特許第6895750号(P6895750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6895750
(24)【登録日】2021年6月10日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】ラベル用及びカバーシート用のフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20210621BHJP
   C09J 7/20 20180101ALI20210621BHJP
   C09J 195/00 20060101ALI20210621BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   B32B27/32 Z
   B32B27/32 D
   B32B27/32 E
   C09J7/20
   C09J195/00
   G09F3/02 B
【請求項の数】9
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-535150(P2016-535150)
(86)(22)【出願日】2014年10月30日
(65)【公表番号】特表2017-505245(P2017-505245A)
(43)【公表日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】EP2014073360
(87)【国際公開番号】WO2015078654
(87)【国際公開日】20150604
【審査請求日】2017年9月29日
【審判番号】不服2019-9579(P2019-9579/J1)
【審判請求日】2019年7月18日
(31)【優先権主張番号】102013113120.4
(32)【優先日】2013年11月27日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】503102423
【氏名又は名称】ロパレックス ジャーマニー ゲー・エム・ベー・ハー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Loparex Germany GmbH&Co.KG
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(74)【代理人】
【識別番号】100182545
【弁理士】
【氏名又は名称】神谷 雪恵
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル シューマン
(72)【発明者】
【氏名】マティアス マウザー
【合議体】
【審判長】 久保 克彦
【審判官】 佐々木 正章
【審判官】 藤井 眞吾
(56)【参考文献】
【文献】 特開平7−300548(JP,A)
【文献】 特表2013−513494(JP,A)
【文献】 特開2003−221566(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/32
C09J 7/20 195/00
G09F 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム、紙(5)及び感圧接着剤(6)を含むラベルであって、ここで、前記フィルムが、ランダムポリプロピレン異相(ブロック)コポリマー単独であるか、あるいは少なくとも50質量%のランダムポリプロピレン異相(ブロック)コポリマーと更なるポリプロピレンポリマー又はポリプロピレンコポリマーとのブレンドを含む、少なくとも一つの第一の層(1)を含む、前記ラベル。
【請求項2】
前記フィルムが、ポリプロピレンポリマー又はポリプロピレンコポリマーを含む第二の層(2)を含む、請求項1記載のラベル。
【請求項3】
フィルム及び接着剤(7)を含むカバーシートであって、ここで、前記フィルムが、ランダムポリプロピレン異相(ブロック)コポリマー単独であるか、あるいは少なくとも50質量%のランダムポリプロピレン異相(ブロック)コポリマーと更なるポリプロピレンポリマー又はポリプロピレンコポリマーとのブレンドを含む、少なくとも一つの第一の層(1)を有し、かつ、第二の層として鉱油に対して不浸透性のバリア層(3)を含む、前記カバーシート。
【請求項4】
前記バリア層(3)がポリアミドコポリマーを含む、請求項記載のカバーシート。
