前記積層方向に沿った断面において、少なくとも一部の前記第2コイル導体層は、該第2コイル導体層に隣接するふたつの前記第1コイル導体層の間に位置する前記絶縁体と積層方向に重なる、請求項1または2に記載のコイル部品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前記従来のようなコイル部品を製造して使用しようとすると、絶縁体にクラックが発生するおそれがあることがわかった。具体的に述べると、第1コイル導体層と第2コイル導体層の互いに対向する角が繋がるように絶縁体にクラックが発生する。
【0004】
本願発明者は、この現象を鋭意検討したところ、第1コイル導体層と第2コイル導体層の互いの角の周辺の絶縁体に応力が集中してクラックが発生し、第1コイル導体層と第2コイル導体層の互いの角の距離が近いため、互いの角のクラックが繋がることを見出した。
【0005】
そこで、本発明の課題は、2層のコイル導体層に繋がるようなクラックが絶縁体に発生することを防ぐことができるコイル部品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明のコイル部品は、
第1磁性体と、
前記第1磁性体に積層された絶縁体と、
前記絶縁体に積層された第2磁性体と、
前記絶縁体内に設けられ、前記第1磁性体、前記絶縁体および前記第2磁性体の積層方向に配列された第1コイル導体層および第2コイル導体層を含むコイルと
を備え、
前記積層方向に沿った断面において、前記第1コイル導体層および前記第2コイル導体層の形状は多角形であり、前記第1コイル導体層と前記第2コイル導体層の互いに対向する対向部分のうち、一方の対向部分は辺であり、他方の対向部分は角である。
【0007】
ここで、一方の対向部分の辺は、平面であってもよく、または、曲面であってもよい。他方の対向部分の角は、鋭角であってもよく、または、曲面であってもよい。
【0008】
本発明のコイル部品によれば、積層方向に沿った断面において、第1コイル導体層と第2コイル導体層の互いに対向する対向部分のうち、一方の対向部分は辺であり、他方の対向部分は角である。このため、第1コイル導体層と第2コイル導体層の互いに対向する対向部分が辺である場合に比べて、第1コイル導体層と第2コイル導体層の互いの角の距離を離すことができる。これにより、第1コイル導体層と第2コイル導体層の互いの角の周辺の絶縁体に応力が集中してクラックが発生しても、互いの角のクラックは繋がりにくくなる。したがって、第1コイル導体層と第2コイル導体層のマイグレーションによる短絡を防ぐことができる。
【0009】
また、コイル部品の一実施形態では、前記第1コイル導体層および前記第2コイル導体層の多角形の角の数は、奇数である。
【0010】
前記実施形態によれば、第1コイル導体層および第2コイル導体層の多角形の角の数は、奇数であるので、第1コイル導体層および第2コイル導体層の形状を同一とすると、容易に、一方の対向部分を辺とでき、他方の対向部分を角とできる。
【0011】
また、コイル部品の一実施形態では、前記第1コイル導体層および前記第2コイル導体層の多角形の角は、曲面である。
【0012】
前記実施形態によれば、第1コイル導体層および第2コイル導体層の多角形の角は、曲面であるので、コイル導体層の角の周辺の絶縁体に対する応力集中を低減でき、絶縁体のクラックの発生を防ぐことができる。
【0013】
また、コイル部品の一実施形態では、前記積層方向に沿った断面において、少なくとも一部の前記第2コイル導体層は、該第2コイル導体層に隣接する前記第1コイル導体層と積層方向に重なる。
【0014】
前記実施形態によれば、積層方向に沿った断面において、少なくとも一部の第2コイル導体層と第1コイル導体層を積層方向に重なるようにすることで、一方の対抗部分の辺の両端のそれぞれの角から他方の対抗部分の角までの距離をほぼ均等にすることが出来る。これにより、それぞれの距離が異なる場合よりクラックは繋がりにくくなる。
【0015】
