(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記摺動部における前記メインスプールの内部空間側の部分には、前記第2連通口に臨むくり抜き部が設けられていることを特徴とする請求項2または3記載の産業車両の油圧駆動装置。
前記摺動部における前記メインスプールの内部空間とは反対側の部分と前記メインスプールとの間には、前記フローレギュレータスプールと前記メインスプールとの相対的な回転を規制する回転規制部材が配置されていることを特徴とする請求項4記載の産業車両の油圧駆動装置。
前記メインスプールまたは前記摺動部における前記摺動部の軸心に対して前記回転規制部材の反対側に対応する位置には、前記フローレギュレータスプールの偏心を防止する偏心防止溝が設けられていることを特徴とする請求項5記載の産業車両の油圧駆動装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術においては、メインスプールを制御する2つの電磁比例弁がメインスプールの外部に配置されているため、回生制御用弁ブロックの体格の増大及びコストアップを招く。
【0005】
本発明の目的は、省スペース化及び低コスト化を図ることができる産業車両の油圧駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る産業車両の油圧駆動装置は、作動油を貯留するタンクと、作動油を吸い込む吸込口と作動油を吐出する吐出口とを有する油圧ポンプと、油圧ポンプの吐出口から吐出される作動油により駆動される油圧シリンダと、油圧ポンプ及びタンクと油圧シリンダとの間に配置され、油圧シリンダを駆動するための操作手段の操作状態に応じて作動油が流れる方向を切り換える方向切換弁とを備え、方向切換弁は、ハウジングと、操作手段の操作状態に応じてハウジングに対して移動するメインスプールと、メインスプールの内部に配置され、油圧シリンダからタンクに流れる作動油の流量を制御するフローレギュレータとを有し、フローレギュレータは、メインスプールに対してメインスプールの移動方向に移動可能なフローレギュレータスプールを有し、ハウジングには、油圧シリンダと接続された第1作動油流路と、タンクと接続された第2作動油流路とが設けられており、フローレギュレータスプールには、フローレギュレータスプールを閉じる側に作用するパイロット圧を導くパイロット通路が設けられており、メインスプールには、第1作動油流路とメインスプールの内部空間とを連通させる第1連通口と、第2作動油流路とメインスプールの内部空間とを連通させる第2連通口と、第1作動油流路とパイロット通路とを連通させる第3連通口とが設けられていることを特徴とする。
【0007】
このような油圧駆動装置においては、油圧シリンダからタンクに流れる作動油の流量を制御するフローレギュレータは、操作手段の操作状態に応じてハウジングに対して移動するメインスプールの内部に配置されている。このため、メインスプールを制御するパイロット用の電磁比例弁等をメインスプールの外部に配置しなくて済む。また、フローレギュレータでは、フローレギュレータスプールを閉じる側に作用するパイロット圧とフローレギュレータスプールを開く側に作用するパイロット圧との圧力差に応じて、フローレギュレータスプールの開度が変化することで、油圧シリンダからタンクに流れる作動油の流量が変化する。ここで、フローレギュレータスプールを閉じる側に作用するパイロット圧を導くパイロット通路は、フローレギュレータスプールに設けられている。従って、パイロット通路をハウジングに設けなくて済むため、その分だけハウジングが小型になる。以上により、油圧駆動装置の省スペース化及び低コスト化を図ることができる。
【0008】
フローレギュレータスプールは、メインスプールに対して摺動する円柱状の摺動部を有し、パイロット通路は、摺動部の内部に設けられ、摺動部におけるメインスプールの内部空間とは反対側の端まで摺動部の軸方向に延びる貫通孔であってもよい。このような構成では、パイロット通路は、メインスプールに対する摺動部の摺動性に影響を与えることなく、フローレギュレータスプールを閉じる側に作用するパイロット圧を導くことが可能となる。
【0009】
フローレギュレータスプールは、メインスプールに対して摺動する円柱状の摺動部を有し、パイロット通路は、摺動部の周面に設けられ、摺動部におけるメインスプールの内部空間とは反対側の端まで摺動部の軸方向に延びる溝部であってもよい。このような構成では、摺動部に対するパイロット通路の加工が容易に行える。
