(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
表面温度を調節可能な冷却器と、水蒸気吸着式の除湿装置を制御して湿度を目標環境の湿度に調整する制御装置を動作させるためのコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体であって、
前記冷却器の表面温度を氷点温度以下に低下させて前記冷却器の表面に霜を生成させて湿度を前記目標環境の湿度又はその近傍まで低下させ、
その後、前記冷却器の表面温度を氷点温度を超える温度に上昇させて前記霜を蒸発又は昇華させ、
湿度上昇を前記除湿装置によって抑制する動作を前記制御装置に実行させる前記コンピュータプログラムを記憶していることを特徴とする記憶媒体。
【背景技術】
【0002】
環境試験装置は試験室を有し、当該試験室内に所望の温度や湿度の環境を作る装置である。環境試験装置は、一般に加熱ヒータと、冷却装置と、加湿装置を備えている。加熱ヒータは、試験室を昇温するものである。冷却装置は、冷凍サイクルで構成されるものであり、気体状の冷媒を凝縮し、さらに蒸発器内で断熱膨張させることで、試験室を低温にするものである。加湿装置は、電気ヒータの熱で水を蒸発させたり、超音波によって水を気化させることで、試験室を加湿するものである。
【0003】
特許文献1には、省エネ型の環境試験装置が開示されている。
特許文献1に開示された環境試験装置は、蒸発器の下流側に開度を変更可能な第二膨張手段を備えている。そして以下の工程を順次に実行して試験室内の環境を目標環境に調整する。
(1)圧縮機を駆動して冷却装置を運転し、主として試験室の温度を低下させる温度降下工程。
(2)第一膨張手段の開度を絞った状態で冷却装置を運転し、蒸発器の表面で水蒸気を凝縮させ、主として前記空間の相対湿度を低下させる湿度降下工程。
(3)第二膨張手段の開度を調節した状態で冷却装置を運転し、蒸発器の表面の温度を上昇させて蒸発器の表面に付着した水分の一部又は全部を蒸発又は昇華させる湿度調節工程。
【0004】
特許文献1に開示された環境制御装置では、温度降下工程で試験室内の温度を急激に低下させる。
続く湿度降下工程で試験室内の湿度を低下させる。湿度降下工程では、第一膨張手段の開度を絞った状態で冷却装置が運転されるので、冷媒の蒸発圧力が低下し、冷媒の温度が低下して蒸発器の表面温度が低下する。そのため蒸発器と接触する空気は、内包する水蒸気を凝縮させる。その結果、空気は水蒸気を奪われて水分量が低下し、相対湿度が急激に低下する。
湿度降下工程では、試験室内の湿度を目標湿度を下回るまで低下させる。即ち特許文献1に開示された環境試験装置では、試験室内の湿度を目標環境よりも大幅に降下させる。
続く湿度調節工程では、第二膨張手段の開度を調節した状態で冷却装置を運転し、蒸発器の表面温度を上昇させて蒸発器の表面に付着した水分を蒸発又は昇華させて試験室内の湿度を上昇させ、試験室内の湿度を目標湿度に至らせる。
【0005】
特許文献2には、デシカント式の除湿装置を備えた環境試験装置が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に開示された環境試験装置は、消費電力が少ないという利点がある。しかしながら特許文献1に開示された環境試験装置は、目標環境に到達するのに時間がかかる場合がある。
即ち特許文献1に開示された環境試験装置では、環境形成の過程で、試験室内の湿度を目標環境よりも降下させる。そしてその後、蒸発器の表面に付着した水分を蒸発又は昇華させて試験室内の湿度を上昇させる。
特許文献1に開示された環境試験装置は、この様に試験室内の湿度を目標湿度を下回る湿度に低下させ、その後に目標湿度に戻すので、最終的に目標湿度に至るまでに時間がかかる場合がある。
【0008】
また環境試験装置の蒸発器に霜が付き、それが成長すると、冷却効率が低下する。そのため定期的に霜を除去しなければならない場合があり、試験を中断しなければならない場合がある。
そこでフロストフリー運転又はノンフロスト運転と称される運転が行われる場合がある。この運転方法では、蒸発器の表面温度を氷点温度を超える温度に維持する。その結果、蒸発器の表面で結露する場合があるものの凍結はせず、蒸発器に霜が付かない。
【0009】
その一方で、フロストフリー運転を行う場合は、蒸発器の表面温度の下限が氷点温度を超える温度に限定され、蒸発器の表面温度が比較的高い。そのため現状環境の露点との温度差を確保しにくい場合があり、除湿効率が低い場合がある。
そのため特許文献1に開示された環境試験装置でフロストフリー運転を実行する場合は、前記した湿度降下工程においても時間を要する場合があり、最終的に目標湿度に至るまでに時間がさらにかかる場合がある。
【0010】
試験室内の湿度を低下させる方策として、特許文献2に開示された様に、デシカント式の除湿装置を採用することが考えられる。
しかしながら、現状の環境が例えば摂氏10度、相対湿度80パーセントという様な低温高湿環境であり、目標環境が摂氏10度、相対湿度30パーセントという様な低温低湿環境である様な場合には、試験室内を目標湿度に至らせるまでに時間がかかる場合がある。
即ちデシカント式の除湿装置は、吸湿した除湿剤を加熱して再生する必要がある。しかしながら、吸湿時に吸湿剤を通過する空気の温度が低い場合は、吸湿剤が過度に冷えており、再生のための昇温に時間がかかる。そのため試験室内の湿度を低下させるのに時間がかかる場合がある。
【0011】
また通常の冷却装置と、デシカント式の除湿装置を併用することも考えられるが、前記した様にフロストフリー運転を行う場合は、蒸発器の表面温度の下限が氷点温度を超える温度に限定されるので冷却装置の除湿効率が劣る場合がある。
