(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
一般的に、大粒径無機粒子等の比表面積の小さい無機粒子は、シランカップリング剤等による表面処理プロセスやインテグラルブレンドによる上記無機粒子とポリマーの界面改良の効果が得られにくいことが知られている。
そのため、上記無機粒子とポリマー界面は剥離しやすく、応力による剥離が起点となるクラック発生が問題となっている。
そこで、本発明者らは、接着性ポリマーを添加すること、及び比表面積が1m
2/g以下の無機粒子(a)と接着性ポリマーをまず混合し、1m
2/gを超える無機粒子(b)及びベースポリマーを混合すると、クラック抑制に効果があることを見出した。本発明はこのような着想から完成したものである。
本明細書において、1m
2/g以下の無機粒子を無機粒子(a)、1m
2/gを超える無機粒子を無機粒子(b)という。
【0010】
本発明は、ベースポリマーと接着性ポリマーと熱伝導性粒子を含む熱伝導性組成物である。前記熱伝導性組成物の熱伝導率は0.3W/m・K以上であり、好ましくは0.5W/m・K以上、さらに好ましくは1W/m・K以上であり、好ましい上限は15W/m・K以下である。また、電気絶縁性である。
【0011】
本発明の熱伝導性粒子は比表面積が1m
2/g以下の無機粒子(a)を含む。無機粒子(a)の好ましい比表面積は0.1〜1m
2/g、さらに好ましくは0.1〜0.5m
2/gである。そして、無機粒子(a)は接着性ポリマーによって被覆されている。無機粒子(a)と接着性ポリマーをまず混合すると、無機粒子(a)は接着性ポリマーによって被覆される。
【0012】
前記ベースポリマー及び接着性ポリマーはシリコーンポリマーが好ましい。シリコーンポリマーは耐熱性が高く、耐熱試験により劣化したり分解する恐れは少ない。
【0013】
前記接着性ポリマーは、アルミ板との引張りせん断接着強さが50N/cm
2以上あるのが好ましい。より好ましくは80N/cm
2以上であり、さらに好ましくは100N/cm
2以上である。上限値は800N/cm
2以下が好ましく、より好ましくは500N/cm
2以下であり、さらに好ましくは300N/cm
2以下である。
【0014】
前記接着性ポリマーは、メチル水素ポリシロキサンと、エポキシ基含有アルキルトリアルコキシシランと、環状ポリシロキサンオリゴマーを含むのが好ましい。これにより、無機粒子(A)との接着性を高く維持できる。
【0015】
前記ベースポリマーは、付加硬化型シリコーンポリマーが好ましい。その理由は、付加硬化型は過酸化物硬化型、縮合硬化型と比較して、硬化のコントロールがしやすく、副生成物が発生しない。また、縮合硬化型は、内部の硬化が不十分となることがある。そのため、付加硬化型が好ましい。
【0016】
前記熱伝導性組成物は、さらにシリコーンオイルを含むのが好ましい。接着性ポリマーを加えたことにより、硬化前の材料粘度が上昇したり、硬化物の硬さが硬くなりやすい。そこで、シリコーンオイルを加えることで、硬化前の材料粘度が下がり作業性が良くなる。また、硬化物も柔らかくなる。シリコーンオイルの添加量はベースポリマー成分100重量部に対し、5〜30重量部含むのが硬化性と作業性の点で好ましい。
【0017】
前記熱伝導性粒子は、アルミナ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化アルミニウムおよびシリカから選ばれる少なくとも一つであるのが好ましい。これらの粒子は熱伝導性が高く、電気絶縁性に優れ、熱伝導性組成物シートの原料として使いやすいからである。
【0018】
前記熱伝導性組成物は、シート成形されているのが好ましい。シート成形されていると、使い勝手が良い。シート以外としては、ポッテング材としてもよい。ポッテング材は注型材料(キャスト材料)と同義である。ポッテング材にする場合は、未硬化状態とし、注型した後に硬化させる。
【0019】
マトリックス成分100重量部に対し、熱伝導性粒子は100〜3000重量部を含むのが好ましい。これにより熱伝導性組成物シートの熱伝導率は0.3W/m・K以上となる。好ましくは、マトリックス成分100重量部に対し、熱伝導性粒子は400〜3000重量部であり、さらに好ましくは800〜3000重量部である。また、熱伝導性粒子合計量を100重量部とすると、比表面積が1m
2/g以下の無機粒子(a)は、10〜90重量部とするのが好ましい。前記においてマトリックス成分とは、ベースポリマーと、接着性ポリマーと、シリコーンオイルの混合物のことをいう。
【0020】
