特許第6895887号(P6895887)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6895887VOC除去用の、アルミノケイ酸塩類、およびアルミノケイ酸塩から生成したコーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6895887
(24)【登録日】2021年6月10日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】VOC除去用の、アルミノケイ酸塩類、およびアルミノケイ酸塩から生成したコーティング
(51)【国際特許分類】
   A61L 9/01 20060101AFI20210621BHJP
   A61L 9/014 20060101ALI20210621BHJP
   B01J 20/16 20060101ALI20210621BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20210621BHJP
   C01B 33/26 20060101ALI20210621BHJP
   C09C 1/42 20060101ALI20210621BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20210621BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20210621BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20210621BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   A61L9/01 B
   A61L9/014
   B01J20/16
   B01J20/28 Z
   C01B33/26
   C09C1/42
   C09D5/00
   C09D7/40
   C09D17/00
   C09D201/00
【請求項の数】18
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-534839(P2017-534839)
(86)(22)【出願日】2014年12月30日
(65)【公表番号】特表2018-508242(P2018-508242A)
(43)【公表日】2018年3月29日
(86)【国際出願番号】CN2014095691
(87)【国際公開番号】WO2016106611
(87)【国際公開日】20160707
【審査請求日】2017年12月21日
【審判番号】不服2020-2384(P2020-2384/J1)
【審判請求日】2020年2月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】519414848
【氏名又は名称】エボニック オペレーションズ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エリック ジー ルンドキスト
(72)【発明者】
【氏名】ゾウ ミンカン
【合議体】
【審判長】 日比野 隆治
【審判官】 大光 太朗
【審判官】 金 公彦
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L9/00-9/22
B01D53/02-53/85
B01J20/00-20/28
B01J20/30-20/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内環境からVOCを除去する方法であって、
非晶質アルミノケイ酸塩粒子を含むコーティングで少なくとも一部を被覆した室内面を提供する工程と、
前記VOCを前記室内面に接触させる工程と、を含み、
前記非晶質アルミノケイ酸塩粒子は、
(i)BET表面積が120m/g〜450m/gの範囲にあり、
(ii)吸油量が45cc/100g〜85cc/100gの範囲にあり
(iii)細孔容積が、0.18cc/g〜0.6cc/gの範囲にあり、かつ、
(iv)孔径が50Å未満の細孔であるミクロ孔容積が前記細孔容積の10%〜80%であることを特徴とし、
前記室内環境における前記VOCの少なくとも一部を前記コーティングに吸収させることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記非晶質アルミノケイ酸塩粒子は、さらに、
BET表面積が120m/g〜400m/gの範囲にあり
細孔容積が0.2cc/g〜0.5cc/gの範囲にあり、かつ、
孔径が50Å未満の細孔であるミクロ孔容積が、前記細孔容積の15%〜75%であることを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記非晶質アルミノケイ酸塩粒子は、さらに、CTAB表面積が30m/g〜110m/gの範囲にあることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記非晶質アルミノケイ酸塩粒子はアルミノケイ酸ナトリウム粒子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記非晶質アルミノケイ酸塩粒子は、さらに、
CTAB表面積が40m/g〜105m/gの範囲であり、
孔径が50Å未満の細孔であるミクロ孔容積が、前記細孔容積の20%〜60%である、
請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記コーティングは、さらに、染料/顔料を含む、
請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記コーティングは、さらに、レオロジー改質剤、界面活性剤、消泡剤、合体剤(コアレッセント)、および殺生物剤から選択した1または複数の添加剤を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記コーティングの厚さが5μm〜300μmの範囲である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記コーティングは、ホルムアルデヒドの浄化効率のレベルが75%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格し、
前記コーティングは、ホルムアルデヒドの浄化効率の持続性のレベルが60%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格する、
