(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
鼻甲介の炎症の治療で使用するための生体分解性の薬剤溶出性中実インプラントであって、一定の長さ、および、前記一定の長さに沿う1つまたは複数のインプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を有し、ニードル内に配置されるかまたはニードルに取り付けられ、前記インプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分は鼻甲介の粘膜組織の中の粘膜下に埋設されるように構成される、インプラント。
前記薬剤が、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、抗ヒスタミン薬、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、キマーゼ阻害剤、シクロオキシゲナーゼ2(COX−2)阻害薬、充血除去剤、基質メタロプロテイナーゼ(MMP)阻害薬、粘液溶解薬、オピオイド類、医用高分子、または、それらの組み合わせを含む、請求項4に記載のデバイスまたはインプラント。
鼻甲介組織の中の粘膜下に前記インプラントを埋設するのに必要となる、力×距離の積として表される仕事量が、前記埋設されるインプラントを前記鼻甲介組織から取り外すのに必要となる仕事量未満であり、前記インプラントを鼻甲介組織の中の粘膜下に埋設するのに必要となる最大の力が、前記埋設されるインプラントを前記鼻甲介組織から取り外すのに必要となる最大の力より小さい、請求項1から8のいずれか一項に記載のデバイスまたはインプラント。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
[0005]鼻甲介は、空気、呼気、粘液および他の流体に晒される。鼻甲介は、正常呼吸中、くしゃみ中、または、鼻をかむ際に、膨張したり、振動したり、あるいは、他の形で形状を変化させたりまたは動いたりする可能性があり、また、異物または他のごみを取り除く際には、繊毛および他の自然な防御物を利用することができる。これらのファクタが薬剤溶出性デバイスを押し出す可能性があるかまたは薬剤溶出性デバイスを押し出すのを促進する可能性がある。薬剤溶出性デバイスは縫合糸を使用して配置および保持され得るが、これを行うことは余分なステップを意味しており、また、鼻甲介の外科手技中に外傷が加えられることを意味する可能性もある。
【0006】
[0006]本発明は、一態様で、手術デバイスを提供し、この手術デバイスが、
(a)患者の外部で握持されるように構成される近位側グリップ部分と、
(b)グリップ部分を使用して操作されるように、および、患者の鼻甲介の粘膜組織(mucosal turbinate tissue)の中の粘膜下に挿入されるように構成される遠位側の鋭利な中空ニードル部分と、
(c)中空ニードル部分内に配置される1つまたは複数の生体分解性の薬剤溶出性中実インプラントであって、中空ニードル部分に沿う一定の長さ、および、この一定の長さに沿う1つまたは複数のインプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分(implant withdrawal−discouraging, mucosal tissue−engaging surface feature)を有する、1つまたは複数の生体分解性の薬剤溶出性中実インプラントと、
(d)インプラントのうちの1つまたは複数を、中空ニードル部分からその鼻甲介の粘膜組織の中へ送達するように、および、少なくとも1つのその組織係合特徴部分を鼻甲介の粘膜組織の中の粘膜下に埋設するように構成される、デバイス内に配置されるアクチュエータと
を備える。
【0007】
[0007]本発明は、別の態様で、鼻甲介の炎症の治療で使用するための生体分解性の薬剤溶出性中実インプラントを提供し、このインプラントが、一定の長さ、および、この一定の長さに沿う1つまたは複数のインプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を有し、インプラントが、ニードル内に配置されるかまたはニードルに取り付けられる。
【0008】
[0008]本発明は、さらに別の態様で、副鼻洞の治療のための方法を提供し、この方法が、
手術デバイスを提供するステップであって、手術デバイスが、
(a)患者の外部で握持されるように構成される近位側グリップ部分、
(b)グリップ部分を使用して操作されるように、および、患者の鼻甲介の粘膜組織の中の粘膜下に挿入されるように構成される遠位側の鋭利な中空ニードル部分、
(c)中空ニードル部分内に配置される1つまたは複数の生体分解性の薬剤溶出性中実インプラントであって、中空ニードル部分に沿う一定の長さ、および、この一定の長さに沿う1つまたは複数のインプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を有する、1つまたは複数の生体分解性の薬剤溶出性中実インプラント、ならびに、
(d)インプラントのうちの1つまたは複数を、中空ニードル部分からその鼻甲介の粘膜組織の中へ送達するように、および、少なくとも1つのその組織係合特徴部分を鼻甲介の粘膜組織の中の粘膜下に埋設するように構成される、デバイス内に配置されるアクチュエータ
を備えるステップと、
その鼻甲介の粘膜組織に穴を開けてその鼻甲介の粘膜組織の中の粘膜下に中空ニードル部分を挿入するようにグリップ部分を操作するステップと、インプラントのうちの1つまたは複数を、中空ニードル部分から柔らかい粘膜組織の中へ送達するために、および、少なくとも1つのその組織係合特徴部分を粘膜組織の中の粘膜下に埋設するために、アクチュエータを起動するステップと
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】[0010]開示される薬剤溶出性インプラントを鼻甲介の粘膜組織の中に移植するための手術デバイスを示す分解図である。
【
図3】[0011]複数の開示される薬剤溶出性インプラントが内部に配置される、鼻甲介組織の中に挿入される
図2のデバイスの遠位側ニードル端部を示す断面図である。
【
図4A】[0012]インプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を備える例示の薬剤溶出性インプラントを示す側断面図である。
【
図4B】インプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を備える例示の薬剤溶出性インプラントを示す側断面図である。
【
図4C】インプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を備える例示の薬剤溶出性インプラントを示す側断面図である。
【
図4D】インプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を備える例示の薬剤溶出性インプラントを示す側断面図である。
