(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して例示的な実施形態を説明する。
【0011】
なお、以下の説明では、
図1及び
図2の奥行き方向を「前後方向」と呼ぶ。前後方向のうち、奥から手前に向かう方向を「前方X」と呼び、手前から奥に向かう方向を「後方」と呼ぶ。さらに、前方を向いて金属回収装置100を見たときの該金属回収装置100の前面を「正面」と呼ぶ。
【0012】
また、
図1及び
図2の右側及び左側のうちの一方から他方に向かう方向を「左右方向」と呼ぶ。左右方向のうち、右側から左側に向かう方向を「左方Y」と呼び、左側から右側に向かう方向を「右方」と呼ぶ。
【0013】
また、実施形態において、床面Fは、水平面と平行であり、鉛直方向と垂直である。以下では、鉛直上方を「上方Z」と呼び、鉛直下方を「下方」と呼ぶ。
【0014】
<金属回収装置の構成>
本実施形態に係る金属回収装置100は、床面F上に設置される。
図1は、実施形態に係る金属回収装置100の正面図である。
図2は、金属回収装置100を正面から見た透視図である。なお、
図2は、後述する機械室31の正面の壁部311、及び金属回収室51の正面の壁部511の図示を省略し、フレーム53の柱部531を透明表示している。さらに、
図2は、構造を理解し易くするため、釜ユニット1及び回収容器8を、鉛直方向と左右方向とに平行な平面で切断した場合の仮想の断面で示している。また、
図2では、駆動ユニット3が下方の位置に移動した場合での撹拌ユニット2及び駆動ユニット3を実線で示している。さらに、駆動ユニット3が最も上方Zの位置に移動した場合での撹拌ユニット2及び駆動ユニット3を破線で示している。
【0015】
金属回収装置100は、金属の融点以上に加熱された金属含有物Dを撹拌することによって、金属含有物Dから該金属を分離して回収する。金属は、たとえばアルミニウム、亜鉛、鉛、錫などである。
【0016】
金属回収装置100は、釜ユニット1と、撹拌ユニット2と、駆動ユニット3と、ハウジング5と、操作装置7と、回収容器8と、を備える。
【0017】
釜ユニット1は、金属の融点以上に加熱された金属含有物Dを収容する。該金属含有物Dは、たとえば、金属スクラップの溶解炉から溶融金属を回収した後に炉内に残る金属滓である。釜ユニット1は、本実施形態では、ハウジング5に対して脱着可能である。
【0018】
撹拌ユニット2は、鉛直方向に延びる回転軸Axを中心にして回転可能であり、釜ユニット1内の金属含有物Dを撹拌する。撹拌ユニット2は、駆動ユニット3に接続される。
【0019】
駆動ユニット3は、操作装置7で受け付けられる操作入力に応じて、撹拌ユニット2を回転駆動する。また、駆動ユニット3は、該操作入力に応じて、撹拌ユニット2とともに鉛直方向に移動可能である。たとえば、金属含有物Dを撹拌する際には
図2の実線に示すように、駆動ユニット3は、下方の位置に移動する。この際、撹拌ユニット2の先端部分は、釜ユニット1内に入る。また、駆動ユニット3の点検・修理の際も、駆動ユニット3は、
図2の実線に示すような下方の位置に移動する。一方、釜ユニット1をハウジング5から取り出す際などには
図2の破線に示すように、駆動ユニット3は撹拌ユニット2とともに、最も上方Zの位置に移動する。
【0020】
ハウジング5は、釜ユニット1、撹拌ユニット2の先端部分、及び回収容器8などを収容する。ハウジング5内において、釜ユニット1及び回収容器8は、出入口5111を通じて出し入れ可能に配置される。また、ハウジング5は、駆動ユニット3を鉛直方向に移動可能に支持する。駆動ユニット3の移動に応じて、撹拌ユニット2は、ハウジング5内において鉛直方向に移動可能である。
【0021】
操作装置7は、ユーザの操作入力を受け付ける。
【0022】
回収容器8は、釜ユニット1の下方に配置される。回収容器8は、釜ユニット1内で金属含有物Dから分離し且つ釜ユニット1から排出される金属を収容する。
