(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0026】
レーダを用いて目標を検出する方法として、パルスドップラーレーダに用いられる処理やDBS処理などのコヒーレント積分型の処理が用いられる。コヒーレント積分は、単一周波数の電波を繰り返し送信し、受信した反射波の位相を揃えて足し合わせることで目標信号電力を高める技術である。一方、ノイズ成分は、位相がランダムに変化するため、足し合わせを行うと打ち消し合い電力を高める効果は得られない。このため、コヒーレント積分を行うことで、S/N比を高めることができる。さらに、レーダを高速で移動させるため、ドップラー効果は相対角度毎に異なる。DBS処理は、このドップラー効果を用いて、反射波から得られるビデオ信号を角度方向に分解して検出することができる。これにより、レーダ送信波のビーム幅を細くした場合と同等の効果が得られる。ビーム幅が細くなると、レーダが照射する海面や島など目標以外からの反射面積が減少する。このため、クラッタの受信電力(以下、クラッタ受信電力という。)は低下する。つまり、DBS処理では、目標受信電力とクラッタ受信電力とを比較した比率(以下、S/C比という。)を高めることができる。これにより、DBS処理で、目標を検出することができる。
【0027】
しかし、DBS処理で目標追尾を行う場合に、目標点が安定しないという問題がある。目標追尾における目標点は、目標からの反射波の合成により得られ、目標の反射面の中でその位置は変動する。これを、単一周波数を用いるDBSなどのコヒーレント積分型の処理では目標の反射面の中での目標点の変動を低減する効果がないため、目標点が安定しない。さらに、目標が大きくなると、電波が反射する範囲が広くなる。つまり、電波は送信位置から目標までの距離が短くなると、遠方の場合と比べて目標が存在する角度の範囲が広がる。このため、電波が反射する範囲が広くなる。このため、目標に近づくことで、反射点の位置が変化する範囲が広くなり、目標点が安定しない。
【0028】
また、電波の周波数を変化させると、反射点までの距離、反射点の形状の違いに伴い、反射波の受信電力と位相とが変化する。このため、反射波から得られる検出角度は、周波数に応じて変化する。単一周波数を用いた場合は目標の揺らぎに応じて各反射点が同様な変化を示すが、異なる周波数を用いた場合は目標の揺らぎに応じて各反射点が異なる変化を示す。この原理を利用し、各周波数で得られた複数の検出角度情報を平均化することで、目標の揺らぎによる検出角度の変化を低減することができる。
【0029】
このため、複数の異なる周波数を有する電波を用いて目標を検出する方法として、周波数アジリティ処理(以下、FA処理という。)がある。FA処理は、周波数を切替えて複数の異なる周波数の電波を照射し、受信した反射波の検出情報を平均化する方法である。
【0030】
しかし、FA処理は、DBS処理に比べて、目標検出性能が低い。FA処理では、送信する電波の周波数を切り替えているため、複数の反射波の位相を揃えることができない。このため、DBS処理のようなクラッタ受信電力を低減し、目標受信電力を高めるという効果はない。つまり、DBS処理ではS/N比とS/C比を高められるため、FA処理に比べて、目標検出性能が高い。
【0031】
このため、FA処理では検出できないような状況では、検出性能の高いDBS処理を用いて、目標を検出する。一方、FA処理で検出可能な状況では、追尾性能の高いFA処理を用いて、目標を検出する。ここで、電波は空間を伝搬する場合、電波強度は距離の2乗に反比例する。レーダの場合、電波は目標までの距離を往復するため、
図1に示すように、電波強度、つまり目標受信電力は目標までの距離の4乗に反比例する。一方、海面などから反射して戻るクラッタの電波強度、つまりクラッタ受信電力は単位角度あたりの電波の反射面積に比例する。ここで、反射面までの距離が短くなると、反射面積は小さくなる。このため、クラッタ受信電力は、反射面までの距離の3乗に反比例する。この結果、DBS処理とFA処理の両方において、目標までの距離が短くなると、S/C比は大きくなる。言い換えると、距離が短くなると目標検出性能は高まる。つまり、遠方ではDBS処理でしか検出できなかった目標が、距離が近づくことでFA処理でも目標検出ができるようになる。
【0032】
以上のことから、目標までの距離が遠い場合はDBS処理を用いて検出処理を行う。一方、目標までの距離が近い場合、つまりFA処理におけるS/C比が高い場合は、FA処理を用いて追尾処理を行う。これにより、遠方ではDBS処理により目標検出性能を高め、近距離では、FA処理により検出角度の揺らぎを低減し、命中精度の低下を回避することができる。また、光波センサなどの天候の影響が大きなセンサを使用しないため、天候の影響は小さい。さらに、センサを追加する必要がないため、従来の誘導制御装置と同程度の大きさで実現できる。
【0033】
(実施の形態1)
実施の形態1に係る移動体2000の構成を説明する。
【0034】
図2に示すように、移動体2000は、誘導制御装置1000と操舵装置90とを備える。移動体2000は、例えば、飛しょう体である。
【0035】
誘導制御装置1000は、電波を送信し、目標点からの反射波を受信する。受信した反射波に基づき、目標点との相対位置を推定する。移動体2000が推定した目標点を向くように操舵装置90を制御する。これにより、誘導制御装置1000は、移動体2000を目標点に誘導する。
【0036】
誘導制御装置1000は、アンテナ部10と、送受信切替部20と、送信部30と、受信部40と、エキサイタ部50と、A/D変換部60と、信号処理部100と、慣性装置70と、誘導演算部80とを備える。
【0037】
