特許第6895841号(P6895841)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6895841
(24)【登録日】2021年6月10日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】車両のバッテリー充電交換装置
(51)【国際特許分類】
   B60S 5/06 20190101AFI20210621BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20210621BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20210621BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20210621BHJP
   B60K 1/04 20190101ALI20210621BHJP
【FI】
   B60S5/06
   H02J7/00 301B
   H02J7/00 P
   H01M10/42 A
   H01M10/44 Q
   B60K1/04 A
【請求項の数】2
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-146623(P2017-146623)
(22)【出願日】2017年7月28日
(65)【公開番号】特開2019-26041(P2019-26041A)
(43)【公開日】2019年2月21日
【審査請求日】2020年5月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002967
【氏名又は名称】ダイハツ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196346
【弁理士】
【氏名又は名称】吉川 貴士
(72)【発明者】
【氏名】西田 修
(72)【発明者】
【氏名】野本 直希
(72)【発明者】
【氏名】木村 健
(72)【発明者】
【氏名】田野 太雅
(72)【発明者】
【氏名】高比良 剛
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼尾 正彦
【審査官】 鈴木 貴晴
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−108283(JP,A)
【文献】 実開平06−012148(JP,U)
【文献】 特開平5−294147(JP,A)
【文献】 特開平10−145906(JP,A)
【文献】 特開2010−102896(JP,A)
【文献】 特開2013−114307(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 5/06
H02J 7/06
H01M 2/00,10/42,10/44
B60K 1/04
B60L 11/18,53/80
B60R 16/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッテリーと、前記バッテリーを充電する充電装置とを備え、前記充電装置で充電された状態の前記バッテリーを、車両に搭載された状態の前記バッテリーと交換可能とする車両のバッテリー充電交換装置であって、
前記バッテリーの電極はレール状電極で、前記充電装置並びに前記車両の電極は、前記レール状電極上をスライドすることで前記レール状電極と嵌まり合って電気的に接続されるスライド電極で、前記スライド電極は下方に付勢された状態で前記レール状電極上に導入可能とされている、車両のバッテリー充電交換装置。
【請求項2】
バッテリーと、前記バッテリーを充電する充電装置とを備え、前記充電装置で充電された状態の前記バッテリーを、車両に搭載された状態の前記バッテリーと交換可能とする車両のバッテリー充電交換装置であって、
前記バッテリーは、前記車両と共に床面に接地した状態で前記床面上を走行し、かつ
前記バッテリーが前記車両の車幅方向外側に向けて前記床面上を走行することで、前記バッテリーの電極と前記車両の電極との電気的接続が解除され、前記バッテリーの電極と前記充電装置の電極とが電気的に接続可能とされる、車両のバッテリー充電交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のバッテリー充電交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、AGVなどに代表される自走式台車には、駆動源となるバッテリーが搭載されているのが一般的である。このバッテリーは、当然に自走式台車の継続走行に伴い電力を消費するので、定期的にバッテリーの充電又は交換を行う必要がある。そこで、例えば特許文献1には、人件費の削減を目的として、車両に搭載されたバッテリーを充電すると共に、充電済みのバッテリーと自動的に交換するための技術が提案されている。