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記コーティングは、トルエンの浄化効率のレベルが35%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格し、
前記コーティングは、トルエンの浄化効率の持続性のレベルが20%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格する、
請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
気流からVOCを除去する方法であって、
非晶質アルミノケイ酸塩粒子で少なくとも部分的に被覆した繊維を含むフィルタに、VOCの少なくとも一部を当該繊維に接触させ、かつ、フィルタに流入させるのに十分な条件下で気流を通過させることにより、該気流からVOCを除去する方法であって、
前記非晶質アルミノケイ酸塩粒子は、
(i)BET表面積が120m/g〜450m/gの範囲にあり;
(ii)吸油量が45cc/100g〜85cc/100gの範囲にあり
(iii)細孔容積が0.18cc/g〜0.6cc/gの範囲にあり;かつ、
(iv)孔径が50Å未満の細孔であるミクロ孔の容積が、前記細孔容積の10%〜80%であることを特徴とする、方法
【請求項12】
前記非晶質アルミノケイ酸塩粒子は、さらに、
BET表面積が、120m/g〜400m/gの範囲であり;
細孔容積が、0.2cc/g〜0.5cc/gの範囲にあり;かつ、
孔径が50Å未満の細孔であるミクロ孔容積が、前記細孔容積の15%〜75%であることを特徴とする、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記非晶質アルミノケイ酸塩粒子は、さらに、CTAB表面積が30m/g〜110m/gの範囲にあることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記非晶質アルミノケイ酸塩粒子はアルミノケイ酸ナトリウム粒子を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記非晶質アルミノケイ酸塩粒子は、さらに、孔径が50Å未満の細孔であるミクロ孔容積が前記細孔容積の20%〜60%であることを特徴とする、請求項11〜14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記非晶質アルミノケイ酸塩粒子は、さらに、CTAB表面積が40m/g〜105m/gの範囲にあることを特徴とする、請求項11〜15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記フィルタは、ホルムアルデヒドの浄化効率のレベルが75%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格し、かつ、
前記フィルタは、ホルムアルデヒドの浄化効率の持続性のレベルが60%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格することを特徴とする、
請求項11〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記フィルタは、トルエンの浄化効率のレベルが35%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格し、かつ、
前記フィルタは、トルエンの浄化効率の持続性のレベルが20%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格することを特徴とする、
請求項11〜17のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
合成非晶質アルミノケイ酸ナトリウムは、一般に、ペイント(塗料)、コーティング、および体質顔料等の顔料他の用途に用いられている。例えば、アルミノケイ酸ナトリウムの市販品であるZeolex(登録商標)323およびZeolex(登録商標)330等は、内装建築用塗料としての不透明性、白色度、明度、艶消し度、および摩耗抵抗に優れる。一般に、これらの用途において用いられるアルミノケイ酸塩は、2%〜10%のレベルで用いられる。近年、室内空気における揮発性有機化合物(volatile organic compounds (VOC))、およびこれら化合物に関連した潜在的な健康への影響への関心が高まっている。事実、米国環境保護庁の指摘によれは、省エネルギーおよび気密性に重点を置いた建築構造の発達により、室内空気VOCが外気と比較して2〜5倍増加している。残念ながら、室内VOC源としては数多くのものがあり、例えば、家具、カーペット、およびその他の敷物、断熱材および家財道具等の他の建築材等が挙げられる。室内に存在する主なVOCとしては、アルデヒド(例えばホルムアルデヒド)およびトルエンが挙げられる。このような室内VOCに対する懸念があるため、これらの汚染物質を除去するための製品が開発されてきている。このような製品の例としては、例えば、VOCに対して反作用し、またはVOCを吸収してVOCを空気から除去する作用物質(agents)を含有する塗料やコーティングが挙げられる。結晶アルミノケイ酸塩ゼオライト等の分子篩(モレキュラーシーブ)が同様の用途において評価されているが、出願人はいかなる特定の理論によっても束縛されることを望まないものの、VOC除去においては結晶性および大きな輸送孔が重要であると考えられ、これらの物質は、結晶性を有することおよび大きな輸送孔(メソ孔およびマクロ孔)が欠如することにより、性能に乏しい場合があると考えている。加えて、このような結晶性物質は、TiO体質顔料としては機能せず、また不透過率を改善させることもなく、コーティング用配合物を不安定にする場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
つまり、室内表面に塗料やコーティング、およびそれらに含有される非晶質アルミノケイ酸塩により、空気中または室内環境に存在する一定のVOCを吸収してVOCレベルを削減または減少させることができれば、有益である。したがって、本発明はこれらを目的としてなされたものである。
【0003】
本摘要は、各概念から選択したものを簡略化した形で紹介するものであり、その詳細については以下の発明の詳細な説明においてさらに詳述する。本摘要は、請求項に記載した対象に必要な特徴または不可欠な特徴を認定することを意図したものではないし、請求項に記載された対象の範囲を限定するために用いることを意図したものでもない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書には、非晶質アルミノケイ酸塩粒子が開示され記載される。本発明の種々の態様によれば、そのような非晶質アルミノケイ酸塩粒子は、(i)BET表面積が約120m/g〜約450m/gの範囲にあり、(ii)吸油量が約150cc/100g以下であり、(iii)ミクロ孔容積が約0.18cc/g〜約0.6cc/gの範囲にあり、かつ、(iv)孔径が50Å未満の細孔であるミクロ孔の容積が、細孔容積の約10%〜約80%であることを特徴とするものである。