エキサイタ部50は、送信する電波の周波数に応じた信号を生成する。この信号を、送信する電波の波形、及び、受信した反射波の位相検出に用いる。生成する信号の周波数は、信号処理部100が決定する。このため、エキサイタ部50は、送信部30と、受信部40と、信号処理部100とに接続されている。
【0038】
送信部30は、送信する電波の波形を生成する。エキサイタ部50で生成される周波数信号に基づき、送信する電波の波形を生成する。
【0039】
送受信切替部20は、電波の送信、反射波の受信の状態に合わせて、処理を切り替える。電波を送信するときは、送信部30で生成される波形をアンテナ部10に出力する。反射波を受信するときは、アンテナ部10で受信した反射波の波形を受信部40に出力する。このため、送受信切替部20は、送信部30と受信部40とに接続されている。
【0040】
アンテナ部10は、電波を送信するときは、送受信切替部20から出力される波形に基づき、電波を送信する。反射波を受信するときは、受信した反射波の波形を送受信切替部20に出力する。このため、アンテナ部10は送受信切替部20に接続されている。
【0041】
受信部40は、エキサイタ部50で生成される信号に基づき、アンテナ部10で受信した反射波の波形の位相を検出し変調する。
【0042】
A/D変換部60は、受信部40で変調された波形に基づき、ビデオ信号に変換する。このため、A/D変換部60は、受信部40に接続されている。
【0043】
信号処理部100は、A/D変換部で変換されたビデオ信号を取得し、目標点の位置を推定する。信号処理部100は、目標点の位置を推定する第1目標演算部130、第2目標演算部150と、推定処理を切り替える切替部110とを備える。第1目標演算部130は、第1目標演算工程として、DBS処理に基づき目標点の位置を推定する。第2目標演算部150は、第2目標演算工程として、FA処理に基づき目標点の位置を推定する。切替部110は、切替工程として、第1目標演算部130の処理と、第2目標演算部150の処理とを切り替える。目標点の位置を推定するために、慣性装置70から、自機、つまり移動体2000の慣性情報(位置座標、移動速度、移動方向など)を取得する。また、目標点の位置を推定する処理に応じて、エキサイタ部50に送信する電波の周波数を指示する。このため、信号処理部100は、エキサイタ部50と、A/D変換部60と、慣性装置70とに接続されている。
【0044】
図3に示すように、第1目標演算部130は、DBS処理部131と、第1目標検出部132と、第1測角演算部133とを備える。また、切替部110は、受信電力情報DB111と、S/C推定部112とを備える。受信電力情報DB111と、S/C推定部112とは、第1目標演算部130と第2目標演算部150との切替に用いる情報を推定する。
【0045】
DBS処理部131は、A/D変換部60で変換されたビデオ信号を切替部110から取得する。DBS処理部131は、慣性装置70から自機の慣性情報を取得し、ビデオ信号にDBS処理を施す。DBS処理の結果に基づき、DBS処理部131は各位置の受信電力を値とした検出電力マップを生成する。具体的には、電波を送信してから反射波を受信するまでの時間に基づき、目標点までの距離を算出する。また、目標からの反射波を受信した角度を算出し、
図4に示すように、距離と角度の2次元からなる検出電力マップ2010を生成する。このため、DBS処理部131は、切替部110と慣性装置70とに接続されている。
【0046】
第1目標検出部132は、DBS処理部131で得られた検出電力マップから目標に該当する領域(以下、目標領域という。また、目標領域以外をクラッタ領域という。)とクラッタ領域とを識別し、目標点の位置を推定する。具体的には、検出電力マップ2010から受信電力の値が高い領域、例えば、受信電力の平均値よりも高い領域を目標領域2020として検出する。それ以外の領域はクラッタ領域2030に該当する。検出した目標領域の中心位置を目標点の位置2040として算出する。このため、第1目標検出部132は、DBS処理部131に接続されている。
【0047】
また、第1目標検出部132は、目標領域とクラッタ領域とにおける受信電力を算出し、切替部110のS/C推定部112に出力する。具体的には、目標領域における受信電力の平均値を目標受信電力として算出する。また、クラッタ領域における受信電力の平均値をクラッタ受信電力として算出する。算出した目標受信電力とクラッタ受信電力とをS/C推定部112に出力する。このため、第1目標検出部132は、S/C推定部112にも接続されている。
【0048】
第1測角演算部133は、検出電力マップから検出した目標点に基づき、自機に対する目標点の位置の相対距離を算出する。また、自機の移動方向に対する目標点の位置の相対角度を算出する。算出した相対距離と相対角度とを、目標の位置情報として切替部110に出力する。具体的には、
図4に示すように自機の正面の位置2050と検出された目標点の位置2040との距離と、相対距離とから相対角度θを算出する。このため、第1測角演算部133は、第1目標検出部132と切替部110とに接続されている。
【0049】
受信電力情報DB111は、第1目標演算部の処理における目標受信電力及びクラッタ受信電力と、第2目標演算部の処理における目標受信電力及びクラッタ受信電力との対応関係を示す受信電力情報を有する。つまり、受信電力情報には、DBS処理における目標受信電力(以下、DBS目標受信電力という。)と、FA処理における目標受信電力(以下、FA目標受信電力という。)との対応関係を示す情報が含まれる。さらに、DBS処理におけるクラッタ受信電力(以下、DBSクラッタ受信電力という。)と、FA処理におけるクラッタ受信電力(以下、FAクラッタ受信電力という。)との対応関係を示す情報も含まれる。
