(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0013】
携帯端末などの携帯機器では、小型化、薄型化が進んだ反面、充電時のコネクタ接続が煩わしい状況にあり、無線給電による充電の要求が高まっている。また、電気自動車においては、有線による充電の場合、例えば、雨天時にコネクタに水が浸入し、接点が劣化する恐れがあることから、無線給電による充電が望ましい。また、介護向けの階段昇降機や移動式リフトなどにおいては、有線による充電の場合、例えば、被介護者がコネクタを機器に接続して充電することは困難であることから、無線給電による充電が望ましい。
【0014】
無線給電には、マイクロ波などの電波を用いるものや磁気的結合(電磁誘導)を用いるものが検討されている。マイクロ波は、伝送距離に優れるものの伝送効率が悪く実用化にはほとんど至っていない。これに対し、磁気的結合による無線給電は、伝送距離が数cmから10数cm程度であるが、送受電に用いるコイルの伝送効率は90%程度の高い効率が得られる。このようなことから、無線給電には、磁気的結合による伝送が主流になると考えられる。
【0015】
磁気的結合に用いられる送電周波数としては、100kHz帯、400kHz帯、6.78MHz帯、および13.56MHz帯などが考えられる。磁気的結合による無線給電は、伝送距離が比較的短いものの、送電コイルまたは受電コイルから磁界漏洩が発生する。他の電子機器や人体への影響を考慮すると、この磁界漏洩を極力低く抑える必要がある。
【0016】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る電力伝送装置を適用した無線給電システムの例を示した図である。
図1に示すように、無線給電システムは、携帯端末1と、充電器2とを有している。
【0017】
携帯端末1は、例えば、スマートフォンやタブレット端末、携帯電話などである。携帯端末1は、表側にディスプレイを有している。
【0018】
充電器2の上部には、電力が充電される携帯端末1が置かれる。携帯端末1は、裏側(ディスプレイがない側の面)が充電器2の上に置かれることによって、充電される。
【0019】
図2は、
図1の携帯端末1および充電器2の内部を一部透視した図である。
図2において、
図1と同じものには同じ符号が付してある。
図2では、
図1の携帯端末1の裏側(
図1の携帯端末1をひっくり返した状態)から透視した図を示している。
【0020】
携帯端末1は、
図2の点線で示すように、裏面側にコイル1aと、コンデンサ1ba,1bbと、受電回路1cと、バッテリ1dとを有している。後述するが、コイル1aと、携帯端末1の裏面側の筐体との間には、金属板が設けられている。
【0021】
充電器2は、
図2の点線で示すように、携帯端末1が置かれる側に、コイル2aと、コンデンサ2ba,2bbと、送電回路2cとを有している。
【0022】
図3は、電力伝送装置を示した図である。
図3に示すように、電力伝送装置は、コイル11と、コンデンサ12a,12bと、バラン13と、LPF(Low Pass Filter)14と、整流回路15と、平滑回路16と、電源回路17と、負荷18とを有している。
【0023】
図3に示す電力伝送装置は、例えば、
図2に示した携帯端末1に内蔵され、充電器2から伝送される電力を受電する。例えば、コイル11は、
図2に示したコイル1aに対応し、コンデンサ12a,12bは、例えば、
図2に示したコンデンサ1ba,1bbに対応する。バラン13、LPF14、整流回路15、平滑回路16、および電源回路17は、例えば、
図2に示した受電回路1cに対応する。負荷18は、例えば、
図2に示したバッテリ1dおよび携帯端末1の様々な機能を発揮する電子回路等に対応する。
【0024】
図3には、携帯端末1が有する金属板MPが示してある。金属板MPは、
図3に示すように、スロット(開口部)SLOと、スロットSLOにつながったスリットSLIとを有している。すなわち、スロットSLOは、閉じておらず、細い切り欠き(スリットSLI)を有している。スロットSLO部分には、例えば、CCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子が配置される。なお、スロットSLOの形状は、
図3の例では、矩形状になっているが、円形状等であってもよい。
【0025】
コイル11は、その内周部分が金属板MPのスロットSLOよりも外側に位置するように形成されている。言い換えれば、コイル11は、その内周部分が金属板MPのスロットSLOの縁を囲むように形成されている。
【0026】
コイル11の形状は、
図3の例では矩形状であるが、円形状であってもよい。コイル11は、コイル11の両端から見て、対称(略対称を含む、以下同じ)に形成されていれば、矩形状や円形状に限らず、どのような形状であってもよい。
【0027】
コンデンサ12a,12bは、コイル11とバラン13との間に接続されている。コンデンサ12a,12bの容量値は、電力の送電周波数において、コイル11と共振する値である。
【0028】
コンデンサ12aの一端は、コイル11の一端に接続されている。コンデンサ12aの他端は、バラン13に接続されている。
【0029】
コンデンサ12bの一端は、コイル11の他端に接続されている。コンデンサ12bの他端は、バラン13に接続されている。
【0030】
コイル11およびコンデンサ12a,12bは、コンデンサ12a,12bの他端から見て(バラン13から見て)、回路的に対称となるように形成されている。例えば、コイル11の両端のそれぞれには、同じ(ほぼ同じを含む、以下同じ)容量値のコンデンサ12a,12bが直列に接続されており、コイル11およびコンデンサ12a,12bは、コイル11を中心として、回路的に対称となっている。
【0031】
このように、コイル11およびコンデンサ12a,12bは、バラン13から見て、回路的に対称となるように形成される。これにより、電力伝送装置は、漏洩磁界の発生を抑制できる。例えば、以下でも説明するが、コイル11には、整流回路15で発生したコモンモードの高調波が、コイル11で再放射される場合がある。この高調波は、コイル11とコンデンサ12a,12bとが回路的に対称に形成されているためキャンセルされ、コイル11から発生する再放射の漏洩磁界を抑制できる。以下では、コイル11およびコンデンサ12a,12bを、共振回路と呼ぶことがある。
【0032】
コイル11と金属板MPとの間には、磁性体シート(
図3には図示せず)が設けられている。磁性体シートの形状は、例えば、スロットSLOより大きい開口を有した矩形状である。言い換えれば、磁性体シートは、コイル11の線材に沿った形状を有している。
【0033】
図4は、
図3のA矢視図である。
図4において、
図3と同じものには同じ符号が付してある。なお、
図4には、携帯端末1の一部断面も示してある。例えば、
図4には、組み立て前の携帯端末1の本体23およびディスプレイ24の断面も示してある。本体23は、組み立ての際、金属板MPに埋め込まれるようになっており、携帯端末1は、薄型でも、所定の強度を確保することができる。
【0034】
図4に示すように、コイル11は、金属板MPに対向して設けられている。コイル11は、金属板MPと磁性体シート21との間に設けられている。磁性体シート21は、磁束による受電回路22および本体23への影響を抑制する。
