特許第6895790号(P6895790)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6895790
(24)【登録日】2021年6月10日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】防食システム、及び船舶
(51)【国際特許分類】
   B63B 59/04 20060101AFI20210621BHJP
   C23F 13/02 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   B63B59/04 A
   C23F13/02 G
   C23F13/02 B
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-76135(P2017-76135)
(22)【出願日】2017年4月6日
(65)【公開番号】特開2018-176880(P2018-176880A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2020年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100210572
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100134544
【弁理士】
【氏名又は名称】森 隆一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100108578
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 詔男
(74)【代理人】
【識別番号】100126893
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 哲男
(72)【発明者】
【氏名】丸田 浩
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊
(72)【発明者】
【氏名】有井 賢太郎
【審査官】 福田 信成
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−046063(JP,A)
【文献】 特開昭63−080500(JP,A)
【文献】 特開平10−141987(JP,A)
【文献】 特開2015−101158(JP,A)
【文献】 特開2011−102096(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0134795(US,A1)
【文献】 韓国登録特許第10−1066104(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 59/04
C23F 13/02
B63G 7/00
B63G 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中に配置され、電力の印加によって電界を発生させる外部電源防食装置と、
前記外部電源防食装置が発生させる電界の強度を制御する制御部と、
自装置の位置を検出する位置検出部と、
を備え、
前記制御部は、
前記位置検出部が検出する自装置の位置に基づいて、前記強度を制御する防食システム。
【請求項2】
前記制御部は、
前記電界の強度を、前記外部電源防食装置による防食対象の腐食を抑制することに適した強度から、当該強度より小さい強度まで低減させる、
請求項に記載の防食システム。
【請求項3】
前記制御部は、
前記電界の強度を、前記外部電源防食装置による防食対象の腐食を抑制することに適した強度から、当該強度より大きい強度まで増加させる、
請求項1又は2に記載の防食システム
【請求項4】
水中に配置され、電力の印加によって電界を発生させる外部電源防食装置と、
前記外部電源防食装置が発生させる電界の強度を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記電界の強度を、前記外部電源防食装置による防食対象の腐食を抑制することに適した強度から、当該強度より大きい強度まで増加させる防食システム。
【請求項5】
前記制御部は、
前記電界の強度が、前記外部電源防食装置による防食対象の腐食を抑制することに適した強度より大きい強度に増加したタイミングの所定時間後に、前記電界の強度を、前記外部電源防食装置による防食対象の腐食を抑制することに適した強度まで低減させる、
請求項3又は4に記載の防食システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の防食システム
を備える船舶。
【請求項7】
水中に配置されように船舶に搭載され、電力の印加によって電界を発生させる外部電源防食装置と、
前記外部電源防食装置が発生させる電界の強度を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、船舶から生じる水中電界を検出し、検出した水中電解を打ち消す強度の電界発生させるように前記外部電源防食装置を制御する防食システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防食システム、及び船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水中電界(以下、UEP:Underwater Electric Potential)を一定の強度において出力し、船舶の腐食を抑止する技術が知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−76495号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、UEPは水中に電界を発生させるため、水中の電界の監視によりUEPを出力する船舶が検出されてしまう可能性がある。
