特許第6895691号(P6895691)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6895691
(24)【登録日】2021年6月10日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】ボードアンカー
(51)【国際特許分類】
   F16B 13/04 20060101AFI20210621BHJP
   F16B 13/08 20060101ALI20210621BHJP
   F16B 13/12 20060101ALI20210621BHJP
   E04B 1/48 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   F16B13/04 B
   F16B13/08 A
   F16B13/12 A
   E04B1/48 G
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-195247(P2019-195247)
(22)【出願日】2019年10月28日
(65)【公開番号】特開2021-67350(P2021-67350A)
(43)【公開日】2021年4月30日
【審査請求日】2019年10月28日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519385319
【氏名又は名称】横浜空調株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 明
【審査官】 鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−194202(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3209554(JP,U)
【文献】 特開平09−025915(JP,A)
【文献】 特開2000−238585(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 13/04, 13/14,
13/08, 13/12,
37/04
E04B 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の第1端子と、前記第1端子と重ね合わされた板状の第2端子と、を有し、前記第1端子と前記第2端子との間のネジ挿入部にタッピングネジがねじ込まれることで、前記第1端子および前記第2端子が互いに離間するように拡開するボードアンカーであって、
前記第1端子と前記第2端子とが重ね合わされ、前記第1端子と前記第2端子との合計板厚をもつ部分における前記ネジ挿入部を挟んで位置し前記ネジ挿入部に隣接する面に、前記タッピングネジのネジ山が嵌合する雌ねじを形成する複数のネジ受け溝が、前記ネジ山のピッチ及びネジ山形状に合わせて設けられているボードアンカー。
【請求項2】
前記タッピングネジのネジ溝に対向するガイドリブをさらに有する請求項1記載のボードアンカー。
【請求項3】
前記第1端子は、前記第2端子に向かって突出した第1突出部を有し、
前記第2端子は、前記第1端子に向かって突出した第2突出部を有し、
前記第1端子の正面視において、前記第2突出部は前記第1突出部の左側に位置し、前記第1突出部は前記第2突出部の右側に位置し、
右回りでねじ込まれる前記タッピングネジが前記第1突出部および前記第2突出部にくさび状に当たることで、前記第1端子と前記第2端子が拡開する請求項1または2に記載のボードアンカー。
【請求項4】
前記第1突出部と前記第2突出部は、交差している請求項3記載のボードアンカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボードアンカーに関する。
【背景技術】
【0002】
石膏ボードなどの脆い材質のボードに取付物をネジで固定する際に、ボードアンカーが用いられている。石膏ボードに打ち込まれたボードアンカーにタッピングネジをねじ込むことで、ボードアンカーの2つの端子の先端部が、石膏ボード内や、石膏ボード裏の空間で拡開し、取付物とボードアンカーが石膏ボードに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3933178号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、信頼性の高いボードアンカーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、ボードアンカーは、板状の第1端子と、前記第1端子と重ね合わされた板状の第2端子と、を有し、前記第1端子と前記第2端子との間のネジ挿入部にタッピングネジがねじ込まれることで、前記第1端子および前記第2端子が互いに離間するように拡開する。前記第1端子と前記第2端子とが重ね合わされ、前記第1端子と前記第2端子との合計板厚をもつ部分における前記ネジ挿入部を挟んで位置し前記ネジ挿入部に隣接する面に、前記タッピングネジのネジ山が嵌合する雌ねじを形成する複数のネジ受け溝が、前記ネジ山のピッチ及びネジ山形状に合わせて設けられている。


【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、信頼性の高いボードアンカーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態のボードアンカーの斜視図である。
図2】(a)は本発明の実施形態のボードアンカーの正面図であり、(b)は図2(a)におけるA方向から見た側面図である。
図3】本発明の実施形態のボードアンカーの加工前の展開図である。