【0005】
また、本明細書においては、塗料配合物等のコーティング組成物であって、上記の非晶質アルミノケイ酸塩粒子を含有するものが開示される。そのようなコーティング組成物の一例として、結合剤、液体、および本明細書に開示の非晶質アルミノケイ酸塩粒子を含むものを挙げることができる。結果として生じる、非晶質アルミノケイ酸塩粒子を含有するドライコーティングは、意外にも、周囲空気または周囲環境から揮発性有機化合物(VOC)を除去することができる。
【0006】
上記の発明の概要および以下の詳細な説明は、いずれも、例を挙げて説明するものにすぎない。よって、先の発明の概要および以下の詳細な発明は限定的と解すべきではない。さらに、本明細書に記載した以外の特徴または変形例を追加することもできる。例えば、一定の態様は、発明の詳細な説明に記載した種々の特徴組み合わせおよび部分的組み合わせを対象としてもよい。
【0007】
<定義>
本明細書において使用する用語の意味をより明確なものとするため、以下に各定義を示す。別段の指示がない限り、以下の各定義は本開示について適用可能である。本開示において用いられているが明細書中において特に定義されていない用語については、IUPAC化学術語便覧(IUPAC Compendium of Chemical Terminology)、第2版(1997年)からの定義を、本明細書において適用する他の開示または定義と矛盾しない限りにおいて、また、当該定義を適用した請求項が不明確または実行不能とならない限りにおいて、適用することができる。本明細書において参照により援用する文献による定義または語法が本明細書において規定した定義または語法と矛盾するときは、本明細書における定義または語法を優先する。
【0008】
本明細書において、組成物および方法が種々の成分またはステップを「含む(comprising)」として説明しているが、各組成物および方法は、特に明記しない限り、種々の各成分または各ステップ「から本質的になる(consist essentially of)」または「からなる(consist of)」ものとすることができる。例えば、本発明の態様に適合するコーティング組成物は、(1)非晶質アルミノケイ酸塩粒子、(2)結合剤、および(3)液体を含み、または、(1)、(2)、(3)から本質的になりうるものであり、または、(1)、(2)、(3)からなりうるものとすることができる。
【0009】
不定冠詞「a」、「an」、および定冠詞「the」を付した名詞は、特に明記しない限り、それぞれ、例えば、「少なくとも一つ」等であることを示すものであり、複数の選択肢をも含むことを意図したものである。
【0010】
全体を通して、ケミカルエンジニアリングニュース(Chemical and Engineering News)、63(5)、27(1985年)において公表された元素周期表に示される命番方式を用いて各族元素を示している。場合により、ある族の元素を、その族に付与された一般名を用いて示すことができる。例えば、第1族元素についてアルカリ金属、第2族元素についてアルカリ土類金属、等とすることができる。
【0011】
本明細書において用いる用語「接触させる」とは、配合し、混合し、スラリー化し、溶解し、反応し、処理し、または、いくつかの別の方法により、または任意の好適な方法により接触または混合することのできる各材料または各成分に対して言及するものである。これらの各材料または成分は、特に明記しない限り、任意の順序で、任意の方法で、任意の期間にわたり、接触させることができる。
【0012】
本発明の実施または試験に際しては、本明細書に開示する方法、装置、および材料と同様または等価のものを任意に用いることができるが、本明細書においてはその一般的な方法、装置、および材料について説明する。
【0013】
本明細書において言及するすべての刊行物および特許は、例えば、当該刊行物等に記載された各構成概念および方法論であって、本発明と組み合わせて使用しうるものを記載または開示することを目的として、本明細書において参照により援用する。本文を通して検討した刊行物は、専ら本願の出願日前の開示内容を示すことを目的としたものである。本明細書におけるいかなる記載も、本発明者らが、先行発明に基づきこのような開示を予見する権利がないこと自認するものであると解釈すべきではない。
【0014】
本出願人は、本発明における範囲のうちいくつかの類型を開示する。本出願人が任意の類型の範囲を開示または請求するときの本出願人の意図は、そのような範囲が合理的に包含しうる可能な数、例えば、本明細書において包含される当該範囲の各終点および任意の部分的な範囲(サブレンジ)および各サブレンジの組み合わせを含むことを意図している。代表的な例として、非晶質アルミノケイ酸塩粒子のBET表面積を、本発明の種々の態様において特定の範囲とすることができる。BET表面積が約125m/g〜約224m/gの範囲とすることができるとの開示により、本出願人は、この表面積が当該範囲内であればいかなるものであってもよいことを意図しており、例えば、約125mg/g、約130mg/g、約140mg/g、約150mg/g、約160mg/g、約170mg/g、約180mg/g、約190mg/g、約200mg/g、約210mg/g、約220mg/gと同等とすることができる。加えて、当該表面積は、約125m/g〜225m/gの範囲であってもよく(例えば、約125m/g〜約200m/g)、これは、約125m/g〜約225m/g間にある各範囲の任意の組み合わせ(例えば、表面積は125m/g〜150m/gまたは約175m/g〜約215m/gの範囲とすることができる)をも含む。同様に、本明細書に開示した他の全ての範囲についても上記と同様に解釈されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、非晶質アルミノケイ酸塩粒子、非晶質アルミノケイ酸塩粒子を生成する方法、および非晶質アルミノケイ酸塩粒子を用いた塗料、コーティング、および他の製品を開示する。
【0016】
出願人は、意外にも、本明細書において開示および記載する非晶質アルミノケイ酸塩粒子を塗料またはコーティングまたは他の製品に用いることにより、有害なVOC等(例えば、ホルムアルデヒド、炭化水素等)を周囲空気または大気から吸収および/または除去することができ、例えば室内空気質を向上することを見出した。また、出願者らは、さらに意外にも、高表面積、低吸油量、および特定の細孔容積およびミクロ孔容積特性を有することを特徴とする非晶質アルミノケイ酸塩粒子を用いることにより、これらの有益な特性が達成できることも見出した。