本発明は、上記問題に鑑みて為されたものであり、UEPの強度を制御する仕組みを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明の第一の態様によれば、防食システムは、水中に配置され、電界を発生させる外部電源防食装置と、前記外部電源防食装置が発生させる電界の強度を制御する制御部と、を備える。
【0006】
このような構成によれば、外部電源防食装置が発生させるUEPの強度を制御することができる。その結果、外部電源腐食装置が発生させるUEPによって腐食を抑制しつつ、かつUEPを欺瞞し、UEPに感応する装置の作動を抑制することができる。
【0007】
本発明の第二の態様によれば、防食システムでは、自装置の位置を検出する位置検出部を更に備え、前記制御部は、前記位置検出部が検出する自装置の位置に基づいて、前記強度を制御する。
【0008】
このような構成によれば、防食システムの位置に応じてUEPの強度を制御することができる。その結果、UEPに感応する装置が配置される領域においては、UEPを欺瞞し、UEPに感応する装置が配置される領域以外の位置においては、外部電源腐食装置が発生させるUEPによって腐食を抑制することができる。
【0009】
本発明の第三の態様によれば、防食システムでは、前記制御部は、前記電界の強度を、前記外部電源防食装置による防食対象の腐食を抑制することに適した強度から、当該強度より小さい強度まで低減させる。
【0010】
このような構成によれば、外部電源防食装置が発生させるUEPの強度を弱く制御することができる。その結果、外部電源腐食装置が発生させるUEPによって腐食を抑制しつつ、かつUEPを欺瞞し、UEPに感応する装置の作動を抑制することができる。
【0011】
本発明の第四の態様によれば、防食システムでは、前記制御部は、前記電界の強度を、前記外部電源防食装置による防食対象の腐食を抑制することに適した強度から、当該強度より大きい強度まで増加させる。
【0012】
このような構成によれば、外部電源防食装置が発生させるUEPの強度を強く制御することができる。その結果、外部電源腐食装置が発生させるUEPによって腐食を抑制しつつ、かつUEPを欺瞞し、UEPに感応する装置の作動を抑制することができる。
【0013】
本発明の第五の態様によれば、防食システムでは、前記制御部は、前記電界の強度が、前記外部電源防食装置による防食対象の腐食を抑制することに適した強度より大きい強度に増加したタイミングの所定時間後に、前記電界の強度を、前記外部電源防食装置による防食対象の腐食を抑制することに適した強度まで低減させる。
【0014】
このような構成によれば、外部電源防食装置が発生させるUEPの強度を所定時間だけ強く制御することができる。その結果、所定時間だけUEPを欺瞞し、UEPに感応する装置の作動を抑制しつつ、その後は外部電源腐食装置が発生させるUEPによって腐食を抑制することができる。
【0015】
本発明の第六の態様によれば、船舶は、上述した防食システムを備える。
【0016】
このような構成によれば、船舶の防食を目的として外部電源防食装置が発生させるUEPの強度を制御することができる。その結果、外部電源腐食装置が発生させるUEPによって船舶の腐食を抑制しつつ、かつUEPを欺瞞し、UEPに感応する装置の作動を抑制することができる。
また、本発明の他の態様によれば、防食システムは、水中に配置されように船舶に搭載され、電力の印加によって電界を発生させる外部電源防食装置と、前記外部電源防食装置が発生させる電界の強度を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、船舶から生じる水中電界を検出し、検出した水中電解を打ち消す強度の電界発生させるように前記外部電源防食装置を制御する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、UEPの強度を制御する仕組みを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る防食システムの一例を示す図である。
図2】本実施形態に係る防食システムの構成の一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る防食システムの動作の一例を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
≪実施形態≫
以下、図を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る防食システム1の一例を示す図である。
図1に示す通り、防食システム1は、船舶800に搭載される。防食システム1は、制御装置10と、腐食防止装置20とを備える。制御装置10は、腐食防止装置20の動作を制御する。腐食防止装置20は、制御装置10の制御に基づいて動作する。
【0020】
<腐食防止装置について>