【0010】
摺動部におけるメインスプールの内部空間側の部分には、第2連通口に臨むくり抜き部が設けられていてもよい。このような構成では、例えばパイロット通路を確保するために摺動部の軸方向寸法を大きくしても、くり抜き部によってメインスプールの内部空間と第2連通口とを単純な構造で且つ確実に連通させることができる。
【0011】
摺動部におけるメインスプールの内部空間とは反対側の部分とメインスプールとの間には、フローレギュレータスプールとメインスプールとの相対的な回転を規制する回転規制部材が配置されていてもよい。このような構成では、摺動部にくり抜き部が設けられていることで、摺動部の摺動時にフローレギュレータスプールとメインスプールとが相対的に回転しやすくなっても、回転規制部材によってフローレギュレータスプールとメインスプールとの相対的な回転が防止される。
【0012】
メインスプールまたは摺動部における摺動部の軸心に対して回転規制部材の反対側に対応する位置には、フローレギュレータスプールの偏心を防止する偏心防止溝が設けられていてもよい。このような構成では、回転規制部材によりフローレギュレータスプールに作用する圧力がアンバランスになり、フローレギュレータスプールが偏心しようとしても、偏心防止溝によって圧力アンバランスが相殺される。従って、フローレギュレータスプールの偏心が防止されるため、摺動部の摺動性が向上する。
【0013】
本発明の他の態様に係る産業車両の油圧駆動装置は、作動油を貯留するタンクと、作動油を吸い込む吸込口と作動油を吐出する吐出口とを有する油圧ポンプと、油圧ポンプの吐出口から吐出される作動油により駆動される油圧シリンダと、油圧ポンプ及びタンクと油圧シリンダとの間に配置され、油圧シリンダを駆動するための操作手段の操作状態に応じて作動油が流れる方向を切り換える方向切換弁とを備え、方向切換弁は、ハウジングと、操作手段の操作状態に応じてハウジングに対して移動するメインスプールと、メインスプールの内部に配置され、油圧シリンダからタンクに流れる作動油の流量を制御するフローレギュレータとを有し、フローレギュレータは、メインスプールに対してメインスプールの移動方向に移動可能なフローレギュレータスプールを有し、ハウジングには、油圧シリンダと接続された第1作動油流路と、タンクと接続された第2作動油流路と
、油圧ポンプの吸込口と接続された第3作動油流路とが設けられており、メインスプールには、フローレギュレータスプールを閉じる側に作用するパイロット圧を導くパイロット通路と、第1作動油流路とメインスプールの内部空間とを連通させる第1連通口と、第2作動油流路とメインスプールの内部空間とを連通させる第2連通口と、第1作動油流路とパイロット通路とを連通させる第3連通口と
、第3作動油流路とメインスプールの内部空間とを連通させる第4連通口とが設けられていることを特徴とする。
【0014】
このような油圧駆動装置においては、油圧シリンダからタンクに流れる作動油の流量を制御するフローレギュレータは、操作手段の操作状態に応じてハウジングに対して移動するメインスプールの内部に配置されている。このため、メインスプールを制御するパイロット用の電磁比例弁等をメインスプールの外部に配置しなくて済む。また、フローレギュレータでは、フローレギュレータスプールを閉じる側に作用するパイロット圧とフローレギュレータスプールを開く側に作用するパイロット圧との圧力差に応じて、フローレギュレータスプールの開度が変化することで、油圧シリンダからタンクに流れる作動油の流量が変化する。ここで、フローレギュレータスプールを閉じる側に作用するパイロット圧を導くパイロット通路は、メインスプールに設けられている。従って、パイロット通路をハウジングに設けなくて済むため、その分だけハウジングが小型になる。以上により、油圧駆動装置の省スペース化及び低コスト化を図ることができる。
【0015】
また、油圧シリンダからの作動油が第3作動油流路を通って油圧ポンプの吸込口に供給されることで油圧ポンプが回転する、いわゆるエネルギー回生動作を実施することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、油圧駆動装置の省スペース化及び低コスト化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して詳細に説明する。なお、図面において、同一または同等の要素には同じ符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る産業車両の油圧駆動装置を示す油圧回路図である。
