する摺動面と、に設けられた静圧案内構造であって、前記摺動面には、前記案内面に対向する凹状のポケット部が形成されており、前記ポケット部における外縁部には、前記案内面に向かって突出して前記ポケット部を囲む外ランド部が設けられており、前記外ランド部における前記案内面と対向する位置には、前記案内面に対して第1所定距離だけ離れた面である外ランド摺動面が設けられており、前記ポケット部内には、前記ポケット部におけるポケット底部から前記案内面に向かって突出する内ランド部が設けられており、前記内ランド部における前記案内面と対向する位置には、前記案内面に対して第2所定距離だけ離れた面である内ランド摺動面が設けられており、前記内ランド部の外縁の少なくとも一部と前記外ランド部の内縁との間は、前記ポケット底部を有する流体供給溝部とされており、前記流体供給溝部には、前記ポケット部内に流体を供給する供給口が設けられており、前記内ランド摺動面における前記内ランド部の外縁よりも内側となる内ランド部内側面には、あるいは、前記案内面における前記内ランド部内側面に対向する領域には、前記ポケット部内に供給された流体を回収する回収口が設けられた流体回収溝部が設けられており、前記第1所定距離は、前記第2所定距離よりも短い、静圧案内構造である。
【0013】
第3の発明は、回転体の軸部を収容する円柱状の収容空間を有する固定体における前記収容空間の内壁面となる案内面に設けられた静圧案内構造であって、前記案内面には、前記回転体の前記軸部の外周面である摺動面に対向するように形成された凹状のポケット部が周方向に複数配置されており、前記ポケット部における外縁部には、前記摺動面に向かって突出して前記ポケット部を囲む外ランド部が設けられており、前記外ランド部における前記摺動面と対向する位置には、前記摺動面に対して第1所定距離だけ離れた面である外ランド案内面が設けられており、前記ポケット部内には、前記ポケット部におけるポケット底部から前記摺動面に向かって突出する内ランド部が設けられており、前記内ランド部における前記摺動面と対向する位置には、前記摺動面に対して第2所定距離だけ離れた面である内ランド案内面が設けられており、前記内ランド部の外縁の全周と前記外ランド部の内縁との間は、前記ポケット底部を有する流体供給溝部とされており、前記流体供給溝部には、前記ポケット部内に流体を供給する供給口が設けられており、前記内ランド案内面における前記内ランド部の外縁よりも内側となる内ランド部内側面には、前記ポケット部内に供給された流体を回収する回収口が設けられた流体回収溝部が設けられており、前記第1所定距離は、前記第2所定距離よりも短い、静圧案内構造である。
【0014】
第4の発明は、回転体の軸部を収容する円柱状の収容空間を有する固定体における前記収容空間の内壁面の周方向に沿って形成された溝部を挟んで一対に形成された案内面に設けられた静圧案内構造であって、前記案内面のそれぞれには、前記回転体の前記軸部の外周面である摺動面に対向するように形成された凹状のポケット部が周方向に複数配置されており、前記ポケット部における外縁部には、前記摺動面に向かって突出して前記ポケット部を囲むランド部が設けられており、前記ランド部における前記溝部の側は内ランド部として設けられ、残りの前記ランド部は外ランド部として設けられており、前記外ランド部における前記摺動面と対向する位置には、前記摺動面に対して第1所定距離だけ離れた面である外ランド案内面が設けられており、前記内ランド部における前記摺動面と対向する位置には、前記摺動面に対して第2所定距離だけ離れた面である内ランド案内面が設けられており、前記ポケット部内には、前記ポケット部内に流体を供給する供給口が設けられており、前記溝部には前記ポケット部内に供給された流体を回収する回収口が設けられており、前記第1所定距離は、前記第2所定距離よりも短い、静圧案内構造である。
【0015】
第5の発明は、上記第2の発明に記載の静圧案内構造であって、前記流体供給溝部は、前記内ランド部の外縁の全周と前記外ランド部の内縁との間に設けられており、前記流体回収溝部は、前記内ランド部内側面に設けられている、静圧案内構造である。
【0016】
第6の発明は、上記第2の発明に記載の静圧案内構造であって、前記流体供給溝部は、前記内ランド部の外縁の一部と前記外ランド部の内縁との間の前記ポケット底部に設けられており、前記流体回収溝部は、前記案内面における前記内ランド部内側面に対向する領域に設けられている、静圧案内構造である。
【0017】
第7の発明は、上記第1又は2又は6のいずれか一の発明に記載の静圧案内構造であって、前記回収口は、前記案内面と前記内ランド摺動面との隙間を経由した流体が自重によりに流入する位置に設けられている、静圧案内構造である。
【0018】
第8の発明は、上記第1又は2又は5〜7のいずれか一の発明に記載の静圧案内構造であって、前記外ランド摺動面と前記案内面との間の隙間を経由して、前記ポケット部の外側に流れ出た流体を貯留する貯留部が形成されている、静圧案内構造である。
【0019】
第9の発明は、上記第1又は2又は5〜8のいずれか一の発明に記載の静圧案内構造を有する固定体と可動体と、ワークを支持するワーク支持手段と、前記ワークを加工する加工手段と、前記可動体を移動させる可動体駆動手段と、前記供給口に流体を供給する流体供給手段と、前記回収口から流体を回収する流体回収手段と、を有し、前記固定体及び前記可動体を用いて、前記ワーク支持手段に対する前記加工手段の位置を相対的に移動させて前記ワークを加工する、工作機械である。