図5に示すように、DBS処理とFA処理とのそれぞれにおいて、距離に対する目標受信電力の特性を計測する。この計測は、DBS処理とFA処理とで、同じ目標、同じクラッタ環境で行う。同様に、
図6に示すように、クラッタ受信電力の特性を計測する。つまり、受信電力情報には、同じ目標に対するDBS目標受信電力とFA目標受信電力との関係と、同じクラッタ環境に対するDBSクラッタ受信電力とFAクラッタ受信電力との関係が示されている。
【0050】
S/C推定部112は、第1目標検出部132から取得するDBS目標受信電力とDBSクラッタ受信電力とから、FA処理におけるS/C比を推定する。受信電力情報DB111の受信電力情報に基づき、第1目標検出部132から取得するDBS目標受信電力からFA目標受信電力を推定する。次に、第1目標検出部132から取得するDBSクラッタ受信電力からFAクラッタ受信電力を推定する。この結果、FA目標受信電力の推定値を、FAクラッタ受信電力の推定値と比較することで、FA処理におけるS/C比を推定する。具体的には、第1目標検出部132から取得したDBS目標受信電力の値から、受信電力情報、つまり計測したDBS目標受信電力の特性における距離を算出する。算出した距離から、計測したFA目標受電電力の特性におけるFA目標受信電力を算出する。この算出した値を、FA目標受信電力の推定値として用いる。同様に、FAクラッタ受信電力についても、計測したDBSクラッタ受信電力の特性を用いて推定する。推定したFAクラッタ受信電力に対するFA目標受信電力の比率から、FA処理におけるS/C比を算出する。例えば、DBS目標受信電力の値がX1であった場合、
図5に示すように、予め計測したDBS目標受信電力の特性から、DBS目標受信電力の値がX1になる距離を算出する。次に、予め計測したFA受信電力の特性から、算出した距離に対応したFA目標受信電力の値、つまりY1を算出する。このY1が推定されるFA目標受信電力である。また、
図6に示すように、DBSクラッタ受信電力がZ1である場合、FAクラッタ受信電力の推定値はW1になる。この結果、FA処理におけるS/C比は、Y1/W1と推定される。このため、S/C推定部112は、第1目標検出部132と受信電力情報DB111に接続されている。
【0051】
図7に示すように、第2目標演算部150は、FA処理部151と、第2目標検出部152と、第2測角演算部153とを備える。第2目標演算部150は、FA処理を用いて、目標点の位置を推定する。
【0052】
FA処理部151は、A/D変換部60で変換されたビデオ信号を切替部110から取得する。また、FA処理部151は、送信した電波の周波数毎に、ビデオ信号を処理し、慣性装置70から自機の位置情報を取得し、検出電力マップを生成する。つまり、検出電力マップは、送信した電波の周波数毎に生成される。このため、FA処理部151は、切替部110と慣性装置70とに接続されている。
【0053】
第2目標検出部152は、FA処理部151で得られた各検出電力マップにおいて、目標領域とクラッタ領域とを識別し、検出電力マップ毎の目標点の位置を推定する。その後、検出電力マップ毎の目標点から、1つの目標点を推定する。具体的には、
図4に示すように、検出電力マップ2010から受信電力の高い領域を目標領域2020として検出する。それ以外の領域はクラッタ領域2030に該当する。検出した目標領域の中心位置を目標点の位置2040として推定する。この処理を、検出電力マップ毎、つまり送信した電波の周波数毎に行う。得られた複数の目標点の位置の中心位置を1つの目標点の位置として算出する。このため、第2目標検出部152は、FA処理部151に接続されている。
【0054】
また、第2目標検出部152は、第1目標演算部130から第2目標演算部150に切り替える際に、第1目標演算部130から、DBS処理により推定した目標点を取得する。識別した目標領域のほか、DBS処理により推定した目標点に基づき、目標点の位置を推定する。このため、第2目標検出部152は、第1目標演算部130にも接続されている。
【0055】
第2測角演算部153は、第1測角演算部133と同様に、推定した目標点の位置に基づき、自機に対する目標点の位置の相対距離と相対角度とを算出する。算出した相対距離と相対角度とを、目標の位置情報として切替部110に出力する。このため、第2測角演算部153は、第2目標検出部152と切替部110とに接続されている。
【0056】
切替部110は、第1目標演算部130の処理と第2目標演算部150の処理とを切り替える。
図1に示すように、目標までの距離が遠い場合、FA処理では目標を検出できない可能性が高い。このため、最初は、切替部110は、第1目標演算部130のDBS処理を選択する。このため、切替部110は、A/D変換部60で変換されたビデオ信号と処理を指示する命令を第1目標演算部130に出力する。第1目標演算部130の処理後に、第1目標演算部130から目標の位置情報を取得し、誘導演算部80に出力する。
【0057】
切替部110のS/C推定部112は、FA処理におけるS/C比の推定値を算出する。この推定値が、予め決められた閾値以上の場合、第2目標演算部150のFA処理に切り替える。処理を切り替えた後、切替部110は、A/D変換部60で変換されたビデオ信号と処理を指示する命令を第2目標演算部150に出力する。第2目標演算部150の処理後に、第2目標演算部150から目標の位置情報を取得し、誘導演算部80に出力する。
【0058】
また、切替部110は、エキサイタ部50に送信する電波の周波数を指示する。切替部110は、第1目標演算部130のDBS処理を選択している場合、予め決められた固定値を周波数として指示する。第2目標演算部150のFA処理を選択している場合、周波数が予め決められた範囲で変動するように指示する。例えば、周波数がステップ状に増加したり、ランダムに変化するように指示する。