【0003】
具体的には、走行車両の載置台上に設けられ、スライド自在なバッテリーユニットと、回転テーブルと、回転テーブル上と走行車両との間でバッテリーユニットを移載するための移載手段と、回転テーブル上に移載されたバッテリーを充電する充電手段とを備えたバッテリー充電交換装置が提案されている。また、充電手段は、バッテリーユニットを回転テーブル上に移載した位置とは円周方向にずれた位置に配設されており、回転テーブル上に移載されたバッテリーユニットを回転テーブルと共に回転させることで、充電手段と対向させ、対向した状態のバッテリーユニットに充電を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−145906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、特許文献1に記載の充電交換装置だと、バッテリー充電のために、バッテリーを車両から一旦回転テーブルに移載した後、所定の角度だけ回転させて充電手段と対向させる必要がある。そのため、充電に要する作業工数が多くなり、効率よく充電交換作業を行うことが難しかった。また、上述の如き構成だと、回転テーブルやその周囲に配置した充電手段のために充電交換装置が巨大化するため、生産ラインに組み込んで使用するのに適した構成とは言い難かった。
【0006】
以上の事情に鑑み、本明細書では、短時間で効率よくバッテリーを充電及び交換することのできる車両のバッテリー充電交換装置を簡素化して提供することを、解決すべき技術課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題の解決は、本発明の第一の側面に係る車両のバッテリー充電交換装置によって達成される。すなわち、この充電交換装置は、車両に搭載されたバッテリーと、バッテリーを充電する充電装置とを備え、充電されたバッテリーを、車両に搭載されたバッテリーと交換可能とする車両のバッテリー充電交換装置であって、バッテリーの電極と、充電装置並びに車両の電極のうち一方の電極はレール状電極で、他方の電極は、レール状電極上をスライドすることでレール状電極と嵌まり合って電気的に接続されるスライド電極である点をもって特徴付けられる。
【0008】
このように、本発明の第一の側面に係る充電交換装置においては、バッテリーの電極と、充電装置並びに車両の電極のうち、一方の電極をレール状電極とし、他方の電極を、レール状電極上をスライドすることでレール状電極と嵌まり合って電気的に接続されるスライド電極とした。このように、各電極を構成することによって、バッテリーを車両から離脱させるのと同時に車両との電気的接続を解除し、かつバッテリーを充電装置に移載するのと同時に充電装置との電気的接続が可能となる。これにより、バッテリーを充電装置に移載して即時に充電を開始することができるので、従来の構成よりも手間を省いて効率よく充電交換作業を行うことができる。また、レール状電極とスライド電極との嵌まり合いにより電気的接続を図るようにしたので、移載位置と充電位置を別個に設ける必要がなく、かつ回転テーブルのように大掛かりな設備も用意せずに済む。従って、バッテリー充電交換装置を簡素化でき、多数のロボットが周囲に配設された自動車ボデーの組立てラインなどスペース面の制約が厳しい製造現場であっても車両のバッテリー充電交換装置を導入することが可能となる。また、レール状電極上をスライド電極がスライドしながら嵌まり合うので、位置決め装置を必要とせずに電気的接続を図ることができ、これによってもバッテリー充電交換装置の簡素化を図ることが可能となる。
【0009】
また、前記課題の解決は、本発明の第二の側面に係る車両のバッテリー充電交換装置によっても達成される。すなわち、この充電交換装置は、車両に搭載されたバッテリーと、バッテリーを充電する充電装置とを備え、充電されたバッテリーを、車両に搭載されたバッテリーと交換可能とする車両のバッテリー充電交換装置であって、バッテリーは、車両と共に床面上を走行し、かつバッテリーが車両の車幅方向外側に向けて床面上を走行することで、バッテリーの電極と車両の電極との電気的接続が解除され、バッテリーの電極と充電装置の電極とが電気的に接続可能とされる点をもって特徴付けられる。
【0010】