図1において、本実施形態の油圧駆動装置1は、産業車両であるフォークリフト2に搭載されている。
【0020】
油圧駆動装置1は、タンク3と、油圧ポンプ4と、PSシリンダ5(パワーステアリングシリンダ)と、PSバルブ6(パワーステアリングバルブ)と、リフトシリンダ7と、ティルトシリンダ8と、荷役用バルブユニット9とを備えている。
【0021】
タンク3は、作動油を貯留する。油圧ポンプ4は、作動油を吸い込む吸込口4aと、作動油を吐出する吐出口4bとを有している。吸込口4aは、吸込流路10を介してタンク3と接続されている。吸込流路10には、タンク3側から油圧ポンプ4側への作動油の流れのみを許容する逆止弁11が配設されている。油圧ポンプ4は、電動モータ12により駆動される。
【0022】
PSシリンダ5は、油圧ポンプ4の吐出口4bから吐出される作動油により駆動される両ロッド式の油圧シリンダである。PSバルブ6は、油圧ポンプ4及びタンク3とPSシリンダ5との間に配置され、ステアリングホイール(図示せず)の操作状態に応じて作動油が流れる方向を切り換える方向切換弁である。
【0023】
リフトシリンダ7は、油圧ポンプ4の吐出口4bから吐出される作動油により駆動され、フォーク13を昇降させる油圧シリンダである。ティルトシリンダ8は、油圧ポンプ4の吐出口4bから吐出される作動油により駆動され、マスト(図示せず)を傾動させる油圧シリンダである。
【0024】
荷役用バルブユニット9は、油圧ポンプ4及びタンク3とリフトシリンダ7との間に配置されたリフトバルブ14と、油圧ポンプ4及びタンク3とティルトシリンダ8との間に配置されたティルトバルブ15とを有している。
【0025】
リフトバルブ14は、リフト操作レバー16の操作状態に応じて作動油が流れる方向を切り換える方向切換弁である。リフト操作レバー16は、リフトシリンダ7を伸縮動作させることでフォーク13を昇降させるための操作手段である。リフトバルブ14については、後で詳述する。ティルトバルブ15は、ティルト操作レバー(図示せず)の操作状態に応じて作動油が流れる方向を切り換える方向切換弁である。
【0026】
リフトシリンダ7のボトム室7aとリフトバルブ14とは、共通流路17を介して接続されている。共通流路17は、リフトバルブ14とリフトシリンダ7との間で作動油が双方向に流れる流路である。共通流路17には、自然落下防止弁18が配設されている。自然落下防止弁18は、リフトシリンダ7が自然に収縮することでフォーク13が自然に落下することを防止するバルブである。
【0027】
油圧ポンプ4の吐出口4bとリフトバルブ14とは、供給流路19を介して接続されている。供給流路19は、油圧ポンプ4からリフトバルブ14に作動油が流れる流路である。供給流路19には、油圧ポンプ4側からリフトバルブ14側への作動油の流れのみを許容する逆止弁20が配設されている。供給流路19における油圧ポンプ4と逆止弁20との間には、分流弁21が配設されている。分流弁21は、油圧ポンプ4からの作動油をPS側(PSシリンダ5の側)と荷役側(リフトシリンダ7及びティルトシリンダ8の側)とに分流するバルブである。
【0028】
供給流路19における逆止弁20と分流弁21との間の部分は、排出流路22を介してタンク3と接続されている。排出流路22には、排出流路22の圧力が設定圧以上になると開くリリーフ弁23が配設されている。
【0029】
リフトバルブ14とタンク3とは、排出流路24,22を介して接続されている。排出流路24は、リフトバルブ14からタンク3に作動油が流れる流路である。リフトバルブ14と油圧ポンプ4の吸込口4aとは、回生流路25及び吸込流路10を介して接続されている。回生流路25は、リフトバルブ14から油圧ポンプ4の吸込口4aに作動油が流れる流路である。
【0030】
供給流路19における逆止弁20と分流弁21との間の部分は、供給流路26を介してティルトバルブ15と接続されている。供給流路26には、分流弁21側からティルトバルブ15側への作動油の流れのみを許容する逆止弁27が配設されている。ティルトバルブ15とティルトシリンダ8のボトム室8a及びロッド室8bとは、供給流路28,29を介してそれぞれ接続されている。ティルトバルブ15は、排出流路30,22を介してタンク3と接続されている。
【0031】