【0059】
誘導演算部80は、誘導演算工程として、切替部110から目標の位置情報、つまり自機の移動方向に対する目標点の位置の相対角度を取得する。誘導演算部80は、取得した相対角度に基づき、自機が目標点に向かうための誘導情報(例えば、自機の移動速度、移動方向など)を算出し、操舵装置90に出力する。このため、誘導演算部80は、切替部110と操舵装置90とに接続されている。
【0060】
操舵装置90は、誘導演算部80から誘導情報を取得する。操舵装置90は、自機の移動速度、移動方向が、取得した誘導情報(移動速度、移動方向)になるように、エンジン、ノズルなどを制御する。
【0061】
次に、移動体2000を目標点に向かうように制御する誘導制御装置1000の処理200を説明する。
【0062】
移動体2000の最初の状態は、目標までの距離は遠い。このため、第1目標演算部130を用いて目標点を推定する。つまり、処理開始時に処理モードはDBSに設定されている。また、送信する電波の周波数もDBS用に設定されている。つまり、送信する電波の周波数は予め決められた固定値である。
【0063】
誘導制御装置1000は、
図8に示すように、ステップS100において、電波の送受信処理を行う。電波の送受信処理は、アンテナ部10と、送受信切替部20と、送信部30と、受信部40と、エキサイタ部50と、A/D変換部60とで行う。
【0064】
誘導制御装置1000は、
図9に示すように、電波の送受信処理のステップS110において、電波を送信する。具体的には、エキサイタ部50が送信する電波の周波数、つまりDBS用の周波数に応じた信号を生成する。この信号に基づき、送信部30が電波の波形を生成する。アンテナ部10が生成した波形の電波を送信する。
【0065】
次に、ステップS120において、誘導制御装置1000は反射波を受信する。具体的には、アンテナ部10が反射波を受信し、送受信切替部20を介して受信部40に出力する。受信部40は、エキサイタ部50から送信した電波の周波数を取得する。取得した周波数に基づき、反射波の位相を検出し変調する。
【0066】
ステップS130において、A/D変換部60は、変調された波形から、A/D変換を行い、ビデオ信号を得る。
【0067】
図8に示すように、ステップS200において、切替部110は現在の処理モードを確認する。ここで、初期状態の処理モードはDBSであるため、切替部110は第1目標演算部130に命令を出力し、ステップS300に移行する。
【0068】
ステップS300において、第1目標演算部130は、切替部110からの命令を受信し、第1目標演算処理を行う。具体的には、
図10に示すように、ステップS310において、DBS処理部131はDBS処理を行う。この結果、目標領域の値、つまり目標領域の受信電力が高められた検出電力マップが得られる。
【0069】
ステップS320において、第1目標検出部132は、検出電力マップから目標領域とクラッタ領域とを識別し、目標領域を検出する。また、目標領域から目標点の位置を推定する。
【0070】
ステップS330において、第1目標検出部132は、目標領域とクラッタ領域とにおける受信電力から、DBS目標受信電力とDBSクラッタ受信電力を算出する。具体的には、検出電力マップの目標領域から、DBS目標受信電力を算出する。また、検出電力マップのクラッタ領域から、DBSクラッタ受信電力を算出する。
【0071】
ステップS340において、第1測角演算部133は、推定した目標点の位置に基づき、目標の位置情報として、自機の移動方向に対する目標点の位置の相対角度を算出する。
【0072】
図8に示すように、ステップS400において、S/C推定部112は、FA処理におけるS/C比を推定する。このため、第1目標検出部132が算出したDBS目標受信電力に基づき、受信電力情報DB111を参照して、FA目標受信電力を推定する。同様に、第1目標検出部132が算出したDBSクラッタ受信電力に基づき、FAクラッタ受信電力を推定する。FA目標受信電力の推定値を、FAクラッタ受信電力の推定値と比較することで、S/C比の推定値を算出する。
【0073】
ステップS450において、切替部110はS/C比の推定値を確認する。推定値、つまりFA処理におけるS/C比が閾値以上の場合は、FA処理においても目標を検出できることを意味する。このため、切替部110は、目標点の推定処理をFA処理に切り替える。この切替処理のため、ステップS500に移行する。一方、推定値が閾値より小さい場合は、FA処理では目標を検出できないと判断する。このため、切替部110は、目標点の推定処理をDBS処理から切り替えない。よって、ステップS700に移行する。なお、閾値は予め決められた値を用いる。
【0074】
推定値が閾値以上の場合、ステップS500において、FA処理に切り替えるため、切替部110は処理モードをFAに変更する。次に、ステップS600において、送信する電波の周波数をFA処理に合わせるため、電波の周波数を変更する。
【0075】
ステップS700において、誘導演算部80は、ステップS340で算出した相対角度に基づき、自機が目標点に向かうための誘導情報(自機の移動速度、移動方向など)を算出する。
【0076】
ステップS800において、操舵装置90は、算出した誘導情報に基づき、エンジン、ノズルなどを制御し、目標点に向けて誘導する。
【0077】