【
図4E】インプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を備える例示の薬剤溶出性インプラントを示す側断面図である。
【
図4F】インプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を備える例示の薬剤溶出性インプラントを示す側断面図である。
【
図4G】インプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を備える例示の薬剤溶出性インプラントを示す側断面図である。
【
図4H】インプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を備える例示の薬剤溶出性インプラントを示す側断面図である。
【
図4I】インプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を備える例示の薬剤溶出性インプラントを示す側断面図である。
【
図4J】インプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を備える例示の薬剤溶出性インプラントを示す側断面図である。
【
図4K】インプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を備える例示の薬剤溶出性インプラントを示す側断面図である。
【
図4L】インプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を備える例示の薬剤溶出性インプラントを示す側断面図である。
【
図5】[0013]縫合ニードルに取り付けられた生体分解性の薬剤溶出性縫合糸材料を示す図である。
【
図6】[0014]実施例3で評価される薬剤溶出を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0015]図面の種々の図の同様の参照符号は同様の要素を示す。図面中の要素は正確な縮尺ではない。
[0016]以下の詳細な説明は特定の実施形態を考察するが、限定的な意味で解釈されない。特に明記しない限り、本明細書におけるすべての重量、量および比は重量によるものである。
【0011】
[0017]
図1は患者1の鼻腔および副鼻洞通路の概略図である。目4および鼻孔6がこの図に含まれ、上顎洞8および近くの鼻甲介10、20、30、40、50および60のロケーションおよびサイズを視覚化するのを補助する。上鼻甲介10、中鼻甲介20および下鼻甲介30が
図1の左側に、また患者1の視点では患者の正中線の右側に位置し、通常の非膨張状態にある。上鼻甲介40、中鼻甲介50および下鼻甲介60が
図1の右側に、また患者1の視点では患者の正中線の左側に位置し、各々が、正常呼吸に干渉する可能性があるような正常ではない膨張状態にある。慢性鼻副鼻腔炎(CRS:chronic rhinosinusitis)を持つ成人患者では、鼻甲介が例えば約1cmの厚さおよび3〜4cmの長さを有するくらいに十分に膨張する可能性がある。CRSを持つ小児の患者では、その対応する寸法は、例えば、約0.5cmの厚さおよび約2〜3cmの長さの可能性がある。開示される手術デバイスは、例えば、粘膜下に(つまり、粘膜表面の下)、および、このような膨張した組織内に、適合するようにサイズ決定され得る。
【0012】
[0018]
図2および
図3を参照すると、例示の手術デバイス100が好都合には、後でより詳細に考察される金属のニードル部分と共成形される、射出成形される耐滅菌性の熱可塑性物質から作られ得る。例示の熱可塑性物質には、ABS、ナイロン、ポリカーボネート、ポリスチレン、および、当業者にはよく知られているであろう他の材料が含まれる。デバイス100が、医者のグローブをした手のひらの中で受けられるように整形およびサイズ決定される近位側ピストルグリップ部分202を有する。ハンドル202内の複数の任意選択のリブ204が成形プロセスにおいてプラスチックを一様に分布させるのを促進し、改善されたグリップ表面を提供する。ハンドル202はまた、医者が親指によりバレル210内の開口部208に向かう力を容易に加えることができるように、整形およびサイズ決定される。バレル210がハンドル202から延在し、ニードル保持・位置合わせ部分212に接続され、ニードル保持・位置合わせ部分212が遠位端214のところで終端する。部分212が
図1に示されるように湾曲していてよいかまたは他の形で曲がっていてよく、あるいは、鼻甲介上の標的部位の近くの適切な位置まで遠位端214を操作するのを容易にするための他の形状(例えば、直線形状)を有してもよい。中空ニードル216が遠位端214から突出し、鼻甲介の粘膜組織に穴を開けるのに使用され得る鋭利な遠位側先端部218を有する。ニードル216は
図1に示されるような直線であってよいか、あるいは、先端部218を鼻甲介の粘膜組織の中に挿入するのを容易にするための他の形状であってもよい(例えば、湾曲しているかまたは他の形で曲げられている)。挿入マーク220、222および224の任意選択の深さが、ニードル216を組織の中へどの程度挿入したかを判断するためのインジケータを提供する。別の実施形態では(
図2では図示せず)、ニードル216またはデバイス100の他の適切な部分が、デバイス100の使用中の視覚化およびナビゲーションを補助するために、このニードルまたは他の部分の中に、あるいは、このニードルまたは他の部分上のコーティングの中に、着色剤、放射線不透過性または放射線透過性のフィラー、あるいは、他の添加物を有することができる。
【0013】
[0019]ニードル保持・位置合わせ部分212およびニードル216の長さおよび形状は、1つの鼻甲介(例えば、上鼻甲介、中鼻甲介、または、下鼻甲介)のみにアクセスするためにデバイス100を最適に使用するように、または、2つ以上の鼻甲介(例えば、上鼻甲介および中鼻甲介、中鼻甲介および下鼻甲介、または、上鼻甲介、中鼻甲介、下鼻甲介の各々)にアクセスするためにデバイス100を使用し得るように、選択され得る。デバイス100はまた、例えば、成人もしくは小児の患者、または、獣医の治療を受けている動物(例えば、牛、馬、羊、豚、犬または猫)での使用のために、多様な形状およびサイズで作られ得る。ニードル216(可視部分または露出部分あるいはニードル216、さらには、部分212の中に延在する部分216a、の両方を含む)の例示の長さは、例えば、成人での使用の場合は約5cmから約10cmであってよく、小児での使用の場合は約3cmから約8cmであってよく、また、獣医による使用の場合は選択される動物に応じて、より短いか、同等であるかまたはより長くてよい。ニードル216の露出部分は、例えば、成人での使用の場合は約2cmから約5cmまたは約2cmから約4cmの長さを有してよく、小児での使用の場合は約1cmから約3cmまたは約1cmから約2cmの長さを有してよく、また、獣医による使用の場合は、より短いか、同等であるかまたはより長い長さを有してよい。ニードル216は、例えば、約0.23mmから約4.6mmまたは約0.23mmから約1.7mmの外径、および、約0.1mmから約3.8mmまたは約0.1mmから約1.2mmの内径を有することができ、これは、37ゲージから7ゲージまたは32ゲージから16ゲージまでのNeedle Wire Gauge値に近似的に対応する。
