(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
機器や部品等の性能や耐久性を試験する装置として、環境試験装置が知られている(特許文献1乃至3)。
環境試験装置は、一般に加熱ヒータと冷却装置と加湿装置とを備えており、予め設定された庫内の目標温度や目標湿度に向けて、所望の環境を作り出すものが多い。
【0003】
環境試験装置に採用される代表的な加湿装置として、加熱式や気化式と称されるものがある。この種の加湿装置は、加湿用の水を溜める加湿皿(加湿用貯水部)と、加湿ヒータ(加湿用加熱手段)を有し、加湿皿に水を張り、加湿ヒータで当該水を加熱して気化させるものである。
【0004】
また特許文献1には、湿式の湿度検知センサのウィックを浸すウィックパンを有し、ウィックパンから溢れた水を加湿皿に導入する構造を備えた環境試験装置が開示されている。
【0005】
特許文献2、3には、広範囲の湿度条件に対応することができる環境試験装置が開示されている。
特許文献2に開示された環境試験装置では、加湿用水を溜める加湿皿に仕切りを設けて複数の空間に区切っている。
特許文献2に開示された環境試験装置を使用して高湿度環境を創出する場合には、加湿皿の全面から水を蒸発させる。一方、低湿度環境を創出する際には、加湿皿の一部の領域から水を抜き、加湿皿の表面の一部から水を蒸発させる。
【0006】
また特許文献3に開示された環境試験装置では、下部の平面断面積が上部の平面断面積よりも小さい加湿皿を採用している。
特許文献3に開示された環境試験装置を使用して高湿度環境を創出する場合には、加湿皿内の水位をあげて大きな面積の領域から水を蒸発させる。一方、低湿度環境を創出する場合には、加湿皿の水位を下げ、小さな面積の領域から水を蒸発させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献2、3に記載された環境試験装置は、容易に低湿度環境を創出することができる。
しかしながら、特許文献2、3の構造を採用しても、なお水蒸気の発生量が多すぎる場合がある。
水蒸気の発生量が多すぎる場合には、冷凍機の蒸発器(冷却器)に結露させて除湿することとなるが、不要な電力消費を要することとなる。
【0009】
本発明は従来技術の上記した問題点に注目し、水蒸気の蒸発量をより小さくすることが可能であり、試験室の内部に低湿度環境を創出することができる環境試験装置を提供することを課題とする。
また本発明は、環境試験装置の試験室内に低湿度環境を作ることができる低湿度環境創出方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するための態様は、被試験物を載置する試験室と、水を溜める加湿用貯水部と、前記加湿用貯水部内の前記水を加熱する加湿用加熱手段を有する加熱式加湿手段を備えた環境試験装置において、前記加湿用貯水部内の前記水を排水する排水手段と、微加湿用水供給手段と、微加湿手段を有し、前記微加湿手段は、前記加熱式加湿手段による場合に比べて水と空気との接触面積が小さい少量水存在部を作るものであって、前記少量水存在部は、前記排水手段で前記加湿用貯水部内の前記水を略全て排水し、前記微加湿用水供給手段によって前記加湿用貯水部及び/又は前記試験室又は前記試験室と連通する他の部位に水を供給することにより作られることを特徴とする環境試験装置である。
上記した課題を解決するためもう一つの態様は、被試験物を載置する試験室と、前記試験室と連通する空調用通路を有し、さらに水を溜める加湿用貯水部と、前記加湿用貯水部内の前記水を加熱する加湿用加熱手段を有する加熱式加湿手段を備えた環境試験装置において、前記加湿用貯水部内の前記水を排水する排水手段と、微加湿用水供給手段と、微加湿手段を有し、前記微加湿手段は、前記加熱式加湿手段による場合に比べて水と空気との接触面積が小さい少量水存在部を作るものであって、前記少量水存在部は、前記排水手段で前記加湿用貯水部内の前記水を略全て排水し、前記微加湿用水供給手段によって前記空調用通路内の部位に水を供給することにより作られることを特徴とする環境試験装置である。
