特許第6895838号(P6895838)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6895838
(24)【登録日】2021年6月10日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】自動変速機
(51)【国際特許分類】
   F16H 3/66 20060101AFI20210621BHJP
【FI】
   F16H3/66 Z
   F16H3/66 B
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-144327(P2017-144327)
(22)【出願日】2017年7月26日
(65)【公開番号】特開2018-76959(P2018-76959A)
(43)【公開日】2018年5月17日
【審査請求日】2020年7月22日
(31)【優先権主張番号】10 2016 217 327.8
(32)【優先日】2016年9月12日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】500045121
【氏名又は名称】ツェットエフ、フリードリッヒスハーフェン、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ZF FRIEDRICHSHAFEN AG
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【弁理士】
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】ステファン ベック
(72)【発明者】
【氏名】アーミン ギアリング
【審査官】 前田 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−105722(JP,A)
【文献】 特開2015−183855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に自動車用の自動変速機(GE)であって、変速機ハウジング(GG)、駆動可能な第1回転可能軸(1)、前記自動変速機(GE)の被動部としての第2回転可能軸(2)、第1遊星歯車セット(RS1)、第2遊星歯車セット(RS2)、第3遊星歯車セット(RS3)、第4遊星歯車セット(RS4)、第1シフト要素(03)、第2シフト要素(04)、第3シフト要素(28)、第4シフト要素(46)、第5シフト要素(57)並びに第6シフト要素(67)を備え、多様な変速比を第1軸(1)と第2軸(2)の間で切り替える自動変速機(GE)において、
前記第1、第3及び第4遊星歯車セット(RS1、RS3、RS4)は各々、シングルピニオン式遊星歯車セットとして構成され、一方前記第2遊星歯車セット(RS2)は、ダブルピニオン式遊星歯車セットとして構成され、
前記第1遊星歯車セット(RS1)の遊星歯車キャリア(ST1)及び前記第2遊星歯車セット(RS2)の遊星歯車キャリア(ST2)及び前記第4遊星歯車セット(RS4)の遊星歯車キャリア(ST4)は、相互に常時接続され及び前記自動変速機(GE)の前記第1回転可能軸(1)を構成し、
前記第3遊星歯車セット(RS3)の遊星歯車キャリア(ST3)は、前記自動変速機(GE)の前記第2回転可能軸(2)を構成し、
前記第1遊星歯車セット(RS1)の太陽歯車(SO1)は、前記自動変速機(GE)の第3回転可能軸(3)を構成し、
前記第3遊星歯車セット(RS3)の内歯車(HO3)は、前記自動変速機(GE)の第4回転可能軸(4)を構成し、
前記第2遊星歯車セット(RS2)の太陽歯車(SO2)は、前記自動変速機(GE)の第5回転可能軸(5)を構成し、
前記第1遊星歯車セット(RS1)の内歯車(HO1)及び前記第2遊星歯車セット(RS2)の内歯車(HO2)は、相互に常時接続されるか、又は共通の構成部品として構成され、及び前記自動変速機(GE)の第6回転可能軸(6)を構成し、
前記第3遊星歯車セット(RS3)の太陽歯車(SO3)及び前記第4遊星歯車セット(RS4)の太陽歯車(SO4)は、相互に常時接続され、及び前記自動変速機(GE)の第7回転可能軸(7)を構成し、
前記第4遊星歯車セット(RS4)の内歯車(HO4)は、前記自動変速機(GE)の第8回転可能軸(8)を構成する自動変速機(GE)において、
前記第1シフト要素(03)は、前記第3回転可能軸(3)と前記変速機ハウジング(GG)の間のパワーフローに配置され、
前記第2シフト要素(04)は、前記第4回転可能軸(4)と前記変速機ハウジング(GG)の間のパワーフローに配置され、
前記第3シフト要素(28)は、前記第2回転可能軸(2)と前記第8回転可能軸(8)の間のパワーフローに配置され、
前記第4シフト要素(46)は、前記第4回転可能軸(4)と前記第6回転可能軸(6)の間のパワーフローに配置され、
前記第5シフト要素(57)は、前記第5回転可能軸(5)と前記第7回転可能軸(7)の間のパワーフローに配置され、
前記第6シフト要素(67)は、前記第6回転可能軸(6)と前記第7回転可能軸(7)の間のパワーフローに配置される自動変速機(GE)において、
第7シフト要素(47;27;24)は、前記第4回転可能軸(4)と前記第7回転可能軸(7)の間、又は前記第2回転可能軸(2)と前記第7回転可能軸(7)の間、又は前記第2回転可能軸(2)と前記第4回転可能軸(4)の間のパワーフローに配置されることを特徴とする自動変速機(GE)。
【請求項2】
請求項1に記載の自動変速機であって、各速度において、前記シフト要素のうちの3つのシフト要素が締結され、1つの速度から次に高い又は低い速度へ変更する際に、その都度、従前に締結されていたシフト要素のうちの1つのみのシフト要素が開放され、及び従前に開放されていた1つのみのシフト要素が締結されることを特徴とする自動変速機。
【請求項3】
請求項2に記載の自動変速機であって、前進11速及び後退1速を切り替え可能な変速機において、
前進第1速において、第2、第5及び第6シフト要素(04、57、67)がトルクを導き、
前進第2速において、第1、第2及び第6シフト要素(03、04、67)がトルクを導き、
前進第3速において、第1、第2及び第5シフト要素(03、04、57)がトルクを導き、
前進第4速において、第1、第2及び第3シフト要素(03、04、28)がトルクを導き、
前進第5速において、第1、第3及び第5シフト要素(03、28、57)がトルクを導き、
前進第6速において、第1、第3及び第6シフト要素(03、28、67)がトルクを導き、
前進第7速において、第3、第4及び第6シフト要素(28、46、67)がトルクを導き、
前進第8速において、第1、第3及び第4シフト要素(03、28、46)がトルクを導き、
前進第9速において、第1、第4及び第6シフト要素(03、46、67)がトルクを導き、
前進第10速において、第1、第4及び第5シフト要素(03、46、57)がトルクを導き、
前進第11速において、第1、第5及び第7シフト要素(03、57、47;03、57、27;03、57、24)がトルクを導き、及び
後退速において、第2、第4及び第5シフト要素(04、46、57)がトルクを導くことを特徴とする自動変速機。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項に記載の自動変速機であって、遊星歯車セットは、相互に同軸で及び軸方向に相前後して、「第1、第2、第3、第4遊星歯車セット(「RS1,RS2、RS3、RS4」)の順番で配置されることを特徴とする自動変速機。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項に記載の自動変速機であって、第7シフト要素(47;27;24)は空間的に見て、軸上で第2及び第3遊星歯車セット(RS2、RS3)の間の領域に配置されることを特徴とする自動変速機。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか一項に記載の自動変速機であって、第7シフト要素(27)は空間的に見て、軸上で第3及び第4遊星歯車セット(RS3、RS4)の間の領域に配置されることを特徴とする自動変速機。
