(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6895513
(24)【登録日】2021年6月9日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】サイズ不定荷物把持装置および対応する把持幅変更方法
(51)【国際特許分類】
B65G 1/04 20060101AFI20210621BHJP
【FI】
B65G1/04 515A
B65G1/04 555A
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-516169(P2019-516169)
(86)(22)【出願日】2017年9月20日
(65)【公表番号】特表2019-529288(P2019-529288A)
(43)【公表日】2019年10月17日
(86)【国際出願番号】EP2017073791
(87)【国際公開番号】WO2018060031
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2020年9月14日
(31)【優先権主張番号】1659139
(32)【優先日】2016年9月27日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】517246416
【氏名又は名称】サヴォワ
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【弁理士】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100180231
【弁理士】
【氏名又は名称】水島 亜希子
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【弁理士】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】マリウス,アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】ゴドー,エルワン
【審査官】
小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭55−035073(JP,U)
【文献】
国際公開第2012/044734(WO,A1)
【文献】
特開平02−048314(JP,A)
【文献】
国際公開第2015/069105(WO,A1)
【文献】
国際公開第2012/029339(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65G 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷物把持装置であって、
・ 荷物支持領域(S)を画定する第1および第2のシャーシ部分(P1,P2)を備えるシャーシと、
・ 前記シャーシを移動経路に沿って移動させるための手段を作動させるように構成された並進移動手段(M)と、
・ 前記第1および第2のシャーシ部分にそれぞれ取り付けられ、荷物を前記支持領域から移動させるかまたは荷物を前記支持領域に移動させるように構成された第1および第2の把持アーム(B1,B2)と、
・ 前記第1および第2の把持アーム間の幅を変更させるように構成された幅調整手段と、を備えるものにおいて、
前記幅調整手段は、
・ 前記第1のシャーシ部分を前記移動経路に対して係止/係止解除するための第1の手段(MV1)と、
・ 前記第2のシャーシ部分を前記第1のシャーシ部分に対して係止/係止解除するための第2の手段(MV2)と、
・ 前記並進移動手段と、
を備え、
前記第1および第2の把持アーム(B1,B2)間の幅を変更するために、前記第1の係止/係止解除手段(MV1)が、前記第1のシャーシ部分を前記移動経路に対して係止し、前記第2の係止/係止解除手段(MV2)が、前記第2のシャーシ部分(P2)を前記第1のシャーシ部分(P1)に対して係止解除し、前記並進移動手段(M)が、前記移動手段を作動させ,前記第2のシャーシ部分(P2)を前記移動経路に沿って移動させるようになっていることを特徴とする、荷物把持装置。
【請求項2】