上記した課題を解決するためもう一つの態様は、被試験物を載置する試験室と、水を溜める加湿用貯水部と、前記加湿用貯水部内の前記水を加熱する加湿用加熱手段を有する加熱式加湿手段を備えた環境試験装置において、前記加湿用貯水部内の前記水を排水する排水手段と、微加湿用水供給手段と、微加湿手段を有し、前記微加湿手段は、前記加熱式加湿手段による場合に比べて水と空気との接触面積が小さい少量水存在部を作るものであって、前記少量水存在部は、前記排水手段で前記加湿用貯水部内の前記水を略全て排水し、前記微加湿用水供給手段によって前記加湿用貯水部及び/又は前記試験室に水を供給することにより作られることを特徴とする環境試験装置である。
【0011】
本態様の環境試験装置では、排水手段で加湿用貯水部内の水を略全て排水する。ここで「略全て排水」とは、可能な限り排水するという意味であり、本態様では、加湿用貯水部内の水を実質的に全て排水する。
そして本態様の環境試験装置では、微加湿用水供給手段によって加湿用貯水部及び/又は試験室又は試験室と連通する他の部位に、新たに少量の水を供給して少量水存在部を作る。
本態様によると、特許文献2、3に比べて、水と空気との接触面積をより小さくすることができ、加湿量を抑えることができる。
【0012】
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、被試験物を載置する試験室と、前記試験室と連通する空調用通路を有し、さらに水を溜める加湿用貯水部と、前記加湿用貯水部内の前記水を加熱する加湿用加熱手段を有する加熱式加湿手段を備えた環境試験装置において、補助貯水部と、微加湿用水供給手段と、微加湿手段を有し
、前記微加湿手段は、前記加熱式加湿手段による場合に比べて水と空気との接触面積が小さい少量水存在部を作るものであって、前記少量水存在部は、前記微加湿用水供給手段によって前記補助貯水部に水を供給することにより作られることを特徴とする環境試験装置である。
【0013】
本態様の環境試験装置では、微加湿用水供給手段によって補助貯水部に水を供給して少量水存在部を作る。
補助貯水部は、加湿用貯水部よりも底面の平面面積が小さいので、水と空気との接触面積が小さい。本態様によると、特許文献2、3に比べて、水と空気との接触面積をより小さくすることができ、加湿量を抑えることができる。
また補助貯水部は、空調用通路内であって、少なくとも加湿用貯水部内よりも上の位置にある
ことが望ましい。
本態様の環境試験装置では、補助貯水部を加湿用貯水部の上の異なる高さの位置に重ねて設置することができるため、装置の外形が過度に大きくなりにくい。
【0014】
上記態様において、前記少量水存在部は、水滴状又は水たまり状となっていることが望ましい。
【0015】
ここで「水滴状」とは、水が点状に分散しており、水が多数に分離している状態を示している。また水たまり状とは、水が集合状態となって広がっているものの、水が存在していない面が残っている状態を示している。
本態様によると、水が水滴状又は水たまり状に存在するので、存在する水量が少なく、水と空気との接触面積が小さく、蒸発量が少ない。
【0016】
上記した各態様において、湿度検知センサと
、ウィックに供給する水を溜める検知用貯水部と、前記検知用貯水部に水を供給する検知用水供給手段を有し、前記微加湿用水供給手段は前記検知用貯水部を経由して水を供給するものであることが望ましい。
【0017】
一般に、検知用貯水部の容積は、加湿用貯水部の容積に比べて小さい。そのため検知用水供給手段は水を少量ずつ通過させる構造となっている。従って検知用貯水部を経由させると、少量水存在部を形成させやすい。
【0018】
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、被試験物を載置する試験室と、前記試験室内の湿度を調節する加湿手段を備えた環境試験装置において、前記試験室又は前記試験室と連通する空間に水受け部があり、微加湿用水供給手段と、水滴状又は水たまり状の少量水存在部を作る微加湿手段を有し、前記少量水存在部は、前記微加湿用水供給手段で前記水受け部に水を供給することにより作られるものであり、前記少量水存在部を自然蒸発させて試験室内の湿度を調節することを特徴とする環境試験装置である。