誘導制御装置1000は、目標点に到達するまで、処理200を繰り返す。このため、再度、ステップS100において、送受信処理を行う。ここで、ステップS400において、S/C比の推定値が閾値以上であると判断した後、つまりFA処理に切り替えた後の処理を説明する。この場合、処理モードは、ステップS500において、FAに変更されている。また、送信する電波の周波数は、ステップS600において、FA用に変更されている。つまり、送信する電波の周波数は、予め決められた範囲で変動する。
【0078】
誘導制御装置1000は、ステップS100において、送受信処理を行う。このため、
図9に示すように、ステップS110において、誘導制御装置1000は電波を送信する。ここで、送信する電波の周波数は、FA用である。よって、ステップS110において、エキサイタ部50は、FA処理を行うため、周波数が予め決められた範囲で変動する信号を生成する。送信部30は、生成された周波数の信号に基づき、周波数が変動する波形を生成する。このため、アンテナ部10は、周波数が変動する波形を送信する。
【0079】
ステップS120において、誘導制御装置1000は反射波を受信する。受信部40は、アンテナ部10が受信した反射波の位相を検出し変調する。
【0080】
ステップS130において、A/D変換部60は、変調された波形から、A/D変換を行い、ビデオ信号を得る。
【0081】
図8に示すように、ステップS200において、切替部110は処理モードを確認する。処理モードはFAであるため、切替部110は第2目標演算部150に命令を出力し、ステップS900に移行する。
【0082】
ステップS900において、第2目標演算部150は、切替部110から命令を受信し、第2目標演算処理を行う。具体的には、
図11に示すように、ステップS910において、FA処理部151はFA処理を行い、検出電力マップを得る。
【0083】
次に、ステップS920において、第2目標検出部152は、検出電力マップから目標領域とクラッタ領域とを識別し、目標領域を検出する。また、目標点の位置を推定する。
【0084】
ステップS930において、第2測角演算部153は、自機の移動方向に対する目標点の位置の相対角度を算出する。
【0085】
図7に示すように、ステップS700において、算出した相対角度に基づき、誘導演算部80は自機が目標点に向かうための自機の移動速度、移動方向を算出する。
【0086】
ステップS800において、操舵装置90は、算出した自機の移動速度、移動方向に基づき、移動体2000を目標点に向けて誘導する。
【0087】
このようにして、誘導制御装置1000は、移動体2000を目標点に向けて誘導する。
【0088】
本実施の形態によれば、誘導の開始時は、目標の検出性能の高い第1目標演算部130を用いる。一方、第2目標演算部150でも十分に目標を検出できるようになると、目標の検出角度が安定して命中精度に優れる第2目標演算部150に切り替える。これにより、第1目標演算部130では検出角度が安定せず、命中精度が低下する問題を解決できる。
【0089】
また、第1目標演算部130と第2目標演算部150とは、共に電波を用いて目標を検出するため、天候の影響が小さい。さらに、新たなセンサを備える必要がなく、誘導制御装置1000は、従来の誘導制御装置と同程度の大きさで実現できる。
【0090】
(実施の形態2)
実施の形態1では、
図12に示すように、S/C比の推定値が閾値以上になった場合にFA処理に切り替える例を示した。この場合、一時的にS/C比が大きい場合でも、FA処理に切り替えてしまう。このため、その後にS/C比が小さくなり、FA処理では目標を検出できなくなる可能性がある。そこで、実施の形態2では、
図13に示すように、DBS処理からFA処理に切り替える時に、一定期間の移行期間を設ける。この移行期間はDBS処理により誘導を行う。同時に、FA処理により安定して目標を検出できることを確認する。FA処理により安定して目標を検出できる場合、FA処理に切り替える。また、DBS処理とFA処理とで送信する電波の周波数特性が異なるため、移行期間はDBS処理とFA処理とを時分割で実行する。言い換えると、第1目標演算部130と第2目標演算部150Aを時分割で併用する。
【0091】
図14に示すように、実施の形態2に係る誘導制御装置1000Aは、実施の形態1に係る誘導制御装置1000の切替部110と第2目標演算部150とが異なる。
【0092】
図15に示すように、第2目標演算部150Aは、FA処理部151と、第2目標検出部152Aと、第2測角演算部153とを備える。また、切替部110Aは、さらにS/C算出部113を備える。FA処理部151と第2測角演算部153は、実施の形態1と同様の機能を有する。
【0093】
第2目標検出部152Aは、実施の形態1の第2目標検出部152の機能のほかに、FA目標受信電力とFAクラッタ受信電力を算出し、S/C算出部113に出力する。このため、第2目標検出部152AはS/C算出部113に接続されている。
【0094】
S/C算出部113は、第2目標検出部152Aから取得したFA目標受信電力とFAクラッタ受信電力から、S/C比を算出する。具体的には、FAクラッタ受信電力に対するFA目標受信電力の比率から、S/C比を算出する。
【0095】
切替部110Aは、実施の形態1と同様に、第1目標演算部130と第2目標演算部150Aとの処理を切り替える。実施の形態1とは、この切替方法が異なる。
【0096】
切替部110Aは、実施の形態1と同様に、S/C推定部112はS/C比を推定する。この推定値が予め決められた閾値以上の場合、移行期間に切り替える。
【0097】
移行期間では、切替部110Aは、第1目標演算部130に命令を出力し、第1目標演算部130の処理により誘導を行う。また、第2目標演算部150Aに命令を出力し、FA目標受信電力とFAクラッタ受信電力とを算出する。算出したFA目標受信電力とFAクラッタ受信電力とに基づき、S/C算出部113が算出するS/C比を確認する。つまり、