【0017】
<非晶質アルミノケイ酸塩粒子>
本発明の各態様による非晶質アルミノケイ酸塩粒子は、(i)BET表面積が約120m/g〜約450m/gの範囲にあること、(ii)吸油量が約150cc/100g以下であること、(iii)細孔容積が約0.18cc/g〜0.6cc/gの範囲にあること、かつ(iv)孔径が50Å未満の細孔であるミクロ孔の容積が、細孔容積の約10%〜約80%であることを特徴とすることができる。さらなる態様等において、本発明によるアルミノケイ酸塩粒子は、以下に記載の特徴または特性のいずれかを、自由に組み合わせて有することもできる。
【0018】
一態様において、アルミノケイ酸塩粒子の表面積を比較的高くすることができる。多くの場合、BET表面積を、約120m/g〜約400m/g、約120m/g〜約350m/g、または約120m/g〜約250m/gの範囲内とすることができる。さらなる態様において、BET表面積は、約125m/g〜約425m/g、約125m/g〜約375m/g、約125m/g〜約350m/g、約250m/g〜約400m/g、または約250m/g〜約375m/gの範囲等とすることができる。BET表面積についての他の適正な範囲は本開示から容易に明らかである。
【0019】
一態様において、アルミノケイ酸塩粒子の吸油量を比較的低くすることができる。例えば、吸油量は、約30cc/100g〜約150cc/100gの範囲とすることができる。代案として、吸油量を、約50cc/100g〜約150cc/100g;または、約40cc/100g〜約100cc/100g;または、約50cc/100g〜約100cc/100g;または、約30cc/100g〜約90cc/100g;または、約40cc/100g〜約125cc/100g;または、約45cc/100g〜約85cc/100gの範囲とすることができる。吸油量についての他の適正な範囲は本開示から容易に明らかである。
【0020】
アルミノケイ酸塩粒子の細孔容積は特に限定されない。しかしながら、細孔容積(すなわち、孔径を問わない全ての細孔容積)は、多くの場合、約0.18cc/g〜約0.6cc/gの範囲、例えば、約0.2cc/g〜約0.6cc/g、約0.2cc/g〜約0.5cc/g、約0.2cc/g〜0.4cc/g、約0.18cc/g〜約0.4cc/g、約0.2cc/g〜約0.35cc/g、約0.18cc/g〜約0.38cc/g、又は約0.2cc/g〜0.3cc/g等となりうる。細孔容積についての他の適正な範囲は本開示から容易に明らかである。
【0021】
一態様において、アルミノケイ酸塩粒子のミクロ孔径率、すなわち、孔径が50Å未満の細孔からなる細孔容積の比を比較的大きくすることができる。一態様において、孔径が50Å未満の細孔であるミクロ孔の容積は、細孔容積(すなわち、全細孔容積)の約10%〜約80%か、または約10%〜約70%とすることができる。別の態様において、ミクロ孔容積は、細孔容積の約10%〜約60%、または約15%〜約60%の範囲とすることができる。さらに別の態様において、ミクロ孔容積は、細孔容積の約15%〜約75%、または約15%〜約65%とすることができる。また別の態様において、ミクロ孔容積は、細孔容積の約20%〜約70%、または約20%〜約60%とすることができる。孔径が50Å未満のミクロ孔から生じる細孔容積率についての、他の適正な範囲は本開示から容易に明らかである。
【0022】
一態様において、アルミノケイ酸塩粒子のCTAB表面積を約30m/g〜約110m/g、約30m/g〜約105m/g、または約30m/g〜約100m/gの範囲とすることができる。さらなる態様において、CTAB表面積を約35m/g〜約110m/g、約35m/g〜約105、約40m/g〜110m/g、約40m/g〜約105m/g、または約45m/g〜約110m/gの範囲等とすることができる。CTAB表面積についての、他の適正な範囲は本開示から容易に明らかである。
【0023】
アルミノケイ酸塩粒子は、一態様において、アルカリ金属アルミノケイ酸塩粒子を含みうる。別の態様において、アルミノケイ酸塩粒子はアルミノケイ酸ナトリウム粒子を含みうる。さらに別の態様において、アルミノケイ酸塩粒子は、アルカリ土類金属で修飾したアルカリ金属アルミノケイ酸塩粒子を含みうる。さらに別の形態において、アルミノケイ酸塩粒子は、アルミノケイ酸ナトリウムマグネシウム粒子を含みうる。さらには、アルミノケイ酸塩粒子の混合物または組み合わせ等、例えば、アルカリ金属アルミノケイ酸塩粒子(例えば、アルミノケイ酸ナトリウム等)とアルカリ土類金属で修飾したアルミノケイ酸塩粒子(例えば、アルミノケイ酸ナトリウムマグネシウム等)との混合物または組み合わせを用いることができる。
【0024】
これらの態様および他の各態様において、アルミノケイ酸塩粒子(例えば、アルカリ金属アルミノケイ酸塩および/またはアルカリ土類金属で修飾したアルカリ金属アルミノケイ酸塩)は非晶質であり、合成品とすることができる。よって、非晶質アルミノケイ酸塩粒子は合成非晶質アルミノケイ酸塩粒子とすることができる。
【0025】
アルミノケイ酸ナトリウム等の合成アルカリ金属ケイ酸塩は、一般に、ミョウバンをアルカリ金属ケイ酸塩と反応させることにより生成する。結果として生じる生成物におけるシリカ/アルミナ分子比は、通常、約11である。この種の非晶質生成物は既知である。例えば、非晶質生成物は、ZEOLEX(登録商標)の商標のもとにJ・M・フーバー・コーポレーションにより販売されている。これらの一般的な生成物の具体例およびその製法は米国特許第2,739,073号明細書、同第2,843,346号明細書、および同第3,582,379号明細書に記載されているが、これらの文献はその全体を参照により本明細書に援用する。
【0026】
アルミノケイ酸塩は、その形成後、特定の最終用途のため随意に、湿式粉砕(例えば、ビーズ式粉砕)、および/または乾式粉砕(例えば、ハンマー式粉砕)、および/または乾燥(例えば、噴霧乾燥)することができることが当業者には認識されるであろう。
【0027】
<非晶質アルミノケイ酸塩を用いる組成物および物品>
本発明は、また、本明細書に開示の非晶質アルミノケイ酸塩粒子(および、それらの個々の表面積、吸油量、細孔容積、およびミクロ孔容積等の特性または特徴)のいずれかを含有する任意の組成物、配合物、および製品に関するものであり、かつそれらを包含するものである。
【0028】