リフトバルブ14は、メインスプール31と、このメインスプール31に内蔵されたフローレギュレータ32とを有している。メインスプール31には、上記のリフト操作レバー16が機械的に連結されている。
【0032】
リフトバルブ14は、供給流路19と共通流路17とを連通させる内部流路33と、共通流路17と排出流路24とを連通させる内部流路34と、共通流路17と回生流路25とを連通させる内部流路35とを有している。内部流路35は、内部流路34に分岐して接続されている。
【0033】
フローレギュレータ32は、内部流路34における内部流路35との分岐接続点よりも下流側に配設されている。内部流路34における内部流路35との分岐接続点よりも上流側には、絞り部36が配設されている。内部流路35には、抵抗要素37が配設されている。
【0034】
内部流路34における絞り部36の上流側には、フローレギュレータ32の閉弁方向に作用するパイロット圧を導くパイロット通路38が接続されている。内部流路35における抵抗要素37の上流側には、フローレギュレータ32の開弁方向に作用するパイロット圧を導くパイロット通路39が接続されている。内部流路35における抵抗要素37の下流側には、フローレギュレータ32の開弁方向に作用するパイロット圧を導くパイロット通路40が接続されている。
【0035】
メインスプール31は、共通流路17と供給流路19とを内部流路33を介して連通させると共に、共通流路17と排出流路24及び回生流路25とを遮断する全開位置31aと、共通流路17と排出流路24及び回生流路25とをそれぞれ内部流路34,35を介して連通させると共に、共通流路17と供給流路19とを遮断する全開位置31bとの間で移動可能である。全開位置31aと全開位置31bとの間には、共通流路17と供給流路19、排出流路24及び回生流路25とを遮断する中立位置(全閉位置)31cが存在する。
【0036】
メインスプール31が中立位置31cにある状態(
図1の状態)では、油圧ポンプ4及びタンク3とリフトシリンダ7との間で作動油の流れは生じない。リフト操作レバー16によりメインスプール31を中立位置31cから全開位置31a側に移動させると、油圧ポンプ4の吐出口4bから吐出された作動油が供給流路19、内部流路33及び共通流路17を流れてリフトシリンダ7に供給される。このため、リフトシリンダ7が伸長することで、フォーク13が上昇する。
【0037】
リフト操作レバー16によりメインスプール31を中立位置31cから全開位置31b側に移動させると、フォーク13の自重により収縮したリフトシリンダ7から流れ出た作動油が共通流路17を流れてメインスプール31の内部に入り込む。そして、その作動油は、内部流路34及び排出流路24を流れてタンク3に排出されると共に、内部流路35及び回生流路25を流れて油圧ポンプ4の吸込口4aに供給される。リフトシリンダ7からの作動油が油圧ポンプ4の吸込口4aに供給されると、その作動油により油圧ポンプ4が回転する、いわゆる荷役回生(エネルギー回生)が行われる。
【0038】
図2は、リフトバルブ14の断面図である。
図3(a)は、
図2のIIIa−IIIa線断面図であり、
図3(b)は、
図2のIIIb−IIIb線断面図である。
図2及び
図3において、リフトバルブ14は、ハウジング41と、このハウジング41に対して移動可能に配置された上記のメインスプール31と、このメインスプール31の内部に配置された上記のフローレギュレータ32とを有している。
【0039】
ハウジング41には、作動油流路42〜44が設けられている。作動油流路42は、共通流路17を介してリフトシリンダ7と接続された第1作動油流路である。作動油流路43は、排出流路24を介してタンク3と接続された第2作動油流路である。作動油流路44は、回生流路25及び吸込流路10を介して油圧ポンプ4の吸込口4aと接続された第3作動油流路である。また、ハウジング41には、図示はしないが、供給流路19を介して油圧ポンプ4の吐出口4bと接続された作動油流路が設けられている。ハウジング41とメインスプール31との間には、2つのシールリング45が介在されている。
【0040】
メインスプール31は、円柱状のベース部46と、このベース部46から軸方向(
図2のG方向)に延びる筒状部47とを有している。筒状部47の先端部は、プラグ48で塞がれている。メインスプール31は、リフト操作レバー16の操作状態に応じてハウジング41に対して軸方向に移動する。
【0041】
