【実施例】
【0039】
以下、実施例及び比較例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例で使用した各アクリルアミド系ポリマーの合成方法、比較例で使用したポリアクリルアミドの調製方法、及びそれらの分子量の測定方法を以下に示す。
【0040】
(合成例1)
アクリルアミド(AAm、和光純薬工業株式会社製)12.8g(0.18mol)をイオン交換水180mlに溶解し、得られた水溶液にテトラメチルエチレンジアミン1.35ml(0.009mol)を添加して、窒素雰囲気下、撹拌しながら40℃まで昇温した。次いで、過硫酸アンモニウム0.252g(0.0011mol)を添加した後、60℃で3時間重合反応を行なった。得られた水溶液をメタノール中に投入して重合物を析出させ、これを回収して真空乾燥させることにより、水溶性のポリアクリルアミド(PAAm)を得た。
【0041】
(合成例2)
アクリルアミド(AAm、和光純薬工業株式会社製)12.8g(0.18mol)をイオン交換水180mlに溶解し、得られた水溶液にテトラメチルエチレンジアミン1.35ml(0.009mol)を添加して、窒素雰囲気下、撹拌しながら60℃まで昇温した。次いで、過硫酸アンモニウム0.152g(0.00067mol)を添加した後、80℃で3時間重合反応を行なった。得られた水溶液をメタノール中に投入して重合物を析出させ、これを回収して真空乾燥させることにより、水溶性のポリアクリルアミド(PAAm)を得た。
【0042】
(合成例3)
アクリルアミド(AAm、和光純薬工業株式会社製)96.0g(1.35mol)及びアクリロニトリル(AN)23.9g(0.45mol)をイオン交換水480mlに溶解し、得られた水溶液にテトラメチルエチレンジアミン6.75ml(0.045mol)を添加して、窒素雰囲気下、撹拌しながら50℃まで昇温した。次いで、過硫酸アンモニウム1.52g(0.0067mol)を添加した後、50℃で3時間重合反応を行なった。得られた水溶液をメタノール中に投入して共重合物を析出させ、これを回収して真空乾燥させることにより、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AAm/AN共重合体)を得た。
【0043】
このAAm/AN共重合体を重水に溶解し、得られた水溶液について、室温、周波数100MHzの条件で
13C−NMR測定を行なった。得られた
13C−NMRスペクトルにおいて、約121ppm〜約122ppmに現れる、アクリロニトリルのシアノ基の炭素に由来するピークと約177ppm〜約182ppmに現れる、アクリルアミドのカルボニル基の炭素に由来するピークとの強度比に基づいて、AAm/AN共重合体中のアクリルアミド(AAm)単位とアクリロニトリル(AN)単位との比を算出したところ、AAm/AN=75mol%/25mol%であった。
【0044】
(合成例4)
アクリルアミド(AAm、和光純薬工業株式会社製)96.0g(1.35mol)及びアクリロニトリル(AN)23.9g(0.45mol)をイオン交換水480mlに溶解し、得られた水溶液にテトラメチルエチレンジアミン6.75ml(0.045mol)を添加して、窒素雰囲気下、撹拌しながら40℃まで昇温した。次いで、過硫酸アンモニウム4.11g(0.018mol)を添加した後、60℃で3時間重合反応を行なった。得られた水溶液をメタノール中に投入して共重合物を析出させ、これを回収して真空乾燥させることにより、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AAm/AN共重合体)を得た。このAAm/AN共重合体中のアクリルアミド(AAm)単位とアクリロニトリル(AN)単位との比を合成例3と同様にして算出したところ、AAm/AN=75mol%/25mol%であった。
【0045】
(合成例5)
アクリルアミド(AAm、和光純薬工業株式会社製)96.0g(1.35mol)及びアクリロニトリル(AN)23.9g(0.45mol)をイオン交換水480mlに溶解し、得られた水溶液にテトラメチルエチレンジアミン6.75ml(0.045mol)を添加して、窒素雰囲気下、撹拌しながら45℃まで昇温した。次いで、過硫酸アンモニウム2.52g(0.011mol)を添加した後、78℃で3時間重合反応を行なった。得られた水溶液をメタノール中に投入して共重合物を析出させ、これを回収して真空乾燥させることにより、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AAm/AN共重合体)を得た。このAAm/AN共重合体中のアクリルアミド(AAm)単位とアクリロニトリル(AN)単位との比を合成例3と同様にして算出したところ、AAm/AN=75mol%/25mol%であった。
