特許第6895360号(P6895360)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6895360
(24)【登録日】2021年6月9日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】船外機用防振ブッシュ
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/126 20060101AFI20210621BHJP
   B63H 23/34 20060101ALI20210621BHJP
   B63H 20/00 20060101ALI20210621BHJP
   F16F 1/38 20060101ALI20210621BHJP
   F16D 1/02 20060101ALI20210621BHJP
   F16D 1/06 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   F16F15/126 B
   B63H23/34 B
   B63H20/00 100
   F16F1/38 U
   F16F1/38 G
   F16F1/38 S
   F16D1/02 210
   F16D1/06 110
   F16D1/02 230
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-199138(P2017-199138)
(22)【出願日】2017年10月13日
(65)【公開番号】特開2019-74109(P2019-74109A)
(43)【公開日】2019年5月16日
【審査請求日】2020年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179970
【弁理士】
【氏名又は名称】桐山 大
(74)【代理人】
【識別番号】100071205
【弁理士】
【氏名又は名称】野本 陽一
(72)【発明者】
【氏名】高橋 弘幸
【審査官】 杉山 豊博
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−180930(JP,A)
【文献】 実開平02−066757(JP,U)
【文献】 特開2014−019341(JP,A)
【文献】 特開2017−132458(JP,A)
【文献】 特開平08−233034(JP,A)
【文献】 特開平07−317841(JP,A)
【文献】 特開2002−310177(JP,A)
【文献】 特開2008−149792(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/126
B63H 23/34
B63H 20/00
F16F 1/38
F16D 1/02
F16D 1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船外機におけるシャフトとプロペラの間に介装される防振ブッシュであって、
前記シャフトの外周側に非接着で配置される内周スリーブと、前記内周スリーブの外周側に非接着で配置される外周スリーブと、前記外周スリーブの外周側に保持されるとともに前記外周スリーブおよび前記プロペラ間に挟み込まれる弾性体と、前記内周スリーブを前記シャフトに対し回り止めする回り止め手段と、前記外周スリーブを前記内周スリーブに対し回り止めする回り止め手段と、を有し、
前記内周スリーブを前記シャフトに対し回り止めする回り止め手段は、スプライン嵌合による回り止め手段であり、前記外周スリーブを前記内周スリーブに対し回り止めする回り止め手段は、多角形状の組み合わせによる回り止め手段であることを特徴とする船外機用防振ブッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船外機に用いられる防振ブッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から船外機に用いられる防振ブッシュとして図3に示す防振ブッシュ51が知られており、この防振ブッシュ51は船外機におけるドライブシャフト61およびプロペラ71間に介装されるスリーブ52および弾性体53の組み合わせよりなるものとされている。
【0003】
船外機は、エンジンからの動力をドライブシャフト61を経由してプロペラ71へ伝達することで推進力としており、一般的に下記の理由(1)(2)により、ドライブシャフト61およびプロペラ71間に上記スリーブ52および弾性体53の組み合わせよりなる防振ブッシュ51を介在させている。
(1)衝撃緩和:ギアチェンジ時に生じる衝撃を弾性体53の弾性によって緩和するため。
(2)ユニット保護:水上走行中に岩礁等の障害物にプロペラ71が接触することで高トルクが生じた際に一次的に弾性体53およびプロペラ71間でスリップを生じさせ、プロペラ71の破損や動力伝達部への過剰負荷を回避するため。
したがって実際には、エンジンからの動力がドライブシャフト61、防振ブッシュ51のスリーブ52、弾性体53を経由してプロペラ71へ伝達される。
【0004】
上記のとおり、防振ブッシュ51には動力伝達を行う機能が必要とされるため、ドライブシャフト61およびスリーブ52間については、ドライブシャフト61外周面およびスリーブ52内周面の双方にスプライン加工を施してスプライン嵌合することにより動力伝達を行っている。
