特許第6895345号(P6895345)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6895345
(24)【登録日】2021年6月9日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】エアバッグ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/232 20110101AFI20210621BHJP
   B60R 21/213 20110101ALI20210621BHJP
【FI】
   B60R21/232
   B60R21/213
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-165320(P2017-165320)
(22)【出願日】2017年8月30日
(65)【公開番号】特開2019-43197(P2019-43197A)
(43)【公開日】2019年3月22日
【審査請求日】2020年5月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000229955
【氏名又は名称】日本プラスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100062764
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 襄
(74)【代理人】
【識別番号】100092565
【弁理士】
【氏名又は名称】樺澤 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100112449
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】上山 拓哉
【審査官】 鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−182026(JP,A)
【文献】 特開2006−88986(JP,A)
【文献】 特開2012−158319(JP,A)
【文献】 特開2017−43319(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2008/106072(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16−21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
袋状に形成され、折り畳まれた状態で車体のルーフサイド部から車室の上下方向に沿い車室側が被覆部材により覆われるピラー部に跨って収納されるとともに、この収納状態からガスが供給されることで下方に展開するエアバッグ本体部と、
このエアバッグ本体部の展開状態での車室側を覆ってこのエアバッグ本体部に取り付けられ、このエアバッグ本体部の収納状態では前記ルーフサイド部から前記ピラー部に跨って位置する補強部材とを具備し
前記エアバッグ本体部は、前記ルーフサイド部に取り付けられる取付部を前後に有し、
前記補強部材は、前記ピラー部側の前記取付部よりも前記ピラー部側に位置している
ことを特徴とするエアバッグ。
【請求項2】
エアバッグ本体部は、補強部材とは別体でこの補強部材と隣接するルーフサイド被覆部材により車室側が覆われるルーフサイド部から車室側が被覆部材により覆われるピラー部に跨って収納される
ことを特徴とする請求項1記載のエアバッグ。
【請求項3】
補強部材は、エアバッグ本体部の前縁部の上部から下部に亘る位置に接合されている
ことを特徴とする請求項1または2記載のエアバッグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、折り畳まれた状態で車体のルーフサイド部から車室の上下方向に沿い車室側が被覆部材により覆われるピラー部に跨って収納されるエアバッグ本体部を備えるエアバッグに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガスが導入されて膨張展開するエアバッグを備えたエアバッグ装置について、自動車の車室の側部のピラー部及びドアの窓部などを含む所定面に沿って前後に長手状のエアバッグを展開するいわゆるカーテンエアバッグ装置が知られている。このようなエアバッグ装置のエアバッグは、通常時は細長く折り畳まれ、窓部の上縁部のルーフサイド部に沿って配置されている。そして、側面衝突や横転(ロールオーバー)などの衝撃を受けた際に、インフレータからガスが供給され、エアバッグが側部の窓ガラスなどに沿って下方に膨張展開して、乗員を拘束して頭部などを保護する。