【0014】
[0020]
図2に示される実施形態では、バレル210が、その軸方向の範囲に沿って離間される、医者から見てバレル210の左側に沿う3つの開口部226、228および230と、医者から見てバレル210の右側にある任意選択の3つの同様の反対側の開口部(
図2では図示せず)とを有する。
図2のデバイスが、
図2の分解図ではニードル216の外側に示される1つまたは2つの同様のまたは異なるインプラント232aおよび232bの供給を受けることができ、これらは、
図3の断面図では、ニードル216の内部で端部同士が接触する形で軸方向に積み重ねられて示されている。インプラント232aおよび232bが、後でより詳細に考察されるように、その長さ方向に沿って1つまたは複数のインプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を有する。先端部218を覆うための保護キャップ234がデバイス100に含まれてよい。
【0015】
[0021]当業者には認識されるであろうが、
図2および
図3に示される実施形態は、例えば、ニードル216の内部で軸方向に位置するような3つ以上のインプラントといったように、任意の所望の数のインプラントを医者に供給するように変更され得る。開口部226および228の間の間隔が、望ましくは、インプラント232aの軸方向長さに一致し、開口部228および230の間の間隔が、望ましくは、インプラント232bの軸方向長さに一致する。
図2および3に示される実施形態の場合、インプラント232aおよび232bの軸方向長さ、開口部226および228の間の間隔、ならびに、開口部228および230の間の間隔はすべて等しいが、これは必須ではない。開口部226、228および230が、後でより詳細に考察するように、ニードル216を通る1つまたは複数のインプラントの進み具合の、視覚フィードバック、可聴フィードバックおよび触覚フィードバックのうちの1つまたは複数、好適にはそれらの各々を医者に提供するためにスライダ機構300と協働する。
【0016】
[0022]スライダ機構300が、孔208内で摺動可能に受けられるようにサイズ決定される略円筒形ボディ302を有する。ボディ302が、ハンドル202を握持する医者の親指によって操作されるように配置される近位側親指タブ304を有する。可撓性ピン306がボディ302の遠位端から軸方向遠位側に延在し、
図2の想像線で示されるように、部分212内の対応する開口部308を通過するようにサイズ決定される。1つまたは複数の可撓性レバーアーム310(
図2の実施形態では2つが示されている)がピン306から側方および後方に突出し、1つまたは複数のラッチ312のところで終端する。位置決めタブ314、および、例えばスライダ機構300の右側に位置してよい任意選択の別の位置決めタブ(
図2では図示せず)が、ボディ302から側方および外側に突出する。1つまたは複数のラッチ312およびタブ314が、バレル210の側部に沿って軸方向に位置する1つまたは複数の内部凹形スロット316により摺動可能に受けられるようにサイズ決定される。1つまたは複数のラッチ312がさらに、ボディ302がバレル210の孔208を通るときに、開口部226、228および230、および、バレル210の右側の任意選択の同様の開口部の中まで拡大してそれらに係合されるようにサイズ決定される。1つまたは複数のラッチ312が、孔208の中にボディ302を挿入することおよび親指タブ304への親指の加圧によりボディ302を遠位側へ前進させることを可能にするように整形およびサイズ決定される。前進時、ボディ302が、開口部226内でのラッチ312の係合時の位置から、開口部228内でのそのラッチ312の係合時の位置まで、あるいは、開口部228内でのラッチ312の係合時の位置から、開口部230内でのそのラッチ312の係合時の位置まで、移動することができる。1つまたは複数のラッチ312がさらに、ラッチ位置が開口部226、228または230のところに到達したときに孔208からボディ302を引く前に1つまたは複数のラッチ312が内側へと押圧されない限り、ラッチ位置が孔208から近位側に後退させられ得ないように、整形およびサイズ決定される。
【0017】
[0023]医者へと供給されるとき、望ましくはボディ302が孔208の中に既に挿入されており、その結果、1つまたは複数のラッチ312および1つまたは複数のタブ314が1つまたは複数の凹部316内に載置される。ボディ302がさらに、望ましくは、ピン306の遠位端を最も近いインプラントの近位端に接触させるように十分に孔208の中へと前進させられる。例えば、インプラント232aのような1つのインプラントのみがデバイス100内に提供される場合、ピン306の遠位端がこのようなインプラントの近位端に接触することができる。
図3に示されるようにインプラント232aおよび232bのような2つのインプラントがデバイス100内に提供される場合、ピン306の近位端307が、最も後方に位置するインプラント232bの近位端233の接触することができる。医者に供給されるときにデバイス100内に1つのインプラントのみが提供される場合、ラッチ312が望ましくは開口部228に係合され、医者に供給されるときにデバイス100内に2つのインプラントが提供される場合、ラッチ312が望ましくは開口部226に係合される。上で言及した任意選択の右側のラッチおよび開口部が採用される場合、望ましくは同様の係合が存在する。さらに、デバイス100を使用するための医者の準備が整うまでボディ302をバレル210の中へ誤って前進させるのを阻止するかあるいは他の形で防止または制限するために取り外し可能なロックプレート320がデバイス100内に設けられ得る。
【0018】
[0024]デバイス100は、通常、デバイス100を含む、密閉され、適切に放射線照射され、加熱され、あるいは、他の形で消毒される、バイアル、ポーチ、バッグ、ボックスまたはトレイなどの無菌パッケージに入れられて医者に提供される。外科手技において医者がデバイス100を使用する時間がくると、デバイス100がこのようなパッケージから取り外され、存在する場合にはカバー234およびロック320が取り外され、ニードル316および部分212が鼻孔のうちの1つに挿入され、グリップ202が、ニードル216により所望の鼻甲介粘膜組織の標的領域に穴を開けるように操作される。例えば、