腐食防止装置20は、腐食防止装置20に接続される電極と、腐食防止装置20が防食を行う対象(以下、防食対象)との間に電位差を生じさせ、防食対象の腐食を抑制する。以降の説明において、腐食防止装置20が外部電源方式により防食対象の腐食を抑制する場合について説明する。
【0021】
腐食防止装置20は、制御部201(不図示)と、電源装置202(不図示)と、不溶性電極210と、照合電極220とを備える。電源装置202は、例えば、直流電源である。不溶性電極210と、照合電極220とは、電源装置202に接続される。具体的には、不溶性電極210は、電源装置202の陽極に接続され、照合電極220は、電源装置202の陰極に接続される。制御部201は、制御装置10の制御に基づいて、電源装置202が不溶性電極210と、照合電極220との間に印加する電圧を制御する。
ここで、不溶性電極210は、船舶800の舷側や船底を構成する材料よりもイオン化傾向が小さい材料によって構成されることが好ましい。また、照合電極220は、防食対象を構成する材料、又は当該材料とイオン化傾向が近似する材料によって構成されることが好ましい。
【0022】
不溶性電極210、及び照合電極220は、船舶800の舷側や船底に配置され、かつ水面50よりも下の位置に配置される。本実施形態の一例では、不溶性電極210、及び照合電極220が船舶800の船底に配置され、腐食防止装置20の防食対象が船舶800の舷側、及び船底である。
【0023】
腐食防止装置20は、不溶性電極210、及び照合電極220に電圧を印加する。これにより、腐食防止装置20は、照合電極220、及び防食対象の電位を不溶性電極210よりも低い電位(不活性域の電位)にし、防食対象の腐食を抑制する。
【0024】
また、腐食防止装置20が不溶性電極210、及び照合電極220に電圧を印加することに伴い、不溶性電極210、及び照合電極220の周囲には、水中電界(以下、UEP:Underwater Electric Potential)が生じる。
ここで、水中には、UEPに感応し、作動する装置(例えば、機雷)が配置される場合がある。以降の説明において、UEPに感応し、作動する装置をUEP感応装置と記載する。腐食防止装置20は、UEP感応装置が配置される可能性のある領域に船舶800が位置する場合、UEPを発生させないこと、又は機雷が感応するUEPの強度とは異なる強度にUEPを制御することで、UEP感応装置の作動を抑制することができる。また、UEP感応装置には、UEP発生源(この一例では、船舶800)が発生させるUEPの強度に基づいて、当該UEP発生電である個体を特定し、同一個体が所定回数検知されたときに作動するものがある。この場合、このようなUEP感応装置が配置される可能性のある領域を通過するたびに、UEPの強度を変更することで、UEP感応装置の作動を抑制することができる。
本実施形態の防食システム1は、制御装置10が腐食防止装置20を制御し、UEPの強度を制御する。以下、防食システム1の具体的な構成について説明する。
【0025】
<制御装置について>
以下、図2を参照して防食システム1の構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る防食システム1の構成の一例を示す図である。
制御装置10は、制御部100と、記憶部500とを備える。記憶部500には、航行領域情報51が予め記憶される。航行領域情報51とは、船舶や艦艇が航行可能な領域(以下、航行可能領域)を示す情報である。航行可能領域とは、例えば、過去に船舶や艦艇が機雷に触雷することなく航行した航路の領域、各国の領海、及び掃海された領域等である。
【0026】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)を備えており、位置検出部101と、防食装置制御部102とをその機能部として備える。
位置検出部101は、制御装置10(船舶800)の位置を検出する。位置検出部101は、例えば、GPS(Global Positioning System)などの全地球航法衛星システム(Global Navigation Satellite System(s):GNSS)を利用した方法や、準天頂衛星(quasi-zenith satellites:QZS)などの地域的衛星測位システム(Regional Navigation Satellite System:RNSS)を利用した方法によって制御装置10の位置を検出する。ここで、位置検出部101は、GNSSを利用した方法やRNSSを利用した方法によって検出した制御装置10の位置を、慣性装置(Inertial Navigation System:INS)によって補完する機能を有してもよい。位置検出部101は、制御装置10の位置を検出し、検出した位置を示す現在位置情報80を防食装置制御部102に供給する。
【0027】
防食装置制御部102は、位置検出部101から現在位置情報80を取得する。防食装置制御部102は、取得した現在位置情報80と、航行領域情報51とに基づいて、腐食防止装置20が発生させるUEPの強度を制御する。防食装置制御部102は、例えば、腐食防止装置20にUEPの強度を示す情報(以下、UEP強度情報81)を供給する。
【0028】
腐食防止装置20は、制御部201と、電源装置202とを備える。制御部201は、制御装置10の制御に基づいて、電源装置202を制御する。具体的には、制御部201は、UEP強度情報81に基づいて、電源装置202が不溶性電極210と、照合電極220との間に印加する電圧を制御する。電源装置202は、制御部201の制御に基づいて、不溶性電極210と、照合電極220との間に電圧を印加する。