筒状部47には、作動油流路42とメインスプール31の内部空間S(後述)とを連通させる複数(ここでは6つ)の連通口49(第1連通口)と、作動油流路43とメインスプール31の内部空間Sとを連通させる複数(ここでは6つ)の連通口50(第2連通口)と、作動油流路44とメインスプール31の内部空間Sとを連通させる複数の連通口51(第4連通口)とが設けられている。また、筒状部47には、図示はしないが、油圧ポンプ4の吐出口4bと接続された作動油流路(前述)とメインスプール31の内部空間Sとを連通させる複数の連通口が設けられている。
【0042】
連通口49は、メインスプール31の軸方向において連通口50と連通口51との間に配置されている。連通口49,50は、メインスプール31の周方向において対応する位置に配置されている。連通口49は、メインスプール31において圧力差を発生させる上記の絞り部36(
図1参照)を構成している。
【0043】
筒状部47には、作動油流路42と連通された2つの連通口52(第3連通口)が設けられている。連通口52は、メインスプール31の軸方向において連通口49と連通口50との間に配置されている。連通口52は、メインスプール31の周方向において連通口49,50と異なる位置に配置されている。
【0044】
作動油流路42、連通口49、メインスプール31の内部空間S、連通口50及び作動油流路43は、上記の内部流路34(
図1参照)を構成している。メインスプール31の内部空間S、連通口51及び作動油流路44は、上記の内部流路35(
図1参照)を構成している。
【0045】
フローレギュレータ32は、リフトシリンダ7からタンク3に流れる作動油の流量を制御する。フローレギュレータ32は、メインスプール31に対してメインスプール31の移動方向(軸方向)に移動可能なフローレギュレータスプール53と、このフローレギュレータスプール53とメインスプール31のベース部46との間に配置されたスプリング54とを有している。
【0046】
フローレギュレータスプール53は、メインスプール31の筒状部47に対して摺動する円柱状の摺動部55と、この摺動部55からベース部46側に向かって延びる円柱状のロッド部56と、このロッド部56の周面に鍔状に突設された上記の抵抗要素37(
図1参照)とを有している。
【0047】
フローレギュレータスプール53とメインスプール31のベース部46及び筒状部47の内壁面とで画成される空間は、メインスプール31の内部空間Sを構成している。つまり、メインスプール31の内部空間Sは、メインスプール31の内部における摺動部55よりもスプリング54側の空間をいう。
【0048】
抵抗要素37は、メインスプール31の内部空間Sを連通口49側から連通口51側に流れる作動油に圧力損失を発生させる。また、抵抗要素37は、スプリング54を受ける機能も有している。このため、抵抗要素37の径は、スプリング54の径よりも大きい。
【0049】
メインスプール31の内部空間Sにおける摺動部55と抵抗要素37との間、つまりメインスプール31の内部空間Sにおける抵抗要素37の上流側は、リフトシリンダ7からタンク3に作動油が流れるときに、フローレギュレータスプール53を開く側(
図2の左側)に作用するパイロット圧を導く上記のパイロット通路39(
図1参照)を構成している。メインスプール31の内部空間Sにおける抵抗要素37とベース部46との間、つまりメインスプール31の内部空間Sにおける抵抗要素37の下流側は、リフトシリンダ7からタンク3に作動油が流れるときに、フローレギュレータスプール53を開く側に作用するパイロット圧を導くパイロット通路40(
図1参照)を構成している。つまり、パイロット通路39,40は、連通口50を開く側に作用するパイロット圧を導く。
【0050】
摺動部55には、リフトシリンダ7からタンク3に作動油が流れるときに、フローレギュレータスプール53を閉じる側(
図2の右側)に作用するパイロット圧を導く上記のパイロット通路38(
図1参照)が設けられている。つまり、パイロット通路38は、連通口50を閉じる側に作用するパイロット圧を導く。上記の連通口52は、作動油流路42とパイロット通路38とを連通させる。
【0051】
パイロット通路38は、摺動部55の内部に設けられた貫通孔57として構成されている。貫通孔57は、各連通口52とそれぞれ連通する2つの開口部58と、各開口部58同士を接続するように摺動部55の径方向に延びる通路部59と、この通路部59に接続され、摺動部55の軸方向に延びる通路部60とを有している。開口部58の幅寸法(軸方向寸法)は、連通口52の幅寸法よりも大きい。通路部60は、摺動部55の径方向中心部に設けられ、摺動部55の基端(摺動部55におけるメインスプール31の内部空間Sとは反対側の端)まで延びている。
