(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
直交性の第一及び第二の官能基を含む基であって、該第一の直交性官能基は該第二の直交性官能基とは異なる官能基である基を各アームの末端に有する第一のマルチアームポリマーと、第二のマルチアームポリマーと結合した切断可能な架橋剤化合物であって、前記第二の直交性官能基のみと反応する官能基を有する架橋剤化合物とを反応させて、架橋されたポリマーを得ることを含む、生分解性ヒドロゲルを調製する方法。
(a)直交性の第一及び第二の官能基を含む基であって、該第一の直交性官能基は該第二の直交性官能基とは異なる官能基である基を各アームの末端に有する第一のマルチアームポリマーを提供すること、及び
(b)前記(a)の第一のマルチアームポリマーを第二のマルチアームポリマーと結合した架橋剤化合物であって、前記第二の直交性官能基のみと反応する官能基を有する架橋剤化合物と反応させて、架橋されたポリマーを得ること
により、調製された生分解性ヒドロゲル。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のヒドロゲルは、リンカーによって架橋されたポリマーであり、このリンカーは、「脱離」によってポリマーを分離する。「脱離」は、プロトンHと脱離基Xが分子から除去されて、アルケンを形成する反応機序である。本発明の一実施形態において、脱離は、以下に示す1,2−脱離である。
【0024】
本発明の他の実施形態では、脱離は、以下に示す1,4−脱離である。
【0026】
脱離機序では、図示したプロトンHが塩基によって除去される。水性媒体中では、塩基は典型的に水酸化物イオンであり、従って脱離速度は、媒体のpHによって決定される。生理的条件下では、ヒドロゲルを取り囲み、ヒドロゲルに浸透する流体のpHが、脱離速度を制御する主因子になると思われる。従って、X及びYが、生理環境下に置かれたポリマーマトリックス内の鎖を表す場合、pH依存性の脱離により、XとYの間の結合が切断され、その後、酵素作用を必要としない過程により、ポリマーマトリックスが生分解される。
【0027】
「生理的条件下で脱離によって切断され得る部分」とは、基H−C−(CH=CH)
m−C−X(式中、mは0又は1であり、Xは脱離基である)を含む構造を意味し、ここでHX要素を除去する前記脱離反応は、反応の半減期が、生理的pH及び温度条件下で1〜10,000時間になるような速度で生じ得る。好ましくは、反応の半減期は、生理的pH及び温度条件下で1〜5,000時間、より好ましくは1〜1,000時間である。生理的pH及び温度条件とは、pH7〜8及び温度30〜40℃を意味する。
【0028】
本願で1〜1,000時間など、本明細書において範囲が記載されている場合、その中間に含まれる区間の数値は、具体的に明記されているのと同様に開示されているとみなすべきである。これにより、冗長な数値の一覧は必要でなくなるが、出願人らは、外側境界の間のいかなる任意の範囲も含まれていることを明らかに企図する。例えば、1〜1,000の範囲には、1〜500及び2〜10も含まれる。
【0029】
ヒドロゲルとは、多量の水を含む、主に親水性の三次元ポリマーネットワークを意味し、天然又は合成ホモポリマー、コポリマー又はオリゴマーの化学的又は物理的架橋によって形成される。ヒドロゲルは、架橋ポリエチレングリコール(ポリエチレンオキシドと同義である)、ポリプロピレングリコール、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリメタクリラート、ポリホスファゼン、ポリラクチド、ポリアクリルアミド、ポリグリコラート、ポリエチレンイミン、アガロース、デキストラン、ゼラチン、コラーゲン、ポリリシン、キトサン、アルギナート、ヒアルロナン、ペクチン、カラゲニンによって形成され得る。ポリマーは、以下に示す通り、多分岐ポリマーであってよい。
【0030】
また、ヒドロゲルは、環境感受性であってよく、例えば、低温では液体であるが37℃ではゲル化するもの、例えば、ポリ(N−イソプロピルアクリルアミド)から形成されたヒドロゲルであってよい。
【0031】
メソ多孔性ヒドロゲルとは、直径約1nm〜約100nmの細孔を有するヒドロゲルを意味する。メソ多孔性ヒドロゲルの細孔は、タンパク質などの生体分子を自由に拡散させることができる程度に十分な大きさを有する。マクロ多孔性ヒドロゲルとは、直径約100nm超の細孔を有するヒドロゲルを意味する。微孔性ヒドロゲルとは、直径約1nm未満の細孔を有するヒドロゲルを意味する。
【0032】
反応性ポリマー及び反応性オリゴマーとは、他の官能基に対して反応性がある官能基、最も好ましくは、穏やかな条件下で、ペプチド、タンパク質及び他の生体分子の安定性要件と適合性がある官能基を含むポリマー又はオリゴマーを意味する。反応性ポリマーにおける適切な官能基としては、マレイミド、チオールもしくは保護チオール、アルコール、アクリラート、アクリルアミド、アミンもしくは保護アミン、カルボン酸もしくは保護カルボン酸、アジド、シクロアルキンを含むアルキン、シクロペンタジエン及びフランを含む1,3−ジエン、アルファ−ハロカルボニル、並びにN−ヒドロキシスクシンイミジル、N−ヒドロキシスルホスクシンイミジル、又はニトロフェニルエステルもしくはカルボナートが挙げられる。
【0033】
反応性ポリマーと結合することができる官能基とは、反応性ポリマーの対応する官能基と反応して、ポリマーと共有結合を形成する官能基を意味する。反応性ポリマーと結合することができる官能基に適するものとしては、マレイミド、チオールもしくは保護チオール、アクリラート、アクリルアミド、アミンもしくは保護アミン、カルボン酸もしくは保護カルボン酸、アジド、シクロアルキンを含むアルキン、シクロペンタジエン及びフランを含む1,3−ジエン、アルファ−ハロカルボニル、並びにN−ヒドロキシスクシンイミジル、N−ヒドロキシスルホスクシンイミジル、又はニトロフェニルエステルもしくはカルボナートが挙げられる。
【0034】
生分解性ヒドロゲルとは、生理的pH及び温度条件下で成分の化学結合が切断されることによって、その構造的完全性を喪失するヒドロゲルを意味する。生分解は、酵素的に触媒され、又は、pHや温度などの環境因子のみに依存する。生分解により、可溶性となるのに十分に小さく、従って通常の生理的経路を介して全身から排出される、ポリマーネットワークの断片が形成される。
【0035】
架橋試薬とは、1つ以上の反応性ポリマー又はオリゴマーと共有結合を形成することができる少なくとも2つの官能基を含む化合物を意味する。典型的には、反応性ポリマー又はオリゴマーは可溶性であり、架橋によって、不溶性の三次元ネットワーク又はゲルが形成される。架橋試薬の2つの官能基は、同一であってよく(ホモ二官能性)、又は異なっていてもよい(ヘテロ二官能性)。ヘテロ二官能性架橋試薬の官能基は、一の官能基が、反応性ポリマー又はオリゴマーの同系基と反応することができ、第2の官能基が、同じ又は異なる反応性ポリマー又はオリゴマーの同系基と反応することができるように選択される。二官能性架橋試薬の2つの官能基は、それら同士が反応しないように、すなわち同系とならないように選択される。
【0036】
官能基の同系反応対の例としては、以下が挙げられる:
アジド + アセチレン、シクロオクチン、マレイミド
チオール + マレイミド、アクリラート、アクリルアミド、ビニルスルホン、
ビニルスルホンアミド、ハロカルボニル
アミン + カルボン酸、活性化カルボン酸
マレイミド + 1,3−ジエン、シクロペンタジエン、フラン
【0037】
従って、一例として、アジドとアミン基を有するヘテロ二官能性架橋試薬を調製することができるが、アジドとシクロオクチン基を有するヘテロ二官能性架橋試薬を調製することはできない。
【0038】
「置換されている」とは、1つ以上の水素原子の代わりに1つ以上の置換基を含むアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール又はヘテロアリール基を意味する。置換基は、一般に、F、Cl、Br及びIを含むハロゲン;直鎖、分枝及び環式を含む低級アルキル;フルオロアルキル、クロロアルキル、ブロモアルキル及びヨードアルキルを含む低級ハロアルキル;OH;直鎖、分枝及び環式を含む低級アルコキシ;SH;直鎖、分枝及び環式を含む低級アルキルチオ;アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アルキルシリル、アルコキシシリル及びアリールシリルを含むシリル;ニトロ;シアノ;カルボニル;カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド;アミノカルボニル;アミノアシル;カルバマート;尿素;チオカルバマート;チオ尿素;ケトン;スルホン;スルホンアミド;フェニル、ナフチル及びアントラセニルを含むアリール;ピロール、イミダゾール、フラン、チオフェン、オキサゾール、チアゾール、イソオキサゾール、イソチアゾール、チアジアゾール、トリアゾール、オキサジアゾール及びテトラゾールを含む5員ヘテロアリール、ピリジン、ピリミジン、ピラジンを含む6員ヘテロアリール、並びにベンゾフラン、ベンゾチオフェン、ベンゾオキサゾール、ベンゾイミダゾール、インドール、ベンゾチアゾール、ベンゾイソオキサゾール及びベンゾイソチアゾールを含む縮合ヘテロアリールを含むヘテロアリールから選択することができる。
【0039】
R
1及びR
2の特性は、電子供与性又は電子求引性の置換基を任意選択により付加することによって調節することができる。用語「電子供与基」とは、R
1R
2CHの酸性度を低減させる置換基を意味する。電子供与基は、典型的には、負のハメットσ又はタフトσ
*定数に関連し、物理有機化学の技術分野で周知である(ハメット定数は、アリール/ヘテロアリール置換基に関するものであり、タフト定数は、非芳香族部分上の置換基に関するものである)。適切な電子供与置換基の例としては、これに限定されるものではないが、低級アルキル、低級アルコキシ、低級アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ及びシリルが挙げられる。同様に、「電子求引基」とは、R
1R
2CH基の酸性度を増大させる置換基を意味する。電子求引基は、典型的には、正のハメットσ又はタフトσ
*定数に関連し、物理有機化学分野で周知である。適切な電子求引置換基の例としては、これに限定されるものではないが、ハロゲン、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、ニトロ、シアノ、C(=O)−R
X(R
Xは、H、低級アルキル、低級アルコキシ又はアミノである)、又はS(O)
mR
Y(m=1〜2であり、R
Yは、低級アルキル、アリール又はヘテロアリールである)が挙げられる。当技術分野で周知の通り、置換基の電子的な影響は、置換基の位置に応じて決まり得る。例えば、アリール環のオルト位又はパラ位上のアルコキシ置換基は電子供与性であり、負のハメットσ定数を特徴とするが、アリール環のメタ位上のアルコキシ置換基は電子求引性であり、正のハメットσ定数を特徴とする。ハメットσ及びタフトσ
*定数値の表を、以下に示す。
【0041】
「アルキル」、「アルケニル」及び「アルキニル」は、1〜8個の炭素、1〜6個の炭素、又は1〜4個の炭素の直鎖、分枝又は環式炭化水素基が含まれる。アルキルは、飽和炭化水素であり、アルケニルは、1つ以上の炭素−炭素二重結合を含み、アルキニルは、1つ以上の炭素−炭素三重結合を含む。別段特定されない限り、これらは、1〜6個のCを含有する。
【0042】
「アリール」は、6〜18個の炭素、好ましくは6〜10個の炭素の芳香族炭化水素基を含み、例えば、フェニル、ナフチル及びアントラセニルなどの基を含む。「ヘテロアリール」は、3〜15個の炭素を含み、少なくとも1つのN、O又はS原子を含有する芳香環、好ましくは3〜7個の炭素を含み、少なくとも1つのN、O又はS原子を含有する芳香環を含み、例えば、ピロリル、ピリジル、ピリミジニル、イミダゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、キノリル、インドリル、インデニル及びそれらの類似物などの基を含む。
【0043】
「ハロゲン」には、フルオロ、クロロ、ブロモ及びヨードが含まれる。
【0046】
用語「タンパク質」及び「ペプチド」は、鎖長に関係なく交換可能に使用され、これらの用語は、CH
2NH
2結合などのアミド結合以外の結合を含む擬似ペプチド、及びペプチド模倣物をさらに含む。
【0047】
用語「核酸」及び「オリゴヌクレオチド」も、鎖長に関係なく交換可能に使用される。核酸又はオリゴヌクレオチドは、一本鎖もしくは二本鎖であってよく、又は、DNA、RNA、もしくは、その修飾形態で、ホスホジエステル、ホスホロアミド酸などの変形結合を有するもの等であってもよい。本発明の薬物として有用なタンパク質及び核酸の両方に関して、これらの用語は、タンパク質の場合には天然に存在しない側鎖を有するもの、及び、核酸の場合には天然に存在しない塩基を有するものも含む。
【0048】
薬物の説明における低分子とは、当技術分野で十分に理解されている用語であり、合成され又は自然から単離され、一般にはタンパク質又は核酸と類似しない、タンパク質及び核酸以外の化合物を含む。低分子は、典型的には分子量が1,000未満であるが、特に認識されているカットオフ値は存在しない。低分子という用語は、薬理及び医薬分野で十分に理解されている。
【0049】
本発明は、生理的条件下で脱離によって切断され得る部分を含み、かつ、反応性ポリマーと共有結合を形成することができる反応基を含む架橋試薬を提供する。一実施形態において、架橋試薬は、式(1)を有する:
【0051】
ここで、mは、0又は1であり;
Xは、生理的条件下でリンカーから脱離可能な反応性ポリマーに結合することができる官能基、及び、反応性ポリマーと結合する第2の反応基Z
2とを含み;
ここで、R
1、R
2及びR
5の少なくとも1つは、ポリマーと結合することができる第1の官能基Z
1を含み、
少なくともR
1及びR
2の一方又は両方は、独立して、CN;NO
2;
置換されていてもよいアリール;
置換されていてもよいヘテロアリール;
置換されていてもよいアルケニル;
置換されていてもよいアルキニル;
COR
3又はSOR
3又はSO
2R
3
ここで、R
3は、H、又は置換されていてもよいアルキル;
置換されていてもよい、アリールもしくはアリールアルキル;
置換されていてもよい、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル;又は
OR
9もしくはNR
92であり、ここで、各R
9は、独立して、Hもしくは置換されていてもよいアルキルを示すか、又は、両方のR
9基は、それらが結合するする窒素原子と一緒になって複素環を形成している;
SR
4であり、
ここで、R
4は、置換されていてもよいアルキル;
置換されていてもよい、アリールもしくはアリールアルキル、又は
置換されていてもよいヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルであり、
又は、R
1及びR
2は、結合して3〜8員環を形成していてもよく、
又は、R
1及びR
2の一方のみが、Hであってよく、又は置換されていてもよい、アルキル、アリールアルキルもしくはヘテロアリールアルキルであってよく、
各R
5は、独立して、Hであるか、又は、置換されていてもよい、アルキル、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、(OCH
2CH
2)
pO−アルキル(p=1〜1000)、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルである。
【0052】
式(1)の架橋試薬は、生理的条件下で脱離によって切断され得る部分を含む。従って、式(1)の架橋試薬を使用して形成されたヒドロゲルは、生理的条件下で生分解可能である。脱離機序は、媒体のpH及び温度に依存する。架橋試薬は、低pH及び低温では脱離による切断に対して安定であるが、生理的pH値(約7.4)及び生理的温度(約37℃)では、主にR