図13に示すように、DBS処理とFA処理とを切り替えて処理を行う。具体的には、DBS処理のため、周波数を固定した電波を送信し、移動体2000Aの誘導を行う。次に、FA処理のため、周波数が変動する電波を送信し、FA処理におけるS/C比を確認する。この処理を繰り返す。FA処理におけるS/C比が安定して高い場合、FA処理により誘導に切り替える。
【0098】
誘導制御装置1000Aの処理300を説明する。実施の形態1と同様に、処理開始時に処理モードはDBSに設定されている。また、
図16Aに示すステップS100‐1、S100‐2、
図16Bに示すステップS100‐3は、実施の形態1のステップS100と同様の処理である。
図16Aに示すステップS300‐1は、実施の形態1のステップS300と同様の処理である。
図16Aに示すステップS400、S700、S800、
図17に示すステップS910、S920、S930は、それぞれ、実施の形態1のステップS400、S700、S800、S910、S920、S930と同様の処理である。
【0099】
図16Aに示すように、ステップS2100において、切替部110Aは、現在の処理モードを確認する。処理モードはDBSのため、ステップS2200に移行する。
【0100】
ステップS2200において、切替部110Aは送信する電波の周波数をDBS用に設定する。つまり、周波数を予め決められた固定値に設定するように、エキサイタ部50に指示する。
【0101】
ステップS110‐1において、誘導制御装置1000Aは電波の送受信処理を行う。
【0102】
ステップS300‐1において、切替部110Aが第1目標演算部130に命令を出力することで、第1目標演算部130は第1目標演算処理を行う。この結果、DBS目標受信電力と、DBSクラッタ受信電力と、目標の位置情報とを算出する。
【0103】
ステップS400において、第1目標演算処理で算出したDBS目標受信電力とDBSクラッタ受信電力から、FA処理におけるS/C比を推定する。
【0104】
ステップS2300において、切替部110Aは、現在の処理モードを確認する。処理モードはDBSのため、ステップS2400に移行する。
【0105】
ステップS2400において、ステップS400で算出したS/C比の推定値を確認する。推定値が閾値以上の場合、FA処理において目標を検出できる可能性があるため、移行期間に変更する。このため、ステップS2500に移行する。一方、推定値が閾値より小さい場合、FA処理では目標を検出できないと判断する。このため、切替部110Aは、移行期間に変更せずに、ステップS700に移行する。
【0106】
推定値が閾値以上の場合、移行期間に変更するため、ステップS2500において、切替部110Aは処理モードを「移行」に変更する。
【0107】
ステップS700において、誘導演算部80は、ステップS300‐1で算出した目標の位置情報に基づき、誘導情報を算出する。
【0108】
ステップS800において、操舵装置90は、算出した誘導情報に基づき、エンジン、ノズルなどを制御し、目標点に向けて誘導する。
【0109】
実施の形態1と同様に、誘導制御装置1000Aは、目標点に到達するまで、処理300を繰り返す。次に、移行期間、つまり処理モードが「移行」における処理を説明する。
【0110】
ステップS2100において、処理モードは「移行」であるため、ステップS2200に移行する。
【0111】
ステップS2200からステップS400まで、処理モードがDBSの場合と同様に処理する。
【0112】
ステップS2300において、処理モードは「移行」であるため、ステップS2700に移行する。
【0113】
ステップS2700において、FA処理におけるS/C比を算出するため、送信する電波の周波数をFA用に設定する。
【0114】
ステップS100‐3において、FA処理のため、周波数が変動する電波を送信する。受信部40は受信した反射波を変調する。A/D変換部60は変調した波形からビデオ信号を得る。
【0115】
ステップS900A‐2において、切替部110Aが第2目標演算部150に命令を出力することで、第2目標演算部150Aは第2目標演算処理を行う。具体的には、
図17に示すように、ステップS910において、FA処理部151はFA処理を行い、検出電力マップを得る。
【0116】
ステップS920において、第2目標検出部152Aは、検出電力マップから目標領域とクラッタ領域とを識別し、目標領域を検出する。また、目標点の位置を推定する。
【0117】
ステップS925において、第2目標検出部152Aは、識別した目標領域の受信電力に基づき、FA目標受信電力を算出する。また、識別したクラッタ領域の受信電力に基づき、FAクラッタ受信電力を算出する。
【0118】
ステップS930において、推定した目標点の位置に基づき、自機の移動方向に対する目標点の位置の相対角度を算出する。
【0119】
ステップS2800において、S/C算出部113は、ステップS920で算出されたFA目標受信電力とFAクラッタ受信電力に基づき、S/C比を算出する。
【0120】
ステップS2850において、切替部110Aは算出したS/C比を確認する。S/C比が閾値以上である回数が、連続して予め決められた回数に達していれば、ステップS2900に移行し、処理モードをFAに変更する。つまり、FA処理により、安定して目標を検出できると判断する。このため、S2850において、切替部110Aは、連続してS/C比が閾値以上となる回数を記憶しておく。それ以外の場合、ステップS700に移行し、移行期間の処理を続ける。
【0121】
ステップS700において、ステップS300‐1、つまり第1目標演算処理で算出した目標の位置情報に基づき、誘導演算部80は自機が目標点に向かうための誘導情報を算出する。
