(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
配列SEQ ID NO.1、SEQ ID NO.2をコードする核酸配列は、それぞれSEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4であることを特徴とする請求項1又は2に記載の融合タンパク質をコードする遺伝子。
前記炎症は、関節リウマチ、骨関節炎、痛風性関節炎、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、反応性関節炎、感染性関節炎、外傷性関節炎、全身性エリテマトーデス及び乾癬を含むことを特徴とする請求項4に記載の融合タンパク質の、炎症治療薬、抗腫瘍薬及び眼科疾患の治療薬の製造における使用。
前記腫瘍は、胃がん、肺がん、肝がん、乳がん、結腸がん、膠腫、黒色腫及び子宮頸がん、並びにヒトの頭頚部、脳、甲状腺、食道、膵臓、肺臓、肝臓、胃、乳腺、腎臓、胆嚢、結腸若しくは直腸、卵巣、子宮頚、子宮、前立腺、膀胱、精巣に由来する原発性がん又は続発がん、黒色腫及び肉腫を含むことを特徴とする請求項4に記載の融合タンパク質の、炎症治療薬、抗腫瘍薬及び眼科疾患の治療薬の製造における使用。
前記虹彩新生血管性眼疾患は、新生血管性緑内障、糖尿病性網膜症又は網膜中心静脈閉塞症による虹彩新生血管性眼疾患を含み、前記脈絡膜新生血管性眼疾患は、加齢性黄斑変性、中心性滲出性脈絡網膜症、眼ヒストプラズマ症候群又は匍行性脈絡膜症による脈絡膜新生血管性眼疾患を含み、前記網膜新生血管性眼疾患は、糖尿病、腫瘍、網膜剥離、網膜中心静脈閉塞症、網膜静脈周囲炎、全身性エリテマトーデス、Eales病又はCoat病に関連する網膜新生血管性眼疾患を含み、前記角膜新生血管性眼疾患は、コンタクトレンズによる角膜新生血管性疾患、及びアルカリや他の化学物質火傷、角膜手術、細菌感染、クラミジア感染、ウイルス感染又は原虫感染による角膜新生血管性眼疾患を含むことを特徴とする請求項7に記載の融合タンパク質の、炎症治療薬、抗腫瘍薬及び眼科疾患の治療薬の製造における使用。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、具体的な実施例により本発明をさらに説明する。
【0033】
実施例1
(一)融合タンパク質の遺伝子の取得及び発現ベクターの構築
血管阻害剤ポリペプチドHM−3配列は、SEQ ID NO.5に示される通りであり、インターロイキン4配列は、SEQ ID NO.6に示される通りであり、ヒトイムノグロブリンIgG1−Fcドメイン(SEQ ID NO.7)を、異なるリンカーペプチドであるGly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Ser Gly Gly Gly Gly Serフレキシブル(F)リンカー、AlaGluAlaAlaAlaLysGluAlaAlaAlaLysGluAlaAla AlaLysGluAlaAlaAlaLysAlaリジッド(R)リンカーにより、IL4DM−HM3タンパク質と接続し、2種類の新規なFc融合タンパク質Fc−IL4DM−HM3を設計する。フレキシブル(F)リンカーで構築されたタンパク質一のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.1に示される通りであり、リジッド(R)リンカーで構築されたタンパク質二のアミノ酸配列は、SEQ ID NO.2に示される通りである。CHO細胞コドンの好みにより、2種類の新規なFc融合タンパク質Fc−IL4DM−HM3をコードする配列を最適化し、すべて3’端にNheI酵素切断部位、Kozak配列、シグナルペプチドを導入し、5’端にXhoI酵素切断部位を導入し、全遺伝子合成方法によりSEQ ID NO.3、SEQ ID NO.4というDNA配列を得る。
【0034】
バイオテクノロジ会社により前記2種類の融合タンパク質Fc−IL4DM−HM3のDNA配列を合成し、pUC57ベクターに接続してクローニングベクターを形成し、E.coli DH5α中に保存してクローン菌株を形成するように委託する。2種類の融合タンパク質は、いずれもpcDNA3.4/MCS(+)を発現ベクターとして用い、ベクターの構築過程が完全に一致するので、Fc−IL4DM−HM3−1を例とし、実験過程は以下の通りである。
【0035】
1、無菌条件で、バイオテクノロジ会社から送られるFc−IL4DM−HM3−1クローン菌株を穿刺細菌の表面から穿り、5mLのAmp抵抗性LB培地の入った2本の試験管に投入し、37℃、120rpmで振とうして終夜培養する。
【0036】
2、培養された2本の試験管の菌液について、一方の試験管に2.5mLの無菌60%グリセリンを加え、均一に混合した後、1mL/本で無菌遠心管に分装し、グリセリンチューブとし、−80℃で凍結保存した。また、他方の試験管における菌液を12000rpmで1min遠心分離させて菌体を回収し、ルーチンの市販のプラスミドミニプレップキットを用いてFc−IL4DM−HM3−1のクローニングベクターを抽出する。
【0037】
3、制限エンドヌクレアーゼNheI/XhoIによりFc−IL4DM−HM3−1クローニングベクター及び発現ベクターpcDNA3.4/MCS(+)に対してダブル酵素切断を行い、水平核酸電気泳動により粘着末端を有する挿入断片Fc−IL4DM−HM3−1と発現ベクターpcDNA3.4/MCS(+)を分離し、市販のDNAゲル抽出キットにより回収する。DNA断片の回収結果を
図3に示す。
【0038】
4、T4リガーゼにより、挿入断片とベクターのモル比が1:5となる割合で、ゲル抽出して得られた挿入断片Fc−IL4DM−HM3−1と発現ベクターpcDNA3.4/MCS(+)を16℃で16時間接続反応させる。
【0039】
5、20uLのDNAを取り接続し、100uLの溶解した直後のE.coli TOP10コンピテントセルに加え、軽く均一に混合し、30min氷浴する。その後、混合物を42℃で45sヒートショックした後、迅速に2〜3min氷浴した。混合物に900uLの無抵抗性LB培地を加え、37℃で振とうして1時間培養する。4℃で、4500rpmで1min遠心分離し、無菌条件で900uLの上澄みを捨て、残りの菌液を沈殿菌体とともに軽く吹き吸い均一に混合し、ピペッティングガンですべて吸い出し、Amp抵抗性LB固体板に塗布し、37℃で12時間静置培養する。
【0040】
6、20個のシングルコロニーを選別し、5mLのAmp抵抗性LB培地の入った試験管に接種し、37℃、120rpmで振とうして終夜培養する。