1及びR
2基、及び程度は低いがR
5基によって制御される速度で脱離が起こる。
【0053】
脱離反応速度は、R
1、R
2及びR
5基の構造に基づいて予測することができる。R
1及びR
2が電子求引性基である場合、脱離反応を促進するが、R
1及びR
2が電子供与基である場合、脱離反応を遅延させ、それにより、脱離半減期が数分から数年であるリンカーを提供するように、得られる速度を変化させることができる。アルキルであるR
5基は、アリールであるR
5基と比べて脱離反応がわずかに緩慢である。従って、R
1及びR
2基を変更することによって、脱離が起きる速度を制御することが可能となり、結果的にはヒドロゲルの生分解速度を、広範囲にわたって制御することができる。従って、式(1)の架橋試薬を使用して形成されたヒドロゲルは、例えば、薬物送達のための担体もしくはデポーとして、又は組織再生のための一時的足場として、一時的なゲルマトリックスが必要とされ用途において使用することが期待される。
【0054】
Xの実施形態
Xは、反応性ポリマーに結合することができる官能基を含み、かつ、生理的条件下で脱離可能である。典型的には、得られる酸HXは、pK
aが10以下、好ましくは8以下である。従って、適切なX基の例としては、カルボナート、ハロゲン化カルボニル、カルバマート、チオエーテル、エステル及び置換されていてもよいフェノールが挙げられる。本発明の一実施形態では、Xは、スクシンイミジルカルボナート、スルホスクシンイミジルカルボナート又はニトロフェニルカルボナートなどの活性化カルボナートである。本発明の別の実施形態では、Xは、O(C=O)Cl又はO(C=O)Fなどのハロゲン化カルボニルである。本発明の別の実施形態では、Xは、次式で表されるカルバマートである:
【0056】
ここで、T
*は、O、S又はNR
6であり、ここで、R
6は、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアリールアルキル、又は置換されていてもよいヘテロアリールアルキルであり;zは1〜6であり;かつ、Yは、存在しないか、又はOR
7もしくはSR
7であり、ここで、R
7は、置換されていてもよいアルキレン、置換されていてもよいフェニレン又は(OCH
2CH
2)
p(p=1〜1000)であり、かつ、Z
2は、反応性ポリマーと結合することができる官能基である。本発明の特定の実施形態では、Yは(OCH
2CH
2)
p(p=1〜1000)であり;又は、Yは(OCH
2CH
2)
p(p=1〜100)であり;又は、Yは(OCH
2CH
2)
p(p=1〜10)である。
【0057】
別の実施形態では、Xは、OR
7又はSR
7であり、ここで、R
7は、置換されていてもよいアルキレン、置換されていてもよいフェニレン、又は(OCH
2CH
2)
p(p=1〜1000)であり、かつ、Z
2は、反応性ポリマーと結合することができる官能基である。
【0058】
特定の実施形態では、本発明は、R
1、R
2及びR
5のうち、R
5がポリマーに結合することができる官能基を含む置換基である、式(1)の架橋試薬を提供する。さらに特定の実施形態では、本発明は、R
5の一つが、ポリマーに結合することができる官能基を含み、他のR
5がHである、式(1)の架橋試薬を提供する。
【0059】
従って、本発明は、式(1a)で表される架橋試薬を提供する:
【0061】
ここで、mは0〜1であり;rは2〜8であり;かつ、R
1、R
2、R
5、m、X及びZは、上述で定義された通りである。特定の実施形態では、本発明は、R
5がHである、式(1a)の架橋試薬を提供する。さらに特定の実施形態では、本発明は、R
1が、CN又はR
8SO
2であり、ここで、R
8は、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、又はOR
9もしくはNR
92であり、ここで、各R
9は、独立して、Hもしくは置換されていてもよいアルキルであるか、又は、両方のR
9基が、それらが結合するする窒素原子と一緒になって複素環を形成し;R
2及びR
5がHであり、かつ、m=0である、式(1a)の架橋試薬を提供する。
【0062】
別の実施形態では、本発明は、Xが次式を有する、式(1a)の架橋試薬を提供する
【0064】
ここで、T
*は、O、S又はNR
6であり、ここで、R
6は、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアリールアルキル、又は置換されていてもよいヘテロアリールアルキルであり;zは1〜6であり;かつ、Yは、存在しないか、又はOR
7もしくはSR
7であり、ここで、R
7は、置換されていてもよいアルキレン、置換されていてもよいフェニレン又は(OCH
2CH
2)
p(p=1〜1000)であり、かつ、Z
2は、反応性ポリマーと結合することができる官能基である。本発明の特定の実施形態では、Yは、(OCH
2CH
2)
p(p=1〜1000)であるか、又は、Yは、(OCH
2CH
2)
p(p=1〜100)であるか、又は、Yは、(OCH
2CH
2)
p(p=1〜10)である。
【0065】
本発明の別の実施形態では、Xは、OR
7又はSR
7であり、ここで、R
7は、置換されていてもよいアルキレン、置換されていてもよいフェニレン、又は、(OCH
2CH
2)
p(p=1〜1000)であり、かつ、Z
2は、反応性ポリマーと結合することができる官能基である。
【0066】
一実施形態では、本発明は、式(1b)の架橋試薬を提供する
【0068】
ここで、mは0〜1であり、かつ、R
1、R
2、R
5、m、X及びZ
2は、上述において定義した通りである。特定の実施形態では、本発明は、R
5がHである式(1b)の架橋試薬を提供する。さらに特定の実施形態では、本発明は、R
1がCN又はR
8SO
2であり、ここで、R
8は、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、又はOR
9もしくはNR
92であり、ここで、各R
9は、独立して、Hもしくは置換されていてもよいアルキルであるか、又は、両方のR
9基が、それらが結合する窒素原子と一緒になって複素環を形成し;R
2及びR
5がHであり、かつ、m=0である、式(1b)の架橋試薬を提供する。
【0069】
Xが、OH、Cl又はO−スクシンイミジルである式(1)の化合物を調製する方法は、国際公開第2009/158668号、国際公開第2011/140393号及び国際公開第2011/140392号に既に開示されている。Xが、次式のカルバマートである式(1)の化合物
【0071】
は、以下の実施例に例示される方法を使用して、XがCl又はO−スクシンイミジルである式(1)の化合物から、式R
6−NH−(CH
2)
zY−Z
2のアミンと反応させることによって調製することができる。
【0072】
本発明の別の実施形態では、式(2)の多価架橋試薬が提供される
【0074】
ここで、R
1、R
2及びR
5の少なくとも1つは、ポリマーと結合することができる官能基Z
1を含み、かつ、その他においては式(1)において定義されている通りであり;
ここで、mは、0又は1であり;
nは、1〜1000であり;
sは、0〜2であり;
tは、2、4、8、16又は32であり;
Wは、O(C=O)O、O(C=O)NH、O(C=O)S、
【0076】
であり;かつ、
Qは、価数=tを有するコア基であり、ここで、t=2、4、8、16又は32である。
【0077】
コア基Qは、架橋試薬の複数のアームと結合する、価数=tの基である。Qの典型的な例として、C(CH
2)
4(t=4)、ここで、多分岐試薬は、ペンタエリスリトールコアに基づいて調製される;(t=8)、ここで、多分岐試薬は、ヘキサグリセリンコアに基づいて調製される;、及び(t=8)、ここで、多分岐試薬は、トリペンタエリスリトールコアに基づいて調製される、が挙げられる。
【0079】
式(2)の化合物は、多分岐ポリエチレングリコールを、式(1)の試薬と反応させることによって調製することができる。様々な多分岐ポリエチレングリコールが、例えばNOF Corporation及びJenKem Technologiesから市販されている。
【0080】
本発明の特定の実施形態では、tは4である。本発明の別の実施形態では、tは8である。
【0081】
ヒドロゲルの調製
別の態様では、本発明は、少なくとも1つの反応性ポリマーと、切断可能な架橋剤化合物とを、同時又は逐次的に接触させるステップを含む、生分解性ヒドロゲルを調製する方法であって、ここで、前記切断可能な架橋剤化合物が、反応性ポリマーと反応する官能基と、生理的条件下で脱離によって切断される部分とを含む、方法を提供する。
【0082】
本発明の一実施形態では、生分解性ヒドロゲルは、単一の反応性ポリマーと、切断可能な架橋剤化合物とを反応させることによって形成され、ここで、前記切断可能な架橋剤化合物は、反応性ポリマーと反応する官能基と、反応性ポリマーと反応する官能基であって生理的条件下で脱離によって切断される官能基を含む部分とを含む。この実施形態では、反応性ポリマーは、三次元ヒドロゲルマトリックスの結節部(node)を形成することができるように、多価である。本方法の一例として、以下に定義される通りに各アーム末端に反応性官能基Z
3を有する多分岐PEGを、式(1)又は(2)の架橋剤試薬と反応させて、ヒドロゲルを形成させる。様々なサイズで、様々な反応性官能基を伴う多分岐PEGが、例えば、NOF Corporation及びJenKem Technologiesから市販されている。本方法の別の例として、反応性官能基Z
3の複数のコピーを含む線状ポリマーを、式(1)又は(2)の架橋剤試薬と反応させて、ヒドロゲルを形成させることができる。複数のZ
3基を含むこのような線状ポリマーの例としては、ヒアルロン酸、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリラート)、デキストラン、コラーゲン、キトサン、アルギナート及びアガロースを挙げることができる。
【0083】
別の実施形態では、本発明は、第1の反応性ポリマーと、第2の反応性ポリマーと、切断可能な架橋剤化合物とを反応させることによって、生分解性ヒドロゲルを形成させる方法を提供し、該架橋剤化合物は、第1の反応性ポリマーと反応する第1の官能基、第2のポリマーと反応する第2の官能基、及び、生理的条件下で脱離によって切断される部分を含む。第1及び第2の官能基は、同一又は異なっていてもよい。三次元ゲルネットワークを形成するために、反応性成分(第1の反応性ポリマー、もしあれば第2の反応性ポリマー)は、多分岐であって、ゲルマトリックス内に結節部を形成させるように働く。本発明の好ましい実施形態では、この結節部を形成する反応性成分は、少なくとも3つのアーム、より好ましくは少なくとも4つのアームを含む。
【0084】
各実施形態では、反応性ポリマーは、それらの天然状態に適切な反応性官能基を含むか、又は適切な反応性官能基を含むように誘導体化されている、ホモポリマー又はコポリマーのポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリメタクリラート、ポリホスファゼン、ポリラクチド、ポリアクリルアミド、ポリグリコラート、ポリエチレンイミン、アガロース、デキストラン、ゼラチン、コラーゲン、ポリリシン、キトサン、アルギナート、ヒアルロナン、ペクチン又はカラゲニンであってよい。典型的には、適切な反応性官能基は、マレイミド、チオールもしくは保護チオール、アルコール、アクリラート、アクリルアミド、アミンもしくは保護アミン、カルボン酸もしくは保護カルボン酸、アジド、シクロアルキンを含むアルキン、シクロペンタジエン及びフランを含む1,3−ジエン、アルファ−ハロカルボニル、並びにN−ヒドロキシスクシンイミドもしくはN−ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、又はカルボナートを含む。有効な数の反応基を含まない天然ポリマーは、ヒドロゲルを形成する前に、有効な数の反応基を導入する試薬と反応させることによって変換させることができる。
【0085】
いくつかの実施形態では、ポリマーは、式[Z
3−(CH
2)
s−(CH
2CH
2O)
n]
tQで表される多価の分枝構造を含み、ここで、Z
3は、Z
1及びZ
2について上述において記載した選択肢から選択される反応性官能基であり、sは0〜2であり、Qは、価数tを有する多価コア基であり、tは、2、4、8、16又は32である。nの値は、10〜1000であってよく、又は20、50、100などの中間値等であってもよい。この列挙は、10〜1000の間の全ての中間の整数を含むものとする。
【0086】
ゲル形成反応は、様々な適切な溶媒、例えば水、アルコール、アセトニトリル又はテトラヒドロフラン中で実施することができ、好ましくは水性媒体中で実施される。
【0087】
ヒドロゲルの形成は、段階的に又は協奏的に実施することができる。従って、本発明の一実施形態では、第1の反応性ポリマーを、式(1)又は(2)の架橋試薬と反応させて、中間体である架橋されていない組合せを形成させ、この組合せを、任意で単離する。次に、架橋されていない組合せを、第2の反応性ポリマーと反応させて、最終的な架橋ゲルを形成させることができる。本発明の別の実施形態では、第1の反応性ポリマーと、第2の反応性ポリマーと、式(1)又は(2)の架橋試薬とを、単一の操作で組み合わせ、反応させ、ヒドロゲルを形成させることができる。
【0088】
一実施形態においては、本発明は、ポリマーを式(1)の架橋試薬で架橋することによってヒドロゲルを形成する方法を提供する。存在する官能基に応じて、ポリマーは、その天然状態であってもよく、又は当技術分野で公知の方法を使用して最初に誘導体化して、式(1)の化合物上の官能基と交差反応する官能基を導入してもよい。本実施形態では、式(1)の化合物上のポリマーと反応することができる2つの官能基は、典型的には同じものである。本実施形態の一例を、
図1に示す。示されている通り、2つのアジド官能基を有する式(1)の切断可能な架橋剤は、シクロオクチン官能基を有する4分岐ポリマーを架橋する。Z
1、Z
2及びZ
3について上述した他の実施形態のゲルも、類似又は同一の結果が得られるように調製される。
【0089】
別の実施形態では、本発明は、一方が脱離可能な架橋剤を含む、異なって置換されている2つのポリマーを架橋することによって、ヒドロゲルを形成する方法を提供する。この実施形態の2つの例を、
図2に示す。パネルAは、各アーム末端にシクロオクチン(CO)を有する第1の4分岐ポリマーを、各アーム末端に式(1)のベータ脱離性リンカーアジド化合物(L
2−N
3)を有する第2の4分岐ポリマー(よってこれは4分岐の式(2)の化合物である)で架橋している。得られた4×4ヒドロゲルは、それぞれの架橋にベータ脱離性リンカーを含む。従って、ゲルは、4分岐ポリマー及び式(2)から導出される交互の結節部を含有する。
【0090】
パネルBに示されている通り、この方法では、非常に多数のアームを有するポリマーを使用することもできる。示されている通り、8分岐ポリマーのアームのいくつかは、以下に示す式(3)の化合物に結合させることによって、薬物に誘導体化することができる。さらに、又はその代わりに、1つ以上のアームを蛍光色素などのマーカー化合物と結合させ、ゲルの崩壊速度を、環境条件の関数として、並びに/又は、R
1、R
2及び/もしくはR
5の性質の関数として評価することもできる。この「浸食プローブ」により、所望の崩壊速度を有するゲルを設計することができる。
【0091】
このような設計の一態様では、薬物の存在下でゲルを形成することによって、単にゲルの細孔内に薬物が含まれていてよく、薬物の送達速度は、ゲルを形成する架橋化合物における置換基を適切に選択することによって制御される。
【0092】
細孔内に薬物を含有し、かつ、以下の式(3)に示す連結を介してポリマーに結合した薬物を含有するゲルを調製することもできる。それにより、連結からの放出速度と、細孔からの放出速度とを比較することができる。
【0093】
