特許第6895507号(P6895507)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6895507大動脈内デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6895507
(24)【登録日】2021年6月9日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】大動脈内デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/10 20130101AFI20210621BHJP
   A61M 60/841 20210101ALI20210621BHJP
【FI】
   A61M25/10 546
   A61M25/10 520
   A61M60/841
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-223111(P2019-223111)
(22)【出願日】2019年12月10日
(65)【公開番号】特開2021-74483(P2021-74483A)
(43)【公開日】2021年5月20日
【審査請求日】2019年12月10日
(31)【優先権主張番号】201911086298.1
(32)【優先日】2019年11月8日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519441590
【氏名又は名称】フーワイ ホスピタル オブ チャイニーズ アカデミー オブ メディカル サイエンシーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】特許業務法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユエジン ヤン
(72)【発明者】
【氏名】イ マオ
【審査官】 上石 大
(56)【参考文献】
【文献】 特表2016−524937(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第108525107(CN,A)
【文献】 特開平07−265412(JP,A)
【文献】 特開平10−155909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
A61M 60/841
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテル(2)と、
前記カテーテル(2)の長手方向に連続して配置され、それぞれ前記カテーテル(2)を囲む第1のバルーン(4)および第2のバルーン(6)であって、前記第1のバルーン(4)は前記カテーテルの遠位端(5)に位置するパンピングバルーンであり、前記第2のバルーン(6)は前記第1のバルーンの近位端に隣接して位置し、前記第1のバルーン(4)よりも前記カテーテルの近位端(2)に近い、バルブバルーンである、第1のバルーン(4)および第2のバルーン(6)と、
心周期およびカテーテル末端(5)の動脈圧をモニタリングするモニタリング部と、
前記第1のバルーン(4)と前記第2のバルーン(6)にそれぞれ対応して配置され、気体を供給および抜き取るためのエアポンプと、
一端が前記第1のバルーン(4)および前記第2のバルーン(6)とそれぞれ連通し、他端が対応して配置される前記エアポンプとそれぞれ連通する第1の吸気管(3)および第2の吸気管(7)と、
前記第1のバルーン(4)を、周期的に、心臓拡張期には、前記第1のバルーン両端に血液が押し出されるよう大動脈の血液空間を占拠するように膨張させ、心臓収縮期には、積極的に心臓からの拍出する血液を取り出し、心拍出量を増やせるよう空間を形成するように収縮させ、前記第2のバルーン(6)を、心臓収縮期には、大動脈の遠位端の血液が前記第1のバルーン(4)収縮時に逆流しないよう大動脈の遠位端が閉塞されるように膨張させ、心臓拡張期には、前記第1のバルーン(4)の膨張により形成される血流が下流に押し出されるように収縮させるために、前記モニタリング部でモニタリングされた心周期およびカテーテル末端(5)の動脈圧に基づき、前記第1のバルーン(4)と前記第2のバルーン(6)の膨張および収縮を行うよう前記エアポンプを制御するための制御部と、
を備える大動脈内デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置。
【請求項2】
心臓の拡張期と収縮期において、前記第1のバルーン(4)がそれぞれ膨張および収縮するのと同期して、前記第2のバルーン(6)は逆に収縮および膨張するよう前記エアポンプが制御されることを特徴とする請求項1に記載の大動脈内デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置。
【請求項3】