よって、本発明の一態様における組成物は、液体および本明細書に開示の非晶質アルミノケイ酸塩粒子を含むことができる。この「液体」は、標準温度(25℃)および標準気圧(1atm)において、(固体または気体ではなく)液体である任意の化合物、例えば純粋化合物とすることができる。本明細書において、液体を希釈液ともいう。水は、本明細書において企図する液体または希釈液の実例であり、(例えば、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素等の)多くの有機溶媒も同様であることは当業者には理解されるであろう。
【0029】
本発明によれば、コーティング組成物(塗料配合物等を含む)を提供する。特定の態様において、これらの組成物は、結合剤(多くの場合ビヒクルと呼ばれ、例として、アクリル酸、アクリル酸ビニル(ポリ酢酸ビニル)、またはアクリルスチレン樹脂、ポリウレタン分散体、溶液ポリマー分散体、およびそれらの組み合わせが挙げられる)、液体(例えば、水または有機溶媒)、および本明細書に開示の非晶質アルミノケイ酸塩粒子のいずれかを含みうる。任意選択で、コーティング組成物(塗料配合物を含む)には、所望の特性に応じて、種々の添加剤を含むことができる。
【0030】
塗料配合物は、一般に、4つの主成分、すなわち、顔料、結合剤、液体、および添加剤を含有する。これらの成分のいずれかまたは全部は単一成分であっても多成分であってもよい。顔料は、塗料を着色することができ、また塗料を不透明にすることができる。顔料は、鉱物由来または有機由来であるが、一部の顔料は人工的に生成される。一部の顔料は、定型性を全く、またはほとんど有さないため、より強固な、しかし同時に透明な、物質またはベースに固定しなければならない。「主要」顔料により、着色がなされ、不透明性(不透明な被覆)が生じる。最も一般的な主要顔料は酸化チタニウムであり、色は白色であり、ラテックスおよび油系塗料等において使用される。
【0031】
従来、顔料により、塗料の隠蔽性を向上させることもできる。特殊顔料または体質顔料を用いて、安価で、塗料に定形性を与えることができる。体質顔料は、多くの場合、それが摩耗耐性、汚染性、および白亜化抵抗性等の特性に与える影響によって選択する。これらの目的のため、ミョウバンまたはクレイをしばしば用いる。これらの顔料を塗料に添加して、濃度等一定の特徴、および一定水準の光沢および耐性を得る。これらの天然物を採掘および浄化して、塗料配合物に用いる。例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレイ等の顔料は、塗料配合物において広く用いられている。
【0032】
結合剤は顔料を保持し、かつそれを表面に付着させる。結合剤組成物は一つ以上の成分を有してもよい。ラテックス塗料においては、多くの場合、ラテックス樹脂を結合剤とすることができる。ラテックス塗料においてもっとも一般的には、結合剤は、アクリル酸100%、アクリル酸ビニル(ポリビニルアセテート)100%、またはスチレン化アクリル酸100%、とすることができる。顔料粒子は、一般に、不溶性であり、結合剤中で懸濁液を形成する。結合剤は顔料を「結合し」、乾燥時には強靭な連続膜を形成する。そして、上述したように、塗料を所望の表面に付着させる。加えて、アクリル100%の結合剤を使用することで、ウェット時の接着力が最大となり、未加工のメーソンリ(石工)上に塗布した塗料について耐ブリスター性および耐剥離性、防かび性および防汚性が得られ、耐アルカリ性が得られることが従来から分かっている。
【0033】
液体は顔料および結合剤を保持し、この液体は、蒸発する塗料配合物の一部である。液体は、塗料配合物を液状に維持して塗布しやすくする役割を担う。一旦表面に塗布すると液体は蒸発し、均一な膜が残り、それはその後乾燥して保護コーティングとなる。結合剤の可溶性に応じて好適な液体を決定することができる。一般に、油系塗料およびアルキド塗料等においては、液体は塗料用薄め液(シンナー)とすることができ、ラテックス塗料等においては、液体は水であることが一般的である。従来より、固体百分率で測定した液体の含有量が少なく固形分(すなわち、顔料および結合剤)の含有量が多いほど高品質塗料とされる。
【0034】
添加剤は低水準で用いる原材料であり、限定はしないが、例えば、防かび性、流れ性およびレベリング性、耐スパッタ性等の基本性質を与えるものである。従来の塗料配合物において用いられる一般的な添加剤としては、レオロジー改質剤、表面活性剤、消泡剤、合体剤(コアレッセント)、および殺生物剤等が挙げられる。他の多くの添加剤が当該技術分野において周知であり、これらを適宜用いることにより所望の特性を有する塗料を作成することができる。
【0035】
種々の種類の光沢、すなわち、「輝き」または艶を有する塗料配合物を生成する様々な手法が当該技術分野において知られている。例えば、顔料の水準を徐々に増加することにより、および/または粒子の大きい顔料を用いることにより、例えば、限定はしないが、ツヤ消し、サテン、および半光沢等、種々の光沢のレベルを達成することができる。顔料容積濃度(pigment volume concentration(PVC))は、多くの場合、塗料仕上げと関連するが、様々な仕上げについてPVCの範囲は重複しうる。PVCは、顔料の単位体積であり、結合剤の体積を加算した顔料体積の比率である。PVCにより、コーティング/塗料の耐久性と顔料の量との関連性を表すことができる。
【0036】
本発明のコーティング組成物(塗料配合物を含む)は、とりわけ、結合剤、液体、および本明細書に開示の非晶質アルミノケイ酸塩粒子を含有することができる。驚くべきことに、そのような組成物は、周囲空気または周囲環境からVOCを除去すること、および/または周囲空気または周囲環境におけるVOCレベルを減少することができる。よって、本発明の一定の態様は、VOC低減(例えば、ホルムアルデヒド低減、揮発性炭化水素低減)性能を有するコーティング組成物(塗料配合物を含む)に関するものである。VOCを代表とする一定の組成物の除去/低減の測定に用いる標準試験としては、中国JC/T1074−2008(China JC/T 1074-2008:空気清浄に関するコーティングの浄化能力)があり、その全体を参照により本明細書に援用する。本発明の一態様において、本開示のコーティング組成物は、ホルムアルデヒドの浄化効率(除去)のレベルが75%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格することができる。追加的にまたは代案として、コーティング組成物は、ホルムアルデヒドの浄化効率の持続性(例えば、耐久性、保持率)のレベルが60%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格することができる。追加的にまたは代案として、コーティング組成物は、トルエンの浄化効率(除去)のレベルが35%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格することができる。追加的にまたは代案として、コーティング組成物は、トルエンの浄化効率の持続性(例えば、耐久性、保持率)のレベルが20%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格することができる。