第3の代替手段として、薬物は、式(3)の形態で単純に供給することができ、この場合、ゲルからの放出速度は、ゲルからの薬物の脱離反応によってのみ決定される。
【0094】
別の態様では、本発明は、上述方法に従って形成されるヒドロゲルを提供する。これらのヒドロゲルは、前述の、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリメタクリラート、ポリホスファゼン、ポリラクチド、ポリアクリルアミド、ポリグリコラート、ポリエチレンイミン、アガロース、デキストラン、ゼラチン、コラーゲン、ポリリシン、キトサン、アルギナート、ヒアルロナン、ペクチン、カラゲニン、又は例示した多分岐ポリマーの天然形態又は修飾形態として含まれる様々な親水性ポリマーを含むことができ、生理的条件下で脱離によって切断され得る少なくとも1つの部分を含むそれらの架橋によって、特徴付けられる。従ってこれらのヒドロゲルは、pH依存過程を介して生分解可能である。
【0095】
反応物及び化学量を適切に選択することにより、得られるヒドロゲルの細孔径を決定することができる。本発明のヒドロゲルは、微孔性、メソ多孔性又はマクロ多孔性であってよく、ヒドロゲルの調製に使用される架橋試薬の性質によって決定される、様々な範囲の生分解速度を有することができる。
【0096】
本発明のヒドロゲルは、選択された化学量により、不完全な架橋により、又は直交反応性に起因してゲル化過程に関与しない官能基が組み込まれることにより、ゲル化過程で消費されずに残った反応基を含む場合もある。これらの残りの反応基を使用して、例えば薬物又はプロドラッグを共有結合により結合させることによって、得られるヒドロゲルをさらに修飾することができる。本発明の一実施形態では、残りの反応基を使用して、リンカーに結合した薬物を含むプロドラッグを結合させ、その後、そのリンカーにより、ヒドロゲルマトリックスから薬物を放出させる。本発明のさらに特定の実施形態では、ヒドロゲルマトリックスからの薬物の放出は、脱離機序を介して生じる。薬物共役のための脱離性リンカーの使用は、例えば参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2009/158668号及び国際公開第2011/140393号に記載されている。
【0097】
本発明の薬物放出分解性ヒドロゲルの一実施形態は、
図2Bに示されており、以下の実施例29及び33に示されている。第1のポリマー上の官能基のサブセットを、薬物放出速度を制御する第1の調節因子基を含む放出可能なリンカー−薬物と反応させることによって、中間体である薬物負荷ポリマーが提供される。残りの官能基が、ヒドロゲル分解速度を制御する第2の調節因子基を含む式(1)又は(2)の架橋試薬と反応すると、薬物を負荷した分解性ヒドロゲルが提供される。薬物リンカー及び架橋試薬上に存在する調節因子基を適切に選択することによって、薬物放出速度及びヒドロゲル分解速度を制御することができる。本発明のある方法では、第1のステップで第1のポリマーをリンカー−薬物で処理し、中間体である薬物負荷ポリマーを、場合によって単離する。ヒドロゲルは、別個のステップで架橋剤試薬と反応させることによって、形成される。本発明の第2の方法では、第1のポリマー、リンカー−薬物、及び架橋剤試薬は、単一ステップで組み合わされる。ポリマー上の全ての反応性官能基が、リンカー−薬物又は架橋のいずれかとの結合により消費されるとは限らないとしても、過剰の官能基は、適切な試薬と反応させることによって、場合によってキャップすることができる。例えば、過剰のシクロオクチンは、アジド−ヘプタエチレングリコールなどの短鎖PEG−アジドと反応させることによって、キャップすることができる。
【0098】
従って、本発明の一実施形態では、以下の、
(a)反応性官能基を含む第1の多価ポリマーを、準化学量論的量の式(3)を有するリンカー−薬物と反応させて、薬物を負荷した第1のポリマーを形成するステップと
【0100】
ここで、m、R
1、R
2及びR
5は、式(1)及び(2)でこれらについて記載した実施形態を有することができるが、これらは、当然のことながら独立して選択され、従って、式(1)又は(2)の残基と式(3)の両方を含有するゲルは、これらの表記と同じ置換基を含む必要はなく、Dは、薬物の残基であり、この場合、Yは、NH又はNBCH
2であり、Bは、H、置換されていてもよい、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルであり、R
1、R
2、R
5の少なくとも1つは、第1のポリマー上の置換基と反応性があるZ
1に相当する官能基で置換されている、
(b)場合によって、薬物を負荷した第1のポリマーを単離するステップと、
(c)薬物を負荷した第1のポリマー上の残りの反応性官能基を、式(1)又は式(2)の化合物で架橋して、ヒドロゲルを形成するステップと
からなる、薬物放出分解性ヒドロゲルを形成する方法が提供される。
【0101】
式(3)のリンカー−薬物の調製については、参照によって本明細書に組み込まれる国際公開第2009/158668号及び国際公開第2011/140393号に詳説されている。
【0102】
連結される薬物Dは、低分子又はペプチドを含むポリペプチド及びタンパク質であってよい。以下の実施例32は、Dが、配列:H−His−Gly−Glu−Gly−Thr−Phe−Thr−Ser−Asp−Leu−Ser−Lys−Gln−Met−Glu−Glu−Glu−Ala−Val−Arg−Leu−Phe−Ile−Glu−Trp−Leu−Lys−Asn−Gly−Gly−Pro−Ser−Ser−Gly−Ala−Pro−Pro−Pro−Ser−NH
2(配列番号1)を有するエキセナチドペプチドである、薬物放出分解性ヒドロゲルの調製を詳説している。
【0103】
本発明の一実施形態では、エキセナチドペプチドは、アミノ基を介してリンカーに結合して、
【0105】
を提供する、ここで、R
1、R
2、R
5及びmは、先の式(3)で定義した通りである。特定の実施形態では、m=0、R
2はHであり、一方のR
5はHであり、他方のR
5は、(CH
2)
nY(n=1〜6)又はCH
2(OCH
2CH
2)
pY(p=1〜1000)であり、Yは、N
3、SH、S
tBu、マレイミド、1,3−ジエン、シクロペンタジエン、フラン、アルキン、シクロオクチン、アクリラート、アクリルアミド、ビニルスルホン又はビニルスルホンアミド基を含む基である。本発明の特定の実施形態では、R
1は、CN又はSO
2R
3であり、R
3は、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、OR
9又はN(R
9)
2であり、各R
9は、独立して、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリールであり、N(R
9)
2は、複素環を形成していてもよい。リンカーは、ペプチド上の任意の遊離アミン基、すなわちリシンのイプシロン−アミノ基などのN末端アミン又は任意の側鎖アミンに結合することができる。
【0106】
本発明の特定の実施形態では、式(3)のリンカー−薬物は、一方のR
5上に反応性アジド基を含む。従って、準化学量論的量のリンカー−薬物は、各アーム末端に反応性シクロオクチン基を含む多分岐ポリマーと反応する。反応性シクロオクチン基の例として、例えばジベンゾシクロオクチン、ジベンゾアザシクロオクチン(DBCO)、ジフルオロシクロオクチン(DIFO)、及び歪みがある二環式シクロオクチン、例えばビシクロノニン(BCN)を含めた、銅を用いないアジドとの1,3−双極性環化付加反応において有効なものが挙げられる。
【0107】
本発明の一実施形態では、第1のポリマーは、各アーム末端に反応性官能基を有する、少なくとも8つのアームを含む。
図2Bに示されている通り、式(1)又は(2)の化合物に架橋するために、第1のポリマーの3つのアームが使用される。本発明の好ましい一実施形態では、式(1)又は(2)の化合物に架橋するために、第1のポリマーの少なくとも4つのアームが使用される。従って、使用されるリンカー−薬物の準化学量論的量は、第1のポリマーに対して0.01〜5モル当量の範囲に及ぶことができ、従って8分岐の第1のポリマー1個当たり、分子0.01〜5個の薬物Dが負荷される。本発明の一実施形態では、使用されるリンカー−薬物の準化学量論的量は、第1のポリマーに対して0.1〜5モル当量の範囲に及ぶことができる。本発明の別の実施形態では、使用されるリンカー−薬物の準化学量論的量は、第1のポリマーに対して1〜5モル当量の範囲に及ぶことができる。
【0108】
従って、本発明の特定の実施形態では、エキセナチドを放出する分解性ヒドロゲルは、各アームの末端にシクロオクチン基を含む多価の第1のポリマーを、準化学量論的量の式(4)のリンカー−薬物と反応させて、エキセナチドを負荷した第1のポリマーを形成することによって調製され
【0110】
ここで、R
1=CN、NO
2、
置換されていてもよいアリール、
置換されていてもよいヘテロアリール、
置換されていてもよいアルケニル、
置換されていてもよいアルキニル、
COR
3又はSOR
3又はSO
2R
3
ここで、R
3は、H、又は置換されていてもよいアルキル、
置換されていてもよいアリールもしくはアリールアルキル、
置換されていてもよいヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル、又は
OR
9もしくはNR
92であり、
ここで、各R
9は、独立して、Hもしくは置換されていてもよいアルキルである
か、又は両方のR
9基は、それらが結合する窒素原子と一緒になって複素環を形成している、又は
SR
4
ここで、R
4は、置換されていてもよいアルキル、
置換されていてもよいアリールもしくはアリールアルキル、又は
置換されていてもよいヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルであり、
このエキセナチドを負荷した第1のポリマーは、例えば沈殿、サイズ排除もしくはイオン交換クロマトグラフィー、又は当技術分野で公知の他の方法によって、任意で単離される。本発明の特定の実施形態では、式(4)のR
1は、CN又はSO
2R
3である。
【0111】
次に、エキセナチドを負荷した第1のポリマーを、式(1)又は(2)の切断可能な化合物と反応させて、エキセナチドを放出する分解性ヒドロゲルを形成する。本発明の特定の実施形態では、エキセナチドを放出する第1のポリマーは、8分岐ポリエチレングリコールであり、ヒドロゲルの形成に使用される切断可能な化合物は、式(2)の化合物である。本発明の特定の実施形態では、ヒドロゲルの形成に使用される切断可能な化合物は、mが0であり、nが10〜150であり、sが0であり、tが4であり、QがC(CH
2)
4である式(2)の化合物である。
【0112】
前述の通り、薬物放出速度及びヒドロゲル分解速度は、それぞれ薬物−リンカー及び架橋剤上のR
1及びR
2基の選択によって主に制御される。選択される薬物放出速度は、典型的には、薬物の所望の薬物動態、例えば投与期間にわたる遊離薬物の最大濃度及び/又は最小濃度によって決定され、このことは、共に参照によって本明細書に組み込まれるSantiら、PNAS(2012年)(投稿)及び同時係属中のPCT出願(2012年9月7日出願)(代理人整理番号670573000540号)に記載されている。次に、式(I)及び(II)の化合物上のR
1及びR
2基は、投与期間にわたって必要な量の遊離薬物を供給すると同時に、体内の分解性ヒドロゲルの寿命を最小限に抑えるために、最適なヒドロゲルの分解速度を提供するように選択される。
【0113】
本発明の別の実施形態では、薬物放出分解性ヒドロゲルは、各アーム末端に少なくとも2つの直交性官能基を含む基を有する、多分岐の第1のポリマーを、第1のポリマー上に存在する直交性官能基の1つだけと反応する官能基を含む式(3)のリンカー−薬物と反応させる方法によって調製される。得られた薬物を負荷した第1のポリマー上の残りの直交性官能基を使用して、薬物を負荷した第1のポリマー上に存在する残りの直交性官能基の1つだけと反応する官能基を含む式(1)又は(2)の化合物との反応によって、ヒドロゲルを形成する。この方法は、化学量論的な対照成分によって形成される構造よりも規則的な構造の薬物放出分解性ヒドロゲルが提供されるはずであるという点で、有利である。この方法は、以下の実施例37に示されている。各アーム末端に少なくとも2つの直交性官能基を含む基を有する、多分岐の第1のポリマーは、各アームが、適切な多官能性アダプターとの縮合により単一の官能基で終端している、多分岐ポリマーから調製することができる。このことは、
図11に示されている。
【0114】
本発明のヒドロゲルは、インビトロで調製され、次に必要に応じて移植することができる。ゲルは、特定の形状に成型することができ、又は注入用の微粒子もしくは微小球の懸濁液として調製することができる。あるいは、ヒドロゲルは、in situでのゲル化によって形成され得る。その場合、ヒドロゲル成分の薬学的に許容される製剤が調製される。成分を混合した後、その混合物は、ゲル化する前に注入又は適用される。注入は、皮下、筋肉内、眼内、腫瘍内又は静脈内で行うことができる。本発明のヒドロゲルは、例えば皮膚又は手術創に適用した後、混合成分のin situでのゲル化によって、局所適用され得る。本発明のヒドロゲルは、医療機器上のコーティング又は外科用包帯剤として適用することもできる。
【0115】
本明細書で引用したあらゆる参考文献は、その全体が参照によって本明細書に組み込まれる。本発明を以下の実施例によってさらに例示するが、本発明はそれらによって制限されるものではない。
【実施例1】
【0116】
6−アジドヘキサナールの調製
【0117】
【化18】
【0118】
(1)6−アジド−1−ヘキサノール:水200mL中、6−クロロ−1−ヘキサノール(25g、183mmol)及びナトリウムアジド(32.5g、500mmol)の混合物を、20時間加熱還流し、次に周囲温度に冷却し、酢酸エチルで3回抽出した。組み合わせた抽出物を塩水で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、濾過し、濃縮して、生成物を薄黄色油として得た(28.3g)。
【0119】
(2)6−アジドヘキサナール:固体トリクロロイソシアヌル酸(4.3g)を、ジクロロメタン(100mL)及び水(10mL)中、6−アジド−1−ヘキサノール(7.15g)、TEMPO(50mg)及び重炭酸ナトリウム(5.0g)の激しく撹拌した混合物に少量ずつ添加した。添加した後、混合物をさらに30分間撹拌し、次にセライトパッドで濾過した。有機相を分離し、飽和NaHCO
3水溶液及び塩水で逐次的に洗浄し、次にMgSO
4で乾燥させ、濾過し、濃縮して、生成物(5.8g)を得、それをさらなる精製なしに使用した。
【実施例2】
【0120】
ω−アジド−PEG−アルデヒドの調製
【0121】
【化19】
【0122】
固体トリクロロイソシアヌル酸(60mg)を、O−(2−アジドエチル)ヘプタエチレングリコール(n=7;250mg)、TEMPO1mg、NaHCO
3100mg、CH
2Cl
22mL及び水0.2mLの、激しく撹拌した混合物に添加した。混合物はオレンジ色に変化し、約30分後に白色懸濁液が形成された。TLC分析(1:1アセトン/ヘキサン)は、生成物が形成されたことを示し、生成物はリンモリブデン酸で染色されていた。混合物をCH
2Cl
210mLで希釈し、MgSO
4と共に撹拌することによって乾燥させ、濾過し、蒸発させて、粗製生成物を得た。この生成物をCH
2Cl
2に溶解し、ヘキサンで平衡化した4gmのシリカゲルカラムに載せ、それをそれぞれヘキサン、75:25ヘキサン/アセトン、50:50ヘキサン/アセトン及び25:75ヘキサン/アセトン25mLで逐次的に溶出した。生成物を含有する画分を組み合わせ、蒸発させて、精生成物を得た。
【実施例3】
【0123】
アジドアルコールの調製
【0124】
【化20】
【0125】
ヘキサン中n−ブチルリチウム(3.1mL、5.0mmol)の1.6M溶液を、無水テトラヒドロフラン(THF)(15mL)中R−SO
2CH