図4】本発明の実施形態のボードアンカーと、タッピングネジとの結合部分の拡大模式図である。
図5】(a)は本発明の実施形態のボードアンカーおよびタッピングネジの石膏ボードへの取付状態を示す断面図であり、(b)は図5(a)の下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照し、実施形態について説明する。なお、各図面中、同じ要素には同じ符号を付している。
【0009】
図1は、本発明の実施形態のボードアンカー1の斜視図である。
図2(a)はボードアンカー1の正面図であり、図2(b)は図2(a)におけるA方向から見た側面図である。
【0010】
ボードアンカー1は、板状の第1端子11と、第1端子11と重ね合わされた板状の第2端子12と、を有し、第1端子11と第2端子12との間にタッピングネジがねじ込まれることで、第1端子11および第2端子12が互いに離間するように拡開する。
【0011】
図3は、ボードアンカー1の加工前の展開図である。
【0012】
実施形態のボードアンカー1は、図3に示す金属(例えば冷間圧延鋼板)の板状部材を加工して得られる。
【0013】
図3に示すように、第1端子11と第2端子12は、連結部17を介して一体につながって形成され、その連結部17が折り曲げられることで、第1端子11と第2端子12とは互いに重ね合わされる。例えば、図3において右側に位置する第1端子11が紙面奥側に折り返され、第2端子12に重ね合わされる。
【0014】
第1端子11と第2端子12とが重ねられた状態で、第1端子11の側縁部に設けられた突出片18が折り曲げられ、図1に示すように、互いに重ねられた第1端子11の側縁部および第2端子12の側縁部を挟み込むように、第2端子12に係合される。
【0015】
第1端子11および第2端子12において連結部17によって連結された部分、および突出片18によってクランプされた部分は、タッピングネジの挿入を受けても拡開せず、重ね合わされた状態が保持される固定部41、42となる。第1端子11および第2端子12において、固定部41、42よりも下方の部分(先端部61、62を含む部分)が拡開可能となる。
【0016】
図3に示す状態において、第1端子11と第2端子12のそれぞれは半円状の頭部23、24を有する。第1端子11と第2端子12が重ね合わされると、図1に示すように、それぞれの頭部23、24は外側に向けて折り曲げられる。折り曲げられた2つの頭部23、24が組み合わさって、その内側に円形の開口25が形成される。その開口25の下方には、ネジ挿入部26が確保される。
【0017】
第1端子11の先端部61および第2端子12の先端部62は、鋭角状に形成され、第2端子12の先端部62は第1端子11の先端部61よりも突出している。したがって、第2端子12の先端部62のみが先に石膏ボードに打ち込まれる。これにより、より小さな力でボードアンカー1を石膏ボードに打ち込みやすくできる。
【0018】
前述したように、第1端子11と第2端子12とが重ね合わされた部分は、タッピングネジの挿入を受けても拡開しない固定部41、42を有する。図2(a)に示す正面図において、第1固定部41と第2固定部42が、ネジ挿入部26をX方向に挟んで位置している。第1固定部41および第2固定部42のそれぞれは、第1端子11と第2端子12とが重ね合わされた部分である。
【0019】
X方向は、第1端子11および第2端子12の幅方向に対応する。第1端子11と第2端子11は、図2(b)に示すように、Y方向において重なっている。Y方向は、X方向に直交する。Z方向は、X方向およびY方向に直交し、タッピングネジが挿入される方向に対応する。
【0020】
図2(a)に示すように、第1固定部41および第2固定部42におけるネジ挿入部26に隣接する部分に、複数のネジ受け溝31が設けられている。タッピングネジのネジ山に合致したネジ受け溝31が形成されている。第1固定部41と第2固定部42のそれぞれに、ネジ受け溝31が形成されている。第1固定部41に形成されたネジ受け溝31のZ方向の位置と、第2固定部42に形成されたネジ受け溝31のZ方向の位置は、タッピングネジのネジ山ピッチに合致している。
【0021】
図4は、ボードアンカー1とタッピングネジ100との結合部分の拡大模式図である。
【0022】
複数のネジ受け溝31が、タッピングネジ100のネジ山101のピッチ及びネジ山形状に合致して設けられている。すなわち、複数のネジ受け溝31のZ方向のピッチは、タッピングネジ100のネジ山101のピッチに合致する。
【0023】
図2(a)および図4に示すように、Z方向(タッピングネジ100の軸方向)において隣り合うネジ受け溝31の間に、ガイドリブ21、22が設けられている。第1端子11には、第1固定部41と第2固定部42との間をつなぐように例えば2本のガイドリブ21が設けられ、第2端子12にも、第1固定部41と第2固定部42との間をつなぐように例えば2本のガイドリブ22が設けられている。ガイドリブ21とガイドリブ22は、互いに交差している。
【0024】
第1端子11に設けられたガイドリブ21は、タッピングネジの軸径に沿って湾曲し、第2端子12に設けられたガイドリブ22は、タッピングネジの軸径に沿って湾曲している。
【0025】
ネジ挿入部26の下方には、第1突出部14と第2突出部16が設けられている。
【0026】
図3に示すように、加工前の状態において、第1突出部14は、第1端子11に形成された開口13をX方向に分断する矩形状に設けられ、第2突出部16は、第2端子12に形成された開口15をX方向に分断する矩形状に設けられている。
【0027】
それら矩形状の第1突出部14と第2突出部16のそれぞれは、図1および図2(b)に示すように曲げ加工される。
【0028】