前記熱伝導性粒子は、シラン化合物、チタネート化合物、アルミネート化合物、もしくはその部分加水分解物により表面処理されていてもよい。これにより、硬化触媒や架橋剤の失活を防止でき、貯蔵安定性を向上できる。
【0021】
本発明の熱伝導性組成物は、下記組成のコンパウンドを架橋して得るのが好ましい。
1 一次混合工程
接着性ポリマーと比表面積が1m
2/g以下の無機粒子(a)を混合することで、無機粒子(a)を接着性ポリマーによって被覆し、一次混合物とする。接着性ポリマーの添加量はベースポリマー100重量部に対して好ましくは5〜35重量部である。
接着性ポリマーは、メチル水素ポリシロキサンと、エポキシ基含有アルキルトリアルコキシシランと、環状ポリシロキサンオリゴマーを含むのが好ましい。エポキシ基含有アルキルトリアルコキシシランは、例えば下記化学式(化1)で示されるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランがあり、環状ポリシロキサンオリゴマーは例えば下記化学式(化2)で示されるオクタメチルシクロテトラシロキサンがある。
熱伝導性粒子は、マトリックス成分100重量部に対して400〜3000重量部添加するのが好ましい。熱伝導性粒子合計量を100重量部とすると、比表面積が1m
2/g以下の無機粒子(a)は、10〜90重量部とするのが好ましい。
【0024】
2 二次混合工程
次に一次混合物と、ベースポリマー、触媒、無機粒子(b)、触媒その他の添加物を加えて混合し、シート成形し、硬化する。ベースポリマーには、下記のベースポリマー成分(A成分)と架橋成分(B成分)と触媒成分(C成分)が含まれる。
【0025】
以下、二次混合工程で混合する各成分について説明する。
(1)ベースポリマー成分(A成分)
ベースポリマー成分は、一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上含有するオルガノポリシロキサンであり、アルケニル基を2個以上含有するオルガノポリシロキサンは本発明のシリコーンゴム組成物における主剤(ベースポリマー成分)である。このオルガノポリシロキサンは、アルケニル基として、ビニル基、アリル基等の炭素原子数2〜8、特に2〜6の、ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に2個以上有する。粘度は25℃で10〜100,000mPa・s、特に100〜10,000mPa・sであることが作業性、硬化性などから望ましい。
【0026】
具体的には、下記一般式(化3)で表される1分子中に平均2個以上かつ分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンを使用する。側鎖はアルキル基で封鎖された直鎖状オルガノポリシロキサンである。25℃における粘度は10〜100,000mPa・sのものが作業性、硬化性などから望ましい。なお、この直鎖状オルガノポリシロキサンは少量の分岐状構造(三官能性シロキサン単位)を分子鎖中に含有するものであってもよい。
【0028】
式中、R
1は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基であり、R
2はアルケニル基であり、kは0又は正の整数である。ここで、R
1の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、並びに、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基、シアノエチル基等が挙げられる。R
2のアルケニル基としては、例えば炭素原子数2〜6、特に2〜3のものが好ましく、具体的にはビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられ、好ましくはビニル基である。一般式(3)において、kは、一般的には0≦k≦10000を満足する0又は正の整数であり、好ましくは5≦k≦2000、より好ましくは10≦k≦1200を満足する整数である。
【0029】
A成分のオルガノポリシロキサンとしては一分子中に例えばビニル基、アリル基等の炭素原子数2〜8、特に2〜6のケイ素原子に結合したアルケニル基を3個以上、通常、3〜30個、好ましくは、3〜20個程度有するオルガノポリシロキサンを併用しても良い。分子構造は直鎖状、環状、分岐状、三次元網状のいずれの分子構造のものであってもよい。好ましくは、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、25℃での粘度が10〜100,000mPa・s、特に100〜10,000mPa・sの直鎖状オルガノポリシロキサンである。