【0005】
一方、弾性体53およびプロペラ71間については、上記した(2)ユニット保護のため必要時に弾性体53およびプロペラ71間でスリップを生じさせるべく弾性体53およびプロペラ71は互いに非接着であることが必要とされ、このためドライブシャフト61およびプロペラ71間の径方向間隙に防振ブッシュ51を圧入し、弾性体53をスリーブ52およびプロペラ71間に挟み込み、弾性体53の緊迫力により動力伝達を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−149792号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、船外機にはエンジンサイズの違いにより多機種のラインナップが存在し、機種毎にプロペラ71のサイズや防振ブッシュ51に求められる機能(防振ブッシュ51の仕様)が異なることになる。したがって防振ブッシュ51の仕様が異なるのに伴ってその構成部品であるスリーブ52の仕様も異なることになるが、ドライブシャフト61についてはエンジンサイズの近い機種で一定仕様のドライブシャフト61が共用されることが多い。
【0008】
したがって、形状次第で任意の仕様に設定可能であるとともにドライブシャフトへの取付けについてはこれを一定仕様としたスリーブを提供することができれば、当該スリーブを備える防振ブッシュに、一定仕様のドライブシャフトが共用される範囲内での汎用性を持たせることが可能とされる。
【0009】
本発明は以上の点に鑑みて、一定仕様のシャフトが共用される範囲内での汎用性を備える船外機用防振ブッシュを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の防振ブッシュは、船外機におけるシャフトとプロペラの間に介装される防振ブッシュであって、前記シャフトの外周側に非接着で配置される内周スリーブと、前記内周スリーブの外周側に非接着で配置される外周スリーブと、前記外周スリーブの外周側に保持されるとともに前記外周スリーブおよび前記プロペラ間に挟み込まれる弾性体と、前記内周スリーブを前記シャフトに対し回り止めする回り止め手段と、前記外周スリーブを前記内周スリーブに対し回り止めする回り止め手段と、を有し、前記内周スリーブを前記シャフトに対し回り止めする回り止め手段は、スプライン嵌合による回り止め手段であり、前記外周スリーブを前記内周スリーブに対し回り止めする回り止め手段は、多角形状の組み合わせによる回り止め手段であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、スリーブが、シャフトにスプライン嵌合される内周スリーブと、弾性体を保持する外周スリーブの組み合わせよりなるものとされているため、外周スリーブの形状次第によってスリーブに任意の仕様を設定することが可能とされ、その一方で、内周スリーブに一定仕様のスプライン加工を施すことでスリーブ全体を、対応する一定仕様のスプライン加工を施したシャフトに回り止めした状態で取り付けることが可能とされる。したがって、形状次第で任意の仕様に設定可能であるとともにシャフトへの取付けを一定仕様としたスリーブを提供することができ、防振ブッシュに、一定仕様のシャフトが共用される範囲内での汎用性を持たせることができる。
【0012】
また、本発明では、内周スリーブをシャフトに対し回り止めする回り止め手段と、外周スリーブを内周スリーブに対し回り止めする回り止め手段が設けられているため、エンジンからの動力がシャフト、防振ブッシュの内周スリーブ、外周スリーブおよび弾性体を経由してプロペラへ確実に伝達される。
【0013】
また、外周スリーブを内周スリーブに対し回り止めする回り止め手段がスプライン嵌合による回り止め手段ではなく、多角形状の組み合わせによる回り止め手段とされているため、外周スリーブにはスプライン加工を施す必要がなく、内周面を多角形状に加工するのみで良い。したがって外周スリーブの形状を簡略化し、加工を容易化し、部品コストの低減に貢献することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施の形態に係る防振ブッシュの断面斜視図
図2】同防振ブッシュの装着状態を示す断面図
図3】従来例に係る防振ブッシュの装着状態を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1および図2に示すように、実施の形態に係る防振ブッシュ1は、船外機におけるドライブシャフト61(図2)とプロペラ71(図2)の間に介装される船外機用の防振ブッシュ(船外機用プロペラブッシュ)であって、ドライブシャフト61の外周側に非接着で配置される内周スリーブ11と、内周スリーブ11の外周側に非接着で配置される外周スリーブ21と、外周スリーブ21の外周側に保持されるとともに外周スリーブ21およびプロペラ71間に挟み込まれることによりプロペラ71に対する緊迫力を発揮する弾性体31とを有し、内周スリーブ11をドライブシャフト61に対し回り止めする回り止め手段41が設けられ、さらに外周スリーブ21を内周スリーブ11に対し回り止めする回り止め手段42が設けられている。プロペラ71はボス部のみを図示している。
【0016】