すなわち、第1端子11に設けられた第1突出部14は第2端子12に向かって突出し、第2端子12に形成された開口15から第2端子12の外側に突き抜ける。第2端子12に設けられた第2突出部16は第1端子11に向かって突出し、第1端子11に形成された開口13から第1端子11の外側に突き抜ける。
【0029】
図2(a)に示す第1端子11の正面視において、第2突出部16は第1突出部14の左側に位置し、第1突出部14は第2突出部16の右側に位置する。逆に、図2(a)の紙面裏側の正面視(第2端子12の正面視)において、第1突出部14は第2突出部16の左側に位置し、第2突出部16は第1突出部14の右側に位置する。第1突出部14と第2突出部16は交差している。
【0030】
次に、実施形態のボードアンカー1、およびタッピングネジを使って、取付物を石膏ボードに取り付ける方法について説明する。
【0031】
まず、ボードアンカー1が石膏ボードに打ち込まれる。このとき、第1端子11と第2端子12は、閉じている。図2(b)において石膏ボード200を仮想的に2点鎖線で表している。例えばハンマーでボードアンカー1の頭部23、24を叩いて、ボードアンカー1を石膏ボード200に打ち込む。ボードアンカー1は石膏ボード200を貫通し、ボードアンカー1の先端部61、62は石膏ボード200の裏側の空間に突き出る。
【0032】
次に、石膏ボード200に打ち込まれたボードアンカー1に、取付物を添えタッピングネジをねじ込む。タッピングネジは、ボードアンカー1の開口25からネジ挿入部26に右回りでねじ込まれる。
【0033】
図5(a)に示すように、タッピングネジ100の頭部と石膏ボード200との間に取付物300が取付られる。図5(b)は、図5(a)の下面図である。
【0034】
図4に示すように、第1固定部41および第2固定部42に形成されたネジ受け溝31に、タッピングネジ100のネジ山101が嵌合する。ネジ受け溝31はネジ山101が嵌合する雌ねじを形成する。ネジ受け溝31は、第1端子11と第2端子12とが重ね合わされた部分に形成されている。すなわち、2枚の板状の第1端子11と第2端子12との合計板厚をもつ部分で、タッピングネジ100からの力を受ける。そのため、タッピングネジ100のねじ込みに伴ってタッピングネジ100からの大きな力が固定部41、42に加わっても、固定部41、42は変形や破損などせず、ボードアンカー1の信頼性を高くできる。
【0035】
このとき、ガイドリブ21、22は、タッピングネジ100のネジ溝に対向し、タッピングネジ100の傾きなどを規制するガイドとして機能する。第1端子11に形成されたガイドリブ21は、タッピングネジ100のネジ山101の底部間隔より小さく形成されている。第2端子12に形成されたガイドリブ22は、タッピングネジ100のネジ山101の底部間隔より小さく形成されている。タッピングネジ100のネジ山101と、ガイドリブ21、22と、の間には設計上隙間が形成され、ガイドリブ21、22はタッピングネジ100からの締付力を受けない。
【0036】
さらに奥にねじ込まれたタッピングネジ100が、第1突出部14および第2突出部16にくさび状に当たることで、図5(a)に示すように、第1端子11と第2端子12が拡開する。
【0037】
前述したように、図2(a)に示す第1端子11の正面視において、第2端子12に設けられた第2突出部16は、第1端子11に設けられた第1突出部14の左側に位置し、第1突出部14は第2突出部16の右側に位置し、右回りでねじ込まれるタッピングネジ100が第2突出部16の傾斜面および第1突出部14の傾斜面に適切な押圧力を与えることで、タッピングネジ100の回転力が、第1端子11と第2端子12とを広げる力に効率的に変換される。
【0038】
仮に、図2(a)に示す第1端子11の正面視において、第2端子12に設けられた第2突出部16が第1端子11に設けられた第1突出部14の右側に位置し、第1突出部14が第2突出部16の左側に位置していると、タッピングネジ100の回転力は第1突出部14および第2突出部16にうまく伝わらず、第1端子11と第2端子12とは拡開しにくくなる。
【0039】
また、第1突出部14と第2突出部16のX方向の位置をずらして、第1突出部14を第2端子12の外側に突き抜けさせ、第2突出部16を第1端子11の外側に突き抜けさせ、第1突出部14と第2突出部16とを交差させることで、第1端子11と第2端子12の広がる角度を大きくすることができる。これは、ボードアンカー1が石膏ボード200からより抜けにくくする。
【0040】
第1端子11と第2端子12との拡開によりボードアンカー1は石膏ボード200に固定され、タッピングネジ100がネジ受け溝31に嵌合することで、ボードアンカー1に対してタッピングネジ100は結合される。タッピングネジ100を、ねじ込むときと逆の左回りに回すとタッピングネジ100はボードアンカー1から外れる。第1端子11および第2端子12はいわゆる板状片であるので、第1突出部14および第2突出部16がタッピングネジ100から受ける開口力が解除されると、石膏ボード200からボードアンカー1を引き抜くことができる。
【0041】
なお、本実施形態のボードアンカー1を打ち込む対象となるボードは、石膏ボードに限らない。
【0042】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施形態について説明した。しかし、本発明は、それらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0043】
1…ボードアンカー、11…第1端子、12…第2端子、14…第1突出部、16…第2突出部、21,22…ガイドリブ、31…ネジ受け溝、100…タッピングネジ、200…石膏ボード、300…取付物
図1
図2
図3
図4
図5