特に特許文献1に開示された環境試験装置にデシカント式の除湿装置を併用してフロストフリー運転を実行すると、最終的に目標湿度に至るまでに時間がかかる場合がある。
【0012】
本発明は従来技術の上記した問題点に注目し、比較的短時間の内に目標湿度に達することが可能な環境形成装置、環境形成方法、湿度制御装置及びコンピュータプログラムを提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記した課題を解決するための態様は、所定の空間の湿度を目標環境の湿度に調整可能な環境形成装置であって、冷却装置を備え、前記冷却装置は、圧縮機と、凝縮器と、膨張手段と、蒸発器と、下流側開度調整手段を有し、前記下流側開度調整手段は前記蒸発器の下流側にあり、前記冷却装置の内部に相変化する冷媒が充填されていて一連の冷凍サイクルを実現し、前記蒸発器の表面温度を低下させ、空気中の水蒸気を液化又は凍結させて除湿する機能を備え、且つ前記下流側開度調整手段の開度を調節して前記蒸発器内の冷媒の蒸発圧力を制御し、前記蒸発器の温度を調節可能な環境形成装置において、前記冷却装置以外に除湿装置を有し、前記空間内の湿度を低下させる際に、前記蒸発器の温度を氷点温度以下に調整して前記空間内の湿度を低下させ、前記空間内の湿度が前記目標環境の湿度又はその近傍に至った後に前記蒸発器の温度を上昇させる蒸発器温度上昇工程を実施して前記蒸発器の温度を氷点温度を超える温度に上昇させ、少なくとも前記蒸発器温度上昇工程において、前記除湿装置によって前記空間内の湿度上昇を抑制して前記空間内の湿度を前記目標環境の湿度に維持することを特徴とする環境形成装置である。
【0014】
本態様の環境形成装置では、蒸発器の温度を氷点温度以下に調整して空間内の湿度を低下させる。本工程では、蒸発器の温度が氷点温度以下に調整されるので、蒸発器の表面温度は低い。
そのため現状環境の露点温度との差を十分に確保することができ、空気中の水蒸気が蒸発器と接して凝縮し、空気中の水分が奪われて空間内の湿度が急激に低下してゆく。
蒸発器の表面温度は氷点温度以下であるから、蒸発器の表面で凝縮水が凍結し、霜が付くこととなる。
空間内の湿度が目標環境の湿度又はその近傍に至ると、蒸発器の温度を上昇させる。本態様では、蒸発器温度上昇工程を実施して蒸発器の温度を氷点温度を超える温度に上昇させる。
その結果、蒸発器の表面に付着していた霜が融解する。また蒸発器の表面が現状の露点温度以上であるならば、蒸発器の表面で水分が蒸発又は昇華し、空気中に水分を供給することとなり、空間の湿度を上昇させる要因となる。
ここで本態様の環境形成装置は、冷却装置とは別に除湿装置を有している。本態様の環境形成装置は、除湿装置によって水分の蒸発等による湿度上昇を抑制し、空間内の湿度を目標環境の湿度に維持する。
本態様の環境形成装置によると、空間内の湿度を過度に下げることなく、目標湿度に至らせることができるので、目標湿度に至るまでに要する時間が比較的短い。
【0015】
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、所定の空間の湿度を目標環境の湿度に調整可能な環境形成装置であって、冷却装置を備え、前記冷却装置は、圧縮機と、凝縮器と、膨張手段と、蒸発器と、下流側開度調整手段を有し、前記下流側開度調整手段は前記蒸発器の下流側にあり、前記冷却装置の内部に相変化する冷媒が充填されていて一連の冷凍サイクルを実現し、前記蒸発器の表面温度を低下させ、空気中の水蒸気を液化又は凍結させて除湿する機能を備え、且つ前記下流側開度調整手段の開度を調節して前記蒸発器内の冷媒の蒸発圧力を制御し、前記蒸発器の温度を調節可能な環境形成装置において、前記冷却装置以外に除湿装置を有し、前記空間内の湿度を低下させる際に、前記蒸発器の温度を前記目標環境の露点温度以下に調整して前記空間内の湿度を低下させ、前記空間内の湿度が前記目標環境の湿度又はその近傍に至った後に前記蒸発器の温度を上昇させる蒸発器温度上昇工程を実施して前記蒸発器の温度を前記目標環境の露点温度を超える温度に上昇させ、少なくとも前記蒸発器温度上昇工程において、前記除湿装置によって前記空間内の湿度上昇を抑制して前記空間内の湿度を前記目標
環境の湿度に維持することを特徴とする環境形成装置である。
【0016】
「蒸発器の温度を前記目標環境の露点温度以下に調整」とは、露点温度を演算等によって求め、積極的に蒸発器の温度が目標環境の露点温度以下になる様に調整する場合だけでなく、蒸発器の表面温度を下げた結果、蒸発器の温度が目標環境の露点温度以下になる様な場合も含む。
本態様の環境形成装置では、蒸発器の温度を目標環境の露点温度以下に調整して空間内の湿度を低下させる。本工程では、蒸発器の温度が露点温度以下に調整されるので、空気中の水蒸気が蒸発器と接して凝縮し、空気中の水分が奪われて空間内の湿度が急激に低下してゆく。
空間内の湿度が前記目標環境の湿度又はその近傍に至ると、蒸発器の温度を上昇させる。本態様では、蒸発器温度上昇工程を実施して蒸発器の温度を露点温度を超える温度に上昇させる。
その結果、蒸発器の表面に付着していた凝縮水や霜が蒸発又は昇華し、空気中に水分を供給することとなり、空間の湿度を上昇させる要因となる。
ここで本態様の環境形成装置は、冷却装置とは別に除湿装置を有している。本態様の環境形成装置は、除湿装置によって水分の蒸発等による湿度上昇を抑制し、空間内の湿度を目標環境の湿度に維持する。
本態様の環境形成装置によると、空間内の湿度を過度に下げることなく、目標湿度に至らせることができるので、目標湿度に至るまでに要する時間が比較的短い。
【0017】