また、コイル部品の一実施形態では、前記積層方向に沿った断面において、少なくとも一部の前記第2コイル導体層は、該第2コイル導体層に隣接するふたつの前記第1コイル導体層の間に位置する前記絶縁体と積層方向に重なる。
【0016】
前記実施形態によれば、積層方向に沿った断面において、少なくとも一部の第2コイル導体層と、該第2コイル導体層に隣接するふたつの第1コイル導体層の間に位置する絶縁体と、を積層方向と交差する方向に重なるようにすることで、一方の対抗部分の辺の両端のそれぞれの角から他方の対抗部分の角までの距離をほぼ均等にすることが出来る。これにより、それぞれの距離が異なる場合よりクラックは繋がりにくくなる。
さらに、第1コイル導体層と第2コイル導体層の間の容量をより低減できる。その結果、特性インピーダンスの整合や、カットオフの高周波化に寄与できる。
【0017】
また、コイル部品の一実施形態では、前記積層方向に沿った断面において、前記第1コイル導体層および前記第2コイル導体層のそれぞれの幅Wと厚みTの関係は、W<Tを満たす。
【0018】
前記実施形態によれば、厚みTを厚くすることによって、幅Wを変更しないで、大電流を流せるコイル導体層を形成できる。
【0019】
また、コイル部品の一実施形態では、前記積層方向に沿った断面において、前記第1コイル導体層および前記第2コイル導体層のそれぞれの幅Wと厚みTの関係は、W>Tを満たす。
【0020】
前記実施形態によれば、厚みTを薄くすることによって、コイル部品の高さを変更しないで、コイル導体層の層数を増加できる。
【0021】
また、コイル部品の一実施形態では、前記積層方向に沿った断面において、前記一方の対向部分の辺は、凹部を有する。
【0022】
前記実施形態によれば、一方の対向部分の辺の凹部において、第1コイル導体層と第2コイル導体層の距離を広げることができ、第1コイル導体層と第2コイル導体層の間の容量をより低減できる。その結果、特性インピーダンスの整合や、カットオフの高周波化に寄与できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のコイル部品によれば、2層のコイル導体層に繋がるようなクラックが絶縁体に発生することを防ぐことができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0026】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態のコイル部品を示す斜視図である。
図2は、コイル部品の断面図である。
図3は、コイル部品の分解斜視図である。
図1と
図2と
図3に示すように、コイル部品10は、積層体1と、積層体1内に設けられたコイル2と、積層体1に設けられた第1〜第4外部電極41〜44とを有する。
【0027】
コイル部品10は、コモンモードチョークコイルである。コイル部品10は、例えば、パソコン、DVDプレーヤー、デジカメ、TV、携帯電話、カーエレクトロニクスなどの電子機器に搭載される。
【0028】
積層体1は、第1磁性体11と、第1磁性体11に積層された絶縁体13と、絶縁体13に積層された第2磁性体12と、絶縁体13内に設けられた内部磁性体14とを有する。第1磁性体11、絶縁体13および第2磁性体12の積層方向は、矢印Z方向である。第1磁性体11は、下側に位置し、第2磁性体12は、上側に位置する。
【0029】
第1磁性体11、内部磁性体14および第2磁性体12は、例えば、Ni−Cu−Zn系フェライトから構成され、高周波のインピーダンス特性を向上できる。絶縁体13は、例えば、ホウケイ酸ガラスを含むガラスから構成され、誘電率を低くし、コイルの浮遊容量を小さくして、高周波特性を向上できる。絶縁体13は、複数の絶縁層13aを積層して構成される。
【0030】