【0046】
(合成例6)
過硫酸アンモニウムの量を6.17g(0.027mol)に変更した以外は合成例4と同様にして、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AAm/AN共重合体)を得た。このAAm/AN共重合体中のアクリルアミド(AAm)単位とアクリロニトリル(AN)単位との比を合成例3と同様にして算出したところ、AAm/AN=75mol%/25mol%であった。
【0047】
(合成例7)
アクリルアミド(AAm、和光純薬工業株式会社製)96.0g(1.35mol)及びアクリロニトリル(AN)23.9g(0.45mol)をイオン交換水480mlに溶解し、得られた水溶液にテトラメチルエチレンジアミン6.75ml(0.045mol)を添加して、窒素雰囲気下、撹拌しながら60℃まで昇温した。次いで、過硫酸アンモニウム2.52g(0.011mol)を添加した後、78℃で3時間重合反応を行なった。得られた水溶液をメタノール中に投入して共重合物を析出させ、これを回収して真空乾燥させることにより、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AAm/AN共重合体)を得た。このAAm/AN共重合体中のアクリルアミド(AAm)単位とアクリロニトリル(AN)単位との比を合成例3と同様にして算出したところ、AAm/AN=75mol%/25mol%であった。
【0048】
(合成例8)
アクリルアミド(AAm、和光純薬工業株式会社製)96.0g(1.35mol)及びアクリロニトリル(AN)23.9g(0.45mol)をイオン交換水480mlに溶解し、得られた水溶液にテトラメチルエチレンジアミン6.75ml(0.045mol)及び過硫酸アンモニウム4.11g(0.018mol)を添加して、窒素雰囲気下、撹拌しながら室温(23℃)から60℃まで10分間かけて昇温した後、60℃で3時間重合反応を行なった。得られた水溶液をメタノール中に投入して共重合物を析出させ、これを回収して真空乾燥させることにより、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AAm/AN共重合体)を得た。このAAm/AN共重合体中のアクリルアミド(AAm)単位とアクリロニトリル(AN)単位との比を合成例3と同様にして算出したところ、AAm/AN=75mol%/25mol%であった。
【0049】
(合成例9)
アクリルアミド(AAm、和光純薬工業株式会社製)12.8g(0.18mol)をイオン交換水180mlに溶解し、得られた水溶液にテトラメチルエチレンジアミン1.35ml(0.009mol)を添加して、窒素雰囲気下、撹拌しながら30℃まで昇温した。次いで、過硫酸アンモニウム0.252g(0.0011mol)を添加し、撹拌しながら30℃から50℃まで10分間かけて昇温した後、50℃で3時間重合反応を行なった。得られた水溶液をメタノール中に投入して重合物を析出させ、これを回収して真空乾燥させることにより、水溶性のポリアクリルアミド(PAAm)を得た。
【0050】
(合成例10)
アクリルアミド(AAm、和光純薬工業株式会社製)96.0g(1.35mol)及びアクリロニトリル(AN)23.9g(0.45mol)をイオン交換水480mlに溶解し、得られた水溶液にテトラメチルエチレンジアミン3.75ml(0.025mol)を添加して、窒素雰囲気下、撹拌しながら30℃まで昇温した。次いで、過硫酸アンモニウム1.03g(0.0045mol)を添加し、撹拌しながら30℃から50℃まで10分間かけて昇温した後、50℃で3時間重合反応を行なった。得られた水溶液をメタノール中に投入して共重合物を析出させ、これを回収して真空乾燥させることにより、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AAm/AN共重合体)を得た。このAAm/AN共重合体中のアクリルアミド(AAm)単位とアクリロニトリル(AN)単位との比を合成例3と同様にして算出したところ、AAm/AN=75mol%/25mol%であった。
【0051】
(比較調製例1)
ポリアクリルアミド10%水溶液(東京化成工業株式会社製、製品品番:A0140)を真空乾燥させることにより前記水溶液から水を除去して、水溶性のポリアクリルアミド(PAAm)を得た。
【0052】
(比較合成例1)