上記した各態様において、前記蒸発器温度上昇工程において、前記蒸発器の温度を目標環境の温度に基づいて算定された温度に上昇させることが望ましい。
【0018】
例えば蒸発器の温度を目標環境の温度に調整する。あるいは目標環境の温度に幾分の補正値を足し又は引いた温度に蒸発器の温度を調整する。
その結果、空間内の温度が目標環境の温度に収斂してゆく。
【0019】
上記した各態様において、前記蒸発器温度上昇工程
においては、前記下流側開度調整手段の開度を一定時間以上かけて狭めてゆくことが望ましい。
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、所定の空間の湿度を目標環境の湿度に調整可能な環境形成装置であって、冷却装置を備え、前記冷却装置は、圧縮機と、凝縮器と、膨張手段と、蒸発器と、下流側開度調整手段を有し、前記下流側開度調整手段は前記蒸発器の下流側にあり、前記冷却装置の内部に相変化する冷媒が充填されていて一連の冷凍サイクルを実現し、前記蒸発器の表面温度を低下させ、空気中の水蒸気を液化又は凍結させて除湿する機能を備え、且つ前記下流側開度調整手段の開度を調節して前記蒸発器内の冷媒の蒸発圧力を制御し、前記蒸発器の温度を調節可能な環境形成装置において、前記冷却装置以外に除湿装置を有し、前記空間内の湿度を低下させる際に、前記蒸発器の温度を氷点温度以下に調整して前記空間内の湿度を低下させ、前記空間内の湿度が前記目標環境の湿度又はその近傍に至った後に前記蒸発器の温度を上昇させる蒸発器温度上昇工程を実施して前記蒸発器の温度を氷点温度を超える温度に上昇させ、少なくとも前記蒸発器温度上昇工程において、前記除湿装置によって前記空間内の湿度上昇を抑制して前記空間内の湿度を前記目標環境の湿度に維持し、前記蒸発器温度上昇工程においては、前記下流側開度調整手段の開度を一定時間以上かけて狭めてゆき、前記蒸発器の温度が目標温度に到達したことが確認されると前記下流側開度調整手段を通常制御に移行することを特徴とする環境形成装置である。
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、所定の空間の湿度を目標環境の湿度に調整可能な環境形成装置であって、冷却装置を備え、前記冷却装置は、圧縮機と、凝縮器と、膨張手段と、蒸発器と、下流側開度調整手段を有し、前記下流側開度調整手段は前記蒸発器の下流側にあり、前記冷却装置の内部に相変化する冷媒が充填されていて一連の冷凍サイクルを実現し、前記蒸発器の表面温度を低下させ、空気中の水蒸気を液化又は凍結させて除湿する機能を備え、且つ前記下流側開度調整手段の開度を調節して前記蒸発器内の冷媒の蒸発圧力を制御し、前記蒸発器の温度を調節可能な環境形成装置において、前記冷却装置以外に除湿装置を有し、前記空間内の湿度を低下させる際に、前記蒸発器の温度を前記目標環境の露点温度以下に調整して前記空間内の湿度を低下させ、前記空間内の湿度が前記目標環境の湿度又はその近傍に至った後に前記蒸発器の温度を上昇させる蒸発器温度上昇工程を実施して前記蒸発器の温度を前記目標環境の露点温度を超える温度に上昇させ、少なくとも前記蒸発器温度上昇工程において、前記除湿装置によって前記空間内の湿度上昇を抑制して前記空間内の湿度を前記目標環境の湿度に維持し、前記蒸発器温度上昇工程においては、前記下流側開度調整手段の開度を一定時間以上かけて狭めてゆき、前記蒸発器の温度が目標温度に到達したことが確認されると前記下流側開度調整手段を通常制御に移行することを特徴とする環境形成装置である。
【0020】
例えば、下流側開度調整手段の開度を連続的にゆっくりと狭めてゆく。その結果、蒸発器内における冷媒の蒸発温度が序々に上昇してゆき、蒸発器の表面において水分がゆっくりと蒸発又は昇華してゆく。その結果、空気中に、水分がわずかずつ供給されてゆくこととなる。そのため除湿装置の容量が小さくても、空間内の湿度上昇を抑制することができる。
【0021】
上記した各態様において、前記除湿装置は、水蒸気吸着式の除湿装置であることが望ましい。
【0022】
環境形成装置の代表例として、試験室を有する環境試験装置があげられる。
【0023】
同様の課題を解決するための方法は、表面温度を調節可能な冷却器と、水蒸気吸着式の除湿装置によって、環境形成空間内の湿度を目標環境の湿度に調整する環境形成方法において、前記冷却器の表面温度を目標環境の露点温度以下であって且つ氷点温度以下に低下させて前記冷却器の表面に霜を生成させて前記環境形成空間内の湿度を
前記目標環境の湿度又はその近傍まで低下させ、その後、前記冷却器の表面温度を氷点温度よりも上であって且つ目標環境の露点を超える温度に上昇させて前記霜を蒸発又は昇華させ、前記霜の蒸発又は昇華による湿度上昇を前記除湿装置によって抑制することを特徴とする環境形成方法である。
【0024】
本発明の環境形成方法では、冷却器の表面温度を目標環境の露点温度以下であって且つ氷点温度以下に低下させて冷却器の表面に霜を生成させ、環境形成空間内の湿度を目標環境の湿度又はその近傍まで低下させる。
冷却器の表面温度は、目標環境の露点温度以下であって且つ氷点温度以下であるから、空気中の水蒸気が蒸発器と接して凝縮し、空気中の水分が奪われて空間内の湿度が急激に低下してゆく。また蒸発器の表面で凝縮水が凍結し、霜が付くこととなる。
空間内の湿度が前記目標環境の湿度又はその近傍に至ると、蒸発器の温度を上昇させる。本態様では、蒸発器温度上昇工程を実施して蒸発器の温度を氷点温度よりも上であって且つ目標環境の露点を超える温度に上昇させる。
その結果、蒸発器の表面に付着していた霜が蒸発又は昇華し、空気中に水分を供給することとなり、空間の湿度を上昇させる要因となるが、除湿装置によって水分の蒸発等による湿度上昇が抑制され、空間内の湿度を目標環境の湿度に維持する。