【0035】
コイル11の両端には、コンデンサ12a,12b(
図4には図示せず)が接続されている。コンデンサ12a,12bの両端は、コネクタ25に接続されており、このコネクタ25の本体23への接続によって、コイル11は、コンデンサ12a,12bを介して、受電回路22に接続される。なお、受電回路22は、
図3に示したバラン13、LPF14、整流回路15、平滑回路16、および電源回路17に対応する。
【0036】
図3の説明に戻る。バラン13は、2つのトランスを有している。2つのトランスは、極性が同じになるように、コア材などに巻かれている。バラン13は、コイル11から平衡出力される電力を不平衡電力に変換する。
【0037】
LPF14は、2つのコイルと、2つのコンデンサとを有している。LPF14は、バラン13と整流回路15との整合を図るとともに、整流回路15からコイル11へ逆流する高調波を抑制する。
【0038】
整流回路15は、4つのダイオードを有するブリッジ回路である。整流回路15は、LPF14から出力される電力(電圧)を整流する。
【0039】
電源回路17は、整流回路15から出力される電圧を所定の電圧にして、負荷18に出力する。負荷18は、例えば、携帯端末1のバッテリや、携帯端末1の様々な機能を発揮する電子回路である。
【0040】
充電器2から出力される磁束が、金属板MPのスロットSLO内において、
図3の紙面表側から紙面裏側へ鎖交したとする。この場合、金属板MPの内側の端面(スロットSLOの端面)では、時計回りに電流が流れ、金属板MPの外側の端面では、反時計回りに電流が流れる。この金属板MPの端面を流れる電流により、スロットSLOから、金属板MPの外側を回る磁束が通ることから、コイル11と充電器2側のコイル(送電コイル)は、磁気的な結合が可能となる。
【0041】
コイル11によって受電された電力は、バラン13およびLPF14を介して、整流回路15へ出力される。整流回路15で整流された電力は、平滑回路16で平滑化され、電源回路17を介して負荷18に出力される。
【0042】
整流回路15では、高調波が発生し、平滑回路16とLPF14とに出力される。平滑回路16は、整流回路15で発生した高調波を抑制して、電源回路17へ出力する。LPF14は、整流回路15で発生した高調波がコイル11へ逆流するのを抑制する。
【0043】
LPF14で抑圧されなかった同相成分の高調波は、バラン13が有するコモンモードフィルタの機能により抑圧される。これにより、コイル11から再放射される高調波は、抑制される。
【0044】
また、バラン13から見て、コンデンサ12a,12bおよびコイル11は、回路的に対称となるように形成されている。このため、コイル11およびコンデンサ12a,12bによっても、コイル11から再放射される高調波が抑制される。
【0045】
また、コンデンサ12a,12bおよびコイル11は、回路的に対称であるため、バラン13と整合を図ることができる。これにより、電力伝送装置は、整合損失も低減することができる。
【0046】
このような構成により、電力伝送装置は、整流回路15で発生する高調波の再放射を小さくすることができる。また、電力伝送装置は、送電コイル(充電器2側のコイル)と、受電コイル(携帯端末1のコイル11)との間の伝送損失を小さくすることができる。
【0047】
以下、
図3の電力伝送装置の漏洩レベルや伝送特性の実測値について説明する。測定条件として、送電電力の周波数は、13.56MHzとした。また、送電コイルの大きさは、5cm×3cmとし、ターン数は、6ターンとした。
【0048】
受電コイルである
図3のコイル11の大きさおよびターン数は、送電コイルと同じ大きさおよびターン数とした。また、
図3の金属板MPの大きさは15cm×10cmとした。また、スロットの大きさは4cm×2cm、スリットの幅は1mmとした。
【0049】
図5は、送電コイルからの距離と漏洩レベルとの関係を示した図である。
図5の横軸は、送電コイルと受電コイルとの距離を示している。縦軸は、基本波(13.56MHz)における漏洩レベルを示している。
【0050】
図5に示す波形W1aは、
図3の電力伝送装置の金属板MPおよびバラン13を省略したときの(コイル11単体の)、基本波の漏洩レベルを示している。
【0051】
波形W1bは、
図3の電力伝送装置の金属板MPを省略せず、バラン13を省略したときの、基本波の漏洩レベルを示している。
【0052】
波形W1cは、
図3の電力伝送装置のバラン13を省略し、金属板MPをグランドに接続したときの、基本波の漏洩レベルを示している。
【0053】
波形W1dは、
図3の電力伝送装置の基本波の漏洩レベルを示している。
【0054】
波形W1a,W1bに示すように、金属板MPがあると(波形W1b)、金属板MPがない場合(コイル11単体の波形W1a)に比べ、漏洩レベルは高くなる。例えば、電力伝送装置は、送電コイルとコイル11との距離が30cmの場合、10dB以上漏洩レベルが高くなる。
【0055】
金属板MPを備えていても、金属板MPをグランドに接続すると、漏洩レベルは小さくなる。例えば、波形W1cに示すように、漏洩レベルは小さくなる。
【0056】
金属板MPをグランドに接続しなくても、コイル11およびコンデンサ12a,12bを回路的に対称となるように形成し、バラン13を接続すると、漏洩レベルは、波形W1dに示すように、小さくなる。
【0057】
すなわち、
図3の電力伝送装置は、金属板MPをグランドに接続しなくても、金属板MPをグランドに接続した場合と同様の漏洩レベルにすることができる。これは、コイル11とコンデンサ12a,12bの対称構造と、バラン13とによって、再放射される基本波の漏洩レベルが抑制されるためである。つまり、
図3の電力伝送装置では、コイル11と金属板MPとの間の寄生容量から結合し、金属板へ漏洩する電磁界が抑圧される。
【0058】
図6は、漏洩周波数と漏洩レベルとの関係を示した図である。
図6の横軸は、電力伝送装置から漏洩する漏洩電力の周波数を示している。縦軸は、漏洩レベルを示している。
【0059】
図6に示す波形W2aは、
図3の電力伝送装置の金属板MPおよびバラン13を省略したときの(コイル11単体の)漏洩レベルを示している。
【0060】
波形W2bは、
図3の電力伝送装置の金属板MPを省略せず、バラン13を省略したときの漏洩レベルを示している。
【0061】
波形W2cは、
図3の電力伝送装置のバラン13を省略し、金属板MPをグランドに接続したときの漏洩レベルを示している。
【0062】
波形W2dは、
図3の電力伝送装置の漏洩レベルを示している。
【0063】
波形W2a,W2bに示すように、金属板MPがあると(波形W2b)、金属板MPがない場合(コイル11単体の波形W2a)に比べ、漏洩レベルは高くなる。
【0064】
金属板MPをグランドに接続すると、波形W2cに示すように、漏洩レベルは大きくなる。特に、3倍高調波の漏洩レベルが大きくなっている。
【0065】
金属板MPをグランドに接続しなくても、コイル11およびコンデンサ12a,12bを回路的に対称となるように形成し、バラン13を接続すると、波形W2dに示すように、漏洩レベルは小さくなる。波形W2dは、他の波形W2a〜W2cに対し、3倍高調波、4倍高調波、および5倍高調波の漏洩レベルが最も小さくなっている。
