(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6895618
(24)【登録日】2021年6月10日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】雪崩予防柵用雪庇形成防止体および雪庇の形成防止法
(51)【国際特許分類】
E01F 7/04 20060101AFI20210621BHJP
【FI】
E01F7/04
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-228577(P2018-228577)
(22)【出願日】2018年12月5日
(65)【公開番号】特開2020-90844(P2020-90844A)
(43)【公開日】2020年6月11日
【審査請求日】2020年7月17日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594081250
【氏名又は名称】株式会社北洋
(74)【代理人】
【識別番号】100082234
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145078
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】大島 修一
【審査官】
石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−351047(JP,A)
【文献】
特開2003−155710(JP,A)
【文献】
特開2002−173913(JP,A)
【文献】
特開2006−037576(JP,A)
【文献】
特開2019−190119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雪崩予防柵の上端側に設ける雪庇形成防止体であって、前記雪崩予防柵に横方向に離間して立設する複数本の連結基材からなる連結部と、該各連結基材の上端側に上方に向けて設ける支持材からなる支持部と、該支持部に横設する複数枚の冠雪防止板とからなり、該複数枚の冠雪防止板の各々は上下に離間して配置することで間隙を形成し、かつ上側の冠雪防止板に対して下側の冠雪防止板は後方に変位させてあることを特徴とする雪崩予防柵用雪庇形成防止体。
【請求項2】
前記冠雪防止板は、前記支持部と前記連結部との間に架設した角度調整材によって傾斜角度が変位可能であることを特徴とする請求項1記載の雪崩予防柵用雪庇形成防止体。
【請求項3】
前記連結部は、前記雪崩予防柵に対し着脱可能であることを特徴とする請求項1記載の雪崩予防柵用雪庇形成防止体。
【請求項4】
前記冠雪防止板は、縦方向にスリットを形成してあることを特徴とする請求項1記載の雪崩予防柵用雪庇形成防止体。
【請求項5】
前記冠雪防止板は、少なくとも一部に複数の通気穴を形成してあることを特徴とする請求項1記載の雪崩予防柵用雪庇形成防止体。
【請求項6】
前記冠雪防止板は、アルミニウム板で構成してあることを特徴とする請求項1記載の雪崩予防柵用雪庇形成防止体。
【請求項7】
傾斜地に設置する雪崩予防柵の上端側に位置して、複数枚の冠雪防止板を上下に離間し、かつ下側の該冠雪防止板は上側の冠雪防止板より後退させて配置することにより横長の間隙を形成し、前記傾斜地の山側から吹き下ろす風雪を該間隙に貫流させることで、前記雪崩予防柵の上端側に雪庇が形成されるのを防止するようにした雪庇の形成防止法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雪崩予防柵に雪庇が形成されることを防止する雪崩予防柵用雪庇形成防止体および雪庇の形成防止法に関する。
【背景技術】
【0002】
降雪地では、道路脇等の法面における雪崩を防止するために、その中腹に雪崩予防柵が設置されている。
図15に示すように、雪崩予防柵51が設置されると、降雪は地盤から梁材51Aに沿って雪崩予防柵51の上端側に向かって積雪していく。積雪が進むと、雪崩予防柵51を乗り越えて庇のように外側にせり出す雪庇52が形成される。
【0003】
雪庇52は、成長して大きくなると自重により破断して雪塊となって転落し、雪崩を誘発する、或は道路にまで達して歩行者や通行車両等の通行を妨げるおそれがある。このような危険を回避するために、形成された雪庇52が落下する前に、雪庇52の除去作業を行う必要がある。
【0004】