【0003】
エアバッグにおいては、近年、正面衝突に加えて、車両の一部が障害物に対して斜め方向から衝突する斜め衝突(オブリーク衝突)時の乗員の拘束性能が要求される。そのため、エアバッグによる必要保護領域が前方まで延びることとなり、エアバッグを例えばフロントピラー(Aピラー)の位置まで延ばしている。この場合、エアバッグが収納状態でルーフサイドトリムと被覆部材としてのフロントピラートリムとの分割位置を跨ぐことから、展開時にエアバッグがフロントピラートリムに引っ掛からないようにすることが望まれる。
【0004】
この点、例えばエアバッグの前端側の保護領域を後方へと折り返すように折り曲げた状態で収納する構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。しかしながら、この構成では、エアバッグの保護領域を前方へ大きく拡げた場合に収納が容易でないことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−256000号公報 (第3−4頁、図1−4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、ルーフサイドトリムとピラートリムとの分割位置を跨いで収納されたエアバッグ本体部を、ピラートリムに引っ掛からないように展開させることが望まれている。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、車体のルーフサイド部からピラー部に跨って収納されたエアバッグ本体部を円滑に展開させることが可能なエアバッグを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載のエアバッグは、袋状に形成され、折り畳まれた状態で車体のルーフサイド部から車室の上下方向に沿い車室側が被覆部材により覆われるピラー部に跨って収納されるとともに、この収納状態からガスが供給されることで下方に展開するエアバッグ本体部と、このエアバッグ本体部の展開状態での車室側を覆ってこのエアバッグ本体部に取り付けられ、このエアバッグ本体部の収納状態では前記ルーフサイド部から前記ピラー部に跨って位置する補強部材とを具備し、前記エアバッグ本体部は、前記ルーフサイド部に取り付けられる取付部を前後に有し、前記補強部材は、前記ピラー部側の前記取付部よりも前記ピラー部側に位置しているものである。
【0009】
請求項2記載のエアバッグは、請求項1記載のエアバッグにおいて、エアバッグ本体部は、補強部材とは別体でこの補強部材と隣接するルーフサイド被覆部材により車室側が覆われるルーフサイド部から車室側が被覆部材により覆われるピラー部に跨って収納されるものである。
【0010】
請求項3記載のエアバッグは、請求項1または2記載のエアバッグにおいて、補強部材は、エアバッグ本体部の前縁部の上部から下部に亘る位置に接合されているものである。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載のエアバッグによれば、折り畳まれた状態で車体のルーフサイド部から車室の上下方向に沿い車室側が被覆部材により覆われるピラー部に跨って収納されるエアバッグ本体部に対して、このエアバッグ本体部の展開状態での車室側を覆う補強部材を、このエアバッグ本体部の収納状態でルーフサイド部からピラー部に跨り、かつ、ピラー部側の取付部よりもピラー部側に位置するように配置することで、エアバッグ本体部が展開時に被覆部材に対して擦れたり引っ掛かったりすることを補強部材により防止し、このエアバッグ本体部を円滑に展開させることができる。
【0012】
請求項2記載のエアバッグによれば、請求項1記載のエアバッグの効果に加えて、エアバッグ本体部が、補強部材とは別体でこの補強部材と隣接するルーフサイド被覆部材により車室側が覆われるルーフサイド部から車室側が被覆部材により覆われるピラー部に跨って収納されるので、この収納状態でルーフサイド部からピラー部に跨って位置するように配置した補強部材により、エアバッグ本体部が展開時にルーフサイド被覆部材や被覆部材に対して擦れたり引っ掛かったりすることを防止し、このエアバッグ本体部をより円滑に展開させることができる。