【0052】
摺動部55の先端側部分(摺動部55におけるメインスプール31の内部空間S側の部分)には、
図3及び
図4に示されるように、2つの半円柱状のくり抜き部61が設けられている。なお、
図4(a)は、フローレギュレータスプール53の側面図であり、
図4(b)は、フローレギュレータスプール53の平面図である。
【0053】
くり抜き部61は、各連通口50に臨むように半円柱状にくり抜き加工されている。これにより、各連通口50とメインスプール31の内部空間Sとが連通可能となる。摺動部55には、2つのくり抜き部61により先端側に突出した突起部62が形成されている。ロッド部56は、突起部62の先端から延びている。
【0054】
このようなフローレギュレータ32は、メインスプール31で生じる圧力差、具体的にはメインスプール31の連通口49(絞り部36)の上流側及び下流側の圧力差により駆動され、その圧力差を一定に保つように作動油流路43を流れる作動油の流量(バイパス流量)を制御する。このとき、連通口49の上流側及び下流側の圧力差に応じて、フローレギュレータスプール53の開度が変化し、バイパス流量が変化する。連通口49(絞り部36)の上流側及び下流側の圧力差は、パイロット通路38のパイロット圧とパイロット通路39のパイロット圧との圧力差に相当する。フローレギュレータスプール53の開度は、連通口50の開度のことである。
【0055】
フローレギュレータスプール53の摺動部55の基端側部分とメインスプール31の筒状部47との間には、回転規制部材63が配置されている。摺動部55にはくり抜き部61が設けられているため、筒状部47に対して摺動部55が摺動するときに、フローレギュレータスプール53とメインスプール31との相対的な回転位相ずれが発生しやすくなる。回転規制部材63は、フローレギュレータスプール53とメインスプール31との相対的な回転を規制する部材である。回転規制部材63は、例えば金属で形成された球体である。なお、回転規制部材63としては、立方体または直方体等であってもよい。
【0056】
摺動部55の基端側部分の周面には、回転規制部材63の一部が嵌まる凹部64が設けられている。凹部64は、摺動部55の周方向において1つの開口部58に対応する位置に配置されている。
【0057】
筒状部47の内周面における凹部64に対応する位置には、
図5にも示されるように、凹部64に嵌まる回転規制部材63を受ける受け溝65が設けられている。受け溝65は、筒状部47の軸方向に延びている。なお、
図5は、メインスプール31の正面図である。
【0058】
筒状部47の内周面における筒状部47の軸心(摺動部55の軸心)に対して受け溝65の反対側には、筒状部47の軸方向に延びる偏心防止溝66が設けられている。つまり、偏心防止溝66は、筒状部47の内周面における摺動部55の軸心に対して回転規制部材63の反対側に対応する位置に設けられている。筒状部47と摺動部55との間に回転規制部材63が配置されていることで、フローレギュレータスプール53の摺動部55に作用する圧力が摺動部55の周方向においてアンバランスになる。このため、フローレギュレータスプール53に偏心方向の力が発生しやすくなる。偏心防止溝66は、フローレギュレータスプール53の偏心を防止するための溝である。
【0059】
以上のように本実施形態にあっては、リフトシリンダ7からタンク3に流れる作動油の流量を制御するフローレギュレータ32は、リフト操作レバー16の操作状態に応じてハウジング41に対して移動するメインスプール31の内部に配置されている。このため、メインスプール31を制御するパイロット用の電磁比例弁等をメインスプール31の外部に配置しなくて済む。また、フローレギュレータ32では、フローレギュレータスプール53を閉じる側に作用するパイロット圧とフローレギュレータスプール53を開く側に作用するパイロット圧との圧力差に応じて、フローレギュレータスプール53の開度が変化することで、リフトシリンダ7からタンク3に流れる作動油の流量が変化する。ここで、フローレギュレータスプール53を閉じる側に作用するパイロット圧を導くパイロット通路38は、フローレギュレータスプール53に設けられている。従って、パイロット通路38をハウジング41に設けなくて済むため、その分だけハウジング41が小型になる。以上により、油圧駆動装置1の省スペース化及び低コスト化を図ることができる。