本態様の環境形成方法によると、空間内の湿度を過度に下げることなく、目標湿度に至らせることができるので、目標湿度に至るまでに要する時間が比較的短い。
【0025】
同様の課題を解決するためのもう一つの態様は、表面温度を調節可能な冷却器と、水蒸気吸着式の除湿装置を制御して目標環境の湿度に調整する湿度制御装置において、前記冷却器の表面温度を氷点温度以下に低下させて前記冷却器の表面に霜を生成させて湿度を
前記目標環境の湿度又はその近傍まで低下させ、その後、前記冷却器の表面温度を氷点温度を超える温度に上昇させて前記霜を蒸発又は昇華させ、湿度上昇を前記除湿装置によって抑制することを特徴とする湿度制御装置である。
【0026】
同様の課題を解決するためのさらにもう一つの態様は、表面温度を調節可能な冷却器と、水蒸気吸着式の除湿装置を制御して湿度を目標環境の湿度に調整する制御装置を動作させるためのコンピュータプログラムであって、前記冷却器の表面温度を氷点温度以下に低下させて前記冷却器の表面に霜を生成させて湿度を
前記目標環境の湿度又はその近傍まで低下させ、その後、前記冷却器の表面温度を氷点温度を超える温度に上昇させて前記霜を蒸発又は昇華させ、湿度上昇を前記除湿装置によって抑制する動作を前記制御装置に実行させることを特徴とするコンピュータプログラムである。
【0027】
同様の課題を解決するためのさらにもう一つの態様は、表面温度を調節可能な冷却器と、水蒸気吸着式の除湿装置を制御して湿度を目標環境の湿度に調整する制御装置を動作させるためのコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体であって、前記冷却器の表面温度を氷点温度以下に低下させて前記冷却器の表面に霜を生成させて湿度を
前記目標環境の湿度又はその近傍まで低下させ、その後、前記冷却器の表面温度を氷点温度を超える温度に上昇させて前記霜を蒸発又は昇華させ、湿度上昇を前記除湿装置によって抑制する動作を前記制御装置に実行させるコンピュータプログラムを記憶していることを特徴とする記憶媒体である。
【発明の効果】
【0028】
本発明の環境形成装置及び湿度制御装置は、空間内の湿度を早期に目標湿度に至らせることが可能である。本発明の環境形成装置は環境形成方法及びコンピュータプログラムについても同様であり、湿度調整に要する時間が比較的短い。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下さらに、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態の環境試験装置1は、特有の湿度制御を行うものである。湿度制御の概要は、次の通りである。
即ち本実施形態の環境試験装置1では、試験室6内の湿度を下げて設定環境の湿度に調整する際に、蒸発器(冷却器)25の表面温度を目標環境の露点温度以下であって且つ氷点温度以下に低下させ、蒸発器25の表面に霜を発生させる。
その間、試験室6内の湿度を監視し、目標環境の湿度に至るのを待つ。試験室6内の湿度が目標環境の湿度に到達すると、蒸発器25の表面温度を氷点温度よりも上であって且つ目標環境の露点を超える温度に上昇させ、蒸発器25の表面に付着した霜を蒸発又は昇華させる。そして霜の蒸発又は昇華による湿度上昇を除湿装置によって抑制する。
【0031】
以下、環境試験装置1の具体的構成及び機能について説明する。
本実施形態の環境試験装置1は、
図1に示すように、断熱壁2で覆われた断熱筐体3を有している。断熱筐体3の一面には扉5が設けられている。
断熱筐体3は、内部が仕切壁8によって試験室6と空調用通路7とに区分されている。仕切壁8の上下のそれぞれに、試験室6と空調用通路7とを連通する空気吹き出し口11と、空気吸い込み口12が設けられている。
【0032】
試験室6は、環境試験を行う際に被試験物となる機器や部品等を配置し、所望の試験環境が形成される空間である。試験室6には、内部空間の温度を検知する室内温度検知手段15と、当該空間の相対湿度を検知する室内湿度検知手段16が設けられている。
本実施形態では、室内温度検知手段15及び室内湿度検知手段16は、試験室6の上部側であって、空気吹き出し口11の近傍に配されている。
【0033】
空調用通路7は、所望の温度や湿度の空気を生成する部分であり、内部に送風機20と空調機器21が内蔵されている。空調機器21には冷却装置23の蒸発器25と加湿装置26と加熱ヒータ27が含まれる。本実施形態では蒸発器25が試験室6内を冷却する冷却器として機能する。
【0034】
冷却装置23は、気・液間で相変化する冷媒が流れる冷媒循環回路30を備えている。冷媒循環回路30は、相変化する冷媒を圧縮して凝縮し、これを蒸発させて冷却する一連のサイクル(冷凍サイクル)を実行するもので、圧縮機33、凝縮器35、膨張弁(膨張手段)36、蒸発器(冷却器)25、下流側絞り手段(下流側開度調整手段)37と、それらの機器を環状に接続する冷媒循環配管38を備えた冷凍機である。
膨張弁36並びに下流側絞り手段37は、それぞれ開度を調整可能なものである。下流側絞り手段37は、通常、膨張弁として使用されている弁を流用したものであり、構造的には電子式の膨張弁と同一である。下流側絞り手段37は、信号電圧に応じて開度を無段階に変えることができる。膨張弁36についても同様であり、信号電圧に応じて開度が無段階に変わるものが使用されている。
下流側絞り手段37は、蒸発器25の下流側にあり、開度を調節することができる下流側開度調整手段である。
【0035】
また、蒸発器25の上流側には、第一冷媒温度検知手段40が設けられている。第一冷媒温度検知手段40は、例えば、従来公知の熱電対や温度センサーである。第一冷媒温度検知手段40は、蒸発器25に流れ込む冷媒の温度を検知できる。