【0041】
7、前のステップで接種された菌株のうち、正常に増殖した菌株を、それぞれ3本のグリセリンチューブに保存する。同時に、各菌株に菌液PCR検証を行い(
図4を参照)、陽性クローンを選別し、保存されたグリセリンチューブをバイオテクノロジ社に送ってシーケンス検証を行わせる。最終的に正確な発現ベクターを得る。
【0042】
8、シーケンスが正確な菌株を保存したグリセリンチューブを取り出し、30mLのAmp抵抗性LB培地の入った250mLの振とうフラスコに接続し、37℃、120rpmで終夜培養し、20本のグリセリンチューブを−80℃で凍結保存した。これにより、Fc−IL4DM−HM3−1発現ベクターの構築作業が完成する。
【0043】
(二)融合タンパク質の発現
一過性トランスフェクションとは、DNAを真核細胞に導入する方法の一つである。一過性トランスフェクションにおいて、組換えDNAを感染性の強い細胞系に導入することにより、目的の遺伝子を一過的でありながら高いレベルで発現する。短い時間で実験に用いられる十分なタンパク質を取得し、安定的トランスフェクションにおける細胞選別時間を節約することができる。Expi293 Expression System一過性トランスフェクション発現システムにより、2種類の新規な融合タンパク質Fc−IL4DM−HM3を発現する。融合タンパク質の発現過程が完全に一致するので、Fc−IL4DM−HM3−1を例とし、実験過程は以下の通りである。
【0044】
1、プラスミドの製造
−80℃の冷蔵庫から、Fc−IL4DM−HM3−1発現ベクターによる菌株保存グリセリンチューブを1本取り出し、500mLのAmp抵抗性LB培地の入った2Lの振とうフラスコに接続し、37℃、160rpmで終夜振とうして培養する。
【0045】
培養終了後、5000gで5min遠心分離して菌体を収集し、市販のエンドトキシン除去プラスミドマキシキットを用いてプラスミドを抽出する。プラスミドの濃度を1mg/mL以上(この濃度よりも低いと濃縮する)に制御し、口径0.22μmの無菌ろ過膜によりろ過し殺菌し、プラスミドの製造が完成する。
【0046】
2、一過性トランスフェクション細胞の前期準備作業
トランスフェクションに用いられる293F細胞を回復当日から4日間ずつ培養し、細胞密度0.4*10
6cells/mLで継代培養し、少なくとも継代培養を三回行ってから一過性トランスフェクションを行う。継代培養過程において、最終的なトランスフェクション培地の体積により、必要に応じて継代培養体積を増大する。
【0047】
3、一過性トランスフェクション(30mLのトランスフェクション体積を例とし、必要に応じて倍増する)
(1) 実験前日に6*10
7の生細胞を30mLのExpi293 Expression Mediumに入れ、37℃、8%CO
2、125rpmで振とう培養する。
【0048】
(2) 実験当日に、まず前日培養された細胞をカウントし、細胞密度が3〜5*10
6cells/mLであり、生存率が95%以上である。
【0049】
(3) 7.5*10
7cellsを新しい125mL三角フラスコに吸い込み、予熱したExpi293 Expression Mediumを25.5mLに補充する。
【0050】
(4) プラスミド−トランスフェクション試薬の混合液の準備
〔1〕30μgプラスミドDNAを1.5mLのOpti−MEM I Reduced Serum Mediumに再溶解し、軽く均一に混合する。
【0051】
〔2〕81μLのExpiFectamine 293 ReagentをOpti−MEM I Reduced Serum Mediumに加え、1.5mLに定容する。軽く均一に混合し、室温で5minインキュベートする(長時間にわたりインキュベートすると転化率に影響を与える)。
【0052】
〔3〕前記二種類の溶液を軽く均一に混合し、室温で20〜30minインキュベートし、プラスミド−トランスフェクション試薬の混合液の準備作業を完成する。
【0053】
(5) 3mLのプラスミド−トランスフェクション試薬の混合液をステップ(3)の細胞培養液に加え、計28.5mLである。
【0054】
(6) 37℃、8%CO
2、125rpmで20時間振とう培養する。
【0055】
(7) 150μLのExpiFectamine 293 Transfection Enhancer 1と1.5mLのExpiFectamine 293 Transfection Enhancer 2を加える。これにより、総体積が30mLとなる。
【0056】
(8) 37℃、8%CO
2、125rpmで振とう培養する。6日目に培養を終了し、タンパク質の精製を行う。
【0057】
(三)融合タンパク質の精製
Protein Aは、黄色ブドウ球菌から分離された細胞壁タンパク質であり、主にFc断片により哺乳動物IgGに結合し、極めて高い特異性と結合能力を有し、IgG抗体とIgG−Fc融合タンパク質の精製に広く用いられる。2種類の新規な融合タンパク質Fc−IL4DM−HM3−1は、いずれもIgG−Fc断片を有し、精製過程が完全に一致するので、1.6LでFc−IL4DM−HM3−1を一過性トランスフェクションして製造することを例とし、実験過程は以下の通りである。
【0058】
1、サンプルの前処理:1.6Lの培養終了後の一過性トランスフェクション細胞培養液を4℃で7500rmpで20min遠心分離し、約1.46Lの得られた上澄みを次のprotein A捕捉に供する。
【0059】
2、目的のタンパク質のアフィニティー捕捉(
図5の通り)
クロマトグラフィー用カラムの情報は以下の通りである。
【0061】
〔1〕まず、500mLの0.2M NaOHで滅菌し、流速を10mL/minとする。
【0062】
〔2〕20mMのPB、0.15MのNaClでpH 7.0となるようにクロマトグラフィー用カラムを平衡化させ、体積を約1000mLとし、流速を20mL/minとする。
【0063】
〔3〕サンプルの設置:サンプルをpHが中性になるまで予め調整し、流速を20mL/minとする。
【0064】
〔4〕20mMのPB、0.15MのNaClでpH 7.0となるようにクロマトグラフィー用カラムを洗い流し、約800mLとし、流速を20mL/minとする。
【0065】
〔5〕50mMのクエン酸−クエン酸ナトリウム、0.15MのNaCLでpH 3.0とうなるように目的のタンパク質を溶出させ、ピークが出るから20mAuで収集し始め、ピーク後20mAuで収集を停止し、流速を20mL/minとする。
【0066】