このように、本発明の第二の側面に係る充電交換装置では、バッテリーが車両と共に床面上を走行し、かつバッテリーが車両の車幅方向外側に向けて床面上を走行することで、バッテリーの電極と車両の電極との電気的接続が解除され、バッテリーの電極と充電装置の電極とが電気的に接続可能とされるようにした。例えば特許文献1のように、バッテリーユニットを走行車両の載置台上に設け、スライド動作によりバッテリーユニットを回転テーブル上に移載するようにしたのでは、走行車両と回転テーブルとの間を跨ぐようにしてバッテリーユニットを移載する必要がある。これでは、移載時に車輪が引っ掛かるなどして移載動作の安定性に欠け、移載し直す手間が作業効率化の妨げとなるおそれがある。これに対して、本発明の第二の側面に係る充電交換装置によれば、バッテリーが車両と共に床面上を走行し、かつ車両の車幅方向外側に向けて床面上を走行することで、バッテリーの電極と車両の電極との電気的接続が解除され、バッテリーの電極と充電装置の電極とが電気的に接続可能としたので、車輪が引っ掛かることなく車両から充電装置へバッテリーを円滑に移載することができる。よって、バッテリーを移載し直す手間を確実に防いで、効率よくバッテリーの充電交換作業を行うことが可能となる。
【0011】
また、バッテリーが車両の車幅方向外側に向けて床面上を走行することで、バッテリーの電極と車両の電極との電気的接続が解除され、バッテリーの電極と充電装置の電極とが電気的に接続できるようにしたので、バッテリーを車両から離脱させるのと同時に車両との電気的接続を解除し、かつバッテリーを充電装置に移載するのと同時に充電装置との電気的接続が可能となる。これにより、バッテリーを充電装置に移載して即時に充電を開始することができるので、従来のように、移載位置と充電位置を別個に設ける必要がなく、かつ回転テーブルのように大掛かりな設備も必要ない。従って、バッテリー充電交換装置を簡素化でき、多数のロボットが周囲に配設される自動車ボデーの組立てラインなどスペース面の制約が厳しい製造現場に車両のバッテリー充電交換装置を導入することが可能となる。
【0012】
もちろん、バッテリーを車両と共に床面上を走行可能とすることにより、作業者が人力でバッテリー交換を行う場合と比べて、負担が少なく、持ち上げずに済むため安全に充電交換作業を行うことができる。また、バッテリーが接地して走行することで車両が実質的に軽量化されるので、その分車両の走行距離を伸ばして、単位期間当たりの充電回数を減らすことができる。また、バッテリーを床面近くに配することで、車両全体の重心を下げることができるので、車両走行時の安定性、ひいては走行効率の改善にも寄与することができる。また、車両がワークの載置面を有する台車である場合、載置面の下にバッテリーを搭載することができるので、その分車両を前後方向又は幅方向にコンパクトにでき、よりコンパクトな生産ラインの構築を図ることも可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、短時間で効率よくバッテリーを充電及び交換することのできる車両のバッテリー充電交換装置を簡素化して提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る車両のバッテリー充電交換装置の全体構成を示す平面図である。
図2図1に示すバッテリーの側面図である。
図3図1に示すバッテリーの平面図である。
図4図1に示す充電装置の平面図である。
図5図2に示す充電装置の要部側面図である。
図6図1に示す車両の平面図である。
図7図6に示す車両の要部側面図である。
図8図1に示す車両位置決め装置の平面図である。
図9図1に示すバッテリー充電交換装置を用いたバッテリーの交換作業の一例を示す要部平面図である。
図10図1に示すバッテリー充電交換装置を用いたバッテリーの交換作業の一例を示す要部平面図である。
図11図1に示すバッテリー充電交換装置を用いたバッテリーの交換作業の一例を示す要部側面図である。
図12図1に示すバッテリー充電交換装置を用いたバッテリーの交換作業の一例を示す要部平面図である。
図13図1に示すバッテリー充電交換装置を用いたバッテリーの交換作業の一例を示す要部側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係る車両のバッテリー充電交換装置の内容を図面に基づき説明する。
【0016】
図1は、本実施形態に係る車両のバッテリー充電交換装置10の全体構成を示す平面図を示している。図1に示すように、このバッテリー充電交換装置10は、車両11に搭載されたバッテリー12と、バッテリー12を充電する充電装置13と、車両11に搭載されたバッテリー12を充電装置13に移載する移載装置14とを備える。また、本実施形態では、バッテリー12の交換位置15に停止した車両11の位置決めを行う車両位置決め装置16と、車両11に搭載されたバッテリー12の電力情報を検知して、当該バッテリー12の充電交換の要否を判断する充電要否判断装置17とをさらに備える。以下、各要素の詳細を説明する。
【0017】