【0020】
第10の発明は、上記第3又は4の発明に記載の静圧案内構造を有する固定体と回転体と、ワークが取り付けられている前記回転体及び前記ワークを加工する加工手段と、あるいは、前記回転体に取り付けられて前記ワークを加工する加工手段及び前記ワークを支持するワーク支持手段と、前記回転体を回転させる回転体駆動手段と、前記供給口に流体を供給する流体供給手段と、前記回収口から流体を回収する流体回収手段と、を有して、前記ワークあるいは前記加工手段を回転させて、前記ワークを加工する、工作機械である。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明によれば、供給口から吐出された流体は、第1所定距離からなる隙間を通って流れるよりも、第2所定距離からなる隙間を通って流れる方が多くなる。従って、ほとんどの流体は、固定体の間に設けられた溝部の流体回収溝部における回収口から回収される。これにより、切粉やクーラントに直接さらされることがなく、異物の流体への混入を防止できる。また、可動体は、固定体に対して流体によって浮いた状態となり、可動体と固定体の双方に接触するシール部材等は存在しない。従って、静圧案内構造を用いて静圧を生じさせ場合に、固定体に対して可動体を移動させる動力の損失がない。
【0022】
第2の発明によれば、流体供給溝部における供給口から吐出された流体は、第1所定距離からなる隙間を通って(ポケット部の外側に)流れるよりも、第2所定距離からなる隙間を通って(ポケット部の内側に)流れる方が多くなる。従って、ほとんどの流体は、可動体と固定体の間に設けられた流体回収溝部における回収口から回収される。これにより、切粉やクーラントに直接さらされることがなく、異物の流体への混入を防止できる。また、可動体は、固定体に対して流体によって浮いた状態となり、可動体と固定体の双方に接触するシール部材等は存在しない。従って、静圧案内構造を用いて静圧を生じさせ場合に、固定体に対して可動体を移動させる動力の損失がない。
【0023】
第3の発明によれば、流体供給溝部における供給口から吐出された流体は、第1所定距離からなる隙間を通って流れるよりも、第2所定距離からなる隙間を通って流れる方が多くなる。従って、ほとんどの流体は、固定体に設けられた流体回収溝部における回収口から回収される。これにより、切粉やクーラントに直接さらされることがなく、異物の流体への混入を防止できる。また、回転体は、固定体に対して流体によって浮いた状態となり、回転体と固定体の双方に接触するシール部材等は存在しない。従って、静圧案内構造を用いて静圧を生じさせ場合に、固定体に対して回転体を回動させる動力の損失がない。
【0024】
第4の発明によれば、流体供給溝部における供給口から吐出された流体は、第1所定距離からなる隙間を通って流れるよりも、第2所定距離からなる隙間を通って流れる方が多くなる。従って、ほとんどの流体は、固定体に設けられた回収口から回収される。これにより、切粉やクーラントに直接さらされることがなく、異物の流体への混入を防止できる。また、回転体は、固定体に対して流体によって浮いた状態となり、回転体と固定体の双方に接触するシール部材等は存在しない。従って、静圧案内構造を用いて静圧を生じさせ場合に、固定体に対して回転体を回動させる動力の損失がない。
【0025】
第5の発明によれば、上述した第2の発明に係る静圧案内構造であって、流体供給溝部と流体回収溝部の双方が可動体に設けられている。これにより、供給口から吐出された流体は、吐出した供給口が設けられている可動体と同じ可動体に設けられている流体回収溝部における回収口から回収されるため、より切粉やクーラントに直接さらされることなく、異物が流体に混入することを防止できる。
【0026】
第6の発明によれば、上述した第2の発明に係る静圧案内構造であって、流体供給溝部は、内ランド部の外縁の一部と外ランド部の内縁との間のポケット底部に設けられている。これにより、内ランド部の外縁の全周に流体供給溝部を設ける場合と比べて、可動体の構造をよりシンプルにできる。
【0027】
第7の発明によれば、上述した第1又は2又は6の発明に係る静圧案内構造であって、吐出された流体は流体の自重により回収口から回収されるため、強制的に流体を回収する手段を設ける必要がない。
【0028】
第8の発明によれば、上述した第1又は2又は5〜7の発明に係る静圧案内構造であって、外ランド摺動面と案内面との間の隙間を経由して、ポケット部の外側に流れた流体を貯留部において貯留できる。
【0029】
第9の発明は、上述した第1又は2又は5〜8の発明に係る静圧案内構造を用いて、工作機械におけるワーク支持手段に対する加工手段の位置を相対的に移動させてワークを加工する工作機械とする。このように、工作機械に上記静圧案内構造を用いると好適である。
【0030】
第10の発明によれば、上述した第3又は4の発明に係る静圧案内構造を用いて、工作機械におけるワークあるいは加工手段を回転させて、ワークを加工する工作機械とする。このように、工作機械に上記静圧案内構造を用いると好適である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。まず、本発明の静圧案内構造及びこれを適用した工作機械である研削盤2の全体構成について、