アクリルアミド(AAm、和光純薬工業株式会社製)48.0g(0.675mol)及びアクリロニトリル(AN)11.95g(0.225mol)をイオン交換水1140mlに溶解し、得られた水溶液に、窒素雰囲気下、過硫酸アンモニウム6.17g(0.027mol)を添加した後、60℃で6時間重合反応を行なった。得られた水溶液をメタノール中に投入して共重合物を析出させ、これを回収して真空乾燥させることにより、水溶性のアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体(AAm/AN共重合体)を得た。このAAm/AN共重合体中のアクリルアミド(AAm)単位とアクリロニトリル(AN)単位との比を合成例3と同様にして算出したところ、AAm/AN=75mol%/25mol%であった。
【0053】
<重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn及び分子量の多分散度の測定>
合成例1〜2、9及び比較調製例1で得られたPAAm並びに合成例3〜8、10及び比較合成例1で得られたAAm/ANの重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを、ゲル浸透クロマトグラフィー(東ソー株式会社製「HLC−8220GPC」)を用いて下記の条件で測定し、分子量の多分散度(Mw/Mn)を算出した。これらの結果を表1に示す。
〔測定条件〕
カラム:TSKgel GMPW
XL×2本+TSKgel G2500PW
XL×1本
溶離液:100mM硝酸ナトリウム水溶液/アセトニトリル=80/20
溶離液流量:1.0ml/min
カラム温度:40℃
分子量標準物質:標準ポリエチレンオキシド/標準ポリエチレングリコール
検出器:示差屈折率検出器
【0054】
【表1】
【0055】
表1において、合成例1と合成例2、合成例4と合成例5、合成例6と合成例7とを対比すると明らかなように、重合温度を高くすることによって、同等の重量平均分子量であっても、分子量の多分散度が小さいアクリルアミド系ポリマーが得られることがわかった。これは、重合温度を高くすることによって、重合速度が速くなるため、モノマーの消費速度が速くなるとともに、重合開始剤の使用量を低減することができ、その結果、重合反応の後半において、残存するモノマーと重合開始剤とによる低分子量体の生成が抑制されるためと推察される。
【0056】
(実施例1)
炭素材料前駆体として合成例1で得られたPAAm(Mw=13万、Mw/Mn=3.0)をそのまま使用した。
【0057】
(実施例2)
炭素材料前駆体として合成例1で得られたPAAm(Mw=13万、Mw/Mn=3.0)を、炭素材料前駆体濃度が20質量%となるようにイオン交換水に溶解した。得られた水溶液に、前記炭素材料前駆体100質量部に対して2質量部のリン酸水素二アンモニウムを添加し、撹拌して完全に溶解させた。得られた水溶液から水を減圧留去した後、得られた固体成分を真空乾燥して、PAAm及びリン酸水素二アンモニウムを含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
【0058】
(実施例3)
炭素材料前駆体として合成例2で得られたPAAm(Mw=13万、Mw/Mn=2.6)をそのまま使用した。
【0059】
(実施例4)
炭素材料前駆体として合成例2で得られたPAAm(Mw=13万、Mw/Mn=2.6)を用いた以外は実施例2と同様にして、PAAm及びリン酸水素二アンモニウムを含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
【0060】
(実施例5)
リン酸水素二アンモニウムの代わりにリン酸を、前記炭素材料前駆体100質量部に対して2質量部添加した以外は実施例4と同様にして、PAAm及びリン酸を含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
【0061】
(実施例6)
炭素材料前駆体として合成例3で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=13万、Mw/Mn=2.7)をそのまま使用した。
【0062】
(実施例7)
炭素材料前駆体として合成例3で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=13万、Mw/Mn=2.7)を用いた以外は実施例2と同様にして、AAm/AN共重合体及びリン酸水素二アンモニウムを含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
【0063】
(実施例8)