内部磁性体14は、絶縁体13内でコイル2の内周側に設けられ、第1磁性体11と第2磁性体12に接続されている。積層方向に沿った断面において、内部磁性体14の幅は、第1磁性体11から第2磁性体12に向かって、連続的に大きくなる。具体的に述べると、絶縁体13のコイル2の内周側の部分には、積層方向に貫通する穴13bが設けられている。内部磁性体14は、穴13bに設けられている。穴13bの内径は、第1磁性体11から第2磁性体12に向かって、連続的に大きくなる。
【0031】
積層体1は、略直方体状に形成されている。積層体1の表面は、第1端面111と第2端面112と第1側面115と第2側面116と第3側面117と第4側面118とを有する。第1端面111と第2端面112とは、積層方向に互いに反対側に位置する。第1〜第4側面115〜118は、第1端面111と第2端面112との間に、位置する。第1端面111は、下側に位置し、第2端面112は、上側に位置する。
【0032】
コイル2は、互いに磁気的に結合された1次コイル2aと2次コイル2bを含む。1次コイル2aと2次コイル2bは、絶縁体13内に設けられ、積層方向に配置されている。
【0033】
1次コイル2aは、互いに電気的に接続される第1コイル導体層21および第3コイル導体層23を含む。2次コイル2bは、互いに電気的に接続される第2コイル導体層22および第4コイル導体層24を含む。
【0034】
第1〜第4コイル導体層21〜24は、積層方向に順に配列される。つまり、1次コイル2aの2つのコイル導体層21,23と2次コイル2bの2つのコイル導体層22,24は、積層方向に交互に配列される。第1〜第4コイル導体層21〜24は、それぞれ、異なる絶縁層13a上に設けられる。第1〜第4コイル導体層21〜24は、例えば、Ag、Cu、Au、Niもしくは各々を主成分とする合金等の導電性材料から構成される。
【0035】
第1〜第4コイル導体層21〜24は、上方からみて、平面上に螺旋状に巻き回されたスパイラルパターンを有する。第1〜第4コイル導体層21〜24の中心軸は、上方からみて、一致している。
また、積層方向に沿った断面において、少なくとも一部の第2コイル導体層は、該第2コイル導体層に隣接する第1コイル導体層と積層方向に重なる。こうすることで、第2コイル導体層の対抗部分の辺の両端のそれぞれの角から第1コイル導体層の対抗部分の角までの距離をほぼ均等にすることが出来る。これにより、それぞれの距離が異なる場合よりクラックは繋がりにくくなる。なお、第3、第4コイル導体層について同様であってもよい。
【0036】
第1コイル導体層21の第1端21aは、外周に引き出され、第1コイル導体層21の第2端21bは、内周に位置する。同様に、第2コイル導体層22は、第1端22aと第2端22bとを有し、第3コイル導体層23は、第1端23aと第2端23bとを有し、第4コイル導体層24は、第1端24aと第2端24bとを有する。
【0037】
第1コイル導体層21の第1端21aは、第2側面116の第1側面115側から露出する。第2コイル導体層22の第1端22aは、第2側面116の第3側面117側から露出する。第3コイル導体層23の第1端23aは、第4側面118の第1側面115側から露出する。第4コイル導体層24の第1端24aは、第4側面118の第3側面117側から露出する。
【0038】
第1コイル導体層21の第2端21bと第3コイル導体層23の第2端23bとは、絶縁層13aを貫通するビア導体を介して、電気的に接続される。同様に、第2コイル導体層22の第2端22bと第4コイル導体層24の第2端24bとは、絶縁層13aを貫通するビア導体を介して、電気的に接続される。
【0039】
第1〜第4外部電極41〜44は、例えば、Ag、Ag−Pd、Cu、Ni等の導電性材料から構成される。第1〜第4外部電極41〜44は、例えば、導電性材料を積層体1の表面に塗布し焼き付けて、形成される。第1〜第4外部電極41〜44は、それぞれ、コ字状に形成される。
【0040】
第1外部電極41は、第2側面116の第1側面115側に設けられる。第1外部電極41の一端部は、第2側面116側から折り返されて第1端面111に設けられ、第1外部電極41の他端部は、第2側面116側から折り返されて第2端面112に設けられる。第1外部電極41は、第1コイル導体層21の第1端21aに、電気的に接続される。