【0019】
本態様によると、水が水滴状又は水たまり状に存在するので、水と空気との接触面積が小さく、蒸発量が少ない。
【0020】
上記した各態様において、前記微加湿用水供給手段は、水を滴下するものであることが望ましい。
【0021】
ここで「滴下」とは、水が分離した状態で落下する状態を言う。
【0022】
上記した課題を解決するためのもう一つの態様は、試験室内に低湿度環境を創出する環境試験装置の低湿度環境創出方法において、前記試験室又は前記試験室と連通する部位に少量の水を供給して、水滴状又は水たまり状の少量水存在部を作り、前記少量水存在部の水を自然蒸発させることを特徴とする環境試験装置の低湿度環境創出方法である。
【0023】
本態様によると、少量水存在部に水が水滴状又は水たまり状に存在することとなるので、水と空気との接触面積が小さく、蒸発量が少ない。
【発明の効果】
【0024】
本発明の環境試験装置は、試験室の内部に低湿度環境を創出することができる効果がある。また本発明の低湿度環境創出方法によると、環境試験装置の試験室内に低湿度環境を作ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下さらに、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の環境試験装置1は、
図1に示すように、断熱壁2で覆われた断熱筐体3を有している。断熱筐体3の一面には扉18が設けられている。
断熱筐体3は、内部が仕切壁8によって試験室6と空調用通路7とに区分されている。仕切壁8の上下のそれぞれに、試験室6と空調用通路7とを連通する空気吹き出し口16と、空気吸い込み口17が設けられている。
【0027】
試験室6は、環境試験を行う際に、被試験物となる機器や部品等を配置し、所望の試験環境が形成される空間で、当該空間の温度を検知する室内温度検知手段22と、当該空間の相対湿度を検知する室内湿度検知手段23が設けられている。
本実施形態では、室内温度検知手段22及び室内湿度検知手段23は、試験室6の上部側であって、空気吹き出し口16の近傍に配されている。
室内温度検知手段22は、従来公知の熱電対やサーミスタ等の温度センサであり、乾球温度を検知するものである。
これに対して室内湿度検知手段23は、湿球温度を検知するものであり、湿度検知センサ21と、その検知部を覆うウィック25を有している。なお湿度検知センサ21自体は湿球温度を検知する温度センサである。
【0028】
室内湿度検知手段23の形状は、
図7の通りであり、湿度検知センサ21と、ウィック25の他、水を溜めおく検知用貯水部26と、外郭部27とを備えている。
外郭部27は、検知用貯水部26からオーバーフローした水を集水して下方に流す機能を有する。
【0029】
ウィック25は、水分を保持できる布やガーゼであり、雰囲気温度や雰囲気湿度等の環境に応じて、その保持された水分を気化し得るものであればその他のいかなるものでも構わない。
【0030】
空調用通路7は、所望の温度や湿度の空気を生成する部分であり、下部側(空気の流れ方向上流側)から順番に、加湿器10、蒸発器11、加熱ヒータ(昇温用加熱手段)12、送風機13が配されている。
加湿器10は、所定の深さを有した加湿皿(加湿用貯水部)30と、加湿ヒータ(加湿用加熱手段)31を有し、加湿ヒータ31によって加湿皿30内に貯留された水を蒸発させるものである。
【0031】
本実施形態では、加湿皿30は、空調用通路7の最も下部に設けられている。加湿器10には、図示しない給水路が開いており、加湿運転を行う際には加湿皿30内が加湿用の水で常時満たされる。
【0032】
蒸発器(冷却器)11は、公知の冷却装置の一部であり、冷凍サイクルの一部を担うべく機能するものである。すなわち、蒸発器11は、内部に相変化する冷媒が流通し、冷却能力と表面温度を変化させることができるものである。