3(5.0mmol)の−78℃に冷却した撹拌溶液に滴下添加した。添加した後、冷却浴を除去し、混合物を約30分かけてゆっくり0℃に温めた。次に、混合物を冷却して−78℃に戻し、6−アジドヘキサナール(5.5mmol)を添加した。15分間撹拌した後、冷却浴を除去し、混合物を温めた。混合物が透明になった時点で、飽和NH
4Cl水溶液5mLを添加し、混合物を周囲温度に温め続けた。混合物を酢酸エチルで希釈し、水及び塩水で逐次的に洗浄し、次にMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発させて、粗製生成物を油として得た。ヘキサン中酢酸エチルの勾配を使用してシリカゲルでクロマトグラフィー処理して、精生成物を得た。
【0126】
この方法に従って調製した化合物には、以下が含まれる。
1−(4−(トリフルオロメチル)フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプタノール;4−(トリフルオロメチル)フェニルメチルスルホンから(1.73g、94%):
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ 8.08(2H,d,J=8.4−Hz)、7.87(2H,d,J=8.4−Hz)、4.21(1H,m)、3.25(2H,t,J=6.8−Hz)、3.28(1H,dd,J=8.8,14.4−Hz)、3.20(1H,dd,J=2.0,14.4−Hz)、3.12(1H,d,J=2.8−Hz)、1.58(2H,m)、1.5〜1.3(6H,m);
1−(4−クロロフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプタノール;4−クロロフェニルメチルスルホンから;無色油(1.49g、収率90%):
1H−NMR(400MHz,d
6−DMSO):δ 7.90(2H,d,J=8.8−Hz)、7.70(2H,d,J=8.8−Hz)、4.83(1H,d,J=6−Hz)、3.86(1H,m)、3.39(2H,m)、3.29(2H,t,J=6.8−Hz)、1.2〜1.5(8H,m);
1−(フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプタノール;フェニルメチルスルホンから;薄黄色油(1.25g、85%):
1H−NMR(400MHz,d
6−DMSO):δ 7.89(2H,m)、7.72(1H,m)、7.63(2H,m)、4.84(1H,d J=6−Hz)、3.86(1H,m)、3.33(2H,m)、3.28(2H,t,J=6.8−Hz)、1.47(2H,m)、1.2〜1.4(6H,m);
1−(4−メチルフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプタノール;4−(メチルスルホニル)トルエンから;無色油(1.39g、収率85%):
1H−NMR(400MHz,d
6−DMSO):δ 7.76(2H,d,J=6.4−Hz)、7.43(2H,d,J=6.4−Hz)、4.82(1H,d,J=6−Hz)、3.85(1H,m)、3.31(2H,m)、3.28(2H,t,J=6.8−Hz)、2.41(3H,s)、1.4〜1.5(2H,m)、1.2〜1.4(6H,m);
1−(4−メトキシフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプタノール;4−メトキシフェニルメチルスルホンから調製(1.53g、収率94%):
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ 7.85(2H,d,J=8.8−Hz)、7.04(2H,d,J=8.8−Hz)、4.13(1H,m)、3.90(3H,s)、3.24(2H,t,J=6.8−Hz)、3.20(1H,dd,J=8.8,14.4−Hz)、3.14(1H,dd,J=2.4,14.4−Hz)、2.47(3H,s)、1.57(2H,m)、1.5〜1.3(6H,m);
1−(2,4,6−トリメチルフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプタノール;(2,4,6−トリメチル)フェニルメチルスルホンから調製(4.0mmolの反応物から1.30g;96%):
1H−NMR(400MHz,CDCl
3):δ 6.99(2H,s)、4.30(1H,m)、3.49(1H,d,J=2−Hz)、3.25(2H,t,J=6.8−Hz)、3.18(1H,d,J=1−Hz)、3.17(1H,s)、2.66(6H,s)、2.31(3H,s)、1.59(2H,m)、1.5〜1.3(6H,m);
1−(モルホリノスルホニル)−7−アジド−2−ヘプタノール;1−モルホリノメチルスルホンアミドから調製(10mmolの反応物から1.36g、89%):
1H−NMR(400MHz,d
6−DMSO):δ 4.99(1H,d,J=6.4Hz)、3.88(1H,m)、3.62(4H,t,J=4.8−Hz)、3.32(2H,t,J=6.8−Hz)、3.20〜3.15(6H,重複)、1.53(2H,m)、1.46〜1.25(6H,m);及び
1−(メチルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプタノール;ジメチルスルホンから;無色油(880mg、75%):
1H−NMR(400MHz,d
6−DMSO)。
【実施例4】
【0127】
アジドアルコールの調製
【0128】
【化21】
【0129】
ヘキサン中n−ブチルリチウム(3.1mL、5.0mmol)の1.6M溶液を、無水テトラヒドロフラン(THF)(15mL)中R−SO
2CH
3(5.0mmol)の−78℃に冷却した撹拌溶液に滴下添加する。添加した後、冷却浴を除去し、混合物を約30分かけてゆっくり0℃に温める。次に、混合物を冷却して−78℃に戻し、ω−アジド−ヘプタエチレングリコールアルデヒド(n=7、1.2g)を添加する。15分間撹拌した後、冷却浴を除去し、混合物を温める。混合物が透明になった時点で、飽和NH
4Cl水溶液5mLを添加し、混合物を周囲温度に温め続ける。混合物を酢酸エチルで希釈し、水及び塩水で逐次的に洗浄し、次にMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発させて粗製生成物を得る。シリカゲルでクロマトグラフィー処理して、精生成物を得る。
【実施例5】
【0130】
アジド−リンカークロロホルマートの調製
【0131】
【化22】
【0132】
ピリジン(160μL)を、無水THF15mL中、実施例3のアジドアルコール(1.0mmol)及びトリホスゲン(500mg)の撹拌溶液に滴下添加した。得られた懸濁液を10分間撹拌し、次に濾過し、濃縮して、粗製クロロホルマートを油として得た。
【0133】
この方法に従って調製した化合物には、以下が含まれる。
1−(4−(トリフルオロメチル)フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチルクロロホルメート
1−(4−クロロフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチルクロロホルメート;
1−(フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチルクロロホルメート;
1−(4−メチルフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチルクロロホルメート;
1−(4−メトキシフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチルクロロホルメート;
1−(2,4,6−トリメチルフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチルクロロホルメート;
1−(4−モルホリノスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチルクロロホルメート;及び
1−(メタンスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチルクロロホルメート。
【0134】
他のクロロホルマートも、この一般法に従って調製することができる。
【実施例6】
【0135】
アジド−リンカークロロホルマートの調製
【0136】
【化23】
【0137】
ピリジン(160μL)を、無水THF15mL中、実施例4のアジドアルコール(1.0mmol)及びトリホスゲン(500mg)の撹拌溶液に滴下添加する。得られた懸濁液を10分間撹拌し、次に濾過し、濃縮して、粗製クロロホルマートを得る。
【実施例7】
【0138】
アジド−リンカースクシンイミジルカルボナートの調製
【0139】
【化24】
【0140】
ピリジン(300μL)を、無水THF15mL中、実施例5のクロロホルマート(1.0mmol)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(350mg)の撹拌溶液に滴下添加した。得られた懸濁液を10分間撹拌し、次に濾過し、濃縮して、粗製スクシンイミジルカルボナートを得た。シリカゲルでクロマトグラフィーによって精製して、精生成物を油として得ると、自然に結晶化した。再結晶化は、酢酸エチル/ヘキサンを使用して行うことができた。
【0141】
この方法に従って調製した化合物には、以下が含まれる。
O−[1−(4−(トリフルオロメチル)フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−O’−スクシンイミジルカルボナート:40:60酢酸エチル/ヘキサン由来の結晶(280mg、55%):
1H−NMR(400MHz,d
6−DMSO):δ 8.12(2H,m)、8.04(2H,m)、5.18(1H,m)、4.15(1H,dd,J=9.2,15.2)、3.96(1H,dd,J=2.4,15.2)、3.29(2H,t,J=6.8)、2.80(4H,s)、1.68(2H,m)、1.47(2H,m)、1.27(4H,m);
O−[1−(4−クロロフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−O’−スクシンイミジルカルボナート:40:60酢酸エチル/ヘキサン由来の結晶(392mg、83%):
1H−NMR(400MHz,d
6−DMSO):δ 7.85(2H,m)、7.72(2H,m)、5.14(1H,m)、4.04(1H,dd,J=9.6,15.6)、3.87(1H,dd,J=2.4,15.6)、3.29(2H,t,J=6.8)、2.81(4H,s)、1.68(2H,m)、1.47(2H,m)、1.27(4H,m);
O−[1−(フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−O’−スクシンイミジルカルボナート:40:60酢酸エチル/ヘキサン由来の結晶(391mg、89%):
1H−NMR(400MHz,d
6−DMSO):δ 7.91(2H,m)、7.76(1H,m)、7.66(2H,m)、5.12(1H,m)、3.96(1H,dd,J=8.8,15.2)、3.83(1H,dd,J=2.8,15.2)、3.29(2H,t,J=6.8)、2.81(4H,s)、1.69(2H,m)、1.47(2H,m)、1.27(4H,m);
O−[1−(4−メチルフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−O’−スクシンイミジルカルボナート:クロマトグラフィー後に静置したときの結晶(402mg、89%):
1H−NMR(400MHz,d
6−DMSO):δ 7.77(2H,d,J=8.0);7.45(2H,d,J=8.0);5.11(1H,m)、3.90(1H,dd,J=8.8,15.2)、3.79(1H,dd,J=1.8,15.2)、3.28(2H,t,J=6.8)、2.81(4H,s)、2.41(3H,s)、1.68(2H,m)、1.47(2H,m)、1.27(4H,m);
O−[1−(4−メトキシフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−O’−スクシンイミジルカルボナート:60:40酢酸エチル/ヘキサン由来の結晶(320mg、68%):
1H−NMR(400MHz,d
6−DMSO):δ 7.81(2H,d,J=8.8);7.15(2H,d,J=8.8);5.11(1H,m)、3.87(1H,dd,J=8.8,15.2)、3.86(3H,s)、3.76(1H,dd,J=2.8,15.2)、3.29(2H,t,J=6.8)、2.80(4H,s)、1.68(2H,m)、1.47(2H,m)、1.27(4H,m);
O−[1−(2,4,6−トリメチルフェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−O’−スクシンイミジルカルボナート:無色油(458mg、95%):
1H−NMR(400MHz,d
6−DMSO):δ 7.09(2H,s)、5.20(1H,m)、3.82(1H,dd,J=8.4,15.2−Hz)、3.67(1H,dd,J=3.2,15.2−Hz)、3.30(2H,t,J=6.8−Hz)、2.79(4H,s)、2.58(6H,s)、2.28(3H,s)、1.75(2H,m)、1.49(2H,m)、1.30(4H,m);
O−[1−(モルホリノスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−O’−スクシンイミジルカルボナート:クロマトグラフィー後に静置したときの結晶(430mg、95%):(400MHz,CDCl
3):δ 5.23(1H,m)、3.77(4H,dd,J=4.0,5,6−Hz)、3.39(1H,dd,J=6.4,14.4−Hz)、3.31(6H,重複)、3.17(1H,dd,J=4.8,14.4−Hz)、2.85(4H,s)、1.88(2H,m)、1.61(2H,m)、1.45(4H,m);及び
O−[1−メチルスルホニル−7−アジド−2−ヘプチル]−O’−スクシンイミジルカルボナート:クロマトグラフィー後に静置したときの結晶(360mg、95%):(400MHz,CDCl
3):δ 5.32(1H,m)、3.50(1H,dd,J=7.2,14.8−Hz)、3.29(2H,t,J=6.8−Hz)、3.21(1H,dd,J=0.8,4.0,14.8−Hz)、3.02(3H,s)、2.85(4H,s)、1.90(2H,m)、1.62(2H,m)、1.46(4H,m)。
【0142】
他のスクシンイミジルカルボナートも、この一般法に従って調製することができる。
【実施例8】
【0143】
アジド−リンカースクシンイミジルカルボナートの調製
【0144】
【化25】
【0145】
ピリジン(300μL)を、無水THF15mL中、実施例6のクロロホルマート(1.0mmol)及びN−ヒドロキシスクシンイミド(350mg)の撹拌溶液に滴下添加する。得られた懸濁液を10分間撹拌し、次に濾過し、濃縮して、粗製スクシンイミジルカルボナートを得る。シリカゲルでクロマトグラフィーにより精製して、精生成物を得る。
【実施例9】
【0146】
アジド−リンカースルホスクシンイミジルカルボナートの調製
【0147】
【化26】
【0148】
N,N−ジメチルホルムアミド(10mL)中、N−ヒドロキシスクシンイミドスルホン酸ナトリウムの撹拌懸濁液(1mmol)を、ピリジン(3mmol)及び実施例7のクロロホルマートで処理する。懸濁液が透明になった後、混合物を酢酸エチルで希釈する。
【実施例10】
【0149】
アミノ−リンカーアルコールの調製
【0150】
【化27】
【0151】
テトラヒドロフラン(THF)1mL中、実施例3のアジド−リンカーアルコールの撹拌溶液(R=フェニル、1mmol)を、THF(1.2mL)中トリメチル−ホスフィンの1.0M溶液で、周囲温度において1時間処理した。水(0.1mL)を添加し、混合物をさらに1時間撹拌し、次に混合物を、ロータリーエバポレーターを使用して蒸発乾固させた。残渣を酢酸エチルに溶解し、水及び塩水で洗浄し、次にMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発させて、生成物を得た。