【0041】
同様に、第2外部電極42は、第2側面116の第3側面117側に設けられ、第2コイル導体層22の第1端22aに電気的に接続される。第3外部電極43は、第4側面118の第1側面115側に設けられ、第3コイル導体層23の第1端23aに電気的に接続される。第4外部電極44は、第4側面118の第3側面117側に設けられ、第4コイル導体層24の第1端24aに電気的に接続される。
【0042】
図4は、
図2の一部の拡大図である。
図4に示すように、積層方向に沿った断面において、第1コイル導体層21および第2コイル導体層22の形状は、多角形である。具体的に述べると、第1と第2コイル導体層21,22の形状は、第2磁性体12側(上側)に凸となる三角形である。以下、第1と第2コイル導体層21,22について説明するが、第3と第4コイル導体層23,24について同様である。
【0043】
第1コイル導体層21は、第2コイル導体層22に積層方向に対向する対向部分21cを含む。第2コイル導体層22は、第1コイル導体層21に積層方向に対向する対向部分22cを含む。第1コイル導体層21の対向部分21cは、角である。この対向部分21cの角は、鋭角である。第2コイル導体層22の対向部分22cは、辺である。この対向部分22cの辺は、平面である。
【0044】
したがって、第1コイル導体層21の対向部分21cは、角であり、第2コイル導体層22の対向部分22cは、辺であるので、第1コイル導体層と第2コイル導体層の互いに対向する対向部分が辺である場合に比べて、第1コイル導体層21の角と第2コイル導体層22の辺の端部に位置する角との距離Aを離すことができる。これにより、第1コイル導体層21と第2コイル導体層22の互いの角の周辺の絶縁体13に応力が集中してクラックが発生しても、互いの角のクラックは繋がりにくくなる。したがって、第1コイル導体層21と第2コイル導体層22のマイグレーションによる短絡を防ぐことができる。
【0045】
また、第1と第2コイル導体層21,22の断面積を大きく損なうことなく、第1と第2コイル導体層21,22の互いの角の距離Aを広げることができ、Rdc等の特性に大きな影響を与えることなく特性インピーダンスを任意に変更することができる。
【0046】
これに対して、特開2016−213333号公報(特許文献1)では、
図5に示すように、第1コイル導体層121の対向部分121cと第2コイル導体層122の対向部分122cは、辺である。このため、第1コイル導体層121の辺の端部に位置する角と第2コイル導体層122の辺の端部に位置する角との距離A0が近くなる。したがって、第1コイル導体層121と第2コイル導体層122の互いの角の周辺の絶縁体113に応力が集中してクラックが発生し、互いの角のクラックが繋がるおそれがある。そして、第1コイル導体層121と第2コイル導体層122のマイグレーションによる短絡が発生するおそれがある。
【0047】
仮に、第1コイル導体層121と第2コイル導体層122の辺が曲面であっても、辺の端部に角があるので、第1コイル導体層121と第2コイル導体層122の互いの角が近くなり、互いの角のクラックが繋がるおそれがある。
【0048】
図4に示すように、第1コイル導体層21および第2コイル導体層22の多角形の角の数は、奇数である。したがって、第1コイル導体層21および第2コイル導体層22の形状を同一とすると、容易に、一方の対向部分22cを辺とでき、他方の対向部分21cを角とできる。
【0049】
図6に示すように、第1コイル導体層21の多角形の角は、曲面であってもよい。これにより、第1コイル導体層21の角の周辺の絶縁体13に対する応力集中を低減でき、絶縁体13のクラックの発生を防ぐことができる。また、第1コイル導体層21の多角形の辺は、曲面であってもよい。なお、第2から第4コイル導体層22〜24について同様であってもよい。