図1〜
図3を用いて説明する。
【0033】
●[研削盤2の全体構成(
図1〜
図3)]
図1〜
図3は、研削盤2の全体構成の例を示している。研削盤2は、ベッド10A、ベッド10B、テーブル20、といし軸30、心押台40、砥石台50等を有している工作機械である。なお、X軸とY軸とZ軸が記載されている図では、X軸とY軸とZ軸は互いに直交しており、Y軸方向は鉛直上方を示し、Z軸方向は砥石55が工作物W(ワークに相当)に切り込む水平方向を示し、X軸方向は主軸31の主軸回転軸線31Jと平行な水平方向を示している。この例では工作物Wは、円柱状又は円筒状であるが、工作物Wの形状は、この形状に限定されず、複数の段差つきの円筒状や、一部が円錐状等であってもよい。
【0034】
ベッド10A(固定体に相当)と10B(固定体に相当)は、平面視において略T字状に構成されており、ベッド10AにはX軸方向に沿って延びるX軸案内面12が設けられ、X軸方向に沿って延びる流体回収溝部92Xが設けられている。またベッド10Bには、Z軸方向に沿って延びるZ軸案内面15が設けられ、Z軸方向に沿って延びる流体回収溝部92Xが設けられている。流体回収溝部92Xと流体回収溝部92Xに流れ込んだ流体(軸受油)は、流体回収手段(図示省略)によって回収されて流体供給手段(図示省略)において再利用される。
【0035】
砥石台50は、ベッド10Bに載置され、Z軸案内面15に静圧案内支持されて、Z軸方向に沿って往復移動可能である。砥石台駆動モータ50M(可動体駆動手段に相当)は、制御装置80からの制御信号に基づいて、ボールネジ50B(
図2参照)を回転させる。制御装置80は、エンコーダ50E(回転検出手段)からの検出信号に基づいた砥石台50のZ軸方向の位置を検出しながら砥石台駆動モータ50Mを制御して砥石台50のZ軸方向の位置を制御する。なお、
図2に示すように、ボールネジ50Bにはナット50Nが嵌合されており、当該ナット50Nはアーム50Aを介して砥石台50に接続されている。従って、砥石台駆動モータ50Mがボールネジ50Bを回転駆動するとナット50NのZ軸方向の位置が移動し、アーム50Aを介してナット50Nに接続された砥石台50がZ軸案内面15に沿ってZ軸方向に移動する。
【0036】
砥石台50には、X軸方向に平行な砥石回転軸線55J回りに回転自在に支持された砥石軸54、砥石モータ55M(砥石用駆動モータに相当)、が設けられている。なお、
図3に示すように砥石回転軸線55Jと主軸回転軸線31JはどちらもX軸に平行であり、
図2に示すように砥石回転軸線55Jと主軸回転軸線31Jは、同一の仮想水平面VM上にある。
【0037】
砥石モータ55Mには大径プーリ51が取り付けられている。また砥石軸54の一方端には砥石55が取り付けられ、砥石軸54の他方端には小径プーリ52が取り付けられている。そして大径プーリ51と小径プーリ52には、動力伝達用のベルト53が掛けられている。砥石軸54の近傍には、砥石55の回転数を検出可能な回転検出手段55Sが設けられている。制御装置80は、回転検出手段55Sからの検出信号に基づいて砥石55の回転数を検出しながら砥石モータ55Mを制御して砥石55の回転数を制御する。
【0038】
砥石55は砥石軸54に直交する平面で切断した断面が円形であり、砥石55の外周面にはCBN砥粒が接着剤や電着等にて固められており、砥石軸54と一体となって砥石回転軸線55J回りに回転する。また、図示省略するが、砥石55の上方には、砥石55の研削点Kに向けて、冷却及び潤滑用のクーラントを吐出するクーラントノズルが設けられている。当該クーラントノズルには、図示省略したクーラントタンクからクーラントが供給され、研削点K(砥石回転軸線55Jと主軸回転軸線31Jとを含む仮想水平面VMと、工作物Wに対向する側の砥石55の外周面と、の交点)の冷却及び潤滑に使用されたクーラントは図示省略した流路にて回収され、不純物がろ過等された後、クーラントタンクに戻される。
【0039】
テーブル20(可動体に相当)は、ベッド10Aに載置され、X軸案内面12に静圧案内支持されて、X軸方向に沿って往復移動可能である。テーブル駆動モータ20M(可動体駆動手段に相当)は、制御装置80からの制御信号に基づいて、ボールネジ(図示省略)を回転させる。制御装置80は、エンコーダ20E(回転検出手段)からの検出信号に基づいたテーブル20のX軸方向の位置を検出しながらテーブル駆動モータ20Mを制御してテーブル20のX軸方向の位置を制御する。なお、ボールネジにはナット(図示省略)が嵌合されており、当該ナットはアーム(図示省略)を介してテーブル20と接続されている。従って、テーブル駆動モータ20Mがボールネジを回転駆動するとナットのX軸方向の位置が移動し、アームを介してナットに接続されたテーブル20がX軸案内面12に沿ってX軸方向に移動する。そしてテーブル20上のX軸方向における一方端にはといし軸30が固定され、他方端には心押台40が固定されている。
【0040】