【0060】
また、本実施形態では、フローレギュレータスプール53は、メインスプール31に対して摺動する円柱状の摺動部55を有し、パイロット通路38は、摺動部55の内部に設けられ、摺動部55の基端まで摺動部55の軸方向に延びる貫通孔57である。よって、パイロット通路38は、メインスプール31に対する摺動部55の摺動性に影響を与えることなく、フローレギュレータスプール53を閉じる側に作用するパイロット圧を導くことが可能となる。
【0061】
また、本実施形態では、摺動部55の先端側部分には、連通口50に臨むくり抜き部61が設けられている。よって、例えばパイロット通路38を確保するために摺動部55の軸方向寸法を大きくしても、くり抜き部61によってメインスプール31の内部空間Sと連通口50とを単純な構造で且つ確実に連通させることができる。
【0062】
また、本実施形態では、摺動部55の基端側部分とメインスプール31との間には、フローレギュレータスプール53とメインスプール31との相対的な回転を規制する回転規制部材63が配置されている。よって、摺動部55にくり抜き部61が設けられていることで、摺動部55の摺動時にフローレギュレータスプール53とメインスプール31とが相対的に回転しやすくなっても、回転規制部材63によってフローレギュレータスプール53とメインスプール31との相対的な回転が防止される。
【0063】
また、本実施形態では、メインスプール31における摺動部55の軸心に対して回転規制部材63の反対側に対応する位置には、フローレギュレータスプール53の偏心を防止する偏心防止溝66が設けられている。よって、回転規制部材63によりフローレギュレータスプール53に作用する圧力がアンバランスになり、フローレギュレータスプール53が偏心しようとしても、偏心防止溝66によって圧力アンバランスが相殺される。従って、フローレギュレータスプール53の偏心が防止されるため、摺動部55の摺動性が向上する。
【0064】
また、本実施形態では、リフトシリンダ7からの作動油が作動油流路44を通って油圧ポンプ4の吸込口4aに供給されることで油圧ポンプ4が回転する、いわゆる荷役回生動作を実施することができる。
【0065】
さらに、本実施形態では、フォーク13の下降時に、フォーク13に積載された積荷の荷重によらず、パイロット通路38,39のパイロット圧によりフローレギュレータスプール53の開度が自動的に変化するので、フォーク13の下降速度の変動が小さく、操作者の所望の操作フィーリングを得ることができる。また、フォーク13を下降させながら、マストの傾動等の複合動作を行った際に、油圧ポンプ4の回転数が変化しても、パイロット通路38,39のパイロット圧によりフローレギュレータスプール53の開度が自動的に変化するので、フォーク13の下降速度の変動が小さく、操作者の所望の操作フィーリングを得ることができる。
【0066】
図6(a)は、本発明の他の実施形態に係る油圧駆動装置としてリフトバルブの変形例を示す断面図であり、
図6(b)は、
図6(a)のVIb−VIb線断面図である。
図6において、本実施形態は、リフトバルブ14におけるフローレギュレータ32のフローレギュレータスプール53の構造が上述した実施形態と異なる。
【0067】
フローレギュレータスプール53は、上述した実施形態における摺動部55に代えて、摺動部70を有している。摺動部70の先端側部分には、上記の摺動部55と同様に、連通口50に臨む半円柱状のくり抜き部61が設けられている。
【0068】
摺動部70には、リフトシリンダ7からタンク3に作動油が流れるときに、フローレギュレータスプール53を閉じる側(
図6の右側)に作用するパイロット圧を導くパイロット通路38(前述)が設けられている。パイロット通路38は、摺動部70の周面に設けられた2つの溝部71として構成されている。溝部71は、連通口52と連通している。溝部71は、
図7にも示されるように、摺動部70の基端(摺動部70におけるメインスプール31の内部空間Sとは反対側の端)まで延びている。なお、
図7(a)は、フローレギュレータスプール53の側面図であり、
図7(b)は、フローレギュレータスプール53の平面図である。
【0069】
メインスプール31の筒状部47と摺動部70との間には、上記の回転規制部材63が配置されている。摺動部70の周面には、上記の凹部64が設けられている。凹部64は、摺動部70の周方向において溝部71に対して90度ずれた位置に配置されている。また、筒状部47の内周面には、上記の受け溝65及び偏心防止溝66が設けられている。受け溝65及び偏心防止溝66も、筒状部47の周方向において溝部71に対して90度ずれた位置に配置されている。