一方、蒸発器25の下流側には、第二冷媒温度検知手段41と、冷媒圧力検知手段42が設けられている。第二冷媒温度検知手段41は、第一冷媒温度検知手段40と同じく、従来公知の熱電対や温度センサーである。第二冷媒温度検知手段41は、蒸発器25を通過した後の冷媒ガスの温度を検知できる。第二冷媒温度検知手段41は、蒸発器25の蒸発器出口温度を検知できる。
冷媒圧力検知手段42は、蒸発器25内の冷媒の圧力を検知するものであり、冷媒の蒸発圧力を知るための手段である。
冷媒圧力検知手段42は、例えば、従来公知の圧力センサーである。
【0036】
次に、本実施形態で採用する冷却装置23の作動原理について説明する。
冷媒循環回路30の圧縮機33を起動すると、気相状態の冷媒が圧縮され、凝縮器35で冷却されて、液化される。そして、その液状の冷媒は、膨張弁36を経て蒸発器25に入り、気化される。そして蒸発器25が冷媒により温度降下され、空調用通路7を通過する空気を冷却することができる。蒸発器25に流れこむ冷媒の温度は、蒸発器25の上流側に設けられた第一冷媒温度検知手段40で検知される。
【0037】
公知の通り、膨張弁36の開度が大きい状態で冷却装置23を運転すると、大量の冷媒が冷媒循環回路30を循環し、大きな冷凍能力を発揮する。
また膨張弁36の開度を絞った状態で冷却装置23を運転すると、冷媒の蒸発圧力が低下し、蒸発器25の表面温度が低下する。その一方で、冷媒循環回路30を循環する冷媒の量が減少し、冷凍能力は低下する。本明細書では、この状態を「除湿運転」と称する。即ち「冷房運転」が実行されている状態で、膨張弁36を絞ると、膨張弁36を経て放出される冷媒は、極めて低温となる。その結果、蒸発器25の表面温度が露点以下まで低くなって、蒸発器25の表面で空気に含まれている水蒸気が凝縮し、結露する。また蒸発器25の表面温度が氷点温度以下である場合には、凝縮水が凍結して霜となり、蒸発器25の表面に付着する。
【0038】
本実施形態の環境試験装置1では、蒸発器25の下流側に下流側絞り手段37があり、下流側絞り手段37の開度を調整することで、蒸発器25の出口を絞ることが可能である。前記の「冷房運転」又は「除湿運転」において、蒸発器25に冷媒が注入され続けた状態で下流側絞り手段37の開度を絞ると、蒸発器25内における冷媒の蒸発圧力が上昇し、蒸発器25の表面の温度が上昇する。
【0039】
「冷房運転」又は「除湿運転」を実行中の蒸発器25の表面には、空気中の水蒸気が凝結又は凝固して、水分(凝縮水又は霜)が付着している。この蒸発器25の表面に付着した水分の一部又は全部が、蒸発器25の表面の温度が上昇することで蒸発又は昇華する。その結果、空調用通路7を通過する空気が加湿される。
換言すれば、蒸発器25が「略加湿装置」の役割を果たすものである。
本明細書では、蒸発器25の表面温度を上昇させて行う加湿運転を「冷凍機による加湿運転」と称する。
【0040】
本実施形態の環境試験装置1では、「除湿運転」を行うプログラムとして、蒸発器25の表面温度を「氷点温度以下であり、且つ目標環境の露点温度以下」となる様に膨張弁36及び下流側絞り手段37を制御する「湿度急降下プログラム」を有している。
【0041】
また本実施形態の環境試験装置1では、「冷凍機による加湿運転」を行うプログラムとして、蒸発器25の表面温度を「氷点温度を超え、且つ目標環境の露点を超える温度」となる様に、膨張弁36と下流側絞り手段37を制御する「湿度調節プログラム」を有している。なお湿度調節プログラムでは、下流側絞り手段37の開度は、時間をかけてゆっくりと絞られてゆく。
「湿度調節プログラム」は、蒸発器温度上昇工程を実行するプログラムであり、試験室6内の湿度が目標環境の湿度に至った後に蒸発器25の温度を上昇させる動作を実現するものである。
上記した各プログラムは、制御装置60(
図2参照)の図示しない記憶手段に記憶されている。
【0042】
本実施形態では、制御装置60が湿度制御装置として機能し、図示しない記憶手段は、所定の動作を実行させるコンピュータプログラムを記憶した記憶媒体である。
【0043】
また本実施形態の環境試験装置1は、冷却装置23とは別途の除湿装置50を備えている。除湿装置50は、例えば公知のデシカント式ロータリー型の除湿装置であり、水蒸気吸着式の除湿装置である。
除湿装置50は、公知の様にハウジング内の空間を仕切って、除湿処理用の空気を流す処理側流路51と再生用の外気を流す再生側流路52を有し、両流路に跨って吸湿剤を保持した除湿ロータ55を回転可能に設けたものである。
【0044】
本実施形態では、空調用通路7と平行に除湿流路65があり、当該除湿流路65にダンパ62を介して除湿装置50の処理側流路51が接続されている。
また再生側流路52には、図示しないヒータと送風機61が接続されている。
除湿装置50を使用して除湿を行う場合には、ダンパ62を開いて空調用通路7を通過する空気を分流し、分流空気を除湿装置50に通過させた後、空調用通路7に戻す。この際、除湿ロータ55の吸湿剤に水蒸気が吸着される。
またこのとき、除湿ロータ55を回転しつつ、再生側流路52に熱風を供給し、除湿ロータ55の吸湿剤から水蒸気を除いて吸湿剤を再生させる。
【0045】
本実施形態の環境試験装置1は、空調用通路7内の空調機器21による温度・湿度の調整と、除湿装置50を使用した湿度調整を行うことができる。
即ち断熱筐体3内の空気は、送風機20によって仕切壁8の下部側の空気吸い込み口12から空調用通路7側に吸入され、空調用通路7を鉛直上方に向けて通過して、仕切壁8の上部側に設けられた空気吹き出し口11から試験室6側に吐出される。