加熱ヒータ12(昇温用加熱手段)は、電気ヒータであり、空調用通路7を通過する空気を加熱するものである。
送風機13は、ファンであり、断熱筐体3内に空気の循環流を形成するものである。
【0033】
また本実施形態の環境試験装置1に特有の部材として、補助貯水部40が設けられている。補助貯水部40は「水受け部」でもある。
補助貯水部40は小型の皿状であり、
図6の様に底部41と周壁42を有し、上部は開放されている。
補助貯水部40の底部41の平面面積は、加湿皿(加湿用貯水部)30の底部の平面面積に比べて小さい。補助貯水部40の底部41の平面面積は、加湿皿30の底面の面積の30パーセント以下であり、より望ましくは、20パーセント以下であり、さらに望ましくは、10パーセント以下である。
補助貯水部40は、空調用通路7内であって、加熱ヒータ12と送風機13の間の高さに設置されている。即ち補助貯水部40は、加湿皿30、加熱ヒータ12、蒸発器(冷却器)11のいずれよりも上の位置にある。
補助貯水部40は、平面視すると、その一部又は全部が加湿皿30と重なる。
【0034】
さらに本実施形態の環境試験装置1は、室内湿度検知手段23と補助貯水部40に給水する微加湿用水供給系統15が備えられている。
微加湿用水供給系統15は、
図1に示す貯水タンク38から室内湿度検知手段23に給水する検知用給水系統35と、
図2に示す検知用給水系統35を通過した水を、検知用貯水部26を経由して中段に位置する補助貯水部40に給水する加湿用給水系統36とで構成されている。
【0035】
検知用給水系統35は、
図1に示すように、貯水タンク38から室内湿度検知手段23まで水を導くタンク吐出側配管37と、タンク吐出側配管37の中途の位置であって当該配管37内に水流を形成する給水ポンプ43とで構成されている。
検知用給水系統35は、給水ポンプ43を駆動することで、タンク吐出側配管37内に水流が形成され、それにより室内湿度検知手段23への給水が行われる。室内湿度検知手段23に給水された水は、検知用貯水部26に貯留される。
検知用貯水部26の容積は小さい。そのため給水ポンプ43は、小型であり、単位時間当たりの吐出量は少ない。
【0036】
加湿用給水系統36は、室内湿度検知手段23及び当該室内湿度検知手段23に接続されて補助貯水部40に水を導く湿度検知手段側配管47で構成されている。
加湿用給水系統36は、室内湿度検知手段23に供給された水を、室内湿度検知手段23から流出させ、湿度検知手段側配管47に通水させることで、補助貯水部40への給水を行うことができる流路である。
【0037】
本実施形態の環境試験装置1では、貯水タンク38、タンク吐出側配管37、給水ポンプ43、室内湿度検知手段23の検知用貯水部26、湿度検知手段側配管47によって微加湿用水供給手段56が構成されている。
本実施形態では、検知用給水系統35に水を流して室内湿度検知手段23の検知用貯水部26に水を満たすことができる。
またさらに多くの水を検知用給水系統35から供給して、検知用貯水部26から水を溢れさせ、下部の補助貯水部40に水を滴下することができる。
【0038】
加湿用排水系統51は、加湿側排水配管45によって形成されている。そして、加湿側排水配管45の中途には、排水用開閉弁48が設けられている。排水用開閉弁48は電磁弁である。加湿用排水系統51は、排水用開閉弁48を開栓することで、加湿器10の加湿皿30からの排水を行うことができる流路である。
本実施形態では、加湿側排水配管45と排水用開閉弁48によって加湿皿30内の水を排水する排水手段55が構成されている。
【0039】
さらに、本実施形態の環境試験装置1は、図示しない制御装置を有している。環境試験装置1は、制御装置によって、予め設定された条件(例えば、試験室6内の目標設定温度、目標設定湿度や試験時間等)や、室内湿度検知手段23等から得られる情報等に基づいて、環境試験運転に関わる動作を制御できる構成とされている。
【0040】
次に、本実施形態の環境試験装置1の動作について説明する。