図3が、呼吸器上皮組織330を通して部分的に挿入されており、インプラント232aの長さの約半分の挿入深さのところで、粘膜組織の突起部332の中の粘膜下に挿入されているニードル216を示す。所望のインプラント挿入深さを達成するのに先端部218を粘膜下にどの程度挿入すべきかを判断するのに、挿入ガイド220、222および224が採用され得る。所望の深さに到達すると、医者がデバイス100の遠位端に向かって親指タブ304を押圧することができ、それによりラッチ312がその時点の開口部226または228から外れて次の開口部228または230に向かって軸方向に移動し、さらに、ピン306の遠位端がニードル216を通してインプラント232aまたは232bを押し込んでニードル先端部218から出し、それにより、少なくとも組織係合特徴部分を含む部分、より好適にはこのようなインプラントの長さの大部分、最も好適にはこのようなインプラントの長さのすべてを、標的の鼻甲介粘膜組織の突起部の中の粘膜下に埋設する。ラッチ312がその時点の開口部226または228から抜けるとき、医者が、組織の中へのインプラントの遠位端の移植が開始されたことの視覚指示、可聴指示または触覚指示を受け取る。インプラントの長さ未満の所望の挿入深さ(例えば、深さインジケータ220または222)のところでニードル216を保持しながら標的組織の中にインプラントを十分に挿入し、少なくとも1つの組織係合特徴部分を標的組織の中の粘膜下に埋設し、次の開口部228または230にラッチ312が到達する前に親指タブ304への加圧を停止し、インプラントを標的部位の後方に留めて部分的に標的部位から周囲の空気充填空洞の中へ突出させるように標的組織からニードル216を後退させることにより、インプラントを粘膜下に部分的に埋設することが実行され得る。例えば、所望の挿入深さ(必須ではないが、インプラント長さより大きい深さであってよい)までニードル216を挿入し、次の開口部228または230にラッチ312が達するまで所望の挿入深さのところでニードル216を保持しながら親指タブ304を押圧し、1つまたは複数のインプラントを周囲の鼻甲介組織の後方に留めて完全に埋設して全体を周囲の鼻甲介組織に接触させるように組織からニードル216を後退させることにより、インプラントを粘膜下に完全に埋設することまたは2つ以上のインプラントを1つの挿入部位の中の粘膜下に埋設することが実行され得る。これを行う際、医者は、次の開口部228または230のところに1つまたは複数のラッチ312が到着することにより提供される視覚指示、可聴指示または触覚指示の補助を受けることができ、この指示がさらに、インプラントの近位端が先端部218を介してニードル216から出たことおよび親指タブ304への加圧が停止され得ることの合図を出す。所望される場合、この加圧が、ボディ302をさらに前進させるように、また、別のインプラントをニードル216から出して標的組織部位の中に完全にまたは部分的に埋設するように、継続され得る。
【0019】
[0025]開示される手術デバイス内の1つのみのインプラントまたはすべてよりも少ないインプラントが使用されている場合、所望される場合にデバイス100が患者から取り出されて廃棄され得る。別法として、ニードル216が新しい標的部位まで移動させられ得(例えば、上鼻甲介から、中鼻甲介まで、または、初期の標的鼻甲介上の別の部位まで)、その結果、残っている1つまたは複数の任意のインプラントが新しい標的部位のところの粘膜下に埋設され得る。しかし、望ましくは、これは、標的部位の間での微生物の相互汚染を回避するための適切なケアをとりながら、行われる。結果として、開示されるデバイスは、好適には、1つのみの鼻甲介内で複数のインプラントを埋設するのに使用され得る。
【0020】
[0026]実施形態の手技の完了時およびインプラントの生分解期間の少なくとも大部分中、好適にはインプラントが中に埋め込まれたままであり、周囲の鼻甲介の粘膜組織に1つまたは複数の薬剤を送達することができるようになる。このインプラントの空気に晒される部分が、鼻腔内の近くの他の組織または流体まで1つまたは複数の薬剤を送達することができる。それにより、例えば、炎症性反応、食菌作用、粘膜リモデリング(mucosal remodeling)、繊毛再生(reciliation)、あるいは、他の形の正常機能の完全なまたは部分的な回復、などの、1つまたは複数の治癒機構を介して、インプラントが、怪我をした鼻甲介組織、感染した鼻甲介組織、炎症化した鼻甲介組織、または、外科的に治療した鼻甲介組織を、正常状態に戻すのを促進することができる。望ましくは、インプラントを粘膜の下に配置することにより、残っている繊毛による自然の律動的な繊毛モーション(つまり、繊毛打(cilia beating))、繊毛消失した近くの組織表面部分の繊毛再生、ならびに、鼻腔および副鼻洞通路に入るまたはそこから出る空気、呼気、粘液および他の流体の自由な通過が可能となるか、または、少なくとも阻止されなくなる。
【0021】
[0027]開示される手術デバイスが多様な形で変更され得る。開示されるピストルグリップデバイスの代わりに、フィンガーグリップデバイスまたはパワーアシストデバイスなどの他の構成が採用されてもよい。デバイスおよびそのニードル先端部を配置するのを補助するために、デバイスに、内視鏡の補助、発光性の補助、電磁石の補助、磁石の補助、X線撮影の補助、または、他のナビゲーションの補助が追加されてもよい。例えば、小型の発光ダイオードが遠位端214に追加され得、ニードル先端部218を所望の標的領域の近くに配置するのを補助するための内視鏡の照明または外部の徹照による補助として利用され得る。潅注、吸引、局所麻酔薬の投与、または、生検標本の取り出し、などの特徴を可能にする内腔がデバイスにさらに追加されてもよい。ニードル216などの小径のニードルの代わりに大径のトロカールが使用されてもよい。所望される場合、追加のインプラントを装填するのを容易にするためのマガジンが利用されてもよい。所望される場合に他の変更形態も作られ得ることを当業者であれば認識するであろう。
【0022】
[0028]開示される手術デバイス内で多様なインプラントが採用され得る。好適には、インプラントが、中に薬剤を分散させているかまたは薬剤で被覆されている生体分解性のマトリックス(例えば、高分子マトリックス)を有する。被覆される場合、コーティングは、液体、ゲル、あるいは、可溶性または不溶性の固体、を含めた多様な形態を有することができる。好適には、インプラントのこの生体分解性の性質により、インプラントが、少なくとも3日間、少なくとも1週間または少なくとも2週間、移植部位のところに留まる。また、好適には、インプラントの生体分解性により、インプラントが、約2ヶ月未満、約1ヶ月未満または約3週間未満で、移植部位から実質的に消える。好適には、インプラントの薬剤溶出の性質により、移植後、少なくとも3日間、少なくとも1週間または少なくとも約2週間、インプラントから薬剤が溶出される。
【0023】