バッテリー12は、図2に示すように、床面18上を走行可能な車輪19を有する。そして、バッテリー12の上部には一対のレール状電極20が設けられている。このレール状電極20は、後述する充電装置13の電極24をスライド嵌合可能とするもので、充電装置13の電極24の幅寸法に応じて、レール状電極20の溝幅寸法が設定されている。なお、車輪19は、例えばバッテリー12の下部で四隅に配設され、バッテリー12が車両11に追随して走行可能なように、その転動方向を変動自在としている。
【0018】
本実施形態では、レール状電極20の底面21は、平坦部21aと、平坦部21aの長手方向両側に位置し、底面21の長手方向中央に向かうにつれて高くなる傾斜部21b,21bとで構成されている(図2の破線部分を参照)。なお、ここでいう「平坦」とは、バッテリー12が平坦な床面18上を走行している間において、床面18と平行な状態にあることを意味する。また、本実施形態では、図3に示すように、レール状電極20の長手方向両側に、長手方向中央に向かうにつれて溝幅寸法が小さくなるテーパ部22が設けられている。このテーパ部22により、後述する充電装置13の電極24がレール状電極20の幅方向中央へ案内されながらレール状電極20上をスライド可能としている。
【0019】
充電装置13は、車両11から移載されたバッテリー12の充電を行うもので、図4に示すように、複数のバッテリー12の受入れ部23を有し、かつ各受入れ部23に一対の電極24,24を設けてなるスライド体25と、各電極24に電力を供給する電力供給装置26とを有する。各受入れ部23(スライド体25)の位置は、図示しない位置決め装置により所定の位置に位置決め可能とされ、後述する移載装置14による車両11との間でのバッテリー12の移載を可能としている。
【0020】
ここで、充電装置13の電極24は、図4及び図5に示すように、細長い形状をしており、バッテリー12のレール状電極20に対してスライド嵌合可能なスライド電極とされている(以後、この電極24をスライド電極と称する。)。詳述すると、バッテリー12が受入れ部23に導入される際、レール状電極20上をスライド電極24がスライドすることでレール状電極20と嵌まり合って電気的に接続可能とされている。本実施形態では、各スライド電極24は、図5に示すように、可動式のアーム27を介してスライド体25に取り付けられており、常にアーム27を下方に付勢するよう構成されている。これにより、スライド電極24がレール状電極20の底面21に常に押し付けられた状態でスライド嵌合するので、双方の電極20,24間で安定した電気的接続が生じ得る。
【0021】
図6は、車両11の平面図を示している。この車両11は、AGVなどの無人搬送車であり、例えば自動車ボデーなどのワークを載置した状態で所定の経路28(図1を参照)上を走行可能としている。ここで、車両11は、バッテリー12を保持する保持部29と、保持部29で保持された状態のバッテリー12と電気的に接続される電極30と、電極30を介してバッテリー12から電力の供給を受けて車両11を駆動する駆動部31と、床面18上から取得可能な経路28に関する情報に基づいて駆動部31の制御を行う制御部32とを有する。
【0022】
車両11の電極30は、充電装置13のスライド電極24と同等の構造をなしている。すなわち、この電極30は、図7に示すように、細長い形状をなしており、バッテリー12のレール状電極20に対してスライド嵌合可能なスライド電極とされている(以後、この電極30をスライド電極と称する。)。詳述すると、バッテリー12が保持部29に導入される際、レール状電極20上をスライド電極30がスライドすることでレール状電極20と嵌まり合って電気的に接続可能とされている。本実施形態では、各スライド電極30は、図7に示すように、可動式のアーム33を介して保持部29に取り付けられており、常にアーム33を下方に付勢するよう構成されている。これにより、スライド電極30がレール状電極20の底面21に常に押し付けられた状態でスライド嵌合するので、双方の電極20,30間で安定した電気的接続が生じ得る。
【0023】
また、本実施形態では、バッテリー12を保持部29において車両11にロックし、又はロック状態を解除するロック切替え機構34が車両11に設けられている(図6を参照)。このロック切替え機構34は、車両11がバッテリー12の交換位置15(図1を参照)で停止し位置決めがなされたことを検知することで、バッテリー12のロックを解除し、また、充電済みのバッテリー12が充電装置13から車両11に移載されたことを検知することで、車両11の走行時、バッテリー12を車両11にロック可能としている。
【0024】