〔6〕最後に、クロマトグラフィー用カラムを0.2MのNaOHで500mL洗浄し、中性になるまで水で洗い流した後、20%エタノールでクロマトグラフィー用カラムを保存する。
【0067】
〔7〕最後に、クロマトグラフィー用カラムを0.2MのNaOHで500mL洗浄し、中性になるまで水で洗い流した後、20%エタノールでクロマトグラフィー用カラムを保存する。
【0068】
3、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるさらなる分離精製(
図6の通り)
【0070】
〔1〕0.5MのNaOH 300mLで滅菌し、流速を10mL/minとし、その後、だいたい中性になるまで超純水で洗い流す。
【0071】
〔2〕PBS緩衝液でpH 7.4となるようにクロマトグラフィー用カラムを平衡化させ、平衡体積を約1500mLとし、流速を10mL/minとする。
【0072】
〔3〕サンプルを設置し、サンプルをproteinA溶出液とし、サンプルの設置量を40mLとする。
【0073】
〔4〕サンプルを収集し、ピーク3を目的のタンパク質のピークとし、ピーク3を収集し、ピークが出るから10mAuで収集し始め、ピーク後10mAuで収集を停止する。
【0074】
〔5〕最後に、0.1MのNaOHでクロマトグラフィー用カラムを保存し、流速を10mL/minとする。
【0075】
4.サンプルの限外ろ過濃縮:ピーク3のサンプルを合わせて限外ろ過濃縮を行い、限外ろ過膜を10kDaで用い、目的のタンパク質の濃度が5mg/mL以上になるまでサンプルを濃縮した後、サンプルを分装し、−80℃の冷蔵庫で保存する。初期濃度を約0.29mg/mLとし、最終濃縮を27mLとし、濃度を約5.53mg/mLとし、サンプルを分装し、凍結保存する。同時に、SDS−PAGEとHPLC等の方法によりサンプルのリリース測定を行う(
図7と
図8)後、ドラッガビリティの評価研究に供する。
【0076】
実施例2
融合タンパク質の多種の腫瘍細胞に対する増殖阻害作用
MTT法により、実施例1で得られたインテグリン阻害剤である融合タンパク質の、黒色腫細胞B16F10、胃がん細胞MGC−803、肺がん細胞A549、肝がん細胞Hep−G2、乳がん細胞MDA−MB−231、結腸がん細胞HCT−116、ヒト脳膠腫U87、子宮頸がん細胞Helaを含む多種の腫瘍細胞に対する増殖活性阻害作用を測定する。
【0077】
腫瘍細胞を37℃、5%CO
2インキュベータで密度が90%以上に達するまで培養し、トリプシンで消化して収集し、培養液で細胞を再懸濁させ、顕微鏡下でカウントする。細胞濃度を3.0×10
4個/mLに調整した後、細胞懸濁液を100μL/ウェルで96ウェルプレートに接種し、37℃、5%CO
2インキュベータ内で一晩培養する。融合タンパク質一、融合タンパク質二、陽性薬タキソールTaxolを培養液でそれぞれの所定濃度に希釈する。細胞が完全にプレートに接着した後、各希釈液をそれぞれ96ウェルプレート(100μL/ウェル)に加える。インテグリン阻害剤が加えられた融合タンパク質一、融合タンパク質二を投与群とし、タキソールを陽性対照群とし、いずれの薬物も加えなかった培養液をブランク対照群とし、37℃、5%CO
2インキュベータで48時間インキュベートする。96ウェルプレートの各ウェルに5mg/mLのMTTを20μL加え、引き続き4時間培養する。培地を吸引により除去した後、各ウェルに100μLのDMSOを加えて溶解する。マイクロプレートリーダーを用いて測定波長570nm、参照波長630nmで吸光度値を測定し、以下の算式により増殖阻害率(proliferation inhibition,PI)を算出する。
【0079】
N
testは試験群のOD値、N
controlはブランク対照群のOD値である。
【0080】
データ統計:
実験を5回独立して繰り返し、実験結果からmean±SDを算出し、統計T検定を行い、P<0.05の場合に有意差があり、P<0.01の場合に極めて顕著な有意差がある。実験結果を表1〜8に示す。
【0082】
結果から明らかなように、融合タンパク質一、タンパク質二は、黒色腫細胞B16F10を効果的に阻害することができ、8μg/mLの濃度で、阻害率が40%以上に達する。
【0084】
結果から明らかなように、融合タンパク質一、タンパク質二は、胃がん細胞MGC−803を効果的に阻害することができ、32μg/mLの濃度で、阻害率が50%以上に達する。
【0086】
結果から明らかなように、融合タンパク質一、タンパク質二は、肺がん細胞A549を効果的に阻害することができ、128μg/mLの濃度で、阻害率が45%以上に達する。
【0088】
結果から明らかなように、融合タンパク質一、タンパク質二は、肝がん細胞Hep−G2に対して一定の阻害作用を有し、阻害率は、濃度が増加するにつれて高くなる。
【0090】
結果から明らかなように、融合タンパク質一、タンパク質二は、乳がん細胞MDA−MB−231を効果的に阻害することができ、128μg/mLの濃度で、阻害率が40%以上に達する。
【0092】
結果から明らかなように、融合タンパク質一、タンパク質二は、結腸がん細胞HCT−116を効果的に阻害することができ、64μg/mLの濃度で、阻害率が40%以上に達する。
【0094】
結果から明らかなように、融合タンパク質一、タンパク質二は、ヒト脳膠腫U87を顕著に阻害することができ、32μg/mLの濃度で、阻害率が50%以上に達する。
【0096】
結果から明らかなように、融合タンパク質一、タンパク質二は、子宮頸がん細胞Helaを顕著に阻害することができ、64μg/mLの濃度で、阻害率が55%程度に達する。
【0097】
以上をまとめると、融合タンパク質一、タンパク質二のインテグリン阻害剤の、多種の腫瘍細胞に対する増殖阻害作用は、表1〜8に示される通り、融合タンパク質は、胃がん、肺がん、肝がん、乳がん、黒色腫、結腸がん、膠腫及び子宮頸がんの増殖を効果的に阻害することができる。そのうち、32μg/mLの濃度で、黒色腫、胃がん、ヒト脳膠腫に対する阻害率が50%以上に達し、64μg/mLの濃度で、結腸がん細胞に対する阻害率が40%以上に達し、子宮頸がん細胞に対する阻害率が50%以上に達し、肺がん、肝がん、乳がん細胞に対しては、高い濃度でしか効果的に阻害することができない。
【0098】
実施例3
三次元transwell法によるヒト臍静脈内皮細胞に対する融合タンパク質一、タンパク質二の遊走阻害活性の測定
ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)を、5%ウシ胎児血清及び1×ECGSを含有する内皮細胞培養液で、37℃、5%CO