しかしながら、この除去作業は傾斜面で行うものであるから、路肩の交通規制を行った上で高所作業車等を用いることにより、或は上側にある雪崩予防柵や立木に固定したロープで体を支えながら作業員が人力で行うことから、危険を伴う。また、雪庇52の落下時期の予測は容易でなく、除去作業の効率的な実施時期を判断することが困難であることや、厳冬期には一般の除雪作業との兼ね合いで人員・車両の確保が困難な場合があることも、雪庇52の除去作業を難しくしている。そのため、雪庇52の形成そのものを防ぐ技術が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第3134480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、雪庇の形成を防止する技術については、未だ決定的なものが見出されるには至っていない。本発明はこのような未解決の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、雪崩予防柵に雪庇が形成されるのを効果的に防止する雪崩予防柵用雪庇形成防止体および雪庇の形成防止法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)上述した課題を解決するために構成した請求項1に係る本発明の手段は、雪崩予防柵の上端側に設ける雪庇形成防止体であって、前記雪崩予防柵に横方向に離間して立設する複数本の連結基材からなる連結部と、該各連結基材の上端側に上方に向けて設ける支持材からなる支持部と、該支持部に横設する複数枚の冠雪防止板とからな
り、該複数枚の冠雪防止板の各々は上下に離間して配置することで間隙を形成し、かつ上側の冠雪防止板に対して下側の冠雪防止板は後方に変位させたものからなる。
(2)そして、前記冠雪防止板は、前記支持部と前記連結部との間に架設した角度調整材によって傾斜角度が変位可能であるとよい。
(3)また、前記連結部は、前記雪崩予防柵に対し着脱可能であるとよい。
(4)また、前記冠雪防止板は、縦方向にスリットを形成してあるとよい。
(5)また、前記冠雪防止板は、少なくとも一部に複数の通気穴を形成してあるとよい。
(6)また、前記冠雪防止板は、アルミニウム板で構成してあるとよい。
(7)さらに、上述した課題を解決するために構成した請求項
7に係る本発明の手段は、傾斜地に設置する雪崩予防柵の上端側に位置して、複数枚の冠雪防止板を上下に離間し、かつ下側の該冠雪防止板は上側の冠雪防止板より後退させて配置することにより横長の間隙を形成し、前記傾斜地の山側から吹き下ろす風雪を該間隙に貫流させることで、前記雪崩予防柵の上端側に雪庇が形成されるのを防止することからなる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は上述の如く構成したから、下記の諸効果を奏する。
(1)雪崩予防柵の上端側に雪庇形成防止体を立設し、雪崩予防柵の屋根のように機能させるから、雪崩予防柵の支柱や梁材上への積雪を抑制し、雪庇の形成を防止できる。
(2)冠雪防止板を、支持部と連結部との間に架設した角度調整材によって傾斜角度を変位可能にしたから、法面に対する雪崩予防柵の設置角度、法面の傾斜角度、設置地域の気候等の積雪条件に応じて冠雪防止板の設置角度を変更できる。
(3)冠雪防止板の各々を上下に離間して配置することで隙間を形成し、かつ上側の冠雪防止板に対して下側の冠雪防止板を後方に変位させた雪庇形成防止体を雪崩予防柵に設けたから、雪庇形成防止体が雪崩予防柵の屋根のように機能し、かつ風雪が当該間隙を通過するよう誘導することで、雪崩予防柵上端側への積雪を抑制し、雪庇の形成を効果的に防止できる。
また、複数の冠雪防止板を離間して上下に配列する構成にしたから、冠雪防止板の谷側の表面の積雪を冠雪防止板毎に分割することで、着雪を抑制できるし、また積雪が滑動し易いため落雪作業が容易になる。
(4)連結部を雪崩予防柵に対し着脱可能にしたから、既設の雪崩予防柵についても雪庇形成防止体を設置することができる。
(5)冠雪防止板は縦方向にスリットを形成する構成にしたから、このスリットから風雪の一部を逃がすことができ、風圧に対する雪庇形成防止体の耐久性が高まる。
また、雪庇形成防止体の谷側の表面に堆積する積雪がこのスリットを境に分割された状態になるから、雪庇形成防止体への着雪を抑制できる。さらに、着雪した場合であっても、雪塊が小さいため積雪が滑動し易く、落雪作業が容易になる。