移載装置14は、図4に示すように、交換位置15(図1を参照)に停止した状態の車両11のバッテリー12を引込んで、当該バッテリー12を充電装置13の受入れ部23に導入する引込み部35と、受入れ部23に位置するバッテリー12を押し出して、交換位置15に停止している車両11の保持部29に向けてバッテリー12を導出する押出し部36とを有する。本実施形態では、引込み部35と押出し部36はそれぞれ別個のシリンダで構成されており、引込み部35の先端に設けられたフック部35aを、バッテリー12の一端に設けられた被引掛け部37(図3を参照)に引っ掛けて、シリンダを収縮させることで、車両11に搭載された状態のバッテリー12を充電装置13側に移載可能としている。同様に、押出し部36のシリンダを伸長して、その先端に設けられた押圧部36aでバッテリー12の一端に設けられた押し板38(図3を参照)を押圧することで、受入れ部23に位置するバッテリー12を車両11側に移載可能としている。
【0025】
図8は、バッテリー12の交換位置15で停止した車両11の位置決めを行う車両位置決め装置16の平面図である。図8に示すように、この位置決め装置16は、車両11の前後方向の位置決めを行う第一位置決め部39と、車両11の車幅方向の位置決めを行う第二位置決め部40と、ガイドローラ41とを有する。これら第一及び第二位置決め部39,40とガイドローラ41は何れも車両11の走行領域の周囲(図1では側方)に配置され、車両11を所定位置に円滑に案内可能としている。
【0026】
充電要否判断装置17は、本実施形態では、床面18側に設置され、経路28上の所定位置に到達した車両11の電力情報(例えば車両11に搭載されたバッテリー12の電圧値)を検知する検知部42(図1を参照)と、車両11の制御部32とで構成される。ここで、制御部32は、検知部42で検知した電力情報を制御部32に送信し、送信した情報に基づいて、制御部32は、車両11が本線(通常の経路28)上を継続して走行するのか、又は経路28から分岐した側路43上を走行して交換位置15に向かうのかを判断する。
【0027】
以下、本実施形態に係るバッテリー充電交換装置10の使用の一例を説明する。
【0028】
まず、図1に示すように、車両11が経路28上を走行し、経路28上の所定位置に到達すると、その都度、床面18側に設置した検知部42で、車両11に搭載されたバッテリー12の電力情報(例えば電圧値)を検知する。そして、検知した電力情報に係るデータを予め設定した当該電力情報に係るデータのしきい値(例えば電圧値のしきい値)と比較し、しきい値以上であれば、検知した情報を受信した車両11の制御部32は、充電交換の必要なしと判断し、引き続き経路28上を走行するよう駆動部31を制御する。一方、検知した電力情報に係るデータが予め設定したデータのしきい値を下回っている場合、制御部32は、充電交換の必要ありと判断し、経路28前方で分岐する側路43上を走行して充電装置13の側方(すなわちバッテリー充電交換装置10の交換位置15)に向けて走行するよう駆動部31を制御する。
【0029】
そして、車両11が交換位置15に到達したことを図示しない検知部で検知すると、図9に示すように、車両位置決め装置16の第一位置決め部39が作動し、車両11の前後方向の位置決めを行う。また、第二位置決め部40が作動し、車両11の車幅方向の位置決めを行う。この時点で、車両11に搭載されたバッテリー12は、充電装置13に設けられた複数の受入れ部23のうち、移載装置14が後方に配置された一の受入れ部23(図9でいえば最も右側の受入れ部23)と対向した状態となる。
【0030】
このように車両11が交換位置15で位置決めされたことを図示しない検知部で検知すると、ロック切替え機構34により、バッテリー12のロックが解除される。また、移載装置14の引込み部35が作動し、シリンダの伸長によりフック部35aを車両11に搭載された状態のバッテリー12の被引掛け部37に引掛ける。そして、フック部35aが被引掛け部37に引っ掛かっていることを図示しない検知部で検知すると、引込み部35のシリンダが収縮し、バッテリー12を引込む。これにより、バッテリー12が受入れ部23に導入され、車両11から充電装置13へバッテリー12が移載される(図10を参照)。
【0031】
この際、バッテリー12は、床面18上に載置された状態で保持部29に保持されているため、上述のように、引込み部35のフック部35aをバッテリー12の被引掛け部37に引掛けた状態で引込み部35のシリンダを収縮させると、収縮方向(図10でいえば上方向)に沿って、バッテリー12が床面18上を円滑に移動する(図11を参照)。また、バッテリー12の引込みに伴い、バッテリー12のレール状電極20上を車両11のスライド電極30がスライドし、レール状電極20からスライド電極30が離脱することで、車両11とバッテリー12との電気的な接続状態が解消されると共に、充電装置13のスライド電極24がレール状電極20の底面21と接触しながらレール状電極20上に導入されることで、充電装置13とバッテリー12とが電気的に接続された状態となる。