【0030】
アルケニル基は分子のいずれかの部分に結合していればよい。例えば、分子鎖末端、あるいは分子鎖非末端(分子鎖途中)のケイ素原子に結合しているものを含んでも良い。なかでも下記一般式(化4)で表される分子鎖両末端のケイ素原子上にそれぞれ1〜3個のアルケニル基を有し(但し、この分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基が、両末端合計で3個未満である場合には、分子鎖非末端(分子鎖途中)のケイ素原子に結合したアルケニル基を、(例えばジオルガノシロキサン単位中の置換基として)、少なくとも1個有する直鎖状オルガノポリシロキサンであって)、上記でも述べた通り25℃における粘度が10〜100,000mPa・sのものが作業性、硬化性などから望ましい。なお、この直鎖状オルガノポリシロキサンは少量の分岐状構造(三官能性シロキサン単位)を分子鎖中に含有するものであってもよい。
【0032】
式中、R
3は互いに同一又は異種の非置換又は置換一価炭化水素基であって、少なくとも1個がアルケニル基である。R
4は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基であり、R
5はアルケニル基であり、l,mは0又は正の整数である。ここで、R
3の一価炭化水素基としては、炭素原子数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基やシアノエチル基等が挙げられる。
【0033】
また、R
4の一価炭化水素基としても、炭素原子数1〜10、特に1〜6のものが好ましく、上記R
1の具体例と同様のものが例示できるが、但しアルケニル基は含まない。R
5のアルケニル基としては、例えば炭素数2〜6、特に炭素数2〜3のものが好ましく、具体的には前記式(化3)のR
2と同じものが例示され、好ましくはビニル基である。
【0034】
l,mは、一般的には0<l+m≦10000を満足する0又は正の整数であり、好ましくは5≦l+m≦2000、より好ましくは10≦l+m≦1200で、かつ0<l/(l+m)≦0.2、好ましくは、0.0011≦l/(l+m)≦0.1を満足する整数である。
【0035】
(2)架橋成分(B成分)
本発明のB成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは架橋剤として作用するものであり、この成分中のSiH基とA成分中のアルケニル基とが付加反応(ヒドロシリル化)することにより硬化物を形成するものである。かかるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を2個以上有するものであればいずれのものでもよく、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、一分子中のケイ素原子の数(即ち、重合度)は2〜1000、特に2〜300程度のものを使用することができる。
【0036】
水素原子が結合するケイ素原子の位置は特に制約はなく、分子鎖の末端でも非末端(途中)でもよい。また、水素原子以外のケイ素原子に結合した有機基としては、前記一般式(化3)のR
1と同様の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基が挙げられる。
B成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては下記構造のものが例示できる。
【0038】
上記の式中、R
6は互いに同一又は異種の水素、アルキル基、フェニル基、エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、アルコキシ基であり、少なくとも2つは水素である。Lは0〜1,000の整数、特には0〜300の整数であり、Mは1〜200の整数である。
【0039】
(3)触媒成分(C成分)
C成分の触媒成分は、本組成物の一段階目の硬化を促進させる成分である。C成分としては、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒を用いることができる。例えば白金黒、塩化第2白金酸、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類やビニルシロキサンとの錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。C成分の配合量は、硬化に必要な量であればよく、所望の硬化速度などに応じて適宜調整することができる。A成分に対して金属原子重量として0.01〜1000ppm添加するのが好ましい。