【0013】
請求項3記載のエアバッグによれば、請求項1または2記載のエアバッグの効果に加えて、補強部材をエアバッグ本体部の前縁部の上部から下部に亘る位置に接合することで、エアバッグ本体部の前縁部全体を補強部材によって確実に覆い、エアバッグ本体部が展開時に被覆部材に対して擦れたり引っ掛かったりすることを補強部材により確実に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】(a)は本発明の一実施の形態のエアバッグを示す展開状態を車室側から示す側面図、(b)は(a)のI−I相当位置の断面図である。
図2】同上エアバッグの収納状態の一部を車室側から模式的に示す側面図である。
図3】同上エアバッグの展開挙動を(a)ないし(d)の順に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施の形態の構成を、図面を参照して説明する。
【0016】
図1(a)、図1(b)、及び、図2において、10はエアバッグである。このエアバッグ10を備えたエアバッグ装置は、カーテンエアバッグ装置とも呼ばれ、車両である自動車の車体の車室14のルーフサイド部15に配置されている。そして、このエアバッグ10は、カーテンエアバッグ、側突用エアバッグ、インフレータブルカーテン、あるいは頭部保護用エアバッグなどとも呼ばれるもので、側面衝突の衝撃を受けた際や横転(ロールオーバー)の際などに、被保護物としての乗員の側方にほぼ面状に所定方向である下方へと展開し、乗員の頭部などを保護するようになっている。
【0017】
なお、以下、前後方向、車幅方向である両側方向、上下方向などの方向は、車両の直進方向を基準とし、前側方向(矢印F方向)、後側方向(矢印R方向)、上方(矢印U方向)、下方(矢印D方向)、車室14の外方(矢印W方向)、車室14の内方(矢印C方向)などを説明する。
【0018】
そして、この自動車の車体は、車室14内に乗員が着座可能な図示しない座席である前席及び後席を備え、これら前席及び後席に対応して、それぞれ上部に開口可能なガラスにより覆われた窓部(サイドウィンドウ)18を備えたドアが設けられている。また、車室14の両側には、前側から順に、Aピラーとも呼ばれる(第1の)柱状体すなわち(第1の)ピラー部としてのフロントピラー21、Bピラーとも呼ばれる(第2の)柱状体すなわち(第2の)ピラー部としてのセンターピラー(図示せず)、Cピラーとも呼ばれる(第3の)柱状体すなわち(第3の)ピラー部としてのリアピラー(図示せず)がそれぞれ上下方向に沿って設けられており、フロントピラー21の後方でかつセンターピラーの前方に前側の窓部18が位置し、センターピラーの後方でかつリアピラーの前方に後側の窓部(図示せず)が位置している。そして、これら窓部18、ドア、フロントピラー21、センターピラー及びリアピラーにより、車室14の両側部にエアバッグ10が展開する所定面が構成されている。また、これらフロントピラー21、センターピラー及びリアピラーの上側、すなわち窓部18の一縁部である上縁部に、ルーフサイドレールなどとも呼ばれる被取付部材を構成する車体パネル25が設けられ、この車体パネル25を介して天井部としての天井パネルが支持されている。また、この車体パネル25の車室内側は、ルーフサイド被覆部材としてのヘッドライニング26により覆われている。また、両側のフロントピラー21の前側にはフロントガラス(フロントウインドシールド)が設けられ、両側のリアピラーの後側にはリアガラスが設けられている。そして、収納位置としてのルーフサイド部15は、天井パネルの両側の縁部の部分から、この縁部の部分といわば交差する方向に伸びるフロントピラー21及びリアピラーのほぼ全長にかかる部分にまで設定され、これら天井パネルの縁部の部分とフロントピラー21及びリアピラーとで仮想的に構成される弧の内側に所定面が設定される。
【0019】
なお、ここで、センターピラーとは、前後の端部のピラー部ではなく、展開したエアバッグ10に覆われるピラー部を示す。また、車両の種類によっては、片側に例えば4本以上のピラー部を備える場合があるが、前から3本目以後のピラー部は、リアピラーとして説明する。