【0070】
本実施形態においては、パイロット通路38は、摺動部70の周面に設けられ、摺動部70の基端まで摺動部70の軸方向に延びる溝部71である。従って、摺動部70に対するパイロット通路38の加工が容易に行える。
【0071】
図8(a)は、本発明の更に他の実施形態に係る油圧駆動装置としてリフトバルブの別の変形例を示す断面図であり、
図8(b)は、
図8(a)のVIIIb−VIIIb線断面図である。
図8において、本実施形態は、リフトバルブ14におけるメインスプール31及びフローレギュレータ32のフローレギュレータスプール53の構造が上述した実施形態と異なる。
【0072】
メインスプール31は、上述した実施形態における筒状部47に代えて、筒状部75を有している。筒状部75には、上記の連通口49〜52が設けられている。
【0073】
また、筒状部75には、リフトシリンダ7からタンク3に作動油が流れるときに、フローレギュレータスプール53を閉じる側(
図8の右側)に作用するパイロット圧を導くパイロット通路38(前述)が設けられている。パイロット通路38は、筒状部75の内周面に設けられた2つの溝部76として構成されている。溝部76は、連通口52と連通している。
【0074】
各溝部76は、
図9に示されるように、筒状部75の周方向において上記の受け溝65及び偏心防止溝66に対して90度ずれた位置に配置されている。なお、
図9は、メインスプール31の正面図である。
【0075】
フローレギュレータスプール53は、上述した実施形態における摺動部55に代えて、摺動部77を有している。摺動部77の先端側部分には、上記の摺動部55と同様に、連通口50に臨む半円柱状のくり抜き部61が設けられている。ただし、摺動部77には、パイロット通路が設けられていない。
【0076】
本実施形態においては、フローレギュレータスプール53を閉じる側に作用するパイロット圧を導くパイロット通路38は、メインスプール31に設けられている。従って、パイロット通路38をハウジング41に設けなくて済むため、その分だけハウジング41が小型になる。これにより、フローレギュレータ32がメインスプール31の内部に配置されていることと相まって、油圧駆動装置1の省スペース化及び低コスト化を図ることができる。
【0077】
なお、本発明は、上記実施形態には限定されない。例えば上記実施形態では、油圧ポンプ4の荷役回生が行われるが、本発明は、荷役回生機能が無い荷役用バルブユニット9にも適用可能である。荷役回生機能が無い荷役用バルブユニット9に使用されるリフトバルブ14を
図10に示す。
【0078】
図10は、
図2に示されたリフトバルブ14の変形例を示す断面図である。
図10において、ハウジング41には、上記の作動油流路42,43が設けられているが、上記の作動油流路44は設けられていない。メインスプール31には、上記の連通口49,50,52が設けられているが、上記の連通口51は設けられていない。
【0079】
また、上記実施形態では、フローレギュレータスプール53の偏心を防止する偏心防止溝66は、メインスプール31の筒状部47における筒状部47の軸心に対して回転規制部材63の反対側に対応する位置に設けられているが、特にその形態には限られず、フローレギュレータスプール53の摺動部における摺動部の軸心に対して回転規制部材63の反対側に対応する位置に偏心防止溝が設けられていてもよい。
【0080】
また、上記実施形態では、リフトバルブ14は、リフト操作レバー16がメインスプール31に機械的に連結された手動式の方向切換弁であるが、リフトバルブ14としては、特にその形態には限られず、例えば電磁パイロット式の方向切換弁であってもよい。
【0081】
また、上記実施形態の油圧駆動装置1は、電動式のフォークリフト2に搭載されているが、本発明は、エンジン式のフォークリフトにも適用可能である。また、本発明は、アタッチメントを備えたフォークリフトにも適用可能である。
【0082】
また、上記実施形態では、油圧ポンプ4及びタンク3とリフトシリンダ7との間に、メインスプール31及びフローレギュレータ32を有するリフトバルブ14が配置されているが、本発明は、油圧ポンプ及びタンクと油圧シリンダとの間に方向切換弁が配置されているフォークリフト以外の産業車両にも適用可能である。