【0066】
すなわち、電力伝送装置は、コイル11とコンデンサ12a,12bの対称構造と、バラン13とによって、高調波電流の同相成分を抑圧している。
【0067】
ここで、
図3の電力伝送装置と比較する比較電力伝送装置について説明する。
【0068】
図7は、比較電力伝送装置の構成例を示した図である。
図7に示すように、比較電力伝送装置は、コイル31と、コンデンサ32とを有している。また、
図7には、スロットSLOと、スリットSLIとを有した金属板MPが示してある。
【0069】
比較電力伝送装置は、
図3の電力伝送装置に対し、受電回路から見て、コイル31とコンデンサ32とが非対称となっている。コイル31の大きさおよびターン数は、
図3のコイル11と同じであるとする。また、
図7の金属板MPは、
図3の金属板MPと同様の形状を有しているとする。以下では、コイル31およびコンデンサ32を、共振回路と呼ぶことがある。
【0070】
図8は、コイル間距離と伝送特性との関係を示した図である。
図8の横軸は、コイル間距離を示し、縦軸は、伝送特性S21を示している。
【0071】
図8に示す波形W3aは、
図7に示した比較電力伝送装置であって、受電回路がバランを備えていない場合の伝送特性を示している。
【0072】
波形W3bは、
図7に示した比較電力伝送装置であって、受電回路がバランを備えている場合の伝送特性を示している。
【0073】
波形W3cは、
図3に示した電力伝送装置の伝送特性を示している。
【0074】
波形W3a,W3bに示すように、
図7の共振回路が非対称構造の場合、受電回路がバランを備えると、電力の伝送特性は低下する。例えば、バランを備えた比較電力伝送装置と、バランを備えない比較電力伝送装置とでは、伝送特性で約1dBの差がある。
【0075】
一方、
図3の共振回路が対称構造の場合、受電回路がバランを備えても、波形W3cに示すように、電力の伝送特性は低下しない。
【0076】
ここで、非対称構造の共振回路にバランを接続すると、伝送効率が低下する原因について説明する。
【0077】
図9は、
図3の電力伝送装置および
図7の比較電力伝送装置の等価回路を示した図である。
図9(A)は、
図3の電力伝送装置の等価回路を示し、
図9(B)は、
図7の比較電力伝送装置の等価回路を示している。
【0078】
図9(A)に示すインダクタL1は、
図3のコイル11に対応している。コンデンサC1,C2は、
図3のコンデンサ12a,12bに対応している。コンデンサC11,C12は、コイル11と金属板MPとの間に生じる寄生容量を示している。
【0079】
図9(B)に示すインダクタL11は、
図7のコイル31に対応している。コンデンサC21は、
図7のコンデンサ32に対応している。コンデンサC31,C32は、コイル31と金属板MPとの間に生じる寄生容量を示している。
【0080】
図7に示した比較電力伝送装置は、コイル31とコンデンサ32とで直列共振を形成している。そのため、コイル31とコンデンサ32との接続点間には、印加した電圧に、コイルの選択度をかけた値の電圧が発生する。
【0081】
この電圧は、非常に高く、例えば、ある条件においては、印加した電圧の約100倍の電圧が発生する。このため、寄生容量を示すコンデンサC31,C32を介して流れる高調波電流は、コンデンサC32よりコンデンサC31の方が大きくなる。そして、
図7の比較電力伝送装置では、共振回路が非対称であるため、インダクタL11(コイル31)の両端の電界分布や寄生容量による電流がアンバランスとなる。このような、電流がアンバランスとなる共振回路にバランを接続すると、バランの平衡信号と、共振回路の両端子との間のアンバランス特性により整合にミスマッチが生じる。これにより、
図7の比較電力伝送装置は、伝送効率が低下する。
【0082】
一方、
図3の電力伝送装置では、
図9(A)に示すように、コンデンサ12a,12b(コンデンサC1,C2)を2つに分割して、コイル11(インダクタL1)の両端に接続する。そのため、コイル11の両端の電圧は、
図9(B)に対し、1/2となる。また、
図3の電力伝送装置の共振回路は対称であり、バラン13とのバランスも取れる。すなわち、
図3の電力伝送装置は、共振回路とバラン13との整合が取れる。これにより、
図3の電力伝送装置は、伝送効率の低下を抑制することができる。
【0083】
図10は、高調波周波数と高調波レベルとの関係を示した図である。
図10の横軸は、
図3の電力伝送装置の金属板MPおよびバラン13を省略したときの、電力伝送装置から漏洩する漏洩電力の高調波周波数(基本波を含む)を示している。縦軸は、受電コイルから10cm離れた位置での高調波レベルを示している。
【0084】
図10に示す波形W4aは、
図3の電力伝送装置であって、金属板MPおよびバラン13を省略した電力伝送装置の平滑回路16の、2つのコイルを省略(短絡)したときの高調波レベルを示している。
【0085】
図10に示す波形W4bは、
図3の電力伝送装置であって、金属板MPおよびバラン13を省略した電力伝送装置の平滑回路16の、2つのコイルを省略しなかったときの高調波レベルを示している。
【0086】
波形W4a,W4bに示すように、平滑回路16が2つのコイルを有する場合、4倍および5倍の高調波に抑制効果がある。
【0087】
図11は、高調波周波数と高調波レベルとの関係を示した図である。
図11の横軸は、
図3の電力伝送装置から漏洩する漏洩電力の高調波周波数(基本波を含む)を示している。縦軸は、受電コイルから10cm離れた位置での高調波レベルを示している。
【0088】
図11に示す波形W5aは、
図3の電力伝送装置の平滑回路16の、2つのコイルを省略(短絡)したときの高調波レベルを示している。
【0089】
図11に示す波形W5bは、
図3の電力伝送装置の平滑回路16の、2つのコイルを省略しなかったときの高調波レベルを示している。
【0090】
波形W5a,W5bに示すように、金属板MPがある場合でも、バラン13を備えることにより、全体的に高調波レベルが下がり、金属板MPがない場合(
図10の波形W4a,W4b)と同等の高調波抑制効果がある。
【0091】
以上説明したように、電力伝送装置のコイル11は、スロットSLOと、スロットSLOとつながったスリットSLIとを有する金属板MPに対向するように設けられ、内周部分がスロットSLOよりも外側に位置するように形成される。そして、コンデンサ12aは、コイル11の一端に接続され、コンデンサ12bは、コイル11の他端に接続される。これにより、電力伝送装置は、漏洩磁界を抑制することができる。
【0092】
また、コイル11とコンデンサ12a,12bは、コンデンサ12aのコイル11の一端に接続されていない側の端子と、コンデンサ12bのコイル11の他端に接続されていない側の端子とから見て、回路的に対称であるように形成される。これにより、電力伝送装置は、漏洩磁界を抑制することができる。
【0093】
また、コンデンサ12aのコイル11の一端に接続されていない側の端子と、コンデンサ12bのコイル11の他端に接続されていない側の端子とには、バラン13が接続される。これにより、電力伝送装置は、漏洩磁界を抑制することができる。また、電力伝送装置は、伝送効率の低下を抑制できる。
【0094】