【0023】
<ハウジングの構成>
次に、
図1及び
図2を参照して、ハウジング5の構成を説明する。ハウジング5は、金属回収室51と、フレーム53と、アクチュエータ55と、第1ベランダ57と、第2ベランダ59と、を有する。
【0024】
金属回収室51は、駆動ユニット3よりも下方に配置される。金属回収室51は、釜ユニット1、撹拌ユニット2の後述するシャフト21以外、及び回収容器8などを内部に収容する。なお、駆動ユニット3は、金属回収室51の外部に配置され、本実施形態では壁などで囲まれていない。そのため、駆動ユニット3の点検・修理などの作業を開放された空間で実施できる。従って、駆動ユニット3が壁などで囲まれる場合と比べて、作業性を向上でき、より良好な環境で作業できる。
【0025】
金属回収室51は、壁部511と、窓部512と、区画壁513と、台部514と、投入部515と、を有する。このほか、金属回収室51には、粉塵捕集装置(不図示)が設けられる。該粉塵捕集装置は、金属含有物Dから金属を分離して回収する処理中に発生する粉塵を捕集する。
【0026】
本実施形態では、金属回収室51は、4つの壁部511と1つの区画壁513とで囲まれる。壁部511は、鉛直方向に延びる板状である。区画壁513は、本実施形態では金属回収室51の天井であり、水平面と平行に広がる板状である。各々の壁部511の上端部は、区画壁513の外縁部に接続される。
【0027】
金属回収室51の正面の壁部511には、釜ユニット1及び回収容器8を出し入れするための出入口5111が設けられる。また、正面以外の少なくとも1つの壁部511には、窓部512が設けられる。窓部512には、透明なガラスが嵌め込まれる。
図2に示すように、作業者W1は、窓部512から金属回収室51の内を見ることができる。
【0028】
区画壁513は、駆動ユニット3が配置される空間から釜ユニット1を区画する。こうすれば、駆動ユニット3の機械室31が、釜ユニット1から上昇する高熱の気流及び該気流に乗って上昇する粉塵に曝されることを防止できる。従って、機械室31の内部に収容される駆動モータ32などの装置・部品を熱、粉塵から保護できる。従って、駆動ユニット3構成する装置・部品の寿命を大幅に延ばすことができる。
【0029】
区画壁513は、本実施形態では、鋼板を用いて形成され、第2ベランダ59の後述する壇部591と一体である。但し、この例示に限定されず、区画壁513は、壇部591とは別体であってもよい。また、区画壁513の上面及び下面のうちの少なくとも一方は、断熱材料で覆われていてもよい。こうすれば、機械室31が釜ユニット1から上昇する高熱の気流に曝されることをより効果的に防止できる。
【0030】
区画壁513の中央には、撹拌ユニット2のシャフト21が挿通される開口部5131が設けられる。つまり、撹拌ユニット2は、開口部5131を通じて、駆動ユニット3に接続される。
【0031】
台部514には、釜ユニット1が着脱可能に設置される。台部514は、釜ユニット1の下面の左右方向における端部を支持する。
【0032】
投入部515は、釜ユニット1に収容される金属含有物Dに材料を投入するための部材である。投入する材料は、たとえば、金属含有物Dの温度低下を抑制するための発熱剤、金属の分離を促進する分離溶剤、金属含有物Dの温度を調整するための冷えた金属含有物Dなどである。発熱剤の投入などによって、金属含有物Dの温度が上昇すると、釜ユニット1内の金属が発熱反応を起こすことがある。たとえば金属がアルミニウムである場合、1050℃以上になるといわゆるテルミット反応と呼ばれる発熱反応によりアルミニウムが酸化し、温度がさらに上昇する。この場合、金属の回収効率が低下するだけでなく、撹拌ユニット2が溶損する虞がある。そのため、投入部515から冷えた金属含有物Dを追加で投入することにより、金属含有物Dの温度を下げ、上述のような発熱反応を止めることができる。