仮に蒸発器25の表面温度が露点温度以下であれば、空気中の水蒸気が蒸発器25と接して凝縮し、除湿される。
【0046】
より詳細に説明すると、送風機20が起動されると、当該空気吹き出し口11から空気が吐出され、試験室6側に送風される。これにより、試験室6内の壁面に沿うように空気の流れが形成される。そして、仕切壁8の下部側の空気吸い込み口12に到達した空気が、再び空調用通路7内に導入される。空調用通路7には、前記したように、蒸発器25、加湿装置26、加熱ヒータ27が配置されている。そのため空調用通路7に導入された空気は、空調機器21によって温度と湿度が調整されて試験室6に供給され、試験室6内の雰囲気が、所望の温度や湿度となるようにこれらの機器が制御される。
さらに加えて、送風の一部を分岐して処理側流路51に流し、除湿装置50を使用して試験室6内を除湿することもできる。
【0047】
即ち環境試験装置1は、
図2の様な制御装置60を有し、室内温度検知手段15と室内湿度検知手段16によって、試験室6内の現状の温度と現状の相対湿度が監視され、所定の設定条件に基づいて、空調用通路7内の空調機器21と除湿装置50が制御される。
【0048】
次に、本実施形態の環境試験装置1に備えられた制御装置60と、他の機器との関係について説明する。
【0049】
本実施形態で採用する制御装置60は、
図2に示すように、マイクロコンピュータやマイクロコントローラ、PLC(プログラマブル・ロジック・コントローラ)等によって構成される。制御装置60は、入力されるプログラムに基づいて、他の機器を制御可能な装置である。制御装置60には、入力機器として、室内温度検知手段15、室内湿度検知手段16、
第一、第二冷媒温度検知手段40、41、冷媒圧力検知手段42が接続されている。入力機器の各々が検知する信号は、制御装置60に入力される。
一方、制御装置60には、出力機器として、圧縮機33、膨張弁36、下流側絞り手段37、加熱ヒータ27、加湿装置26及び除湿装置50等が接続されている。そのため、制御装置60は、前記機器を制御することで、試験室6内の温度と湿度を制御することができる。
具体的には、室内温度検知手段15と室内湿度検知手段16の検出値をフィードバックして空調機器21や除湿装置50を駆動し、試験室6内の温度及び湿度を目標環境のそれになるように制御する。
【0050】
また本実施形態で採用する制御装置60は、
第一、第二冷媒温度検知手段40、41及び冷媒圧力検知手段42からの検知信号によって、蒸発器25の表面温度を演算する機能を備えている。即ち蒸発器25に導入される冷媒の温度を
第一冷媒温度検知手段40で検知し、同時に蒸発器25内における冷媒の蒸発圧力を冷媒圧力検知手段42で検知し、両者から蒸発器25の表面温度を演算する。また蒸発器25の出口側における冷媒の温度(第二冷媒温度検知手段41の検知温度)によって演算を補正する。
あるいは蒸発器25に導入される冷媒の温度と、蒸発器25内における冷媒の蒸発圧力と、蒸発器25の表面温度の関係を予め実験によって求め、この実験データに照らして蒸発器25の表面温度を演算してもよい。
また単に、蒸発器25の導入側における冷媒の温度と出口側の冷媒の温度から蒸発器25の表面温度を求めてもよい。
他の方策として、膨張弁36及び下流側絞り手段37の開度と、蒸発器25の表面温度との関係を予め実験で求め、膨張弁36及び下流側絞り手段37の開度から蒸発器25の表面温度を演算等で求めてもよい。
またこの際に、圧縮機33の回転数、冷媒圧力検知手段42の検知圧や雰囲気温度を参酌することが推奨される。
演算によることなく、センサー等によって蒸発器25の表面温度を直接検出してもよい。
【0051】
いずれにしても、本実施形態の環境試験装置1は、
第一、第二冷媒温度検知手段40、41、冷媒圧力検知手段42等の検出値から、蒸発器25内の蒸発温度を演算又は検出し、蒸発温度(蒸発器25の表面温度)が設定値となる様に制御することができる。
【0052】
また、制御装置60には、前記した「湿度急降下プログラム」と、「湿度調節プログラム」が格納されている。
「湿度急降下プログラム」が実行されると、膨張弁36の開度が絞られ。下流側絞り手段37の開度が広げられる。
その結果、蒸発器25に導入される冷媒量が減少し、且つ下流側絞り手段37による背圧が減少して冷媒の蒸発圧力が低下し、蒸発器22の表面温度が低下する。
「湿度急降下プログラム」では、前記した様に、蒸発器25の表面温度が「氷点温度以下であり、且つ目標環境の露点温度以下」となる様に膨張弁36及び下流側絞り手段37が制御される。
【0053】
「湿度調節プログラム」が実行されると、蒸発器温度上昇工程が実施さ
れる。即ち「湿度調節プログラム」が実行されると、膨張弁36の開度が広げられ、下流側絞り手段37の開度がゆっくりと絞られてゆく。
その結果、蒸発器25に導入される冷媒量が増加し、且つ下流側絞り手段37による背圧が少しずつ上昇して冷媒の蒸発圧力が序々に増加し、蒸発器25の表面温度がゆっくりと時間をかけて上昇してゆく。
「湿度調節プログラム」では、蒸発器25の表面温度が、最終的に「氷点温度を超え、且つ目標環境の露点を超える温度」となる様に、膨張弁36と下流側絞り手段37が制御される。なお本実施形態では、「湿度調節プログラム」では、蒸発器25の表面温度が、最終的に試験室6の設定温度となる様に制御される。
【0054】
次に、本実施形態の環境試験装置1を用いた環境制御方法について
図3のフローチャート及び
図4、
図5のタイムチャートを参照しつつ説明する。
環境試験装置1では、制御装置60によって、試験室6内を目標の温度と相対湿度に自動制御する。
以下、タイムチャートの「
目標湿度」欄の様に、最初に試験室6内の目標環境が低温高湿環境となる様に制御し、続いて目標環境を低温低湿運転に切り換える場合を例として、環境試験装置1の動作を説明する。