【請求項5】
前記フィルムが、前記第一の層(1)と前記バリア層(3)との間に接着促進層(4)を含む、請求項3又は4記載のカバーシート。
【請求項6】
前記フィルムが、組成について前記第一の層(1)に相当する層(1’)、及び前記バリア層(3)と前記層(1’)との間の第二の接着促進層(4’)を含む、請求項記載のカバーシート。
【請求項7】
前記接着剤(7)がビチューメン又は自己接着性シーラントである、請求項3から6までのいずれか1項記載のカバーシート。
【請求項8】
前記第一の層(1)の厚さが少なくとも5μmである、請求項1からまでのいずれか1項記載のラベル又はカバーシート。
【請求項9】
前記フィルムの全厚が少なくとも20μmである、請求項1からまでのいずれか1項記載のラベル又はカバーシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片側での熱処理時に寸法安定性であるラベル用及びカバーシート用のフィルムに関する。
【0002】
片側での熱処理を含む適用のために、先行技術においては、たいていPVCフィルム(PVC foils)が用いられている。なぜなら、これらはカーリング効果(ドイツ語:“Schuesseleffekt”)を示さないからである。PVCフィルムがもつ問題点は、それらがリサイクル性に乏しいことである。
【0003】
DE10246864A1からは、カーリング効果を回避するために異なる熱膨張係数を有する2つのフィルム層を含むフィルム/ビチューメン複合体から成るPVC不含のカバーシートが知られている。
【0004】
本発明の課題は、リサイクル可能であり、低コストであり、その機能についてPVCフィルムに匹敵するフィルムを提供することである。更なる課題は、当該フィルムを含むラベル及びカバーシートを提供することである。
【0005】
上記の課題は、少なくとも50質量%のランダム異相(random heterophasic)ポリプロピレン(ブロック)コポリマーを含む少なくとも第一の層を有するフィルムによって達成される。
【0006】
ランダム異相ポリプロピレン(ブロック)コポリマー(又は略して“r−PP−HeCo”)は、少量のエチレン及びブタンをランダム(ブロック)分布で有するポリプロピレンの均一相から成る。この連続相が、剛性及び耐熱性を提供する。第二の相は、エチレン−プロピレンゴム、エチレンとプロピレンのランダムコポリマー(当該コポリマー中ではエチレンが大半を占めている)の微細分散相である。前記相は、内部クッション性及び弾性を保証し、したがって耐衝撃性及び引裂強さを改善する。2つの相は、反応器中でチーグラー・ナッタ触媒又はメタロセン触媒を用いた逐次重合法において現場で製造される。
【0007】
好ましくは、第一の層は、更なるポリプロピレンポリマー又はポリプロピレンコポリマーを含む。
【0008】
好ましい実施形態においては、フィルムは、ポリプロピレンポリマー又はポリプロピレンコポリマーの第二の層を含む。
【0009】
選択的な好ましい実施形態においては、フィルムは、第二の層として、鉱油に対して不浸透性のバリア層を含む。バリア層は、ポリアミド(コ)ポリマー、ポリアミドアロイ、PET、O−PET又は塗料を含んでよい。好ましくは、バリア層は、ポリアミドコポリマーを含む。
【0010】
選択的な好ましい実施形態においては、フィルムは、好ましくは、第一の層と第二の層との間に接着促進層を含む。接着層は、好ましくは、接着促進ポリマーを含む。特に好ましくは、前記ポリマーは、変性ポリプロピレンである。例えば、無水マレイン酸基によって変性されたポリプロピレンを用いることができる。
【0011】
更に好ましくは、フィルムは対称形に構成されており、ここで、再び接着促進層が第二の層に続き、それから組成について第一の層に相当する層が続く。
【0012】
第一の層の厚さは、好ましくは少なくとも5μm、好ましくは10μm、非常に好ましくは15μm、特に好ましくは20μmである。
【0013】
フィルムの全厚は、好ましくは少なくとも20μm、より好ましくは少なくとも40μm、特に好ましくは少なくとも60μm、最も好ましくは少なくとも75μmである。
【0014】
第二の態様においては、本発明は、請求項1から3までのいずれか1項に記載のフィルム、感圧接着剤及び紙を含むラベルに関する。好ましくは、ラベルは、次の4つの層を指示された順序で含む:少なくとも50質量%のランダム異相ポリプロピレン(ブロック)コポリマーを含む第一の層、ポリプロピレンポリマー又はポリプロピレンコポリマーの第二の層、感圧接着剤の第三の層及び紙の第四の層。