【0037】
本明細書においては、また、本明細書に開示の非晶質アルミノケイ酸塩粒子を含むドライコーティング(例えば、乾燥後または硬化後に、固体膜または層、硬化膜または層を形成するもの)を包含する。さらに、本明細書において、本明細書に開示の非晶質アルミノケイ酸塩粒子を含有する組成物(例えば、塗料配合物等のウェットコーティング組成物)から生成したドライコーティング(例えば、乾燥後または硬化後に、固体膜または層、硬化膜または層を形成するもの)を包含する。本発明によるドライコーティングの厚さは、一般に、最終用途、対象とする基板、および予想される環境条件等に応じて、1μm〜約500μmの間とすることができる。例えば、コーティングの厚さは、約5μm〜約300μmの範囲、約25μm〜約250μmの範囲、または約35μm〜約200μmとすることができる。
【0038】
意外にも、本明細書において開示および記載するドライコーティングは、周囲空気または周囲環境からVOCを除去および/または周囲空気または周囲環境におけるVOCレベルを減少させることができる。VOCを代表する特定の化合物の除去/減少を測定するのに用いる標準試験は、中国JC/T1074−2008試験である。本発明の一態様として開示するコーティングは、ホルムアルデヒドの浄化効率のレベルが75%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格することができる。追加的にまたは代案として、コーティングは、ホルムアルデヒドの浄化効率の持続性(例えば、耐久性、保持率)のレベルが60%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格することができる。追加的にまたは代案として、コーティングは、トルエンの浄化効率(除去)のレベルが35%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格することができる。追加的にまたは代案として、コーティングは、トルエンの浄化効率の持続性(例えば、耐久性、保持率)のレベルが20%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格することができる。
【0039】
さらに、本明細書において包含されるものとして、本開示の非晶質アルミノケイ酸塩粒子のいずれかにより少なくとも部分的に被覆された基板を含む製品がある。さらに、本明細書において包含される製品は、例えば、本開示の非晶質アルミノケイ酸塩粒子を含有する組成物のいずれかから生成したコーティング等で少なくとも部分的に被覆された基板を含むことができる。したがって、本明細書に記載のアルミノケイ酸塩粒子で少なくとも部分的に被覆された基板、または本明細書に記載のアルミノケイ酸塩粒子を含有するコーティング(塗料を含む)で少なくとも部分的に被覆された基板を含むコーティング基板(coated substrate)も、本発明の範囲に含まれる。一般に、本発明において用いうる基板は、金属、コンクリート、木材、紙、またはプラスチック、おおびそれらの組み合わせを含むことができる。
【0040】
限定はしないが、製品としては、任意の好適な製品とすることができ、フィルタ繊維またはエアフィルタ;カーペット繊維またはカーペット;建物の壁、床、または天井(例えば、少なくとも一部を被覆した室内表面)等を含むことができる。
【0041】
本発明は、また、基板をコーティングする方法またはコーティングした基板を生産する方法を開示する。そのような方法の一例としては、(a)結合材、液体(例えば水)、および本明細書に開示の非晶質アルミノケイ酸塩粒子を含むコーティング組成物を提供すること、(b)当該組成物を基板の表面に塗布すること、(c)基板上で組成物を乾燥または硬化させることにより、コーティングした基板を生成することを含む。コーティング組成物(または塗料配合物)は、種々の手法により基板状に塗布することができ、例えば、浸漬、ローリング、刷毛塗り、噴霧、スキージング、バックローリング、流し込み、こて塗り等が挙げられる。これらの手法を組み合わせて用いることもできる。コーティング組成物は、必要に応じて、基板の内外表面の両方に用いることができる。
【0042】
VOCを除去する方法は、例えば、空気の質を向上することを意図している。その一つは、気流からVOCを除去する方法に関し、当該方法は、本明細書に開示する非晶質アルミノケイ酸塩粒子で少なくとも部分的に被覆された(または、本明細書に開示のコーティングで少なくとも部分的に被覆した)繊維を含むフィルタに、VOCの少なくとも一部を当該繊維に接触させフィルタに流入させるのに十分な条件下で、気流をフィルタに通過させることを含むことができ、それにより当該気流からVOCを除去する。当業者には容易に理解されるように、フィルタの繊維の量、コーティング/粒子厚さ、気流流量、および繊維との接触時間、VOCの流入量、所望するVOCの除去量等、その他幾多の要因によって、様々な条件を採用することができる。
【0043】
別の方法としては、室内環境からVOCを除去する方法に関する。本方法は、(1)本明細書に開示のコーティングで少なくとも一部を被覆した室内面(interior surface)を提供すること、および(2)VOCを当該室内面に接触させること、を含み、室内環境におけるVOCの少なくとも一部を当該コーティングが吸収する。当業者には容易に理解されるように、コーティングが吸収するVOCの量は、コーティング厚さ、空気と被覆した室内面との接触時間、当該室内環境における空気循環の量、当該室内環境におけるVOCの初期量、室内環境容積に対するコーティングの表面積等、その他幾多の要因によって変化しうる。
【実施例】
【0044】
本発明を以下の各試験例に基づいてさらに説明するが、各試験例は本発明の範囲を限定するものと決して解釈すべきではない。当業者らが本明明細書に接した後は、各試験例についての種々の他の態様、改変、および等価物等が、本発明の要旨または添付した特許請求の範囲から逸脱することなく当業者にとって自明となるであろう。
【0045】