【0152】
他のアミノ−リンカーアルコールも、この一般法に従って調製することができる。
【実施例11】
【0153】
tBOC−アミノ−リンカーアルコールの調製
【0154】
【化28】
【0155】
THF2mL中、実施例10のアミノ−リンカーアルコールの溶液(R=フェニル、1.0mmol)を、ジ−tert−ブチルジカルボナート(1.5mmol)で1時間かけて処理し、次に蒸発乾固させた。残渣を酢酸エチルに溶解し、水及び塩水で洗浄し、次にMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発させて、生成物を得た。ヘキサン中酢酸エチルの勾配を使用してシリカゲルでクロマトグラフィー処理して、精生成物を得た。
【0156】
他の
tBOC−アミノ−リンカーアルコールも、この一般法に従って生成することができる。
【実施例12】
【0157】
4−(N,N−ジエチルカルボキサミド)アニリンの調製
【0158】
【化29】
【0159】
(1)Ν,Ν−ジエチル4−ニトロベンズアミド:ジエチルアミン(5.6mL)を、DCM100mL中、4−ニトロベンゾイル塩化物(5.0g)の氷冷溶液に添加した。1時間後、混合物を、水、飽和NaHCO
3水溶液及び塩水で逐次的に洗浄し、次にMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発させて、無色液体を得、これを静置すると結晶化した。酢酸エチル/ヘキサンで再結晶化させて、生成物を薄黄色結晶として得た(4.6g)。
【0160】
(2)4−(N,N−ジエチルカルボキサミド)アニリン:メタノール100mL中、N,N−ジエチル4−ニトロベンズアミド(4.44g)及び10%パラジウム担持炭素(0.2g)の混合物を、ギ酸アンモニウム(4.0g)で周囲温度において2時間かけて処理した。混合物を、セライトを介して濾過し、濃縮した。残渣をDCMに再溶解し、0.5MのNa
2CO
3、水及び塩水で逐次的に洗浄し、次にMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発させて、結晶性材料を得た。酢酸エチル/ヘキサンで再結晶化させて、生成物であるアニリンを得た。
【0161】
また、ジエチルアミンをモルホリンで置き換えることによって、同じ手順に従って4−(モルホリノカルボニル)アニリンを調製した。
【実施例13】
【0162】
アジドカルバマートの調製
【0163】
【化30】
【0164】
実施例5の手順に従って、アジドアルコール2.5mmolから調製した粗製クロロホルマートを、THF20mLに溶解し、アニリン(2.5mmol)及びトリエチルアミン(0.7mL、5.0mmol)を添加した。1時間後、混合物を酢酸エチルで希釈し、1NのHCl、水、飽和NaHCO
3及び塩水で逐次的に洗浄し、次にMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発させた。残渣を、酢酸エチル/ヘキサンを使用してシリカゲルでクロマトグラフィー処理して、生成物であるカルバマートを得た。
【0165】
この方法に従って調製した化合物には、以下が含まれる。
O−[1−(フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニルカルバメート;
O−[1−(モルホリノスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニルカルバメート;
O−[1−(メタンスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニルカルバメート;
O−[1−(フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(モルホリノカルボキサミド)フェニルカルバメート;及び
O−[1−(フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(モルホリノスルホニル)フェニルカルバメート。
【実施例14】
【0166】
N−クロロメチルカルバマートの調製
【0167】
【化31】
【0168】
封止した20mLのバイアル中、実施例13のアジドカルバマート(1.0mmol)、パラホルムアルデヒド(45mg)、クロロトリメチルシラン(1mL)及びTHF(1mL)の混合物を、55℃の浴中で17時間加熱した。周囲温度に冷却した後、バイアルを開け、混合物をロータリーエバポレーターで濃縮して、濃厚な油とし、それを酢酸エチルに溶解し、再濃縮した。残渣を2:1酢酸エチル/ヘキサンに溶解し、濾過し、濃縮して、N−クロロメチルカルバマートを得、それをさらなる精製なしに使用した。
【0169】
この方法に従って調製した化合物には、以下が含まれる。
O−[1−(フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニル]−N−クロロメチルカルバメート;
O−[1−(モルホリノスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニル]−N−クロロメチルカルバメート;及び
O−[1−(メタンスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニル]−N−クロロメチルカルバメート。
【実施例15】
【0170】
N−アルコキシメチルカルバマートの調製
【0171】
【化32】
【0172】
実施例14のN−クロロメチルカルバマート(0.4mmol)を、ドライメタノール5mLに溶解した。1時間後、混合物を蒸発乾固させ、残渣をシリカゲルでクロマトグラフィー処理して(酢酸エチル/ヘキサン)、生成物を得た。
【0173】
この方法に従って調製した化合物には、以下が含まれる。
O−[1−(フェニルスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニル]−N−メトキシメチルカルバメート;
O−[1−(モルホリノスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニル]−N−メトキシメチルカルバメート;及び
O−[1−(メタンスルホニル)−7−アジド−2−ヘプチル]−N−[4−(ジエチルカルボキサミド)フェニル]−N−メトキシメチルカルバメート。
【実施例16】
【0174】
7−(tert−ブトキシカルボニルアミノ)−2−(R
1−スルホニル)−1−ヘプタノール
【0175】
【化33】
【0176】
p−トルエンスルホニル塩化物(1mmol)を、氷上で冷却したピリジン(2mL)中6−アジド−1−ヘキサノール(実施例1、1mmol)の溶液に添加する。30分後、混合物を周囲温度に温め、R
1−SH(1mmol)でさらに1時間処理する。混合物を酢酸エチルで希釈し、水、1NのHCl、水、飽和NaHCO
3水溶液及び塩水で逐次的に洗浄し、次にMgSO
4で乾燥させ、濾過し、蒸発させる。粗製チオエーテルを酢酸エチルに溶解し、過剰の過酢酸で処理して、スルホンを調製する。水による標準の後処理を行った後、スルホンを、シリカゲルでクロマトグラフィーにより精製する。DMF中、スルホン、ギ酸エチル及び2当量の水素化ナトリウムの混合物を、50℃に温めて、中間体であるアルデヒドを得、それをメタノール中水素化ホウ素ナトリウムで処理して、生成物であるアルコールを得る。
【実施例17】
【0177】
【化34】
【0178】
アミノ−チオールヘテロ二官能性PEGのTHF溶液を、反応が完了するまで過剰のジ−tert−ブチルジカルボナートで処理し、ジ−BOC生成物をクロマトグラフィーによって単離する。チオカルボナートを、メタノール中1当量のNaOMeで処理することによって切断し、2−ブロモエタノールを添加して、ヒドロキシエチルチオエーテルを形成し、それを過酢酸で酸化すると、生成物が形成される。
【実施例18】
【0179】
【化35】
【0180】
これらの化合物は、メトキシ−PEG−ヒドロキシエチルスルホンについて記載した方法に類似の方法によって調製することができる(参照によって本明細書に組み込まれる、Morpurgoら、Bioconjugate Chemistry(1996年)7:363〜368頁)。例えば、11−アジド−3,6,9−トリオキサウンデカン−1−オール(x=3)(3mmol)のトルエン溶液を、共沸蒸留によって乾燥させる。CH
2Cl
2に溶解した後、メタンスルホニル塩化物を添加し、その後トリエチルアミンを添加して、メシラートを形成する。メシラート水溶液を、2−メルカプトエタノール及び2NのNaOHで処理して、ヒドロキシエチルスルフィドを形成する。その後、例えばタングステン酸触媒の存在下で過酸化水素を使用し、又は代替として過酢酸を使用して、スルフィドをスルホンに酸化する。次に、ヒドロキシエチルスルホンを、先の実施例に記載の方法に従って、スクシンイミジルカルボナートとして活性化する。
【実施例20】
【0182】
式(1)の架橋剤の調製
【0183】
【化37】
【0184】
アセトニトリル2mL中、7−アジド−1−(フェニルスルホニル)−2−ヘプチル(hepyl)スクシンイミジルカルボナート(119mg、0.27mmol)の溶液を、11−アジド−3,6,9−トリオキサウンデカン−1−アミン(65mg、0.30mmol)で周囲温度において10分間処理した。溶媒を蒸発させた後、残渣を、CH
2Cl
21mLに溶解し、4gのシリカゲルカラムによって、ヘキサン、3:1ヘキサン/酢酸エチル、1:1ヘキサン/酢酸エチル及び1:2ヘキサン/酢酸エチルのステップ勾配を使用してクロマトグラフィー処理した。生成物を含有する画分を貯蔵し、蒸発させて、生成物を得た。
【実施例21】
【0185】
4分岐PEG−[DBCO]
4の調製
【0186】
【化38】
【0187】
THF5mL中、ペンタエリスリトールコアを有するアミノプロピル末端基を有する40kDaの4分岐ポリエチレングリコール(NOF America、PTE400PA)(500mg、12.5μmol)、トリエチルアミン(20μL)及び6−アザ−5,9−ジオキソ−9−(1,2−ジデヒドロジベンゾ[b,f]アゾシン−5(6H)−イル)ノナン酸スクシンイミジルエステル(「DBCO−NHS」、Click Chemistry Tools、Macon、GA)(36mg、75μmol)の溶液を、周囲温度で24時間撹拌した。反応混合物をメチルtert−ブチルエーテル(MTBE)50mLに添加することによって、生成物を沈殿させた。沈殿物を真空濾過によって収集し、真空下で乾燥させて、生成物510mgを得た。
【実施例22】
【0188】
ヒドロゲルの形成
pH5の10mMアセテート緩衝液100μL中、4分岐PEG−[DBCO]
4(実施例21)4.5mgの溶液を、実施例20のジアジド架橋剤の40mg/mL溶液5.0μLで処理した。溶液が急速に固化して、弾性のヒドロゲルが得られた。
【0189】
同様に、pH5の10mMアセテート緩衝液100μL中、4分岐PEG−[DBCO]
4(実施例21)4.5mgの溶液を、実施例20のジアジド架橋剤の40mg/mL溶液2.5μLで処理した。溶液がゲル化して、粘性のヒドロゲルが得られた。
【実施例23】
【0190】
式(2)の多価PEG−(リンカー−アジド)
x架橋試薬の調製
多価PEG−(リンカー−アジド)
x架橋試薬の調製は、m=0、n=約100、s=0、t=4、W=O(C=O)NH、Q=C(CH
2)
4、R
1=PhSO
2、R
2=H、一方のR
5=H、他方のR
5=(CH
2)
5N
3である式(2)の化合物の調製によって例示される。実施例7の適切なアジド−リンカー−スクシンイミジルカルボナートを置換することによって、式(2)の他の化合物を同じ方法を使用して調製した。必要に応じて、他の実施例の類似のアジド−リンカー−スクシンイミジルカルボナートを使用することもできる。
【0191】
従って、ACN1mL中25μmolのアジド−リンカー−スクシンイミジルカルボナート溶液(実施例7)を、水1mL及び1.0MのNaHCO
340μL(40μmol)中、20kDaの4分岐PEG−アミン塩酸塩(ペンタエリスリトールコア、JenKem Technologies)5μmol(100mg)のミックスに添加した。周囲温度で1時間後、溶液を50%メタノール1Lに対して、その後メタノール1Lに対して透析した(12〜14kのMWCO)。蒸発させた後、残渣(109mg)を、滅菌濾過した10mMのNaOAc2.12mL、pH5.0に溶解し、−20℃で凍結保存した。DBCO−酸との反応によって測定されたアジド濃度は、9.5mMであった。
【実施例24】
【0192】
多価PEG−(シクロオクチン)
xの調製
PEG
20kDa−(DBCO)
4:アセトニトリル(0.5mL、30μmol、1.5当量)中、新たにクロマトグラフィー処理したDBCO−NHS(Click Chemistry Tools)の60mM溶液を、20kDaの4分岐PEG−アミン塩酸塩(ペンタエリスリトールコア、JenKem Technologies;100mg、5μmol)及びジイソプロピルエチルアミン(0.010mL、57μmol)のアセトニトリル(1mL)溶液に添加した。周囲温度で2時間撹拌した後、混合物を減圧下で蒸発乾固させた。残渣を50%メタノール水溶液(4mL)に溶解し、50%メタノール水溶液に対して、その後メタノールに対して透析した。蒸発させた後、残渣(100mg)を水に溶解して、50mg/mLの原液を得(分光光度的アッセイによって10mMのDBCO)、それを−20℃で凍結保存した。
【0193】
PEG
40kDa−(DBCO)
8:THF中、DBCO−NHSの40mM溶液1mL(40μmol)を、ACN0.6mL中、40kDaの8分岐PEG−アミン塩酸塩(トリペンタエリスリトールコア、JenKem Technologies)168mg(4.2μmol)及びジイソプロピルエチルアミン12.9μL(74μmol)の溶液に添加し、その混合物を周囲温度で一晩保持した。反応混合物を50%メタノール2Lに対して、その後メタノール1Lに対して透析した。蒸発させた後、残渣(149mg)を水1.49mLに溶解し、−20℃で凍結保存した。分光光度により測定したDBCO濃度は、16mMであった。
【0194】
PEG
40kDa(BCN)
8:DMF2mL中、40kDaの8分岐PEG−アミン・HCl200mg(JenKem Technologies;40μmolのNH
2)、BCN p−ニトロフェニルカルボナート20mg(SynAffix;63μmol)及びN,N−ジイソプロピルエチルアミン20μL(115μmol)の溶液を、周囲温度で16時間撹拌した。pH7.5の0.1MのKP
i中100mMのタウリン0.5mLで1時間クエンチした後、混合物を、水、1:1メタノール/水、及びメタノールに対して12kDaの膜を使用して逐次的に透析した。蒸発させた後、残渣をTHF2mLに溶解し、メチル
tブチルエーテル10mLで沈殿させた。生成物を収集し、乾燥させた(190mg)。
【実施例25】
【0195】
BODIPY−アジド浸食プローブの調製
アセトニトリル(13μL、13μmol)中、11−アジド−3,6,9−トリオキサウンデカン−1−アミンの100mM溶液を、DMSO(100μL、1.28μmol)中BODIPY TMR−X SE(Invitrogen)の12.8mM溶液に添加した。周囲温度で30分間後、混合物をpH7.4の0.1MのKP
iで2mLに希釈し、500mgのC18 BondElut(商標)抽出カラム(Varian)に載せた。カラムを、各回、水及び20%ACN/水5mLで逐次的に洗浄し、次に50%ACN/水で溶出し、濃縮乾固させた。残渣を、ACN1.0mLに溶解し、濃度(1.0mM)を、ε
544nm=60,000M
−1cm
−1を使用して測定した。
【実施例26】
【0196】
フルオレセイン−アジド浸食プローブの調製