【0050】
図7は、光学顕微鏡による画像をもとにして描いた複数のコイル導体層の模式図である。実際のコイル導体層の形状は、例えば、
図7に示すような種々の形状であり、三角形とは、これらの形状を含むものとする。なお、第1から第4コイル導体層21〜24の形状は、三角形以外の多角形であってもよく、このとき、辺は、平面であってもよく、または、曲面であってもよく、角は、鋭角であってもよく、または、曲面であってもよい。
【0051】
次に、コイル部品10の製造方法について説明する。
【0052】
図2と
図3に示すように、各コイル導体層21〜24を設けた複数の絶縁層13aを、第1磁性体11上に順に積層する。これにより、コイル2が内部に設けられた絶縁体13を第1磁性体11上に積層する。
【0053】
その後、絶縁体13の上方から下方に向かってレーザーを照射して、絶縁体13を上下に貫通する穴13bを設ける。穴13bは、レーザー以外に機械的な加工により形成するようにしてもよい。
【0054】
その後、この穴13bに内部磁性体14を充填し、絶縁体13上に第2磁性体12を積層して、積層体1を形成する。そして、積層体1を焼成して、積層体1に外部電極41〜44を設け、コイル部品10を製造する。
【0055】
(第2実施形態)
図8は、本発明のコイル部品の第2実施形態を示す断面図である。第2実施形態は、第1実施形態とは、コイル導体層の配置が相違する。この相違する構成を以下に説明する。その他の構成は、第1実施形態と同じ構成であり、第1実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0056】
図8に示すように、第2実施形態のコイル部品10Aでは、前記積層方向に沿った断面において、少なくとも一部の第2コイル導体層22と該第2コイル導体層に隣接するふたつの第1コイル導体層21の間に位置する前記絶縁体とは、積層方向に重なる。このとき、第1コイル導体層21の第2コイル導体層22に対向する対向部分21cは、辺であり、第2コイル導体層22の第1コイル導体層21に対向する対向部分22cは、角である。
【0057】
したがって、前記積層方向に沿った断面において、第2コイル導体層22と、該第2コイル導体層に隣接するふたつの第1コイル導体層21の間に位置する絶縁体とを、積層方向に重なるようにすることで、第2コイル導体層22の対抗部分の辺の両端のそれぞれの角からふたつの第1コイル導体層21の対抗部分の角までの距離をほぼ均等にすることが出来る。これにより、それぞれの距離が異なる場合よりクラックは繋がりにくくなる。
さらに、第1コイル導体層と第2コイル導体層の間の容量をより低減できる。その結果、特性インピーダンスの整合や、カットオフの高周波化に寄与できる。なお、第3と第4コイル導体層23,24について同様であってもよく、また、第2と第3コイル導体層22,23について同様であってもよい。
【0058】
(第3実施形態)
図9Aと
図9Bは、本発明のコイル部品の第3実施形態を示す断面図である。
図9Aのコイル導体層と
図9Bのコイル導体層とは、アスペクト比が異なる。
【0059】
図9Aに示すように、積層方向に沿った断面において、第1コイル導体層21Aの幅Wと厚みTの関係は、W<Tを満たす。幅Wは、積層方向に直交する方向の大きさであり、厚みTは、積層方向の大きさである。したがって、厚みTを厚くすることによって、幅Wを変更しないで、大電流を流せる第1コイル導体層21Aを形成できる。なお、第2から第4コイル導体層について同様であってもよい。
【0060】
図9Bに示すように、積層方向に沿った断面において、第1コイル導体層21Bの幅Wと厚みTの関係は、W>Tを満たす。したがって、厚みTを薄くすることによって、コイル部品の高さを変更しないで、コイルを構成するコイル導体層の層数を増加できる。なお、第2から第4コイル導体層について同様であってもよい。
【0061】
(第4実施形態)
図10は、本発明のコイル部品の第4実施形態を示す断面図である。