(6)冠雪防止板は少なくとも一部に通気穴を形成する構成にしたから、この通気穴から風雪を逃がすことにより、風圧に対する雪庇形成防止体の耐久性が高まる。
(7)冠雪防止板はアルミニウム板で構成したから、熱伝導率が高く、太陽熱を利用して冠雪防止板の表面に付いた雪を解かすことができるため、雪庇の形成防止に効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1乃至
図6は本発明の第1の実施の形態に係り、
図1は雪庇形成防止体を設けた雪崩予防柵の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】雪庇形成防止体を設けた雪崩予防柵の正面図である。
【
図3】雪庇形成防止体を設けた雪崩予防柵の背面図である。
【
図4】法面に設置した状態の雪崩予防柵の側面図である。
【
図5】
図4に示す雪庇形成防止体の部分拡大図である。
【
図7】
図7乃至
図12は本発明の第2の実施の形態に係り、
図7は雪庇形成防止体を設けた雪崩予防柵の全体構成を示す斜視図である。
【
図8】雪庇形成防止体を設けた雪崩予防柵の正面図である。
【
図9】雪庇形成防止体を設けた雪崩予防柵の背面図である。
【
図10】法面に設置した状態の雪崩予防柵の側面図である。
【
図12】風雪の流れを模式的に示した説明図である。
【
図13】第3の実施の形態に係る雪庇形成防止体の部分拡大図である。
【
図14】変形例を示す雪庇形成防止体の部分拡大図である。
【
図15】従来の雪崩予防柵に雪庇が形成された状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の第1の実施の形態を
図1乃至
図6を参照しつつ詳述する。図において、1は雪崩を防止するために法面に設置する雪崩予防柵を示す。2、2、2は該雪崩予防柵1を構成するH型鋼材からなる支柱で、下端部は地盤G(
図4)に埋設してある。3、3、・・・は該支柱2、2、2間に上下方向に離間して横架した鋼管からなる梁材で、図示しないUボルトとナットにより支柱2、2、2に締着してある。雪崩予防柵1の幅・高さは、設置する法面や地域の状況に合わせて適宜変更するとよい。
【0011】
4は雪崩予防柵1の上端側に立設した雪庇形成防止体である。5は該雪庇形成防止体4を構成する連結部で、該連結部5は長さ約620mmのL字鋼材からなる複数の連結基材5A、5A・・・を横方向に離間して上側2本の梁材3、3にUボルト9、9、・・・とナット(図示しない)で締結することにより縦立して構成してある。6は雪庇形成防止体4を構成する支持部で、該支持部6は連結部5の連結基材5A、5A、・・・の上端部から上方に向かって一体に延伸する長さ約600mmのL字鋼材からなる複数の支持材6A、6A、・・・で構成してある。
【0012】
7は雪庇形成防止体4を構成する冠雪防止板で、該冠雪防止板7は横長長方形のアルミニウム平板で形成してある。該冠雪防止板7は、背面に溶接した上下一対のL字状のリブ7A、7A、・・・をボルト7B、7B・・・とナットで支持材6A、6A、・・・に締着することにより支持部6に横設してある。
【0013】
8、8、・・・は雪庇形成防止体4を構成し、連結部5と支持部6との間に架設した丸鋼からなる補強ロッドである。該補強ロッド8、8、・・・は、上下の端部を連結基材5A、5A、・・・、支持材6A、6A、・・・にそれぞれ溶接してある。
【0014】
本実施の形態に係る雪庇形成防止体4は上述の構成からなるが、次にその作用・効果について説明する。前述のとおり、本来であれば、傾斜した地盤Gに設置した雪崩予防柵1には積雪によってその上端側に雪庇が形成されるが、本実施の形態では雪崩予防柵1の上端側に雪庇形成防止体4を立設したから、これが雪崩予防柵1の屋根のように機能して、雪崩予防柵1の支柱2や梁材3上への積雪を抑制し、雪庇の形成を防止できる。
【0015】
また、連結部5を雪崩予防柵1に対して着脱可能にしたから、新たに設置する雪崩予防柵だけでなく、既設の雪崩予防柵についても雪庇形成防止体4を設置することができる。
【0016】
さらに、冠雪防止板7は熱伝導率が高いアルミニウム板で構成したから、太陽熱を利用して冠雪防止板7の表面に付いた雪を解かすことができるため、雪庇の形成防止に効果的に寄与する。
【0017】
なお、雪崩予防柵1の山側への積雪量は、法面に対する雪崩予防柵1の設置角度、法面の傾斜角度、設置地域の気候等の条件により異なるため、連結部5に対する支持部6の傾斜角度はこれらの積雪条件に応じて設定するとよい。より詳しくは、この傾斜角度は、目安として、水平面に対して冠雪防止板7が約60度〜70度の範囲内で傾斜する設定にすることが望ましい。