といし軸30は、X軸方向に平行な主軸回転軸線31J回りに回転する主軸31と、主軸回転軸線31Jを中心軸線とするセンタ32(ワーク支持手段)と、主軸31を回転駆動する主軸モータ31M(回転体駆動手段に相当)と、エンコーダ31E等を有している。主軸31には、主軸31と工作物Wとを接続する駆動金具33が取り付けられている。駆動金具33は、工作物Wを把持する把持部33Aと、把持部33Aと主軸31とを接続する接続部33Bとを有しており、主軸31と一体となって主軸回転軸線31J回りに回転して工作物Wを回転させる。制御装置80は、エンコーダ31E(回転検出手段)からの検出信号に基づいて主軸31の回転角度や回転数を検出しながら主軸モータ31Mを制御して主軸31の回転角度や回転数(すなわち、工作物Wの回転角度や回転数)を制御する。
【0041】
心押台40は、主軸回転軸線31Jを中心軸線とするセンタ42(ワーク支持手段)と、センタ42を収容してといし軸30に向かう方向に付勢されたラム41とを有している。心押台40のセンタ42の中心軸線と、といし軸30のセンタ32の中心軸線は、どちらも主軸回転軸線31Jと一致している。センタ32とセンタ42とで挟持された工作物Wは、センタ42によってといし軸30の側に押し付けられ、主軸31及び駆動金具33の回転によって主軸回転軸線31J回りに回転する。
【0042】
制御装置80は、図示省略した記憶装置(工程記憶部に相当)を有している。そして記憶装置には、制御装置80が、砥石台駆動モータ50M、砥石モータ55M、テーブル駆動モータ20M等を制御するためのプログラムやデータ等が記憶されている。
【0043】
以下、研削盤2における固定体であるベッド10Aと可動体であるテーブル20との間において構成される静圧案内構造を例として、第1〜第3の実施の形態における静圧案内構造について詳細に説明する。
【0044】
●[第1の実施の形態の静圧案内構造90Zの構造と動作(
図4〜
図7)]
図4〜
図7を用いて静圧案内構造90Zの構造と動作について詳細に説明する。
図4は、静圧を生じさせた状態における静圧案内構造90Zの断面図を示している。
図4において点線の矢印は、吐出された流体の流れを示しており、矢印の点線が太いほど流体の流量が多いことを示している。
図5は、
図4における可動体70ZをV−V方向から見た図である。また、
図6は、
図4における可動体70ZをY軸方向の反対方向から見た斜視図である。
図7は、
図4における固定体60ZをVII−VII方向から見た図である。
【0045】
図4に示すように、第1の実施の形態における静圧案内構造90Zは、スライドする可動体70Zと、この可動体70Zを支持する固定体60Zから構成されている。
図4と
図7に示すように、溝部MZは、固定体60Zにおける摺動方向に沿って形成されている。案内面62Zは、溝部MZを挟んで一対に形成されている。
図4に示すように、案内面62Zに沿って摺動する可動体70Zにおける一対の案内面62Zに対向するように一対の摺動面72Zが設けられている。
【0046】
図5と
図6で示すように、対向する一対の摺動面72Zのそれぞれにはポケット部PZが摺動方向に所定の間隔で複数設けられている。
図6で示すように、可動体70Zにおいて、ポケット部PZにおける外縁部には、案内面62Z(
図4参照)に向かって突出してポケット部PZを囲むランド部78Zが設けられている。ランド部78Zにおける溝部MZの側は内ランド部76Zとして設けられ、残りのランド部78Zは外ランド部74Zとして設けられている。
【0047】
図4で示すように、外ランド部74Zにおける案内面62Zと対向する位置に、案内面62Zに対して第1所定距離D1Zだけ離れた面である外ランド摺動面75Zが設けられている。ランド部78Zにおける案内面62Zと対向する位置には、案内面62Zに対して第2所定距離D2Zだけ離れた面である内ランド摺動面77Zが設けられている。ポケット部PZ内には、ポケット部PZ内に流体を供給する供給口84Zが設けられている。溝部MZには前記ポケット部内に供給された流体を回収する回収口94Zが設けられた流体回収溝部92Zが設けられている。
【0048】
図4に示すように、回収口94Zは、固定体60ZにおいてY軸方向とは反対である鉛直下方に向かって設けられている。これにより、吐出された流体は、流体の自重により回収口94Zから鉛直下方に向かって流れて回収される。
図7に示すように、回収口94Zは、流体回収溝部92ZにおいてX軸方向(摺動方向)に沿って所定の間隔で設けられている。
【0049】
図4に示すように、貯留部DNが、固定体60Zにおける外ランド部74Zの外側の位置に形成されている。貯留部DNは、外ランド摺動面75Zと案内面62Zとの間の隙間を経由して、ポケット部PZの外側に流れた流体を貯留する。
図7に示すように、貯留部DNは、固定体60Zの上面であって流体回収溝部92Zが設けられていない案内面62Zの側においてX軸方向(摺動方向)に沿って設けられている。
【0050】
図4において、流体供給手段において加圧されて流体は、供給口84Zから対向する案内面62Zに向かって吐出される。吐出された流体は、案内面62Zに到達すると、案内面62Zと案内面62Zに対向する供給口84Zのあるポケット部PZの底部との間に静圧を生じる。
【0051】
この静圧は、可動体70Zにおいて固定体60Zに対して反発する力として働く。これにより、可動体70Zは固定体60Zに対して押し上げられて浮いた状態となり、外ランド摺動面75Zと案内面62Zとの間に隙間(第1所定距離D1Z)を生じて、内ランド摺動面77Zと案内面62Zとの間に隙間(第2所定距離D2Z)をそれぞれ生じる。