図10に示すように、積層方向に沿った断面において、第2コイル導体層22Cの対向部分22cの辺は、凹部22dを有する。具体的に述べると、第1コイル導体層21Cの下辺と第2コイル導体層22Cの下辺は、凹部を有する。
【0062】
したがって、第2コイル導体層22Cの対向部分22cの辺の凹部22dにおいて、第1コイル導体層21Cと第2コイル導体層22Cの距離を広げることができ、第1コイル導体層21Cと第2コイル導体層22Cの間の容量をより低減できる。その結果、特性インピーダンスの整合や、カットオフの高周波化に寄与できる。
【0063】
図11は、光学顕微鏡による画像をもとにして描いた第2コイル導体層の模式図である。第2コイル導体層22Cの形状は、例えば、
図11に示すような形状となる。第2コイル導体層22Cの対向部分22cの辺は、凹部22dを有する。このとき、対向部分22cは、平面Bと2点で接する。なお、第1、第3から第4コイル導体層について同様であってもよい。
【0064】
(実施例)
次に、第1実施形態の実施例について説明する。
【0065】
コイル導体層は、レジストを用いためっき形成により、断面形状が略きのこ形状になるように形成する。より具体的には、導電性を有する支持基板を準備し、この基板上に所定のパターンとなる転写領域を除いた部分にレジストを形成し、転写領域にレジストの厚み以上の厚みでめっき電極を形成する。この際、めっき電極はレジストの上面より飛び出しているため、断面が略きのこ状となる。好ましくは、レジストからコイル導体層を剥離しやすくするために、レジストには、高さ方向に下側から上側に向かい開口部が広くなるようにテーパがつけられている。コイル導体層は、主にAgからなり、添加物としてAl
2O
3やSiO
2などの酸化物を含んでいても良い。
【0066】
一方、Ni−Cu−Zn系フェライトや、アルカリ硼珪酸ガラス、アルカリ硼珪酸ガラスとNi−Cu−Zn系フェライトの複合材料などからなる磁性層および絶縁層を準備する。絶縁層には、コイル間をつなぐビア穴を形成しAgを含む導電性材料を充填しておく。
【0067】
その後、めっき形成したコイル導体層を絶縁層に転写して、コイル導体層を形成したシートを準備する。コイル導体層は、反転転写されることで、上に凸となる略きのこ形状になる。
【0068】
磁性層を積層したあとに、コイル導体層を転写した所定枚数の絶縁層を磁性層に対して積層する。その後、コイル導体層の内周部よりも内側にレーザーで穴を形成する。穴のテーパ角度を、45度以上70度以下にすることで、80μm以上の厚みの絶縁層を貫通する穴を形成しても、下側の磁性層を貫通させないレーザーエネルギーで加工できるようになる。
【0069】
コイル導体層の内周部とレーザー穴との最短距離が近すぎると、レーザー加工時のエネルギーによりコイル導体層の周辺の絶縁体(絶縁層)に微小なクラックが入るため、100μm以上の距離が好ましい。コイル導体層の内周部以外に、ビア接続用のランド部も同様である。穴形成の手段は、サンドブラスト等の処理でも良い。
【0070】
その後、この穴に、磁性体ペーストを充填することで、下に凸となる内部磁性体が形成される。そして、磁性層を続けて積層し、積層体を得る。積層体を静水圧プレスなどの工法により圧着し、カットすることでチップ状の積層体を得る。
【0071】
チップ状の積層体を870℃〜910℃で焼成することで、絶縁体のガラスが充分に軟化し、表面張力により球形化しようとする。一方、コイル導体層も焼結することで中心方向への引張り応力がかかるため、絶縁体とコイル導体層の応力の関係で、コイル導体層の角が丸くなる。結果的に、コイル導体層の形状は上に凸となる略きのこ形状から角が丸い略三角形となる。レジストから飛び出した電極寸法を小さくすることで、丸い電極を形成することもできる。
【0072】
焼成温度を870℃付近に下げつつ、焼成雰囲気を制御することで、ガラスの軟化による収縮は抑えつつ、内部磁性体の焼結を進ませて収縮が大きい状態を作り出し、ガラス(絶縁体)と内部磁性体の間に隙間を形成することができる。また、内部磁性体への応力を低減できるので、内部磁性体にクラックが発生しにくくなる。内部磁性体および第1、第2磁性体のポア面積率は15%以下で、ポアの直径は1.5μm以下が好ましい。