【0020】
そして、エアバッグ装置は、前席及び後席の乗員を保護可能な、いわゆる前後席用エアバッグであり、車体パネル25とヘッドライニング26となどに囲まれたルーフサイド部15すなわち車体のドア開口部の上縁に沿って細長く折り畳んで収納されたエアバッグ10と、後席の後方あるいは上方に収納されこのエアバッグ10にガスを供給するガス発生器である図示しないインフレータとなどを備えている。また、このエアバッグ装置は、エアバッグ10を車体パネルに取り付ける金属板をプレス加工などして形成された図示しないブラケット及び折り畳んだエアバッグ10の形状を保持する破断可能な筒状あるいは紐状の形状保持部材としてのスリーブなどが備えられている。また、フロントピラー21、センターピラー及びリアピラーのそれぞれの車室14の室内側は、構造物としてのカバー体すなわち被覆部材(被覆内装材)であるピラートリム(ピラーガーニッシュ)により覆われている。すなわち、フロントピラー21は、(第1の)被覆部材であるフロントピラートリム27により覆われ、センターピラーは、(第2の)被覆部材であるセンターピラートリムにより覆われ、リアピラーは、(第3の)被覆部材であるリアピラートリムにより覆われている。これらフロントピラートリム27、センターピラートリム、リアピラートリムは、それぞれ例えば合成樹脂などにより形成されている。また、これらフロントピラートリム27、センターピラートリム、リアピラートリムは、それぞれ長手状に形成されており、フロントピラー21、センターピラー、リアピラーに沿って上下方向に長手状となるように配置されている。さらに、これらフロントピラートリム27、センターピラートリム、リアピラートリムは、ヘッドライニング26とは別体であり、これらの上端部は、それぞれヘッドライニング26に密着して配置されている。すなわち、ヘッドライニング26とフロントピラートリム27、センターピラートリム、リアピラートリムの上端部とは、互いに隣接して位置している。また、ヘッドライニング26とフロントピラートリム27、センターピラートリム、リアピラートリムとは、互いに直接固定されていない。
【0021】
エアバッグ10は、扁平な袋状に形成されたエアバッグ本体部31と、テザー部32と、補強部材としての補強布(補強パッチ)33とを備えている。そして、このエアバッグ10は、上縁部が車体側(車体パネル25)に取り付けられるとともに、例えば前端部がテザー部32により車体側(フロントピラー21)に取り付けられて、細長く折り畳んだ状態でセンターピラーの上方であるルーフサイド部15からフロントピラー21に跨る位置まで前後方向に沿って長手状に収納される。すなわち、このエアバッグ10は、ヘッドライニング26及びフロントピラートリム27により覆われている。
【0022】
エアバッグ本体部31は、構造的に、単数または複数の基布により構成されている。本実施の形態において、このエアバッグ本体部31は、車外側基布35と、車内側基布36とにより構成されている。車外側基布35と車内側基布36とは、一体でも別体でもよい。そして、車外側基布35と車内側基布36とが接合部37により互いに接合されて、膨張部(前側膨張部)38が形成されている。なお、本実施の形態のエアバッグ本体部31は、前席に対応する部分のみに展開するエアバッグ本体部31について説明するが、前席から後席に亘って展開するエアバッグ本体部31についても同様に適用できる。
【0023】
そして、エアバッグ本体部31は、長手状に形成されており、長手方向を前後方向に沿わせた状態で車体に収納されている。このエアバッグ本体部31には、インフレータが挿入接続されガスが導入されるインフレータ接続部としてのガス導入部41が設けられている。また、このエアバッグ本体部31には、車体側に取り付けられる取付部42が設けられている。
【0024】
ガス導入部41は、エアバッグ本体部31の上部に突設されている。このガス導入部41の後端部(上端部)は、インフレータが挿入される挿入開口となっている。このガス導入部41には、エアバッグ本体部31の内部に位置して、インナ部材44が取り付けられていてもよい。なお、このガス導入部41は、本実施の形態において、例えばエアバッグ本体部31の後部に配置されているが、例えば前席及び後席に亘って展開するエアバッグ本体部31の場合には、前後方向の中央部などに配置されていてもよい。
【0025】