心臓の拡張期において、前記第1のバルーン(4)が膨張し始める前に、前記第2のバルーン(6)が収縮し始めるよう前記エアポンプが制御されることを特徴とする請求項1に記載の大動脈内デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置。
【請求項4】
心臓の収縮期において、前記第1のバルーン(4)の収縮と前記第2のバルーン(6)の膨張が同時に行われるよう前記エアポンプが制御されることを特徴とする請求項1に記載の大動脈内デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置。
【請求項5】
前記第1の吸気管(3)は前記カテーテル(2)を囲むとともに前記第2のバルーン(6)を貫通して延出することを特徴とする請求項1に記載の大動脈内デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置。
【請求項6】
前記第1の吸気管(3)と前記第1の吸気管(3)で囲まれた前記カテーテル(2)は前記第2のバルーン(6)を貫通して延出した後、前記第2の吸気管(7)と並行に延出することを特徴とする請求項5に記載の大動脈内デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置。
【請求項7】
前記第1の吸気管(3)は、前記第2のバルーン(6)を貫通して延出した後、前記第2の吸気管(7)に囲まれ、前記第2の吸気管(7)とともに延出することを特徴とする請求項1または5に記載の大動脈内デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置。
【請求項8】
前記カテーテル(2)と前記第1の吸気管(3)はそれぞれ、前記第2のバルーン(6)を貫通して延出した後、前記第2の吸気管(7)と並行に延出することを特徴とする請求項1に記載の大動脈内デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置。
【請求項9】
前記第1のバルーン(4)の長さは、前記第2のバルーン(6)の長さよりも長いことを特徴とする請求項1に記載の大動脈内デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置。
【請求項10】
前記第1のバルーン(4)の長さは、前記第1のバルーン(4)と前記第2のバルーン(6)の全長の10分の9であることを特徴とする請求項1に記載の大動脈内デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は大動脈内デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大動脈内バルーンパンピング(IABP)は現在、臨床で広く応用されている有効的な機械的補助循環装置であり、動脈系を通してバルーン付きのカテーテルを下行胸部大動脈内の心臓近位端または左鎖骨下動脈開口の遠位端まで挿入し、心周期に合わせてバルーンの拡張(給気)と収縮(脱気)を行い、血流が大動脈内で時相変化することにより、機械的に循環作用を補助する心臓カテーテル治療法である。これは、大動脈インピーダンスを低くし、心拍出量と大動脈の拡張期圧を増やし、心筋の酸素消費量を低下させ、酸素供給を増加させることができ、これにより心機能を改善させるという目的を実現できる。
【0003】
大動脈内バルーンパンピング(IABP)は異なる状況に応用でき、冠状動脈の灌流を増やし、心室の後負荷を低減させることによって患者の血行動態を改善できる。これらの要素により心機能と心筋の酸素の需給比が改善される。この作用は比較的穏やかであり、一般的に、心拍出量の増加は20%を超えない。大動脈内バルーンパンピング(IABP)の適応症は、以下三つの状況、即ち、急性心筋虚血の治療、術後の心原性ショック、心臓移植前の移行等である。
【0004】
大動脈内バルーンパンピング装置は、バルーンカテーテルと、バルーンカテーテル駆動部としてのパンピング装置(counterpulsation machine)とを備える。バルーンカテーテルは、カテーテルに固定された円柱形バルーンと給気カテーテルとからなる。バルーンカテーテルの選択基準は、バルーン給気膨張後に大動脈管の90%〜95%を塞ぎ、且つバルーン容積が心拍出量の50%よりも大きいものとされる。パンピング装置は、モニタリング部と、制御部と、真空ポンプと、エアコンプレッサとを備える。給気カテーテルは長尺の円柱形バルーンを真空ポンプおよびエアコンプレッサと連通させる。モニタリング部と制御部は互いに連携し、所与のパラメータのもと、心電図または圧力信号を自動識別するとともに、膨張および収縮の時相を自動調節し、最も優れたパンピング効果(counterpulsation effect)を実現するようパンピングパラメータ(counterpulsation parameters)を自動調整し、故障発生または拍動異常時には自動停止する。
【0005】