また、無線給電のARIB(Association of Radio Industries and Business)規格であるSTD−T113では、送電周波数として6.78MHzを用いる方式がある。この場合、3倍の高調波は、20.34MHzとなり、ISM(Industry Science Medical)帯から外れてしまう。従って、20.34MHzの高調波の抑制が重要となる。しかし、電力伝送装置は、漏洩磁界(高調波を含む)を抑制し、ISM帯から外れた(20.34MHz)高調波の抑制もできる。
【0095】
なお、
図2において、携帯端末1と充電器2は、NFCによって通信を行うことができる。充電器2は、例えば、携帯端末1に対し、携帯端末1がNFCで通信できる程度の電力を定期的に送電し、携帯端末1は、受電した電力によりNFCを起動して、自身の端末情報を充電器2に送信する。充電器2は、携帯端末1から受信した端末情報により、充電される携帯端末1が正規の端末であると判定した場合、充電を開始する。また、充電器2は、受信した端末情報により、携帯端末1に適合した充電を行うこともできる。
【0096】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態では、第1の実施の形態で示したコイル11の途中にコンデンサが接続される。
【0097】
図12は、第2の実施の形態に係る電力伝送装置の共振回路の例を示した図である。
図12において、
図3と同じものには同じ符号が付してある。
【0098】
図12には、金属板MPと、共振回路とが示してある。共振回路は、コンデンサ12a,12bと、コイル41と、コンデンサ42とを有している。なお、金属板MPとコイル41との間には、中心部がくり抜かれた矩形状の磁性体シート(図示せず)が配置されている。
【0099】
コイル41は、
図3で説明したコイル11と同様の形状を有している。ただし、以下で説明するように、コイル41の途中には、コンデンサ42が接続されている。
【0100】
コンデンサ42は、コイル41の一端と他端との中間点に接続されている。コンデンサ12a,12b,42の合成容量値は、電力の送電周波数において、コイル11と共振する値である。ただし、コンデンサ12a,12bの容量値は、同じ容量値とする。
【0101】
以上より、
図12に示す共振回路は、コンデンサ12a,12bのコイル41と接続されていない端子から見て、回路的に対称となる。これにより、電力伝送装置は、漏洩磁界を抑制することができる。また、共振回路は、回路的に対称であるため、バラン13との整合がとれ、伝送効率の低下を抑制することができる。
【0102】
また、
図12の共振回路では、コンデンサ42によって、
図3の共振回路よりコイル41の両端の電圧が下がる。これにより、無線伝送装置は、コイル41と金属板MPとの間の寄生容量による影響を低減することができる。
【0103】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態では、電力伝送装置は、強制バランを備える。
【0104】
図13は、第3の実施の形態に係る電力伝送装置を示した図である。
図13において、
図3と同じものには同じ符号が付してある。
図13に示すように、電力伝送装置は、LPF51と、強制バラン52とを有している。
図13に示す電力伝送装置は、例えば、
図2に示した携帯端末1に内蔵され、充電器2から伝送される電力を受電する。
【0105】
LPF51は、共振回路と強制バラン52との間に接続されている。LPF51は、2つのコンデンサと、3つのコイルとを有している。LPF51は、コンデンサとコイルとの直列共振で構成されるトラップ回路を有している。
【0106】
トラップ回路は、例えば、20.34MHzで共振するようになっている。これにより、電力の送電周波数が6.78MHzの場合に発生する3倍高調波(20.34MHz)は、トラップ回路により抑制される。すなわち、トラップ回路は、ISM帯から外れる高調波(20.34MHz)を抑制することができる。
【0107】
強制バラン52は、LPF51と整流回路15との間に接続されている。強制バラン52は、3つのトランスを有している。
【0108】
強制バラン52のコモンモードフィルタ効果は、伝送インピーダンスが低い方が、高い効果を得られる。従って、
図13の電力伝送装置は、強制バラン52の信号源インピーダンスが低くなるように、強制バラン52の前段にLPF51が接続されている。すなわち、LPF51は、回路整合の機能も有している。もちろん、共振回路の出力インピーダンスが低ければ、共振回路の後段に強制バラン52を接続してもよい。そして、強制バラン52の後段にLPF51を接続してもよい。
【0109】
強制バラン52は、
図3に示したバラン13(フロートバラン)より平衡度を高くできる。これにより、
図13に示す電力伝送装置は、高調波の漏洩磁界をより抑制することができる。
【0110】
以上説明したように、電力伝送装置は、強制バラン52を備える。これによって、電力伝送装置は、漏洩電力を抑制することができる。
【0111】
また、LPF51は、トラップ回路を備える。これにより、電力伝送装置は、高調波の漏洩電力を抑制することができる。なお、
図3に示したLPF14も、トラップ回路を備えてもよい。
【0112】
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態では、電力伝送装置は、磁気共鳴を利用して電力伝送を行う。
【0113】
図14は、第4の実施の形態に係る電力伝送装置を示した図である。
図14において、
図3と同じものには同じ符号が付してある。
図14に示すように、電力伝送装置は、コイル61,62と、コンデンサ63とを有している。
図14に示す電力伝送装置は、例えば、
図2に示した携帯端末1に内蔵され、充電器2から伝送される電力を受電する。
【0114】
コイル61は、その内周部分が金属板MPのスロットSLOよりも外側に位置するように形成されている。言い換えれば、コイル61は、その内周部分が金属板MPのスロットSLOの縁を囲むように形成されている。
【0115】
コイル61は、バラン13に接続されている。コイル61は、負荷コイルである。コイル61は、
図14の例では、矩形状であるが、円形状であってもよい。コイル61は、コイル61の両端から見て、対称に形成されていれば、矩形状や円形状に限らず、どのような形状であってもよい。
【0116】
コイル62は、その内周部分が金属板MPのスロットSLOよりも外側に位置するように形成されている。言い換えれば、コイル62は、その内周部分が金属板MPのスロットSLOの縁を囲むように形成されている。
【0117】
コイル62は、閉じたコイルであり、途中にコンデンサ63が直列に接続されている。コイル62は、磁気共鳴コイルである。コイル62は、
図14の例では、矩形状であるが、円形状であってもよい。コイル62の形状は、コイル61と同様の形状をしているのが望ましい。
【0118】
図14に示す電力伝送装置は、磁気共鳴方式により電力を受電する。電力伝送装置は、電力の送電周波数が、コイル62とコンデンサ63とで決まる共振周波数であるとき、負荷コイルであるコイル61から効率よく電力を受電することができる。
【0119】
コイル61は、金属板MPの影響により、磁気共鳴コイルであるコイル62との結合が低下する。そこで、コイル61の巻き数は、コイル62との結合が強くなるよう、2ターン以上とする。
