(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御部は、前記係合部の過去の移動履歴のうち、前記位置検知部が異常ではないと判断したときにおける、最新の移動に要した時間に基づいて、前記基準電気量を算出する、
請求項1に記載の移動体移動装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施の形態では、移動体移動装置1の一例として、バックドアを移動制御する自動車を例示するが、移動体移動装置1は、店舗やガレージ等の構造物に設置されるシャッター、引き戸、開き扉、または、構造物正面の開口の上方に配置される折りたたみ式の庇の移動を制御する装置にも適用可能である。
【0012】
[移動体移動装置の全体構成]
図1は、本実施の形態の移動体移動装置1を備えた自動車の概略側面図である。
【0013】
図1に示すように、移動体移動装置1は、基体の一例としての開口部材10と、移動体20と、移動体駆動部30と、制御部50と、移動体検知部60(
図4参照)と、ロック機構70(
図2参照)と、位置検知部80(
図4参照)と、電圧検知部90(
図4参照)とを備える。
【0014】
移動体移動装置1は、開口部材10の開口部11に対して移動体20を移動する装置である。
【0015】
[開口部材]
開口部材10は、本実施の形態の移動体移動装置1を用いた自動車において、車体の進行方向に対して後部に設けられている。開口部材10は、この自動車に用いられる車体であり、開口部材10の縁部によって開口部11が形成されている。開口部11の形状は、矩形状、円形状等、どのような形状であっても良い。
【0016】
[移動体]
移動体20は、自動車のバックドアであり、開状態(
図1参照)または、閉状態(
図2参照)に遷移する。移動体20における開状態は、開口部11を開放した状態であり、車両の後部においては、荷物等の対象物を、開口部11を介して外部から後部荷室に入出可能とする状態である。移動体20における閉状態は、開口部11を閉塞した状態である。換言すると、閉状態は、荷物等の対象物が開口部11を通って反対側へ移動することを阻害する位置に移動体20があるときの状態とすることができる。また、開状態は、当該対象物が開口部11を通って反対側へ移動することを許容する位置に移動体20があるときの状態とすることができる。
【0017】
本実施の形態において、移動体20の上辺部は、開口部材10における開口部11の上縁部側にヒンジとしての軸部を介して回動可能に取り付けられている。移動体20は、軸部を中心に下辺部側が上下動するように旋回し、開口部11から接触または離間することにより、移動体20を開状態または閉状態に遷移させる。本実施の形態では、移動体20の位置変更が上記の旋回機構によって実現されているが、移動体20の位置変更のための機構は、旋回に限定されず、移動体20を開状態または閉状態に遷移させることができればいかなる機構であっても良い。
【0018】
なお、移動体20は、開状態または閉状態に遷移可能なものである限り、どのようなものでも良く、例えば、スライドドアであっても良い。
【0019】
[移動体駆動部]
移動体駆動部30は、開口部材10の開口部11に対して移動体20を開方向と閉方向とに移動させる。移動体駆動部30は、複数あっても良い。本実施の形態では、移動体駆動部30は、移動体20の左右両端および開口部11の左右の両縁に1つずつの計2つ設けられている。それぞれの移動体駆動部30が駆動することにより移動体20を移動させることで、移動体20は、開口部材10に対して相対移動して、開状態または閉状態に遷移する。
【0020】
2つの移動体駆動部30は、移動体20を開状態とする方向(開方向)と、移動体20を閉状態とする方向(閉方向)とに移動体20を移動可能であれば、移動体駆動部30のそれぞれが同方向であって同一駆動量で移動体20を駆動しても良い。また、2つの移動体駆動部30のそれぞれが、開方向と閉方向とに移動体20を移動可能であれば、異なる方向の駆動であっても、異なる駆動量で移動体20を駆動するようにしても良い。本実施の形態においては、各移動体駆動部30が同一の駆動を同期して行うように設けられている。
【0021】
移動体駆動部30は、開口部材10と移動体20とに渡されて、移動体20が開口部材10に対して相対移動可能に設けられている。移動体20が開口部材10に対して旋回移動するために、移動体駆動部30のそれぞれは、移動体20の旋回に追随して旋回しながら駆動可能なように、開口部材10に対して旋回可能に取り付けられている。
【0022】
具体的には、各移動体駆動部30は、伸縮する棒状の外観を有しており、移動体駆動部30の一端部側に配置され、開口部材10側に接続される駆動本体部と、移動体駆動部30の他端部側に配置され、移動体20側に接続される進退部とを有する。進退部は、駆動本体部の他端部側から出没可能に取り付けられている。
【0023】
移動体駆動部30は、駆動本体部に対して進退部を、移動体駆動部30の長手方向に進退させて移動体20を全閉位置、つまり、開口部11を完全に閉塞する位置と、全開位置、つまり、開口部11を最大限に開放する位置とに移動できる。各移動体駆動部30は、モータ等の回転運動を直線方向の伸縮運動に変換することにより、移動体20を開方向または閉方向に移動させる。
【0024】
移動体駆動部30は、自動車後部の左右の両端にそれぞれ1つずつの計2個設けられていたが、その使用個数は特に限定されない。また、移動体駆動部30は、移動体20の移動を可能とするものであれば、その構造、形状や配置位置に付いては特に限定されない。移動体駆動部30は、移動体20を駆動させることができる公知の駆動部を採用することができる。
【0025】
本実施の形態では、移動体駆動部30は、本体筒部31、スライド筒部32、移動モータ33(