[0029]例示のマトリックス高分子には、ポリエステル(例えば、ポリ乳酸つまり「PLA」などのポリラクチド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)つまり「PLGA」コポリマー、および、εカプロラクトンなどの環状エステル)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコールつまり「PEG」)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリフォスフォエステル(polyphosphoester)、ポリホスファゼン、および、ポリシアノアクリレートなどの、合成高分子、ならびに、多糖、タンパク質および核酸などの、天然高分子が含まれる。ポリアルキレングリコールおよびPLGAコポリマーが合成高分子の好適な形態であり、多糖が天然高分子の好適な種類である。例示の多糖には、寒天、アルジネート、カラゲナン、セルロース、甲角素、キトサン、コンドロイチン硫酸、デキストラン、ガラクトマンナン、グリコゲン、ヒアルロン酸、デンプン、上記の任意のものの誘導体(酸化多糖および塩類を含む)、ならびに、上記の任意のものの混合物が含まれる。マトリックス高分子は架橋されてもされなくてもよい。さらなるマトリックス材料が米国特許出願公開第2007/0014830(A1)号(Tijsmaら)および米国特許出願公開第2007/0110788(A1)号(Hissongら)に記載されている。マトリックスは、視覚化およびナビゲーションを補助するために、マトリックス内にまたはマトリックス上のコーティング内に、着色剤、放射線不透過性または放射線透過性のフィラー、あるいは、他の添加物を有することができる。
【0024】
[0030]開示されるインプラント内で多様な薬剤が使用され得る。好適な薬剤は鼻および副鼻洞の状態を治療するのに有用なものであり、これには、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、抗ヒスタミン薬、コルチコステロイド(例えば、プロピオン酸フルチカソンなどのフルチカゾン、フランカルボン酸モメタゾンなどのモメタゾン、ベクロメタゾン、トリアムシノロン、フルニソリド、ブデソニドおよびシクレソニド)、非ステロイド性抗炎症薬、キマーゼ阻害剤、シクロオキシゲナーゼ2(COX−2)阻害薬、充血除去剤(例えば、エフェドリン、レボメタンフェタミン、ナファゾリン、オキシメタゾリン、フェニレフリン、フェニルプロパノールアミン、プロピルヘキセドリン、シネフリン、テトラヒドロゾリン、キシロメタゾリン、偽性エフェドリンおよびトラマゾリン)、基質メタロプロテイナーゼ(MMP)阻害薬(例えば、ドキシサイクリン、TIMPメタロペプチダーゼ阻害薬1、および、デキサメサゾン)、粘液溶解薬、オピオイド類(例えば、メタドン、モルフィン、トラマドールおよびオキシコドン)、医用高分子、ならびに、それらの組み合わせが含まれる。これらの薬剤および他の薬剤の種類の追加の例が、上述のTijsmaらおよびHissongらの出願に列記されている。所望される場合、種々の状態の治療または予防のための他の治療薬が採用されてもよく、これには、鎮痛剤、抗コリン薬、抗真菌薬、抗寄生虫剤、抗ウイルス物質、生物静力学組成物(biostatic composition)、化学療法薬/抗腫瘍薬、サイトカイン、止血薬(例えば、トロンビン)、免疫抑制剤、核酸、ペプチド類、タンパク質、血管収縮剤、ビタミン類、その混合物、ならびに、当業者によく知られているようなさらなる他の治療薬が含まれる。このような他の治療薬の有用なリストを、例えば、米国特許出願公開第2007/0264310(A1)号(Hissongら)で見ることができる。インプラントは、薬剤でもしくは薬剤および他の治療薬で構成されてよいかまたは実質的にそれらにより構成されてよく、あるいは、上で言及したマトリックスおよび薬剤で、または、マトリックス、薬剤および他の治療薬で構成されてもよいかまたは実質的にそれらにより構成されてもよい。マトリックスが採用される場合、薬剤、または、薬剤および他の治療薬がマトリックスの中に浸み込んでいてよいかまたはマトリックス内に分散していてよく、あるいは、マトリックスの表面が、薬剤により、または、薬剤および他の治療薬により、浸漬被覆されてよいか、スプレー被覆されてよいか、それらに接合されてよいか、または、それらにより他の形で被覆されてよいか、あるいは、それらに結合されてよい。
【0025】
[0031]開示されるインプラントの例示の長さは、例えば、成人での使用の場合は約1mmから約2cmまたは約1mmから約1cmであってよく、小児での使用の場合は約1mmから約1cmまたは約1mmから約7mmであってよく、獣医による使用の場合は約1mmから約4cmまたは約1mmから約3cmであってよい。開示されるインプラントの例示の外径は、例えば、成人での使用、小児での使用または獣医による使用の場合、約0.1mmから約3.8mmまたは約0.1mmから約1.2mmであってよい。
【0026】
[0032]
図4Aから
図4Lは、後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を備えるいくつかの例示のインプラントを示す。この特徴部分には、突出部(例えば、隆起部、リブ、フック、または、ラチェットラック)、凹部(例えば、窪み、溝、または、孔)、曲げ部分、あるいは、インプラントの長さ方向に沿う断面形状または断面積の変化部分が含まれてよい。インプラントは中心長手方向軸を中心として対称または非対称であってよく、この軸を基準として略円筒形または非円筒形の形状(例えば、角柱形状)を有してよく、鋭利でない近位端(例えば、平坦)、円形近位端(例えば、ドーム状)、鋭利な近位端(例えば、尖頭)、または、チゼル形の近位端(例えば、くさび状)(挿入端部)を有してよく、同様のまたは異なる遠位端を有することができる。インプラントは剛体であってもまたは可撓性であってもよく、可撓性である場合には、弾性または展性を有してよい。インプラントは、例えば外科医の親指と反対側にある指との間で圧迫されるときに圧縮されても圧縮されなくてもよく、圧縮可能である場合には、圧縮前の形状に戻らなくてもよく、ゆっくり戻ってもよく、あるいは、迅速に戻ってもよい。一実施形態では、後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分が、鼻甲介組織の中の粘膜下にインプラントを埋設するのに必要となる仕事量(力×距離の積として表される)が、埋設されたインプラントをこの組織から取り外すのに必要となる仕事量未満となるような構造を有する。別の実施形態では、後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分が、インプラントを鼻甲介組織の中の粘膜下に埋設するのに必要となる最大の力を、埋設されたインプラントをこの組織から取り外すのに必要となる最大の力より小さくするような構成を有する。好適には、移植後、インプラントの体積の少なくとも大部分、より好適には、インプラントの体積のすべてが鼻甲介組織の中に埋設されて鼻甲介組織に接触する。一実施形態では、インプラントが移植後に張力を受けない。別の実施形態では、移植後、インプラントが組織を一緒に引き寄せない。別の実施形態では、インプラントが骨の中へまたは骨を通過するように差し込まれなくてもよく、骨に接触しなくてもよい。
【0027】
[0033]
