(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
  以下、図面を参照して実施の形態について説明する。各図において共通または対応する要素には、同一の符号を付して、重複する説明を簡略化または省略する。本開示は、以下の各実施の形態で説明する構成のうち、組合わせ可能な構成のあらゆる組合わせを含み得る。
 
【0010】
実施の形態1.
  
図1は、実施の形態1による調理装置1を示す斜視図である。本実施の形態1の調理装置1は、本体2、トッププレート3、操作パネル4、制御装置5、加熱コイル6、及びグリル7を備える。トッププレート3は、本体2の上部に設置されている。トッププレート3は、例えば板状の強化ガラスからなる。トッププレート3の上に、鍋等の調理器具を載せることができる。
 
【0011】
  制御装置5は、本体2の内部に設置されている。制御装置5は、調理装置1の運転を制御する。操作パネル4は、本体2の正面に設置されている。ユーザーは、操作パネル4を操作することで、調理メニューを選択することができる。また、ユーザーは、操作パネル4を操作することで、調理する食品の量を選択することができる。
 
【0012】
  加熱コイル6は、トッププレート3に載せられた鍋等の調理器具を加熱する。グリル7は、本体2の内部に設けられている。グリル7の扉7aは、本体2の正面に配置されている。扉7aに備えられた取っ手7bを握って手前に引くことで、後述するグリル皿11が引き出されるように構成されている。
 
【0013】
  調理装置1は、システムキッチンに組み込まれるビルトインタイプのものでもよいし、据え置きタイプのものでもよい。本実施の形態の調理装置1は、グリル7を備えたIHクッキングヒータである。本発明は、このようなIHクッキングヒータに限定されるものではない。例えば、本発明の調理装置は、鍋等の調理器具を加熱する機能を備えず、グリル7のみを備えるものでもよい。
 
【0014】
  図2は、
図1に示す調理装置1が備えるグリル7の模式的な断面図である。グリル7は、グリル庫7cを有する。グリル7は、グリル庫7c内で、例えば、魚、肉などの食品90を焼くことができる。グリル7は、焼網8、上ヒータ9、下ヒータ10、及びグリル皿11を備える。食品90は、焼網8の上に載せられる。本実施の形態では、焼網8は、四角形状の網8aと、網8aの四隅に設けられた脚8bとを備える。上ヒータ9及び下ヒータ10は、グリル庫7c内に固定されている。グリル皿11の形状は、平面視において角型である。すなわち、グリル皿11は、角皿である。
 
【0015】
  食品90を調理するときには、以下のようになる。焼網8に載せられた食品90は、上ヒータ9及び下ヒータ10によって上下から加熱される。上ヒータ9は、焼網8の上方に配置される。上ヒータ9は、焼網8に載せられた食品90を上側から加熱する。下ヒータ10は、焼網8の下方に配置される。すなわち、焼網8は、下ヒータ10の上方に配置される。下ヒータ10は、焼網8に載せられた食品90を下側から加熱する。グリル皿11は、下ヒータ10の下側に位置する。焼網8は、グリル皿11に支持される。
 
【0016】
  調理中の食品90からは、例えば、油が滴り落ちたり、血液または体液などの水分が滴り落ちたりする。例えば焦げカスなどの食品カスが食品90から落下することもある。グリル皿11は、そのような油、水分、食品カスを受ける。グリル皿11に落ちた水分は、調理中に蒸発してしまうので、調理終了後には存在しない。これに対し、グリル皿11に落ちた油は、蒸発せずに残存する。グリル皿11を清掃せずに使用を繰り返すと、グリル皿11に油が溜まっていく。
図2中の油溜まり91は、そのようにしてグリル皿11に溜まった油である。
図2では、理解を容易にするため、グリル皿11の側壁を透視して、グリル皿11内の油溜まり91が見えるようにした状態を表している。
 
【0017】
  図3は、
図1に示す調理装置1の機能ブロック図である。操作パネル4、加熱コイル6、上ヒータ9、及び下ヒータ10は、それぞれ、制御装置5に対して電気的に接続されている。制御装置5は、ユーザーが選択した調理メニューの情報を操作パネル4から取得することができる。また、制御装置5は、ユーザーが選択した、調理する食品の量の情報を操作パネル4から取得することができる。グリル7が使用される場合には、制御装置5は、調理メニューに応じて、上ヒータ9及び下ヒータ10への通電を制御する。制御装置5は、調理メニューと、調理する食品の量との両方に応じて、上ヒータ9及び下ヒータ10への通電を制御してもよい。
 