本実施形態の環境試験装置1は、通常の加熱式加湿手段による加湿と、微加湿手段による加湿を行うことができる。
本実施形態の環境試験装置1では、送風機13によって断熱筺体3内の空気を循環して、試験室6内に所望の環境が作られる。即ち断熱筺体3内の空気は、送風機13によって仕切壁8の下部側の空気吸い込み口17から空調用通路7側に吸入され、空調用通路7を鉛直上方に向けて通過して、仕切壁8の上部側に設けられた空気吹き出し口16から試験室6側に吐出される。
【0041】
より詳細に説明すると、送風機13が起動されると、当該送風機13から空気が吐出され、試験室6側に送風される。これにより、試験室6内の壁面に沿うように空気の流れが形成される。そして、仕切壁8の下部側の空気吸い込み口17に到達した空気が、再び空調用通路7内に導入される。空調用通路7には、前記したように、空気の流れ方向に沿って順番に加湿器10、蒸発器11、加熱ヒータ12が配置されている。そのため空調用通路7に導入された空気は、加湿器10で必要に応じて加湿され、蒸発器11を通過してから、加熱ヒータ12側に流れる。そして、試験室6内の雰囲気が、所望の温度や湿度となるようにこれらの機器が制御される。
【0042】
即ち環境試験装置1は、室内温度検知手段22と室内湿度検知手段23によって、試験室6内の現状の温度(現状気温)と現状の相対湿度(現状相対湿度)が監視され、所定の設定条件に基づいて、各機器(加湿器10、蒸発器11、加熱ヒータ12、送風機13等)が制御される。
【0043】
本実施形態の環境試験装置1は、試験室6内の温度及び湿度を広範囲に変更させることができる。
特に本実施形態の環境試験装置1は、湿度の変化幅が広く、10パーセント以下の低湿度の環境から、90パーセントを越える高湿度の環境を試験室6内に創り出すことができる。
即ち本実施形態の環境試験装置1は、公知のそれと同様に、加熱式加湿手段を備えている。加熱式加湿手段は、加湿器10の加湿皿(加湿用貯水部)30に加湿用の水を張り、加湿ヒータ(加湿用加熱手段)31で水を加熱して気化させ、試験室6内の湿度を調節する加湿手段である。
中程度以上の湿度環境に調整する場合には、加熱式加湿手段を利用して試験室6内の湿度を調整する。
【0044】
図3は、加熱式加湿手段を利用して試験室6内の湿度を調整する場合の状態を模式的に表したものである。
加熱式加湿手段を利用する場合には、排水用開閉弁48を閉じ、図示しない給水路から加湿器10の加湿皿30に給水して加湿皿30を水で満たす。
そして加湿ヒータ(加湿用加熱手段)31で水を加熱して気化させる。加湿ヒータ31の出力は、図示しない制御装置で制御される。即ち試験室6内の湿度が設定湿度よりも低い場合には、加湿ヒータ31の出力を増加して蒸発量が増やされる。試験室6内の湿度が設定湿度よりも高い場合には、加湿ヒータ31の出力を低下させて蒸発量を減少させる。また冷却装置を駆動して湿度を低下させる。実際には、加湿ヒータ31と冷却装置を同時に駆動して湿度が調節される。
【0045】
本実施形態の環境試験装置1は、加熱式加湿手段に加えて、微加湿手段を備えている。
図4、
図5は、微加湿手段を利用して試験室6内の湿度を調整する場合の工程を模式的に表したものである。
微加湿手段は、加湿器10の加湿皿30から水を抜いて空状態とする。
そして、検知用貯水部26を経由して、補助貯水部40に水を滴下し、加熱式加湿手段による場合に比べて水と空気との接触面積が小さい少量水存在部70を作る。
少量水存在部70の水が自然蒸発し、試験室6内が僅かずつ加湿される。
【0046】
微加湿手段を利用する場合には、
図4の様に、図示しない給水路からの給水を停止すると共に、排水用開閉弁48を開き、加湿器10の加湿皿30内の水を完全に排水する。さらに加湿皿30を乾燥状態にすることが望ましい。
その後、あるいはこれと平行して、
図5の様に補助貯水部40に水を滴下し、補助貯水部40の底に少量水存在部70を作る。
【0047】
少量水存在部70では、
図6(a)の様に、水が水滴状に独立して補助貯水部40の底部41に付着している様な状態や、
図6(b)の様に、水がある程度まとまって水たまり状となっている。