炭素材料前駆体として合成例4で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=6.2万、Mw/Mn=2.6)をそのまま使用した。
【0064】
(実施例9)
炭素材料前駆体として合成例4で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=6.2万、Mw/Mn=2.6)を用いた以外は実施例2と同様にして、AAm/AN共重合体及びリン酸水素二アンモニウムを含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
【0065】
(実施例10)
炭素材料前駆体として合成例5で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=6.0万、Mw/Mn=2.2)をそのまま使用した。
【0066】
(実施例11)
炭素材料前駆体として合成例5で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=6.0万、Mw/Mn=2.2)を用いた以外は実施例2と同様にして、AAm/AN共重合体及びリン酸水素二アンモニウムを含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
【0067】
(実施例12)
リン酸水素二アンモニウムの代わりにリン酸を、前記炭素材料前駆体100質量部に対して2質量部添加した以外は実施例11と同様にして、AAm/AN共重合体及びリン酸を含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
【0068】
(実施例13)
炭素材料前駆体として合成例6で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=5.4万、Mw/Mn=3.0)をそのまま使用した。
【0069】
(実施例14)
炭素材料前駆体として合成例6で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=5.4万、Mw/Mn=3.0)を用い、リン酸水素二アンモニウムの添加量を前記炭素材料前駆体100質量部に対して5質量部に変更した以外は実施例2と同様にして、AAm/AN共重合体及びリン酸水素二アンモニウムを含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
【0070】
(実施例15)
炭素材料前駆体として合成例7で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=5.4万、Mw/Mn=2.1)をそのまま使用した。
【0071】
(実施例16)
炭素材料前駆体として合成例7で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=5.4万、Mw/Mn=2.1)を用いた以外は実施例2と同様にして、AAm/AN共重合体及びリン酸水素二アンモニウムを含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
【0072】
(実施例17)
リン酸水素二アンモニウムの添加量を前記炭素材料前駆体100質量部に対して5質量部に変更した以外は実施例16と同様にして、AAm/AN共重合体及びリン酸水素二アンモニウムを含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
【0073】
(実施例18)
炭素材料前駆体として合成例8で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=6.8万、Mw/Mn=3.8)をそのまま使用した。
【0074】
(実施例19)
炭素材料前駆体として合成例8で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=6.8万、Mw/Mn=3.8)を用い、リン酸水素二アンモニウムの代わりにホウ酸を、前記炭素材料前駆体100質量部に対して5質量部添加した以外は実施例2と同様にして、AAm/AN共重合体及びホウ酸を含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
【0075】
(実施例20)
炭素材料前駆体として合成例9で得られたPAAm(Mw=50万、Mw/Mn=4.6)をそのまま使用した。
【0076】
(実施例21)