【0018】
なお、本実施の形態の変形例として、
図6に示すように、冠雪防止板7に縦方向のスリット7C、7C、7Cを設けてもよい。このスリット7Cから風雪の一部を逃がすことにより、風圧に対する雪庇形成防止体4の耐久性が高まる。また、雪庇形成防止体4の谷側の表面に堆積する積雪がこのスリット7Cを境に分割された状態になるから、雪庇形成防止体4への着雪を抑制できる。さらに、着雪した場合であっても、雪塊が小さいため積雪が滑動し易く、落雪作業が容易になる。なお、スリット7Cの数はこれに限られず、設置地域の条件に応じて適宜変更が可能である。
【0019】
また、第1の実施の形態の変形例として、冠雪防止板7の少なくとも一部を多孔板により構成してもよい。この多孔板の通気穴から風雪の一部を逃がすことができるから、風圧に対する雪庇形成防止体4の耐久性が高まる。なお、第2の実施の形態のように冠雪防止板26を複数用いる場合には、必ずしもすべての冠雪防止板26を多孔板により構成する必要はなく、少なくともその一部を多孔板にしてもよい。
【0020】
更に、他の変形例として、実施の形態では、冠雪防止板はアルミニウム板を用いたが、これに限定されず、熱伝導率が良好な材料を用いて同様の効果を奏することが可能である。なお、当然ながら、本実施の形態や変形例は、冠雪防止板の材質としてこのような熱伝導率が良好なものに限定することを意味するものではなく、冠雪防止板には、熱伝導率に依らず種々の材質の材料を採用し得る。
【0021】
ついで、本発明の第2の実施の形態を
図7乃至
図12を参照しつつ詳述する。なお、以下に説明する実施の形態、変形例において、第1の実施の形態の構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して援用し、その説明は省略する。
【0022】
本実施の形態においては、第1の実施の形態と異なり、雪庇形成防止体21の連結部22と支持部23とが別体で構成してあり、支持部23の複数の支持材23A、23A、・・・は長さ約1,220mmのL字鋼材からなり、連結部22の連結基材22A、22A、・・・の上端部それぞれに回動可能に軸着してある。
【0023】
該連結部22と支持部23との間には、雪庇形成防止体21を構成するL字鋼からなる角度調整材24、24、・・・が架設してある。詳細には、連結基材22A、22A・・・および支持材23A、23A、・・・それぞれの側面には、角度調整穴22Bと23Bが複数穿設してあり、角度調整材24、24、・・・は、上下の端部24A、24Bそれぞれを該角度調整穴22B、23Bに図示しないボルトとナットで締着してある。
【0024】
支持部23には、3枚の冠雪防止板26、26、26がリブ26A、26A、・・・を介して横設してあり、その各々を上下に離間して配置することにより20mm程の隙間Xを形成してある。さらに、下側のボルト26Bには支持材23Aとの間に複数個のスペーサ26Cを環装し、冠雪防止板26、26、26はいずれも若干上向きに傾斜させることにより、上側の冠雪防止板26に対して下側に位置する冠雪防止板26の上端側が後方(支持材23Aに近接する方向)に変位した状態にしてあり、上側の冠雪防止板26の下端部26Eと下側の冠雪防止板26の上端部26Dとの間に20mm程の間隙Yを形成してある。
【0025】
なお、上下の冠雪防止板26、26、26を支持する支持材23A、23A、・・・同士を全ネジボルト27、27、・・・を用いて連結し、風圧による雪庇形成防止体21の捩じれを防止してある。また、角度調整材24、24、・・・の間には適宜ブレース25、25、・・・を筋交い状に張設して、雪庇形成防止体21に強度性を持たせてある。
【0026】
本実施の形態に係る雪庇形成防止体21は上述の構成からなるが、次にその作用・効果について説明する。本実施の形態においては、複数の冠雪防止板26、26、26を間隙X、Yを形成するように設置し、
図12に示すように風雪Fが該間隙X、Yを通過するよう誘導するから、雪崩予防柵1の支柱2や梁材3上への積雪を抑制することができるので、さらに効果的に雪庇の形成を防止できる。
【0027】
また、複数の冠雪防止板26、26、26を離間して上下に配列して風を受ける構成にしたから、雪庇形成防止体21の谷側の表面に堆積する積雪が冠雪防止板26、26、26毎に分割された状態となり、着雪を抑制できる。また、着雪した場合であっても、雪塊が小さいため積雪が滑動し易く、落雪作業が容易になる。