インナ部材44は、ガス導入部41の補強用のものであり、このガス導入部41の長手方向に沿って長手状の筒状に形成されている。
【0026】
取付部42は、エアバッグ本体部31の上縁部に複数設けられ、前後に互いに離れてそれぞれ配置されている。
【0027】
車外側基布35及び車内側基布36は、エアバッグ本体部31を形成するものである。これら車外側基布35及び車内側基布36は、互いに略等しい長手状に形成されている。これら車外側基布35及び車内側基布36は、例えば表面がシリコーン系エラストマなどの合成樹脂によりコーティングされていてもよい。
【0028】
接合部37は、車外側基布35と車内側基布36とを、例えば縫製、あるいは接着剤などにより接合するものである。この接合部37は、車外側基布35と車内側基布36との外縁部を互いに接合する外縁接合部45を備えている。また、この接合部37は、膨張部38(前側膨張部及び後側膨張部)を区画する内側接合部46を備えている。
【0029】
外縁接合部45は、例えば縫製部であり、エアバッグ本体部31の上縁部から前縁部、下縁部及び後縁部に亘ってガス導入部41の挿入開口を除く基布35,36の周縁部を接合している。
【0030】
内側接合部46には、本実施の形態において、第1の接合部51、第2の接合部52及び第3の接合部53が設定されている。第1の接合部51は、線状に形成されており、ガス導入部41の下縁から膨張部38内に向かって前方へと直線状に形成され、かつ、先端側が下方に向かって湾曲されている。また、第2の接合部52は、円形状に形成されており、ガス導入部41の前方に位置してエアバッグ本体部31(膨張部38)の上縁部に配置されている。さらに、第3の接合部53は、円形状に形成されており、第2の接合部52よりも前方に位置してエアバッグ本体部31(膨張部38)の下縁部に配置されている。
【0031】
そして、膨張部38は、エアバッグ10(エアバッグ本体部31)の展開により前席に着座する乗員の頭部を拘束するものである。
【0032】
テザー部32は、エアバッグ10を例えばフロントピラー21の位置で車室14に連結するためのものである。このテザー部32は、例えばテザーベルト、吊り紐、テザー、あるいはストラップなどとも呼ばれる。このテザー部32は、例えば外縁接合部45の前端部に基端部が取り付けられてエアバッグ本体部31(膨張部38)の前方に位置している。
【0033】
補強布33は、単数または複数の基布により構成されている。本実施の形態において、この補強布33は、1枚の基布により構成されている。この補強布33は、エアバッグ本体部31の前縁部に対応する形状、例えば半月(半円)形状に形成されている。この補強布33は、エアバッグ本体部31の前縁部にて車内側基布36に重ねられ、このエアバッグ本体部31の前縁部の上部から下部に亘る位置に接合されている。すなわち、この補強布33は、この補強布33をエアバッグ本体部31に対して接合する補強部材接合部としての補強布接合部55を備えている。この補強布接合部55は、例えば本実施の形態では縫製部であり、エアバッグ本体部31の前縁部の上部から下部に亘り外縁接合部45に沿って補強布33の前縁部を連続的にエアバッグ本体部31の前縁部に取り付けている。換言すれば、この補強布接合部55により、補強布33は、エアバッグ本体部31の前縁部の接合代(外縁接合部45)に沿って、上部から前部、下部に亘り接合されている。したがって、この補強布33は、膨張部38の車室内側に位置している。さらに、この補強布33は、第3の接合部53に対して前方に離れて位置している。そして、この補強布33の前後方向の長さLは、展開時のエアバッグ本体部31がフロントピラートリム27の端末位置(ヘッドライニング26と隣接する上端部)Tに接触する範囲を覆うように設定されている(図2)。
【0034】
そして、エアバッグ10を製造する際には、車外側基布35と車内側基布36とを外縁接合部45及び内側接合部46によりそれぞれ縫製などで接合することで、膨張部38を備えるエアバッグ本体部31が形成される。さらに、このエアバッグ本体部31の車内側基布36に対して重ねた補強布33を補強布接合部55により縫製などで接合することで、エアバッグ本体部31と補強布33とを一体的に備えるエアバッグ10が完成する。この状態で、ガス導入部41の挿入開口にインフレータのガス噴射側を挿入し、このインフレータをエアバッグ10から外側に露出させた状態として一体的に固定する。