【0120】
図15は、
図14のA矢視図である。
図15において、
図14と同じものには同じ符号が付してある。なお、
図15には、携帯端末1の一部断面も示してある。例えば、
図15には、
図4で説明した組み立て前の携帯端末1の本体23およびディスプレイ24の断面も示してある。本体23は、組み立ての際、金属板MPに埋め込まれるようになっており、携帯端末1は、薄型でも、所定の強度を確保することができる。
【0121】
図15に示すように、磁性体シート71は、コイル61と本体23との間に設けられる。磁性体シート71は、磁束による受電回路22および本体23への影響を抑制する。
【0122】
磁性体シート71の形状は、例えば、スロットSLOより大きい開口を有した矩形状である。また、磁性体シート71は、コイル61の線材に沿った形状を有している。
【0123】
コイル61の線材は、本体23に接続されている。コイル61は、本体23を介して、受電回路22に接続されている。なお、受電回路22は、
図14に示したバラン13、LPF14、整流回路15、平滑回路16、および電源回路17に対応する。
【0124】
コイル62は、金属板MPに対向して設けられている。コイル62は、金属板MPと磁性体シート72との間に設けられている。磁性体シート72は、磁束による受電回路22および本体23への影響を抑制する。
【0125】
磁性体シート72の形状は、例えば、スロットSLOより大きい開口を有した矩形状である。また、磁性体シート72は、コイル62の線材に沿った形状を有している。
【0126】
以上説明したように、電力伝送装置のコイル61は、スロットSLOと、スロットSLOとつながったスリットSLIとを有する金属板MPに対向するように設けられ、内周部分がSLOよりも外側に位置するように形成されている。また、コイル62は、閉ループのコイルであり、金属板に対向するように設けられ、内周部分がスロットSLOよりも外側に位置するように形成されている。そして、コンデンサ63は、閉ループのコイル62の間(途中)に直列に接続されている。これにより、電力伝送装置は、磁気共鳴方式であっても、漏洩磁界を抑制することができる。
【0127】
また、電力伝送装置は、コイル61のターン数を2ターン以上にすることにより、金属板MPがあっても、コイル61,62の結合を強くすることができる。
【0128】
[第5の実施の形態]
第5の実施の形態では、送電側の電力伝送装置について説明する。
【0129】
図16は、第5の実施の形態に係る電力伝送装置を示した図である。
図16に示すように、電力伝送装置は、E級アンプ81と、LPF82と、バラン83と、コンデンサ84a,84bと、コイル85と、コモンモードフィルタ86と、電源87とを有している。
【0130】
図16に示す電力伝送装置は、例えば、
図2に示した充電器2に内蔵され、携帯端末1に電力を送電する。例えば、
図16に示すコイル85は、
図2に示した充電器2のコイル2aに対応し、コンデンサ84a,84bは、例えば、
図2に示したコンデンサ2ba,2bbに対応する。E級アンプ81、LPF82、バラン83、コモンモードフィルタ86、および電源87は、例えば、
図2に示した送電回路2cに対応する。
【0131】
図16には、充電器2が有する金属板MPが示してある。金属板MPは、
図3で説明した金属板MPと同様に、スロットSLOと、スリットSLIとを有している。なお、
図2に示した携帯端末1を、充電するよう充電器2に置くと(携帯端末1のディスプレイが上を向くように充電器2に置くと)、
図16の電力伝送装置のコイル85および金属板MPと、
図3に示した電力伝送装置のコイル11および金属板MPとの位置関係は、下から
図16の電力伝送装置のコイル85、金属板MP、
図3に示した電力伝送装置の金属板MP、コイル11となる。
【0132】
E級アンプ81は、ドライバ電源81aと、電界効果トランジスタ81bと、コンデンサ81c,81eと、コイル81dと、チョークコイル81fとを有している。
【0133】
電界効果トランジスタ81bのゲートは、ドライバ電源81aに接続され、ドレインは、チョークコイル81fとコモンモードフィルタ86とを介して、電圧調整が可能な電源87に接続されている。電界効果トランジスタ81bのドレインとソースとの間には、コンデンサ81cが接続されている。電界効果トランジスタ81bのドレインは、コイル81dとコンデンサ81eとを介して、LPF82に接続されている。
【0134】
チョークコイル81fは、例えば、送電周波数においてリアクタンス値が無限大と見なせるほど大きい値にする。これにより、電源87は、送電電力に影響なく電界効果トランジスタ81bのドレインに電源供給を行うことができる。
【0135】
電界効果トランジスタ81bがオフ状態のとき、コンデンサ81c,81eとコイル81dは、共振回路を構成する。この共振回路の共振周波数を「f1」とする。一方、電界効果トランジスタ81bがオン状態のとき、コイル81dとコンデンサ81eとが共振回路を構成する。この共振回路の共振周波数を「f2」とする。送電周波数を「f0」とすると、「f2<f0<f1」の関係が成り立つように、コンデンサ81c,81eとコイル81dとの値を決める。
【0136】
上記条件において、電界効果トランジスタ81bに、ドライバ電源81aのドライブ信号を入力してスイッチ動作をさせると、電界効果トランジスタ81bのドレインから効率よく送電信号(電力)が出力される。さらに、コンデンサ84a,84bとコイル85とによる共振回路により、コイル85には大きな共振電流が流れ、強い磁界が発生する。これにより、電力伝送装置は、電力の送電が可能となる。
【0137】
LPF82は、バラン83を介して、コンデンサ84a,84bおよびコイル85で構成される共振回路に接続される。LPF82は、電力の送電周波数帯を通過させ、E級アンプ81で発生する2倍以上の高調波を抑圧する。LPF82は、例えば、π型のLPFで形成する。
【0138】
バラン83は、2つのトランスを有している。2つのトランスは、極性が同じになるように、コア材などに巻かれている。バラン83は、E級アンプ81から出力される非平衡電力を平衡電力に変換する。
【0139】
コンデンサ84a,84bおよびコイル85は、
図3に示したコンデンサ12a,12bおよびコイル11と同様の構成を有している。すなわち、コンデンサ84a,84bおよびコイル85は、バラン83から見て、回路的に対称となるように形成される。これにより、電力伝送装置は、漏洩磁界の発生を抑制できる。例えば、E級アンプ81から出力される電力にはコモンモードの高調波が含まれている。この高調波は、コンデンサ84a,84bとコイル85とが回路的に対称に形成されているためキャンセルされ、高調波による漏洩磁界を抑制できる。
【0140】
また、共振回路は、回路的に対称であるので、バラン13と整合が取れる。これにより、電力伝送装置は、整合損失を小さくすることができ、伝送効率の低下を抑制することができる。
【0141】
コモンモードフィルタ86は、E級アンプ81で発生するノイズが、電源87に漏れるのを抑制する。
【0142】
以上説明したように、電力伝送装置のコイル85は、スロットSLOと、スロットSLOとつながったスリットSLIとを有する金属板MPに対向するように設けられ、内周部分がスロットSLOよりも外側に位置するように形成される。そして、コンデンサ84aは、コイル85の一端に接続され、コンデンサ84bは、コイル85の他端に接続される。これにより、電力伝送装置は、漏洩磁界を抑制することができる。