前記第1の係止/係止解除手段(MV1)は、前記第1のシャーシ部分(P1)に搭載されており、前記経路と協働する少なくとも1つの第1の電磁的または電気機械的要素を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第2の係止/係止解除手段(MV2)は、前記第1および第2のシャーシ部分の一方に機械的に取り付けられた連結手段(L)と協働する少なくとも1つの第2の電磁的または電気機械的要素を備える、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1および第2のシャーシ部分は、前記第1のシャーシ部分が前記第2のシャーシ部分に対して摺動可能に案内されることを可能にする案内手段を備える、請求項1〜3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記第1および第2のシャーシ部分は、それぞれ、前記経路上を移動するように適合された第1および第2の車輪対を備え、前記並進移動手段は、前記第2の車輪対のみを作動させるように構成されている、請求項1〜4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
把持装置の第1および第2の把持アーム間の幅の変更方法であって、前記把持装置は、
・ 荷物支持領域(S)を画定する第1および第2のシャーシ部分(P1,P2)を備えるシャーシと、
・ 前記シャーシを移動経路に沿って移動させるための手段を作動させるように構成された並進移動手段(M)と、
・ 前記第1および第2のシャーシ部分上にそれぞれ取り付けられ、荷物を前記支持領域から移動させるかまたは荷物を前記支持領域に移動させるように構成された第1および第2の把持アーム(B1,B2)と、
を備える、方法において、
・ 前記第1のシャーシ部分(P1)を前記経路に対して係止するステップ(400)と、
・ 前記第2のシャーシ部分(P2)を前記第1のシャーシ部分(P1)に対して係止解除するステップ(400)と、
・ 前記第2のシャーシ部分(P2)が前記経路に沿って並進移動して前記第1および第2の把持アーム間の幅を変更するように、前記移動手段を駆動すべく前記並進移動手段を作動させるステップ(500)と、
を含む、ことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記第1のシャーシ部分を前記荷物の第1の側面(C1)の位置の関数として位置決めするように前記シャーシを移動させるための予備ステップであって、該ステップで、前記第1のシャーシ部分は、前記経路に対して係止解除されており、前記第2のシャーシ部分は、前記第1のシャーシ部分に対して係止されている、予備ステップを含み、
前記作動させるステップは、前記荷物の第2の側面(C2)の位置の関数として実行されるようになっている、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
コンピュータ上で実行される時に請求項6〜7の少なくとも1つに記載の前記方法を実施するためのプログラムコード指令を含むコンピュータプログラムプロダクト。
【請求項9】
請求項8に記載のコンピュータプログラムプロダクトを記憶するコンピュータ読取可能な非一時的記憶媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷物を取り扱う分野に関する。
【0002】
更に詳細には、本発明は、不特定サイズの荷物の取扱いを可能にするように設計された荷物把持装置(グリッパーとも呼ばれる)に関する。このような装置は、例えば、モータ駆動シャトル(収集および移送トローリとも呼ばれる)、または、貯蔵所および/または物流準備倉庫用のスタッカークレーンとして実装できる。シャトルまたはスタッカークレーンは、荷物を貯蔵領域内に載置するためにまたは荷物を貯蔵領域から取り出すために貯蔵領域に移動するように設計された自走式取扱装置である。
【0003】
本発明は、特に物流管理の分野において、多数の用途、例えば、小包の自動化された貯蔵および/または準備の用途を有している。
【背景技術】
【0004】
移送シャトルは、従来、荷物を貯蔵所からコンベヤまたは小包ピッキングまたは準備ステーションまで効率的且つ自動的に搬送するために、自動化された小包準備システムに実装されている。
【0005】
貯蔵所は、一般的に、いくつかの積重ね棚段を備えており、シャトルが、これらの積重ね棚段内において移動し、荷物を貯蔵位置に載置し、または荷物を貯蔵位置から取り出すようになっている。これらのシャトルは、所定の棚段において水平に移動することができるのみならず、エレベータによって、1つの棚段から他の棚段に移ることも可能になっている。従来から、貯蔵所は、いくつかの貯蔵小路またはレーンを備えている。各小路は、その両側にいくつかの積重ね棚段を有する貯蔵棚(または棚ユニット)を備え、シャトルは、この小路を通って荷物を自立的に移動させるようになっている。各棚段において、軌道または経路が、シャトルの水平移動のために設けられている。小路の一端にエレベータが配置されている。軌道は、概して、2つの平行レールによって形成され、シャトルは、これらのレール上を移動するモータ駆動車輪を備えている。