【0033】
フレーム53は、金属回収室51よりも上方Zにおいて駆動ユニット3を鉛直方向に移動可能に支持する。フレーム53は、鉛直方向に延びる一対の柱部531と、各々の柱部531間に掛け渡される梁部532と、を有する。なお、本実施形態の例示に限定されず、柱部531は、3以上の複数であってもよい。
【0034】
柱部531は、本実施形態ではH形鋼であるが、この例示に限定されず、溝形鋼などであってもよい。また、梁部532は、本実施形態では一対の溝形鋼である。汎用の構造材を柱部531及び梁部532に採用することにより、強固な構造を有するフレーム53を安価且つ容易に設けることができる。さらに、柱部531は、駆動ユニット3の移動を安定してガイドできる。
【0035】
各々の柱部531は、ウェブ5311と、1対のフランジ5313と、を有する。
【0036】
ウェブ5311は、鉛直方向に延び且つ前後方向に広がる板状である(たとえば後述する
図5参照)。ウェブ5311の一方の主面は、駆動ユニット3の機械室31と対向する。ウェブ5311には、鉛直方向に延びるウェブ開口5312が設けられる。該ウェブ開口5312には、駆動ユニット3の後述するアーム33が挿通される。
【0037】
1対のフランジ5313はそれぞれ、鉛直方向に延び且つ左右方向に広がる板状である(たとえば
図5参照)。各々のフランジ5313はそれぞれ、ウェブ5311の前後方向における各々の端部に連結される。各々のフランジ5313の左右方向における一方の端部は、駆動ユニット3の機械室31と対向する。なお、以下では、該一方の端部を先端部と呼ぶ。
【0038】
アクチュエータ55は、図示しない油圧ポンプを駆動源とし、操作装置7が受け付ける操作入力に応じて、駆動ユニット3を撹拌ユニット2とともに鉛直方向に移動させる。アクチュエータ55は、シリンダ551と、シリンダ551内に収容可能なピストンロッド552と、を有する。シリンダ551及びピストンロッド552は、鉛直方向に延びる。シリンダ551は、柱部531に固定される。ピストンロッド552の上端部は、駆動ユニット3のアーム33に接続される。ピストンロッド552の少なくとも下端部は、シリンダ551内に収容される。
【0039】
駆動ユニット3を上方Zに移動させる際、アクチュエータ55は、ピストンロッド552をシリンダ551内から上方Zに移動させる。これに応じて、駆動ユニット3が撹拌ユニット2とともに上方Zに移動する。また、駆動ユニット3を下方に移動させる際、アクチュエータ55は、ピストンロッド552を下方に移動させてシリンダ551内に収容する。これに応じて、駆動ユニット3が撹拌ユニット2とともに下方に移動する。
【0040】
第1ベランダ57は、床部571と、第1柵572と、第1階段573と、を有する。床部571は、作業用の足場であり、
図2に示すように作業者W1が乗ることが可能である。床部571上の作業者W1は、窓部512を通じて釜ユニット1内の状況を見ながら、操作装置7を操作できる。第1柵572は、床部571の外縁部に沿って突設され、床部571からの転落などを防止する。第1階段573は、作業者W1が床面Fと床部571との間を昇降するための通路である。
【0041】
第2ベランダ59は、壇部591と、第2柵592と、第2階段593と、を有する。言い換えると、金属回収装置100は、壇部591と、第2柵592と、第2階段593と、を有する。壇部591は、作業用の足場であり、
図2に示すように作業者W2が乗ることが可能である。床部571上の作業者W2は、たとえば駆動ユニット3の点検・修理などの作業を行うことができる。第2柵592は、壇部591の外縁部に沿って突設され、壇部591からの転落などを防止する。第2階段593は、作業者W2などが床面F又は第1ベランダ57の床部571と壇部591との間を昇降するための通路である。
【0042】