図4Aは、ドーム状の遠位端表面406(挿入端部表面)の近くにある後退阻止用停止表面404と、近位端表面409(後端部表面)の近くにある段階的なテーパ形状表面408とを有する中央縮小領域403を有するインプラント402の断面図である。インプラント402が、好適には、鼻甲介組織の中に差し込まれるときに鼻甲介組織を貫通して鼻甲介組織を側方に変位させるような比較的固い生体分解性マトリックスから作られる。インプラント402が粘膜下に埋設された後、近くの変位した組織が好適には縮小領域403に戻り、それにより、停止表面404に隣接するところに組織係合表面を提供する。
【0028】
[0034]
図4Bは、インプラント410の他の略円筒形表面414の周りに並べられる外側に突出する複数の隆起部412を有するインプラント410の断面図である。隆起部412が後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を提供する。インプラント410のこのデザインは実質的に最小直径を有し、したがってインプラント402の場合よりもすぐれた固有の曲げ耐性を有することができるので、インプラント410は、所望される場合、インプラント402で使用されるマトリックスより低い固さの生体適合性マトリックスを採用することができる。所望される場合、インプラント410の端部表面が対称であってよく、その結果、いずれの端部も遠位端表面(挿入端部表面)として機能することができる。代替的実施形態(
図4Bでは図示せず)では、隆起部412が、同様に後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を提供するような窪みまたは他の刻み目に置き換えられてもよい。
【0029】
[0035]
図4Cは、インプラント420の他の略円筒形表面424の周りにその長さ方向に沿って並べられる外側に突出する複数の円周状リブ422を有するインプラント420の断面図である。
図4Dは、インプラント430の他の略円筒形表面434の周りにその長さ方向に沿って並べられる内向きの複数の溝432を有するインプラント430の断面図である。リブ422および溝432は、共に、後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を提供する。
【0030】
[0036]図
4Eは、遠位端表面446と近位端表面448との間でインプラント440の側部に沿って並べられる停止部分442および傾斜部分444によって形成される一列の外側に突出する非対称のラッチを有するインプラント440の断面図である。停止部分442および傾斜部分444が後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を提供し、これは、いわゆる「ジップタイ」ファスナの中のラチェットラックに類似する。
【0031】
[0037]
図4Fは、ファイバ452および454などのファイバによって形成される編組構造を有するインプラント450の側断面図である。ファイバの露出外側部分と、ファイバが重なり合うところに形成される凹部分456などの小さい凹部との両方が、後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を提供する。
【0032】
[0038]
図4Gおよび
図4Hは、差し込まれる前において
図4Gに示されるように略円筒形または略角柱であってよい膨張可能なインプラント460の断面図を示す。
図4Hに示されるように、インプラント460が鼻甲介組織468の表面の下に差し込まれた後、組織468の中に存在するかまたはその近くに存在する流体(例えば、水、粘液、または、血液)に接触することでインプラント460が膨張する。結果としてインプラントの直径が増大することで、後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分が提供される。
【0033】
[0039]
図4Iは、ニードル216の内部で拘束されているときの縮小した直径を有する弾性の圧縮可能なインプラント470の断面図である。鼻甲介組織478の中に差し込まれるとき、インプラント470がこの組織に接触したまま拡大し、拡大した直径を有するようなその通常の非圧縮形状をとるようになるかまたはそのような非圧縮形状をとろうとする。このようして直径が拡大することにより、後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分が提供される。
【0034】
[0040]
図4Jは、適切な回転挿入デバイスの補助により鼻甲介組織の中にねじ込まれ得る螺旋インプラント480の断面図である。インプラント480は、好適には、関連する挿入力に耐えることができる非常に固い生体分解性マトリックスから作られる。
【0035】
[0041]
図4Kは、呼吸器上皮組織496の下で鼻甲介組織494の中の粘膜下に留まる略湾曲状のインプラント490の断面図である。適切に湾曲した挿入ニードルの補助によりインプラント490が組織496を通して組織494の中に挿入され得る。インプラント490が十分な弾性および形状記憶能力(shape memory)を有する場合、インプラント490は直線状の挿入ニードルを使用しても挿入され、ニードル先端部から出た後で湾曲形状をとることが可能となり得る。この湾曲形状が、インプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を提供する。
【0036】
[0042]
図4Lは、呼吸器上皮組織496および鼻甲介組織494の中に入れたりそこから出したりする薬剤溶出性の再吸収可能な縫合糸の形態のインプラント497の部分断面図であり、その端部498が結び目499または他の従来の外科的固定テクニックを使用して定位置で固定され得る。所望される場合、結び目499が排除され、端部498が解放されたままであってよく、互いに結び付けられなくてよい。上述したように、薬剤溶出性デバイスを保持するために縫合糸を使用することは鼻甲介の外科手技中での余分なステップを意味するが、インプラントおよび薬剤溶出性デバイスとして縫合糸のみを使用することによって、別のデバイスを移植するという別のステップを排除することができる。例示の一実施形態では、インプラント497を中空湾曲外科用ニードルの中に配置し、組織494を通る湾曲経路に沿わせてニードルを通過させ、組織494からニードルが出てきた後でインプラント497からニードルを取り外し、インプラント497の自由端部を適切な長さへと切断し、所望される場合にはそれらの端部を結び付けることにより、インプラント497が鼻甲介の粘膜組織まで送達され得る。別の例示の実施形態では、インプラント497の、遠位端、近位端、または、遠位端および近位端の両方を組織494の表面の下に残すのに、短いバージョンのインプラント497が利用され得る。遠位端および近位側のインプラント端部の両方が組織表面の下に残される場合、得られるインプラントが
図4Kのインプラント490と同様の構成を有する。
【0037】
[0043]