【0006】
このようなシャトルの例が特許文献1に記載されている。このシャトルは、2つの部分を有するシャトルと、これらの2つのシャトル部分間の荷物支持面とを備えている。各シャトル部分は、車輪を備えている。車輪は、走路上のシャトルの移動を確実にするために並進移動モータによって回転駆動されるようになっている。シャトルは、第1および第2のシャーシ部分にそれぞれ取り付けられた第1および第2の把持アームを備えている。これらの把持アームは、荷物を荷物支持領域から移動させるためにまたは荷持を荷物支持領域に移動させるように構成されている。シャトルは、幅調整手段を更に備えている。このような手段は、種々の幅の荷物の把持を可能にするために、第1および第2の把持アーム間の幅を変更するように構成されている。この周知の解決策は、幅調整手段として、2つのシャーシ部分を接続する接続アセンブリを提案している。この接続アセンブリを用いて、これらの2つのシャーシ部分間の空間、従って、2つの把持アーム間の幅を変更することになる。第1の実施形態では、接続アセンブリは、ラックバーに係合するピニオンギアを作動させる専用モータを備えている。第2の実施形態では、接続ユニットは、プーリおよびベルトを備えるアセンブリを作動させる専用モータを備えている。しかし、このような調整手段は、把持アーム間の幅を荷物の大きさの関数として調整するために、複雑な機械システムおよび専用の駆動システムの使用を必要とする。それ故、この解決策は、所要空間および重量と共にコストの観点から最適ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2526032号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、少なくとも1つの実施形態において、特に先行技術のこれらの欠点を解消することが意図されている。
【0009】
更に詳細には、本発明の少なくとも1つの実施形態の目的は、簡単な実施、経済効率、所要空間の低減、および重量の軽減をもたらす荷物把持装置を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の1つの特定実施形態において、
・ 荷物支持領域を画定する第1および第2のシャーシ部分を備えるシャーシと、
・ シャーシを移動経路に沿って移動させるための手段を作動させるように構成された並進移動手段と、
・ 第1および第2のシャーシ部分にそれぞれ取り付けられた第1および第2の把持アームであって、荷物を支持領域から移動させるかまたは荷物を支持領域に移動させるように構成された第1および第2の把持アームと、
・ 第1および第2の把持アーム間の幅を変更させるように構成された、幅を調整するための手段と、
を備える、荷物を把持するための装置であって、
並進移動手段は、第2のシャーシ部分内に含まれており、前記幅調整手段は、
・ 第1のシャーシ部分を移動経路に対して係止/係止解除するための第1の手段と、
・ 第2のシャーシ部分を第1のシャーシ部分に対して係止/係止解除するための第2の手段と、
・ 前記並進移動手段と、
を備え、
第1および第2の把持アーム間の幅を変更するために、第1の係止/係止解除手段が、第1のシャーシ部分を移動経路に対して係止し、第2の係止/係止解除手段が、第2のシャーシ部分を第1のシャーシ部分に対して係止解除し、前記並進移動手段が、移動手段を作動させ,第2のシャーシ部分を移動経路に沿って移動させるようになっている、
荷物を把持するための装置が提案される。
【0011】
従って、本発明は、把持幅の調整に対する全く新規の独創的なアプローチに基づくものである。実際、この原理は、把持装置の並進移動手段を用いて、この並進移動手段を新規の係止/係止解除手段と組み合わせ、これによって、第1および第2の把持アーム間の幅の調整を行う新規の方法からなっている。従って、本発明による並進移動手段は、2つの機能、すなわち、装置を移動手段を介して経路に沿って移動させることを可能にする従来の並進移動機能と、これらの並進移動手段を第1および第2のシャーシ部分を係止/係止解除するための手段と組み合わせることによって、把持幅を調整する二次機能と、を果たすことになる。本発明の種々の手段間の相互手段によって、真の相乗效果が得られる。何故なら、シャーシを並進移動させる従来の機能を果たすために用いられる並進移動手段が、ここでは再利用され、係止/係止解除手段と組み合わされることによって、他の機能(幅の調整)を果たすからである。本発明による幅調整手段は、比較的単純であり、実施するのに殆ど経費が掛からない。また、これらの手段は、先行技術の周知の解決策と比較して、小型且つ軽量である。