【0018】
  調理装置1は、扉ロック機構13及び庫内温度センサ14をさらに備える。庫内温度センサ14は、グリル庫7c内の温度を検出する。グリル庫7c内の温度を以下「庫内温度」と称する。
 
【0019】
  扉ロック機構13は、グリル7の扉7aをロックすることができる。すなわち、扉ロック機構13は、扉7aを開けることができないロック状態と、扉7aを開けることが可能なアンロック状態とを切り替えることができる。扉ロック機構13は、制御装置5により制御される。この扉ロック機構13は、無くてもよい。
 
【0020】
  調理装置1が備える制御装置5は、以下のように構成されてもよい。制御装置5の各機能は、処理回路により実現されてもよい。制御装置5の処理回路は、少なくとも1つのプロセッサ51と少なくとも1つのメモリ52とを備えてもよい。処理回路が少なくとも1つのプロセッサ51と少なくとも1つのメモリ52とを備える場合、制御装置5の各機能は、ソフトウェア、ファームウェア、またはソフトウェアとファームウェアとの組み合わせにより実現されてもよい。ソフトウェア及びファームウェアの少なくとも一方は、プログラムとして記述されてもよい。ソフトウェア及びファームウェアの少なくとも一方は、少なくとも1つのメモリ52に格納されてもよい。少なくとも1つのプロセッサ51は、少なくとも1つのメモリ52に記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、制御装置5の各機能を実現してもよい。少なくとも1つのメモリ52は、不揮発性または揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク等を含んでもよい。
 
【0021】
  制御装置5の処理回路は、少なくとも1つの専用のハードウェアを備えてもよい。処理回路が少なくとも1つの専用のハードウェアを備える場合、処理回路は、例えば、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ51、並列プログラム化したプロセッサ51、ASIC(Application  Specific  Integrated  Circuit)、FPGA(Field−Programmable  Gate  Array)、またはこれらを組み合わせたものでもよい。制御装置5の各部の機能がそれぞれ処理回路で実現されてもよい。また、制御装置5の各部の機能がまとめて処理回路で実現されてもよい。制御装置5の各機能について、一部を専用のハードウェアで実現し、他の一部をソフトウェアまたはファームウェアで実現してもよい。処理回路は、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはこれらの組み合わせによって、制御装置5の各機能を実現してもよい。単一の制御装置により動作が制御される構成に限定されるものではなく、複数の制御装置が連携することで動作を制御する構成にしてもよい。
 
【0022】
  例えば、サンマのような食品90からは、加熱調理の途中で、水分が水滴92となって滴下する。本明細書において「水分」とは、食品90に含まれる、血液、体液、水気などに起因する、水を主成分とする液体である。グリル皿11の温度が100℃以上の場合には、食品90からグリル皿11に落ちた水滴92が、瞬間的に、蒸発温度すなわち100℃に熱せられる。急激な蒸発による体積膨張によって、水滴92が、さらに細かい粒に分かれて飛び散る。その際、水分と共に、グリル皿11内の油溜まり91の油も、細かい粒になって飛び散る。そのようにして、油分を含むミストが形成される。このミストを以下「油ミスト」と称する。本発明者の研究によれば、この油ミストが下ヒータ10に触れることで着火する事象が発生する可能性がある。
 
【0023】
  上記のようにして、食品90からの水分滴下があるときに、グリル庫7c内での発火が生じる可能性がある。グリル庫7c内での発火を確実に抑制するために、本実施の形態では、食品90からの水分滴下の開始時期を検出する。そして、水分滴下の開始時期以降は、下ヒータ10の火力を低下させる。下ヒータ10の火力を低下させることで、食品90からの水分滴下によって発生した油ミストが下ヒータ10に触れたときに着火する可能性を低減できる。このため、グリル庫7c内での発火を確実に抑制できる。以下の説明では、食品90からの水分滴下のことを単に「水分滴下」と呼ぶ場合がある。また、「火力」とは、ヒータに供給されるエネルギーを時間的に平均した値を意味する。
 