【0052】
静圧支持している状態において、第1所定距離D1Zが第2所定距離D2Zよりも短い。そのために、ポケット部PZの底部から外ランド摺動面75ZまでのY軸方向の突出距離は、ポケット部PZの底部からの内ランド摺動面77ZへのY軸方向の突出距離よりも長くなるように設けられている。従って、第1所定距離D1Zによる隙間よりも、第2所定距離D2Zによる隙間が大きくなるため、供給口84Zから吐出されたほとんどの流体は、ポケット部PZの外側でなくポケット部PZの内側に流れる。
【0053】
ここで、一般的に、平行する二つの平面間に流れる流体の流量は、流体の流速が一定の場合において、平行する平面間の距離の3乗に比例することが知られている。例えば、静圧案内構造90Zにおいて、第1所定距離D1Zと第2所定距離D2Zの大小の関係を、(第1所定距離D1Z)≦(第2所定距離D2Z/1.45)とする。この場合において、外ランド摺動面75Zと案内面62Zとの間に隙間を流れる流体の流量は、内ランド摺動面77Zと案内面62Zとの間に隙間を流れる流体の流量に、(1/1.45)の3乗(=0.328)を乗じた量となる。つまり、流体回収溝部92Zにおける回収口94Zから回収される流体の流量と、回収されず静圧案内構造90Zの外側へ流れる流体の流量比((回収口94Zへ流れる流体の流量):(静圧案内構造90Zの外側へ流れる流体の流量比))は、約10:3となる。
【0054】
上述した結果より、(第1所定距離D1Z)≦(第2所定距離D2Z/1.45)とした場合、吐出されたほとんどの流体は、流体回収溝部92Zに設けられている回収口94Zから回収される。
図4に示すように、残りの流体は、ポケット部PZの外側へ流れて、貯留部DNに貯留される。
【0055】
吐出された流体を可能な限り流体回収溝部92Zにおける回収口94Zから回収するためには、第1所定距離D1Zを第2所定距離D2Zよりも可能な限り小さくすることが望ましい。しかし、第1所定距離D1Zは、可動体70Zにおける摺動面72Zと固定体60Zにおける案内面62Zとが接触しない大きさであり、実験等により最適な値が決められる。
【0056】
第1の実施の形態における静圧案内構造90Zを用いることで、吐出されたほとんどの流体は、異物に直接さらされることなく、流体回収溝部92Zに流れて回収口94Zから回収される。これにより、ポケット部PZの外側において、流体を回収する比較的大きな流体回収溝部を設ける必要がなく、比較的小さな貯留部DNで良い。従って、
図1の研削盤2におけるテーブル20外側にベッド10A上面にX軸方向に沿って流体回収溝部等を設ける必要がないため、ベッド10AのZ方向の幅を従来(二点鎖線で示されている外形)に比べて小さくできる(実線で示されている外形)(
図3参照)。また、可動体70Zは、固定体60Zに対して流体によって浮いた状態となり、可動体と固定体の双方に接触するシール部材等は存在しない。従って、静圧案内構造90Zを用いて静圧を生じさせ場合に、固定体60Zに対して可動体70Zを移動させる動力の損失がない。
【0057】
●[第2の実施の形態の静圧案内構造90Bの構造と動作(
図8〜
図10)]
図8〜
図10を用いて静圧案内構造90Bの構造と動作について詳細に説明する。
図8は、静圧を生じさせた状態における静圧案内構造90Bの断面図を示している。
図8において点線の矢印は流体の流れを示しており、矢印の点線が太いほど流体の流量が多いことを示している。
図9は、
図8における可動体70BをIX−IX方向から見た図である。また、
図10は、
図8における固定体60BをX−X方向から見た図である。
【0058】
図8に示すように、第2の実施の形態における静圧案内構造90Bは、スライドする可動体70Bと、この可動体70Bを支持する固定体60Bとから構成されている。
図8に示すように、固定体60Bには案内面62Bが形成されており、可動体70Bには案内面62Bに対向する摺動面72Bが形成されている。
【0059】
摺動面72Bには、案内面62Bに対向する凹状のポケット部P2が形成されており(
図8参照)、ポケット部P2における外縁部には、案内面62Bに向かって突出してポケット部P2を囲む外ランド部74Bが設けられている(
図8参照)。外ランド部74Bにおける案内面62Bと対向する位置には、案内面62Bに対して第1所定距離D1Bだけ離れた面である外ランド摺動面75Bが設けられている。
【0060】
図8に示すように、ポケット部P2内には、ポケット部P2におけるポケット部P2の底部から案内面62Bに向かって突出する内ランド部76Bが設けられている。この内ランド部76Bにおける案内面62Bと対向する位置には、案内面62Bに対して第2所定距離D2Bだけ離れた面である内ランド摺動面77Bが設けられている。
【0061】
図9に示すように、内ランド部76Bの外縁の全周と外ランド部74Bの内縁との間は、ポケット部P2の底部を有する流体供給溝部82Bが設けられている。流体供給溝部82Bには、ポケット部P2内に流体を供給する供給口84Bが設けられている。内ランド部76Bの内側面におけるポケット部P2の底部には、流体回収溝部92Bが設けられている。流体回収溝部92Bには、ポケット部P2内に供給された流体を回収する回収口94Bが設けられている。
【0062】