いずれにしても、水は、補助貯水部40の底部41全体を覆ってはおらず、底部41が直接露出した露出部71がある。
加湿器10は使用しないので、加湿ヒータ31はオフ状態となっている。
微加湿手段を利用する場合には、水滴状や水たまり状の水が自然蒸発され、試験室6内を僅かずつ加湿する。
即ち少量水存在部70は、試験室6と連通する位置にあるから、少量水存在部70から蒸発した水蒸気は、試験室6に流れ、試験室6内の湿度に影響を与えることとなる。
【0048】
補助貯水部40に対する注水量は、図示しない制御装置で制御される。即ち試験室6内の湿度が設定湿度よりも低い場合には、注水量を増加させて補助貯水部40の底部41に占める水滴又は水たまりの占有面積を増加させる。試験室6内の湿度が設定湿度よりも高い場合には、注水量を低下させて補助貯水部40の底部41に占める水滴又は水たまりの占有面積を減らす。また冷却装置を駆動して湿度を低下させる。実際には、注水量と冷却装置の制御を同時に行って、湿度を調節する。
【0049】
微加湿手段を活用する場合には、水をヒータで加熱することなく、自然蒸発に任せる。そのため微加湿手段を活用する場合の蒸気発生量は、通常の加熱式加湿に比べて著しく少ない。
さらに本実施形態では、加湿皿30に比べて小型の補助貯水部40に水を供給し、その水を気化させるから、仮に加湿皿30の水を自然蒸発させる場合に比べて蒸気発生量が少ない。
さらに本実施形態では、補助貯水部40に供給される水が少量であり、且つ滴下状態に水を供給し、水を水滴状態や水たまり状態とするので、空気と水の接触面積は小さく、蒸気発生量は極めて少ない。
そのため試験室6内を低湿度環境に維持することができる。
【0050】
中程度以上の湿度環境と、低湿度の湿度環境を繰り返す様な場合における運転状況は、表1の通りである。
【0052】
例示の動作は、試験室6内の環境を中温中湿環境に調整し、その後試験室6内の環境を中温低湿環境に変化させ、さらにその後、中温中湿環境に戻すものである。
設例では、中温中湿環境は摂氏60度、相対湿度60パーセントであり、中温低湿環境は、摂氏65度、相対湿度10パーセントである。
本実施形態の環境試験装置1では、図示しない制御装置に、試験室6内の環境を表1の条件に自動的に変化させるプログラムが格納されている。
【0053】
本実施形態では、環境試験装置1を起動すると、試験室6内の環境が中温中湿環境に調整される。
初期の目標環境は中温中湿環境であるから、環境試験装置1は、加熱式加湿手段を利用して運転される。
具体的には、図示しない給水路から加湿皿30に水が供給される。なお排水用開閉弁48は閉じられている。また図示しない水位センサーにより、加湿皿30の水位が一定水準に維持される。
そして制御装置によって、摂氏60度、相対湿度60パーセントとなる様に、加湿器10、冷却装置、加熱ヒータ12が駆動される。目標環境は中湿度環境であるから、加湿ヒータ(加湿用加熱手段)31に通電され、加湿ヒータ31によって加湿皿30内に貯留された水を蒸発させて空調用通路7を通過する空気が加湿され、試験室6内が高湿度環境に維持されることとなる。
【0054】
一定の時間が経過すると、試験室6内の目標環境が、中温低湿環境に変更される。環境試験装置1は、加湿方法が、加熱式加湿手段による方法から、微加湿手段による方法に切り換えられる。
具体的には、給水路を経由する加湿皿30への通水が停止される。また加湿ヒータ31への通電は停止される。
続いて制御装置からの指令によって排水用開閉弁48が開かれ、加湿皿30内の水が略完全に排水される。
【0055】
その後、またはこれと平行して、微加湿用水供給系統15により、検知用貯水部26を経由して補助貯水部40に水が供給される。
具体的には、検知用給水系統35の給水ポンプ43が起動され、貯水タンク38から室内湿度検知手段23の検知用貯水部26に給水される。給水ポンプ43の給水は、検知用貯水部26内の水が満水状態となった後も維持される。その結果、水は検知用貯水部26から溢れ、湿度検知手段側配管47を経由して、補助貯水部40に落下する。
【0056】