【0029】
<防食システムの動作について>
以下、図3を参照して防食システム1の動作について説明する。
図3は、本実施形態に係る防食システム1の動作の一例を示す流れ図である。
制御装置10が備える位置検出部101は、船舶800の位置を検出する(ステップS110)。防食装置制御部102は、位置検出部101が検出した現在位置情報80と、記憶部500が記憶する航行領域情報51とに基づいて、船舶800が航行可能領域内にあるか否かを判定する(ステップS120)。
【0030】
防食装置制御部102は、例えば、現在位置情報80の示す位置が、航行領域情報51の示す航行可能領域内である場合(ステップS120;YES)、腐食防止装置20に防食対象の腐食を抑制することに適したUEPを発生させるように腐食防止装置20を制御する(ステップS130)。以降の説明において、防食対象の腐食を抑制することに適したUEPの強度を、適正UEPと記載する。したがって、防食装置制御部102は、適正UEPを示すUEP強度情報81を腐食防止装置20に供給する。また、防食装置制御部102は、現在位置情報80の示す位置が、航行領域情報51の示す航行可能領域外である場合、適正UEP以外の強度のUEPを発生させるように腐食防止装置20を制御する(ステップS140)。この場合、防食装置制御部102は、適正UEP以外の強度を示すUEP強度情報81を腐食防止装置20に供給する。
【0031】
腐食防止装置20が備える制御部201は、防食装置制御部102から供給されるUEP強度情報81に基づいて、電源装置202を制御する(ステップS150)。具体的には、制御部201は、UEP強度情報81が示すUEPの強度に基づいて、電源装置202が不溶性電極210と、照合電極220との間に印加する電圧を制御する。
【0032】
<UEPの強度について>
ここで、適正UEP以外の強度を示すUEP強度情報81とは、例えば、適正UEPよりも弱い強度を示す情報、又は適正UEPよりも強い強度を示す情報である。
UEP強度情報81が適正UEPよりも弱い強度を示す情報である場合、制御部201は、電源装置202に電圧を印加させない。また、制御部201は、適正UEPよりも弱い強度のUEPが生じる電圧を電源装置202に印加させてもよい。また、制御部201は、船舶800から生じるUEPを検出し、検出したUEPを打ち消すUEPを発生させるように電源装置202に電圧を印加させてもよい。この場合、電源装置202は、不溶性電極210と、照合電極220との間の電圧を検出する構成と、不溶性電極210、及び照合電極220が接続される極性(陽極、又は陰極)を変更可能な構成とを有する。制御部201は、検出した電圧とは逆の方向であって、当該電圧と合致する大きさの電圧を電源装置202に印加させる。
【0033】
また、UEP強度情報81が適正UEPよりも強い強度を示す情報である場合、制御部201は、適正UEPよりも強い強度のUEPが生じる電圧を電源装置202に印加させる。この場合、電源装置202は、適正UEPよりも強い強度のUEPを発生させる電圧を出力可能な電源容量を有する。ここで、制御部201は、適正UEPよりも強い強度のUEPを所定時間だけ出力するように電源装置202を制御することが好ましい。具体的には、UEP強度情報81が適正UEPよりも強い強度を示す情報である場合、制御部201は、電源装置202に適正UEPよりも強い強度のUEPを発生させる電圧を所定時間だけ印加させ、その後適正UEPを発生させる電圧を印加させる。
【0034】
<実施形態のまとめ>
以上説明したように、本実施形態の防食システム1は、制御装置10と、腐食防止装置20とを備え、制御装置10は、腐食防止装置20が発生させるUEPの強度を制御する。
本実施形態の防食システム1によれば、腐食防止装置20が発生させるUEPを適宜変化させ、UEP感応装置に対して船舶800の存在をくらますことができる。これにより、本実施形態の防食システム1は、防食対象の腐食を抑制しつつ、かつUEP感応装置に対して船舶800の存在を欺瞞することができる。
【0035】
また、本実施形態の防食システム1は、現在位置情報80の位置に応じて、腐食防止装置20が発生させるUEPを適宜変化させ、UEPを欺瞞することができる。これにより、本実施形態の防食システム1は、船舶800の位置が航行可能領域内の場合、適正UEPによって防食対象の腐食を抑制し、船舶800の位置が航行可能領域以外の場合UEP感応装置に対して船舶800の存在を欺瞞することができる。
【0036】
また、本実施形態の防食システム1は、電源装置202が不溶性電極210と、照合電極220とに電圧を印加することにより発生させるUEPの強度を、適正UEPの強度より小さい(弱い)強度まで低減させる。
ここで、UEP感応装置は、UEPの発生源(この一例では、船舶800)が発生させるUEPの強度に応じて作動する場合がある。具体的には、UEP感応装置は、船舶800が発生させるUEPの強度が強い場合、当該船舶800が近傍にいると判定し、作動する場合がある。
本実施形態の防食システム1によれば、UEPの強度を適正UEPより小さい強度に変化させ、船舶800が遠方にいると誤認させることができる。