【請求項7】
請求項1〜6の何れか一項に記載の自動変速機であって、第7シフト要素(47;27;24)は空間的に見て、第3遊星歯車セット(RS3)に隣接して配置されることを特徴とする自動変速機。
【請求項8】
請求項1〜7の何れか一項に記載の自動変速機であって、第4、第5及び第6シフト要素(46、57、67)が、軸上で第2遊星歯車セット(RS2)に隣接するクラッチアセンブリを構成し、該クラッチアセンブリは、第5シフト要素(57)用のアウタプレートキャリア及び第6シフト要素(67)用のインナプレートキャリアとして構成された第1プレートキャリア、第6シフト要素(67)用のアウタプレートキャリア及び第4シフト要素のインナプレートキャリアとして構成された第2プレートキャリア、第5シフト要素(57)のインナプレート及びアウタプレートを備えるプレートパッケージ、第5シフト要素(57)のプレートパッケージに作用する第5シフト要素(57)の駆動装置、第6シフト要素(67)のインナプレート及びアウタプレートを備えるプレートパッケージ、第6シフト要素(67)のプレートパッケージに作用する第6シフト要素(67)の駆動装置、第4シフト要素(46)のインナプレート及びアウタプレートを備えるプレートパッケージ、並びに第4シフト要素(46)のプレートパッケージに作用する第4シフト要素(46)の駆動装置、を備える自動変速機において、
第4シフト要素(46)のプレートパッケージは、軸方向に見て、実質的に径方向に第6シフト要素(67)のプレートパッケージの上に配置され、一方第6シフト要素(67)のプレートパッケージは、軸方向に見て、実質的に径方向に第5シフト要素(57)のプレートパッケージの上に配置されることを特徴とする自動変速機。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項に記載の自動変速機であって、第1回転可能軸(1)は、電気機械(EM)のロータ(EMR)と常時接続されることを特徴とする自動変速機。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項に記載の自動変速機であって、第2回転可能軸(2)は、電気機械(EM)のロータ(EMR)と常時接続されることを特徴とする自動変速機。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項に記載の自動変速機であって、第4回転可能軸(4)は、電気機械(EM)のロータ(EMR)と常時接続されることを特徴とする自動変速機。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項に記載の自動変速機であって、第6回転可能軸(6)は、電気機械(EM)のロータ(EMR)と常時接続されることを特徴とする自動変速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の遊星歯車構造の自動変速機に関する。
【背景技術】
【0002】
自動的に切り替え可能な遊星構造の車両変速機は、従来技術において、既に多種多様に記載されており、及び恒久的に更なる発展及び改良がなされている。従って、こうした変速機は、十分な個数の変速段、及び自動車に対して良好に適しつつ総変速比幅を高めた変速比、有効な変速段ステップ、及び適用事例に対して十分に大きい発進変速比、を備えるべきである。他方でこうした変速機には、構成のための労力を可及的に僅かとする、特にシフト要素の数を少なくすることが求められる。通常は更に、連続的な切り替えの際に、いわゆるグループ切り替えを避けるべきである。つまり、次に高い又は次に低い変速段へ切り替える際に、その都度、従前に締結されていた1つのみのシフト要素が開放され、及び従前に開放されていた1つのみのシフト要素が締結されるのである。
【0003】
国際公開第2015/080020号は、一般的な自動変速機を開示する。この自動変速機は、変速機ハウジング、入力軸、出力軸、4つの遊星歯車セット、2つの油圧作動型ブレーキ及び4つの油圧作動型クラッチを備える。この自動変速機においては、グループ切り替え無しで切り替え可能な前進10速及び後退1速を構成するために、各変速段において、この6つのシフト要素のうちの3つが締結される。4つの遊星歯車セットのうちの第1の両方の遊星歯車セットは、入力軸と常時接続される前置切り替え歯車セットを構成する。前置切り替え歯車セットは、低減2キャリア4軸型変速装置として、ラビニヨ式遊星歯車セット構造で構成される。4つの遊星歯車セットのうちの他の両方の遊星歯車セットは、メイン歯車セットを構成する。メイン歯車セットは、2キャリア5軸型変速装置として、シンプソン式遊星歯車セットに類似の構造であり、及び入力軸及び出力軸と常時接続される。国際公開第2015/080020号の記載によれば、第1ブレーキは、前置切り替え歯車セットとのみ常時接続される。一方第2ブレーキ及び第4クラッチは、メイン歯車セットとのみ常時接続される。これに対して第1、第2及び第3クラッチは、メイン歯車セット及び前置切り替え歯車セットの両方と常時接続される。そのため、第1、第2及び第3クラッチは、前置切り替え歯車セットとメイン歯車セットの間のパワーフローに配置される。このようにして、前置切り替え歯車セットの3つの異なる出力回転数を、選択的にメイン歯車セットに伝達可能である。3つの出力回転数のうち、1つは入力軸回転数よりも小さく、1つは入力軸回転数と等しく、及び1つは入力軸回転数よりも大きい。図1Aは、この一般的な自動変速機の変速機フロー図を示す。図1Bは、関連するシフトロジックを示す。
【0004】
国際公開第2015/080020号の前置切り替え歯車セットは、ダブルピニオン式遊星歯車セット及びシングルピニオン式遊星歯車セットを含む。これらの歯車セットは相互に連結され、全体として、第1及び第2太陽歯車、1つのみの遊星歯車キャリア、及び1つのみの内歯車を備える。国際公開第2015/080020号の記載によれば、第1太陽歯車はダブルピニオン式遊星歯車セットに割り当てられる。及び第2太陽歯車は、シングルピニオン式遊星歯車セットに割り当てられる。一方遊星歯車キャリア及び内歯車は、前置切り替え歯車セットの両方の遊星歯車セットに割り当てられる。この共通の遊星歯車キャリアには、ダブルピニオン式遊星歯車セットの内側遊星歯車及び外側遊星歯車が、回転可能な状態で支承されている。これらのうちの外側遊星歯車は、同時にシングルピニオン式遊星歯車セットの遊星歯車を構成する。対応して各内側遊星歯車は、第1太陽歯車及び外側遊星歯車のうちの1つと、噛み合い係合する。一方、各外側遊星歯車は、第2太陽歯車、共通の内歯車及び内側遊星歯車のうちの1つと、噛み合い係合する。前置切り替え歯車セットの第2太陽歯車は、前置切り替え歯車セットの第1軸を構成し、及び第1ブレーキと常時接続される。そのため前置切り替え歯車セットの第1軸を、変速機ハウジングに固定可能である。前置切り替え歯車セットの遊星歯車キャリアは、前置切り替え歯車セットの第2軸を構成し、及び入力軸と常時接続される。前置切り替え歯車セットの内歯車は、前置切り替え歯車セットの第3軸を構成し、及び第1クラッチ及び第3クラッチと常時接続される。そのため、前置切り替え歯車セットの第3軸は、メイン歯車セットの2つの異なる要素と接続可能である。前置切り替え歯車セットの第1太陽歯車は、前置歯車セットの第4軸を構成し、及び第2クラッチと常時接続される。そのため第4軸も、メイン歯車セットと接続可能である。
【0005】