【0024】
  図4は、本実施の形態1において、水分滴下の開始時期を検出する方法を説明するための図である。制御装置5は、庫内温度の変化に基づいて、水分滴下の開始時期を検出する。
図4中の中段の図は、加熱調理中の庫内温度の変化の例を示す。時刻T0において加熱調理が開始されると、庫内温度が上昇していく。
 
【0025】
  図4中の下段の図は、加熱調理中の庫内温度の増加率の変化の例を示す。庫内温度の増加率とは、庫内温度の時間微分値である。すなわち、庫内温度の増加率は、庫内温度の上昇速度に相当する。
図4に示す例では、時刻T1が、水分滴下の開始時期に相当する。水分滴下が開始すると、食品90からグリル皿11に落ちた水滴92が蒸発する蒸発潜熱の影響により、庫内温度の増加率が低下する。よって、制御装置5は、庫内温度の増加率の低下を検出することで、水分滴下の開始時期を検出できる。例えば、制御装置5は、庫内温度の増加率をさらに時間で微分した値が負に転じる時期を、水分滴下の開始時期として検出してもよい。
 
【0026】
  調理が進むと、食品90からの水分滴下は終了する。
図4に示す例では、時刻T2が、水分滴下の終了時期に相当する。水分滴下が終了すると、上述した蒸発潜熱の影響が無くなるため、庫内温度の増加率が上昇する。よって、制御装置5は、庫内温度の増加率の上昇を検出することで、水分滴下の終了時期を検出できる。例えば、制御装置5は、庫内温度の増加率をさらに時間で微分した値が正に転じる時期を、水分滴下の終了時期として検出してもよい。
 
【0027】
  本実施の形態であれば、上述した方法により、水分滴下の開始時期及び終了時期を精度良く検出することが可能となる。調理装置1は、庫内温度センサ14をもともと備えていることが一般的である。このため、追加のセンサを必要とすることなく、水分滴下の開始時期及び終了時期を検出できる。
 
【0028】
  図5は、実施の形態1の調理装置1において制御装置5が実行する処理のフローチャートである。
図6は、実施の形態1における下ヒータ10の火力の時間的な変化、及び、食品90からの水分滴下が生じる期間の例を示す図である。
 
【0029】
  図5のステップS101で、制御装置5は、操作パネル4のスタートボタンが押されたことを受けて、加熱調理を開始する。すなわち、上ヒータ9及び下ヒータ10への通電が開始される。処理は、ステップS101からステップS102へ進む。ステップS102で、制御装置5は、プログラムに従い、上ヒータ9及び下ヒータ10へ通電する電力を制御する。その際、制御装置5は、操作パネル4でユーザーが選択した調理メニュー及び食品の量に応じて、上ヒータ9及び下ヒータ10へ通電する電力を制御する。以下の説明では、このようにして上ヒータ9及び下ヒータ10へ通電する制御を「通常加熱」と称する。
 
【0030】
  処理は、ステップS102からステップS103へ進む。ステップS103で、制御装置5は、
図4を参照して説明した方法により、水分滴下の開始を検出するための処理を行う。水分滴下が開始したことが検出されていない場合には、処理は、ステップS103からステップS104へ進む。ステップS104で、制御装置5は、通常加熱を継続する。処理は、ステップS104からステップS105へ進む。ステップS105で、制御装置5は、加熱調理の終了条件の成否を判定する。当該終了条件とは、例えば、プログラムにより定められた調理時間が経過することである。加熱調理の終了条件が成立していない場合には、処理は、ステップS105からステップS103へ戻る。この場合、制御装置5は、ステップS103以下の処理を繰り返す。加熱調理の終了条件が成立している場合には、処理は、ステップS105からステップS106へ進む。ステップS106は、上ヒータ9及び下ヒータ10への通電を停止し、加熱を終了する。
 
【0031】
  ステップS103で、水分滴下が開始したことが検出された場合には、処理は、ステップS103からステップS107へ進む。ステップS107で、制御装置5は、通常加熱に代えて、火力抑制加熱の制御を行う。火力抑制加熱では、下ヒータ10の火力を通常加熱に比べて低下させる。
 