以下の説明は、湿度制御を中心に行うが、もちろん温度も目標環境の温度に調節される。
【0055】
設例に従うと、
図3のステップ1で、低温高湿運転が開始される。ステップ2では、空調機器21及び除湿装置50の自動制御が開始される。
即ち本実施形態の環境試験装置1では、前記した様に空調機器21及び除湿装置50は、制御装置60によって制御され、空調機器21等は、試験室6が設定の湿度となる様に自動制御される。そのため試験室6内の湿度が目標湿度よりも低い場合には加湿装置26が自動的に駆動し、試験室6内を加湿する。また試験室6内の湿度が目標湿度よりも高い場合には冷却装置23又は除湿装置50によって除湿される。
なお空調機器21及び除湿装置50の自動制御は、途切れることなく常時実行されており、試験室6内の湿度が目標湿度よりも下がると加湿装置26が自動的に駆動して試験室6内を加湿し、湿度が目標湿度よりも上がると冷却装置23又は除湿装置50によって除湿
する。
【0056】
低温高湿運転では、設定湿度が例えば80パーセント(相対湿度)、目標温度
が例えば摂氏10度とされる。
低温高湿運転では、膨張弁36は開度が広く、
図5の「下流側絞り手段開度」欄の様に下流側絞り手段37は中程度の開度に調節
されて冷却装置23が運転される。
その結果、蒸発器25の表面温度(冷媒の蒸発温度)は、
図4の「蒸発温度」欄に示す様に比較的高い温度となる。
低温高湿運転では、目標湿度が高いため、
図4の「除湿装置駆動量」欄の様に除湿装置50は停止状態となっている。
試験室6内の水蒸気量は、
図5の「空気中の水蒸気量」欄の様に多い。
低温高湿運転では、
図4の「試験室内湿度」欄の様に、試験室6内は高湿度状態
に維持
されている。
【0057】
設例に従うと、
図3のステップ3で目標環境の切り替わりを待ち、目標環境が低温低湿条件に切り替わるとステップ4に移行し、それ以降は、低温低湿運転が実行される。
低温低湿運転が開始されると、試験室6の目標湿度が10パーセントに変更される。
そして膨張弁36による温度制御を行いながらステップ5で湿度急降下プログラムが起動して蒸発器温度降下工程が実行される。具体的には、蒸発器25の表面温度が氷点温度以下であり、且つ目標環境の露点温度以下となる様に、冷却装置23が制御される。
蒸発器温度降下工程では、ステップ6で下流側絞り手段37が広げられる。下流側絞り手段37の開度は、
図5の「下流側絞り手段開度」欄に示す通りである。
【0058】
その結果、蒸発器25の表面温度(冷媒の蒸発温度)は、
図4の「蒸発温度」欄に示す通り、急激に低下する。蒸発器25の表面では
図5の「凝縮量・蒸発量(単位時間)」欄の様に水蒸気が凝縮する。凝縮水は直ちに凍結し、
図5の「蒸発器周りの水量」欄の様に蒸発器25の表面に積層されてゆく。
試験室6内の環境に注目すると、
図4の「試験室内湿度」欄の様に相対湿度は急速に低下してゆく。
試験室6内の水蒸気量は、
図5の「空気中の水蒸気量」欄の様に減少してゆく。
低温低湿運転では、目標湿度が低いため、
図4の「除湿装置駆動量」欄の様に除湿装置50が駆動される。
【0059】
制御装置60は、常時、試験室6内の湿度を監視しており、ステップ7で試験室6内の湿度が、目標湿度に到達したか否かを判断する。
図4の「試験室内湿度」欄の様に、試験室6内の湿度が、目標湿度に到達すると、ステップ8に移行し、湿度急降下プログラムが終了し、代わって湿度調節プログラムが起動して蒸発器温度上昇工程が実行される。具体的には、蒸発器25の表面温度が氷点温度を超え、且つ目標環境の露点温度を超える様に、冷却装置23が制御される。なお本実施形態では、蒸発器25の表面温度が目標環境の温度となる様に制御される。
【0060】
湿度急降下プログラムによる蒸発器温度降下工程から、湿度調節プログラムによる蒸発器温度上昇工程に切り替わる際に、試験室6内の湿度が目標湿度よりも下側にぶれる場合がある。
この際には
図4の「加湿装置駆動量」欄の様に加湿装置26が自動的に駆動し、
試験室6内の湿度のアンダーシュートが極力抑制される。
除湿装置50の運転量は、
図4の「除湿装置駆動量」欄の様に次第に減少してゆく。
【0061】
蒸発器温度上昇工程では、ステップ9で下流側絞り手段37がゆっくりと絞られる。下流側絞り手段37の開度の変化は、
図5の「下流側絞り手段開度」欄に示す通りである。
下流側絞り手段37の開度が絞られることによって、
図4の「蒸発温度」欄の様に蒸発器25の表面温度はゆっくりと上昇してゆく。
蒸発器25の表面温度が氷点温度を超えると、霜の融解が始まる。蒸発器25の表面温度が露点を超えると、
図5の「凝縮量・蒸発量(単位時間)」欄の様に凝縮水や霜がゆっくりと蒸発又は昇華する。
その結果、
図5の「蒸発器周りの水量」欄の様に蒸発器25の表面に積層された水分が失われる。
凝縮水や霜の蒸発又は昇華は、試験室6内の湿度を上昇させる要因となる。
【0062】
ただし、凝縮水や霜の蒸発や昇華は、緩やかに行われるので、蒸発器25の表面から発生する単位時間当たりの水蒸気量は、比較的少ない。ここで実施形態の環境試験装置1は、除湿装置50を有している。
本実施形態の環境試験装置では、蒸発器25の表面から空気中に拡散される水蒸気が、除湿装置50で捕捉される。そのため蒸発器25の表面から水蒸気が発生するにもかかわらず、試験室6内の湿度は
図4の「試験室内湿度」欄の様にそれほど変動しない。
【0063】
ステップ10で、蒸発器25の表面温度が目標温度に到達したことが確認されると、ステップ11に移行して下流側絞り手段37が通常制御に移行し、以後は通常運転が行われる(ステップ12)。