2インキュベータでコンフルエンスが90%以上になるように培養し、transwell法により内皮細胞に対する融合タンパク質一、タンパク質二の遊走阻害活性を測定し、内皮細胞HUVECは第2〜8世代のみを用い、具体的には、以下の通り操作する。
【0099】
(1)10mg/mLのMatrigelをDMEM培地により1:4で希釈した後、transwellチャンバー膜に塗布し、室温で空気乾燥させる。
【0100】
(2)対数増殖期に培養したHUVEC細胞を0.2%EDTAで消化して収集し、PBSで2回洗浄した後、0.1%BSAを含有する内皮細胞培養液で再懸濁させる。顕微鏡下でカウントする。細胞濃度を1×10
5/mLに調整する。
【0101】
(3)各群の試験用液を調製した後、0.1%BSAを含有する細胞培養液で100μLに希釈する。
【0103】
ブランク対照群:薬物を含まない細胞培養液である。
【0104】
エンドスター群:薬物を含まない細胞培養液で5mg/mLのエンドスター薬液を所定濃度に希釈する。
【0105】
融合タンパク質群:薬物を含まない細胞培養液で融合タンパク質を10μg/mLに希釈する。
【0106】
(4)細胞を100μL/ウェルでtranswellチャンバーに接種し、各群の試験用液をチャンバーに加える。24ウェルプレートに5%ウシ胎児血清及び1%ECGSを含有する内皮細胞培養液0.6mLを加え、細胞を遊走するように刺激し、5%CO
2、37℃で24時間培養する。
【0107】
(5)ウェルにおける培養液を捨て、90%アルコールにより常温で30min固定し、0.1%クリスタルバイオレットにより常温で10min染色した後、清水でリンスし、綿棒を用いて上層にある遊走していない細胞をやさしく拭き取り、顕微鏡で観察し、4つの視野を選択し、撮影してカウントする。以下の算式により遊走阻害率(migration inhibition,MI)を算出する。
【0108】
【数2】
ここで、N
testは試験群の細胞遊走数、N
controlはブランク対照群の細胞遊走数である。
【0109】
データ統計:
実験を3回独立して繰り返し、実験結果からmean±SDを算出し、統計T検定を行い、P<0.05の場合に有意差があり、P<0.01の場合に極めて顕著な有意差がある。実験結果を表9に示す。
【0111】
実験結果から明らかなように、融合タンパク質一、タンパク質二の作用により、遊走した内皮細胞数が陰性対照群に比べて顕著に減少する。2μg/mLの濃度でHUVEC遊走阻害に対して顕著な作用を有し、阻害率が70%以上であり、細胞遊走に対する阻害率は、陰性対照群に比べて極めて顕著な有意差があり(P<0.01)、濃度が0.5μg/mL〜4μg/mLである場合に阻害効果が最も好ましい。
【0112】
実施例4
マウス脾臓リンパ球の増殖に対する融合タンパク質一、タンパク質二の影響
無菌条件でマウス脾臓を取り出し、ブランク1640培地で3回洗浄し、5mLシリンジのピストンを用いて脾臓を押しつぶし、その後200メッシュの篩で濾過し、単細胞懸濁液を調製し、遠心分離(1000rpm×5min)した後、上澄みを捨て、Tris−NH
4Clで赤血球を破砕し、氷水浴で4min静置し、遠心分離(1000rpm×5min)した後、上澄みを捨て、無菌PBSで細胞を2回洗浄する。最後に10%子牛血清のRPMI1640培養液(5mL)を加えて細胞を懸濁させ、細胞をカウントし、細胞濃度を5×10
6個/mLに調整した後、96ウェル培養プレートで培養する。
【0113】
試験では、ブランク対照群、コンカナバリンA(ConA)群、デキサメタゾン(Dex)群(0.02mg/mL)、タンパク質一及びタンパク質二の試験群とする。各群にそれぞれ100μL/ウェルで脾臓リンパ球懸濁液を加えた後、ブランク対照群にブランク1640培養液100μL、ConA群にConA(最終濃度:5μg/mL)、Dex群にDex、タンパク質一及びタンパク質二に濃度の異なる抽出物を加えた上でConA(最終濃度:5μg/mL)を加える。37℃の細胞インキュベータで48時間静置培養し、培養終了後に各ウェルに20μLのMTTを加え、引き続き4時間培養し、最後に各ウェルにおけるすべての溶液を捨て、各ウェルに100μLのDMSOを加え、振とうし、マイクロプレートリーダーにより570nmでのOD値を測定し、各ウェルについて5個の並行群をセットする。実験結果を表10に示す。
【0115】
結果から明らかなように、ConA群に比べて、融合タンパク質一、タンパク質二は、いずれもマウス脾臓リンパ球の増殖をある程度阻害することができる。
【0116】
実施例5
マウス腹腔マクロファージのIL−1β産生に対する融合タンパク質一、タンパク質二の影響
(1)IL−1βの産生:マウスに1mLのブロス培地(6%)澱粉を腹腔内注射し、3日後、無菌条件でマウス腹腔マクロファージを取り、1640培地で2回洗浄し、細胞濃度を2×10
6個/mLに調整した後、1mL/ウェルで24ウェル培養プレートに注入し、細胞インキュベータに置き3時間インキュベートし、30min毎に振とうすることで細胞を完全にプレートに接着させる。次いで、培養液で2回洗浄することでプレートに接着していない細胞を除去する。ブランク群はPBSを加え、陽性群は陽性薬デキサメタゾン(Dex)を加え、対照群は、濃度が低、中、高の3種類の融合タンパク質一と二であり、投与後、48時間継続的に培養した後、1000r/minで15min遠心分離する。上澄みをIL−1β活性測定サンプルとして回収する。
【0117】
(2)IL−1βの含有量測定:R&D会社のマウスIL−1β酵素結合免疫吸着測定(ELISA)キットを用いて測定し、キットの説明書に従って以下の通り操作する。即ち、測定サンプル及び濃度の異なる標準品を、それぞれプレートシールで反応ウェルをカバーし、37℃で90minインキュベートし、プレートを4回洗浄し、ビオチン化抗体作動流体(100μL/ウェル)を加え、プレートシールで反応ウェルをカバーし、37℃で60minインキュベートし、プレートを4回洗浄し、酵素コンジュゲート作動流体(100μL/ウェル)を加え、プレートシールで反応ウェルをカバーし、37℃で30minインキュベートし、プレートを4回洗浄し、顕色剤(100μL/ウェル)を加え、暗所で37℃で10−20minインキュベートし、停止液(100μL/ウェル)加え、均一に混合した後、OD450値を測定する。実験結果を表11に示す。
【0119】
実験結果から明らかなように、融合タンパク質一及びタンパク質二は、いずれもマウス腹腔マクロファージのIL−1β産生に対して顕著な阻害作用を有する。
【0120】
実施例6