【0032】
然る後、新たに受入れ部23に受入れたバッテリー12に電力供給装置26から電力を供給することで、当該バッテリー12の充電が開始される。また、バッテリー12の受入れ部23を複数有するスライド体25を所定の向き、例えばバッテリー12の移載方向と直交する向きにスライドさせることで、新たに受け入れたバッテリー12と充電済みの一又は複数のバッテリー12がスライド体25と同じ方向に移動し、車両11の空の保持部29と対向した状態となる(図12を参照)。なお、このスライド動作は、例えば充電装置13とバッテリー12とが電気的に接続されたことを図示しない検知部で検知したことをトリガーとして行われる。
【0033】
次いで、図12に示す状態から、移載装置14の押出し部36を作動させて、先端の押圧部36aで受入れ部23に収容された充電済みのバッテリー12を押出すことにより、充電済みのバッテリー12を対向する車両11の保持部29に向けて導出する(図13を参照)。この結果、レール状電極20からスライド電極24が離脱して、充電装置13とバッテリー12との電気的な接続状態が解消されると共に、バッテリー12のレール状電極20上に車両11のスライド電極30がスライドしながら導入され、互いに嵌まり合うことで、バッテリー12と車両11とが電気的に接続された状態となる。
【0034】
そして、バッテリー12が保持部29に収容され、車両11と電気的に接続されたことが図示しない検知部で検知されると、ロック切替え機構34により、バッテリー12が車両11にロックされた状態に切り替わる。押出し部36の退避動作も、この車両11との電気的な接続を検知部で検知したことをトリガーとして実施される。また、バッテリー12がロックされたことを図示しない検知部で検知することで、第一及び第二位置決め部39,40が退避する。これにより、車両11は交換位置15から離脱し、経路28上に復帰する。以上のようにして、バッテリー12の充電及び交換が実施される。
【0035】
このように、本発明に係るバッテリー充電交換装置10によれば、バッテリー12のレール状電極20と、充電装置13のスライド電極24とが、バッテリー12のスライド動作に伴って互いに嵌まり合うことにより、バッテリー12を車両11から離脱させるのと同時に車両11との電気的接続を解除し、かつバッテリー12を充電装置13に移載するのと同時に充電装置13との電気的接続が可能となる(図11を参照)。これにより、バッテリー12を充電装置13に移載して即時に充電を開始することができるので、従来の構成よりも手間を省いて効率よく充電交換作業を行うことができる。また、レール状電極20とスライド電極24との嵌まり合いにより電気的接続を図るようにしたので、移載後の位置、すなわち受入れ部23が充電位置となる。よって、移載位置と充電位置を別個に設ける必要がなく、かつ回転テーブルのように大掛かりな設備も設けずに済む。従って、バッテリー充電交換装置10を簡素化でき、本実施形態のように、多数のロボットが周囲に配設された自動車ボデーの組立てラインなどスペース面の制約が厳しい製造現場であっても車両のバッテリー充電交換装置10を導入することが可能となる。また、レール状電極20上をスライド電極24がスライドしながら嵌まり合うので、位置決め装置を必要とせずに電気的接続を図ることができ、これによってもバッテリー充電交換装置10の簡素化を図ることが可能となる。
【0036】
特に、本実施形態では、レール状電極20の長手方向両側に、長手方向中央に向かうにつれて溝幅寸法が小さくなるテーパ部22を設けているので(図3を参照)、簡素な移載装置14でバッテリー12を引込む、あるいは押出すだけの動作であっても、安定してバッテリー12と充電装置13、又はバッテリー12と車両11との電気的な接続を図ることが可能となる。
【0037】
また、本実施形態では、レール状電極20の底面21を、平坦部21aと、平坦部21aの長手方向両側に位置し、底面21の長手方向中央に向かうにつれて高くなる傾斜部21b,21bとで構成すると共に(図3を参照)、各スライド電極24,30を、図5及び図7に示すように、可動式のアーム27,33を介してスライド体25及び保持部29に取り付け、かつ常にアーム27,33を下方に付勢するよう構成した。このように、レール状電極20とスライド電極24,30を構成することにより、スライド電極24がレール状電極20の底面21に押し付けられた状態でスライド嵌合する。また、バッテリー12の移動に伴って、自然にスライド電極24,30がレール状電極20の底面21に押し付けられる。よって、最小限の構成及び動作で、確実にスライド電極24,30とレール状電極20を電気的に接続することが可能となる。
【0038】