壇部591は、鉛直方向から見て金属回収室51の外側に配置される。鉛直方向において、壇部591は、駆動ユニット3が最も下方に移動した場合での駆動ユニット3の上端部よりも下方に配置される。なお、好ましくはこの際、壇部591は、駆動ユニット3の下端部よりも下方に配置される。さらに、鉛直方向において、壇部591は、駆動ユニット3が最も上方Zに移動した場合での第1撹拌翼23及び第2撹拌翼25(
図2の破線で描かれた撹拌ユニット2参照)よりも上方Zに配置される。こうすれば、駆動ユニット3の点検・修理などの作業を行う際、脚立に乗って作業したり、足場をその都度組んだりする必要がない。従って、安全且つ容易に作業を行うことができる。
【0043】
<釜ユニットの構成>
次に、
図3A及び
図3Bを参照して、釜ユニット1の構成を説明する。
図3Aは、実施形態に係る釜ユニット1の構成例を示す上面図である。
図3Bは、
図3AのL−L線に沿う釜ユニット1の断面図である。
図3Bは、鉛直方向と左右方向とに平行な平面で釜ユニット1を仮想的に切断した場合の断面を示す。
【0044】
釜ユニット1は、収容釜11と、筐体12と、断熱材13と、を有する。
【0045】
収容釜11は、金属含有物Dを収容するための容器であり、本実施形態では鉄製の鋳物である。収容釜11は、鍋部111と、突縁部112と、を有する。鍋部111は、下方に凹む椀状であり、本実施形態では半球形状に凹んでいる。突縁部112は、鉛直方向から見て鍋部111の外縁部から鍋部111の外部に向かって、水平面と平行な方向に広がる鍔部である。鍋部111の底部には、排出口113が設けられる。排出口113は、鍋部111を厚さ方向に貫通する。排出口113内には、栓114が充填される。栓114には、モルタル、セラミックファイバーなどが用いられる。撹拌により金属含有物Dから金属を分離する間、栓114は、排出口113を塞ぐ。なお、栓114は、分離した金属を回収する際、撹拌ユニット2の後述する突起部27によって排出口113から除去される。
【0046】
筐体12は、有底筒状であり、収容釜11を囲う。筐体12は、金属回収室51の台部514上に着脱可能に配置される。筐体12の下面の左右方向における両端部は、台部514で支持される。筐体12の筒部分は、本実施形態では中空の八角柱形状であり、鍋部111及び断熱材13を内部に収容する。該筒部分の上端部は、突縁部112に連結される。両者の連結には、溶接が採用されてもよいし、ボルト及びナットを用いた締結構造が採用されてもよい。筐体12の底部分は、板状である。底部分の中央には、開口(符号省略)が設けられる。該開口を通じて、排出口113を含む鍋部111の下部が筐体12の外部に露出する。
【0047】
筐体12は、フォークリフトのフォークが挿入可能なリフト枠121を有する。たとえばフォークリフトを用いて釜ユニット1をハウジング5内に出し入れする際、フォークリフトは、リフト枠121にフォークを挿入して釜ユニット1を持ち上げ、その状態で釜ユニット1とともに移動できる。
【0048】
断熱材13は、収容釜11と筐体12との間に充填される。断熱材13には、セラミックウール、セラミック製の多孔体、耐熱レンガなどを用いることができる。断熱材13は、収容釜11を介した金属含有物Dの放熱を妨げることにより、釜ユニット1に収容される金属含有物Dの保温性を向上できる。従って、分離・回収処理時の金属含有物Dの温度低下を抑制できるので、分離・回収処理において金属含有物Dから金属を分離して回収する効率をさらに高めることができる。また、金属含有物Dの温度低下を抑制することにより、金属含有物Dが、鍋部111の内側、撹拌ユニット2などにこびり付き難くなる。従って、分離・回収処理中の装置の損傷を低減できるとともに、分離・回収処理後に残った金属含有物Dの除去に要する作業時間及び作業量を低減できる。
【0049】