【0032】
  図6を参照して、火力抑制加熱について説明する。
図6中の上段の図のハッチングを付した領域は、食品90からの水分滴下が生じる期間を示す。時刻T1は、水分滴下の開始時期である。時刻T2は、水分滴下の終了時期である。
図6中の下段の図は、下ヒータ10の火力を示す。P1は、通常加熱における下ヒータ10の火力を示す。P2は、火力抑制加熱における下ヒータ10の火力を示す。
 
【0033】
  実線で示す火力の変化は、時刻T1から火力抑制加熱が実行された場合のものである。本実施の形態では、水分滴下の開始時期T1より後の下ヒータ10の火力P2を、水分滴下の開始時期T1より前の下ヒータ10の火力P1に比べて低くする。これにより、水分滴下によって発生した油ミストが下ヒータ10に触れることで着火する可能性を低減できる。このため、グリル庫7c内での発火を確実に抑制できる。
 
【0034】
  図6に示すように、本実施の形態では、火力抑制加熱が行われた場合には、水分滴下の終了時期T2以降も、下ヒータ10の火力をP2に維持する。火力抑制加熱が行われた場合には、処理は、ステップS107からステップS106へ進む。ステップS106で、制御装置5は、プログラムによる加熱制御に応じた時間が経過した場合に、上ヒータ9及び下ヒータ10への通電を停止し、加熱を終了する。
 
【0035】
  図4の説明においては、制御装置5が水分滴下の終了時期を検出することについて述べたが、本実施の形態1では、制御装置5は、水分滴下の終了時期を検出せず、水分滴下の開始時期のみを検出するように構成されていてもよい。
 
【0036】
  本実施の形態では、上ヒータ9の火力については、水分滴下の開始が検出された場合にも、通常加熱のときの火力に等しい火力を維持してもよい。すなわち、水分滴下の開始時期の前後で、上ヒータ9の火力が変化しないようにしてもよい。上ヒータ9は、グリル皿11からの距離が大きいため、水分滴下によって発生した油ミストが比較的到達しにくい。仮に油ミストが上ヒータ9に到達したとしても、その濃度は低い。このため、油ミストが上ヒータ9に触れて着火する事象が起こる確率は比較的低い。それゆえ、水分滴下の開始が検出された場合でも、上ヒータ9の火力を低くする必要性は少ない。水分滴下の開始時期以降も上ヒータ9の火力を通常加熱のときの火力に等しい火力にすることで、調理時間が長くなることを回避できる。
 
【0037】
  本実施の形態では、上ヒータ9の火力については、上記の制御に代えて、水分滴下の開始時期より後の上ヒータ9の火力が、水分滴下の開始時期より前の上ヒータ9の火力よりも低い火力になるように制御してもよい。そのようにすることで、水分滴下によって発生した油ミストが上ヒータ9に触れて着火する事象が起こることをより確実に防止できる。
 
【0038】
  本実施の形態1は、以下のように変形して実施することも可能である。
  (変形例1)本実施の形態では、庫内温度の変化に基づいて、水分滴下の開始時期を検出している。これは、水分滴下の開始時期を直接的に検出している訳ではなく、水分滴下の開始時期を、庫内温度の変化に基づいて、間接的に検出している、または推測している、と言うことができる。このような方法に代えて、水分滴下の開始時期を直接的に検出してもよい。例えば、グリル庫7c内の画像を撮像するカメラを設け、食品90から落下する水滴92を画像処理によって検出することで、水分滴下の開始時期を直接的に検出することが可能である。
 
【0039】
  (変形例2)制御装置5は、以下のようにして、調理メニューに関する情報に基づいて、食品90からの水分滴下の開始時期を推測してもよい。水分滴下の開始時期は、調理メニューによって異なる。調理メニューと、水分滴下の開始時期との関係を予め制御装置5に記憶しておけば、操作パネル4でユーザーが選択した調理メニューに基づいて、水分滴下の開始時期を推測できる。例えば、調理メニューが「サンマの塩焼き」である場合には、加熱調理の開始から4分後に水分滴下が開始する、という関係が制御装置5に予め記憶されている。
 
【0040】
  食品90からの水分滴下が生じる調理メニューとしては、例えば、焼き鳥、焼き魚、肉の網焼き、野菜の網焼き、肉巻き野菜焼き、などが挙げられる。食品90からの水分滴下が生じない調理メニューとしては、例えば、容器ごと加熱するメニューが挙げられる。食品90からの水分滴下が生じない調理メニューの場合には、制御装置5は、途中で火力抑制加熱に切り替えることなく、通常加熱を継続する。これにより、下ヒータ10の火力を不必要に抑制することを防止できる。
 