DMF(100μL)中5−(アミノアセトアミド)フルオレセイン(Invitrogen)の10mg/mL溶液を、6−アジドヘキシルオキシスクシンイミジルカルボナート(100μL)の25mM溶液と1時間混合して、フルオレセイン−アジド浸食プローブの12.5mM溶液を得た。
【実施例27】
【0197】
式(2)の多価架橋試薬を使用するヒドロゲルの調製
4×4ヒドロゲルを調製するために、PEG
20kDa(DBCO)
4(実施例24;250μL、2.5μmolのDBCO末端基)の50mg/mL水溶液を、DMF中フルオレセイン−アジド浸食プローブの10mM溶液25μL(実施例26;0.25μmolのアジド)と混合し、周囲温度で30分間保持した。一定分量50μL(0.42μmolのDBCO)を、pH5.0の10mMのNaOAc28μLと混合し、その後50mg/mLのPEG
20kDa(リンカー−アジド)
442μL(実施例23;0.42μmolのアジド)と混合した。成分をボルテックスすることによって混合し、手短に遠心分離処理して、任意の気泡を除去し、シラン処理したガラス顕微鏡スライド上に載せた64μL(9×1mm)の円形ゴム灌流チャンバ(Grace Bio−Labs)に、迅速にピペッティングし、一晩硬化させた。
【0198】
4×8ヒドロゲルの調製を、PEG
20kDa(DBCO)
4の代わりにPEG
40kDa(DBCO)
8又はPEG
40kDa(BCN)
8(実施例24)の溶液を使用して同じ方法に従って実施し、8分岐シクロオクチンと4分岐リンカー−アジドモノマーの比率を調整して、所望のwt%の全PEG及び架橋度を有するゲルを得た。
【実施例28】
【0199】
逆ゲル化時間の測定
ゲルディスク(実施例27)を、37℃の緩衝液に懸濁させ、溶液のOD
493を周期的に測定して、フルオレセインの可溶化をモニタした。逆ゲル化時間(t
RGEL)は、ゲルが完全に可溶化した時間とした。ゲル化時間のpH依存度を、m=0、n=約100、s=0、t=4、W=O(C=O)NH、Q=C(CH
2)
4、R
1=(4−クロロフェニル)SO
2、R
2=H、一方のR
5=H、他方のR
5=(CH
2)
5N
3である式(2)の化合物を使用して架橋したPEG
20kDa(DBCO)
4から調製した4×4ゲル(重量5%の全PEG)を使用して測定した。ゲルディスクを、pH7.8〜9.0の緩衝液に懸濁させた。脱ゲル化曲線を、以下の測定時間と共に
図5に示す。pH7.8=20.9時間、pH8.1=10.9時間、pH8.4=5.6時間、pH8.7=2.8時間及びpH9.0=1.5時間。
図6に示されている通り、脱ゲル化時間は、pHと共に線形的に変わり、pHがそれぞれ1単位低下すると10倍延長する。
【0200】
脱ゲル化時間に対するリンカーの調節因子R
1の効果を、m=0、n=約100、s=0、t=4、W=O(C=O)NH、Q=C(CH
2)
4、R
2=H、一方のR
5=H、他方のR
5=(CH
2)
5N
3であり、R
1が、(4−クロロフェニル)SO
2、フェニル−SO
2、モルホリノ−SO
2又はCNのいずれかである式(2)の化合物を使用して架橋したPEG
20kDa(DBCO)
4からヒドロゲルディスクを調製することによって決定した。調節因子をもたない(R
1R
2CHが存在しない)対照ゲルを調製した。pH7.4、37℃のKP
iに懸濁させたディスクの脱ゲル化曲線を、
図3に示す。
図4に示されている通り、参照によって本明細書に組み込まれる、5−(アミノアセトアミド)フルオレセインの放出によって決定されるリンカー切断の半減期と(Santiら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA(2012年)109:6211〜6216頁参照)、対応するヒドロゲルの脱ゲル化時間との間には、線形相関がある。
【実施例29】
【0201】
ヒドロゲルからの薬物放出の制御
ヒドロゲルをPEG
40kDa−(DBCO)
8から調製した。この場合、シクロオクチンの一部を、少量のアジド浸食プローブ及び式(3)のアジド−リンカー−薬物[リンカーは、調節基R
1を含んでいた]とまず反応させ、次にm=0、n=約100、s=0、t=4、W=O(C=O)NH、Q=C(CH
2)
4、R
2=H、一方のR
5=H、他方のR
5=(CH
2)
5N
3であり、R
1が、(4−クロロフェニル)SO
2、フェニル−SO
2、モルホリノ−SO
2又はCNのいずれかである式(2)の化合物を使用して架橋した。薬物放出が、ヒドロゲルの浸食及びその後の脱ゲル化よりも急速に生じ得るように、式(3)のアジド−リンカー−薬物の調節基及び式(2)の化合物を選択した。
【0202】
一例では、5−(アセトアミド)フルオレセイン(AAF)を薬物代替物として使用して、ゲルを調製した。式(3)のR
1調節基を、下記の通り変更した。従って、100mg/mLのPEG
40kDa−(DBCO)
850μL(1.0μmolのDBCO末端基)を含有する水溶液(99.6μL)を、1:1DMF:アセトニトリル中、12.5mMのアジド−リンカー−AAF(0.078μmol)6.2μL(リンカーは、様々な調節因子の1つを含んでいた)、浸食プローブとしての、アセトニトリル中1.0mMのBODIPY−アジド(0.015μmol)15μL、過剰のシクロオクチンをキャップするための、水中20mMのO−(2−アジドエチル)ヘプタエチレングリコール(0.40μmol)20μL、及び水8.4μLと混合した。周囲温度で10分後、関与しなかった0.5μmolのDBCO基を含有する溶液を、pH5.0の10mMのNaOAc中、R
1=CH
3−SO
2である式(2)の化合物(0.5μmolのアジド基)の50mg/mL溶液50μLと混合した。
【0203】
二重キャストゲルを、pH7.4、37℃の0.1MのHEPESに懸濁させ、溶液中のフルオレセインのOD
493及びBODIPYのOD
546を周期的に測定した。式3のR
1が様々な基である場合のフルオレセインの放出時間を、
図7に示した通り測定した。BODIPY浸食プローブの完全な可溶化によって決定された逆ゲル化時間は、630±39(S.D.)時間(n=8)であった。フルオレセインの可溶化は、一次速度則[F]
t/F
tot=exp(−k
obsdt)に従い、放出された全フルオレセインについての見掛けのk
obsd±S.E.は、R
1=4−ClPh−SO
2−では0.021±0.00014時間
−1、R
1=Ph−SO
2−では0.011±0.00031時間
−1、R
1=4−MeO−Ph−SO
2−では0.0053±0.00022時間
−1、R
1=MeSO
2−では0.0033±0.00010時間
−1であった。速度データを、等式S6(実施例30)を使用してゲルから直接放出されたフルオレセインに対するプロットに変換した。
【0204】
薬物放出のpH依存度を、pH7.4〜pH9.0でR
1=(4−クロロフェニル)SO
2を使用して調製した先のゲルからのAAF放出を観測することによって決定した。
図8及び9に示されている通り、薬物放出速度は、pHの上昇に伴って増大する。
【実施例30】
【0205】
薬物放出及びゲル浸食のモデル化
薬物放出及びゲル分解は、以下の通り生じ、最終生成物は、遊離薬物及びゲルモノマーである。
(ゲル)−(薬物)
n→薬物+EP−ゲル断片−薬物→薬物+EP−モノマー
【0206】
溶液への薬物又は薬物代替物の放出は、L1がゲルから切断されることによって直接的に、又はL2の切断によるゲルの浸食から生じる可溶化断片から、生じ得る。薬物が、無傷ゲルから放出されたか、可溶化ゲル断片から放出されたかを区別するために、時間tにおける無傷ゲルと溶液の間の薬物担持結節部の分布を決定する必要がある。本発明の研究では、ゲル分解をモニタしモデル化するための、報告済みの手法を改変したものを使用した(2)。ゲルの結節部に恒久的に結合する浸食プローブEPの出現により、溶液中の結節部の割合をEP(t)/E
∞として算出することができる。従って、これらの可溶化結節部の上に元々存在する薬物の濃度D
s(t)は、等式S1によって与えられる。
D
s(t)=D
∞*EP(t)/EP
∞又は(D
∞/EP
∞)
*EP(t)[S1]
【0207】
時間tにおいて無傷ゲルから放出された薬物D
g(t)は、等式S2に示す通り、放出された全薬物D(t)と、可溶化ゲル断片に含有されているか、又はそれから放出される薬物D
s(t)との差分である。
D
g(t)=D(t)−D
s(t)=D(t)−(D
∞/EP
∞)
*EP(t)[S2]
【0208】
無傷ゲル結節部からの薬物放出の一次速度の算出は、浸食によってゲルの量が変化することに起因して、D(t)の測定からは直接得られないが、無傷ゲル上の残りの薬物の割合に基づいて算出することができる。放出された浸食プローブEP(t)に基づくと、残りのゲルの割合は、1−EP(t)/EP
∞になる。従って、この量のゲルによって元々担持されていた薬物の量は、D
∞*(1−EP(t)/EP
∞)によって与えられる。無傷ゲル上の残りの薬物は、D
∞−D(t)なので、無傷ゲル上の残りの薬物の割合D
f,gel(t)は、等式S3〜S4として与えられる。
D
f,gel(t)=[D
∞−D(t)]/[D
∞*(1−EP(t)/EP
∞)][S3]
=[1−D(t)/D
∞]/[1−EP(t)/EP
∞][S4]
【0209】
ゲルからの薬物の一次放出については、D
f,gel(t)によって、無傷ゲルからの薬物放出速度を説明する速度定数k
L1を有する指数関数的減衰、等式S5が示される。等式S4及びS5を統合するとS6が得られ、これを使用すると、無傷ゲルからの直接的な薬物放出の速度を実験的に推定することができる。
D
f,gel(t)=e
−kL1t[S5]
D
f,gel(t)=[1−D(t)/D
∞]/[1−EP(t)/EP
∞]=e
−kL1t[S6]
【0210】
経時的にゲルから放出される薬物の量は、ゲルの浸食速度と一緒に、放出速度k
L1によって決まる。浸食プローブの可溶化が、速度k
solの時間t=0とt
1の間の一次過程で近似できる場合、その時間の間にゲルから放出される薬物の量を、等式S7と近似することができる。
D
g(t
1)=D
∞*(k
L1/(k
sol))
*[1−e
−(ksol)t1][S7]
【0211】
無傷ゲル上の残りの薬物が、時間t
1で無視できる場合、ゲルから直接放出される薬物の全ての割合は、等式S8で与えられる。
D
g(t
1)/D
∞=k
L1/k
sol=t
1/2,sol/t
1/2.L1[S8]
【実施例31】
【0212】
脱ゲル化時間に対する架橋密度の効果
表2に詳説した通り、水中100mg/mLのPEG
40kDa−(BCN)
8(20mMのBCN末端基)の混合物を、水中適量の10mMのフルオレセイン−アジド及びm=0、n=約100、s=0、t=4、W=O(C=O)NH、Q=C(CH
2)
4、R
2=H、一方のR
5=H、他方のR
5=(CH
2)
5N
3、R
1=(4−クロロフェニル)SO
2である式(2)の化合物(10mMのアジド)、及び水中50mMのO−アジドエチル−ヘプタエチレングリコールと組み合わせて、8分岐PEGモノマー1個当たり4、5、6、7又は7.8個の架橋を有する4%PEGヒドロゲルを調製した。キャストゲルを、pH9.2の0.1Mホウ酸塩1mLに入れ、37℃で保持した。ゲルの溶解を、上清中のOD
493の出現によってモニタした。
【0213】
【表2】
【0214】
ゲルは、pH9.2では表2に示した脱ゲル化時間で、pH7.4では実施例28で決定された通り、(pH9.2における脱ゲル化時間)
*10
(9.2−7.4)として算出される脱ゲル化時間で溶解した。予想通り、脱ゲル化時間は、それぞれの8分岐モノマーとの架橋数が増大するにつれて延長した。
【実施例32】
【0215】
エキセナチドを放出する分解性ヒドロゲルの調製
調節因子としてR
1=MeSO
2−を有するアジド−リンカーにα−末端で連結したエキセナチドを、既に記載した通りAnaSpec(Fremont、CA)で固相ペプチド合成によって合成し(Santiら、Proc.Nat.Acad.Sci.USA(2012年)109:6211〜6216頁)、R
1=MeSO
2、R
2=H、m=0、一方のR
5=H、他方のR
5=(CH
2)
5N
3、Y=NH、D=N−末端アミノ基を介して連結したエキセナチドである式(3)の化合物を得た。pH7.8の1.0Mリン酸30μL中アジド−リンカー−エキセナチド(1.2mg、270nmol)、及び水50μL中8分岐PEG
40kD−(BCN)
8(実施例24;5mg;50μL、1000nmolのBCN基)を、周囲温度で1時間保持し、次に浸食プローブとしてのACN中1mMのBODIPY−アジド(20nmol)20μL、及び水71中、m=0、n=約100、s=0、t=4、W=O(C=O)NH、Q=C(CH
2)
4、R
2=H、一方のR
5=H、他方のR
5=(CH
2)
5N
3、R
1=CN(3.55mg;710nmolのN
3基;実施例23)である式(2)の架橋剤を添加した。ゲルを一晩硬化させ、次にpH7.4のPBS1mL中、4℃で保存した。
【実施例33】
【0216】
エキセナチドを放出する分解性ヒドロゲルからのエキセナチドの放出
ゲルディスク(実施例32)を、pH8.8の0.1Mホウ酸塩緩衝液1.0mLに入れ、37℃で保持した。エキセナチド(遊離ペプチドとして、又は可溶化ゲル−エキセナチド断片のいずれかとして)の可溶化及びゲル浸食を、上清を周期的にサンプリングすることによって、それぞれ280nm及び544nmでモニタした。これらの結果を、
図10に示す。放出を、ゲル浸食に応じて調整される可溶化として算出した。エキセナチドの可溶化は、pH8.8でt
1/2=20.7時間の一次過程であったが、これは、その反応が水酸化物イオンに関して一次であるものと想定され、pH7.4では520時間(21日)の半減期に相当する。ゲルから直接放出された薬物(実施例30)は、全エキセナチドの約87.8%を占めており、pH8.8で23.6時間のt
1/2と算出され、これは、pH7.4では593時間(24.7日)に相当する。逆ゲル化は、pH8.8では172時間目に観測され、これは、pH7.4では約180日目に相当していた。
【実施例34】
【0217】
ヒドロゲルからの封入タンパク質の拡散
約90OD
280/mLのミオグロビン(17.7kDa)、炭酸脱水酵素(29.0kDa)及びBSA(66.4kDa)の原液を、pH7.4の0.1MのKP
i中で調製した。100mg/mLのPEG
20kDa−(NHCO
2(CH2)
6N
3)
4(50uL)を、100mg/mLの20kDaのPEG−(DBCO)
4(50μL)、タンパク質原液(50μL)及び10×−PBS(100μL)の混合物に添加することによって、PEGヒドロゲル(4%)を調製した。キャストゲルを、pH7.4、37℃の0.1MのKP
i2mLに懸濁し、溶液中のOD
280を周期的に測定した。溶液への放出についてのt
1/2値は、ミオグロビンでは約20分間、炭酸脱水酵素では24分間、BSAでは150分間であった。
【実施例35】
【0218】
誘導体化ヒアルロン酸の調製
mw=1.6×10
6のヒアルロン酸ナトリウム(Lifecore Biomedical;10.4mg、0.0275mmolのカルボキシラート)を、pH5.5の0.1MのMES緩衝液1.05mL中、4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウム塩化物(DMTMM;30.4mg、0.110mmol、4当量)の溶液で処理した。得られた混合物を15分間激しく振とうして溶解させた。MES緩衝液0.3mL中、DBCO−PEG4−NH2(Click Chemistry Tools;2:1ACN:MeOH中0.113mLの24.3mM、0.00275mmol、0.1当量)の溶液を添加した。得られた混合物を24時間静置し、次に以下の通り3.5時間及び24時間目にTNBSアッセイを実施することによって、遊離アミンの消費について分析した。反応混合物0.05mLを、0.004%w/vの2,4,6−トリニトロベンゼンスルホン酸及び25%メタノールを含有する0.075Mホウ酸塩緩衝液(pH9.34)中で1mlまで希釈した。420nmにおける反応物の吸光度を、安定になるまで追跡調査した(約1時間)。ある量のDMTMM、ヒアルロン酸又はDBCO−PEG4−NH2を含有する場合の反応を、対照として使用した。反応が完了したら、反応混合物を水8mLで希釈し、水に対して5回、次にメタノールに対して1回透析した(12000〜14000MWCO)。透析した生成物を減圧下で濃縮乾固させ、高真空下によりP