米国特許出願公開第2016/0160964号のメイン歯車セットは、相互に連結された個別の2つのシングルピニオン式遊星歯車セットを備える。各シングルピニオン式遊星歯車セットは、各1つの、太陽歯車、内歯車及び遊星歯車キャリアを備える。遊星歯車キャリアには、遊星歯車が回転可能な状態で支承される。遊星歯車は、この太陽歯車及び内歯車と噛み合い係合する。メイン歯車セットの両方の太陽歯車は、相互に常時接続され、メイン歯車セットの第1軸を構成し、及び第1クラッチ及び第2クラッチの両方と常時接続される。そのため、メイン歯車セットの第1軸は、選択的に、前置切り替え歯車セットの第3軸又は第4軸と接続可能である。第2遊星歯車セットの遊星歯車キャリアは、メイン歯車セットにおいて、メイン歯車セットの第2軸を構成し、及び出力軸及び第4クラッチと常時接続される。第2遊星歯車セットの内歯車は、メイン歯車セットにおいて、メイン歯車セットの第3軸を構成し、及び第2ブレーキ及び第3クラッチと常時接続される。そのため、メイン歯車セットの第3軸は、選択的に、変速機ハウジングに固定可能であるか又は前置切り替え歯車セットの第3軸と接続可能である。第1遊星歯車セットの遊星歯車キャリアは、メイン歯車セットにおいて、メイン歯車セットの第4軸を構成し、及び入力軸と常時接続される。第1遊星歯車セットの内歯車は、メイン歯車セットにおいて、メイン歯車セットの第5軸を構成し、及び第4クラッチと常時接続される。そのため、メイン歯車セットの第5軸は、第4クラッチを締結することにより、前置切り替え歯車セットの第2軸と接続可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第2015/080020号
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/0160964号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、国際公開第2015/080020号から既知の自動変速機を、速度の数の点で更に発展させる、という課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、本発明により、請求項1に記載の特徴を有する自動変速機により解決される。本発明の更なる有利な構成及び発展形態は、従属請求項から明らかである。
【0009】
従って、特に自動車用の自動変速機が提供される。自動車用の自動変速機は、変速機ハウジング、駆動可能な第1回転可能軸、自動変速機の被動部を構成する第2回転可能軸、4つの遊星歯車セット、並びに本発明による7つのシフト要素を備え、多様な変速比を第1軸と第2軸の間で切り替える。第1回転可能軸は、変速機入力軸とも称することが可能である。第2回転可能軸は、変速機出力軸又は変速機被動軸とも称することが可能である。第1回転可能軸の駆動部は、例えば内燃機関を介して、及び/又は電気機械を介して実現可能である。第1、第3及び第4遊星歯車セットは各々、シングルピニオン式遊星歯車セットとして構成される。一方第2遊星歯車セットは、ダブルピニオン式遊星歯車セットとして構成される。
【0010】
遊星歯車セットの個々の要素間の接続に関して、及び自動変速機の個々の軸を構成するために、以下が備えられる。第1遊星歯車セットの遊星歯車キャリア及び第2遊星歯車セットの遊星歯車キャリア及び第4遊星歯車セットの遊星歯車キャリアは、相互に常時接続され及び自動変速機の第1回転可能軸を構成する。第3遊星歯車セットの遊星歯車キャリアは、自動変速機の第2回転可能軸を構成する。第1遊星歯車セットの太陽歯車は、自動変速機の第3回転可能軸を構成する。第3遊星歯車セットの内歯車は、自動変速機の第4回転可能軸を構成する。第2遊星歯車セットの太陽歯車は、自動変速機の第5回転可能軸を構成する。第1遊星歯車セットの内歯車及び第2遊星歯車セットの内歯車は、相互に常時接続されるか又は共通の構成部品として構成され、及び自動変速機の第6回転可能軸を構成する。第3遊星歯車セットの太陽歯車及び第4遊星歯車セットの太陽歯車は、相互に常時接続され、及び自動変速機の第7回転可能軸を構成する。第4遊星歯車セットの内歯車は、自動変速機の第8回転可能軸を構成する。
【0011】
7つのシフト要素の、自動変速機の個々の回転可能軸への連結に関して、以下が備えられる。第1シフト要素は、第3回転可能軸と変速機ハウジングの間のパワーフローに配置される。そのため、第1遊星歯車セットの太陽歯車1は、第1シフト要素を締結することにより、変速機ハウジングに固定可能である。第2シフト要素は、第4回転可能軸と変速機ハウジングの間のパワーフローに配置される。そのため、第3遊星歯車セットの内歯車は、第2シフト要素を締結することにより、変速機ハウジングに固定可能である。第3シフト要素は、第2回転可能軸と第8回転可能軸の間のパワーフローに配置される。そのため、第4遊星歯車セットの内歯車は、第3シフト要素を締結することにより、第3遊星歯車セットの遊星歯車キャリアと接続可能であり、及び自動変速機の被動部と接続可能である。第4シフト要素は、第4回転可能軸と第6回転可能軸の間のパワーフローに配置される。そのため、第3遊星歯車セットの内歯車は、第4シフト要素を締結することにより、第1遊星歯車セットの内歯車と接続可能である。第1遊星歯車セットの内歯車は、第2遊星歯車セットの内歯車と常時接続されるか、又は第2遊星歯車セットの内歯車と共に共通の構成部品を構成する。第5シフト要素は、第5回転可能軸と第7回転可能軸の間のパワーフローに配置される。そのため、第3及び第4遊星歯車セットの、相互に常時接続される太陽歯車を、第5シフト要素を締結することにより、第2遊星歯車セットの太陽歯車と接続可能である。第6シフト要素は、第6回転可能軸と第7回転可能軸の間のパワーフローに配置される。そのため、第3及び第4遊星歯車セットの、相互に常時接続される太陽歯車を、第6シフト要素を締結することにより、第1遊星歯車セットの内歯車と接続可能である。第1遊星歯車セットの内歯車は、第2遊星歯車セットの内歯車と常時接続されるか、又は第2遊星歯車セットの内歯車と共に共通の構成部品を構成する。
【0012】
本発明により、国際公開第2015/080020号が開示する一般的な自動変速機と比較して、追加的な第7シフト要素が、第4と第7回転可能軸の間、又は第2と第7回転可能軸の間、又は第2と第4回転可能軸の間に配置される。そのため、第3遊星歯車セットを、第7シフト要素を締結することによりブロック可能であり、第3遊星歯車セットの太陽歯車、遊星歯車キャリア及び内歯車が、同一の回転数で回転する状態となる。
【0013】
つまり、4つの遊星歯車セットは各々、第1、第2及び第3要素を備える。個々の要素はまた、組み合わされることができる。国際公開第2015/080020号が開示する一般的な自動変速機の場合のように、第1及び第2遊星歯車セットは、第1回転可能軸と接続された、つまりは駆動可能な前置切り替え歯車セットを構成する。一方第3及び第4遊星歯車セットは、メイン歯車セットを構成する。メイン歯車セットは、第1回転可能軸と常時接続され、つまりは駆動可能であり、並びに第2回転可能軸と、つまりは自動変速機の被動部と常時接続される。国際公開第2015/080020号が開示する一般的な自動変速機と比較して追加的な第7シフト要素により、第3遊星歯車セットを状況に応じてブロックすることで、追加的前進速が可能とされる。詳細は、以下に述べられる。
【0014】
シフト要素を遊星歯車セットに連結することに関して、「常時接続される」とは、各シフト要素の入力要素又は出力要素が、回転不能な接続又はねじり弾性的な接続を介して、各遊星歯車セットの要素のうちの1つの要素と直接的に接続されるため、この遊星歯車セットの要素と、このシフト要素の入力要素又は出力要素の間に、固定された回転数の関係性が常在する、と理解される。
【0015】
シフト要素を軸に連結することに関して、「常時接続される」とは、各シフト要素の入力要素又は出力要素が、回転不能な接続又はねじり弾性的な接続を介して、各軸と直接的に接続されるため、この軸と、このシフト要素の入力要素又は出力要素の間に、固定された回転数の関係性が常在する、と理解される。
【0016】
遊星歯車セットを他の遊星歯車セットに連結することに関して、「常時接続される」とは、各遊星歯車セットの要素のうちの1つの要素が、回転不能な接続又はねじり弾性的な接続を介して、各他の遊星歯車セットの要素のうちの1つの要素と直接的に接続されるため、これら両方の遊星歯車セットの要素の間に、固定された回転数の関係性が常在する、と理解される。
【0017】