【0028】
さらに、角度調整穴22B、23Bは複数穿設してあるから、使用する角度調整穴22B、23Bを変えることで、雪崩予防柵の設置箇所の積雪条件に応じて連結部22に対する支持部23の傾斜角度を調整することができる。
【0029】
なお、第2の実施の形態において、冠雪防止板26、26、26を傾斜させるためにスペーサ26Cを用いたが、変形例として、上下のリブ26A、26Aに寸法差を設けることで傾斜をつけてもよい。
【0030】
第2の実施の形態では、角度調整材24は角度調整穴22B、23Bを用いて上下それぞれの端部を変位可能にして、支持部23と連結部22の傾斜角度を調整できる構成にしたが、変形例として、いずれか一端部を回動可能に軸支し、他端部を角度調整穴22Bまたは23Bを用いて変位可能にする構成にしてもよい。また、角度調整材24を伸縮固定できる構成にして、角度調整を行ってもよい。
【0031】
第2の実施の形態において冠雪防止板26の数は3枚にしたが、これに限られず、雪崩予防柵の寸法や、設置地域の気候等の積雪条件に応じて適宜変更が可能である。また、冠雪防止板26、26、26間の間隙X、Yはいずれも20mm程度に設定したが、これに限られず、雪崩予防柵の寸法や、設置地域の気候等の積雪条件に応じて適宜変更が可能である。
【0032】
ついで、本発明の第3の実施の形態を
図13を参照しつつ詳述する。
本実施の形態の雪庇形成防止体31は、第2の実施の形態と比較して、冠雪防止板32、32、・・・の構成が相違する。詳しくは、上段の冠雪防止板32は、背面に溶接した高さの等しい上下一対のL字状のリブ32A、32Aをボルト26B、26Bとナットで支持材23A、23A、・・・に締着することにより、支持部23に対して平行な状態で横設してある。さらに、上段の冠雪防止板32のリブ32A、32Aに対して中段の冠雪防止板32のリブ32B、32Bの長さを短く設定し、中段の冠雪防止板32のリブ32B、32Bに対して下段の冠雪防止板32のリブ32C、32Cの長さを短く設定して、中段・下段の冠雪防止板32、32を支持部23に横設してあるから、冠雪防止板32、32、・・・は下方に行くに従って後方(支持材23Aに近接する方向)に変位し、階段状に設置してある。
【0033】
本実施の形態に係る雪庇形成防止体31は上述の構成からなるが、次にその作用・効果について説明する。本実施の形態では、支持部23への取り付けに際して、3枚の冠雪防止板32、32、32に傾斜を付ける必要がなく、また第2の実施の形態のスペーサ26Cのような部品が不要で部品数が少なく済むから、施工が容易である。
【0034】
なお、本実施の形態の変形例として、冠雪防止板36、36、36をリブ32A、32B、32Cを用いずに直接支持部23に固定してもよい。具体的には、
図14に示すように、本変形例に係る冠雪防止板36、36、36は上下の縁部36A、36Bを内側に向かって断面コ字状に折り曲げてあり、該上下縁部36A、36Bをボルト36Cとナットを用いて支持材23Aに締着してある。この構成によれば、冠雪防止板36を支持部23に直接固定できるため、雪庇形成防止体31の強度がより高まる。
【0035】
また、本実施の形態では雪庇形成防止体31はUボルト9を用いて雪崩予防柵1と連結したが、変形例として他の連結方法を用いてもよい。すなわち、連結部38を構成する一対の連結基材38Aの一方の縁部に、補強壁面38B
1を設けた上下一対のL型のブラケット38Bの一端側を溶接し、その他端側に他方の連結基材38Aをボルト38Cとナットによって着脱可能に締着してある。
【0036】
雪庇形成防止体31と雪崩予防柵1の連結は、一対のブラケット38B、38Bの間に雪崩予防柵1の上端側の2本の梁材3、3が収まるように雪庇形成防止体31を載置し、他方の連結基材38Aをブラケット38Bに締着固定することにより行う。既設の雪崩予防柵1では横設してある梁材3、3の間隔が統一されておらず個体差があるが、この連結方法によれば、雪庇形成防止体31は間隔の異なる種々の雪崩予防柵1に対応することができる。
【0037】
なお、上述した実施の形態および変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施の形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0038】
1 雪崩予防柵
4 雪庇形成防止体
5 連結部
5A 連結基材
6 支持部
6A 支持材
7 冠雪防止板