図8に示すように、貯留部DNが、固定体60Bにおける外ランド部74Bの外側の位置に形成されている。貯留部DNは、外ランド摺動面75Bと案内面62Bとの間の隙間を経由して、ポケット部P2の外側に流れた流体を貯留する。
図10に示すように、貯留部DNは、案内面62Bを挟んでX軸方向(摺動方向)に沿って設けられている。
【0063】
図8において、流体供給手段において加圧されて流体は、流体供給溝部82Bにおける供給口84Bから対向する案内面62Bに向かって吐出される。吐出された流体は、案内面62Bに到達すると、案内面62Bと案内面62Bに対向する供給口84Bのあるポケット部P2の底部との間に静圧を生じる。
【0064】
この静圧は、可動体70Bにおいて固定体60Bに対して反発する力として働く。これにより、可動体70Bは固定体60Bに対して押し上げられて浮いた状態となり、外ランド摺動面75Bと案内面62Bとの間に隙間(第1所定距離D1B)を生じて、内ランド摺動面77Bと案内面62Bとの間に隙間(第2所定距離D2B)をそれぞれ生じる。
【0065】
図8に示すように、可動体70Bにおいて、回収口94Bは、Y軸方向である鉛直上方に向かって設けられているため、流体の自重により回収口94Bから流体を回収することはできない。従って、吐出された流体は、吐出された流体の流量に応じて流体を回収(吸引)する流体回収手段(図示省略)によって、強制的にポケット部P2から回収される。
【0066】
ここで、一般的に、平行する二つの平面間に流れる流体の流量は、流体の流速が一定の場合において、平行する平面間の距離の3乗に比例することが知られている。例えば、静圧案内構造90Bにおいて、第1所定距離D1Bと第2所定距離D2Bの大小の関係を、(第1所定距離D1B)≦(第2所定距離D2B/1.45)とする。この場合において、ポケット部P2の外側へ流れる流体の流量は、ポケット部P2の内側へ流れる流体の流量に、(1/1.45)の3乗(=0.328)を乗じた量となる。つまり、ポケット部P2の内側へ流れる流体の流量とポケット部P2の外側へ流れる流体の流量比((ポケット部P2の内側へ流れる流体の流量):(ポケット部P2の外側へ流れる流体の流量))は、約10:3となる。
【0067】
上述した結果より、(第1所定距離D1B)≦(第2所定距離D2B/1.45)とした場合、吐出されたほとんどの流体は、ポケット部P2の内側へ流れて、流体回収溝部92Bに設けられている回収口94Bから回収される。
図8に示すように、残りの流体は、ポケット部P2の外側へ流れて、貯留部DNに貯留される。
【0068】
吐出された流体を可能な限りポケット部P2の内側において回収するためには、第1所定距離D1Bを第2所定距離D2Bよりも可能な限り小さくすることが望ましい。しかし、第1所定距離D1Bは、可動体70Bにおける摺動面72Bと固定体60Bにおける案内面62Bとが接触しない大きさであり、実験等により最適な値が決められる。
【0069】
第2の実施の形態における静圧案内構造90Bを用いることで、流体供給溝部82Bと流体回収溝部92Bの双方を可動体70Bに設けることができる。また、
図10で示すように、固定体60Bにおける案内面62Bには、X軸方向(摺動方向)に沿って平坦であるため、摺動面72Bと案内面62Bとの間に形成されるポケット部P2における内側は、より密閉される。従って、可動体70Bの流体供給溝部82Bから吐出された流体は、その可動体70Bに設けられた回収口94Bで回収されるため、より異物が流体に混入することを防止できる。さらに、流体供給溝部と流体回収溝部の双方を可動体においてのみ設けることにより、固定体の構造をシンプルにすることができる。
【0070】
●[第3の実施の形態の静圧案内構造90Cの構造と動作(
図11〜
図13)]
第3の実施の形態の静圧案内構造90Cは、第2の実施の形態の静圧案内構造90Bに対して、流体の回収口を有する流体回収溝部が、可動体ではなく固定体において設けられている点で異なる。
図11〜
図13を用いて静圧案内構造90Cの構造と動作について異なる点について基づいて詳細に説明する。
図11は、静圧を生じさせた状態における静圧案内構造90Cの断面図を示している。
図11において点線の矢印は流体の流れを示しており、矢印の点線が太いほど流体の流量が多いことを示している。
図12は、
図11における可動体70CをXII−XII方向から見た図である。また、
図13は、
図11における固定体60CをXIII−XIII方向から見た図である。
【0071】
図11に示す第3の実施の形態における静圧案内構造90Cは、スライドする可動体70Cと、この可動体70Cを支持する固定体60Cとから構成されている。
図11に示すように、固定体60Cには案内面62Cが形成されており、可動体70Cには案内面62Cに対向する摺動面72Cが形成されている。
【0072】
摺動面72Cには、案内面62Cに対向する凹状のポケット部P3が形成されており(
図11参照)、ポケット部P3における外縁部には、案内面62Cに向かって突出してポケット部P3を囲む外ランド部74Cが設けられている(
図11参照)。外ランド部74Cにおける案内面62Cと対向する位置には、案内面62Cに対して第1所定距離D1Cだけ離れた面である外ランド摺動面75Cが設けられている。
【0073】