内周スリーブ11および外周スリーブ21はそれぞれ所定の金属等の剛材によって成形されている。弾性体31は所定のゴムまたはゴム状弾性体によって成形され、外周スリーブ21の外周面に接着(加硫接着)されることにより外周スリーブ21によって保持されている。
【0017】
内周スリーブ11の内周面にスプライン加工12が施されるとともに、対応してドライブシャフト61の外周面にスプライン加工62が施され、両スプラインが円周方向に係合することにより上記内周スリーブ11をドライブシャフト61に対して回り止めする回り止め手段(内周側回り止め手段)41が設けられている。
【0018】
また、内周スリーブ11の外周面に多角形状13が設けられるとともに、対応して外周スリーブ21の内周面に多角形状23が設けられ、両多角形状13,23が円周方向に係合することにより上記外周スリーブ21を内周スリーブ11に対して回り止めする回り止め手段(外周側回り止め手段)42が設けられている。ここに多角形状13,23とは、内周スリーブ11の外周面および外周スリーブ21の内周面を軸方向一方から視たときにこれら外周面および内周面が多角形状(図では六角形)をなしていることを云い、非円形であることに基づく円周方向係合の構造が設定されることから、回り止め効果を発揮することができる。
【0019】
外周スリーブ21は、内周スリーブ11よりも軸方向長さが大きく形成されているので、内周スリーブ11はその軸方向全長に亙ってスプライン加工12が施されているのに対し、外周スリーブ21はその軸方向一方(シャフト基端側、図では左方)の端部のみにスプライン加工22が施されている。したがって外周スリーブ21の内周面には、軸方向一方の、スプライン加工12が施された部位と、軸方向他方(シャフト先端側、図では右方)の、スプライン加工12が施されていない部位とが併設されており、後者のスプライン加工12が施されていない部位は平滑な円筒面として形成されている。
【0020】
また、両部位の境目に位置して外周スリーブ21の内周面に環状の段差部24が設けられているので、内周スリーブ11はこの段差部24に当接し係合することにより外周スリーブ21に対する軸方向他方へ向けての変位が規制される。尚、防振ブッシュ1は全体として装着時にナット81により締結されるので、内周スリーブ11はこのナット81による締結により外周スリーブ21に対する軸方向一方へ向けての変位が規制される。
【0021】
ドライブシャフト61の外周面には、上記したスプライン加工62が設けられ、また防振ブッシュ1全体を軸方向他方へ向けて位置決めするための環状の段差部63が設けられている。
【0022】
符号91は、段差部63および防振ブッシュ1間に介装されるワッシャ、符号92は、防振ブッシュ1およびナット81間に介装されるワッシャをそれぞれ示している。
【0023】
上記構成を備える防振ブッシュ1においては、その構成部品であるスリーブが、ドライブシャフト61にスプライン嵌合される内周スリーブ11と、弾性体31を保持する外周スリーブ21の組み合わせよりなるものとされ、すなわちスリーブが内外周に2分割されているために、外周スリーブ21の形状(外径や軸方向長さ)次第によってスリーブに任意の仕様を設定することが可能とされ、その一方で、内周スリーブ11に一定仕様のスプライン加工12を施すことでスリーブ全体を、対応する一定仕様のスプライン加工62を施したドライブシャフト61に回り止めした状態で取り付けることが可能とされている。
【0024】
したがって、形状次第で任意の仕様に設定可能であるとともにドライブシャフト61への取付けを一定仕様としたスリーブを提供することができ、防振ブッシュ1に、一定仕様のドライブシャフト61が共用される範囲内で、防振ブッシュ製品としての汎用性を持たせることができる。
【0025】
内周スリーブ11は、ドライブシャフト61を共用している範囲内で船外機の全機種での共用が可能となり、防振ブッシュ1への要求仕様が異なりスリーブ仕様の変更が必要な際には、比較的簡易な形状の外周スリーブ21の仕様を変更することにより対応が可能となる。
【0026】
また、上記構成の防振ブッシュ1では、内周スリーブ11をドライブシャフト61に対し回り止めする回り止め手段41と、外周スリーブ21を内周スリーブ11に対し回り止めする回り止め手段42が設けられているため、エンジンからの動力がドライブシャフト61、防振ブッシュ1の内周スリーブ11、外周スリーブ21および弾性体31を経由してプロペラ71へ確実に伝達される。
【0027】
また、上記構成の防振ブッシュ1では、外周スリーブ21を内周スリーブ11に対し回り止めする回り止め手段42がスプライン嵌合による回り止め手段ではなく、多角形状13,23の組み合わせによる回り止め手段とされているため、外周スリーブ21にはスプライン加工を施す必要がなく、外周スリーブはその内周面を多角形状23に加工するのみで良い。したがって外周スリーブ21にスプライン加工を施す場合と比較して外周スリーブ21の形状を簡略化し、加工を容易化し、部品コストを低減させることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 防振ブッシュ
11 内周スリーブ
12,62 スプライン加工
13,23 多角形状
21 外周スリーブ
24,63 段差部
31 弾性体
41,42 回り止め手段
61 ドライブシャフト
71 プロペラ
81 ナット
91,92 ワッシャ
図1
図2
図3