本明細書において開示するBET表面積、細孔容積、および細孔径分布は、それぞれ、BET窒素吸着法(Brunaurら著、米国化学誌、60、309(1938))、およびHalsey Faas訂正を用いたBJH脱湿等温線(Halsey, G.D., J. Chem. Phys.(1948)、16、pp.931)を用いてマイクロメリティクス社のトリスターII3020V1.03上で測定したが、これらの手法は当業者にとって周知である。
【0046】
ケイ酸塩表面上でのCTAB(セチルトリメチルアンモニウムブロミド)吸着、遠心分離によって分離した余剰分および界面活性剤電極を用いラウリル硫酸ナトリウムを用いた滴定によって測定した量により、CTAB表面積を求めた。具体的には、約0.5gのケイ酸塩をCTAB溶液100mL(5.5g/L)を入れた250mLビーカーに入れ、電気撹拌プレート上で1時間混合した後、10,000rpmで30分間遠心分離した。100mLビーカー中で、5mLの上澄液に10%トリトンX−100を1mL添加した。0.1Nの塩酸を用いてpHを3〜3.5に調節し、界面活性剤電極(Brinkmann SUR1501-DL)ブリンクマンを用いて試料を0.01Mのラウリル酸ナトリウムで滴定して終点(the endpoint)を測定した。
【0047】
吸油量値は、ASTM D281に記載の方法により、亜麻仁油を用いて測定した(粒子100g当たりの吸油量(cc))。一般に、吸油量が高いことは、高構造粒子であることを示し、一方、当該値が低くなると低構造粒子であることを示す。
【0048】
(試験例1〜10)
試験例1は、J・M・フーバー・コーポレーションから市販されている非晶質アルミノケイ酸ナトリウムであり、試験例2は、イメリス社から市販されている珪藻土とした。両材料は、いずれも、塗料用途に一般に用いられるものである。試験例3〜6のアルミノケイ酸ナトリウムは、反応温度を調整して微孔質の量を増加させつつ、全体を参照により本明細書に援用する米国特許第3,582,379号明細書に記載の通りに調製した。
【0049】
表Iに、試験例1および試験例3〜6のアルミノケイ酸塩および試験例2の珪藻土の特定の特性および特徴の概要を示す。特に注目すべきは、試験例1〜2と比較して、試験例3はBET表面積が高く、吸油量が低く、細孔径が50Å未満の孔から生じた細孔容積が約25%であった。試験例4〜6は、試験例3と比較して、表面積が高く、吸油量が低く、細孔容積が小さく、ミクロ孔容積の割合が高かった。
【0050】
表IIは、試験例1〜3の材料を評価するのに用いた標準的な45PVC(顔料容積濃度(pigment volume concentration))モデル(コントロール)塗料配合物の一覧であり、塗料中のCaCOの5%を置換することにより(この置換に伴いCaCOの配合(loading)も15%から10%に減少)評価を行った。表IIIは、中国JC/T1074−2008標準に基づく、試験例7〜10の塗料配合物のVOC除去試験の概要を示す。意外にも、表IIIから、(試験例3のアルミノケイ酸塩を用いた)試験例10が、試験対象とした各VOC除去カテゴリーにおける他の試験例より性能が優れていたことがわかる。さらに、(試験例3のアルミノケイ酸塩を用いる)試験例10は、ホルムアルデヒドの浄化効率のレベルが75%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格し、ホルムアルデヒドの浄化効率の持続性のレベルが60%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格し、トルエンの浄化効率のレベルが35%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格し、トルエンの浄化効率の持続性のレベルが20%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格したことがわかる。
【0051】
試験例4〜6は、試験例3に比べて、表面積が高く、吸油量が低く、ミクロ孔容積の割合が高いため、試験例4〜6から作成した各コーティングは、試験例10と比較しても、より一層良好なVOC除去性能を有することが期待される。
【0052】
【表1】
【0053】
【表2】
【0054】
【表3】
【0055】
以上、幾多の態様、実施形態、および特定の試験例を参照して本発明について説明した。上記の詳細な説明に鑑み、多くの変形例が当業者にとって自明である。これらの自明な変形例はすべて、添付の特許請求の範囲において意図した最大限の範囲内にある。本発明の他の実施形態として、限定はしないが、以下のものが挙げられる(各実施形態においては、用語「含む」(comprising)を用いているが、代案として「本質的に〜からなる」(consist essentially of)または「〜からなる」(consist of)であってもよい)。
【0056】
(実施形態1)
非晶質アルミノケイ酸塩粒子であって、以下の特徴、すなわち:
(i)BET表面積が約120/g〜450m/gの範囲にあり;
(ii)吸油量が約150cc/100g以下であり;
(iii)細孔容積が約0.18cc/g〜約0.6cc/gの範囲にあり;および
(iv)孔径が50Å未満の細孔のミクロ孔容積が細孔容積の約10%〜約80%、
を有する非晶質アルミノケイ酸塩粒子。
【0057】
(実施形態2)
実施形態1に記載の粒子において、BET表面積が、本明細書において開示したBET表面積のうち任意の範囲、例えば、約120m/g〜約400m/g、約125m/g〜約425m/g、約125m/g〜約375m/g等の範囲にある、粒子。
【0058】
(実施形態3)
実施形態1または2に記載の粒子において、吸油量が、本明細書において開示した吸油量の値のうち任意の範囲、例えば、約30cc/100g〜約90cc/100g、約50cc/100g〜約140cc/100g、約50cc/100g〜約100cc/100g等の範囲にある、粒子。
【0059】
(実施形態4)
上記の各実施形態のいずれか一つに記載の粒子において、細孔容積が、本明細書において開示した各細孔容積のうち任意の範囲、例えば、約0.2cc/g〜約0.5cc/g、約0.18cc/g〜約0.4cc/g、約0.2cc/g〜約0.35cc/g等の範囲にある、粒子。
【0060】
(実施形態5)
上記の各実施形態のいずれか一つに記載の粒子において、細孔径が50Å未満の細孔のミクロ孔容積が、本明細書において開示した百分率範囲のうち任意の範囲、例えば、細孔容積の約15%〜約70%、約15%〜約65%、約20%〜約60%等の範囲にある、粒子。
【0061】
(実施形態6)
上記の各実施形態のいずれか一つに記載の粒子において、非晶質アルミノケイ酸塩粒子は、そのCTAB表面積が、本明細書において開示した各CTAB表面積のうち任意の範囲、例えば、約30m/g〜約110m/g、約35m/g〜約110m/g、約45m/g〜約110m/g、等の範囲にあることをさらなる特徴とする、粒子。