遊星歯車セットの要素又はシフト要素を、ハウジングに連結することに関して、「常時接続される」とは、各遊星歯車セットの要素又は各シフト要素の出力要素が、回転不能な接続又はねじり弾性的な接続を介して、ハウジングと直接的に接続されるため、各遊星歯車セットの要素又は各シフト要素の出力要素が常に静止する、と理解される。
【0018】
「遊星歯車セットの要素」とは、既知のように、この遊星歯車セットの太陽歯車、遊星歯車キャリア及び内歯車である。
【0019】
既述したように、遊星と称される4つの構成に関して、第1、第3及び第4遊星歯車セットは各々、いわゆるシングルピニオン式遊星歯車セットとして構成される。一方第2遊星歯車セットは、いわゆるダブルピニオン式遊星歯車セットとして構成される。既知のようにシングルピニオン式遊星歯車セットは、遊星歯車キャリアを備え、遊星歯車キャリアには遊星歯車が回転可能な状態で支承される。全ての遊星歯車は、このシングルピニオン式遊星歯車セットの太陽歯車及び内歯車と、噛み合うか又は噛み合い係合する。これに対してダブルピニオン式遊星歯車セットは、遊星歯車キャリアを備え、遊星歯車キャリアには内側遊星歯車及び外側遊星歯車が回転可能な状態で支承される。ダブルピニオン式遊星歯車セットにおいては、その内側遊星歯車が各々、その外側遊星歯車のうちの各1つの外側遊星歯車、及びそのダブルピニオン式遊星歯車セットの太陽歯車と、噛み合うか又は噛み合い係合する。一方外側遊星歯車は各々、その内側遊星歯車のうちの各1つの内側遊星歯車、及びそのダブルピニオン式遊星歯車セットの内歯車と、噛み合うか又は噛み合い係合する。
【0020】
この場合、国際公開第2015/080020号が構成する一般的な自動変速機の場合のように、第1及び第2遊星歯車セットは、2キャリア4軸型遊星歯車装置として構成された前置切り替え歯車セットを構成する。前置切り替え歯車セットは、第1回転可能軸又は変速機入力軸と常時接続され、及びいわゆるラビニヨ式遊星歯車セットの構造で構成される。第3及び第4遊星歯車セットは、国際公開第2015/080020号が構成する一般的な自動変速機の場合のように、2キャリア5軸型遊星歯車装置として構成されたメイン歯車セットを構成する。メイン歯車セットは、第1回転可能軸(変速機入力軸)及び第2回転可能軸(変速機出力軸)と常時接続され、及びいわゆるシンプソン式遊星歯車セットに類似して構成される。国際公開第2015/080020号が構成する一般的な自動変速機とは異なり、第3遊星歯車セットが追加的にブロック可能である。
【0021】
これにより、本発明による自動変速機は、一般的な従来技術と比較して、独立した運動学特性を有する。本発明による自動変速機においては、第7シフト要素を使用し、今や前進11速及び後退1速を切り替え可能である。
【0022】
好適には、本発明による自動変速機においては、各速度において、7つのシフト要素のうちの3つのシフト要素が締結される。その場合、1つの速度から次に高い又は低い速度へ変更する際に、その都度、従前に締結されていたシフト要素のうちの1つのみのシフト要素が開放され、及び従前に開放されていた1つのシフト要素が締結される。そのため、その都度1つの速度を連続的にアップシフト又はダウンシフトする際に、いわゆるグループ切り替えが回避される。
【0023】
7つのシフト要素により、前進11速及び後退1速を実現するために、以下のシフトロジック又は速度ロジックを装備可能である。前進第1速において、第2、第5及び第6シフト要素がトルクを導く。前進第2速において、第1、第2及び第6シフト要素がトルクを導く。前進第3速において、第1、第2及び第5シフト要素がトルクを導く。前進第4速において、第1、第2及び第3シフト要素がトルクを導く。前進第5速において、第1、第3及び第5シフト要素がトルクを導く。前進第6速において、第1、第3及び第6シフト要素がトルクを導く。前進第7速において、第3、第4及び第6シフト要素がトルクを導く。前進第8速において、第1、第3及び第4シフト要素がトルクを導く。前進第9速において、第1、第4及び第6シフト要素がトルクを導く。前進第10速において、第1、第4及び第5シフト要素がトルクを導く。前進第11速において、第1、第5及び第7シフト要素がトルクを導く。後退速において、第2、第4及び第5シフト要素がトルクを導く。
【0024】
つまり、国際公開第2015/080020号が開示する一般的な自動変速機と比較して追加的な前進速により、追加的なオーバードライブ‐変速比が提供される。このオーバードライブ‐変速比は、これまで最小であったオーバードライブ‐変速比よりも小さく、そのため自動変速機を駆動する機械において回転数低減が可能となり、これにより更に快適性が向上される。この機械が内燃機関であるため、こうした更なる回転数低減が、追加的な燃料節約へ至ることが可能である。
【0025】
4つの遊星歯車セットを相互に連結する、本発明による運動学特性が、7つのシフト要素、第1回転可能軸又は変速機入力軸、及び第2回転可能軸又は変速機出力軸に対して保持される限り、遊星歯車セット及びシフト要素の変速機ハウジング内部の空間的配置も、広範囲に亘って変化可能である。
【0026】
そのため、4つの遊星歯車セットの変速機ハウジング内での空間的配置に対する一つの構成において、全ての4つの遊星歯車セットを相互に同軸で並列させ、「第1、第2、第3、第4遊星歯車セット」で定義された順番で配置することが提案される。これにより、全てのクラッチ及びブレーキに対して、油圧作動に必要な圧力媒体を、比較的簡単な方法で供給可能である。変速機入力軸及び変速機出力軸が相互に同軸で走る構成に適用するには、この場合、第1遊星歯車セットが、遊星歯車セットのグループにおいて、自動変速機の駆動部に向いた遊星歯車セットであることが適切である。もちろん、自動変速機の変速機ハウジング内において、4つの遊星歯車セットの他の空間的配置も可能である。
【0027】
シフト要素の変速機ハウジング内での空間的配置に対する一つの構成において、本発明による追加的な第7シフト要素を、軸上で第2及び第3遊星歯車セットの間の領域に、好適には第3遊星歯車セットに隣接して配置することが提案される。第7シフト要素が、第3遊星歯車セットの遊星歯車キャリアと常時接続される限り、第7シフト要素を、空間的に見て、軸上で第3及び第4遊星歯車セットの間の領域に、再度好適には軸上で第3遊星歯車セットに隣接して配置することも、適切とすることが可能である。
【0028】
シフト要素の変速機ハウジング内の空間的配置に関する更なる構成において、第4、第5及び第6シフト要素が、軸上で第2遊星歯車セットに隣接する、製造技術的観点から有利な事前組立可能なクラッチアセンブリを構成することが提案される。クラッチアセンブリは、第5シフト要素用のアウタプレートキャリア及び第6シフト要素用のインナプレートキャリアとして構成された第1プレートキャリア、第6シフト要素用のアウタプレートキャリア及び第4シフト要素のインナプレートキャリアとして構成された第2プレートキャリア、第5シフト要素のインナプレート及びアウタプレートを備えるプレートパッケージ、第5シフト要素のプレートパッケージに作用する第5シフト要素の駆動装置、第6シフト要素のインナプレート及びアウタプレートを備えるプレートパッケージ、第6シフト要素のプレートパッケージに作用する第6シフト要素の駆動装置、第4シフト要素のインナプレート及びアウタプレートを備えるプレートパッケージ、第4シフト要素のプレートパッケージに作用する第4シフト要素の駆動装置、を備える。この場合、第4シフト要素のプレートパッケージは、軸方向に見て、実質的に径方向に第6シフト要素のプレートパッケージの上に配置される。一方第6シフト要素のプレートパッケージは、軸方向に見て、実質的に径方向に第5シフト要素のプレートパッケージの上に配置される。
【0029】
使用されるシフト要素は、パワーシフト型クラッチ又はブレーキとして構成可能である。特に、例えば多板クラッチ、バンドブレーキ及び/又はコーンクラッチのような摩擦結合型クラッチ又はブレーキを使用可能である。しかしながらシフト要素として、例えば同期装置または噛合型クラッチのような形状結合型ブレーキ及び/又はクラッチも使用可能である。本発明による追加的な第7シフト要素は、特に噛合型クラッチとして実現するのに良く適している。なぜなら、前進最高速に入力するためだけには、ごく僅かな回転数差のみを切り替えればよいためである。