図11に示すように、ポケット部P3内には、ポケット部P3におけるポケット部P3の底部から案内面62Cに向かって突出する内ランド部76Cが設けられている。この内ランド部76Cにおける案内面62Cと対向する位置には、案内面62Cに対して第2所定距離D2Cだけ離れた面である内ランド摺動面77Cが設けられている。
【0074】
図12に示すように、内ランド部76Cの外縁の一部と外ランド部74Cの内縁との間は、ポケット部P3の底部を有する流体供給溝部82Cが設けられている。流体供給溝部82Cには、ポケット部P3内に流体を供給する供給口84Cが設けられている。
【0075】
図11に示すように、内ランド部76Cの内側面に対向する領域には、流体回収溝部92Cが設けられている。流体回収溝部92Cには、ポケット部P3内に供給された流体を回収する回収口94Cが設けられている。
図11に示すように、回収口94Cは、固定体60CにおいてY軸方向とは反対である鉛直下方に向かって設けられている。これにより、吐出された流体は、流体の自重により回収口94Cから鉛直下方に向かって流れて回収される。
図13に示すように、回収口94Cは、流体回収溝部92CにおいてX軸方向(摺動方向)に沿って所定の間隔で設けられている。
【0076】
第3の実施の形態における静圧案内構造90Cを用いることで、供給口84Cから吐出された流体は、第1所定距離D1Cによる隙間よりも、第2所定距離D2Cによる隙間が大きいため、流体のほとんどはポケット部P3の外側でなく内側に流れる。吐出された流体の多くが、ポケット部P3の内側へ流れて、流体回収溝部92Cに設けられている回収口94Cから回収される。さらに、流体供給溝部82Cが、内ランド部76Cの外縁の一部と外ランド部74Cの内縁との間のポケット底部に設けられている。これにより、内ランド部76Cの外縁の全周に流体供給溝部を設ける場合と比べて、可動体の構造をよりシンプルにできる。
【0077】
●[第4の実施の形態の静圧案内構造90Dの構造と動作(
図14、
図15)]
といし軸30(
図1参照)における固定体である固定体60Dと回転体70Dである主軸31(
図1参照)との間において構成される静圧案内構造を例として、第4の実施の形態における静圧案内構造について詳細に説明する。
図14は、第4の実施の形態における静圧案内構造90Dを説明する断面図である。
図15は、第4の実施の形態における静圧案内構造の分解斜視図であり、円周方向において4分割されている固定体60Dの一つを示している。
【0078】
図14に示すように、第4の実施の形態における静圧案内構造90Dは、回転する回転体70Dと、この回転体70Dを回転支持する固定体60Dから構成されている。
図14に示すように、回転体70Dの軸部を収容する円柱状の収容空間を有する固定体60Dにおける収容空間の内壁面には、案内面62Dが設けられている。また、回転体70Dにおける軸部の外周面には摺動面72Dが設けられている。
【0079】
図14に示すように、案内面62Dには、摺動面72Dに対向するように形成された凹状のポケット部P4が、周方向に4個配置されている。ここで、周方向に配置されたポケット部P4のそれぞれにおける構造は同じであるので、1個のポケット部P4における静圧案内構造90Dについてのみ説明する。
【0080】
図15で示すように、ポケット部P4における外縁部には、摺動面72Dに向かって突出してポケット部P4を囲む外ランド部74Dが設けられている。
図14で示すように、外ランド部74Dにおける摺動面72Dと対向する位置には、摺動面72Dに対して第1所定距離D1Dだけ離れた面である外ランド案内面65Dが設けられている。
【0081】
図14に示すように、ポケット部P4内には、ポケット部P4におけるポケットの底部から摺動面72Dに向かって突出する内ランド部76Dが設けられており、内ランド部76Dにおける摺動面72Dと対向する位置には、摺動面72Dに対して第2所定距離D2Dだけ離れた面である内ランド案内面67Dが設けられている。
【0082】
内ランド部76Dの外縁の全周と外ランド部74Dの内縁との間は、ポケットの底部を有する流体供給溝部82Dが設けられている。流体供給溝部82Dには、ポケット部P4内に流体を供給する供給口84Dが設けられている。
【0083】
図14に示すように、内ランド部76Dの内側面におけるポケット部P4の底部には、流体回収溝部92Dが設けられている。流体回収溝部92Dには、ポケット部P4内に供給された流体を回収する回収口94Dが設けられている。
【0084】
図14において、流体供給手段において加圧された流体は、流体供給溝部82Dにおける供給口84Dから対向する摺動面72Dに向かって吐出される。吐出された流体は、摺動面72Dに到達すると、摺動面72Dと摺動面72Dに対向する供給口84Dのあるポケット部P4の底部との間に静圧を生じる。
【0085】
この静圧は、固定体60Dにおいて回転体70Dに対して反発する力として働く。これにより、回転体70Dは固定体60Dに対して押し上げられて浮いた状態となり、外ランド案内面65Dと摺動面72Dとの間に隙間(第1所定距離D1D)を生じて、内ランド案内面67Dと摺動面72Dとの間に隙間(第2所定距離D2D)をそれぞれ生じる。また、第1所定距離D1Dと第2所定距離D2Dは、第1所定距離D1Dが第2所定距離D2Dよりも短くなるように設けられている。
【0086】