ラット綿球肉芽腫のような亜急性炎症に対する融合タンパク質一、タンパク質二の影響
分析天秤で脱脂綿40部を正確に秤量し、30mg/部で形状と大きさがほとんど同じ球形に丸める。使用のために、1.5kpaで30min高圧滅菌し、50℃でべーキングする。
【0121】
雄性SDラット40匹を取り、10匹/群で4群にランダムに分ける。それぞれモデル群、デキサメタゾン陽性群(10mg/kg)、融合タンパク質一、タンパク質二の試験群とし、有効用量を64mg/kgとする。投与前にラットをペントバルビタールナトリウム(40mg/kg)を腹腔内注射することで麻酔させ、腹部コートをはさみで取り除き、無菌条件で、切欠長さが約1cmとなるように下腹部の真ん中の皮膚を剪み、止血鉗子で皮下組織を拡張し、片側の鼠蹊に無菌乾燥綿球を皮下移植し、切欠を縫合し、感染を防止するために切欠に適量のアモキシシリンを散らす。術後当日から群別5日に1回注射投与する。7日目に、投与後の24時間目に、頸椎脱臼でマウスを死亡させ、鼠蹊の皮膚を切り、綿球を周囲の肉芽組織とともに取り出し、周囲組織を取り除く。60℃のオーブンに入れて48時間連続して乾燥させた後、重量を精密に秤量し、以下の算式により肉芽腫重量を算出する。肉芽腫重量(mg/100g体重)=肉芽腫の正味重量(mg)/ラットの体重(100 g)。実験結果を表12に示す。
【0123】
実験結果から明らかなように、ブランクモデル群に比べて、融合タンパク質一及びタンパク質二は、有効用量64mg/kgで、いずれもラット綿球肉芽腫に対して顕著な阻害作用を有する。陽性薬は、阻害率が高いが、ラットの体重が顕著に低下し、毒性副作用が大きく、融合タンパク質が比較的安全である。
【0124】
実施例7
マウス腹腔毛細血管透過性に対する融合タンパク質一、タンパク質二の影響
昆明マウス80匹を準備し、10匹/群で8群にランダムに分け、それぞれブランクモデル群、デキサメタゾン陽性群(10mg/kg)、高、中、低用量(128、32、8mg/kg)の融合タンパク質一及びタンパク質二を試験群とする。5日に1回注射投与し、ブランクモデル群に対して等体積の生理食塩水を5日間持続して投与し、正常に給餌する。投与後5日目に、5g/Lエバンスブルー生理食塩水溶液を10kg/mL尾静脈注射した後、すぐにHAc溶液(6mL/L)を10kg/mL腹腔内注射して炎症を誘発する。20min後に頸椎脱臼でマウスを死亡させ、5mLの生理食塩水を腹腔内注射し、腹部を2min軽く揉み、腹腔を切り、腹腔洗浄液を収集し、4000rpmで10min遠心分離し、1mLの上澄みを取り3mLの生理食塩水に加えて4mLの希釈液を得、紫外分光光度計により波長590 nmで希釈液の吸光度OD値を測定し、OD590 nm値によって色素滲出量を表し、マウス腹腔毛細血管透過性を観察する。実験結果を表13に示す。
【0126】
実験結果から明らかなように、融合タンパク質一及びタンパク質二は、いずれも氷酢酸によるマウス腹腔毛細血管透過性の増加に対して顕著な阻害作用を有し、用量が高いほど、作用が強くなる。
【0127】
実施例8
キシレンによるマウスの耳腫脹に対する融合タンパク質一、タンパク質二の影響
昆明マウス80匹を取り、10匹/群で8群に分け番号付けする。生理食塩水群をブランク対照群、アスピリン群(200mg/kg)を陽性対照群、融合タンパク質一及びタンパク質二の高、中、低用量(128、32、8mg/kg)を試験群とする。マウスに対して5日に1回注射投与する。ブランク対照群に対して等体積の生理食塩水を投与する。投与後5日目に、マウスの右耳の両面にキシレン0.05mLを塗布して炎症を誘発し、左耳には塗布せずに正常耳とする。2時間後に頸椎脱臼でマウスを死亡させ、耳介に沿って両耳を切り、イヤーパンチで耳ピースを取り、重さを測り、以下の算式で腫脹度及び腫脹率を算出する。腫脹度=右耳ピースの重さ−左耳ピースの重さ、腫脹率=(腫脹度/左耳ピースの重さ)×100%。実験結果を表14に示す。
【0129】
実験結果から明らかなように、融合タンパク質一及びタンパク質二の中、高用量は、いずれもキシレンによるマウスの耳腫脹に対して顕著な阻害作用を有し、阻害作用は、用量の増加につれて強くなる。
【0130】
実施例9
カラギーナン誘導ラット足趾腫脹急性炎症に対する融合タンパク質一、タンパク質二の影響
SDラット80匹を取り、10匹/群で8群にランダムに分け、それぞれブランクモデル群、デキサメタゾン陽性群(5mg/kg)、及び融合タンパク質一とタンパク質二の高、中、低用量群(128、32、8mg/kg)の試験群とする。5日に1回注射投与し、モデル群に等体積の生理食塩水を3日間持続して投与し、正常に給餌する。投与後3日目に、右後足の足裏に1%カラギーナン0.1mLを皮下注射することで炎症を誘導し、炎症誘導後の1時間、3時間、5時間、7時間にそれぞれ足の体積を測定する。以下の算式により足腫脹度を算出する。足腫脹度(mL)=炎症誘導後の足の体積−炎症誘導前の足の体積。こぼれた液体のミリリットル数を記録する(方法:右関節の突起箇所に対しボールペンで測定マークとして円を描き、後肢が装置外に露出し且つ円が描かれた箇所が液面と重なり合うように、各ラットの右後足を体積測定装置内に順次入れる。足が液体に入ると、液面が高くなり、こぼれた液体の体積をラットの右後足の体積として各ラットの右後足の正常体積を測定する)。実験結果を表15に示す。
【0132】
実験結果から明らかなように、モデル構築後、各群のラットの足趾部は迅速に腫脹し、約3〜5時間目に腫脹はピークに達し、7時間目から消失し始める。融合タンパク質一及びタンパク質二の高用量は、いずれもカラギーナン誘導ラット足趾腫脹に対して顕著な阻害作用を有し、低用量の阻害作用が顕著ではない。
【0133】
実施例10
アジュバントラット関節炎慢性炎症に対する融合タンパク質一、タンパク質二の影響
モデルの構築:
SPFレベルのSDラット80匹を取り、8群にランダムに分け、各群のラットをエーテルで浅麻酔させた後、ラットの左後のつま先に不活性化された結核菌を含む完全フロイントアジュバント0.1mLを皮下注射した後、左後足に原発性関節炎が迅速に生じ、モデル構築後の13日目程度に、右後足に続発性関節炎が発生し始める。ブランク対照群に等体積の生理食塩水を注射する。モデル構築後の13日目から投与する。ここで、メトトレキセート群に5日に1回、15日計4回注射投与する。融合タンパク質一及びタンパク質二の高、中、低の3種類の用量(128mg/kg、32mg/kg、8mg/kg)で5日に1回、15日注射投与する。
【0134】
治療効果の評価:
1.原発性及び続発性足趾腫脹度