【0035】
さらに、エアバッグ本体部31を補強布33とともにロール状などに折り曲げながら巻き上げて、エアバッグ10を所定の細長い形状に折り畳み、テープなどの保持部材57を用いてエアバッグ10の展開時の圧力で結合解除すなわち破断可能となるように折り畳み形状を保持する。このとき、補強布33がエアバッグ本体部31に対して車室14側に露出するように巻き上げる。このようにして、エアバッグ10が細長く折り畳まれ、かつ、折畳形状が保持された状態となり、カーテンエアバッグモジュールとなるエアバッグ装置が構成される。
【0036】
そして、上記のように折り畳まれたエアバッグ10を備えるエアバッグ装置を車室14内に持ち込み、ヘッドライニング26及びフロントピラートリム27、センターピラートリム、リアピラートリムなどの内装材が取り付けられる前に車体への取付作業を行う。この取付作業は、エアバッグ本体部31の複数の取付部42及びテザー部32を図示しないボルトなどの固定具により車体に取り付け固定することにより行われる。また、インフレータは、例えばリアピラーの上方に相当する位置に固定される。さらに、インフレータから導出されたハーネスを車体に備えた制御装置に接続する。次いで、車体の天井パネル及び車体パネル25を覆ってヘッドライニング26を取り付けるとともに、フロントピラー21、センターピラー及びリアピラーにフロントピラートリム27、センターピラートリム、リアピラートリムをそれぞれ取り付けてエアバッグ装置を覆い、エアバッグ装置の車体への取付作業が完了する。この取付状態で、エアバッグ装置がヘッドライニング26及びフロントピラートリム27、センターピラートリム、リアピラートリムによって車室14内と隔離されるとともに、ガス導入部41に挿入されたインフレータと、ロール状に折り畳まれたエアバッグ10とが、フロントピラートリム27、センターピラートリム、リアピラートリムの上方のルーフサイド部15からフロントピラー21に亘る位置に保持される。すなわち、エアバッグ本体部31及び補強布33は、それぞれルーフサイド部15からフロントピラー21に跨って配置され、ヘッドライニング26及びフロントピラー21により覆われる(図2)。より詳細に、エアバッグ本体部31は、主としてルーフサイド部15に配置されてヘッドライニング26により覆われ、前端側がフロントピラー21に配置されてフロントピラートリム27により覆われる。また、補強布33は、主としてフロントピラー21に配置されてフロントピラートリム27により覆われ、後端側がルーフサイド部15に配置されてヘッドライニング26により覆われる。
【0037】
そして、車両の正面衝突、微小ラップ衝突や斜め衝突(斜め前方からの衝突)を含む側面衝突あるいは横転などの際には、制御装置によりインフレータが作動し、このインフレータから噴射されるガスがガス導入部41からエアバッグ10のエアバッグ本体部31へと導入されて、エアバッグ本体部31が車室14の側部の所定面に沿って下方へと面状に膨張展開し、乗員を保護する。
【0038】
より詳細に、エアバッグ10では、ガス導入部41にてガスが供給されると、このガス導入部41から導入されたガスが第1の接合部51に沿って膨張部38の前部に供給されるとともに、第1の接合部51の先端部の下方の位置から膨張部38の後部に供給される。このため、エアバッグ本体部31は、膨張部38が膨張しながら展開してヘッドライニング26の下端部を車室14の室内側へと押しのけるように変形させる。
【0039】
このとき、例えばエアバッグ本体部31のフロントピラー21に延出する前端側の部分は、図3(a)ないし図3(d)に示すように、後方に向かって縮んで(シュリンクして)展開する(矢印A)。このため、フロントピラー21を覆うフロントピラートリム27に対してエアバッグ本体部31の前端側が擦れる方向に移動するが、本実施の形態では、この部分に補強布33が位置していることから、この補強布33によってエアバッグ本体部31が直接フロントピラートリム27に対して擦れることを防止し、かつ、フロントピラートリム27との摩擦を補強布33が吸収して、エアバッグ本体部31がフロントピラートリム27との摩擦の影響を受けることなく、また、フロントピラートリム27の上端部に引っ掛かることなく、このフロントピラートリム27の上端部を車室14の内側へと押しのけながら、補強布33とともにフロントピラートリム27、センターピラートリム、リアピラートリムの上端部から車室14内へと突出し、所定面に沿ってロールが迅速に解けつつ下方へと円滑に展開する。