図14に示すように、固定体60Dにおいて、吐出された流体は、吐出された流体の流量に応じて流体を回収(吸引)する流体回収手段(図示省略)を設けることで、回収口94Dから回収される。
【0087】
第4の実施の形態における静圧案内構造90Dを用いることで、流体供給溝部82Dと流体回収溝部92Dの双方を固定体60Dに設けることができる。流体供給溝部82Dにおける供給口84Dから吐出された流体は、第1所定距離D1Dからなる隙間を通って流れるよりも、第2所定距離D2Dからなる隙間を通って流れる方が多くなる。従って、ほとんどの流体は、固定体に設けられた回収口94Dから回収される。これにより、切粉やクーラントに直接さらされることがなく、異物の流体への混入を防止できる。また、回転体70Dは、固定体60Dに対して流体によって浮いた状態となり、回転体70Dと固定体60Dの双方に接触するシール部材等は存在しない。従って、静圧案内構造90Dを用いて静圧を生じさせ場合に、固定体60Dに対して回転体70Dを回動させる動力の損失がない。
【0088】
●[第5の実施の形態の静圧案内構造90Wの構造と動作(
図16〜
図17)]
といし軸30(
図1参照)における固定体である固定体60Wと回転体70Wである主軸31(
図1参照)との間において構成される静圧案内構造を例として、第5の実施の形態における静圧案内構造について詳細に説明する。
図16は、静圧案内構造90Wを構成する回転体70Wと、固定体60Wの一部を分解した斜視図である。
図17は、静圧案内構造90Wを説明する軸方向(XY平面)における断面図である。静圧案内構造90Wは、回転体70Wの周方向と所定の間隔で配置されている。
【0089】
図16に示すように、回転体70Wの軸部を収容する円柱状の収容空間を有する固定体60Wにおける収容空間の内壁面の周方向に沿って形成された溝部を挟んで一対の案内面62Wが形成されている。案内面62Wのそれぞれには、回転体70Wの軸部の外周面である摺動面72Wに対向するように形成された凹状のポケット部PWが、周方向に複数配置されている。
【0090】
図16と
図17において示すように、ポケット部PWにおける外縁部には、摺動面72Wに向かって突出して前記ポケット部PWを囲むランド部78Wが、設けられている。また、ランド部78Wは、溝部MWの側が内ランド部76Wとして設けられ、残りのランド部78Wが外ランド部74Wとして設けられている。
【0091】
図17において、外ランド部74Wにおける摺動面72Wと対向する位置には、摺動面72Wに対して第1所定距離D1Wだけ離れた面である外ランド案内面65Wが設けられている。また、内ランド部76Wにおける摺動面72Wと対向する位置には、摺動面72Wに対して第2所定距離D2Wだけ離れた面である内ランド案内面67Wが設けられている。
【0092】
ポケット部PZ内には、ポケット部PZ内に流体を供給する供給口84Wが設けられており、溝部MWにはポケット部PZ内に供給された流体を回収する回収口94Wが設けられている。
図17において、流体供給手段において加圧された流体は、流体供給溝部82Wにおける供給口84Wから対向する摺動面72Wに向かって吐出される。吐出された流体は、摺動面72Wに到達すると、摺動面72Wと摺動面72Wに対向する供給口84Wのあるポケット部PWの底部との間に静圧を生じる。
【0093】
この静圧は、固定体60Wにおいて回転体70Wに対して反発する力として働く。これにより、回転体70Wは固定体60Wに対して押し上げられて浮いた状態となり、外ランド案内面65Wと摺動面72Wとの間に隙間(第1所定距離D1W)を生じて、内ランド案内面67Wと摺動面72Wとの間に隙間(第2所定距離D2W)をそれぞれ生じる。また、第1所定距離D1Wと第2所定距離D2Wは、第1所定距離D1Wが第2所定距離D2Wよりも短くなるように設けられている。
【0094】
図17に示すように、固定体60Wにおいて、吐出された流体は、吐出された流体の流量に応じて流体を回収(吸引)する流体回収手段(図示省略)を設けることで、回収口94Wから回収される。
【0095】
第5の実施の形態における静圧案内構造90Wを用いることで、流体供給溝部82Wと回収口94Wの双方を固定体60Wに設けることができる。流体供給溝部82Wにおける供給口84Wから吐出された流体は、第1所定距離D1Wからなる隙間を通って流れるよりも、第2所定距離D2Wからなる隙間を通って流れる方が多くなる。従って、ほとんどの流体は、固定体60Wに設けられた回収口94Wから回収される。これにより、切粉やクーラントに直接さらされることがなく、異物の流体への混入を防止できる。また、回転体70Wは、固定体60Wに対して流体によって浮いた状態となり、回転体70Wと固定体60Wの双方に接触するシール部材等は存在しない。従って、静圧案内構造90Wを用いて静圧を生じさせ場合に、固定体60Wに対して回転体70Wを回動させる動力の損失がない。
【0096】
本実施の形態で説明に用いた可動体、固定体の形状、大きさ等は、本実施の形態に限定されるものではなく、要旨を変更しない範囲での変更は可能である。特に固定体と可動体における流体の供給口、回収口の配置、形状、個数の変更は可能である。また、以上(≧)、以下(≦)、より大きい(>)、未満(<)等は、等号を含んでも含まなくてもよい。また、本実施の形態の説明に用いた数値は一例であり、この数値に限定されるものではない。