【0012】
本発明の1つの特定態様によれば、幅調整手段(すなわち、第1および第2の係止/係止解除手段および前記並進移動手段)は、把持装置内に含まれる制御ユニットによって駆動される。
【0013】
1つの特定の特性によれば、第1の係止/係止解除手段は、第1のシャーシ部分内に含まれており、経路と協働する少なくとも1つの第1の電磁的または電気機械的要素を備えている。
【0014】
この種の要素は、小型でありながら、単純であり、実施するのに殆ど経費が掛からない。
【0015】
1つの特定の特性によれば、第2の係止/係止解除手段は、第1および第2のシャーシ部分の1つに機械的に取り付けられた連結手段と協働する少なくとも1つの第2の電磁的または電気機械的要素を備えている。
【0016】
もし第2の電磁ユニットが第2のシャーシ部分と協働したなら、連結手段が第1のシャーシ部分に固定されることになる。逆に、もし第2の電磁要素が第1のシャーシ部分と協働したなら、連結手段が第2のシャーシ部分に固定されることになる。これらの要素は、小型でありながら、更に単純であり、実施するのに経費が殆ど掛からない。
【0017】
本発明の1つの特に有利な態様によれば、第1および第2のシャーシ部分は、第1のシャーシ部分が第2のシャーシ部分に対して摺動可能に案内されることを可能にする案内手段を備えている。
【0018】
従って、これらのガイド手段によって、係止/係止解除手段に組み合わされた前記並進移動手段が移動手段を作動させる時、第1のシャーシ部分に対する第2のシャーシ部分の並進移動が容易になる。
【0019】
1つの特定の特性によれば、前記第1および第2のシャーシ部分は、それぞれ、経路上を移動するように適合された第1および第2の車輪対を備え、並進移動手段は、前記第2の車輪対のみを作動させるように構成されている。
【0020】
従って、第2のシャーシ部分に配置された車輪のみがモータ駆動され、幅調整手段の簡単な制御を可能にする。
【0021】
本発明の他の実施形態では、(種々の実施形態のいずれか1つにおける)前述の把持装置の第1および第2の把持アーム間の幅を変更するための方法であって、該把持装置は、荷物支持領域を画定する第1および第2のシャーシ部分を備えるシャーシと、シャーシを移動経路に沿って移動させるための手段を作動させるように構成された並進移動手段と、第1および第2のシャーシ部分上にそれぞれ取り付けられた第1および第2の把持アームであって、荷物を前記支持領域から移動させるかまたは荷物を前記支持領域に移動させるように構成された第1および第2の把持アームと、を備える、方法において、
・ 第1のシャーシ部分を経路に対して係止するステップと、
・ 第2のシャーシ部分を第1のシャーシ部分に対して係止解除するステップと、
・ 第2のシャーシ部分を経路に沿って並進移動させ、第1および第2の把持アーム間の幅を変更するステップ(500)と、
を含む方法が提案される。
【0022】
従って、本発明によれば、第1のシャーシ部分を適所に保持する簡単な係止動作および第2のシャーシ部分を並進移動可能にする簡単な係止解除動作によって、把持幅を移動されるべき荷物の寸法に合わせて変更する簡単な解決策が提案される。幅の変更は、第2のシャーシ部分が経路に沿って並進移動して第1および第2の把持アーム間の幅を変更するように、並進移動手段を作動させ、移動手段を駆動させることによって、行われる。いったん幅の変更が行われたなら、第1のシャーシ部分を経路に対して係止解除し、第2のシャーシ部分を第1のシャーシ部分に対して係止し、把持アームを作動させ、変更された幅で荷物を前記支持領域から移動させ、または前記支持領域から移動させることになる。
【0023】
1つの特定の特性によれば、この方法は、第1のシャーシ部分を(例えば、荷物の第1の横側面に対応する)荷物の第1の側面の位置の関数として位置決めするようにシャーシを移動させるための予備ステップであって、該ステップにおいて、第1のシャーシ部分は、経路に対して係止解除されており、第2のシャーシ部分は、第1のシャーシ部分に対して係止されている、予備ステップを含んでおり、前記変更ステップは、(例えば、荷物の第2の横側面に対応する)荷物の第2の側面の位置の関数として実行されるようになっている。
【0024】
本発明の他の実施形態は、コンピュータ上で実行される時に(種々の実施形態のいずれかにおける)前述の方法を実施するためのプログラムコード指令を含むコンピュータプログラムプロダクトを提案する。
【0025】
本発明の他の実施形態は、(種々の実施形態のいずれかにおける)前述の方法を実施するためにコンピュータによって実行可能な一組の指令を含むコンピュータプログラムを記憶するコンピュータ読取可能な非一時的記憶媒体を提案する。
【0026】