足の体積測定方法により、各ラットの左右後足の足首関節に脂溶性標識ペンで標識し、動物の左右後足をそれぞれ体積測定装置に浸漬する。浸漬深さは、マーカーを限界とし、当該装置の目盛ピペットでの読取値を動物の左右後足の初期体積とする。
【0135】
モデル構築の当日を0日目とし、d0と記し、モデル構築後の1日目d1から左後足(モデル構築の足)の体積を2日おきに1回測定し、反対側の非炎症誘導足(右後足)に腫脹(即ち、続発性関節炎)が発生すると投与し、左右後足の体積を2日おきに1回測定し、以下の算式により原発性と続発性足趾腫脹度を求める。
【0136】
原発性足趾腫脹度(mL)=測定当日の左後足の体積−左後足の初期体積
続発性足趾腫脹度(mL)=測定当日の右後足の体積−右後足の初期体積
2.臨床スコア
全身スコア:続発性炎症が発生した後、2日おきに全身スコアを行う。
【0137】
後足:腫脹がない=0点、1つの後足に腫脹が発生する=1点、2つの後足に腫脹が発生する=2点、
前足:腫脹がない=0点、1つの前足に腫脹が発生する=1点、2つの前足に腫脹が発生する=2点、
耳:赤みと結節がない=0点、1つの耳に赤み又は結節が発生する=1点、2つの耳に赤みと結節が発生する=2点、
鼻:腫脹がない=0点、顕著な腫脹=1点、
尾:結節がない=0点、結節がある=1点。満点8点。
【0138】
関節炎の指数スコア:続発性炎症が発生した後、2日おきに関節炎の指数スコアを行う。
【0139】
正常=0点、足首関節に紅斑と軽い腫脹が発生する=1点、足首関節から中足指節関節又は足底関節までに紅斑と軽度腫脹が発生する=2点、足首関節から中足指節関節又は足底関節までに紅斑と中度腫脹が発生する=3点、足首関節から中足指節関節又は足底関節までに紅斑と重度腫脹が発生する=4点、各足で満点4点であり、最高スコアは16点である。
【0140】
3.体重増加値
モデル構築前に各群のラットの初期体重を秤量し、モデル構築のd1日目から、2日おきに体重を測り、初期体重を引き、各群のラットの体重増加値とする。実験結果を表16に示す。
【0142】
実験結果から明らかなように、各群のラットのモデル構築を行った後、左後足に腫脹(原発性炎症)が迅速に発生し、13日目に、左右後足(非反対側炎症誘導足)に赤い腫れ(即ち、続発性炎症)が発生し、関節炎指数及び全身スコアが高くなり始め、19日目に最大値に達し、投与するにつれて各群の腫脹度及びスコアが徐々に低下する。原発性足趾腫脹度によって各治療群の原発性関節炎に対する治療作用を反映し、各投与群の高、中の2種類の用量は、モデル群に比べて、いずれも原発性関節炎をある程度治療することができ、陽性薬メトトレキセートの効果が最も好ましく、融合タンパク質一及びタンパク質二は、高用量群の効果が好ましく、極めて顕著な有意差があり(**P<0.01)、続発性足趾腫脹度によって各治療群の続発性関節炎に対する治療作用を反映する。
【0143】
実施例11
ヒト網膜血管内皮細胞(HRCEC)に対する融合タンパク質一、タンパク質二の増殖阻害作用
MTT法により、インテグリン阻害剤であるポリペプチドの、ヒト網膜血管内皮細胞に対する増殖活性阻害を測定する。HRCEC細胞を37℃、5%CO
2インキュベータ内で密度90%以上まで培養し、トリプシンで消化して収集し、培養液で細胞を再懸濁させ、顕微鏡下でカウントする。細胞濃度を3.0×10
4個/mLに調整した後、細胞懸濁液を100μL/ウェルで96ウェルプレートに接種し、37℃、5%CO
2インキュベータ内で一晩培養する。ポリペプチドI、ポリペプチドII、ポリペプチドIII、Avastinを培養液でそれぞれの所定濃度に希釈する。細胞が完全にプレートに接着した後、各希釈液をそれぞれ96ウェルプレート(100μL/ウェル)に加える。インテグリン阻害剤であるポリペプチドを加えたものを投与群、Avastinを加えたものを陽性対照群、いずれの薬物も加えなかった培養液をブランク対照群とし、37℃、5%CO
2インキュベータで48時間インキュベートする。96ウェルプレートの各ウェルに5mg/mLのMTTを20μL加え、引き続き4時間培養する。培地を吸引により除去した後、各ウェルに100μLのDMSOを加えて溶解する。マイクロプレートリーダーを用いて測定波長570nm、参照波長630nmで吸光度値を測定し、以下の算式により増殖阻害率(proliferation inhibition,PI)を算出する。
【0144】
【数3】
ここで、N
testは試験群のOD値、N
controlはブランク対照群のOD値である。
【0145】
データ統計:
実験を5回独立して繰り返し、実験結果からmean±SDを算出し、統計T検定を行い、P<0.05の場合に有意差があり、P<0.01の場合に極めて顕著な有意差があった。実験結果を表17に示す。
【0147】
結果から明らかなように、融合タンパク質一、タンパク質二は、ヒト網膜血管内皮細胞(HRCEC)の増殖に対して顕著な阻害作用を有し、用量依存関係を示し、64μg/mLの濃度で、阻害率が50%以上に達する。
【0148】
実施例12
鶏胚漿尿膜(CAM)による融合タンパク質一、タンパク質二のインビボでの血管新生に対する阻害活性作用の分析
本研究では、CAM試験により融合タンパク質一、タンパク質二のインビボでの血管新生に対する阻害活性を検討する。研究によると、鶏胚が成長する8日目から11日目まで、コラーゲンタンパク質の生合成速度が最大に達し、このときが血管新生の最も盛んな段階となり、体内免疫システムはまだ完全に構築されていないので、8日目に成長する鶏胚を選択して投与し始める。薬物担持紙上のポリペプチドは、鶏胚漿尿膜に一定の拡散範囲制限があることを考慮すると、試験では、紙の縁から半径5mmの範囲での新生血管数のみをカウントする。以下の通り操作する。
【0149】
(1)6日目の白杭鶏胚を湿度60%〜70%、37℃のインキュベータで2日培養する。
【0150】
(2)鶏胚気嚢の上方に1.0cm×1.0cmの窓を開け、ピンセットで内膜を剥がし、漿尿膜を露出させる。直径5mmのレンズ拭紙をサンプル添加キャリアとし、鶏胚気嚢の漿尿膜に放置する。ろ紙にPBSを加えたものをブランク群、それぞれ異なる用量の融合タンパク質を加えたものを投与群、Avastinを陽性対照群とする。
【0151】
(3)鶏胚気嚢を無菌透明テープでカバーし、37℃で72時間培養した後、鶏胚気嚢を開け、固定液(ホルムアルデヒド:アセトン=1:1)を加えて15min固定する。レンズ拭紙付の漿尿膜を取り出し、新生血管分布状況を観察し、新生血管をカウントし撮影する。各群の用量を5回繰り返し、試験結果を統計分析する。
【0152】