2O
5上で乾燥させて、DBCO−ヒアルロン酸(11mg、約0.029mmolの二糖)を透明なガラス状の乾燥固体として得た。この材料を、水3mLに溶解させて、0.276mMのDBCOを含有する(ε
309=13,448M
−1cm
−1に基づく、わずかに脂肪分の多い非常に粘性の高い溶液を得た。これは、置換度2.9%に相当する(TNBSアッセイで消費されたアミンに対して5.3%)。異なる分子量のヒアルロン酸を、この方法に従って、DIFO又はBCNなどのシクロオクチン試薬で誘導体化することができる。
【0219】
アミン誘導体化ヒアルロン酸を、以下の方法に従って調製した。MW=76,000のヒアルロン酸ナトリウム(Lifecore Biomedical;154mg、0.385mmolの二糖/カルボキシラート)の水(4mL)溶液に、1,3−ジアミノプロパン(0.973mL、856mg、11.6mmol、30当量)を添加した。得られた溶液のpHを、6NのHCl(最終体積は約7mL)で7.0に調整し、次に固体N−ヒドロキシスクシンイミドを添加し(177mg、1.54mmol、4当量)、その後、固体1−(3−ジメチルアミノ)プロピル−3−エチルカルボジイミドHCl塩(294mg、1.54mmol、4当量)を添加した。反応が進行するにつれて、酸性になった(10分後にpH5.3)。安定になるまで、10分毎にpHを調整して7.2に戻した(約1時間)。18時間撹拌した後、混合物を、PBSに対して、5%NaClに対して、水に対して2回、次にメタノールに対して透析した(12〜14k MWCO)。混合物を濃縮乾固させて、プロピルアミノ−ヒアルロン酸85mgを白色固体として得た。一定分量のこの材料(7.4mg、約0.019mmolの二糖)を、水(0.5mL)に溶解して、約38mMの二糖溶液を得た。この溶液(0.025mL)を、TNBSアッセイにより0.02%w/vのTNBSを含有するpH9.36のホウ酸塩緩衝液(1mL)中でインキュベートすることによって、遊離アミン含量について評価した。420nmにおける吸光度を、安定になるまでモニタした(約1時間)。アッセイでは、7%の置換度が示された。
【0220】
mw=1.6×10
6の7%DSプロピルアミノHA(0.64mMのNH
20.5mL、320nmolのNH
2)の水溶液に、100mMのPBS0.1mLを添加し、その後、DBCO−PEG4−NHSエステル(Click Chemistry Tools;ε
309=13,449M
−1cm
−1で決定して0.0308mLの25mM、770nmol、2.4当量)のメタノール溶液を添加した。得られた混合物を4時間静置した。TNBSアッセイでは、誘導体化ヒアルロン酸上の利用可能なアミンの81%が喪失したことが示された。1.2当量のDBCO−PEG4−NHSエステルを使用する並発反応によって、利用可能なアミンの64%が消費された。精製のために、2つの反応物を組み合わせ、PBSに対して、次に5%w/vのNaClに対して、次に水に対して2回、次にメタノールに対して1回透析した(12〜14k MWCO)。透析混合物を濃縮乾固させて、白色ガラス状固体2.6mgを得た。この材料を、水1mLに溶解して、ε
309=13,448M
−1cm
−1に基づいて6.5mMの二糖及び0.31mMのDBCOの溶液を得たが、これは、DBCO置換度4.8%及びアシル化収率71%に相当する。
【実施例36】
【0221】
ヒアルロン酸ヒドロゲルの調製
シクロオクチン誘導体化ヒアルロン酸(実施例35)を、m=0、X=O−CO−NH−(CH
2CH
2O)
3CH
2CH
2N
3、R
1=PhSO
2、R
2=H、一方のR
5=H、他方のR
5=(CH
2)
5N
3である式(1)のジアジド架橋剤で架橋することによって、ヒアルロン酸ヒドロゲルを調製する。ゲルの形成は、典型的には、場合によっては封入されるタンパク質又は低分子溶液の存在下で、2:1モル比のシクロオクチンとジアジド架橋剤を使用して、水又は緩衝水中で実施される。
【0222】
ヒアルロン酸ヒドロゲルマトリックスからのタンパク質の拡散を研究するために、DBCO−HA(実施例35)、6.6%DS DBCO、3.9mMのDBCO)の水溶液(0.065mL)を、MW=2000又は5000のいずれかのジアジド−PEGの溶液(0.005mLの25mM、0.5当量/DBCO)と混合することによって、安定なヒドロゲルを調製した。このヒドロゲルマスターミックス0.07mLを直ちに、標準の2.5mLのプラスチック製キュベットの底部で封入用のタンパク質又は低分子基質溶液(0.01mL)と混合した。ゲルからの拡散半減期を、以下の表3に示す。
【0223】
【表3】
【0224】
あるいは、薬物は、先の実施例29及び実施例32に記載の通り、利用可能なシクロオクチンのサブセットをアジド−リンカー−薬物と反応させることによって、ゲルが形成される前に、ヒアルロン酸に放出可能に連結させることができる。この場合、ゲルの形成に使用されるジアジド架橋剤の量は、薬物が結合した後に残る利用可能なシクロオクチンに基づいて算出される。R
D=(4−クロロフェニル)SO
2のリンカーを介する5−(アミノアセトアミド)フルオレセインの結合によって、ヒアルロン酸ヒドロゲルが得られ、これは、pH7.4、37℃においてt
1/2=49時間でAAFを放出した。
【実施例37】
【0225】
化学量が制御されたヒドロゲルを調製する方法
図11に図示した通り、市販のS−t−ブチルチオ−システイン(H Cys(
tBuS))を、シクロオクチンスクシンイミジルエステル(例えば、DBCO−HSE又はBCN−HSE)でアシル化して、CO−Cys(
tBuS)OH(A’=COOH;B=シクロオクチン;C=
tBuS)を得る。4分岐アミノPEG(A=NH
2)を、このCO−Cys(tBuS)OHでアシル化して(例えば、カルボジイミドを使用する)、CO/tBuS官能化PEGを得る。アジド−リンカー(R
11)−薬物を、シクロオクチン残基に結合させ、次に例えばジチオトレイトールなどのチオール又はTCEPなどのホスフィンを使用してtBuS基を除去し、チオール誘導体化PEGから小さいチオールを精製し(例えば、透析又はゲル濾過クロマトグラフィーを使用して)、シクロオクチン−マレイミド、シクロオクチン−ハロアセトアミド又はシクロオクチン−ビニルスルホンアミドと反応させて、分子1個当たり正確に4つのシクロオクチンゲル化部位を導入する。次に、この中間体を、反応性官能基がアジドである式(1)又は(2)の化合物を使用して架橋して、ヒドロゲルを形成する。あるいは、チオール誘導体化PEG(シクロオクチン−マレイミドと反応する前)は、反応性官能基がMichael受容体、又はアルキル化剤、例えばマレイミド、ビニルスルホン、ビニルスルホンアミド、アクリラート、アクリルアミド、ハロアセタートもしくはハロアセトアミドである式(1)又は(2)の化合物で重合することもできる。S−t−ブチルチオ−システイン以外の直交的に保護されたアダプター、例えば適切に保護されたリシン、アスパラギン酸もしくはグルタミン酸、又はアミノ酸ベースではない合成アダプターも同様に使用することができる。
以下、本発明の参考形態の一例を付記する。
<1>
少なくとも一つの第1の反応性ポリマーを、切断可能な架橋剤化合物と反応させるステップを含む、生分解性ヒドロゲルを調製する方法であって、
ここで、前記切断可能な架橋剤化合物が、前記反応性ポリマーと反応する第1の官能基と、生理的条件下で脱離によって切断される部分とを含み、ここで、前記部分が、反応性ポリマーと反応する第2の官能基を含む方法。
<2>
前記切断可能な架橋剤化合物が、式(1)で表される化合物である、<1>に記載の方法
【化1】
ここで、
mは、0又は1であり、
Xは、生理的条件下で脱離可能な反応性ポリマーに結合することができる官能基と、前記第2の官能基であるZ
2とを含み、
ここで、R
1、R
2及びR
5の少なくとも1つは、ポリマーに結合することができる前記第1の官能基であるZ
1を含み、
R
1及びR
2の一方のみは、Hであってよく、又は置換されていてもよい、アルキル、アリールアルキルもしくはヘテロアリールアルキルであってよく、
R
1及びR
2の少なくとも一方又は両方は、独立して、CN、NO
2、
置換されていてもよいアリール;
置換されていてもよいヘテロアリール;
置換されていてもよいアルケニル;
置換されていてもよいアルキニル;
COR
3又はSOR
3又はSO
2R
3;
ここで、R
3は、H、又は置換されていてもよいアルキル、
置換されていてもよい、アリールもしくはアリールアルキル、
置換されていてもよい、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル、又は
OR
9もしくはNR
92であり、ここで各R
9は、独立して、Hもしくは置換されていてもよいアルキルであり、又は両方のR
9基は、それらが結合する窒素原子と一緒になって複素環を形成し、
又は、SR
4であり、
ここで、R
4は、置換されていてもよいアルキル、
置換されていてもよい、アリールもしくはアリールアルキル、又は
置換されていてもよい、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルであり、
あるいは、R
1及びR
2は、結合して3〜8員環を形成していてもよく、
各R
5は、独立して、Hであるか、又は置換されていてもよい、アルキル、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、(OCH
2CH
2)
pO−アルキル(p=1〜1000)、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルである。
<3>
Xが、スクシンイミジルカルボナート、スルホスクシンイミジルカルボナート、ニトロフェニルカルボナート、クロロホルマート、フルオロホルマート、又は、以下の化合物である、<2>に記載の方法:
【化2】
ここで、T
*は、O、S又はNR
6であり、ここで、R
6は、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアリールアルキル又は置換されていてもよいヘテロアリールアルキルであり、zは1〜6であり、Yは、存在しないか、又はOR
7もしくはSR
7であり、ここで、R
7は、置換されていてもよいアルキレン、置換されていてもよいフェニレン、又は(OCH
2CH
2)
p(p=1〜1000)であり、Z
2は、反応性ポリマーと結合することができる官能基である。
<4>
Z
1及びZ
2が、独立して、N
3、NH
2、NH−CO
2tBu、SH、S
tBu、マレイミド、CO
2H、CO
2tBu、1,3−ジエン、シクロペンタジエン、フラン、アルキン、シクロオクチン、アクリラート又はアクリルアミドを含む、<3>に記載の方法であって、ここで、一方のZがN
3を含む場合、他方はアルキン又はシクロオクチンのいずれも含まず;一方のZがSHを含む場合、他方はマレイミド、アクリラート又はアクリルアミドのいずれも含まず;一方のZがNH
2を含む場合、他方はCO
2Hを含まず;一方のZが1,3−ジエン又はシクロペンタジエンを含む場合、他方はフランを含まない方法。
<5>
前記切断可能なリンカー化合物が、次式で表される、<1>に記載の方法
【化3】
ここで、
mは、0又は1であり、
nは、1〜1000であり、
sは、0〜2であり、
tは、2、4、8、16又は32であり、
Wは、O(C=O)O、O(C=O)NH、O(C=O)S、
【化4】
であり、
Qは、価数=tを有するコア基であり、
R
1、R
2及びR
5の少なくとも1つは、ポリマーに結合することができる官能基であるZ
1を含み、
少なくとも一方又は両方のR
1及びR
2は、独立して、CN、NO
2、
置換されていてもよいアリール、
置換されていてもよいヘテロアリール、
置換されていてもよいアルケニル、
置換されていてもよいアルキニル、
COR
3又はSOR
3又はSO
2R
3
ここで、R
3は、H、又は置換されていてもよいアルキル、
置換されていてもよい、アリールもしくはアリールアルキル、
置換されていてもよい、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル、又は
OR
9もしくはNR
92であり、ここで各R
9は、独立して、Hもしくは置換されて
いてもよいアルキルであり、又は両方のR
9基は、それらが結合する窒素原子と一緒になって複素環を形成し、
又は、SR
4であり
ここで、R
4は、置換されていてもよいアルキル、
置換されていてもよい、アリールもしくはアリールアルキル、又は
置換されていてもよい、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルであり、
R
1及びR
2は、結合して3〜8員環を形成していてもよく、
あるいは、R
1及びR
2の一方のみは、Hであってよく、又は置換されていてもよい、アルキル、アリールアルキルもしくはヘテロアリールアルキルであってよく、
各R
5は、独立して、Hであるか、又は置換されていてもよい、アルキル、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、(OCH
2CH
2)
pO−アルキル(p=1〜1000)、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルである。
<6>
Z
1が、N
3、NH
2、NH−CO
2tBu、SH、S
tBu、マレイミド、CO
2H、CO
2tBu、1,3−ジエン、シクロペンタジエン、フラン、アルキン、シクロオクチン、アクリラート又はアクリルアミドを含む、<5>に記載の方法。
<7>
Z
1が、N
3、NH
2、NH−CO
2tBu、SH、S
tBu、マレイミド、CO
2H、CO
2tBu、1,3−ジエン、シクロペンタジエン、フラン、アルキン、シクロオクチン、アクリラート又はアクリルアミドを含む、<2>に記載の方法。
<8>
各Z
1及びZ
2が、独立して、N
3、NH
2、NH−CO
2tBu、SH、S
tBu、マレイミド、CO
2H、CO
2tBu、1,3−ジエン、シクロペンタジエン、フラン、アルキン、シクロオクチン、アクリラート又はアクリルアミドを含む、<3>に記載の方法。
<9>
第1のポリマー、及び任意の第2のポリマーが、適切な反応性官能基をそれらの天然状態で含むか、もしくは適切な反応性官能基を含むように誘導体化されている、ホモポリマー又はコポリマーのポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリメタクリラート、ポリホスファゼン、ポリラクチド、ポリアクリルアミド、ポリグリコラート、ポリエチレンイミン、アガロース、デキストラン、ゼラチン、コラーゲン、ポリリシン、キトサン、アルギナート、ヒアルロナン、ペクチン又はカラゲニンからなる群から選択されるか、あるいは、式[Z
3−(CH
2)
s(CH
2CH
2O)
n]
tQである、請求項1に記載の方法であって、ここで、Z
3は、反応性官能基であり、nは、10〜1000であり、s、Q及びtは、<5>に定義されている通りである。
<10>
第1の反応性ポリマー及び第2の反応性ポリマーを、前記切断可能な架橋剤化合物と逐次的又は同時に反応させる、<1>に記載の方法。
<11>
第1の官能基及び第2の官能基が同じである、<10>に記載の方法。
<12>
<1>〜<11>のいずれか1項に記載の方法によって生成されるヒドロゲル。
<13>
薬物をさらに含む、<12>に記載のヒドロゲル。
<14>
薬物が、式(3)の残基に含有されている、<13>に記載のヒドロゲル
【化5】
ここで、R
1、R
2、R