【0030】
本発明による自動変速機に関して提案された実施形態及び構成は全て、特に乗用車に対して実地で使用可能な変速比を有する。この変速比は、ドライバビリティの観点で有効な変速段ステップの、極めて大きな総変速比幅を有する。これは、目標とする燃料消費の低減にプラスに作用する。更に本発明による自動変速機は、速度の数に対してシフト要素の数が少なく、及び構成のための労力が比較的僅かであることを特徴とする。更に本発明による自動変速機は、効率性が良好であり、特にシフト要素における引きずり損失が比較的少ないことを特徴とする。
【0031】
有利なことに、本発明による自動変速機により、変速機外の発進要素並びに変速機内の摩擦型シフト要素の両方により、自動車を発進可能である。変速機外の発進要素は、既知のように、例えば(好適にはコンバータロックアップクラッチを備える)ハイドロダイナミック式トルクコンバータ、いわゆる乾式発進クラッチ、いわゆる湿式発進クラッチ、磁気粉末クラッチ又は遠心クラッチ等として構成可能である。この種の発進要素をパワーフロー方向で駆動機関と自動変速機の間に配置することに対して代替的に、変速機外の発進要素を、パワーフロー方向に見て自動変速機の後ろにも配置可能である。この場合、自動変速機の変速機入力軸は、回転不能に又はねじり弾性的に、駆動機関のクランク軸と常時接続される。変速機内の発進要素としては、特にブレーキとして構成された第2シフト要素が適している。この第2シフト要素は、第1の前進四速、及び後退速でトルクを導く。
【0032】
更に本発明による自動変速機は、多様なドライブトレインに対して、パワーフロー方向並びに空間的観点、の両方において適応可能であるよう設計される。そのため、同一の変速機フローにおいて、個々の遊星歯車セットの静止変速機変速比に応じて、異なる速度ステップが生じる。そのため、適用例に特有又は車両に特有の、バリエーションが可能となる。更に特別な構造手段無しで、自動変速機の駆動部及び被動部を、選択的に、同軸又は軸方向に平行に、相互に配置可能である。自動変速機の駆動側又は被動側に、車軸差動機構及び/又は分配差動機構を配置可能である。更に、自動変速機における適切な各位置、例えば回転可能軸と変速機ハウジングの間に、又は2つの回転可能軸を必要に応じて接続するために、追加的なフリーホイールを装備可能である。各回転可能軸の上、好適には変速機入力軸又は変速機出力軸の上に、例えば油圧的又は電気的リターダ等のような、磨耗の無いブレーキを配置可能である。これらは、特に商用車において使用する場合には、特に有意義である。追加的アセンブリを駆動するために、各回転可能軸の上、好適には変速機入力軸又は変速機出力軸の上に、補助駆動ユニットを装備可能である。
【0033】
本発明による自動変速機の更なる利点は、多数の回転可能軸に対して、電気機械を追加的に、発電機及び/又は追加的な駆動機械として取り付け可能なことである。そうした電気機械は、一般的には構造的に極めて簡単に、自動変速機の第1回転可能軸及び/又は第2回転可能軸に、直接的に連結可能である。しかしながら、提案された歯車セットのコンセプトにより、そうした電気機械を、構造的に極めて簡単に、第4回転可能軸及び/又は第6回転可能軸に対しても、直接的に連結可能である。そうした電気機械が、第4回転可能軸又は第6回転可能軸に直接的に連結されると、有利なことにこれらの電気機械は、いわゆる電気力学的ギヤシフトの機能も果たすことが可能である。電気力学的ギヤシフトにおいては、電気機械EMが、各パワーシフトを引き受ける、つまり各切り替えプロセスにおいて発生する補助モメントを調達し、補助するのである。
【0034】
本発明は、添付の図面を参照して、以下に例示的に詳説される。この場合、同一又は類似の構成部品にも、同一の符号が付記される。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1Aは、従来技術による自動変速機の概略図である。図1Bは、図1Aの自動変速機のシフトプランである。
図2A】本発明による自動変速機の第1実施形態の概略図である。
図2B図2Aの自動変速機のシフトプランである。
図2C図2Aの自動変速機の例示的な変形形態の概略図である。
図3A】本発明による自動変速機の第2実施形態の概略図である。
図3B図3Aの自動変速機のシフトプランである。
図3C図3Aの自動変速機の例示的な変形形態の概略図である。
図4A】本発明による自動変速機の第3実施形態の概略図である。
図4B図4Aの自動変速機のシフトプランである。
図4C図4Aの自動変速機の例示的な変形形態の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1A及び図1Bは、国際公開第2015/080020号が開示する従来技術から既知である自動変速機の変速機フロー図及びシフトロジックを示す。この変速機は、本明細書の導入部で既に詳述したように、前進10速及び後退1速を有する。
【0037】
図2A/2B/2C、3A/3B/3C、及び4A/4B/4Cを参照し、以下に本発明による自動変速機の多様な実施形態が詳述される。
【0038】
図2Aには、特に自動車の例示的なドライブトレインにおける、本発明による自動変速機の第1実施形態の変速機フロー図が示される。自動変速機として構成された変速機は、符号GEが付される。変速機GEは、8つの回転可能軸1、2、3、4、5、6、7、8、4つの遊星歯車セットRS1、RS2、RS3、RS4、並びに7つのシフト要素03、04、28、46、57、67、47を備える。これらは全て、変速機GEの変速機ハウジングGG内に配置される。第1回転可能軸1は、駆動可能であり、従って変速機入力軸を構成する。一方、第2回転可能軸2は、変速機GEの被動部ABを構成する。
【0039】
変速機GEは、図では極めて簡略化されて示された内燃機関VMにより駆動可能である。内燃機関VMの回転数及びトルクは、駆動軸ANを介し、ねじりダンパTDを中間接続して、発進クラッチAKの駆動側クラッチ半部に伝達される。この発進クラッチAKの被動側クラッチ半部は、変速機GEの第1回転可能軸1と接続される。そのため発進クラッチAKは、内燃機関VMの駆動力を変速機GEに伝達すべく、十分に締結されなければならない。発進クラッチAKの代替として、内燃機関VMと変速機GEの第1回転可能軸1の間のパワーフローに配置された他の発進要素、例えば、好適にはコンバータロックアップクラッチを備えたトルクコンバータも装備可能である。
【0040】
図2Aに示された実施形態は、追加的に電気駆動装置を備える。このために、電気機械EMが備えられる。電気機械EMのロータEMRは、変速機GEの第1回転可能軸と常時接続される。電気機械EMのステータEMSは、変速機ハウジングGGに固定される。
【0041】
変速機GEの4つの遊星歯車セットRS1乃至RS4は、空間的に見て、例示的に軸上で相前後して、この場合例示的に「RS1-RS2-RS3-RS4」の順番で配置される。第1遊星歯車セットRS1は変速機GEの駆動側に配置される。及び第4遊星歯車セットRS4は、変速機GEの被動側に配置される。4つの遊星歯車セットは、変速機の他の構成において、運動学特性を保ちつつ順番を変えても配置可能である。これは特に、変速機において、変速機入力軸及び変速機出力軸が相互に同軸でなく配置されるべき場合に、有用となり得る。
【0042】