前記したステップ8で、蒸発器25の表面温度が氷点温度を超える温度に設定され、それ以降は蒸発器25の表面温度が氷点温度を超える温度に維持されるので、通常運転に移行した後は蒸発器25に霜が発生しない。そのため本実施形態の環境試験装置1によると、フロストフリー運転を行うことができる。
【0064】
本実施形態によると、湿度を低下させる際に、一時的に蒸発器25に霜が生じるが、その後に蒸発器25の温度を上昇させて霜をとかすので、フロストフリー運転を行うことができる。
本実施形態の環境
試験装置1は、加湿装置26の消費電力が抑制されるので省エネルギーに寄与する。
【0065】
以上説明した実施形態では、蒸発器温度降下工程における蒸発器25の表面温度を氷点温度以下に設定した。この制御方法によると、試験室6内の湿度を急激に低下させることができるので推奨される。
しかしながら、目標環境の温度が比較的高い場合には、必ずしも蒸発器25の表面温度を氷点温度以下に下げなくても試験室6内の湿度を急激に低下させることができる。従って、蒸発器温度降下工程において蒸発器25の表面温度を氷点温度以下に調節することは必須ではなく、目標環境の露点温度以下であればよい。
【0066】
目標環境の露点温度は、演算等によって把握することが望ましいが、蒸発器25の表面温度を下げた結果、蒸発器25の表面温度が目標環境の露点温度以下となる様な場合であってもよい。
例えば蒸発器25の目標温度を氷点下の温度とした結果、当該目標温度が意図せず目標環境の露点温度以下となっていてもよい。
【0067】
また上記した実施形態では、蒸発器温度上昇工程における蒸発器25の表面温度を氷点温度を超える温度に設定した。
この制御方法によると、蒸発器25に霜付きが起こらず、フロストフリー運転を行うことができる点で推奨される。
しかしながら、フロストフリー運転を行うことを目的としないのであれば、必ずしも蒸発器25の表面温度を氷点温度を超える温度に上げなくてよい。
蒸発器温度上昇工程において蒸発器25の表面温度を氷点温度を超える温度に調節することは必須ではなく、目標環境の露点温度を超えていればよい。
【0068】
以上説明した実施形態では、蒸発器温度上昇工程における蒸発器25の表面温度を目標環境の温度となる様に設定した。
蒸発器温度上昇工程における蒸発器25の表面温度は、必ずしも目標環境の温度に一致させる必要は無いが、目標環境の温度に関連する値であることが望ましい。具体的には目標環境の温度に基づいて算定された温度に設定することが望ましい。例えば、目標環境の温度に係数を掛けたり、一定の数値を足し又は引いた数値とすることが望ましい。
【0069】
以上説明した実施形態では、試験室6内の湿度を監視して試験室6内の湿度が目標湿度に到達すると、蒸発器温度降下工程を終了して蒸発器温度上昇工程を開始した。蒸発器温度降下工程から蒸発器温度上昇工程に切り替えるタイミングは、厳密に試験室6内の湿度が目標湿度に達した際である必要なく、目標湿度の近傍に至った後であってもよい。目標湿度の近傍に至った後であれば、試験室6内の湿度が目標湿度を下回った後であってもよい。
例えば、湿度の降下速度が速い場合、目標湿度を境として蒸発器温度降下工程から蒸発器温度上昇工程に切り替えると、反応の遅れから試験室6内の湿度がアンダーシュートして目標湿度を下回る場合がある。
そこで反応の遅れに起因するアンダーシュートを見越して、試験室6内の湿度が目標湿度に至る直前で蒸発器温度降下工程から蒸発器温度上昇工程に切り替えてもよい。逆に、目標湿度を幾分下回ってから工程を切り替えてもよい。
【0070】
蒸発器温度降下工程から蒸発器温度上昇工程に切り替えるタイミングは、試験室6内の湿度が目標湿度に至った後、又はその近傍に至った後である。近傍とは、例えば目標湿度を中心として、その相対湿度の値の前後5パーセント程度である。目標湿度が相対湿度10パーセントであれば、その値の5パーセントは、相対湿度0.5パーセントであり、相対湿度10.5パーセントから相対湿度9.5パーセントに至ると、これを契機として蒸発器温度降下工程から蒸発器温度上昇工程に切り替える。
【0071】
除湿装置50を常時自動制御したが、蒸発器温度上昇工程が開始された後に除湿装置50を運転してもよい。
【0072】
以上説明した実施形態では、蒸発器25内の冷媒の蒸発温度を蒸発器(冷却器)25の温度とみなし、冷媒の蒸発温度が目標環境の露点温度以下であって且つ氷点温度以下に低下したことをもって、蒸発器(冷却器)25の表面温度が目標環境の露点温度以下であって且つ氷点温度以下に低下したと見なして蒸発器温度降下工程から蒸発器温度上昇工程に切り替えた。本発明はこの構成に限定されるものではなく、蒸発器25の表面温度を直接検知し、この検出値に基づいて制御方法を切り替えてもよい。
【0073】
以上説明した実施形態では、制御装置60自体に、冷却器(冷却装置23)及び除湿装置50を制御するコンピュータプログラムが格納されている。しかしながら、必ずしも制御装置60に冷却器(冷却装置23)等を制御するコンピュータプログラムが格納されている必要はない。
例えばインターネット等の通信手段を利用して、外部のコンピュータから制御装置60を遠隔操作してもよい。この場合には、外部のコンピュータに冷却器や除湿装置60を動作させるコンピュータプログラムが格納されている。
【0074】
もちろんインターネット等の通信手段を利用して、外部からコンピュータプログラムを制御装置60内に取り込んで使用してもよい。
コンピュータプログラムを記憶した記憶媒体の例としては、ハードディスクの他、CD−ROM、DVD等がある。
【0075】
以上説明した実施形態では、環境試験装置を例にあげて本発明を説明したが、本発明は、環境試験装置以外の環境形成装置にも適用すること
ができる。