【0015】
本発明の第三の態様においては、本発明は、請求項4から7までのいずれか1項に記載のフィルムに加えて接着剤も含むカバーシートに関する。カバーシートは、好ましくは、次の6つの層を指示された順序で含む:少なくとも50質量%のランダム異相ポリプロピレン(ブロック)コポリマーを含む第一の層、接着促進剤を含む第二の層、ポリアミドの第三の層、接着促進剤を含む第四の層、第一の層に相当する第五の層、及び第六の層としての接着剤。接着剤は、好ましくはビチューメン又はポリビチューメン(polybitumen)である。適切には、接着剤は、更なる層としての剥離フィルム又は剥離紙で保護されており、これは適用中に取り除かれることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】2つの層を有するフィルムの好ましい実施形態を示す図
図2】5つの層を有するフィルムの好ましい実施形態を示す図
図3】ラベルの好ましい実施形態を示す図
図4】カバーシートの好ましい実施形態を示す図
【0017】
図1は、50質量%の異相ランダムポリプロピレン(ブロック)コポリマーと異相ポリプロピレンコポリマーの混合物を含む少なくとも第一の層(1)を有するフィルムを示す。フィルムの第二の層(2)はポリプロピレンから成る。
【0018】
異相ポリプロピレン(ブロック)コポリマーと少なくとも50質量%のランダムポリプロピレン異相(ブロック)コポリマーのブレンドは、結晶化効果、例えばポリプロピレンの再結晶を最小にし、かつそのつど片側に作用する熱に応じた収縮効果、及びその熱に曝される面での片側でのカーリングを防止する。安定した加工性を達成するために、好ましくは、全てのポリマーの融点を下回って被覆又は印刷される。
【0019】
インフレーション法又はフィルムキャスティング法によって製造されるフィルム用にランダムポリプロピレン(r−PP)を単独で使用した場合、熱が片側に作用する適用においては、生じる分子配向に基づき過度の収縮及びカーリング効果が引き起こされることがわかった。
【0020】
対照的に、カーリング効果及び過度の収縮効果は、異相ランダムポリプロピレンコポリマーのみの使用又は少なくとも50質量%の異相ランダムポリプロピレンコポリマーと更なるポリプロピレンポリマー又はポリプロピレンコポリマーとのブレンド(図1における層1に存在しているような混合物)としての使用によって防止されることができる。
【0021】
図2は、本発明に従ったフィルムの別の好ましい実施形態を示す。フィルムは、5つの層の複合体として構成されている。層1は、第一の実施形態における層に相当する。これに接着促進層4が続く。これにはバリア層3が備わっており、当該層は鉱油の移動を妨げる。バリア層3は、例えば、ポリアミド、ポリアミドアロイ、PET、O−PET又は塗料から成っていてよい。これらに層4’及び層1’(層4及び層1に相当)が続き、こうして全体として対称構造がもたらされる。選択的な可能性として、層1、層4及び層3から成るフィルム集合体が挙げられる。
【0022】
図3は、ラベルの好ましい実施形態を示す。ラベルは、図1に示されるフィルム集合体から成り、ここで、感圧接着剤層6が、ポリプロピレン層2に施与されており、当該層6には、好ましくは無収縮紙から成る紙担体5が施与されている。
【0023】
図4は、カバーシートの好ましい実施形態を示す。カバーシートは、図2に示される層1、層4、層3、層4’及び層1’から成るフィルム集合体から成り、ここで、ビチューメンの層が層1’に施与される。さらに、滑り止めコーティングがカバーシートの上面に適用されてよい。カバーシートは、屋根領域のシーリングのために特に適している。2つの選択的な形態においては、接着剤が、剥離フィルム又は剥離紙で保護されている。
【0024】

適用例1:
レーザープリンター用のラベルフィルム
レーザープリンターを、図3のように構成されたラベルの紙面を印刷するために用いた。ここで、フィルムの表面を、130〜135℃に短期間(時間:<1秒)で加熱した。熱に直接曝される面と熱に曝される面と反対の面が、加熱及び冷却の点で異なるにも関わらず、カーリング効果を防止することができた。
【0025】
適用例2:
図4のように構成されたカバーシートを製造する際に、ビチューメンの施与中に、熱に直接曝される面と熱に曝される面と反対の面との異なる加熱及び冷却が、冷却プロセス中に起こる。
【0026】
異なる熱負荷は、特に、ビチューメンによる被覆中又は被覆後の慣例的な対向冷却を通じて起こる。ここで、フィルムは、片側で冷却されつつ、もう一方の側はビチューメンで被覆される。これは160℃〜170℃による直接被覆及び140℃までの間接被覆において行われる。片側が熱に曝されるにも関わらず、カーリング効果を防止することができた。
【0027】
さらに、次の例を、カーリング効果の評価のために評価した:
次の原料を例で用いた:
r−PP HeCo ランダムポリプロピレン異相(ブロック)コポリマー、Liondell Basell社
PP HeCo ポリプロピレン異相(ブロック)コポリマー、Prasken社(7〜9%のエチレン割合)
接着促進ポリマー 無水マレイン酸基によって変性されたポリプロピレン、三井社
CoPA ε−カプロラクタム−イソホロンジアミン及びイソテレフタル酸から形成された、約5%のイソホロンジアミン割合を有するコポリアミド、Lanxess社
r−PP ランダムポリプロピレンコポリマー、Liondell Basell社(2〜4%のエチレン割合)
【0028】
例1
フィルムを、r−PP HeCo 100%から成る層から、80μmの層厚で製造した。
【0029】
例2
フィルムを、r−PP HeCo 50%及びPP HeCo 50%の層から、80μmの層厚で製造した。
【0030】
例3
フィルムを、2つの層から製造した。第一の層は、r−PP HeCo(50%)及びPP HeCo(50%)から成り、20μmの層厚を有していた。第二の層は、PP HeCo 100%から成り、60μmの層厚を有していた。
【0031】
例4
フィルムを、3つの層から製造した。第一の層は、r−PP HeCo(50%)及びPP HeCo(50%)から成り、かつ44μmの層厚を有していた。第二の層は、接着促進ポリマー(100%)から成り、6μmの層厚を有していた。第三の層は、CoPA(100%)から成り、25μmの層厚を有していた。
【0032】
例5
フィルムを、5つの層から製造した。第一の層は、r−PP HeCo(50%)から成り、44μmの層厚を有していた。第二の層は、接着促進ポリマー(100%)から成り、6μmの層厚を有していた。第三の層は、CoPA(100%)から成り、25μmの層厚を有していた。第四の層は、接着促進ポリマー(100%)から成り、6μmの層厚を有していた。第五の層は、r−PP HeCo(50%)及びPP HeCo(50%)から成り、44μmの層厚を有していた。
【0033】
さらに、次の比較例を製造した:
比較例1
フィルムを、r−PP 50%及びPP HeCo 50%から成る層から、80μmの層厚で製造した。
【0034】
比較例2
フィルムを、2つの層から製造した。第一の層は、r−PP 50%及びPP HeCo 50%から成り、20μmの層厚を有していた。第二の層は、PP HeCo(100%)から成り、60μmの層厚を有していた。
【0035】
比較例3
フィルムを、PP HeCo 100%から成る層から、80μmの層厚で製造した。
【0036】
例及び比較例を、次のとおり評価した:
フィルムを、紙担体に(110℃で30秒間の収縮率<1%)自己接着性組成物(3M社の接着テープ)を用いて貼り付け、そしてレーザープリンター(HP:1320n型)により印刷した。レーザープリンターにおいてインク粒子をフィルムに定着させる操作は、130〜135℃の温度及び0.5〜1秒間の継続時間を有する。
【0037】
カーリングを、次の評価尺度によって測定する:
++ = カーリングなし
+ = 僅かなカーリング
− = 強いカーリング
−− = 非常に強いカーリング
結果を第1表に示している。
【0038】
【表1】
【符号の説明】
【0039】
1 少なくとも50質量%のランダム異相ポリプロピレン(ブロック)コポリマー(例えばr−PP HeCo 50%及びPP−HeCo 50%)を含む第一の層、 2 ポリプロピレンポリマー又はポリプロピレンコポリマー(例えばPP−HeCo)を含む第二の層、 3 鉱油に対して不浸透性のバリア層(例えばPA)、 4 接着促進層、 5 紙担体(好ましくは無収縮)、 6 感圧接着剤、 7 接着剤(ビチューメン又は自己接着性シーリング材料)
図1
図2
図3
図4