鶏胚漿尿膜(CAM)による融合タンパク質のインビボでの血管新生に対する阻害活性の分析を行ったところ、陰性対照群ではPBS処理を行い、陽性対照群ではAvastinの用量を10μgとし、融合タンパク質一、タンパク質二ではそれぞれ128μg、32μg、8μgという高、中、低の3種類の用量で鶏胚を処理する。結果を表18に示す。
【0154】
実験結果から明らかなように、融合タンパク質一及びタンパク質二は、いずれもCAMの新生血管形成を阻害することができ、高用量下で50%に近い強い阻害効果を有する。
【0155】
実施例13
マウス角膜新生血管に対する融合タンパク質一、タンパク質二の作用
(1)BALB/cマウスアルカリ火傷誘導角膜新生血管モデルの構築:
健康BALB/cマウス15匹(雄性、体重20〜25g)を、細隙灯顕微鏡下で両眼前眼部及び付属器官を検査し、眼病変を排除する。アルカリ火傷のモデル構築前日に0.3%オフロキサシン点眼薬を1日2回投与して点眼する。マウスを1.8%Avertinを腹腔内注射することで麻酔させた後、ピンセットで直径2mmの単層ろ紙を挟み、1mol/L水酸化ナトリウム溶液に浸漬し、飽和状態になった後、余分な液体を取り除き、ろ紙をBALB/cマウス角膜中央に40S放置し、ろ紙を捨て、すぐに15mLのPBSで火傷領域及び結膜嚢を1min十分に洗い流す。綿棒で余分な水分を拭き取り、上皮下基質層及び角膜縁に損傷を与えないように、手術用顕微鏡下でブレードで角膜縁に平行になるように角膜上皮を回転して剥離し、手術終了後に感染を予防するために結膜嚢にエリスロマイシン眼軟膏を塗布する。
【0156】
(2)実験動物の群分け及び標本取得:
マウス15匹を5匹/群でランダムに分け、融合タンパク質一群、融合タンパク質二群及び対照群と記し、アルカリ火傷を加えた後、それぞれ64μgの融合タンパク質一、64μgの融合タンパク質二及び生理食塩水を硝子体注射により7日1回投与する。アルカリ火傷を加えた後の1、7、14日目に細隙灯顕微鏡下で各群角膜の炎症反応及び新生血管の状況を観察する。アルカリ火傷を加えた後の14日目に前眼部撮影付きの細隙灯顕微鏡下で撮影し各群角膜の新生血管形成状況を記録した後、頸椎脱臼で全てのマウスを死亡させ、眼球を摘出し、生理食塩水で洗い流して血痕を除去し、4%パラホルムアルデヒドで1.5時間固定し、30%スクロースを含むPBSに入れて終夜脱水した後、OCT凍結組織切片作製用包埋剤で包埋し、−80℃の冷蔵庫中に保存し、8μmの凍結切片を作製し、免疫組織化学法によりCD31の発現を検出する。
【0157】
(3)角膜組織微小血管密度の定量測定:
微小血管密度(Microvessel density,MVD)は、血管形成を評価する指標である。抗CD31抗体免疫組織化学法により血管内皮細胞を標識し、単位面積当たりの微小血管数をカウントすることにより、新生血管形成の程度を評価する。微小血管の統計は、以下のように行われる。顕微鏡下で角膜組織における隣接する組織の境界が明確で、琥珀色若しくは褐色に染色された内皮細胞又は細胞集団を観察し新生血管としてカウントする。10×20の顕微鏡下で切片全体における新生血管の数をカウントし、角膜組織切片を撮影した後、画像処理ソフトウェアImage Jにより角膜組織切片全体の面積を算出し、切片全体における新生血管の密度を求める。結果を表19に示す。
【0159】
結果から明らかなように、CD31は、微小血管マーカーとして主に血管内皮細胞の細胞質に発現され、染色された陽性細胞は、背景染色を行わずに、琥珀色若しくは褐色に染色された血管内皮細胞である。融合タンパク質一、タンパク質二の試験群は、対照群に比べて、CD31陽性新生血管が顕著に減少する。融合タンパク質一、タンパク質二は、対照群に比べて有意差を有する。実験結果から明らかなように、融合タンパク質一、タンパク質二は、いずれも角膜新生血管の増殖を阻害することができ、角膜新生血管性眼疾患の治療薬として用いられることができる。
【0160】
実施例14
イエウサギの虹彩新生血管に対する融合タンパク質一、タンパク質二の作用
577nmのアルゴンイオンレーザーによりイエウサギの網膜の主分枝静脈を凝固・閉塞させ、蛍光眼底血管造影(FFA)により静脈が成功裏に閉塞されたことを確認する。5〜12日後に、蛍光虹彩血管造影(IFA)により、虹彩血管は、正常対照群に比べてフルオレセイン漏出が顕著であり、これは虹彩新生血管化動物モデル(NVI)の形成を実証している。
【0161】
モデル構築後に9眼を取り、3眼/群で陰性対照群、融合タンパク質一治療群、融合タンパク質二治療群にランダムに分ける。それぞれ生理食塩水、128μgの融合タンパク質一、128μgの融合タンパク質二を硝子体注射により7日1回で2週間投与する。3週目に光学顕微鏡及び電子顕微鏡で観察する。
【0162】
結果:光学顕微鏡から観察されるように、虹彩前表面は、主に線維組織からなる線維血管膜残留物であり、僅かな開放血管腔がある。虹彩基質内に壊死細胞及び細胞破片である血管残留物が認められる。光学顕微鏡から分かるように、対照眼の虹彩表面は、分枝及び潜在管腔のある線維血管膜である。
【0163】
治療群虹彩の超微細構造に一連の退行性変化があり、虹彩基質中央部の大血管の内皮細胞に正常な細胞核、細胞質及び細胞間の結合があり、虹彩基質及び虹彩前表面に毛細血管の残留物があり、周囲に細胞破片及び浸潤してきたマクロファージがあり、潜在管腔の毛細血管及び退化した壁細胞がなく、これは新生血管の消失を示している。
【0164】
虹彩新生血管化動物モデル実験から明らかなように、融合タンパク質一及びタンパク質二が新生血管の形成を阻害すると共に、形成した血管を退化させることができる。
【0165】
実施例15
ウサギ眼脈絡膜血流に対する融合タンパク質一、タンパク質二の影響
体重が2.5〜3.0キログラムであるニュージーランドウサギを取り、3群にランダムに分け、それぞれ対照群、融合タンパク質一群、タンパク質二群と標識する。各群のウサギに対して35mg/kgのキシラジンで混合した後筋肉内麻酔させ、その後、1時間ごとに初期量の半分で連続して筋肉内注射で麻酔させる。左眼の眼圧を40mmHgに上げ、当該圧力下で眼血流を正常値の1/3に低下させることができる。ミクロスフェアを注射するために(眼血流量を算出する)右頸動脈を経由して左心室まで挿管し、採血のために股動脈に挿管する。各群に硝子体注射によりそれぞれ生理食塩水を投与し、128μgの融合タンパク質一、128μgの融合タンパク質二を投与した後0、30、60分にカラーミクロスフェア技術により高眼圧のウサギ眼の眼血流量を測定する。各時点で、0.2mL(約200万)のミクロスフェアを注射し、ミクロスフェアを注射した直後股動脈採血を60秒行い、ヘパリン化抗凝固管に放置し、採血量を記録する。最後に採血した後、100mg/kgのフェノバルビタールを静脈注射して動物を死亡させ、眼球を摘出し、網膜、脈絡膜、虹彩及び毛様体を分離し、組織重量を記録する。各時点で以下の算式により組織の血流を算出する。Qm=(Cm×Qr)/Cr。ここで、Qmは、単位がμL/min/mgである組織の血流を表し、Cmは、1ミリグラム当たりの組織のミクロスフェア数であり、Qrは、単位がμL/minである血流量であり、Crは、参照とする血液のミクロスフェア数である。実験結果を表20に示す。