【0040】
このように、本実施の形態によれば、折り畳まれた状態で車体のルーフサイド部15から車室14側がフロントピラートリム27により覆われるフロントピラー21に跨って収納されるエアバッグ本体部31に対して、このエアバッグ本体部31の展開状態での車室14側を覆う補強布33を、このエアバッグ本体部31の収納状態でルーフサイド部15からフロントピラー21に跨って位置するように配置することで、エアバッグ本体部31が展開時にフロントピラートリム27に対して擦れたり引っ掛かったりすることを補強布33により防止し、このエアバッグ本体部31を円滑に展開させることができる。
【0041】
特に、エアバッグ本体部31は、フロントピラートリム27とは別体でこのフロントピラートリム27と隣接するヘッドライニング26により車室14側が覆われるルーフサイド部15から車室14側がフロントピラートリム27により覆われるフロントピラー21に跨って収納されるので、この収納状態でルーフサイド部15からフロントピラー21に跨って位置するように配置した補強布33により、エアバッグ本体部31が展開時にヘッドライニング26やフロントピラートリム27に対して擦れたり引っ掛かったりすることを防止し、このエアバッグ本体部31をより円滑に展開させることができる。
【0042】
また、補強布33をエアバッグ本体部31の前縁部の上部から下部に亘る位置に接合することで、エアバッグ本体部31の前縁部全体を補強布33によって確実に覆い、エアバッグ本体部31が展開時にフロントピラートリム27やヘッドライニング26に対して擦れたり引っ掛かったりすることを補強布33により確実に防止できる。
【0043】
そして、エアバッグ本体部31が円滑に展開することにより、フロントピラートリム27への入力が低減され、フロントピラートリム27の損傷や脱落を防止できる。
【0044】
さらに、エアバッグ本体部31の展開挙動が安定することで、乗員の初期拘束が早まり、性能を安定させることができる。しかも、エアバッグ本体部31がフロントピラートリム27と直接接触しないので、仮にフロントピラートリム27にエッジなどが合った場合でも、このエッジなどとの接触でエアバッグ本体部31に傷付きが発生することを防止できる。
【0045】
特に近年、斜め衝突(オブリーク衝突)などに対する保護の観点から、エアバッグ10による乗員の前方への必要保護領域が大きくなってきているため、エアバッグ本体部31の前端部が収納状態でフロントピラー21(フロントピラートリム27)側へ大きく延びるようになっており、フロントピラートリム27との直接の接触による摩擦の影響によって展開速度に遅れが生じることで乗員拘束性能が低下したり、フロントピラートリム27に対してエアバッグ本体部31が引っ掛かったり、フロントピラートリム27が損傷あるいは、脱落することが懸念されるが、本実施の形態では、エアバッグ本体部31の前端部を前方に延ばした構成としても、このような問題が生じにくい。
【0046】
なお、上記の一実施の形態において、補強布33は、収納状態でルーフサイド部15からフロントピラー21に跨って位置するように配置したが、エアバッグ本体部31をルーフサイド部15からセンターピラーやリアピラーに跨るように収納する車種の場合には、補強布33を収納状態でルーフサイド部15からセンターピラーあるいはリアピラーに跨って位置するように配置しても、同様の作用効果を奏することができる。
【0047】
また、エアバッグ本体部31の基布(車内側基布36)は、シリコーン系エラストマなどの合成樹脂によりコーティングされていてもされていなくても、同様の作用効果を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、例えば自動車の側部の窓部に沿って取り付けられ展開することで乗員を保護するエアバッグ及びエアバッグ装置に適用できる。
【符号の説明】
【0049】
10 エアバッグ
14 車室
15 ルーフサイド部
21 ピラー部としてのフロントピラー
26 ルーフサイド被覆部材としてのヘッドライニング
27 被覆部材であるフロントピラートリム
31 エアバッグ本体部
33 補強部材としての補強布
42 取付部
図1
図2
図3