心臓拡張時にバルーンは膨張され、心臓収縮時にバルーンは収縮される。こうして二重の血行動態の効果が生じる。一方において、バルーンが心臓拡張期に膨張すると、血液空間が占拠される。この際、大動脈弁が閉鎖されているため、膨張したバルーンが素早く大動脈の遠位側と近位側の両方に血液を駆出し、遠位(心臓)側への血液の駆出により大動脈基部の拡張期圧が高くなり、冠状動脈の血流と心筋への酸素供給が増え、近位(末梢)側への血液の駆出により全身に血液が供給されて灌流が増加し、拡張期圧が高くなり、心循環が支援される。心臓、特に左心室の負荷が大幅に低減され、血液供給も大幅に改善される。他方においては、バルーンが陰圧を生成するよう心臓収縮期中に脱気されて収縮すると、大動脈圧が瞬時に低下し、心臓の血液の拍出抵抗および心臓後負荷が低下し、心拍出量が増え(血液が大動脈に吸い込まれるのも含む)、心筋の酸素消費量が減少し、左室の駆出が増加する。ここで、制御部はバルーンに入る気体量を制御することによりバルーンの大きさを調整できる。
【0006】
バルーンのパンピング(counterpulsation)は通常、バルーン上端に記録される動脈波形に基づいてトリガーでき、また、心電図QRS波形により時間的に制御することもできる。バルーンのパンピングは必ず正確な時間内に膨張および脱気収縮されなければならない。理想的な状態において、バルーンは、大動脈弁が閉鎖されると同時に膨張される必要があり、動脈波形の2つの上昇波間の軌跡に対応する。一方、左心室の駆出の直前にバルーンは脱気されるのが最も望ましく、拡張期に脱気収縮が早すぎると、効果は良くない。
【0007】
現在、臨床に用いられる大動脈内バルーンパンピングカテーテルは、バルーンを心周期に合わせて膨張および収縮させて大動脈内の血液の時相変化を生じさせるだけであり、積極的に血液を駆出する作用は果たせない。
【発明の概要】
【0008】
このため、血液を前方に駆動可能な大動脈内バルーンパンピングカテーテルを提供する必要がある。
【0009】
上記技術課題を解決するために、本発明は、大動脈内デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置を提供することを目的とする。当該大動脈内デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置は、カテーテルと、それぞれカテーテルの長手方向に連続して配置され、それぞれカテーテルを囲む第1のバルーンおよび第2のバルーンであって、第1のバルーンはカテーテルの遠位端に位置するパンピングバルーンであり、第2のバルーンは前記第1のバルーンの近位端に隣接して位置し、第1のバルーンよりもカテーテルの近い、バルブバルーンである、第1のバルーンおよび第2のバルーンと、心周期およびカテーテル末端の動脈圧をモニタリングするモニタリング部と、第1のバルーンと第2のバルーンにそれぞれ対応して配置され、気体を供給および抜き取るための複数のエアポンプと、一端が第1のバルーンおよび第2のバルーンとそれぞれ連通し、他端が対応して配置されるエアポンプとそれぞれ連通する第1の吸気管および第2の吸気管と、第1のバルーンを、周期的に、心臓拡張期には、バルーン両端に血液が押し出されるよう大動脈の血流空間を占拠するように膨張させ、心臓収縮期には、心臓からの拍出する血液を取り出し、心拍出量を増やせるよう空間を形成するように収縮させ、第2のバルーンを、心臓収縮期には、大動脈の遠位端の血液が第1のバルーンの収縮時に戻らないよう大動脈の遠位端が閉塞されるように膨張させ、心臓拡張期には、第1のバルーンの膨張により形成される血流が下流に押し出されるように、モニタリング部でモニタリングされた心周期およびカテーテル末端の動脈圧に基づき、第1のバルーンと前記第2のバルーンに膨張および収縮を行うようエアポンプを制御するための制御部と、を備える。
【0010】
心臓拡張期に、第1のバルーンは給気されて膨張し、第2のバルブバルーンは脱気されて収縮する。この作用としては、第1のバルーン自身の給気膨張により血液が大動脈の遠位(心臓)側および近位(末梢)側の両方に駆出され、遠位(心臓)側により大動脈基部の拡張期圧が高くなり、冠状動脈の血流と心筋への酸素供給が増え、近位(末梢)側も同時に血液の下流への押し出し、末梢への血液供給および全身への灌流が促進される。
【0011】
心臓収縮期に、第1のバルーンは脱気されて収縮し、第2のバルーンは給気されて膨張する。この作用としては、一方において、第1のバルーンが収縮すると、瞬時に血液の空間が空になり大動脈内の圧力が低下し、その後に血液を拍出する心臓から大動脈に吸引され、膨張する第1のバルーンと血液の逆流を止める第2のバルーンとの組合せにより生じる、血液を拍出する心臓と空の大動脈との間の最大圧差により、上流の心臓の血液が大動脈に顕著に送り出されるので、次の心周期の心臓拡張期に下流前方に血液が駆出される。これにより血液循環が一方向である前方に向かって強化され、押し出され、駆出されるだけでなく、維持されるので、循環不全に対し、または循環虚脱に対してさえも、正常な循環状態を効果的かつ強力に支援する。
【0012】