炭素材料前駆体として合成例9で得られたPAAm(Mw=50万、Mw/Mn=4.6)を用い、リン酸水素二アンモニウムの代わりにリン酸を、前記炭素材料前駆体100質量部に対して2質量部添加した以外は実施例2と同様にして、PAAm及びリン酸を含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
【0077】
(実施例22)
リン酸水素二アンモニウムの添加量を前記炭素材料前駆体100質量部に対して8質量部に変更した以外は実施例21と同様にして、AAm/AN共重合体及びリン酸水素二アンモニウムを含有する炭素材料前駆体組成物を得た。
【0078】
(実施例23)
炭素材料前駆体として合成例10で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=52万、Mw/Mn=4.5)をそのまま使用した。
【0079】
(比較例1)
炭素材料前駆体として比較調製例1で得られたPAAm(Mw=58万、Mw/Mn=6.8)をそのまま使用した。
【0080】
(比較例2)
炭素材料前駆体として比較合成例1で得られたAAm/AN共重合体(AAm/AN=75mol%/25mol%、Mw=14万、Mw/Mn=5.8)をそのまま使用した。
【0081】
<耐炎化収率の測定>
実施例及び比較例で得られた炭素材料前駆体(実施例1、3、6、8、10、13、15、18、20、23、比較例1、2)又は炭素材料前駆体組成物(実施例2、4、5、7、9、11、12、14、16、17、19、21、22)を80℃で12時間真空乾燥した後、3mg秤量し、示差熱天秤(株式会社リガク製「TG8120」)を用いて、空気流量500ml/minの空気雰囲気下、昇温速度10℃/minで室温から350℃まで加熱し、350℃で10分間保持(耐炎化処理)して炭素材料前駆体又は炭素材料前駆体組成物の耐炎化物を得た。耐炎化処理前後の炭素材料前駆体の質量保持率(炭素材料前駆体の耐炎化収率)を、前記真空乾燥後に炭素材料前駆体に吸着した水の影響を考慮し、150℃における炭素材料前駆体の質量を基準として、下記式:
炭素材料前駆体の耐炎化収率[%]=M
350/M
150×100
〔M
350:空気雰囲気下、350℃で10分間加熱した後の炭素材料前駆体(耐炎化物)の質量、M
150:150℃における炭素材料前駆体の質量〕
により求めた。その結果を表2に示す。
【0082】
<炭化収率の測定>
前記炭素材料前駆体の耐炎化物(実施例1、3、6、8、10、13、15、18、20、23、比較例1、2)又は前記炭素材料前駆体組成物の耐炎化物(実施例2、4、5、7、9、11、12、14、16、17、19、21、22)2mgを示差熱天秤(株式会社リガク製「TG8120」)を用いて、窒素流量500ml/minの窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minで室温から1100℃まで加熱(炭化処理)して炭素材料を得た。この炭化処理前後の耐炎化物の質量保持率(1100℃における耐炎化物の炭化収率)を、耐炎化物に吸着した水の影響を考慮し、150℃における耐炎化物の質量を基準として、下記式:
耐炎化物の炭化収率[%]=M
1100/M
150×100
〔M
1100:窒素雰囲気下、1100℃まで加熱した後の耐炎化物(炭素材料)の質量、M
150:150℃における耐炎化物の質量〕
により求めた。その結果を表2に示す。
【0083】
<耐炎化・炭化の総収率の算出>
実施例及び比較例で得られた炭素材料前駆体又は炭素材料前駆体組成物の耐炎化・炭化の総収率を、下記式:
耐炎化・炭化の総収率[%]=(耐炎化収率/100)×(炭化収率/100)×100
により求めた。その結果を表2に示す。
【0084】
<炭素含有率の測定>
実施例で得られた炭素材料について元素分析を行なった結果、いずれの炭素材料も炭素含有率は90%以上であった。
【0085】
【表2】
【0086】
表2に示したように、実施例20と比較例1、実施例6と比較例2とを対比すると明らかなように、所定の重量平均分子量を有し、かつ、分子量の多分散度が所定の範囲内にあるアクリルアミド系ポリマーからなる本発明の炭素材料前駆体(実施例20、6)は、同等の重量平均分子量を有し、分子量の多分散度が所定の範囲を超えるアクリルアミド系ポリマーからなる炭素材料前駆体(比較例1、2)に比べて、耐炎化収率、耐炎化物の炭化収率、及び耐炎化と炭化の総収率が高くなることが確認された。
【0087】
また、実施例6と実施例3、実施例23と実施例20とを対比すると明らかなように、所定の重量平均分子量を有し、かつ、分子量の多分散度が所定の範囲内にあるアクリルアミド/アクリロニトリル共重合体からなる炭素材料前駆体(実施例6、23)は、同程度の重量平均分子量及び同程度の分子量の多分散度を有するアクリルアミドの単独重合体からなる炭素材料前駆体(実施例3、20)に比べて、耐炎化収率、耐炎化物の炭化収率、及び耐炎化と炭化の総収率が僅かに増加することがわかった。