【0143】
また、コイル85とコンデンサ85a,85bは、コンデンサ84aのコイル11の一端に接続されていない側の端子と、コンデンサ84bのコイル85の他端に接続されていない側の端子とから見て、回路的に対称であるように形成される。これにより、電力伝送装置は、漏洩磁界を抑制することができる。
【0144】
また、コンデンサ84aのコイル85の一端に接続されていない側の端子と、コンデンサ84bのコイル85の他端に接続されていない側の端子とには、バラン83が接続される。これにより、電力伝送装置は、漏洩磁界を抑制することができる。また、電力伝送装置は、伝送効率の低下を抑制できる。
【0145】
また、無線給電のARIB規格であるSTD−T113では、送電周波数として6.78MHzを用いる方式がある。この場合、3倍の高調波は、20.34MHzとなり、ISM帯から外れてしまう。従って、20.34MHzの高調波の抑制が重要となる。しかし、電力伝送装置は、漏洩磁界(高調波を含む)を抑制するので、ISM帯から外れた(20.34MHz)高調波の抑制もできる。
【0146】
[第6の実施の形態]
第6の実施の形態では、送電側の電力伝送装置の別の例について説明する。
【0147】
図17は、第6の実施の形態に係る電力伝送装置を示した図である。
図17において、
図16と同じものには同じ符号が付してある。
【0148】
図17に示すように、電力伝送装置は、送電アンプ91を有している。送電アンプ91は、2つの電界効果トランジスタを備え、ハーフブリッジ回路のインバータ回路を構成している。
【0149】
送電アンプ91の2つの電界効果トランジスタには、互いが逆相の電力駆動信号が入力される。電力駆動信号は、送電する電力の送電周波数を有している。送電アンプ91は、携帯端末1に送電する電力を、LPF82およびバラン83を介して、共振回路に出力する。
【0150】
図16に示した電力伝送装置は、例えば、数MHzから数十MHzの電力送電に適している。これに対し、
図17に示す電力伝送装置は、例えば、数百KHz等の比較的周波数の低い電力送電に適している。
【0151】
[第7の実施の形態]
第7の実施の形態では、電力伝送装置は、磁気共鳴を利用して電力を送電する。
【0152】
図18は、第7の実施の形態に係る電力伝送装置を示した図である。
図18において、
図16と同じものには同じ符号が付してある。
図18に示すように、電力伝送装置は、LPF101と、コイル61,62と、コンデンサ63とを有している。
図18に示す電力伝送装置は、例えば、
図2に示した充電器2に内蔵され、携帯端末1に電力を送電する。
【0153】
LPF101は、E級アンプ81とバラン83との間に接続されている。LPF101は、コンデンサ101a,101b,101cと、コイル101d,101eとを有し、5次のLPFを形成している。
【0154】
コイル102は、その内周部分が金属板MPのスロットSLOよりも外側に位置するように形成されている。言い換えれば、コイル102は、その内周部分が金属板MPのスロットSLOの縁を囲むように形成されている。
【0155】
コイル102は、バラン83に接続されている。コイル102は、給電コイルである。コイル102は、
図18の例では、矩形状であるが、円形状であってもよい。コイル102は、コイル102の両端から見て、対称に形成されていれば、矩形状や円形状に限らず、どのような形状であってもよい。
【0156】
コイル103は、その内周部分が金属板MPのスロットSLOよりも外側に位置するように形成されている。言い換えれば、コイル103は、その内周部分が金属板MPのスロットSLOの縁を囲むように形成されている。
【0157】
コイル103は、閉じたコイルであり、途中にコンデンサ104が直列に接続されている。コイル103は、磁気共鳴コイルである。コイル103は、
図18の例では、矩形状であるが、円形状であってもよい。コイル103の形状は、コイル102と同様の形状をしているのが望ましい。
【0158】
図18に示す電力伝送装置は、磁気共鳴方式により電力を送電する。電力伝送装置は、電力の送電周波数が、コイル103とコンデンサ104とで決まる共振周波数であるとき、給電コイルであるコイル102の電力を効率よく送電することができる。
【0159】
コイル102は、金属板MPの影響により、磁気共鳴コイルであるコイル103との結合が低下する。そこで、コイル102の巻き数は、コイル103との結合が強くなるよう、2ターン以上とする。
【0160】
コイル103に負荷がない場合(充電器2に携帯端末1が置かれていない場合)、コイル103の両端のインピーダンスは非常に大きくなる。このとき、コイル101eとコンデンサ101cは、共振に近い周波数にあるため、コンデンサ101bの両端は、短絡に近い状態となる。コンデンサ101bの両端の短絡状態により、コンデンサ101aとコイル101dは、並列共振回路となり、インピーダンスが高くなって、E級アンプ81の負荷が高くなる。これにより、コイル103に負荷がないときに、E級アンプ81に過電流が流れることを防止することができる。
【0161】
図19は、
図18のA矢視図である。
図19において、
図18と同じものには同じ符号が付してある。なお、
図19には、充電器2の一部断面も示してある。例えば、
図19には、組み立て前の充電器2の本体114の断面も示してある。本体114は、組み立ての際、金属板MPが埋め込まれるようになっており、充電器2は、薄型でも、所定の強度を確保することができる。なお、充電器2で充電される携帯端末1は、金属板MPの上方に置かれることになる。
【0162】
図19に示すように、磁性体シート111は、コイル102と本体114との間に設けられる。磁性体シート111は、磁束による送電回路113および本体114への影響を抑制する。
【0163】
磁性体シート111の形状は、例えば、スロットSLOより大きい開口を有した矩形状である。また、磁性体シート111は、コイル102の線材に沿った形状を有している。
【0164】
コイル102の線材は、本体114に接続されている。コイル102は、本体114を介して、送電回路113に接続されている。なお、送電回路113は、
図18のE級アンプ81、LPF101、バラン83、コモンモードフィルタ86、および電源87等に対応する。
【0165】
コイル103は、金属板MPに対向して設けられている。コイル103は、金属板MPと磁性体シート112との間に設けられている。磁性体シート112は、磁束による送電回路113および本体114への影響を抑制する。
【0166】
磁性体シート112は、コイル103の線材に沿った形状を有している。例えば、磁性体シート112は、スロットSLOより大きい開口を有した矩形状を有している。
【0167】
以上説明したように、電力伝送装置のコイル102は、スロットSLOと、スロットSLOとつながったスリットSLIとを有する金属板MPに対向するように設けられ、内周部分がSLOよりも外側に位置するように形成されている。また、コイル103は、閉ループのコイルであり、金属板に対向するように設けられ、内周部分がスロットSLOよりも外側に位置するように形成されている。そして、コンデンサ104は、閉ループのコイル103の間(途中)に直列に接続されている。これにより、電力伝送装置は、磁気共鳴方式であっても、漏洩磁界を抑制することができる。