本発明の大動脈内デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置の1つの実施形態によれば、心臓の拡張期において、第1のバルーンの給気膨張時に、第2のバルーンが同時に脱気収縮し、心臓の収縮期において、第1のバルーンの脱気収縮時に、第2のバルーンが同時に給気膨張するようエアポンプが制御される。各心周期において、第2のバルーンは第1のバルーンの膨張および収縮と同期して逆に収縮および膨張する。
【0013】
有益なのは、本発明の大動脈内デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置は特定の状況において、第1のバルーンと第2のバルーンの収縮および膨張を同時に行わせる、または、通常の大動脈内バルーンパンピング(IABP)のように、第2のバルーンは膨張せずに収縮状態を保てるようエアポンプが制御されることを許容する。
【0014】
重要なのは、如何なる場合においても、本発明の大動脈内デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置は第2のバルーンが収縮せずに膨張だけして大動脈を塞ぐ実施形態は許容されないことである。
【0015】
第1のバルーンと第2のバルーンは、対応して配置されるエアポンプと、第1の吸気管と第2の吸気管によりそれぞれ連通する。吸気管とカテーテルの配置について複数の実施形態が存在する。
【0016】
本発明の大動脈内デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置の1つの実施形態によれば、第1の吸気管はカテーテルを囲むとともに第2のバルーンを貫通して延出する。第1の吸気管と第1の吸気管で囲まれたカテーテルは第2のバルーンを貫通して延びた後、第2の吸気管と並行に延出するのが好ましい。または、別の好ましい実施形態において、第1の吸気管は第2のバルーンを貫通して延出した後、第2の吸気管に囲まれて第2吸気管とともに延出する。
【0017】
本発明の大動脈内デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置の別の実施形態によれば、カテーテルと第1の吸気管はそれぞれ、第2のバルーンを貫通して延びた後、第2の吸気管と並行に延出する。
【0018】
本発明の大動脈内デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置の1つの実施形態によれば、第1のバルーンの長さは第2のバルーンの長さよりも長い。第1のバルーンと第2のバルーンが連続動作過程において果たす作用は異なる。第1のバルーンは主に血液ポンプのためのパンピングバルーン(counterpulsation balloon)としての役割を果たし、第2のバルーンは主に第1のバルーンの膨張時に下流前方に流動する血液に対して血液の逆流を止めるバルブバルーンとしての役割を果たす。第1のバルーンの膨張により拡張した容積は、大動脈における上流の心臓の血液を吸引し、大動脈の血液を下流前方に移動させる効果を決定する。より短い第2のバルーンは第1のバルーンの収縮時に「バルブ」として血液の逆流を止め、収縮時には下流により多くの血液を促進するのに役立つ。
【0019】
第1のパンピングバルーンの長さは、第1のバルーンと第2のバルーンの全長の10分の9とするのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】従来技術におけるバルーンが1つしかない大動脈内バルーンパンピングカテーテル装置である。
図2】本発明の第1の実施形態の大動脈デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置の部分断面図である。
図3】本発明の第2の実施形態の大動脈デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置の部分断面図である。
図4図3におけるA−A線から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施例を用いて添付図面を参照して本発明の大動脈デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置について説明する。なお、添付図面は例示のためだけに提供されるものであり、本発明を限定するものだと理解してはならない。
【0022】
大動脈デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置は、カテーテル2を通るガイドワイヤ1に案内されて大動脈内の所定位置に到達し、それからガイドワイヤ1がカテーテル2から取り出される。
【0023】
図2は本発明の第1の実施形態の大動脈デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置の部分断面図である。図示されるように、第1のバルーン4と第2のバルーン6は、それぞれカテーテル2の長手方向に連続してカテーテル2を囲んで配置され、前記第1のバルーン4の位置は第2のバルーン6の位置よりもカテーテル末端5寄りである。第1の吸気管3と第2の吸気管7は一端が第1のバルーン4と第2のバルーン6とそれぞれ連通し、他端は対応して配置され、気体を供給および抜き取るためのエアポンプ(未図示)とそれぞれ連通する。