第1及び第2遊星歯車セットRS1、RS2は、運動学的に、第1回転可能軸1と常時接続される前置切り替え歯車セットを構成する。前置切り替え歯車セットは、いわゆる「低減2キャリア4軸型遊星歯車装置」の種類で、既知のラビニヨ式遊星歯車セットの構造で構成される。前置切り替え歯車セットは、2つの太陽歯車SO1及びSO2、連結された遊星歯車キャリアST1/ST2、及び共通の内歯車HO1/HO2を備える。第1遊星歯車セットRS1はこの場合、シングルピニオン式遊星歯車セットとして構成される。一方第2遊星歯車セットRS2は、ダブルピニオン式遊星歯車セットとして構成される。対応して遊星歯車PL1は、回転可能な状態で、第1遊星歯車セットRS1に割り当てられた遊星歯車キャリアST1に支承される。遊星歯車PL1は、第1遊星歯車セットRS1に割り当てられた太陽歯車SO1、及び共通の内歯車HO1/HO2の全てと噛み合う。これに対して、内側遊星歯車PL2i及び外側遊星歯車PL2aは、回転可能な状態で、第2遊星歯車セットRS2に割り当てられた遊星歯車キャリアST2に支承される。これらの内側遊星歯車PL2iは各々、これらの外側遊星歯車PL2aのうちの1つ、及び第2遊星歯車セットRS2に割り当てられた太陽歯車SO2と噛み合う。及び、これらの外側遊星歯車PL2aは各々、これらの内側遊星歯車PL2iのうちの1つ、及び共通の内歯車HO1/HO2と噛み合う。この場合、第2遊星歯車セットの外側遊星歯車PL2aは、同時に、第1遊星歯車セットRS1の遊星歯車PL1を構成する。第1遊星歯車セットRS1の太陽歯車SO1は、変速機GEの第3回転可能軸3を構成する。第2遊星歯車セットRS2の太陽歯車SO2は、変速機GEの第5回転可能軸5を構成する。前置切り替え歯車セットの共通の内歯車HO1/HO2は、変速機GEの第6回転可能軸6を構成する。
【0043】
第3及び第4遊星歯車セットRS3、RS4は、運動学的に、第1回転可能軸1及び第2回転可能軸2と常時接続されるメイン歯車セットを構成する。メイン歯車セットは、いわゆる2キャリア5軸型遊星歯車装置の種類で、既知のシンプソン式遊星歯車セットに類似して構成される。メイン歯車セットは、2つの太陽歯車SO3及びSO4、2つの遊星歯車キャリアST3及びST4、並びに2つの内歯車HO3及びHO4を備える。第3及び第4遊星歯車セットRS3、RS4は、両方とも、単純なシングルピニオン式遊星歯車セットとして構成され、各々が3つの要素を備える。太陽歯車SO3は、第3遊星歯車セットRS3の第1要素を構成する。太陽歯車SO4は、第4遊星歯車セットRS4の第1要素を構成する。遊星歯車キャリアST3は、第3遊星歯車セットRS3の第2要素を構成する。遊星歯車キャリアST4は、第4遊星歯車セットRS4の第2要素を構成する。内歯車HO3は、第3遊星歯車セットRS3の第3要素を構成する。内歯車HO4は、第4遊星歯車セットRS4の第3要素を構成する。シングルピニオン式遊星歯車セットとしての構成に対応して、第3遊星歯車セットRS3の遊星歯車PL3は、回転可能な状態で、遊星歯車キャリアST3に支承される。これらの遊星歯車PL3は各々、太陽歯車SO3及び内歯車HO3と噛み合う。同様に、第4遊星歯車セットRS4の遊星歯車PL4は、回転可能な状態で、遊星歯車キャリアST4に支承される。これらの遊星歯車PL4は各々、太陽歯車SO4及び内歯車HO4と噛み合う。シンプソン式遊星歯車セットの場合のように、第3遊星歯車セットRS3の太陽歯車SO3は、第4遊星歯車セットRS4の太陽歯車SO4と常時接続される。シンプソン式遊星歯車セットとは異なり、第3遊星歯車セットRS3の遊星歯車キャリアST3は、第4遊星歯車セットRS4の内歯車HO4と、常時には接続されず、変速機GEにおいてクラッチとして構成された第3シフト要素28を介して接続可能である。この場合、第3遊星歯車セットRS3の遊星歯車キャリアST3は、第2回転可能軸2を構成し、及びこれにより、変速機GEの被動部ABを構成する。一方、第4遊星歯車セットRS4の内歯車HO4は、変速機GEの第8回転可能軸8を構成する。第3及び第4遊星歯車セットRS3、RS4の、相互に常時接続される両方の太陽歯車SO3、SO4は、変速機GEの第7回転可能軸7を構成する。第3遊星歯車セットRS3の内歯車HO3は、変速機GEの第4回転可能軸4を構成する。
【0044】
変速機GEの第1シフト要素03は、ブレーキとして構成され、及び変速機GEの第3回転可能軸3と変速機ハウジングGGの間のパワーフローに配置される。そのため、第1遊星歯車セットRS1の太陽歯車SO1を、この第1シフト要素03を締結することにより、変速機ハウジングGGに固定可能である。
【0045】
変速機GEの第2シフト要素04は、ブレーキとして構成され、及び変速機GEの第4回転可能軸4と変速機ハウジングGGの間のパワーフローに配置される。そのため、第3遊星歯車セットRS3の内歯車HO3を、この第2シフト要素04を締結することにより、変速機ハウジングGGに固定可能である。
【0046】
変速機GEの第3シフト要素28は、クラッチとして構成され、及び変速機GEの、第8回転可能軸8と第2回転可能軸2の間のパワーフローに配置される。そのため、第4遊星歯車セットRS4の内歯車HO4を、この第3シフト要素28を締結することにより、第3遊星歯車セットRS3の遊星歯車キャリアST3と接続可能であり、及びこれにより変速機GEの被動部ABと接続可能である。
【0047】
変速機GEの第4シフト要素46は、クラッチとして構成され、及び変速機GEの、第6回転可能軸6と第4回転可能軸4の間のパワーフローに配置される。そのため、第1及び第2遊星歯車セットRS1、RS2の共通の内歯車HO1/HO2を、この第4シフト要素46を締結することにより、第3遊星歯車セットRS3の内歯車HO3と接続可能である。
【0048】
変速機GEの第5シフト要素57は、クラッチとして構成され、及び変速機GEの、第7回転可能軸7と第5回転可能軸5の間のパワーフローに配置される。そのため、第3及び第4遊星歯車セットRS3、RS4の、相互に常時接続される太陽歯車SO3、SO4を、この第5シフト要素57を締結することにより、第2遊星歯車セットRS2の太陽歯車SO2と接続可能である。
【0049】
変速機GEの第6シフト要素67は、クラッチとして構成され、及び変速機GEの、第7回転可能軸7と第6回転可能軸6の間のパワーフローに配置される。そのため、第3及び第4遊星歯車セットRS3、RS4の、相互に常時接続される太陽歯車SO3、SO4を、この第6シフト要素67を締結することにより、第1及び第2遊星歯車セットRS1、RS2の内歯車H01/HO2と接続可能である。
【0050】
変速機GEの第7シフト要素47は、クラッチとして構成され、及び変速機GEの、第7回転可能軸7と第4回転可能軸4の間のパワーフローに配置される。そのため、第3及び第4遊星歯車セットRS3、RS4の、相互に常時接続される太陽歯車SO3、SO4を、この第7シフト要素47を締結することにより、第3遊星歯車セットRS3の内歯車HO3と接続可能である。第7シフト要素47が締結され、そのために第3遊星歯車セットRS3がブロックされると、第3遊星歯車セットRS3の太陽歯車SO3、遊星歯車キャリアST3及び内歯車HO3が、同一の回転数で回転する状態となる。
【0051】
7つのシフト要素の空間的配置に関して、図2Aにおいては例示的に、多板ブレーキとして構成された第1シフト要素03が、実質的に、第1遊星歯車セットRS1の駆動部に向いた側、つまり第1遊星歯車セットRS1において、第2遊星歯車セットRS2の反対を向いた側に配置される。ブレーキ03のアウタプレートキャリアは、既知の通りに、変速機ハウジングGGに一体化される。ブレーキ03は広範な直径で配置される。そのためブレーキ03は、軸方向に見ても少なくとも部分的に、特にはブレーキ03のプレートパッケージが、径方向に前置切り替え歯車セット上の領域、特に径方向に第1遊星歯車セットRS1上の領域に配置可能である。
【0052】