【0073】
ポアの直径、ポア面積率の測定は、以下の通りで測定した。
コイル部品の断面(
図2参照)における内部磁性体もしくは第1、第2磁性体の部分を鏡面研磨し、集束イオンビーム加工(FIB加工)(FIB装置:FEI製FIB200TEM)した。その後、走査電子顕微鏡(FE-SEM:日本電子製JSM−7500FA)により観察し、ポアの直径、ポア面積率を測定した。これらは画像処理ソフト(三谷商事(株)製WINROOFVer.5.6)を用いて算出した。
【0074】
尚、集束イオンビーム加工や、FE−SEMの観察条件は以下の通りである。
<集束イオンビーム加工(FIB加工)条件>
鏡面研磨した試料の研磨面に対し、入射角5°でFIB加工を行った。
<走査電子顕微鏡(SEM)による観察条件>
加速電圧 :15kV
試料傾斜 :85゜
信号 :二次電子
コーティング :Pt
倍率 :20,000倍
【0075】
また、画像処理ソフトによるポアの直径、ポア面積率は、以下の方法で求めた。
まず、画像の計測範囲を15μm×15μmとした。次にFE−SEMで得られた画像を2値化処理し、ポアのみを抽出する。個々のポアの面積をそれぞれ計測し、計測したポアのそれぞれが正円と仮定し、そのときの直径を算出し、ポアの直径とした。また、画像処理ソフトの「総面積・個数計測」機能で計測範囲の面積およびポアの面積を算出し、計測範囲の面積当たりのポアの面積の割合(ポア面積率)を求めた。
【0076】
焼成後のチップをバレルすることにより、バリを取り除く。外部電極を塗布し、焼き付けることで外部電極を形成する。その後、外部電極にNi、Cu、Sn等のめっき処理を施す。めっき処理の後、大気中の水分や不純物の影響で、外部電極間の絶縁抵抗が低下することを防ぐために、表面にシランカップリング系の撥水処理剤でコートする。
【0077】
前記実施例によれば、めっき形成するコイル導体層は、レジストの高さとテーパ、レジストから飛び出しためっき電極の高さを制御することで、焼成後のコイル導体層の断面形状を、角が丸い形状や、角が丸い略三角形にできる。
【0078】
また、磁性層はフェライト、絶縁層はガラスを用いることで、高周波特性を向上することができる。また、内部磁性体のテーパ角を45度〜70度にすることで、太い磁路を形成でき、インピーダンスは高く、インピーダンスばらつきを小さくすることができる。また、焼成プロセスを制御することで、内部磁性体と絶縁体(ガラス)との間に隙間を形成し、内部磁性体への応力を低減することができる。
【0079】
また、内部磁性体とコイル導体層の内周が接近することで、その間の絶縁体の寸法が小さくなる。強度自体が低下するため、熱ストレスに対してクラックが発生しやすくなる。しかし、内部磁性体とコイル導体層の内周の間の寸法を100μm以上に確保することで、強度を確保できる。
【0080】
なお、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で設計変更可能である。例えば、前記第1から前記第4実施形態のそれぞれの特徴点を様々に組み合わせてもよい。
【0081】
前記実施形態では、1次コイルおよび2次コイルは、それぞれ、2つのコイルから構成されているが、1次コイルおよび2次コイルの少なくとも一方を、1つまたは3つ以上のコイルから構成してもよい。
【0082】
前記実施形態では、コイル部品として、コモンモードチョークコイルを用いているが、単一のコイルを用いてもよい。また、コイルは、4層のコイル導体層を含んでいるが、少なくとも2層のコイル導体層を含んでいればよい。また、全てのコイル導体層の形状は、同一であるが、少なくとも1つのコイル導体層の形状が、他のコイル導体層の形状と異なっていてもよい。また、積層体に、内部磁性体を設けているが、内部磁性体を省略してもよい。