【0122】
このようにして、移行期間においては、DBS処理により誘導を行うとともに、FA処理によるS/C比を算出する。算出したS/C比を用いて、FA処理においても安定して目標を検出できるかを確認する。
【0123】
次に、FA処理により誘導を行う場合、つまり処理モードがFAにおける処理を説明する。
【0124】
ステップS2100において、処理モードはFAであるため、ステップS2600に移行する。
【0125】
ステップS2600において、送信する電波の周波数をFA用に設定する。
【0126】
ステップS100‐2において、FA処理のために、電波の送受信を行い、ビデオ信号を得る。
【0127】
ステップS900A‐1において、第2目標演算部150Aは、第2目標演算処理を行う。この結果、目標の位置情報を算出する。
【0128】
ステップS700において、算出した目標の位置情報に基づき、誘導演算部80は自機が目標点に向かうための誘導情報を算出する。
【0129】
以上のように、移行期間を設けて、DBS処理による誘導からFA処理による誘導に切り替える。移行期間を設けることで、FA処理により目標を確実に検出できることを確認した後に、誘導処理を切り替えることができる。また、S/C比が大きい状態が安定するまでFA処理に切り替えない。このため、S/C比が一時的に大きい場合にFA処理に切り替えて目標を検出できなくなることを防止できる。
【0130】
(信号処理部のハードウェア)
信号処理部100は、
図18に示すように、制御部3010と、記憶装置3020と、入力部3030と、出力部3040と、通信部3050とを備える。
【0131】
制御部3010は、出力部3040への出力、通信部3050を介した外部との通信などを制御する。また、記憶装置3020に格納されているプログラムを読み出し、プログラムの命令に基づき、動作する。制御部3010は、中央処理装置(CPU)などを含む。
【0132】
記憶装置3020は、構造データ、プログラムなどの様々なデータを格納する。制御部3010からの指示に基づき、データを制御部3010に送信する。記憶装置3020は、例えば、ソリッドステートドライブやメモリなどを含む。
【0133】
入力部3030は、外部からデータを入力するときなどに使用される。入力されたデータは制御部3010に送信される。入力部3030は、キーボード、マウスなどの入力装置を含む。
【0134】
出力部3040は、制御部3010で算出した結果などを外部に出力する。例えば、出力部3040は、ディスプレイ、スピーカーなどを含む。
【0135】
通信部3050は、信号処理部100の外部とデータの送受信を行う。具体的には、A/D変換部60からビデオ信号を取得する場合、誘導演算部80に目標の位置情報を出力する場合に使用される。また、外部からのプログラムなどのデータを取得する場合にも使用される。通信部3050は、LAN(Local Area Network)などに接続するネットワークインタフェースカード、USB端子、シリアル端子などの外部装置と接続する端子などを含む。
【0136】
入力部3030と出力部3040とは、初期設定等に使用されるため、予めプログラムに設定されていれば、設ける必要はない。
【0137】
記憶装置3020には、信号処理部100の処理を実行させる誘導制御プログラムが格納されている。このプログラムは、第1目標演算部130と、第2目標演算部150と、切替部110とが実行する第1目標演算手段と、第2目標演算手段と、切替手段とが含まれる。つまり、第1目標演算手段は、命令に基づき、第1目標演算処理を実行する。第2目標演算手段は、命令に基づき、第2目標演算処理を実行する。切替手段は、第1目標演算手段を実行するように命令する。また、目標受信電力とクラッタ受信電力とに基づき、第1目標演算手段への命令から第2目標演算手段への命令に切り替える。制御部3010が、このプログラムを読み出し実行することで、信号処理部100は各処理を実行する。
【0138】
(変形例)
アンテナ部10と、送受信切替部20と、送信部30と、受信部40と、エキサイタ部50と、A/D変換部60とを備える電波送受信部が、電波送受信工程として、電波の送受信によりビデオ信号を取得する例を示したが、これに限定されない。電波の送受信によりビデオ信号を取得できれば、任意の構成を選択することができる。例えば、送信と受信で異なるアンテナ部を用い、送受信切替部20を設けなくてもよい。
【0139】
第1目標演算部130は、DBS処理部131においてDBS処理を行う例を示したが、これに限定されない。自機が目標から遠くとも、電波を用いて目標点を検出できる処理であればよく、例えば、任意のコヒーレント積分型の処理を選択することができる。
【0140】
第2目標演算部150は、FA処理部151においてFA処理を行う例を示したが、これに限定されない。電波を用いて目標点の位置を精度よく推定できれば、任意の処理を選択することができる。
【0141】
第1目標検出部132、第2目標検出部152において、目標領域の中心位置を目標点として算出する例を示したが、これに限定されない。目標点は目標領域から任意の方法で選択することができる。例えば、目標領域のうち受信電力が最も高い位置を目標点として算出してもよい。
【0142】
DBS処理部131、FA処理部151において、2次元からなる検出電力マップを生成する例を示したが、これに限定されない。例えば、目標が存在する単一角度からビデオ信号を得て、1次元の検出電力マップを生成してもよい。
【0143】
受信電力情報DB111の受信電力情報は、