図5が縫合ニードル502を有するデバイス500を示しており、その近位端がニードル502の残りの部分にインプラント497を取り付けるスエージ具504を有する。当業者にはよく知られているような他の多様な取付具が利用されてもよく、これには、ニードル500の近位端のところにあるアイレットまたは接着剤が含まれる。移植後、インプラント497がニードル500から分離され得(例えば、インプラント497を切断することにより)、所望される場合、標的の鼻甲介の粘膜組織内でインプラント497を固定するのを補助するために、結び目または他の固定テクニックが利用されてもよい。
【0038】
[0044]インプラント497を用いるその使用に加えて、所望される場合、図
4Bから
図4Fに関連して示されるかまたは考察されるインプラントのような側面輪郭を有するインプラント(また、所望される場合、それらより大きい長さを有する)を含めて、他の実施形態の開示されるインプラントを粘膜下に移植するのにニードル500のような縫合ニードルが利用されてもよい。
【0039】
[0045]別の例示の実施形態では(図示せず)、標的組織内に小さい切開部が作られ得、1つまたは複数の結び目(例えば、一つ結び)がインプラント497の長さ方向に沿うように結ばれ得、結ばれたインプラントを直線経路または非直線経路(例えば、湾曲経路または曲がった経路)で標的組織内に挿入するのに鉗子または他の適切な器具が使用され得る。結ばれたインプラントの近位端が標的組織から突出したままであってよいかあるいは組織表面の下に埋設され得、適切な縫合糸または外科用接着剤を使用して組織切開部が閉じられ得る。1つまたは複数の結び目が、結ばれたインプラントの後退を阻止する組織係合特徴部分として機能することができる。
【0040】
[0046]本発明を以下の非限定の実施例で説明する。ここでは、特に明記しない限り、すべての部および百分率は重量によるものである。
【実施例1】
【0041】
トリアムシノロンを充填されるインプラント
[0047]ゲル浸透クロマトグラフィによる75,000〜120,000M
Wを有するポリ(D,L−ラクチド)(ミズーリ州、セントルイスのSigma−Aldrich Co.)の1gの部分を5mLのテトラヒドロフラン(THF:tetrahydrofuran)(Sigma−Aldrich Co.)中に溶解させた。トリアムシノロンアセトニド(TA:triamcinolone acetonide)(Sigma−Aldrich Co.)の40mgの部分を加えて溶液中に溶解させた。溶液を、16ゲージニードルを取り付けた5mLのシリンジへと移した。溶液を100mLのヘキサン(Sigma−Aldrich Co.)の中にゆっくり注入し、沈澱した繊維を得た。繊維を回収し、空気乾燥させ、一定重量が得られるまでさらに真空下で乾燥させた。
【実施例2】
【0042】
トリアムシノロンアセトニドの分析
[0048]TAの試料を40:60の水/メタノール溶媒系中で溶解させ、Agilent Eclipse XDB−C18 4.6 X 150mmのカラムを装備するAgilent Technologies(商標)1200シリーズの高性能液体クロマトグラフィ(HPLC:high−performance liquid chromatography)の器具を使用して、10μlの試料注入、1ml/分の流量、250nmのUV検出で、分析した。多様な希釈度の一連の標準的な溶液を使用して標準的な曲線を得た。
【実施例3】
【0043】
薬剤溶出
[0049]薬剤を充填された(drug−loaded)実施例1のインプラントの100mgの試料を200mLのDI水に浸漬させ、沈めたインプラントを37℃でインキュベートすることにより、37℃の脱イオン(DI)水での薬剤溶出の研究を実施した。所定のタイミングで、1mLの上清試料を回収し、HPLCを使用してTA濃度を測定した。次いで、累積的な薬剤の放出を計算した。薬剤溶出性インプラントを二連で評価した。結果が
図6に示されており、これが、40日で450gのTAを溶出した徐放プロフィールを実証している。
【実施例4】
【0044】
移植
[0050]インサータデバイスを使用してまたは上述の他の適切な外科的テクニックを使用して、任意選択で1つまたは複数の結び目を備える、1cmの長さの実施例1の薬剤溶出性インプラントを鼻甲介粘膜組織の突起部の中に挿入することができた。次の1ヶ月から2ヶ月でインプラントがTAを溶出して生物分解した。
【0045】
[0051]引用したすべての特許、特許出願、技術告知および他の公報文献の全開示が、個別に組み込まれることと同様に、参照により本明細書に組み込まれる。
[0052]特定の事例および一部の事例において好適な実施形態を示して説明してきたが、
上記で示されて説明された特定の実施形態が、同じ目的を達成するように適合させられた多様な代替的実施形態または等価な実施形態に置き換えられ得ることが当業者には認識されよう。本出願では、本明細書で考察される実施形態の任意のこのような適合および変形も包含することが意図される。したがって、本発明は特許請求の範囲およびその均等物のみによって限定されることが明確に意図される。
〔態様1〕
手術デバイスであって、
(a)患者の外部で握持されるように構成される近位側グリップ部分と、
(b)前記グリップ部分を使用して操作されるように、および、前記患者の鼻甲介の粘膜組織の中の粘膜下に挿入されるように構成される遠位側の鋭利な中空ニードル部分と、
(c)前記中空ニードル部分内に配置される1つまたは複数の生体分解性の薬剤溶出性中実インプラントであって、前記中空ニードル部分に沿う一定の長さ、および、前記一定の長さに沿う1つまたは複数のインプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を有する、1つまたは複数の生体分解性の薬剤溶出性中実インプラントと、
(d)前記インプラントのうちの1つまたは複数を、前記中空ニードル部分から前記鼻甲介の粘膜組織の中へ送達するように、および、少なくとも1つの前記組織係合特徴部分を鼻甲介の粘膜組織の中の粘膜下に埋設するように構成される、前記デバイス内に配置されるアクチュエータと
を備える手術デバイス。
〔態様2〕
鼻甲介の炎症の治療で使用するための生体分解性の薬剤溶出性中実インプラントであって、一定の長さ、および、前記一定の長さに沿う1つまたは複数のインプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を有し、ニードル内に配置されるかまたはニードルに取り付けられる、インプラント。
〔態様3〕
副鼻洞の治療のための方法であって、
(a)手術デバイスを提供するステップであって、前記手術デバイスが、
(i)患者の外部で握持されるように構成される近位側グリップ部分、
(ii)前記グリップ部分を使用して操作されるように、および、前記患者の鼻甲介の粘膜組織の中の粘膜下に挿入されるように構成される遠位側の鋭利な中空ニードル部分、
(iii)前記中空ニードル部分内に配置される1つまたは複数の生体分解性の薬剤溶出性中実インプラントであって、前記中空ニードル部分に沿う一定の長さ、および、前記一定の長さに沿う1つまたは複数のインプラント後退阻止・粘膜組織係合表面特徴部分を有する、1つまたは複数の生体分解性の薬剤溶出性中実インプラント、ならびに、