さらに、断熱材13は、収容釜11を介して金属含有物Dから伝達される熱を蓄熱することもできる。そのため、分離・回収処理を複数回連続して行う際、収容釜11の温度低下を抑制できる。従って、収容釜11を冷ますことなく、次の分離・回収処理を行うことができる。よって、分離・回収処理を複数回連続して行う際における金属の回収効率を向上できる。
【0050】
<撹拌ユニットの構成>
次に、
図4を参照して、撹拌ユニット2の構成を説明する。
図4は、撹拌ユニット2の構成例を示す正面図である。なお、以下では、撹拌ユニット2の回転軸Axと平行な方向を「軸方向」と呼ぶことがある。また、回転軸Axと垂直な方向を「径方向」と呼ぶことがある。さらに、径方向のうち、回転軸Axに近づく方向を「径方向内方」と呼ぶことがあり、回転軸Axから遠ざかる方向を「径方向外方」と呼ぶことがある。また、回転軸Axを中心とする仮想の円周に沿う方向を「周方向」と呼ぶことがある。なお、本実施形態では、軸方向は鉛直方向と平行であり、径方向及び周方向は水平面と平行である。
【0051】
撹拌ユニット2は、シャフト21と、第1撹拌翼23と、一対の撹拌支持部24と、一対の第2撹拌翼25と、突起部27と、を有する。
【0052】
シャフト21は、内軸部211と、外軸部212と、を有する。内軸部211は、鉛直方向に延びる柱状である。外軸部212は、鉛直方向に延びる筒状である。外軸部212の内部には、内軸部211が配置される。内軸部211及び外軸部212は、軸方向から見て回転軸Axを中心とする同心円状に設けられる。内軸部211の下端部は、外軸部212の下端部から下方に突出する。内軸部211及び外軸部212は、それぞれ独立して回転可能である。
【0053】
第1撹拌翼23は、内軸部211の下端部に設けられる。第1撹拌翼23は、第1内翼231と、第2内翼232と、を有する。第1内翼231及び第2内翼232はそれぞれ、中央部に開口が設けられた板状である。第1内翼231及び第2内翼232の下縁部は、鍋部111の内面に沿って湾曲する。第1内翼231及び第2内翼232は、内軸部211の下端部から径方向外方に向かって互いに異なる方向に延びる。たとえば本実施形態では、第1内翼231が延びる方向は、第2内翼232が延びる方向とは真逆である。
【0054】
周方向から見て、第1内翼231及び第2内翼232の各形状は、非対称である。たとえば本実施形態では
図4に示すように、第2内翼232の形状は、第1内翼231の形状と相似である。第2内翼232のサイズは、第1内翼231のサイズよりも小さい。但し、この例示に限定されず、第2内翼232は、第1内翼231の形状とは非相似の異なる形状であってもよい。
【0055】
一対の撹拌支持部24は、第1撹拌翼23よりも上方Zにおいて、外軸部212の下端部から径方向外方に向かって互いに異なる方向に延びる。たとえば本実施形態では、一方の撹拌支持部24が延びる方向は、他方の撹拌支持部24が延びる方向とは真逆である。各々の撹拌支持部24の径方向外端部には、第2撹拌翼25が設けられる。
【0056】
各々の第2撹拌翼25は、第1撹拌翼23よりも回転軸Axの径方向外方に設けられる。第2撹拌翼25の数は、本実施形態では2つであるが、この例示に限定されず、1つ又は3以上の複数であってもよい。また、各々の第2撹拌翼25は、本実施形態では回転軸Axの周方向において等間隔に設けられるが、この例示に限定されず、周方向において異なる間隔で設けられてもよい。
【0057】
各々の第2撹拌翼25は、支持ロッド251と、外翼252と、を有する。支持ロッド251は、撹拌支持部24の径方向外端部から下方に延びる。支持ロッド251は、柱状であってもよいし、主面が周方向を向く板状であってもよい。外翼252は、板状であり、支持ロッド251の下端部に設けられる。外翼252の下縁部は、鍋部111の内面に沿って湾曲する。
【0058】