また、本発明に係るバッテリー充電交換装置10によれば、バッテリー12が車両11と共に床面18上を走行し、かつ車両11の車幅方向外側に向けて床面18上を走行することで、バッテリー12の電極(ここではレール状電極20)と車両11の電極(ここではスライド電極30)との電気的接続が解除され、バッテリー12と充電装置13とが電気的に接続可能としたので、車輪19が引っ掛かることなく車両11から充電装置13へバッテリー12を円滑に移載することができる。よって、バッテリー12を移載し直す手間を確実に防いで、効率よくバッテリー12の充電交換作業を行うことが可能となる。
【0039】
また、バッテリー12が床面18上を走行して、車両11から充電装置13への移載が行われるのであれば、上述したように、レール状電極20の底面21に傾斜部21b,21bを設け、あるいは、可動式のアーム27,33を常に下方に付勢するよう構成した場合であっても、円滑にバッテリー12が床面18上を走行して、車両11と充電装置13との間を往来することができる。従って、スライド電極24,30とレール状電極20との間でより安定した電気的接続を実現することが可能となる。
【0040】
以上、本発明の一実施形態について述べたが、本発明に係る車両のバッテリー充電交換装置は、その趣旨を逸脱しない範囲において、上記以外の構成を採ることも可能である。
【0041】
例えば上記実施形態では、レール状電極20として、底面21の両側方から立ち上がる一対の側壁部を有するものを例示したが、もちろんこれには限られない。スライド電極24,30のスライド動作により互いに嵌まり合って、スライド電極24,30の側方(長手方向に直交する向き)への移動を規制する限りにおいて、任意の形態をとり得ることはもちろんである。スライド電極24,30についても、同様の観点から任意の形態をとり得る。
【0042】
また、これらレール状電極20とスライド電極24,30の取付け位置についても任意であり、図示のようにバッテリー12の上部に取付けるだけでなく、例えば側方に取付けてもよい。この場合、アーム27,33の付勢方向は、レール状電極20の底面21にスライド電極24,30を押し付ける向きに設定されるのがよい。また、上記実施形態では、バッテリー12にレール状電極20を設け、充電装置13と車両11にスライド電極24,30を設けた場合を例示したが、もちろんこれとは逆に、バッテリー12にスライド電極を設け、充電装置13と車両11にレール状電極を設けてもよい(図示は省略)。
【0043】
また、上記実施形態では、レール状電極20とスライド電極24,30がスライド動作を伴って互いに嵌まり合うことにより電気的接続を行う形態を例示したが、必ずしもこの形態をとる必要はない。バッテリー12が車両11の車幅方向外側に向けて床面18上を走行することで、バッテリー12の電極と車両11の電極との電気的接続が解除され、バッテリー12の電極と充電装置13の電極とが電気的に接続可能とされる限りにおいて、各電極の形態は任意である。
【0044】
また、上記実施形態では、移載装置14として、それぞれシリンダで作動する引込み部35と押込み部36を有するものを例示したが、もちろんこれ以外の形態をとることも可能である。例えば図示は省略するが、移載装置14として、先端に切替え可能な引込み用と押込み用二種類のアタッチメントを設け、これら二種類のアタッチメントを一個のシリンダで前進及び後退させる構成をとることも可能である。あるいは、これも図氏は省略するが、移載装置14がバッテリー12に搭載される形態、すなわちバッテリー12が駆動部を有し自走する形態をとることも可能である。
【0045】
また、上記実施形態では、バッテリー12の搭載対象となる車両11にAGVなどの無人搬送車を適用した場合を例示したが、もちろん本発明は無人搬送車以外の車両にも適用可能である。具体的には、電力で駆動走行する限りにおいて有人と無人の別は問わず、また車両の種類も任意である。
【符号の説明】
【0046】
10 バッテリー充電交換装置
11 車両
12 バッテリー
13 充電装置
14 移載装置
15 交換位置
16 車両位置決め装置
17 充電要否判断装置
18 床面
19 車輪
20 レール状電極
21 底面
21b 傾斜部
22 テーパ部
23 受入れ部
24,30 スライド電極
25 スライド体
26 電力供給装置
27,33 アーム
28 経路
29 保持部
31 駆動部
32 制御部
34 ロック切替え機構
35 引込み部
35a フック部
36 押込み部
36a 押圧部
37 被引掛け部
38 押し板
39 第一位置決め部(前後方向)
40 第二位置決め部(車幅方向)
41 ガイドローラ
42 検知部
43 側路
図1
図2
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