【0041】
  (変形例3)制御装置5は、以下のようにして、調理メニューに関する情報に加えて、調理する食品90の量に基づいて、食品90からの水分滴下の開始時期を推測してもよい。例えば、調理メニューが「サンマの塩焼き」であり、調理するサンマが1匹の場合と5匹の場合とを想定する。サンマ5匹を調理する場合には、サンマ1匹を調理する場合に比べて、調理開始からサンマの温度が上昇する速度が遅くなり、食品90としてのサンマからの水分滴下の開始時期が遅くなると考えられる。その点を考慮して、制御装置5は、調理するサンマが1匹の場合には加熱調理の開始から4分後に水分滴下が開始すると推測し、調理するサンマが5匹の場合には加熱調理の開始から5分後に水分滴下が開始すると推測してもよい。このように、調理メニュー及び調理する食品90の量に基づいて水分滴下の開始時期を推測することで、水分滴下の開始時期をより高精度に推測することが可能となる。
 
【0042】
  上述した変形例2または変形例3によれば、水分滴下の開始時期を検出するためのセンサを追加するなどのコストアップを伴うこと無しに、水分滴下の開始時期を精度良く推測することが可能となる。
 
【0043】
  (変形例4)調理装置1が扉ロック機構13を備える場合には、制御装置5は、
図5のステップS107において、グリル7の扉7aがロックされるように扉ロック機構13を動作させてもよい。すなわち、食品90からの水分滴下が開始したことが検出または推測された場合に、グリル7の扉7aをロックしてもよい。グリル7の扉7aをロックすれば、グリル庫7c内で仮に発火が生じた場合であっても、ユーザーが扉7aを開けてグリル皿11を引き出すことがないので、高い安全性が得られる。
 
【0044】
  (変形例5)制御装置5は、
図5のステップS107において、火力抑制加熱を行わずに、グリル7の扉7aがロックされるように扉ロック機構13を動作させてもよい。すなわち、食品90からの水分滴下が開始したことが検出または推測された場合に、制御装置5は、下ヒータ10の火力を低下させることなく、グリル7の扉7aがロックされるように扉ロック機構13を動作させてもよい。グリル7の扉7aをロックすれば、グリル庫7c内で仮に発火が生じた場合であっても、ユーザーが扉7aを開けてグリル皿11を引き出すことがないので、高い安全性が得られる。
 
【0045】
  なお、変形例4及び5において、グリル7の扉7aをロックした場合には、制御装置5は、調理が終了する際に、扉ロック機構13をアンロック状態にするように動作させる。
 
【0046】
実施の形態2.
  次に、
図7及び
図8を参照して、実施の形態2について説明するが、前述した実施の形態1との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分については説明を簡略化または省略する。
 
【0047】
  図7は、実施の形態2の調理装置1において制御装置5が実行する処理のフローチャートである。
図8は、実施の形態2における下ヒータ10の火力の時間的な変化、及び、食品90からの水分滴下が生じる期間の例を示す図である。本実施の形態2の調理装置1のハードウェア構成は、実施の形態1と同じであるので、図示を省略する。
 
【0048】
  図7のステップS201で、制御装置5は、操作パネル4のスタートボタンが押されたことを受けて、加熱調理を開始する。処理は、ステップS201からステップS202へ進む。ステップS202で、制御装置5は、プログラムに従い、通常加熱を実行する。
 
【0049】
  処理は、ステップS202からステップS203へ進む。ステップS203で、制御装置5は、
図4を参照して説明した方法により、水分滴下の開始を検出するための処理を行う。水分滴下が開始したことが検出されていない場合には、処理は、ステップS203からステップS204へ進む。ステップS204で、制御装置5は、通常加熱を継続する。処理は、ステップS204からステップS205へ進む。ステップS205で、制御装置5は、加熱調理の終了条件の成否を判定する。加熱調理の終了条件が成立していない場合には、処理は、ステップS205からステップS203へ戻る。この場合、制御装置5は、ステップS203以下の処理を繰り返す。加熱調理の終了条件が成立している場合には、処理は、ステップS205からステップS206へ進む。ステップS206は、上ヒータ9及び下ヒータ10への通電を停止し、加熱を終了する。
 