さらに、図2Aに示された実施形態においては、多板ブレーキとして構成された第2シフト要素04、多板クラッチとして構成された第4シフト要素46、多板クラッチとして構成された第5シフト要素57、及び多板クラッチとして構成された第6シフト要素67が、共に1つのアセンブリを構成する。このアセンブリは、空間的に見て、軸上で第2及び第3遊星歯車セットRS2、RS3の間の領域に配置される。この場合、クラッチ57及び67は、軸上で第2遊星歯車セットに隣接するダブルクラッチを構成する。ダブルクラッチは、径方向で重なり合って配置されたプレートパッケージ及び共通のプレートキャリアを備える。クラッチ67のプレートパッケージは、このダブルクラッチ57/67の径方向でより外側のプレートパッケージを構成する。及びクラッチ57のプレートパッケージは、このダブルクラッチ57/67の径方向でより内側のプレートパッケージを構成する。そのため、この共通のプレートキャリアは、クラッチ67用にインナプレートキャリアとして、及びクラッチ57用にアウタプレートキャリアとして、構成される。ブレーキ04及びクラッチ46は同様に、軸方向に見て、径方向で重なり合って配置される。クラッチ46のプレートパッケージは、軸方向に見て、径方向でブレーキ04のプレートパッケージの下に配置される。この場合、ブレーキ04及びクラッチ46は、ダブルクラッチ57/67の、第3遊星歯車セットRS3に向いた側に配置される。変速機GEの運動学特性に対応して、クラッチ46及びブレーキ04に対しても、共通のプレートキャリアが備えられる。共通のプレートキャリアは、ブレーキ04用にインナプレートキャリアとして、クラッチ46用にアウタプレートキャリアとして、構成される。ブレーキ04のアウタプレートキャリアは、既知の通りに、変速機ハウジングGGに一体化される。変速機GEの運動学特性に対応して、クラッチ46及び67に対しても、共通のプレートキャリアが備えられる。共通のプレートキャリアは、クラッチ46用にインナプレートキャリアとして、クラッチ67用にアウタプレートキャリアとして、構成される。
【0053】
代替的に、3つのクラッチ57、67及び46を、クラッチアセンブリとして、軸方向に見て、径方向で重なり合って配置することも可能である。この場合、クラッチ46は径方向でより外側のシフト要素である。クラッチ67は径方向で中央のシフト要素である。及びクラッチ57は、径方向でより内側のシフト要素である。そしてこれらのクラッチアセンブリ57/67/46は、好適には軸上で直に第2遊星歯車セットRS2に隣接して、第2遊星歯車セットRS2の第3遊星歯車セットRS3に向いた側に配置される。この場合ブレーキ04は、このクラッチアセンブリ57/67/46の右又は左、つまり軸上でクラッチアセンブリ57/67/46と第3遊星歯車セットRS3の間の領域、又は第2遊星歯車セットRS2の上の領域に配置可能である。変速機ハウジングGG内部の構造空間が許す限り、ブレーキ04は、軸方向に見て、クラッチアセンブリ57/67/46の上、つまり径方向でクラッチ46の上にも配置可能である。
【0054】
さらに、図2Aに示された実施形態においては、第3遊星歯車セットRS3をブロックするために装備され、及び多板クラッチとして構成された第7シフト要素47は、軸上で第3遊星歯車セットRS3に隣接して、第3遊星歯車セットRS3の第4遊星歯車セットRS4の反対を向いた側、つまり空間的に見て、同様に軸上で第2及び第3遊星歯車セットRS2、RS3の間の領域に配置される。クラッチ47のアウタプレートキャリア及び第3遊星歯車セットRS3の内歯車HO3は、共通の構成部品として構成可能である。
【0055】
さらに、図2Aに示された実施形態においては、多板クラッチとして構成された第3シフト要素28は、少なくとも第3シフト要素28のプレートパッケージと共に、軸方向に見て、主として径方向に第4遊星歯車セットRS4の上に配置される。製造技術的観点及び費用対効果から有効に、クラッチ28のインナプレートキャリア及び第4遊星歯車セットRS4の内歯車HO4を、共通の構成部品として、例えば一個部品で構成可能である。
【0056】
全体で7つのシフト要素03、04、28、46、57、67、47により、前進11速及び後退1速の選択的切り替えを実現可能である。これは、以下に図2Bを参照して詳述される。従って図2Bは、図2Aに示された自動変速機の例示的なシフトプランを示す。各速度において、7つのシフト要素のうちの3つのシフト要素が締結される。図2Bにおいて個々のシフト要素03、04、28、46、47、57、67が割り当てられた欄に、Xが付されて締結が示される。従って、前進第1速においてはシフト要素04、57及び67が、前進第2速においてはシフト要素03、04及び67が、前進第3速においてはシフト要素03、04及び57が、前進第4速においてはシフト要素03、04及び28が、前進第5速においてはシフト要素03、28及び57が、前進第6速においてはシフト要素03、28及び67が、前進第7速においてはシフト要素28、46及び67が、前進第8速においてはシフト要素03、28及び46が、前進第9速においてはシフト要素03、46及び67が、前進第10速においてはシフト要素03、46及び57が、前進第11速においてはシフト要素03、47及び57が、後退速においてはシフト要素04、46及び57が、トルクを導くか又は締結される。
【0057】
このシフトロジックに従い、連続的な切り替えの際、つまりその都度1つの速度をアップシフト又はダウンシフトする際に、いわゆるグループ切り替えが回避される。なぜなら、シフトロジックで隣接された2つの変速段は、常に2つのシフト要素を共に使用するためである。全体的にこれらの前進11速及び後退1速は、実地において有用な変速比を有して切り替え可能である。各速度で3つのシフト要素が締結されることは、開放された摩擦型シフト要素で必然的に発生する引きずり損失が低減されるために、変速機の効率性にプラスに影響する。
【0058】
原則的に、変速機GEの7つのシフト要素03、04、28、46、57、67、47の変速機ハウジングGG内部の空間的配置は、広範囲に亘って変化可能であり、及び変速機ハウジングGGの寸法及び外側設計によってのみ限定される。対応して、図2Aに示された構成部品の配置は、多数の可能な構成部品の配置バリエーションのうちの1つのみを表現したもの、と理解されるべきである。同様に、図2Aに示された多板クラッチ又は多板ブレーキとしてのシフト要素の構成も、例示的な表現としてのみ、理解されるべきである。代替的な構成においては、例えば、形状結合的に切り替え可能な噛合クラッチ若しくはコーンクラッチも、摩擦結合的に切り替え可能なバンドブレーキも、又は形状結合的に切り替え可能な噛合ブレーキ又はコーンブレーキも、適用可能である。こうした例として、図2Cは、図2Aに示された変速機GEの変形形態を示す。この場合、図2Aと異なり、第7シフト要素47は、形状結合型クラッチとして構成される。この構成は、変速機GEの運動学特性から与えられる利点を利用している。その利点とは、第7シフト要素47は、前進第10速から前進第11速への速度変更の際にのみ締結され、及び前進第11速から前進第10速への速度変更の際にのみ開放される。つまり切り替え操作の際に、小さな回転数差のみを同期する、というものである。第2シフト要素04も、変速機GEのシフトロジックに基づいて、形状結合型シフト要素として実現するのに良く適している。
【0059】
図3Aには、本発明による自動変速機の第2実施形態の変速機フロー図が、特に自動車の例示的なドライブトレインにおいて示される。この第2実施形態は、図2Aを参照して詳述された本発明による自動変速機の第1実施形態とは、単に、第3遊星歯車セットRS3の状況に応じたブロックをどのように実行するか、という点で異なる。図2Aと異なり、第3遊星歯車セットRS3をブロックするために、今度は符号27が付された第7シフト要素が備えられる。第7シフト要素27は、第7回転可能軸7と第2回転可能軸2の間のパワーフローに配置される。クラッチとして構成されたこの第7シフト要素27は、締結された状態において、従って今度は、第3遊星歯車セットRS3の太陽歯車SO3と遊星歯車キャリアST3を相互に接続する。
【0060】
図3Aにおいて、この第7シフト要素27は、空間的に見て例示的に、軸上で第2及び第3遊星歯車セットRS2、RS3の間の領域に配置され、軸上で第3遊星歯車セットRS3に隣接して、第3遊星歯車セットRS3の第4遊星歯車セットRS4の反対を向いた側に配置される。これに対して代替的に、第7シフト要素27は、第7シフト要素27が第3遊星歯車セットRS3の遊星歯車キャリアST3と連結することに起因して、軸上で第3及び第4遊星歯車セットの間の領域にも配置可能である。
【0061】
全体で7つのシフト要素03、04、28、46、57、67、27により、変更無く、前進11速をグループ切り替え無しで切り替え可能であり、及び後退1速をも実現可能である。これには、図3Bに示されたシフトロジックを適用する。