【0040】
(4)熱伝導性粒子
二次混合工程で熱伝導性粒子を添加する場合は、比表面積が1m
2/gを超える無機粒子(b)とする。熱伝導性粒子合計量を100重量部とすると、比表面積が1m
2/g以下の無機粒子(a)は、10〜90重量部とするのが好ましい。残りは無機粒子(b)とするのが好ましい。これにより、大きな粒子径の間に小さな粒子径の熱伝導性無機粒子が埋まり、最密充填に近い状態で充填でき、熱伝導性が高くなる。
【0041】
一次及び二次混合工程で混合する熱伝導性粒子としては、アルミナ,酸化亜鉛,酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム及びシリカから選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。形状は球状,鱗片状,多面体状等様々なものを使用できる。アルミナを使用する場合は、純度99.5質量%以上のα−アルミナが好ましい。比表面積はBET比表面積であり、測定方法はJIS R1626にしたがう。平均粒子径を用いる場合は、粒子径の測定はレーザー回折光散乱法により、体積基準による累積粒度分布のD50(メジアン径)を測定する。この測定器としては、例えば堀場製作所社製のレーザー回折/散乱式粒子分布測定装置LA−950S2がある。
【0042】
二次混合工程で混合する無機粒子(b)は、R
aSi(OR’)
3-a(Rは炭素数1〜20の非置換または置換有機基、R’は炭素数1〜4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるシラン化合物、もしくはその部分加水分解物で表面処理するのが好ましい。R
aSi(OR’)
3-a(Rは炭素数1〜20の非置換または置換有機基、R’は炭素数1〜4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物(以下単に「シラン」という。)は、一例としてメチルトリメトキシラン,エチルトリメトキシラン,プロピルトリメトキシラン,ブチルトリメトキシラン,ペンチルトリメトキシラン,ヘキシルトリメトキシラン,ヘキシルトリエトキシシラン,オクチルトリメトキシシラン,オクチルトリエトキシラン,デシルトリメトキシシラン,デシルトリエトキシシラン,ドデシルトリメトキシシラン,ドデシルトリエトキシシラン,ヘキサデシルトリメトキシシラン,ヘキサデシルトリエトキシシラン,オクタデシルトリメトキシシラン,オクタデシルトリエトキシシラン等のシラン化合物がある。前記シラン化合物は、一種又は二種以上混合して使用することができる。表面処理剤として、アルコキシシランと片末端シラノールシロキサンを併用してもよい。ここでいう表面処理とは共有結合のほか吸着なども含む。
【0043】
(5)シリコーンオイル
シリコーンオイルは、ポリジメチルシロキサン系が好ましい。シリコーンオイルの粘度は回転粘度計で、10〜10000mPa・s(25℃)が好ましい。
【0044】
(6)その他の添加物
本発明の組成物には、必要に応じて前記以外の成分を配合することができる。例えばベンガラなどの無機顔料、無機粒子の表面処理等の目的でアルキルトリアルコキシシランなどを添加してもよい。無機粒子表面処理などの目的で添加する材料として、アルコキシ基含有シリコーンを添加しても良い。
【実施例】
【0045】
以下実施例を用いて説明する。本発明は実施例に限定されるものではない。
<熱伝導率>
熱伝導性組成物の熱伝導率は、ホットディスク(ISO 22007−2準拠)により測定した。この熱伝導率測定装置11は
図1Aに示すように、ポリイミドフィルム製センサ12を2個の熱伝導性組成物試料13a,13bで挟み、センサ12に定電力をかけ、一定発熱させてセンサ12の温度上昇値から熱特性を解析する。センサ12は先端14が直径7mmであり、
図1Bに示すように、電極の2重スパイラル構造となっており、下部に印加電流用電極15と抵抗値用電極(温度測定用電極)16が配置されている。熱伝導率は以下の式(数1)で算出した。
【0046】
【数1】
<粘度>
JIS K7117−1:1999準拠
測定装置:ブルックフィールド型回転粘度計C型(スピンドル番号は粘度に合わせて変更)
回転速度:10RPM
測定温度:25℃
<硬さ>
JIS K7312に準拠するAsker C硬さを測定した。
<引張りせん断接着強さ>
JIS K6850準拠する下記の方法で測定した。説明図は
図2に示す。
測定器:東洋ボールドウィン製UTM−4−100
接着面積:L1=3cm、L2=2.5cm