【0050】
  ステップS203で、水分滴下が開始したことが検出された場合には、処理は、ステップS203からステップS207へ進む。ステップS207で、制御装置5は、通常加熱に代えて、火力抑制加熱の制御を行う。火力抑制加熱では、下ヒータ10の火力を通常加熱に比べて低下させる。
 
【0051】
  処理は、ステップS207からステップS208へ進む。ステップS208で、制御装置5は、
図4を参照して説明した方法により、水分滴下の終了を検出するための処理を行う。水分滴下が終了したことが検出されていない場合、すなわち水分滴下がまだ続いていると考えられる場合には、処理は、ステップS207へ戻り、火力抑制加熱を継続する。これに対し、水分滴下が終了したことが検出された場合には、処理は、ステップS208からステップS209へ進む。ステップS209で、制御装置5は、火力抑制加熱を終了し、通常加熱を行う。その後、プログラムによる加熱制御に応じた時間が経過した場合に、処理は、ステップS209からステップS206へ進む。ステップS206で、制御装置5は、上ヒータ9及び下ヒータ10への通電を停止し、加熱を終了する。
 
【0052】
  図8を参照して、本実施の形態2における下ヒータ10の火力の制御について説明する。
図8中の下段の図は、下ヒータ10の火力を示す。P1は、通常加熱における下ヒータ10の火力を示す。P2は、火力抑制加熱における下ヒータ10の火力を示す。
 
【0053】
  実線で示す火力の変化は、時刻T1から火力抑制加熱が実行された場合のものである。本実施の形態2では、水分滴下の開始時期T1より後の下ヒータ10の火力P2を、水分滴下の開始時期T1より前の下ヒータ10の火力P1に比べて低くする。これにより、水分滴下によって発生した油ミストが下ヒータ10に触れることで着火する可能性を低減できる。このため、グリル庫7c内での発火を確実に抑制できる。
 
【0054】
  水分滴下が終了した場合には、水分滴下に起因する発火が生じる可能性はないと考えられるので、下ヒータ10の火力を抑制する必要はない。本実施の形態2では、水分滴下の終了時期T2以降においては、通常加熱を行うことで、下ヒータ10の火力をP1に戻す。これにより、本実施の形態2であれば、実施の形態1に比べて、調理時間を短くできる。図示の構成では、水分滴下の終了時期T2より後の下ヒータ10の火力P1が、水分滴下の開始時期T1の前の火力P1に等しい。このような構成に限らず、水分滴下の終了時期T2より後の下ヒータ10の火力を、水分滴下の開始時期T1と終了時期T2との間の下ヒータ10の火力P2に比べて高くすれば、調理時間短縮の効果が得られる。
 
【0055】
  本実施の形態2は、以下のように変形して実施することも可能である。
  (変形例6)本実施の形態2では、庫内温度の変化に基づいて、水分滴下の開始時期及び終了時期を検出している。これは、水分滴下の開始時期及び終了時期を直接的に検出している訳ではなく、水分滴下の開始時期及び終了時期を、庫内温度の変化に基づいて、間接的に検出している、または推測している、と言うことができる。このような方法に代えて、水分滴下の開始時期及び終了時期を直接的に検出してもよい。例えば、グリル庫7c内の画像を撮像するカメラを設け、食品90から落下する水滴92を画像処理によって検出することで、水分滴下の開始時期及び終了時期を直接的に検出することが可能である。
 
【0056】
  (変形例7)制御装置5は、以下のようにして、調理メニューに関する情報に基づいて、食品90からの水分滴下の開始時期及び終了時期を推測してもよい。水分滴下の開始時期及び終了時期は、調理メニューによって異なる。調理メニューと、水分滴下の開始時期及び終了時期との関係を予め制御装置5に記憶しておけば、操作パネル4でユーザーが選択した調理メニューに基づいて、水分滴下の開始時期及び終了時期を推測できる。例えば、調理メニューが「サンマの塩焼き」である場合には、加熱調理の開始から、4分後に水分滴下が開始し、9分後に水分滴下が終了する、という関係が制御装置5に予め記憶されている。
 