【0024】
本発明の第1の実施形態の大動脈デュアルバルーン駆動パンピングカテーテル装置は更に、未図示のモニタリング部と制御部を備える。モニタリング部は心周期およびカテーテル末端5の動脈圧をモニタリングし、制御部は、第1のバルーンを、周期的に、心臓拡張期には、第1のバルーン両端に血液が押し出されるよう大動脈の血流空間を占拠するように膨張(給気)させ、心臓収縮期には、積極的に心臓から送り出された血液を取り出し、心拍出量を増やせるよう空間を形成するように収縮(脱気)させ、第2のバルーン6を、心臓収縮期には、大動脈の遠位端の血液が第1のバルーンの収縮時に戻らないよう大動脈の遠位端を閉塞するように膨張させ、心臓拡張期には、第1のバルーンの膨張により形成される血流が下流に押し出されるように、モニタリング部でモニタリングされた心周期およびカテーテル末端5の動脈圧に基づき、第1のバルーン4と第2のバルーン6にそれぞれ膨張および収縮を行うよう前記エアポンプを制御する。
【0025】
この実施形態において、第1のバルーン4から突出する第1の吸気管3はカテーテル2を囲み、第2のバルーン6を貫通してカテーテル2とともに延出した後、第2のバルーン6から突出する第2の吸気管7と並行に延出する。第1の吸気管3と第2の吸気管7のそれぞれに対応して配置されるエアポンプは、例えばヘリウムガスを第1のバルーン4と第2のバルーン6内に供給してバルーンを膨張させる。膨張の全工程は130ms以内に完成する必要があるが、エアポンプは、前記第1のバルーン4が心臓拡張期に膨張し、心臓収縮期に収縮し、第2のバルーン6が心臓収縮期に膨張し、心臓拡張期に収縮するように制御される。心臓拡張期に、第1のバルーン4の膨張は第2のバルーン6の収縮と同期して行われ、心臓収縮期に、第1のバルーン4の収縮は第2のバルーン6の膨張と同期して行われる。
【0026】
心臓拡張期に、第1のバルーン4自身の膨張により、血液は大動脈の遠位(心臓)端および近位(末梢)端の両方に駆出され、大動脈基部の拡張期圧が高くなり、冠状動脈の血液と心筋への酸素供給が増え、同時に血液が下流前方に押し出され、全身に供給される。第2のバルーン6の収縮により、第1のバルーンの膨張による拍出血液が下流に押し出される。
【0027】
心臓収縮期に、第1のバルーン4が収縮して血液を拍出する心臓から大動脈により多くの血液が吸引され、第2バルーン6が同時に膨張して血液の逆流を止め、次の心周期で第2バルーン6が収縮すると、より多くの血液が心臓から送り出されて下流前方に駆出されるので、循環不全に対し、または循環虚脱に対してさえも、正常な循環状態を効果的かつ強力に支援する。
【0028】
心臓収縮期が始まろうとする前に、エアポンプは、第1のバルーン4および第2のバルーンから気体を抜き取ると、第1のバルーン4および第2のバルーンは同時に収縮する。血液は、陰圧により拍出する心臓から抜き取られ、収縮により生じる大動脈内の空間に入り、それにより拍出抵抗および心臓後負荷が低下し、通常の大動脈内バルーンパンピング(IABP)と同様に心拍出量が増加する。
【0029】
ここで、エアポンプは、心臓の拡張期と収縮期において、第1のバルーン4の膨張および収縮と、第2のバルーン6の収縮および膨張が同時に行われるように制御される。但し前記第1のバルーン4が膨張し始める前に、第2のバルーン6が既に収縮し始めるようにエアポンプを制御してもよい。第2のバルーン6が第1のバルーン4の膨張および収縮と同期して逆に収縮および膨張されれば、所望の技術効果は達成される。但し如何なる場合においても、第2のバルーンが収縮せずに膨張だけして大動脈を塞ぐことは許容されない。
【0030】
図3は本発明の第2の実施形態の大動脈デュアルバルーン駆動パンピングカテーテルの部分断面図である。図4図3におけるA−A線から見た部分断面図である。本発明の第1の実施形態との主な違いは、第1のバルーン4から突出する第1の吸気管3は、第1のバルーン4と第2のバルーン6を貫通するカテーテル2を囲まずに、第2のバルーン6を個々に貫通している点である。第2のバルーン6を貫通する第1の吸気管3、カテーテル2、第2のバルーン6から突出する第2の吸気管7は図示されるように互いに平行に延出する。
【0031】
以上、本発明の最良の実施例について説明したが、本発明の技術的思想と範囲はここに開示されている具体的な内容に限定されず、当業者は本発明の教示に基づいて更に多くの実施形態および応用を実施でき、これら実施形態および応用も全て本発明の技術的思想と範囲に含まれる。本発明の技術的思想と範囲は具体的な実施例により限定されず、添付の請求の範囲により限定される。
【符号の説明】
【0032】
1 ガイドワイヤ
2 カテーテル
3 第1の吸気管
4 第1のバルーン
5 カテーテル末端
6 第2のバルーン
7 第2の吸気管
図1
図2
図3
図4