試験片:1対のアルミニウム合金板21,22がポリマー23によって接着されたものを試験片として用意した。ポリマーの厚みL3=0.14cmとなるよう固定し、硬化させた。
試験方法:上記試験片を用いて引張試験を行い、破断時の力の最大値(N)を接着破断荷重(破断点の荷重)とし、接着面積(3cm×2.5cm)で除した値を引張せん断接着強度(N/cm
2)とした。
硬化条件:室温24時間
引張速度:500mm/min
<引張り強度>
JIS K 6521に準拠する下記の方法で測定した。
測定器:エーアンドディ製RTG−1210(ロードセル 1kN)
試験片:JIS K6251 2号型 ダンベル状
試験方法: 上記試験片を用いて引張試験を行い、破断時の引張強さ(MPa)を測定した。
引張速度:500mm/min
<圧縮反発力>
測定器:アイコーエンジニアリング製 MODEL1310NW(ロードセル 1kN)
試験片:直径16mm
アルミプレート:22.8mm×22.8mm×4mmt
SUSプレート:直径13.9mm×4mmt
圧縮速度:10mm/min
試験方法:アルミプレートの上に試験片を乗せ、その上にSUSプレートを重ねた状態で0.4mmまで圧縮し、10分静置した際の荷重値を圧縮反発力(N)とした。
【0047】
(実施例1)
(1)接着性ポリマー
メチル水素ポリシロキサン20〜30質量%と、前記化学式(化1)で示されるγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1〜10質量%と、前記化学式(化2)で示されるオクタメチルシクロテトラシロキサン0.1〜1質量%と、カーボンブラック1〜10質量%、残余はシリコーンポリマーを含む市販の接着性ポリマーを用いた。
アルミ板に対する接着性ポリマーの引張りせん断接着強さは表1に示すとおりであった。
(2)ベースポリマー
ベースポリマーとして、市販の二液室温硬化シリコーンポリマーを使用した。この二液室温硬化シリコーンポリマーのA液にはベースポリマー成分と白金系金属触媒が予め添加されており、B液にはベースポリマー成分と架橋成分が予め添加されている。
アルミ板に対するベースポリマーの引張りせん断接着強さは表1に示すとおりであった。
【0048】
【表1】
【0049】
(3)シリコーンオイル
回転粘度計による粘度が97mPa・sのジメチルポリシロキサン系シリコーンオイルを使用した。
(4)熱伝導性粒子
熱伝導性粒子として表2に示すアルミナを使用した。
【0050】
【表2】
【0051】
(5)コンパウンドの作成
一次混合工程で、前記接着性ポリマーとアルミナ粉Aをよく混合し、混合物1とした。
次に二次混合工程で、混合物1にベースポリマーと、アルミナ粉B、アルミナ粉C、白金系触媒、架橋成分を加えてよく混合し、混合物2とした。
(6)熱伝導性組成物の成形
前記混合物2をポリエステル(PET)フィルムに挟んで厚み2mmのシート状に圧延し、100℃で2時間硬化処理した。
【0052】
(比較例1)
前記コンパウンドの作成工程で、すべての材料を同時に混合した以外は実施例1と同様に実施した。
以上のようにして得られた熱伝導性組成物の条件と物性を表3−4及び
図3−4にまとめて示す。
図3−4は、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法(SEM/EDX)の表面写真である。
表4は、SEM/EDXを用いて比表面積が1m
2/g以下の無機粒子(a)表面のSi及びAl質量濃度(mass%)を測定した結果である。
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】
表3から明らかなとおり、実施例1の引張り強度および圧縮反発力は比較例1に比べて高かった。これは、無機粒子(a)表面の接着性ポリマーとの接着力が高いことに起因していると思われる。
表4から明らかなとおり、実施例1のAlに対するSiの割合は比較例1に比べて高かった。これは、大粒子表面にポリマー成分が多く存在していることを示している。また、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分光法(SEM/EDX)の画像データからも、比較例1(
図4)は無機粒子(a)が露出しているのに対し、実施例1(
図3)は無機粒子(a)表面をポリマー成分が被覆していることが確認できた。
/g以下の無機粒子(a)を混合し、前記無機粒子(a)を前記接着性ポリマーによって被覆する一次混合工程と、ベースポリマーを加えて混合する二次混合工程と、硬化させる工程を含む。これにより、熱伝導性が高く、圧縮反発力も高く、かつ応力による界面剥離を低減した熱伝導性組成物及びその製造方法を提供する。