5の少なくとも1つは、ポリマーに連結するための第1の官能基を含み、R
1、R
2、R
5及びmは、<2>に定義されている通りであり、
Dは、薬物の残基であり、
Yは、NH又はNBCH
2であり、ここでBは、H、置換されていてもよい、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルである。
<15>
脱離反応によって分解されるリンカーによって架橋された1つ以上のポリマーを含む、生理的条件下で生分解可能なヒドロゲル。
<16>
リンカーが、ポリマー内に配置される場合、式(1)の残基である、<13>に記載のヒドロゲル
【化6】
ここで、R
1、R
2、R
5の少なくとも1つは、Xと同様に、前記1つ以上のポリマーに結合しており、R
1、R
2、R
5、m及びXは、<2>に定義されている通りである。
<17>
前記リンカーが、式(2)の残基である、<15>に記載のヒドロゲル
【化7】
ここで、前記R
1、R
2、R
5の少なくとも2つは、前記1つ以上のポリマーに結合しており、R
1、R
2、R
5、mは、請求項2に定義されている通りであり、
nは、1〜1000であり、
sは、0〜2であり、
tは、2、4、8、16又は32であり、
Wは、O(C=O)O、O(C=O)NH、O(C=O)S、
【化8】
である。
<18>
薬物をさらに含む、<15>〜<17>のいずれか1項に記載のヒドロゲル。
<19>
式(3)の残基を含む、<18>に記載のヒドロゲル
【化9】
ここで、R
1、R
2、R
5の少なくとも1つは、ポリマーに連結するための第1の官能基を含み、R
1、R
2、R
5及びmは、<2>に定義されている通りであり、
Dは、薬物の残基であり、
Yは、NH又はNBCH
2であり、ここでBは、H、置換されていてもよい、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルである。
<20>
ポリマーが、式[Z
3−(CH
2)
s(CH
2CH
2O)
n]
tQである、請求項16又は17に記載のヒドロゲルであって、ここで、Z
3は、反応性官能基であり、nは10〜1000であり、s、Q及びtは、<5>に定義されている通りであるヒドロゲル。
<21>
式(4)で表される架橋化合物
【化10】
ここで、R
1、R
2及びR
5の少なくとも1つは、ポリマーに結合することができる第1の官能基Z
1をさらに含み、
mは、0又は1であり、
R
6は、H、置換されていてもよいアルキル、置換されていてもよいアリール、置換されていてもよいヘテロアリール、置換されていてもよいアリールアルキル、又は置換されていてもよいヘテロアリールアルキルであり、
vは、1〜6であり、
Yは、存在しないか、又はOR
7もしくはSR
7であり、ここで、R
7は、置換されていてもよいアルキレン、置換されていてもよいフェニレン、又は(OCH
2CH
2)
p(p=1〜1000)であり、
Z
2は、反応性ポリマーと結合することができる官能基であり、
少なくとも一方又は両方のR
1及びR
2は、独立して、CN、NO
2、
置換されていてもよいアリール、
置換されていてもよいヘテロアリール、
置換されていてもよいアルケニル、
置換されていてもよいアルキニル、
COR
3又はSOR
3又はSO
2R
3
ここで、R
3は、H、又は置換されていてもよいアルキル、
置換されていてもよい、アリールもしくはアリールアルキル、
置換されていてもよい、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル、又は
OR
9もしくはNR
92であり、ここで各R
9は、独立して、Hもしくは置換されていてもよいアルキルであるか、又は両方のR
9基が、それらが結合する窒素原子と一緒になって複素環を形成し、
又は、SR
4であり、
ここで、R
4は、置換されていてもよいアルキル、
置換されていてもよい、アリールもしくはアリールアルキル、又は
置換されていてもよい、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルであり、
R
1及びR
2は、結合して3〜8員環を形成していてもよく、
あるいは、R
1及びR
2の一方及び一方のみは、Hであってよく、又は置換されていてもよい、アルキル、アリールアルキルもしくはヘテロアリールアルキルであってよく、
各R
5は、独立して、Hであるか、又は置換されていてもよい、アルキル、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、(OCH
2CH
2)
pO−アルキル(p=1〜1000)、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルである。
<22>
各Z
1及びZ
2が、N
3、NH
2、NH−CO
2tBu、SH、S
tBu、マレイミド、CO
2H、CO
2tBu、1,3−ジエン、シクロペンタジエン、フラン、アルキン、シクロオクチン、アクリラート、ビニルスルホン、ビニルスルホンアミド又はアクリルアミドを含む、<21>に記載の化合物であって、ここで、一方のZがN
3を含む場合、他方のZはアルキン又はシクロオクチンのいずれも含まず;一方のZがSHを含む場合、他方のZはマレイミド、アクリラート又はアクリルアミドのいずれも含まず;一方のZがNH
2を含む場合、他方のZはCO
2Hを含まず;一方のZが1,3−ジエン又はシクロ
ペンタジエンを含む場合、他方のZはフランを含まない化合物。
<23>
式(2)で表される架橋化合物
【化11】
ここで、R
1、R
2及び/又はR
5の少なくとも2つは、ポリマーに結合することができる官能基Zをさらに含み、
mは、0又は1であり、
nは、1〜1000であり、
sは、0〜2であり、
tは、2、4、8、9、16又は32であり、
Wは、O(C=O)O、O(C=O)NH、O(C=O)S、
【化12】
であり、
Qは、価数=tを有するコア基であり、
少なくとも一方又は両方のR
1及びR
2は、独立して、CN、NO
2、
置換されていてもよいアリール、
置換されていてもよいヘテロアリール、
置換されていてもよいアルケニル、
置換されていてもよいアルキニル、
COR
3又はSOR
3又はSO
2R
3
ここで、R
3は、H、又は置換されていてもよいアルキル、
置換されていてもよい、アリールもしくはアリールアルキル、
置換されていてもよい、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル、又は
OR
9もしくはNR
92であり、ここで各R
9は、独立して、Hもしくは置換されていてもよいアルキルであり、又は両方のR
9基は、それらが結合する窒素原子と一緒になって複素環を形成している)、
SR
4であり、
ここで、R
4は、置換されていてもよいアルキル、
置換されていてもよい、アリールもしくはアリールアルキル、又は
置換されていてもよい、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルである)で
あり、
R
1及びR
2は、結合して3〜8員環を形成していてもよく、
あるいは、R
1及びR
2の一方及び一方のみは、Hであってよく、又は置換されていてもよい、アルキル、アリールアルキルもしくはヘテロアリールアルキルであってよく、
各R
5は、独立して、Hであるか、又は置換されていてもよい、アルキル、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、(OCH
2CH
2)
pO−アルキル(p=1〜1000)、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルである。
<24>
Z
1が、N
3、NH
2、NH−CO
2tBu、SH、S
tBu、マレイミド、CO
2H、CO
2tBu、1,3−ジエン、シクロペンタジエン、フラン、アルキン、シクロオクチン、アクリラート、アクリルアミド、ビニルスルホン又はビニルスルホンアミドを含む、<23>に記載の化合物。
<25>
Qが、ペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール又はヘキサグリセリンである、<23>に記載の化合物。
<26>
薬物放出分解性ヒドロゲルを調製する方法であって、
(a)反応性官能基を含む第1の多価ポリマーを、サブ化学量論的量の下記式(3)で表されるリンカー−薬物と反応させて、薬物を負荷した第1のポリマーを形成するステップと
【化13】
ここで、R
1、R
2及びR
5の1つは、第1のポリマー上に存在する反応性官能基と反応性がある基で置換されており、
mは、0又は1であり、
Dは、薬物の残基であり、
Yは、O、NH又はNBCH
2であり、ここでBは、H、置換されていてもよい、アルキル、アリールアルキル、ヘテロアリール又はヘテロアリールアルキルであり、
少なくとも一方又は両方のR
1及びR
2は、独立して、CN、NO
2、
置換されていてもよいアリール、
置換されていてもよいヘテロアリール、
置換されていてもよいアルケニル、
置換されていてもよいアルキニル、
COR
3又はSOR
3又はSO
2R
3
ここで、R
3は、H、又は置換されていてもよいアルキル、
置換されていてもよい、アリールもしくはアリールアルキル、
置換されていてもよい、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル、又は
OR
9もしくはNR
92であり、ここで各R
9は、独立して、Hもしくは置換されていてもよいアルキルであるか、又は両方のR
9基が、それらが結合する窒素原子と一緒になって複素環を形成し、
SR
4であり、
ここで、R
4は、置換されていてもよいアルキル、
置換されていてもよい、アリールもしくはアリールアルキル、又は
置換されていてもよい、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルである)であり、
R
1及びR
2は、結合して3〜8員環を形成していてもよく、
あるいは、R
1及びR
2の一方及び一方のみは、Hであってよく、又は置換されていてもよい、アルキル、アリールアルキルもしくはヘテロアリールアルキルであってよく、
各R
5は、独立して、Hであるか、又は置換されていてもよい、アルキル、アルケニルアルキル、アルキニルアルキル、(OCH
2CH
2)
pO−アルキル(p=1〜1000)、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルである、
(b)必要に応じて、薬物を負荷した第1のポリマーを単離するステップと、
(c)薬物を負荷した第1のポリマー上の残りの反応性官能基を、式(1)又は式(2)の切断可能な架橋化合物で架橋して、ヒドロゲルを形成するステップとを含む方法。
<27>
<26>に記載の方法によって調製された、薬物放出分解性ヒドロゲル。
<28>
第1のポリマー上の反応性官能基が、シクロオクチンであり、式(1)、(2)及び(3)の化合物上の反応性官能基が、アジドである、<27>に記載の薬物放出分解性ヒドロゲル。
<29>
Dがエキセナチドである、<27>に記載の薬物放出分解性ヒドロゲル。
<30>
第1のポリマーが、各アーム末端にシクロオクチン基を含む、8分岐ポリエチレングリコールであり、
式(3)のリンカー−薬物が、下記式で表される、<27>に記載の薬物放出分解性ヒドロゲル:
【化14】
ここで、R
1=CN、NO
2、
置換されていてもよいアリール、
置換されていてもよいヘテロアリール、
置換されていてもよいアルケニル、
置換されていてもよいアルキニル、
COR
3又はSOR
3又はSO
2R
3
ここで、R
3は、H、又は置換されていてもよいアルキル、
置換されていてもよい、アリールもしくはアリールアルキル、
置換されていてもよい、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル、又は
OR
9もしくはNR
92であり、ここで各R
9は、独立して、Hもしくは置換されていてもよいアルキルであるか、又は両方のR
9基が、それらが結合する窒素原子と一緒になって複素環を形成し、
又は、SR
4であり、
ここで、R
4は、置換されていてもよいアルキル、
置換されていてもよい、アリールもしくはアリールアルキル、又は
置換されていてもよい、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルである
<31>
切断可能な架橋化合物が、式(2)で表される化合物、<30>に記載のヒドロゲル。
<32>
前記式(2)において、mが0であり、nが90〜110であり、sが0であり、tが4であり、WがO(C=O)NHであり、QがC(CH
2)
4であり、R
1がCNであり、R
2及びR
5の一方がHであり、他方のR
5が(CH
2)
5N
3である、<31>に記載のヒドロゲル。
<33>
前記式(3)において、R
1が、SO
2R
3であり、
ここで、R
3が、H、又は置換されていてもよいアルキル、
置換されていてもよい、アリールもしくはアリールアルキル、
置換されていてもよい、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル、又は
OR
9もしくはNR
92であり、ここで各R
9が、独立して、Hもしくは置換されていてもよいアルキルであるか、又は両方のR
9基が、それらが結合する窒素原子と一緒になって複素環を形成している、<32>に記載のヒドロゲル。
<34>
前記式(3)におけるR
1が、MeSO
2である、<33>に記載のヒドロゲル。
<35>
式[Z
3−(CH
2)
s(CH
2CH
2O)
n]
tQで表される多分岐ポリマー(ここで、Z
3は、反応性官能基であり、nは10〜1000であり、s、Q及びtは、請求項5に定義されている通りである)が、下記式(3)で表されるリンカー−薬物を結合させた式(1)又は式(2)の切断可能な架橋化合物によって架橋されている、薬物放出分解性ヒドロゲル:
【化15】
ここで、R
1=CN、NO
2、
置換されていてもよいアリール、
置換されていてもよいヘテロアリール、
置換されていてもよいアルケニル、
置換されていてもよいアルキニル、
COR
3又はSOR
3又はSO
2R
3
ここで、R
3は、H、又は置換されていてもよいアルキル、
置換されていてもよい、アリールもしくはアリールアルキル、
置換されていてもよい、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル、又は
OR
9もしくはNR
92であり、ここで各R
9は、独立して、Hもしくは置換されていてもよいアルキルであるか、又は両方のR
9基が、それらが結合する窒素原子と一緒になって複素環を形成し、
又は、SR
4であり、
ここで、R
4は、置換されていてもよいアルキル、
置換されていてもよい、アリールもしくはアリールアルキル、又は
置換されていてもよい、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキルである。
<36>
切断可能な架橋化合物が、前記式(2)で表される化合物である、<35>に記載のヒドロゲル。
<37>
前記式(2)において、mが0であり、nが90〜110であり、sが0であり、tが4であり、WがO(C=O)NHであり、QがC(CH
2)
4であり、R
1がCNであり、R
2及びR
5の一方がHであり、他方のR
5が(CH
2)
5N
3である、<36>に記載のヒドロゲル。
<38>
前記式(3)において、R
1が、SO
2R
3であり、ここで
R
3が、H、又は置換されていてもよいアルキル、
置換されていてもよい、アリールもしくはアリールアルキル、
置換されていてもよい、ヘテロアリールもしくはヘテロアリールアルキル、又は
OR
9もしくはNR
92であり、ここで各R
9が、独立して、Hもしくは置換されていてもよいアルキルであるか、又は両方のR
9基が、それらが結合する窒素原子と一緒になって複素環を形成している、<35>〜<37>のいずれか1項に記載のヒドロゲル。
<39>
前記式(3)におけるR
1が、MeSO
2である、<38>に記載のヒドロゲル。