【0057】
  (変形例8)制御装置5は、以下のようにして、調理メニューに関する情報に加えて、調理する食品90の量に基づいて、食品90からの水分滴下の開始時期及び終了時期を推測してもよい。例えば、調理メニューが「サンマの塩焼き」であり、調理するサンマが1匹の場合と5匹の場合とを想定する。サンマ5匹を調理する場合には、サンマ1匹を調理する場合に比べて、調理開始からサンマの温度が上昇する速度が遅くなり、食品90としてのサンマからの水分滴下の開始時期及び終了時期が遅くなると考えられる。その点を考慮して、制御装置5は、例えば、調理するサンマが1匹の場合には、加熱調理の開始から、4分後に水分滴下が開始して9分後に水分滴下が終了する、と推測するのに対して、調理するサンマが5匹の場合には、加熱調理の開始から5分後に水分滴下が開始して15分後に水分滴下が終了する、と推測してもよい。このように、調理メニュー及び調理する食品90の量に基づいて水分滴下の開始時期及び終了時期を推測することで、水分滴下の開始時期及び終了時期をより高精度に推測することが可能となる。
 
【0058】
  上述した変形例7または変形例8によれば、水分滴下の開始時期及び終了時期を検出するためのセンサを追加するなどのコストアップを伴うこと無しに、水分滴下の開始時期及び終了時期を精度良く推測することが可能となる。
 
【0059】
  (変形例9)調理装置1が扉ロック機構13を備える場合には、制御装置5は、
図7のステップS207においてグリル7の扉7aがロック状態となるように扉ロック機構13を動作させ、ステップS209において扉7aがアンロック状態となるように扉ロック機構13を動作させてもよい。すなわち、食品90からの水分滴下の開始時期から終了時期までの期間に、グリル7の扉7aをロックしてもよい。グリル7の扉7aをロックすれば、グリル庫7c内で仮に発火が生じた場合であっても、ユーザーが扉7aを開けてグリル皿11を引き出すことがないので、高い安全性が得られる。また、制御装置5は、火力抑制加熱を行うことなく、上述した扉ロック機構13に対する制御のみを実行してもよい。
 
【0060】
  (変形例10)
図9は、実施の形態2の変形例における下ヒータ10の電力の時間的な変化、及び、食品90からの水分滴下が生じる期間の例を示す図である。
図9の下段の図は、下ヒータ10に供給される電力の時間的な変化を示す。下ヒータ10の火力を抑制する方法としては、下ヒータ10に供給される電力の値を低くすることに代えて、
図9に示すように、下ヒータ10に対して間欠的に電力を供給するようにしてもよい。
図9に示す例では、通常加熱において下ヒータ10に供給される電力[W]がE1で一定になるように制御し、火力抑制加熱においては下ヒータ10に供給される電力がE1とゼロとの間で繰り返し切り替わるように制御する。このように、火力を抑制する方法としては、ヒータに供給されるエネルギーすなわち電力を時間的に平均した値が低くなるようにすればよい。
 
【0061】
  (変形例11)
図10は、実施の形態2の変形例における下ヒータ10の電力の時間的な変化、及び、食品90からの水分滴下が生じる期間の例を示す図である。
図10の下段の図は、下ヒータ10に供給される電力の時間的な変化を示す。下ヒータ10の火力を抑制する方法としては、
図9の方法に代えて、
図10に示す方法でもよい。
図10に示す例では、火力抑制加熱のとき、下ヒータ10に供給される電力[W]が、E2とE3との間で繰り返し切り替わるように制御する。ただし、E1>E2>E3>0Wである。このように、火力を抑制する方法としては、ヒータに供給されるエネルギーすなわち電力を時間的に平均した値が低くなるようにすればよい。上述した変形例10及び11は、実施の形態1にも適用可能であることは言うまでもない。
 
【0062】
実施の形態3.
  次に、
図11及び
図12を参照して、実施の形態3について説明するが、前述した実施の形態との相違点を中心に説明し、同一部分または相当部分については説明を簡略化または省略する。
 