第1撹拌翼23及び第2撹拌翼25は、それぞれ独立して周方向に回転可能であり、互いに同じ方向及び逆方向に選択的に回転可能である。こうすれば、金属含有物Dからの金属の分離・回収処理において、第1内翼231及び第2内翼232の回転方向と外翼252の回転方向とを任意に選択できる。従って、金属含有物Dの撹拌状況に応じて各々の回転方向を組み合わせて第1撹拌翼23及び第2撹拌翼25を回転駆動することにより、鍋部111内で適切な金属含有物Dの旋回流を発生させることができる。そのため、金属含有物Dを撹拌する力が増し、より効率良く金属含有物Dを撹拌できる。さらに、収容釜11からこぼれる金属含有物Dが少なくなる。よって、金属含有物Dから金属を分離して回収する効率をさらに高めることができる。さらに、分離・回収処理の操作に掛かる作業者の負荷も軽減できる。
【0059】
また、本実施形態では、金属含有物Dを収容釜11からさらにこぼれ難くするため、第1撹拌翼23の回転速度は、第2撹拌翼25よりも速い。また、第1撹拌翼23の回転速度は、多段階に可変である。一方、第2撹拌翼25の回転速度は、一定である。但し、この例示に限定されず、第2撹拌翼25の回転速度も他段階に可変であってもよい。つまり、第1撹拌翼23及び第2撹拌翼25のうちの少なくとも一方の回転速度は可変であればよい。こうすれば、金属含有物Dの撹拌状況に応じて、各々の回転方向だけでなく回転速度も組み合わせて第1撹拌翼23及び第2撹拌翼25を回転駆動できるので、鍋部111内でさらに適切な金属含有物Dの旋回流を発生させることができる。従って、金属含有物Dから金属を分離して回収する効率をより高めることができ、作業者の負荷もより軽減できる。
【0060】
突起部27は、内軸部211の下端部から下方に突出する。金属含有物Dから分離された金属を回収する際、撹拌ユニット2の下方への移動に伴い、突起部27は、鍋部111の排出口113に挿通される。この際、突起部27は、栓114を排出口113の外に押し出して除去する。この後、撹拌ユニット2の上方Zへの移動に伴い、突起部27は、鍋部111の排出口113から抜かれる。分離・回収処理の間、金属含有物Dから分離した金属は、金属酸化物などの残滓よりも重いため、鍋部111の底に溜まる。分離した金属は、排出口113を通じて鍋部111の外部に排出され、回収容器8に収容される。
【0061】
<駆動ユニットの構成>
次に、
図5を参照して、駆動ユニット3の構成を説明する。
図5は、駆動ユニット3の構成例を示す上面図である。なお、
図5では、機械室31の後述する天板を透明表示している。
【0062】
駆動ユニット3は、機械室31と、駆動モータ32及び変速機3211、3221と、アーム33と、複数の接触部材34と、を有する。
【0063】
機械室31は、4つの壁部311と天板及び底板(符号省略)とで囲まれ、駆動モータ32及び変速機3211、3221などを内部に収容する。壁部311は鉛直方向に延びる板状であり、天板及び底板は水平面と平行に広がる板状である。各々の壁部311の上端部は天板の外縁部に接続され、各々の壁部311の下端部は底板の外縁部に接続される。
【0064】
駆動モータ32は、撹拌ユニット2の回転駆動源である。より具体的には、駆動モータ32は、第1駆動モータ321と、第2駆動モータ322と、を含む。第1駆動モータ321は、第1撹拌翼23の回転駆動源であり、変速機3211に接続される。変速機3211は、操作装置7が受け付けた操作入力に応じて、シャフト21の内軸部211に第1駆動モータ321の回転力を伝達する。第2駆動モータ322は、第2撹拌翼25の回転駆動源であり、変速機3221に接続される。変速機3221は、操作装置7が受け付けた操作入力に応じて、シャフト21の外軸部212に第2駆動モータ322の回転力を伝達する。
【0065】