【0167】
結果から明らかなように、全ての観察時点で、融合タンパク質一、タンパク質二治療群の脈絡膜血流量は、いずれも顕著に増加する。
【0168】
実施例16
OIRマウスにおける網膜血管に対する融合タンパク質一、タンパク質二の影響
OIRモデルの構築:C57/B16マウス出生後の7〜12日目に、マウス幼畜とその親マウスを75%の高酸素雰囲気に暴露させることにより、その中央網膜における毛細血管をすぐに消失させることができる。12日目に室内空気に戻したところ、高酸素雰囲気に暴露された網膜血管がすぐに消失し、広範な異常な血管新生の形成を引き起こし、網膜の中央部分は、長時間かなりの程度無血管状態のままである。血管が完全に消失した後、13日目に融合タンパク質(投与群、融合タンパク質一、タンパク質二の用量がいずれも64μgである)又は生理食塩水(陰性群)を硝子体注射により投与し、17日目に網膜血管を評価する(閉合していない血管に標識を付けるために、テキサスレッドで標識したトマトレクチン50mLを左心室に注射し5 min循環させる)。実験結果を表21に示す。
【0170】
結果から明らかなように、融合タンパク質一、タンパク質二をOIRマウスに投与後、病理学的新生血管の形成を改善することができる。陰性対照群に比べて、融合タンパク質一、タンパク質二で処理したOIRマウス網膜における新生血管叢が顕著に減少し、面積がそれぞれ52.97%及び35.17%減少する。
【0171】
実施例17
未熟児網膜症ラットモデルの新生血管に対する融合タンパク質一、タンパク質二の作用
変動酸素誘導動物モデルを取り、同じ日に自然分娩された新生ラット(12時間内)を酸素供給モデル群、酸素供給治療群、正常対照群の3群にランダムに分ける。酸素供給モデルをさらに3つのサブモデル群に分け、治療群と共にアクリルガラス製の半閉鎖酸素室に置き、室内に医療用酸素を導入し、酸素計により濃度を80%±2%に調整し、24時間後に酸素室内に窒素を導入することで酸素濃度を10%±2%に迅速に調整して24時間維持する。これを繰り返して、酸素室内の酸素濃度が24時間毎に80%と10%とを交互するように保持し、7日後に、空気雰囲気で飼育する。毎日酸素濃度を8回モニタリングし、酸素室内の温度を23℃±2℃に制御し、パット交換、食料追加、水交換、親マウス交換を1回行う。正常対照群を動物飼育環境に置く。モデル群は、対照群に比べて、網膜ホールマウントのADP酵素染色による血管変化が顕著であり、網膜内膜を通過して硝子体に入った血管内皮細胞核の数が多くなり、差が統計的に有意である場合に、モデル構築が成功する。
【0172】
酸素供給治療群を2つのサブ群に分け、モデル構築の7日目にそれぞれ融合タンパク質一、タンパク質二をいずれも100μgの用量で硝子体注射により投与し、酸素供給モデル群及び対照群に生理食塩水のみを投与し、1週間連続投与する。
【0173】
14日目に、エーテル麻酔で死亡させた後、眼球を摘出し、40 g/Lパラホルムアルデヒド溶液中で24時間固定する。グラジエントアルコールで脱水し、キシレンで透明にする。ワックスに浸漬した後、視神経乳頭の周囲をできるだけ避けるように連続して厚さ4μmの切片を作製する。切片は、角膜から視神経乳頭の矢状面に平行である。各眼球は、ランダムに10枚の切片を取り、ヘマトキシリン・エオシン染色を行った後、網膜内膜を通過した血管内皮細胞核(内膜に密接に関連している血管内皮細胞核のみ)の数をカウントし、各眼球の各切片における細胞数を統計する。
【0174】
結果:対照群では、切片に網膜内膜を通過して硝子体に入った血管内皮細胞核が僅かに認められているか、又は認められない。モデル群では、網膜内膜に通過した血管内皮細胞核が多く認められ、単独で現れるものも、クラスタで現れるものもあり、また、いくかの切片には、これらの血管内皮細胞核が深部網膜血管に隣接することも認められており、これは、硝子体又は眼部の他の組織ではなく網膜に由来することを示している。治療群切片では、網膜内膜を通過した少数の血管内皮細胞核のみが認められている。実験結果を表22に示す。
【0176】
結果から明らかなように、融合タンパク質一、タンパク質二治療群の網膜血管内皮細胞核の数は、6.693±2.109、7.333±1.263であり、酸素供給モデル群の28.392±2.220に比べて顕著に減少しているが、これは、酸素誘導新生マウス網膜病変モデルの新生血管の形成をある程度阻害できる。
【0177】
実施例19
糖尿病性網膜症ラットモデルの新生血管に対する融合タンパク質一、タンパク質二の作用
実験では糖尿病ラットをストレプトゾシンSTZでモデルを構築する。STZを0.1mol/L、pH4.5のクエン酸緩衝液に溶解して2%溶液に配合する。全ての実験では、Wistarラットに注射する前に12時間断食させ、各ラットを65mg/kgの用量で2% STZ溶液を腹腔内注射する。注射した後、単独で籠で飼育し、48時間後尿糖と血糖を測定する。尿糖+++以上、血糖16.7mmol/L以上をモデル構築が成功する標準とする。血糖、尿糖、尿量の測定及び網膜VEGF免疫組織化学的測定により、糖尿病性網膜症モデル構築が成功する。
【0178】
モデル構築が成功するラット15匹を取り、3群にランダムに分け、対照群、融合タンパク質一治療群、融合タンパク質二治療群と記する。硝子体注射により投与し、対照群に生理食塩水(0.1mL)を注射し、融合タンパク質一、融合タンパク質二にいずれも100μg(0.1mL)、7日1回投与し、2週、4週、8週、12週目に観察する。実験結果を表23に示す。
【0180】
結果から明らかなように、光学顕微鏡で測定し、各眼球については、10枚の後極網膜神経節細胞の数をカウントし、10枚の後極網膜の厚さを測定する。試験群のラット網膜組織は、対照群のラット網膜組織に比べて各層の厚さが増加している。試験群は、対照群に比べてラット網膜神経節細胞数が増加し、治療群は、対照群に比べて視細胞数が増加している。融合タンパク質一、タンパク質二は、100μgの用量下でいずれも糖尿病性網膜症に一定の治療作用を有することができる。