【0062】
(実施形態7)
実施形態1〜6のいずれか一つに記載の粒子において、非晶質アルミノケイ酸塩粒子がアルミノケイ酸ナトリウム粒子を含むことを特徴とする、粒子。
【0063】
(実施形態8)
実施形態1〜6のいずれか一つに記載の粒子において、非晶質アルミノケイ酸塩粒子がアルミノケイ酸マグネシウム粒子を含むことを特徴とする、粒子。
【0064】
(実施形態9)
上記の各実施形態のいずれか一つに記載の粒子において、非晶質アルミノケイ酸塩粒子が合成品である、粒子。
【0065】
(実施形態10)
液体および実施形態1〜9のいずれか一つに記載の非晶質アルミノケイ酸塩粒子を含む組成物。
【0066】
(実施形態11)
結合剤(またはビヒクル)、液体(または希釈剤)、および実施形態1〜9のいずれか一つに記載の非晶質アルミノケイ酸塩粒子を含むコーティング組成物(例えば、塗料組成物)。
【0067】
(実施形態12)
実施形態11に記載の組成物であって、当該組成物は、ホルムアルデヒドの浄化効率のレベルが75%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格する、組成物。
【0068】
(実施形態13)
実施形態11または12に記載の組成物であって、当該組成物は、ホルムアルデヒドの浄化効率の持続性のレベルが60%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格する、組成物。
【0069】
(実施形態14)
実施形態11〜13のいずれか一つに記載の組成物であって、当該組成物は、トルエンの浄化効率のレベルが35%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格する、組成物。
【0070】
(実施形態15)
実施形態11〜14のいずれか一つに記載の組成物であって、当該組成物は、トルエンの浄化効率の持続性のレベルが20%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格する、組成物。
【0071】
(実施形態16)
実施形態11〜15のいずれか一つに記載の組成物であって、液体が水を含む、組成物。
【0072】
(実施形態17)
実施形態11〜16のいずれか一つに記載の組成物において、結合剤が、任意の好適な結合剤または本明細書に記載の任意の結合剤、例えば、ラテックス樹脂(アクリル、ビニルアクリル、スチレン化アクリル)、ポリウレタン分散液、高分子溶液分散液等、またはそれらの組み合わせを含む、組成物。
【0073】
(実施形態18)
実施形態11〜17のいずれか一つに記載の組成物であって、TiOおよび/またはCaCOを含む組成物。
【0074】
(実施形態19)
実施形態11〜18のいずれか一つに記載の組成物であって、着色剤/顔料をさらに含む組成物。
【0075】
(実施形態20)
実施形態11〜19のいずれか一つに記載の(ウェット)組成物から生成したドライコーティング。
【0076】
(実施形態21)
実施形態1〜9のいずれか一つに記載の非晶質アルミノケイ酸塩粒子を含むドライコーティング。
【0077】
(実施形態22)
実施形態20または21に記載のコーティングであって、ホルムアルデヒドの浄化効率のレベルが75%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格するコーティング。
【0078】
(実施形態23)
実施形態20〜22のいずれか一つに記載のコーティングであって、ホルムアルデヒドの浄化効率の持続性のレベルが60%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格するコーティング。
【0079】
(実施形態24)
実施形態20〜23のいずれか一つに記載のコーティングであって、トルエンの浄化効率のレベルが35%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格するコーティング。
【0080】
(実施形態25)
実施形態20〜24のいずれか一つに記載のコーティングであって、トルエンの浄化効率の持続性のレベルが20%以上で中国JC/T1074−2008標準試験に合格するコーティング。
【0081】
(実施形態26)
実施形態20〜25のいずれか一つに記載のコーティングであって、その厚さが任意の好適な厚さまたは本明細書に開示の任意の範囲、例えば、約1μm〜約500μm、約5μm〜約300μm、約25μm〜約250μm等の範囲にある、コーティング。
【0082】
(実施形態27)
実施形態20〜26のいずれか一つに記載したコーティングで少なくとも部分的に被覆された基板を含む製品において、当該基板は、任意の好適な基板または本明細書に開示の任意の基板を含み、例えば、金属、コンクリート、木材、紙、プラスチック等またはそれらの組み合わせを含む、製品。
【0083】
(実施形態28)
実施形態1〜9のいずれか一つに記載のアルミノケイ酸塩粒子で少なくとも部分的に被覆された基板を含む製品において、当該基板は、任意の好適な基板または本明細書に開示の任意の基板を含み、例えば、金属、コンクリート、木材、紙、プラスチック等またはそれらの組み合わせを含む、製品。
【0084】
(実施形態29)
実施形態27または28に記載の製品において、当該製品は、任意の好適な物品または本明細書に開示の任意の物品であり、例えば、フィルタ繊維、カーペット繊維またはカーペット、建物の壁、床、または天井(例えば、建物の内部)等である、製品。
【0085】
(実施形態30)
基板を被覆する方法であって、
(a)実施形態11〜19のいずれか一つに記載のコーティング組成物を提供すること、
(b)基板の表面に該組成物を塗布すること、および
(c)基板上に組成物を乾燥または硬化させること、を含む方法。
【0086】
(実施形態31)
気流からVOCを除去する方法であって、
当該気流をフィルタに通過させることであって、該フィルタは、実施形態1〜9のいずれか一つに記載のアルミノケイ酸塩粒子で少なくとも部分的に被覆(または、実施形態20〜26のいずれか一つに記載のコーティングで少なくとも部分的に被覆)された繊維を含み、VOCの少なくとも一部を当該繊維に接触させ、かつ、フィルタに流入させるのに十分な条件下で気流をフィルタに通過させることにより、気流からVOCを除去する、方法。
【0087】
(実施形態32)
室内環境からVOCを除去する方法であって、
実施形態20〜26のいずれか一つに記載したコーティング(例えば、塗料)により少なくとも部分的に被覆された室内面を提供する工程と、
当該室内面にVOCを接触させる工程と、を含み、
室内環境におけるVOCの少なくとも一部をコーティングに吸収させる、方法。