【0168】
また、電力伝送装置は、コイル102のターン数を2ターン以上にすることにより、金属板MPがあっても、コイル102,103の結合を強くすることができる。
【0169】
[第8の実施の形態]
磁束の結合は、送電側のコイルと、受電側コイルとの重なり具合によって変わり、送電効率も変わる。第8の実施の形態の電力伝送装置は、送電側のコイルと、受電側コイルとの重なり具合によって低下した送電効率を改善するようにする。
【0170】
図20は、第8の実施の形態に係る電力伝送装置を示した図である。
図20において、
図16と同じものには同じ符号が付してある。
【0171】
図20の電力伝送装置は、
図16の電力伝送装置に対し、金属板MP1が異なる。
図20に示すように、金属板MP1は、2つのスロットSLO1,SLO2を有している。2つのスロットSLO1,SLO2は、近接して形成されている。また、金属板MP1は、2つのスロットSLO1,SLO2をつなぐスリットSLI1と、金属板MP1の外周につながるスリットSLI2とを有している。また、金属板MP1は、スリットSLI2の両端に、スリットSLI2を短絡および解放するスイッチSWを有している。
【0172】
コイル85は、スロットSLO1に設けられている。例えば、コイル85は、その内周部分が金属板MPのスロットSLO1よりも外側に位置するように形成されている。言い換えれば、コイル11は、その内周部分が金属板MPのスロットSLO1の縁を囲むように形成されている。
【0173】
スイッチSWがオフの場合、スロットSLO1とスロットSLO2には、同相の磁束が通り、金属板MP1の端面(スロットSLO1,SLO2の端面および金属板MP1の外側の端面)には、ループ電流が形成される。これにより、受電側の電力伝送装置への給電が可能となる。
【0174】
一方、スイッチSWをオンにした場合、スロットSLO1とスロットSLO2には、互いの磁束の変化を妨げる方向にループ電流が流れる。この場合、反抗起電力による電流は、コイル85がないスロットSLO2に流れ、スロットSLO1には流れないため、スロットSLO2には、コイル85の磁束が通ることができる。このため、スロットSLO1,SLO2の磁束は、逆方向となるため、スロットSLO1,SLO2間において磁束のループが形成される。このような磁束は、お互いのコイルの磁束を打ち消す方向となるため、電磁界漏洩レベルを小さくすることが可能となる。また、受電側のコイルも送電と同様の構成であれば受電が可能である。
【0175】
スイッチSWの制御例について説明する。
図2に示した充電器2は、例えば、携帯端末1とNFCによって無線通信を行い、携帯端末1から受電電力の大きさを受信するとする。
【0176】
まず、充電器2は、携帯端末1が置かれると、
図20に示す電力伝送装置のスイッチSWをオフにして、携帯端末1に電力を送電する。そして、充電器2は、スイッチSWをオフにしたときの受電電力の大きさを、携帯端末1から受信する。
【0177】
次に、充電器2は、
図20に示す電力伝送装置のスイッチSWをオンにして、携帯端末1に電力を送電する。そして、充電器2は、スイッチSWをオンにしたときの受電電力の大きさを、携帯端末1から受信する。
【0178】
次に、充電器2は、スイッチSWをオフにしたときの携帯端末1の受電電力の大きさと、スイッチSWをオンにしたときの携帯端末1の受電電力の大きさとを比較する。そして、充電器2は、携帯端末1の受電電力が大きかった方のスイッチ状態で、その後、電力を送電する。
【0179】
携帯端末1の充電器2への置き方によっては、送電側のコイルと、受電側コイルとの重なり具合が変わり、送電効率も変わる。
図20の電力伝送装置は、スイッチSWを切り替えることにより、磁束の発生状態を変え、送電効率のよいスイッチ状態で電力を送電する。
【0180】
以上説明したように、金属板MP1は、スロットSLO1と、スロットSLO1とつながったスロットSLO2とを有する。そして、スロットSLO2にスリットSLI2が設けられ、コイル85は、内周部分がスロットSLO1よりも外側に位置するように形成される。また、電力伝送装置は、スリットSLI2を短絡するスイッチSWを有する。これにより、電力伝送装置は、漏洩磁界を抑制することができるとともに、送電効率のよい電力送電が可能となる。
【0181】
[第9の実施の形態]
第9の実施の形態では、異なる送電周波数の電力を受電する。
【0182】
図21は、第9の実施の形態に係る電力伝送装置を示した図である。
図21に示す電力伝送装置は、例えば、
図2に示した携帯端末1に内蔵され、充電器2から伝送される電力を受電する。
図21において、
図3と同じものには同じ符号が付してある。
【0183】
図21に示すように、電力伝送装置は、HPF(High Pass Filter)121と、給電素子122と、整合回路123と、整流回路124とを有している。電力伝送装置は、例えば、コイル11によってMHz帯の電力を受電する。また、電力伝送装置は、給電素子122によってGHz帯の電力を受電する。すなわち、電力伝送装置は、異なる方式で送電される電力を受電することができる。
【0184】
HPF121は、例えば、MHz帯の電力受電のときインピーダンスが高く、GHz帯のマイクロ波の電力受電のときインピーダンスが低くなる。
【0185】
すなわち、金属板MPは、MHz帯の電力受電のとき、スリットSLIを有した金属板となる。これにより、電力伝送装置は、コイル11で受電した電力を、バラン13、LPF14、整流回路15、平滑回路16、および電源回路17の経路で負荷18に出力できる。
【0186】
一方、金属板MPは、GHz帯の電力受電のとき、HPF121によってスリットSLIがショート状態となる。このため、金属板MPは、スリットSLIが閉じたスロットアンテナとなる。これにより、電力伝送装置は、給電素子122で受電したマイクロ波の電力を、整合回路123、整流回路124、および電源回路17の経路で負荷18に出力できる。
【0187】
給電素子122は、マイクロ波の電力を受電する。給電素子122は、スロットSLOの内側(スロットSLOの領域内)に設けられている。
【0188】
整合回路123は、給電素子122と整流回路124との整合をとる。整流回路124は、給電素子122で受電されたマイクロ波の電力を整流する。整流回路124で整流されたマイクロ波の電力は、電源回路17へ出力される。
【0189】
以上説明したように、電力伝送装置は、スロットSLOの内側に設けられる給電素子122と、金属板MPのスリットSLI間に接続されるHPF121とを有する。これにより、電力伝送装置は、異なる送電周波数の電力を受電することができる。
【0190】
[第10の実施の形態]
第10の実施の形態では、複数の携帯端末1の充電を可能にする。
【0191】
図22は、第10の実施の形態に係る電力伝送装置を示した図である。
図22に示すように、電力伝送装置は、送電回路131,132と、コイル133a、133b,134とを有している。また、
図22には、充電器2が有する金属板MP11が示してある。
図22に示す電力伝送装置は、例えば、
図2に示した充電器2に内蔵され、携帯端末1に電力を送電する。