本発明の他の特徴および利得は、例示的且つ包括的な例による以下の説明および添付の図面から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】運搬シャトルに実装された本発明の1つの特定実施形態による把持装置の斜視図である。
【
図2】運搬シャトルに実装された本発明の1つの特定実施形態による把持装置の平面図である。
【
図3】運搬シャトルに実装された本発明の1つの特定実施形態による把持装置の斜視図である。
【
図4】運搬シャトルに実装された本発明の1つの特定実施形態による把持装置の下方から見た斜視図である。
【
図5】本発明による変更方法の1つの特定実施形態のフローチャートである。
【
図6A】
図5に示される方法の主なステップを示す略図である。
【
図6B】
図5に示される方法の主なステップを示す略図である。
【
図6C】
図5に示される方法の主なステップを示す略図である。
【
図6D】
図5に示される方法の主なステップを示す略図である。
【
図7】本発明の1つの特定実施形態による制御ユニットの構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書の図面の全体を通して、同一の要素およびステップは、全く同一の参照番号によって示される。
【0029】
図1〜4を参照すると、本発明の1つの特定実施形態による把持装置の構造が示されている。この特定実施形態では、把持装置は、運搬シャトル10に実装されている。例えば、運搬シャトル10は、自動化された小包準備システムの貯蔵所内において巡回するシャトルであるとよい。
【0030】
ここに記載される把持装置は、荷物支持領域Sを画定する第1および第2のシャーシ部分P1,P2によって構成されたシャーシを備えている。
【0031】
把持装置は、第1および第2のシャーシ部分P1,P2上にそれぞれ取り付けられた第1および第2の把持アームB1,B2を備えている。2つの把持アームB1,B2は、荷物を支持領域Sから移動させるかまたは支持領域Sに移動させるように構成されている。2つの把持アームB1,B2は、所定の貯蔵位置から荷物を把持し、該荷物を支持領域Sに移送し、または支持領域Sに位置する荷物を把持し、該荷物を貯蔵所の所定の貯蔵位置に移送することができるようになっている。各把持アームは、モータ駆動式であり、例えば、伸縮操作システムに基づいている。勿論、本発明の枠から逸脱することなく、同一の機能を果たす他の形式の把持アームも考えられる。
【0032】
第1および第2のシャーシ部分P1,P2は、それぞれ、移動経路V上を移動するように適合された第1および第2の車輪対(図では、MD1,MD2の符号が付された移動手段)を備えている。この例における移動経路は、水平であり、2つの平行レールR1,R2によって構成されている。
【0033】
ここに示されるシャーシの移動手段は、車輪MD1,MD2を備えている。明らかなことではあるが、、本発明の枠から逸脱することなく、他の形式の移動手段、例えば、移動経路に沿ってシャーシを磁気的に案内するための磁気浮上モジュールも考えられる。
【0034】
第2のシャーシ部分は、移動経路Vに沿ってシャーシを移動させるために、第2の車輪対MD2を作動させるように(換言すれば、車輪MD2のみをモータ駆動させるように)構成された並進移動モータMを備えている。並進移動モータMは、絶対移動エンコーダCOと協働し、貯蔵所内における荷物の貯蔵箇所の位置の関数としてシャーシを移動経路上に位置決めするようになっている。並進移動モータMおよびエンコーダCOは、本発明による装置の並進移動手段を構成する。
【0035】
本発明による把持装置は、(以下、「把持幅」または「荷物保持幅」と呼ばれる)第1および第2の把持アーム間の幅を変更するように構成された幅調整手段を更に備えている。これらの幅調整手段は、
・ 2つの状態、すなわち、移動経路に対する第1のシャーシ部分P1の移動をそれぞれ阻止および許容する係止状態および係止解除状態を取るように構成された第1の係止/係止解除手段MV1と、
・ 2つの状態、すなわち、第1のシャーシ部分P1に対する第2のシャーシ部分P2の移動をそれぞれ阻止および許容する係止状態および係止解除状態を取るように構成された第2の係止/係止解除手段MV2と、
・ 前述の並進移動手段M,COと
を備えている。
【0036】
一般的に、第1および第2の把持アーム間の幅を所定の荷物に合わせて変更するために、原理的に、
・ (第1のシャーシ部分P1を移動経路に対して係止するために)第1の係止/係止解除手段MV1が係止状態に置かれ、これによって、第1のシャーシ部分P1が適所に保持され、