【0062】
原則的に、図3Bに示されたシフトプランは、図2Bに示されたシフトプランと、単に第7シフト要素に対する符号が変更された点で異なる。従って、変更無く、前進第1速においてはシフト要素04、57及び67が、前進第2速においてはシフト要素03、04及び67が、前進第3速においてはシフト要素03、04及び57が、前進第4速においてはシフト要素03、04及び28が、前進第5速においてはシフト要素03、28及び57が、前進第6速においてはシフト要素03、28及び67が、前進第7速においてはシフト要素28、46及び67が、前進第8速においてはシフト要素03、28及び46が、前進第9速においてはシフト要素03、46及び67が、前進第10速においてはシフト要素03、46及び57が、後退速においてはシフト要素04、46及び57が、トルクを導くか又は締結される。第7シフト要素が速度構成に関与する前進第11速においては、従ってシフト要素03、27及び57がトルクを導く。
【0063】
原則的に、変速機GEの4つの遊星歯車セットRS1、RS2、RS3、RS4及び7つのシフト要素03、04、28、46、57、67、27の変速機ハウジングGG内部の空間的配置は、広範囲に亘って変化可能であり、及び変速機ハウジングGGの寸法及び外側設計によってのみ限定される。対応して、図3Aに示された構成部品の配置は、多数の可能な構成部品の配置バリエーションのうちの1つのみを表現したもの、と理解されるべきである。同様に、図3Aに示された多板クラッチ又は多板ブレーキとしてのシフト要素の構成も、例示的な表現としてのみ、理解されるべきである。代替的な構成においては、例えば、形状結合的に切り替え可能な噛合クラッチ若しくはコーンクラッチも、摩擦結合的に切り替え可能なバンドブレーキも、又は形状結合的に切り替え可能な噛合ブレーキ若しくはコーンブレーキも、適用可能である。こうした例として、図3Cは、図3Aに示された変速機GEの変形形態を示す。この場合、図3Aと異なり、第7シフト要素27は、形状結合型クラッチとして構成される。この構成は、変速機GEの運動学特性から与えられる利点を利用している。その利点とは、第7シフト要素27は、前進第10速から前進第11速への速度変更の際にのみ締結され、及び前進第11速から前進第10速への速度変更の際にのみ開放される。つまり切り替え操作の際に、小さな回転数差のみを同期する、というものである。
【0064】
図4Aには、本発明による自動変速機の第3実施形態の変速機フロー図が、特に自動車の例示的なドライブトレインにおいて示される。この第3実施形態は、図2Aに示された本発明による自動変速機の第1実施形態及び図3Aに示された第2実施形態とは、再度、第3遊星歯車セットRS3の状況に応じたブロックをどのように実行するか、という点で異なる。図2A及び図3Aと異なり、第3遊星歯車セットRS3をブロックするために、今度は符号24が付された第7シフト要素が備えられる。第7シフト要素24は、第4回転可能軸4と第2回転可能軸2の間のパワーフローに配置される。クラッチとして構成されたこの第7シフト要素24は、締結された状態において、今度は第3遊星歯車セットRS3の内歯車HO3と遊星歯車キャリアST3を相互に接続する。
【0065】
図4Aにおいて、この第7シフト要素24は、空間的に見て例示的に、軸上で第2及び第3遊星歯車セットRS2、RS3の間の領域に配置され、軸上で第3遊星歯車セットRS3に隣接して、第3遊星歯車セットRS3の第4遊星歯車セットRS4の反対を向いた側に配置される。
【0066】
全体で7つのシフト要素03、04、28、46、57、67、24により、変更無く、前進11速をグループ切り替え無しで切り替え可能であり、及び後退1速をも実現可能である。これには、図4Bに示されたシフトロジックを適用する。原則的に、図4Bに示されたシフトプランは、図1B及び図2Bに示されたシフトプランと、単に第7シフト要素に対する符号が変更された点で異なる。従って、変更無く、前進第1速においてはシフト要素04、57及び67が、前進第2速においてはシフト要素03、04及び67が、前進第3速においてはシフト要素03、04及び57が、前進第4速においてはシフト要素03、04及び28が、前進第5速においてはシフト要素03、28及び57が、前進第6速においてはシフト要素03、28及び67が、前進第7速においてはシフト要素28、46及び67が、前進第8速においてはシフト要素03、28及び46が、前進第9速においてはシフト要素03、46及び67が、前進第10速においてはシフト要素03、46及び57が、後退速においてはシフト要素04、46及び57が、トルクを導くか又は締結される。第7シフト要素が速度構成に関与する前進第11速においては、従ってシフト要素03、24及び57がトルクを導く。
【0067】
原則的に、変速機GEの4つの遊星歯車セットRS1、RS2、RS3、RS4、及び7つのシフト要素03、04、28、46、57、67、24の変速機ハウジングGG内部の空間的配置は、広範囲に亘って変化可能であり、及び変速機ハウジングGGの寸法及び外側設計によってのみ限定される。対応して、図4Aに示された構成部品の配置は、多数の可能な構成部品の配置バリエーションのうちの1つのみを表現したもの、と理解されるべきである。同様に、図4Aに示された多板クラッチ又は多板ブレーキとしてのシフト要素の構成も、例示的な表現としてのみ、理解されるべきである。代替的な構成においては、例えば、形状結合的に切り替え可能な噛合クラッチ若しくはコーンクラッチも、摩擦結合的に切り替え可能なバンドブレーキも、又は形状結合的に切り替え可能な噛合ブレーキ若しくはコーンブレーキも、適用可能である。こうした例として、図4Cは、図4Aに示された変速機GEの変形形態を示す。この場合、図4Aと異なり、第7シフト要素24は、形状結合型クラッチとして構成される。この構成は、変速機GEの運動学特性から与えられる利点を利用している。その利点とは、第7シフト要素24は、前進第10速から前進第11速への速度変更の際にのみ締結され、及び前進第11速から前進第10速への速度変更の際にのみ開放される。つまり切り替え操作の際に、小さな回転数差のみを同期する、というものである。
【符号の説明】
【0068】
AB 被動軸
AN 駆動軸
AK 発進クラッチ
EM 電気機械
EMR 電気機械のロータ
EMS 電気機械のステータ
TD ねじりダンパ
VM 内燃機関
GE 変速機;自動変速機
GG 変速機ハウジング
RS1 変速機の第1遊星歯車セット
HO1 第1遊星歯車セットの内歯車
PL1 第1遊星歯車セットの遊星歯車
SO1 第1遊星歯車セットの太陽歯車
ST1 第1遊星歯車セットの遊星歯車キャリア
RS2 変速機の第2遊星歯車セット
HO2 第2遊星歯車セットの内歯車
PL2a 第2遊星歯車セットの外側遊星歯車
PL2i 第2遊星歯車セットの内側遊星歯車
SO2 第2遊星歯車セットの太陽歯車
ST2 第2遊星歯車セットの遊星歯車キャリア
RS3 変速機の第3遊星歯車セット
HO3 第3遊星歯車セットの内歯車
SO3 第3遊星歯車セットの太陽歯車
ST3 第3遊星歯車セットの遊星歯車キャリア
RS4 変速機の第4遊星歯車セット
SO4 第4遊星歯車セットの太陽歯車
ST4 第4遊星歯車セットの遊星歯車キャリア
HO4 第4遊星歯車セットの内歯車
1 変速機の第1回転可能軸;変速機入力軸
2 変速機の第2回転可能軸;変速機出力軸
3 変速機の第3回転可能軸
4 変速機の第4回転可能軸
5 変速機の第5回転可能軸
6 変速機の第6回転可能軸
7 変速機の第7回転可能軸
8 変速機の第8回転可能軸
03 変速機の第1シフト要素;第1ブレーキ
04 変速機の第2シフト要素;第2ブレーキ
28 変速機の第3シフト要素;第1クラッチ
46 変速機の第4シフト要素;第2クラッチ
57 変速機の第5シフト要素;第3クラッチ
67 変速機の第6シフト要素;第4クラッチ
47、27、24 変速機の第7シフト要素:第5クラッチ
図1
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C