図5に示すように、DBS目標受信電力の距離に対する特性と、FA目標受信電力の距離に対する特性とを含む例を示したが、これに限定されない。例えば、処理方式の理論演算式に基づき算出できる、DBS目標受信電力からFA目標受信電力を推定する演算式を含んでもよい。この場合、受信電力情報DB111は不要となるが、推定精度が下がる可能性がある。また、
図19に示すように、DBS目標受信電力の値と、FA目標受信電力の値とからなるグラフを作成する。このグラフから回帰直線を算出し、DBS目標受信電力の値からFA目標受信電力の値に変換してもよい。
【0144】
また、受信電力情報は、DBSクラッタ受信電力の距離に対する特性と、FAクラッタ受信電力の距離に対する特性とを含む例を示したが、これに限定されない。例えば、処理方式の理論演算式に基づき算出できる、DBSクラッタ受信電力からFAクラッタ受信電力を推定する演算式を含んでもよい。また、
図20に示すように、DBSクラッタ受信電力の値と、FAクラッタ受信電力の値とからなるグラフを作成する。このグラフから回帰直線を算出し、DBSクラッタ受信電力の値からFAクラッタ受信電力の値に変換してもよい。
【0145】
切替部110、110Aにおいて、DBS目標受信電力とDBSクラッタ受信電力からFA目標受信電力とFAクラッタ受信電力とを推定し、処理を切り替える例を示したが、これに限定されない。FA処理で安定して目標を検出できることが確認できればよく、任意の方法を選択することができる。例えば、DBS処理によるS/C比とFA処理によるS/C比との関係から、DBS処理によるS/C比の閾値を予め決定してもよい。この場合、DBS処理によるS/C比を算出し、予め決められた閾値より大きい場合にFA処理に切り替える。
【0146】
第1目標検出部132、第2目標検出部152Aにおいて、目標領域における受信電力の平均値を目標受信電力として算出する例を示したが、これに限定されない。目標領域における受信電力から目標受信電力を算出する任意の方法を選択することができる。例えば、目標領域における受信電力の最大値または最小値を目標受信電力として算出してもよい。また、電波の送受信を複数回行い複数の検出電力マップを取得し、複数の検出電力マップの目標領域から得られる受信電力を平均した値を用いてもよい。さらに、複数の検出電力マップの一部の目標領域から得られる受信電力の最大値または最小値を用いてもよい。
【0147】
また、クラッタ領域における受信電力の平均値をクラッタ受信電力として算出する例を示したが、これに限定されない。クラッタ領域における受信電力からクラッタ受信電力を算出する任意の方法を選択することができる。例えば、クラッタ領域における受信電力の最大値または最小値をクラッタ受信電力として算出してもよい。また、電波の送受信を複数回行い複数の検出電力マップを取得し、複数の検出電力マップのクラッタ領域から得られる受信電力を平均した値を用いてもよい。さらに、複数の検出電力マップの一部のクラッタ領域から得られる受信電力の最大値または最小値を用いてもよい。
【0148】
切替部110は、周波数情報としてエキサイタ部50に対して周波数を指示する例を示したが、これに限定されない。例えば、切替部110は、エキサイタ部50に対して送信する電波の種類、つまりDBSまたはFAを指示してもよい。この場合、エキサイタ部50は、電波の種類に応じて送信する電波の周波数を決定する。
【0149】
処理の切替を判断するのに用いられる閾値は、予め決められている例を示したが、これに限定されない。DBS処理で得られるS/C比に基づき、変動してもよい。具体的には、DBS処理におけるS/C比が一定値より低い場合、閾値を低くしてもよい。
【0150】
実施の形態2において、処理モードが移行の時に、ステップS930において、自機の移動方向に対する目標点の位置の相対角度を算出する例を示したが、これに限定されない。処理モードが移行の時は、S/C比を算出すればよく、ステップS930を処理しなくてもよい。ステップS930を処理しないためには、ステップS930の処理の要否に応じて切替部110Aからの命令を区別することで、実現できる。
【0151】
実施の形態2において、処理モードがFAの時に、ステップS925において、目標受信電力とクラッタ受信電力を算出する例を示したが、これに限定されない。処理モードがFAの時は、FA処理により相対角度を算出すればよく、ステップS925を処理しなくてもよい。ステップS925を処理しないためには、ステップS925の処理の要否に応じて切替部110Aからの命令を区別することで、実現できる。
【0152】
ステップS2800において、処理モードを「移行」からFAに変更する条件の例を示したが、これに限定されない。FA処理により目標を安定して検出できると判断できる条件であれば、任意に選択してよい。例えば、S/C比が閾値以上となる回数が、予め決められた回数に達したことを条件としてもよい。この場合、S/C比が閾値以上となる場合が連続していなくてもよい。
【0153】
また、ステップS2800において、DBS処理による目標点の位置とFA処理による目標点の位置との距離が予め決められた閾値以下であることを条件に追加してもよい。この場合、切替部110Aは、第1目標演算部130、第2目標演算部150Aから、推定した目標点の位置を取得する。
【0154】
信号処理部100のハードウェアの例を示したが、これに限定されない。誘導制御装置1000、1000Aが前述の処理を実行できればよく、任意のハードウェアを選択することができる。例えば、誘導制御用の専用チップを用いてもよい。
【0155】
以上において説明した処理は一例であり、各ステップの順番、処理内容は、機能を阻害しない範囲で変更してもよい。また、説明した構成は、機能を阻害しない範囲で、任意に変更してもよい。例えば、S/C推定部112を第1目標演算部130に設けてもよい。