また、本実施形態の防食システム1は、船舶800が発生させるUEPを検出し、UEPを検出し、検出したUEPを打ち消すUEPを発生させる。したがって、本実施形態の防食システム1によれば、UEP感応装置が、船舶800が発生させるUEPによって作動することを抑制することができる。
【0037】
また、本実施形態の防食システム1は、電源装置202が不溶性電極210と、照合電極220とに電圧を印加することにより発生させるUEPの強度を、適正UEPのより大きい(強い)強度まで増加させる。
上述したように、UEP感応装置は、船舶800が発生させるUEPの強度に応じて作動する場合がある。具体的には、UEP感応装置は、船舶800が発生させるUEPの強度が強い場合、当該船舶800が近傍にいると判定し、作動する場合がある。
本実施形態の防食システム1によれば、UEPの強度を適正UEPより大きい強度に変化させ、船舶800が近傍にいると誤認させることができる。
【0038】
また、本実施形態の防食システム1は、UEPの強度を所定時間だけ適正UEPより大きい強度に変化させる。ここで、適正UEPより大きい強度のUEPを発生させる場合、不溶性電極210、及び照合電極220は、適正UEPを発生させる場合と比較して、劣化の進みが早い場合がある。したがって、防食システム1は、所定時間経過後は、適正UEPを発生させることが好ましい。本実施形態の防食システム1によれば、UEPを適正UEPよりも大きい強度に適宜変化させることにより、UEP感応装置に対して船舶800の存在を欺瞞しつつ、かつ所定時間経過後は、UEPを防食対象の腐食の抑制に適した適正UEPに変化させることができる。所定時間とは、例えば、UEP感応装置が作動することにより、船舶800に及ぶ影響がない、又は影響が低減された位置まで船舶800が移動することに要する時間である。
【0039】
なお、上述では、防食装置制御部102が現在位置情報80に基づいて、腐食防止装置20が発生させるUEPの強度を制御する場合について説明したが、これに限られない。防食装置制御部102は、例えば、常時、又は所定の時間間隔に置いてUEPの強度を変更するように腐食防止装置20を制御する構成であってもよい。これにより、UEPの強度に基づいて当該UEPの発生源を識別するUEP感応装置に対して船舶800の存在を欺瞞し、当該UEP感応装置の作動を抑制することができる。この場合、制御装置10は、位置検出部101、及び記憶部500(航行領域情報51)を備えなくてもよい。また、防食装置制御部102は、船舶800の乗員の操作に従ってUEPの強度を制御するものであってもよい。
【0040】
また、上述では、航行領域情報51が、航行可能領域を示す情報である場合について説明したがこれに限られない。航行領域情報51は、例えば、航行の際、船舶や艦艇に危険が生じる可能性がある領域を示す情報であってもよい。この場合、防食装置制御部102は、現在位置情報80の示す位置が、航行領域情報51の示す領域内である場合、腐食防止装置20に適正UEP以外の強度のUEPを発生させる制御を行う。
【0041】
また、上述では、防食システム1が船舶800に搭載される場合について説明したが、これに限られない。防食システム1は、例えば、少なくとも一部が水中に配置される構造物に設置されていてもよく、浮体式の構造物に設置されていてもよい。
【0042】
また、上述では、電源装置202が、適正UEPよりも強い強度のUEPを発生させる電圧を出力可能な電源容量を有する場合について説明したが、これに限られない。腐食防止装置20は、例えば、適正UEPを発生させる電圧を出力可能な電源装置202の他、電源装置202に直列に接続される外部電源装置を有していてもよい。この場合、制御部201は、電源装置202と、外部電源装置とが出力する電圧を不溶性電極210、及び照合電極220に印加し、適正UEPよりも強い強度のUEPを発生させる。
【0043】
なお、上記の各実施形態における制御装置10、及び腐食防止装置20が備える各部は、専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、メモリおよびマイクロプロセッサにより実現させるものであってもよい。
【0044】
なお、制御装置10、及び腐食防止装置20が備える各部は、メモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、制御装置10、制御装置11、腐食防止装置20、及び腐食防止装置21が備える各部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0045】
また、制御装置10、及び腐食防止装置20が備える各部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0046】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよい。
【0047】
以上、本発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。上述した各実施形態に記載の構成を組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…防食システム
10…制御装置
20…腐食防止装置
50…水面
51…航行領域情報
80…現在位置情報
81…強度情報
100、110、201…制御部
101…位置検出部
102…防食装置制御部
202…電源装置
210…不溶性電極
220…照合電極
500…記憶部
800…船舶
図1
図2
図3