【0088】
さらに、実施例1と実施例3、実施例8と実施例10、実施例13と実施例15とを対比すると明らかなように、同程度の重量平均分子量を有し、同種のアクリルアミド系ポリマーからなる炭素材料前駆体においては、分子量の多分散度が小さくなると、耐炎化収率、耐炎化物の炭化収率、及び耐炎化と炭化の総収率が増加することがわかった。
【0089】
また、実施例2と実施例1、実施例4〜5と実施例3、実施例7と実施例6、実施例9と実施例8、実施例11〜12と実施例10、実施例14と実施例13、実施例16〜17と実施例15、実施例19と実施例18、実施例21〜22と実施例20とを対比すると明らかなように、所定の重量平均分子量を有し、かつ、分子量の多分散度が所定の範囲内にあるアクリルアミド系ポリマーからなる炭素材料前駆体に所定量のリン酸、ホウ酸、又はリン酸塩を添加した炭素材料前駆体組成物(実施例2、4〜5、7、9、11〜12、14、16〜17、19、21〜22)は、リン酸及びリン酸塩を添加しなかった場合(実施例1、3、6、8、10、13、15、18、20)に比べて、耐炎化収率、耐炎化物の炭化収率、及び耐炎化と炭化の総収率が増加することがわかった。
【0090】
さらに、実施例17と実施例16、実施例22と実施例21とを対比すると明らかなように、添加成分の量が増加すると、耐炎化収率、耐炎化物の炭化収率、及び耐炎化と炭化の総収率が増加することがわかった。
【0091】
〔耐炎化処理温度の影響〕
<耐炎化収率の測定>
実施例3で得られた炭素材料前駆体、実施例17で得られた炭素材料前駆体組成物、比較例1で得られた炭素材料前駆体を80℃で12時間真空乾燥した後、3mg秤量し、示差熱天秤(株式会社リガク製「TG8120」)を用いて、空気流量500ml/minの空気雰囲気下、昇温速度10℃/minで室温から所定温度まで加熱し、所定温度で所定時間保持(耐炎化処理)して炭素材料前駆体又は炭素材料前駆体組成物の耐炎化物を得た。耐炎化処理前後の炭素材料前駆体の質量保持率(炭素材料前駆体の耐炎化収率)を、前記真空乾燥後に炭素材料前駆体に吸着した水の影響を考慮し、150℃における炭素材料前駆体の質量を基準として、下記式:
炭素材料前駆体の耐炎化収率[%]=M
T/M
150×100
〔M
T:空気雰囲気下、所定温度T[℃]で所定時間加熱した後の炭素材料前駆体(耐炎化物)の質量、M
150:150℃における炭素材料前駆体の質量〕
により求めた。その結果を表3に示す。
【0092】
<炭化収率の測定>
前記炭素材料前駆体の耐炎化物(実施例3、比較例1)又は前記炭素材料前駆体組成物の耐炎化物(実施例17)2mgを示差熱天秤(株式会社リガク製「TG8120」)を用いて、窒素流量500ml/minの窒素雰囲気下、昇温速度20℃/minで室温から1100℃まで加熱(炭化処理)して炭素材料を得た。この炭化処理前後の耐炎化物の質量保持率(1100℃における耐炎化物の炭化収率)を、耐炎化物に吸着した水の影響を考慮し、150℃における耐炎化物の質量を基準として、下記式:
耐炎化物の炭化収率[%]=M
1100/M
150×100
〔M
1100:窒素雰囲気下、1100℃まで加熱した後の耐炎化物(炭素材料)の質量、M
150:150℃における耐炎化物の質量〕
により求めた。その結果を表3に示す。
【0093】
<耐炎化・炭化の総収率の算出>
実施例3で得られた炭素材料前駆体、実施例17で得られた炭素材料前駆体組成物、比較例1で得られた炭素材料前駆体の耐炎化・炭化の総収率を、下記式:
耐炎化・炭化の総収率[%]=(耐炎化収率/100)×(炭化収率/100)×100
により求めた。その結果を表3に示す。
【0094】
【表3】
【0095】
表3に示したように、耐炎化処理温度が低くなるにつれて、炭素材料前駆体の耐炎化収率が高くなり、耐炎化処理温度が高くなるにつれて、耐炎化物の炭化収率が高くなるものの、最終的に得られる耐炎化と炭化の総収率が高くなるという観点において、好適な耐炎化処理温度範囲が存在することがわかった。
【0096】
また、実施例3と比較例1とを対比すると明らかなように、300℃で耐炎化処理を行なった場合においても、所定の重量平均分子量を有し、かつ、分子量の多分散度が所定の範囲内にあるアクリルアミド系ポリマーからなる本発明の炭素材料前駆体(実施例3)は、分子量の多分散度が所定の範囲を超えるアクリルアミド系ポリマーからなる炭素材料前駆体(比較例1)に比べて、耐炎化収率、耐炎化物の炭化収率、及び耐炎化と炭化の総収率が高くなることが確認された。