・ (第2のシャーシ部分P2を第1のシャーシ部分P1に対して係止解除するために)第2の係止/係止解除手段MV2が係止解除状態に置かれ、これによって、第2のシャーシ部分P2が並進移動可能な状態に保持され、
・ (
図2,3,4において両矢印によって示されるように)第2のシャーシ部分P2を経路に沿って移動させるために、並進移動手段M,COが第2の車輪対MD2を作動させる、
ようになっている。
【0037】
従って、荷物に合わせて把持幅を変更するために専用モータおよび複雑な機械システムを用いる代わりに、本発明による調整手段は、把持装置の並進移動手段を巧妙に再利用し、この並進移動手段を新規の係止/係止解除手段と組み合わせ、幅変更機能を果たすようになっている。従って、本発明による調整手段は、単純であり、実施するのに経費が掛からない。加えて、これらは、全所要空間および装置の重量を低減させるという利点を有している。
【0038】
1つの特定実施例によれば、第1の係止/係止解除手段MV1は、1対の電気吸引パッドを備えている。各電磁吸引パッドは、第1のシャーシ部分P1の明確な側面に取り付けられており、移動経路Vに対する第1のシャーシ部分P1の係止/係止解除を行うために、移動経路の金属レールの1つと電磁的に相互作用するような少なくとも1つの永久磁石を備えている。これは、例示にすぎず、例えば、同一の機能を果たす他の形式の係止/係止解除ユニット、例えば、電気機械式係止/係止解除装置も考えられる。とりわけ、係止/係止解除装置の数は、2つに制限されない。数、特性、および選択される構成が移動経路Vに対する第1のシャーシ部分P1の係止/係止解除を可能にする限り、本発明の枠から逸脱することなく、このような1つのみの装置に対して多数の係止/係止解除装置を用いることも考えられる。
【0039】
1つの特定実施例によれば、第2の係止/係止解除手段MV2は、第2のシャーシ部分P2の下面に取り付けられた電磁吸引パッドMV2を備えている。電磁吸引パッドMV2は、例えば、第2のシャーシ部分P2に機械的に固定された金属リンクLと電磁的に協働する1つまたは複数の永久磁石を備えている。
図1,2,5,5Bに示されるように、連結要素Lは、装置の2つのシャーシ部分間に位置する荷物支持体(S)によって第2のシャーシ部分P2に機械的に固定されている。荷物支持体(S)は、第1のシャーシ部分P1の側の自由端と、第2のシャーシ部分P2に固定された非自由端とを備えている。勿論、荷物支持領域Sを用いることなく、連結要素Lを第2のシャーシ部分P2に直接固定することも考えられる。同様に、代替例として、第1のシャーシ部分P1への電磁吸引パッドMV2の取付けに代わって、電磁吸引パッドを第2のシャーシ部分P2に取り付け、連結要素を第1のシャーシ部分P1に固定して取り付ける逆の構成も考えられる。連結要素Lの材料は、2つのシャーシ部分P1,P2を固定して取り付けるために且つ電磁吸引パッドMV2と磁気的に相互作用するために十分な剛性を有するように選択されるべきである。第1の係止/係止解除手段の場合におけるように、ここに記載される第2の係止/係止解除手段の例は、単なる例示にすぎず、同一の機能を果たす他の係止/係止解除要素、例えば、電気機械式係止/係止解除ユニットも考えられる。係止/係止解除ユニットの数は、1つに制限されず、2つのシャーシ部分P1,P2を固定して取り付けるのに望ましい磁気的吸引力に依存して、1つより多くてもよい。
【0040】
1つの特定実施形態によれば、装置は、2つのシャーシ部分が互いに対して摺動可能に案内されることを可能にする案内手段を備えている。
図3,4に示される案内手段は、第1のシャーシ部分P2の内面に位置する第1および第2の案内通路CG1,CG2と協働する第1および第2の円筒ロッドG1.G2によって形成されている。第1および第2のロッドG1,G2は、各々、第2のシャーシ部分P2に固定して取り付けられた第1の非自由端と第2のシャーシ部分P2内に含まれる第2の固定されない自由端とを有している。第1および第2の案内通路CG1,CG2は、それぞれ、経路V上のシャトル10の移動軸と平行の第1および第2の円筒ロッドG1,G2の軸方向摺動案内を可能にするように配置されている。幅調整手段が作動される時、このような案内手段は、第1のシャーシ部分P1に対する第2のシャーシ部分P2の並進移動を容易にする效果を有している。また、2つの円筒ロッドG1,G2は、装置の荷物支持体に取り付けられる取付手段MF1,MF2を備えていてもよい。
【0041】
以下、
図5および
図6A〜6Dを参照すると、本発明の1つの特定実施形態による幅を調整する方法が示されている。この実施形態では、この方法は、(