(iv)前記インプラントのうちの1つまたは複数を、前記中空ニードル部分からその鼻甲介の粘膜組織の中へ送達するように、および、少なくとも1つの前記組織係合特徴部分を鼻甲介の粘膜組織の中の粘膜下に埋設するように構成される、前記デバイス内に配置されるアクチュエータ
を備える、ステップと、
(b)その鼻甲介の粘膜組織に穴を開けてその鼻甲介の粘膜組織の中の粘膜下に前記中空ニードル部分を挿入するように前記グリップ部分を操作するステップと、
(c)前記インプラントのうちの1つまたは複数を、前記中空ニードル部分から柔らかい前記粘膜組織の中へ送達するために、および、少なくとも1つの前記組織係合特徴部分を前記粘膜組織の中の粘膜下に埋設するために、前記アクチュエータを起動するステップと
を含む方法。
〔態様4〕
前記ニードルが曲げられている、態様1に記載のデバイス、態様2に記載のインプラント、または態様3に記載の方法。
〔態様5〕
前記デバイスまたはインプラントが無菌パッケージ内に密閉される、前記態様のいずれかに記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様6〕
前記インプラントが、中に薬剤を浸み込ませている、もしくは分散させている、または薬剤で被覆されている高分子マトリックスを備える、前記態様のいずれかに記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様7〕
前記インプラントがコーティングを備える、前記態様のいずれかに記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様8〕
前記コーティングがゲルである、態様7に記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様9〕
前記コーティングが薬剤を含む、態様7に記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様10〕
前記インプラントが鼻甲介の粘膜組織内において1ヶ月未満で分解する、態様6に記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様11〕
前記薬剤が、少なくとも3日間、および、1ヶ月未満の間、鼻甲介の粘膜組織内で前記インプラントから溶出する、態様6に記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様12〕
前記薬剤が、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬、アンギオテンシン受容体拮抗薬(ARB)、抗ヒスタミン薬、コルチコステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、キマーゼ阻害剤、シクロオキシゲナーゼ2(COX−2)阻害薬、充血除去剤、基質メタロプロテイナーゼ(MMP)阻害薬、粘液溶解薬、オピオイド類、医用高分子、または、それらの組み合わせを含む、態様6に記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様13〕
前記薬剤が、ドキシサイクリン、TIMPメタロペプチダーゼ阻害剤1、または、デキサメサゾンを含む、態様6に記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様14〕
前記薬剤が、フルチカゾン、モメタゾンまたはトリアムシノロンを含む、態様6に記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様15〕
前記インプラントが突出部を有する、前記態様のいずれかに記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様16〕
前記突出部が、隆起部、リブ、フック、または、ラチェットラックを含む、態様15に記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様17〕
前記インプラントが凹部を有する、前記態様のいずれかに記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様18〕
前記凹部が、窪み、溝または孔を含む、態様17に記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様19〕
前記インプラントが編組構造を有する、前記態様のいずれかに記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様20〕
前記インプラントが、再吸収可能な薬剤溶出性縫合糸である、前記態様のいずれかに記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様21〕
前記インプラントが流体に晒されるときに膨張可能である、前記態様のいずれかに記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様22〕
前記インプラントが移植後に張力を受けない、前記態様のいずれかに記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様23〕
移植後、前記インプラントが組織を一緒に引き寄せない、前記態様のいずれかに記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様24〕
前記インプラントが移植後に骨に接触しない、前記態様のいずれかに記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様25〕
鼻甲介組織の中の粘膜下に前記インプラントを埋設するのに必要となる、力×距離の積として表される仕事量が、前記埋設されるインプラントを前記鼻甲介組織から取り外すのに必要となる仕事量未満である、前記態様のいずれかに記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様26〕
前記インプラントを鼻甲介組織の中の粘膜下に埋設するのに必要となる最大の力が、前記埋設されるインプラントを前記鼻甲介組織から取り外すのに必要となる最大の力より小さい、前記態様のいずれかに記載のデバイス、インプラントまたは方法。
〔態様27〕
前記デバイスが2つ以上のインプラントを含む、態様1に記載のデバイスまたは態様3に記載の方法。
〔態様28〕
前記デバイスが、前記ニードル部分を通る1つまたは複数のインプラントの進み具合の、視覚フィードバック、可聴フィードバックまたは触覚フィードバックを提供する1つまたは複数のタブおよび開口部を有する、態様1に記載のデバイスまたは態様3に記載の方法。
〔態様29〕
前記デバイスが、前記アクチュエータが取り外されるのを防止する1つまたは複数のラッチを有する、態様1に記載のデバイスまたは態様3に記載の方法。