前記した様に、検知用貯水部26の容積は小さく、給水ポンプ43の容量も小さいので、湿度検知手段側配管47から落下する水量は僅かであり、滴下状態かあるいは滴り落ちる状態で補助貯水部40に落下し、
図5の様な少量水存在部70ができる。また給水ポンプ43を間欠的に運転して、湿度検知手段側配管47から水を滴下してもよい。
補助貯水部40は空調用通路7内にあって通風環境下にあり、補助貯水部40内の水は自然蒸発して、空調用通路7を通過する空気を僅かに加湿する。
加湿量が不足する場合は、給水ポンプ43が駆動して、より多くの水を補助貯水部40に供給し、補助貯水部40において水が存在する面積を増加させて、自然蒸発量を増加させる。
【0057】
さらに一定時間が経過すると、試験室6内の環境が中温中湿環境に変更され、環境試験装置1は、加熱式加湿手段を利用する加湿に切り換えられる。
【0058】
以上説明した実施形態では、加湿皿30とは別に補助貯水部40を設け、補助貯水部40に少量水存在部70を作ったが、加湿皿30に少量水存在部70を形成させてもよい。
図8乃至10は、本発明の他の実施形態を示すものである。
図8、
図9に示す環境試験装置80は、補助貯水部40を持たず、検知用貯水部26から加湿皿30に水を滴下する構造となっている。環境試験装置80では、加湿皿30が「水受け部」として機能する。他の構成については、前記した実施形態と同じであるから同一の番号を付して重複した説明を省略する。
【0059】
環境試験装置80において、加熱式加湿手段を利用する場合には、
図8の様に排水用開閉弁48を閉じ、図示しない給水路から加湿器10の加湿皿30に給水して加湿皿30を水で満たす。
そして加湿ヒータ(加湿用加熱手段)31で水を加熱して気化させる。
微加湿手段を利用する場合には、
図9の様に、図示しない給水路からの給水を停止するとともに、排水用開閉弁48を開き、加湿器10の加湿皿30内の水を完全に排水する。さらに加湿皿30を乾燥状態にすることが望ましい。
その後、あるいはこれと平行して、
図10の様に加湿皿30に水を滴下し、
図11の様に加湿皿30の底に少量水存在部70を作る。
加湿器10は使用しないので、加湿ヒータ31はオフ状態となっている。
微加湿手段を利用する場合には、水滴状や水たまり状の水を自然蒸発させ、試験室6内を僅かずつ加湿する。
【0060】
以上説明した実施形態では、補助貯水部40や加湿皿30に水を滴下して少量水存在部70を形成したが、少量水存在部70を形成する位置は任意である。少量水存在部70を形成する位置は空調用通路7内であることが望ましいが、試験室6の中であってもよい。
【0061】
水の滴下は補助貯水部40や加湿皿30以外の部位に行ってもよい。
【0062】
以上説明した実施形態では、検知用貯水部26を経由して、水を滴下し、少量水存在部70を形成したが、独立した給水路から補助貯水部40や加湿皿30その他の水受け部に水を供給して自然蒸発させてもよい。
【0063】
補助貯水部40や加湿皿30への少量の水の供給手段は、滴下によるものに限定されず、供給する水が連続的に繋がっていてもよい。
補助貯水部40や加湿皿30への少量の水の供給は、上からの供給に限らず、補助貯水部40内や加湿皿30内に設けられた孔、特にこれらの底に形成した連通孔から供給してもよい。
加熱式加湿手段を利用する際の給水経路の一部又は全部が、微加湿手段を利用する際の給水経路と重複していてもよい。加熱式加湿手段を利用する際の給水手段が、微加湿手段を利用する際の給水手段を兼ねていてもよい。
排水手段の一部が微加湿手段を利用する際の給水手段を兼ねていてもよい。
例えば加湿側排水配管45を経由して微加湿用の水を加湿皿30に供給してもよい。
【0064】
補助貯水部40の設置場所は任意であり、空調用通路7以外の試験室6と連通する位置であってもよい。試験室6内に補助貯水部40があってもよい。
補助貯水部40の高さについても任意であり、加湿皿30の上や、蒸発器(冷却器)11又は加熱ヒータ12の上でなくてもよい。補助貯水部40の高さは、蒸発器(冷却器)11や加熱ヒータ12と同じ高さであってもよい。