アーム33は、機械室31の左右の壁部311にそれぞれ設けられる。アーム33の一方端は、壁部311に固定される。アーム33の他方端は、ウェブ5311に設けられるウェブ開口5312を通じて、アクチュエータ55のピストンロッド552と接続される。アクチュエータ55がピストンロッド552を鉛直方向に移動させることにより、駆動ユニット3が撹拌ユニット2とともに鉛直方向に移動する。
【0066】
接触部材34は、機械室31の左右の壁部311にそれぞれ4つずつ固設される(
図2及び
図5参照)。左右それぞれの壁部311において、接触部材34は、前後方向及び左右方向に並ぶ。各々の接触部材34は、フレーム53の柱部531と接触し、より具体的には、各々の柱部531の各々のフランジ5313とそれぞれ接触する。
図6Aは、接触部材34の構成例を示す上面図である。
図6Bは、接触部材34を前後方向から見た側面図である。
【0067】
各々の接触部材34は、第1ローラ341と、第2ローラ342と、を有する。第1ローラ341は、フランジ5313の先端部と接し、機械室31の移動に伴って該先端部を鉛直方向に転がる。第2ローラ342は、フランジ5313の内側面に接し、機械室31の移動に伴って該内側面上を鉛直方向に転がる。なお、該内側面は、一方のフランジ5313の主面のうち、他方のフランジ5313と対向する主面である。
【0068】
機械室31が鉛直方向に移動する際、各々のフランジ5313の先端部が各々の接触部材34の第1ローラ341をガイドすることにより、機械室31の左右方向のブレが抑制される。さらに、各々のフランジ5313の上記の内側面が各々の接触部材34の第2ローラ342をガイドすることにより、機械室31の前後方向のブレが抑制される。従って、鉛直方向において、駆動ユニット3がスムーズに撹拌ユニット2とともに移動でき、撹拌ユニット2の左右方向及び前後方向のブレも抑制できる。従って、撹拌ユニット2の移動精度が向上する。たとえば撹拌ユニット2を下方に移動させる際、第1撹拌翼23、第2撹拌翼25、及び突起部27が鍋部111の内面などに衝突することなく、第1撹拌翼23及び第2撹拌翼25を鍋部111の内面に沿う位置に移動させることができる。さらに、突起部27をより正確に排出口113に挿通させることもできる。従って、分離・回収処理が作業し易くなり、装置の損傷も回避できる。
【0069】
<変形例>
次に、実施形態の変形例を説明する。ここでは、上述の実施形態と異なる構成を説明する。また、上述の実施形態と同様の構成要素の説明は省略することがある。
【0070】
図7は、変形例に係る金属回収装置100aの正面図である。なお、
図7では、構造を理解し易くするため、釜ユニット1a及び回収容器8aを、鉛直方向と左右方向とに平行な平面で切断した場合の仮想の断面で示している。
【0071】
変形例では、金属回収室51aの内部に、釜ユニット1aが固設される。釜ユニット1aは、収容釜11aと、筐体12aと、断熱材13aと、ヒータ14aと、を有する。なお、この例示に限定されず、釜ユニット1aに、断熱材13aが設けられなくてもよい。
【0072】
筐体12aは、金属回収室51aの台部514a上に固設される。詳しくは、釜ユニット1の下面の左右方向における端部が台部514に固定される。
【0073】
ヒータ14aは、操作装置7aが受け付ける操作入力に応じて、収容釜11aを加熱する発熱体である。ヒータ14aの発熱により、収容釜11a内に収容される金属含有物Daの温度低下を抑制又は防止できる。従って、分離・回収処理において、金属含有物Daから金属を分離して回収する効率をさらに向上できる。さらに、分離・回収処理中の装置の損傷、及び、分離・回収処理後に残った金属含有物Daの除去に要する作業時間及び作業量をさらに低減できる。
【0074】
以上、本発明の実施形態を説明した。なお、本発明の範囲は上述の実施形態に限定されない。本発明は、発明の主旨を逸脱しない範囲で上述の実施形態に種々の変更を加えて実施することができる。また、上述の実施形態で説明した事項は、矛盾を生じない範囲で適宜任意に組み合わせることができる。