【0192】
金属板MP11は、スロットSLO11およびスロットSLO13と、スロットSLO11とSLO13との間に設けられたスロットSLO12とを有している。スロットSLO11は、スリットSLI11と、スロットSLO12とつながったスリットSLI12とを有している。スロットSLO13は、スリットSLI14と、スロットSLO12とつながったスリットSLI13とを有している。
【0193】
送電回路131は、
図16に示した送電回路と同様であり、例えば、数MHzから数十MHzの電力を送電する。送電回路132は、
図17に示した送電回路と同様であり、例えば、数百KHzの電力を送電する。
【0194】
コイル133a,133bは、コンデンサ135cを介して、直列に接続されている。コイル133aのコンデンサ135cが接続されていない側の一端は、コンデンサ135aに接続されている。コイル133bのコンデンサ135cが接続されていない側の一端は、コンデンサ135bに接続されている。
【0195】
コンデンサ135aのコイル133aの一端に接続されていない側の一端は、送電回路131のバランに接続されている。コンデンサ135bのコイル133bの一端に接続されていない側の一端は、送電回路131のバランに接続されている。コイル133a,133b、コンデンサ135a,135b,135cは、送電回路131のバランから見て、回路的に対称となるように形成されている。
【0196】
コイル133aは、その内周部分が金属板MP11のスロットSLO11よりも外側に位置するように形成されている。コイル133bは、その内周部分が金属板MP11のスロットSLO13よりも外側に位置するように形成されている。
【0197】
送電回路131がコイル133a,133bに電力を出力すると、2つのコイル133a,133bから磁束が発生する。従って、携帯端末1は、コイル133a,133bのどちらか一方の上方に置かれることにより、充電される。また、2台の携帯端末1は、それぞれコイル133a,133bの上方に置かれることにより、同時に充電される。すなわち、
図22に示す電力伝送装置は、2台の携帯端末1を同時に充電することができる。
【0198】
コイル134は、形状が異なっているが、
図17に示したコイル85に対応する。コンデンサ136a,136bは、
図17に示したコンデンサ84a,84bに対応する。コイル134は、その外周部分が金属板MP11のスロットSLO12よりも内側に位置するように形成されている。
【0199】
送電回路131がコイル134に電力を出力すると、コイル134から磁束が発生する。従って、携帯端末1は、コイル134の上方に置かれることにより、コイル133a,133bとは異なる方式の電力が充電される。また、携帯端末1は、1台がコイル134の上方に置かれ、もう1台がコイル133a,133bの一方の上方に置かれることにより、異なる送電方式で、2台が同時に充電される。また、3台の携帯端末1は、それぞれがコイル133a,133bとコイル134とに置かれることにより、同時に充電される。
【0200】
なお、電力伝送装置は、送電回路132と、コイル134と、コンデンサ136a,136bとを備えなくてもよい。この場合、金属板MP11のスロットSLO12も不要となる。このような場合であっても、電力伝送装置は、コイル133a,133bの上方に、2台の携帯端末1が置かれることにより、2台の携帯端末1を同時に充電することができる。
【0201】
以上説明したように、金属板MP11は、スロットSLO11と、スロットSLO11につながったスロットSLO13とを有する。また、金属板MP11のスロットSLO11は、スリットSLI11を有し、スロットSLO13は、スリットSLI14を有する。電力伝送装置は、内周部分がスロットSLO11よりも外側に位置するように形成されたコイル133aと、内周部分がスロットSLO13よりも外側に位置するように形成され、コイル133aに接続されたコイル133bとを有し、コイル133aのコイル133bに接続されていない一端に接続されたコンデンサ135aと、コイル133bのコイル133aに接続されていない一端に接続されたコンデンサ135bとを有する。これにより、電力伝送装置は、漏洩磁界を抑制するとともに、複数の携帯端末1を充電することができる。
【0202】
また、金属板MP11は、スロットSLO11とスロットSLO13との間にスロットSLO12を有する。電力伝送装置は、スロットSLO12に、コイル133a,133bの電力伝送方式とは異なるコイル134を有する。これにより、電力伝送装置は、漏洩磁界を抑制するとともに、異なる伝送方式の携帯端末1を複数充電することができる。
【0203】
[第11の実施の形態]
第11の実施の形態では、電力伝送装置を自動車の充電に適用した例について説明する。
【0204】
図23は、第11の実施の形態に係る電力伝送装置の適用例を示した図である。
図23には、自動車141と、受電側の電力伝送装置142と、送電側の電力伝送装置143と、金属板MPとが示してある。
【0205】
自動車141は、電力を受電する電力伝送装置142を有している。電力伝送装置142は、上記の実施の形態で説明した受電側の電力伝送装置である。
【0206】
電力伝送装置142は、自動車141の金属シャーシを介して、電力を受電する。自動車141は、受電した電力をバッテリ(図示せず)に充電する。
【0207】
電力を送電する電力伝送装置143(充電器)は、地中に埋められている。電力伝送装置143は、上記の実施の形態で説明した送電側の電力伝送装置である。
【0208】
自動車141は、充電の際、電力伝送装置143の上方を通過する。そのため、電力伝送装置143のコイルの上方には、コイルを保護する金属板MPも地中に埋められている。
【0209】
このように、電力伝送装置は、金属板を介した自動車の充電においても、漏洩磁界を抑制することができる。
【0210】
なお、電力伝送装置は、その他の無線給電システムにも適用することができる。例えば、介護に用いられる電動リフト等、金属板を介した無線給電システムに適用することができる。
【0211】
以上、本発明について実施形態を用いて説明したが、電力伝送装置の構成を理解容易にするために、主な処理内容に応じて分類したものである。構成要素の分類の仕方や名称によって、本願発明が制限されることはない。電力伝送装置の構成は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアで実行されてもよいし、複数のハードウェアで実行されてもよい。
【0212】
また、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者には明らかである。また、そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。さらに、各実施の形態を組み合わせることもできる。
【0213】
また、図面等において示した各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、発明の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、本発明は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。