【0063】
  本実施の形態3の調理装置1は、グリル皿11の温度を検出または推測する皿温度取得手段を備える。皿温度取得手段は、例えば、グリル皿11の温度を検出する皿温度センサ(図示省略)でもよい。皿温度センサは、調理時にグリル皿11に接触する位置に設けられた温度センサでもよいし、例えば赤外線センサのように非接触で温度を測定可能なセンサでもよい。または、皿温度取得手段は、制御装置5が、例えば、調理メニュー、調理開始から下ヒータ10に供給された電力量、調理開始から上ヒータ9に供給された電力量などの情報に基づいて、グリル皿11の温度を推測するように構成されたものでもよい。
 
【0064】
  本実施の形態3の調理装置1のハードウェア構成は、上述した点以外は、実施の形態1と同じであるので、図示を省略する。
 
【0065】
  図11及び
図12は、実施の形態3における下ヒータ10の火力の時間的な変化、グリル皿11の温度の時間的な変化、及び、食品90からの水分滴下が生じる期間の例を示す図である。
 
【0066】
  加熱調理の開始時のグリル皿11の温度は、常温であると考えられる。加熱調理中、グリル皿11の温度が徐々に上昇していく。グリル皿11の温度が低いときには、食品90からグリル皿11に落ちた水滴92が瞬間的に蒸発することはないので、油ミストは発生せず、油ミストによる発火が生じることもない。グリル皿11の温度が、基準温度A以上である場合には、グリル皿11に落ちた水滴92が瞬間的に蒸発することで、油ミストが発生し、油ミストによる発火が生じる可能性がある。基準温度Aは、例えば、100℃〜130℃の範囲内の値であればよい。
 
【0067】
  図11に示す例では、水分滴下の開始時期T1の時点で、グリル皿11の温度は、基準温度Aに達していない。グリル皿11の温度は、水分滴下の開始時期T1より後の時刻T4にて基準温度Aに到達する。グリル皿11の温度が基準温度A未満であれば、水分滴下に起因する発火が生じる可能性はないので、下ヒータ10の火力を抑制する必要はないと言える。そこで、本実施の形態では、
図11のT1からT4の期間は、下ヒータ10の火力を抑制せず、通常加熱を継続する。そして、グリル皿11の温度が基準温度Aに到達した時刻T4から、下ヒータ10の火力抑制加熱を開始する。
 
【0068】
  このように、本実施の形態では、水分滴下の開始時期T1以降でグリル皿11の温度が基準温度A以上である場合、すなわち
図11の時刻T4以降においては、下ヒータ10の火力を、水分滴下の開始時期T1より前の下ヒータ10の火力P1より低い火力P2(第一火力)にする。その一方で、水分滴下の開始時期T1以降でグリル皿11の温度が基準温度A未満である場合、すなわち
図11のT1からT4の期間においては、下ヒータ10の火力を、P2より高い火力P1(第二火力)にする。このようにすることで、
図11のT1からT4の期間の下ヒータ10の火力を実施の形態2よりも高くできるので、実施の形態2に比べて調理時間を短縮できる。
 
【0069】
  また、本実施の形態では、扉ロック機構13に関して、以下のように制御してもよい。水分滴下の開始時期T1以降でグリル皿11の温度が基準温度A以上である場合、すなわち
図11の時刻T4以降においては、グリル7の扉7aを、扉ロック機構13によりロック状態とする。その一方で、水分滴下の開始時期T1以降でグリル皿11の温度が基準温度A未満である場合、すなわち
図11のT1からT4の期間においては、グリル7の扉7aを、扉ロック機構13によりロックすることなく、アンロック状態とする。
図11のT1からT4の期間においては、水分滴下に起因する発火が生じる可能性はないので、グリル7の扉7aをロックする必要はない。よって、この期間においてグリル7の扉7aをアンロック状態に保つことで、利便性を向上できる。
 
【0070】
  水分滴下の開始時期T1以前に、グリル皿11の温度が基準温度Aに達する場合もあり得る。
図12は、そのような例を示す。
図12に示す例では、水分滴下の開始時期T1より前の時刻T5にて、グリル皿11の温度が基準温度Aに到達している。本実施の形態では、
図12に示す例のような場合には、前述した実施の形態と同様に、水分滴下の開始時期T1から、下ヒータ10の火力抑制加熱が開始される。また、扉ロック機構13の制御に関しては、
図12に示す例のような場合には、水分滴下の開始時期T1から、グリル7の扉7aをロック状態にすればよい。