図2,3に示されるように)、シャトル10の第2のシャーシ部分P2内に含まれる「CR」と呼ばれる制御ユニットによって実施される。制御ユニットCRは、第1に、貯蔵所内におけるシャトル10の移動を制御するように構成され、第2に、2つの把持アームB1,B2間の幅を把持されるべき荷物の大きさに合わせて変更するために、前述の幅調整手段を管理するように構成されている。
【0042】
この方法は、ピッキングステーションへの荷物の運搬を担うコンベヤシステムに荷物を運搬するために荷物を貯蔵所から引き出すかまたは取り出すための移動シーケンスの一部である。これに関して、自動化された小包準備システムは、全システム、すなわち、貯蔵所、一連のコンベヤ、およびピッキングステーションを制御するように構成された中央管理システムを備えることに留意されたい。
【0043】
荷物を取り出すための指令が、中央管理システムによって(例えば、WIFI式無縁送信によって)、制御ユニットCRに送信される。取出し指令は、取り出されるべき荷物の貯蔵所における理論的貯蔵位置の情報(例えば、貯蔵所内の荷物の位置を特定するデータ)を含んでいる。貯蔵所から取り出されるべき荷物は、
図6A〜6Dにおいて「C」で示されている。
【0044】
取出し指令を受信すると、制御ユニットCRは、本方法を開始する(ステップ100)。第1の係止/係止解除手段(吸引パッドMV1)が係止解除状態にされ、第2の係止/係止解除手段(吸引パッドMV2)が係止状態にされる。
【0045】
ステップ200において、制御ユニットCRは、シャトル10のシャーシを移動させるための移動手段MD2を作動させるために、移動指令を並進移動手段に送信する。移動指令を受信すると、並進移動モータMは、絶対移動エンコーダCOと協働し、シャーシを荷物Cの理論的貯蔵位置の関数として移動経路V上を移動させ且つ位置決めするように作動される
【0046】
理論的貯蔵位置に接近すると、制御ユニットCRは、荷物Cの輪郭、特に把持装置のアームに接触することになる荷物Cの2つの側面C1,C2の位置を検出するために、(少なくとも1つの画像センサに基づく)障害物検出システムを作動させる。これらの側面は、荷物Cの2つの横側面である。この方法の残りのステップにおいて、制御ユニットCRは、装置の2つの把持アームB1,B2を把持形態に移行させる。把持形態へのこの移行は、それぞれ、障害物検出システムによって決定された側面C1,C2の位置の関数として行われる。
【0047】
ステップ300では、制御ユニットCRは、第1の把持アームB1が把持形態に位置するようにシャトルの第1のシャーシ部分P1を位置決めする移動指令を並進移動手段に送信する。「把持形態(gripping configuration)」という用語は、第1の把持アームB1が荷物と接触するために該荷物の第1の側面C1と明確に真っ直ぐに並んで位置することを意味することを理解されたい。シャトル10は、停止している。
【0048】
ステップ400では、いったん第1の把持アームB1が把持形態に位置したなら、制御ユニットCRは、第2の把持アームB2を把持形態に移行させる。この目的を達成するために、制御ユニットCRは、第1の係止/係止解除手段(吸引パッドMV1)を係止状態に切り替えるために、第1の係止/係止解除手段(吸引パッドMV1)を係止するための係止指令、および第2の係止/係止解除手段(吸引パッドMV2)を係止解除状態に切り替えるために、第2の係止/係止解除手段(吸引パッドMV2)を係止解除するための係止解除指令を送信する。この時点で、第1のシャーシ部分P1は、(吸引パッドMV1を介して)移動経路Vに対して係止され、これによって、第1のシャーシ位置P1が適所に保持され、第2のシャーシ部分P2が第1のシャーシ部分P1に対して係止解除され、これによって、第2のシャーシ部分P2が並進移動可能になる。
【0049】
ステップ500では、制御ユニットCRは、移動手段MD2を把持されるべき荷物Cの面C2の位置の関数として作動させるために、移動指令を並進移動手段に送信する(換言すれば、制御ユニットCRは、並進移動手段を作動させることによって、移動手段を駆動させる)。第2のシャーシ部分P2が(一部が固定された)第1のシャーシ部分P1から独立して移動可能になっているので、制御ユニットCRは、荷物Cの実寸法の関数として装置の2つのアーム間の幅(すなわち、2つの面C1.C2間の距離)を調整するように、第2のシャーシ部分P2に取り付けられた第2の把持アームB2を位置決めすることができる。この目的を達成するために、並進移動手段は、第2の把持アームB2が把持形態となるように、第2のシャーシ部分P2を移動経路Vに沿って位置決めする。「把持形態」という用語は、第2の把持アームB2が荷持と接触するために該荷物の第2の側面C2と明確に真っ直ぐに並んで位置することを意味している。
【0050】
これによって、2つの把持アームB1,B2間の幅が荷物Cに合わせて変更される。次いで、制御ユニットCRは、荷物Cを掴むことを指令することになる。
【0051】
ステップ600では、いったん2つの把持アームB1,B2が把持形態に位置したなら、制御ユニットCRは、第1の係止/係止解除手段(吸引パッドMV1)を係止解除状態に切り替えるために、係止解除指令を第1の係止/係止解除手段に送信し、第2の係止/係止解除手段(吸引パッドMV2)を係止状態に切り替えるために、第2の係止/係止解除手段を係止するための係止指令を送信する。同時に、第1のシャーシ部分P1は、移動経路Vに対して係止解除され、第2のシャーシ部分P2は、第1のシャーシ部分P1に対して係止され、これによって、2つのシャーシ部分P1,P2は、再び機械的に互いに取り付けられることになる。
【0052】
ステップ700では、制御ユニットCRは、伸縮性把持アームB1,B2が、変更された幅で荷物Cを把持し、該荷物Cをその貯蔵位置からシャトル10の荷物支持領域Sに移動させることを可能にするために、把持アームB1,B2を駆動するための(図示されない)駆動手段に把持指令を送信する。
【0053】
いったん荷物Cがシャトルの荷物支持領域Sに載置されたなら、制御ユニットCRは、荷物Cを経路Vに沿って一連のコンベヤまたは準備ステーションに向かって搬送するために、移動手段MD2を作動させる移動指令を並進移動手段に送信する。
【0054】
図7は、本発明による変更の方法(例えば、
図5,6A〜6Dを参照して前述した特定実施形態)を実施する制御ユニット70の簡素化された構造を示している。この装置は、ランダムアクセスメモリ73(例えば、RAM)および処理ユニット71を備えている。処理ユニット71は、例えば、プロセッサを備え、読出専用メモリ72(例えば、ROMまたはハードドライブディスク)に記憶されたコンピュータプログラムによって制御されるようになっている。開始時に、コンピュータプログラムのコード指令が、例えば、ランダムアクセスメモリ73にダウンロードされ、次いで、処理ユンイット71のプロセッサによって実行される。処理ユニット71は、貯蔵所から荷物74を取り出す指令、例えば、自動化された小包準備システムの中央管理システムによって送信された指令を入力する。処理ユニット71のプロセッサは、取出し指令74を処理し、プログラム72の指令によって把持装置の種々の要素に出力される制御指令を生成する。具体的には、処理ユニット71は、
・ (シャーシ移動手段を作動/遮断するように)並進移動手段を管理することが意図された第1の指令75Aと、
・ (第1のシャーシ部分を移動経路に対して係止/係止解除するように)第1の係止/係止解除手段を管理することが意図された第2の指令75Bと、
・ (第2のシャーシ部分を第1のシャーシ部分に対して係止/係止解除するように)第2の係止/係止解除手段を管理することが意図された第3の指令75Cと、
・ (把持アームを伸張/後退させるように)把持アームを駆動させるための手段を管理することが意図された第4の指令75Dと、
を出力する。
【0055】
従って、1つの特定実施形態によれば、本発明は、把持装置の制御ユニット70内のコンピュータプログラムであって、該プログラムが制御ユニット70のプロセッサ71上で実行される時に前述の変更方法を実施するプログラムコード指令を含む、コンピュータプログラムの使用に関する。
【0056】
この
図7は、
図5,6A〜6Dを参照して詳細に述べた種々のアルゴリズムを行ういくつかの可能な方法の内の1つの特定の方法を示しているにすぎない。実際、本発明の技術は、
・ 一連の指令を含むプログラムを実行する再プログラム可能な計算機(PCコンピュータ、DSPプロセッサ、またはマイクロコントローラ)または
・ 専用の計算機(例えば、FPGAまたはASICのような論理ゲートまたは他のハードウエアモジュール)
によって、同様に実施可能である。
【0057】
本発明が再プログラム可能な計算機によって実施されるなら、対応するプログラム(すなわち、一連の指令)は、取外し可能な記憶手段(例えば、フロッピーディスク、CD−ROまたはDVD−ROM)内に記憶されてもよいし、または取出し不能な(部分的または全体的にコンピュータまたはプロセッサによって読取可能な)記憶媒体に記憶されてもよい。
【0058】
同様に、ハードウエア構成要素は、関連するモジュールに対して前述したような1つまたは一組の機能を実施することができるハードウエアユニットのいずれかの要素に相当する。このような要素は、プログラム可能なハードウエア構成要素であってもよいし、またはソフトウエアを実行するための内蔵プロセッサ、例えば、集積回路、スマートカード、メモリカード、ファームウエアを実行するための電子カード、等を有する構成要素であってもよい。