図4参照)、スピンドル(図示省略)、スピンドルナット(図示省略)、付勢部材(図示省略)等を有する。移動体駆動部30では、本体筒部31、移動モータ33、スピンドル、付勢部材等が駆動本体部に対応し、スライド筒部32、スピンドルナットが進退部に対応する。
【0026】
本体筒部31は、一端部側が開口部材10に旋回可能に固定され、他端部側が開口している。本体筒部31の内側には、スライド筒部32が、本体筒部31の他端部側から出没するように、長手方向にスライド移動可能に配置される。
【0027】
移動モータ33は、駆動して、駆動本体部に対し、進退部を長手方向に移動させて移動体駆動部30を伸縮させる。移動モータ33は、直流モータまたは交流モータである。移動体移動装置1が自動車に適用される場合には、自動車の直流電源を用いることを考慮して、移動モータ33として直流モータを適用することが望ましい。なお、移動モータ33は、制御部50に接続され、制御部50により、正回転、逆回転の双方の回転駆動が制御される。
【0028】
スライド筒部32は、本体筒部31の一端側から他端側に向けて付勢部材により付勢されている。スライド筒部32の内部には、移動モータ33の回転により軸回りに回転するスピンドルが螺合されたスピンドルナットが設けられている。
【0029】
移動体駆動部30は、本体筒部31とスライド筒部32とが、スピンドルの回転によって互いに供回りしないように構成されている。移動モータ33が正逆の一方に回転すると、スピンドルが正逆軸回りの一方に回転し、スピンドルに螺合するスピンドルナットがスピンドルの長手方向に沿って移動する。これに伴い、スピンドルナットを有するスライド筒部32が進退移動、つまり、長手方向にスライド移動する。これにより、移動体駆動部30が、伸縮するように可動し、本体筒部31からスライド筒部32が進出する長さに対応して、移動体20が作動する。
【0030】
[ロック機構]
図2は、本実施の形態の移動体移動装置を備えた自動車後部の部分拡大側面図である。
図3Aは、ロック機構におけるフルラッチ状態を示す図である。
図3Bは、ロック機構におけるフルラッチ状態からハーフラッチ状態に遷移する様子を示す図である。
図3Cは、ロック機構におけるハーフラッチ状態を示す図である。
図3Dは、ロック機構におけるアンラッチ状態を示す図である。
【0031】
図2および
図3Aに示すように、ロック機構70は、開口部11に対して移動体20を閉状態でロックするために設けられる機構であり、ラッチ71と、ストライカ72と、回動軸73と、ポール74と、クロージャモータ75(
図4参照)とを有する。
【0032】
ラッチ71は、ストライカ72と係合が可能な部材であり、移動体20の内側下端部に設けられている。ラッチ71は、基部71Aと、基部71Aの上端部から延びる第1アーム71Bと、基部71Aの下端部から延びる第2アーム71Cとを有する。第1アーム71Bおよび第2アーム71Cは、基部71Aから同じ方向(
図3Aにおける左から右に向かう方向)にそれぞれ延びている。ラッチ71は、本発明の「係合部」に対応する。
【0033】
ストライカ72は、ラッチ71と係合が可能な部材であり、ラッチ71の基部71A、第1アーム71Bおよび第2アーム71Cで形成される凹部71Dに入り込むことが可能な棒状の部分を有している。ストライカ72の棒状の部分としては、例えば、
図2における左右方向に平行な部分である。ストライカ72は、本発明の「被係合部」に対応する。
【0034】
ストライカ72は、移動体20において、開口部材10における開口部11の下縁部分において、移動体20が閉状態となった際に、当該棒状の部分がラッチ71にフルラッチ状態で係合するような位置に設けられている。なお、ラッチ71が開口部材10側に設けられる場合、ストライカ72は移動体20側に設けられる。
【0035】
ラッチ71は、回動軸73を中心に回動可能に構成されている。ラッチ71は、例えば、クロージャモータ75の駆動力により回動することで、フルラッチ状態(
図3Aの状態)と、ハーフラッチ状態(
図3Cの状態)と、アンラッチ状態(
図3Dの状態)とに遷移する。
【0036】
フルラッチ状態は、ストライカ72がラッチ71によりロックされた状態である。より詳細には、フルラッチ状態は、ストライカ72がラッチ71の凹部71Dから離脱できないように係合する完全係合状態である。
【0037】
ハーフラッチ状態は、フルラッチ状態のときよりもラッチ71とストライカ72との係合力が弱い状態である。より詳細には、ハーフラッチ状態は、ストライカ72が、外力が負荷されることによりラッチ71の凹部71Dから容易に離脱できる状態であり、ストライカ72がラッチ71と係合する位置(フルラッチ状態の位置)へと移動可能な状態である。
【0038】
アンラッチ状態は、ラッチ71とストライカ72との係合が完全に解除された状態である。言い換えると、アンラッチ状態の位置のラッチ71は、凹部71D内にストライカ72を受入可能な状態である。
【0039】
また、ラッチ71は、図示しない付勢部材により、
図3A〜
図3Dにおいて、時計回り方向に回動するように付勢されていても良い。これにより、後述するポール74の回動を制御して、付勢部材の付勢力によりラッチ71をフルラッチ状態からアンラッチ状態に回動させることができる。
【0040】
ポール74は、ラッチ71の回動を規制することが可能な部材であり、ラッチ71の第1アーム71Bおよび第2アーム71Cの何れかと当接可能な位置に設けられている。ポール74は、回動可能に設けられており、クロージャモータ75の駆動の下、時計回り方向における上流側から第1位置(
図3A参照)、第2位置(
図3C参照)および第3位置(
図3D参照)に位置するように制御される。
【0041】
クロージャモータ75は、直流モータまたは交流モータであり、ラッチ71およびポール74を回動させることで、ロック機構70におけるラッチ71の状態を変更する。なお、クロージャモータ75は、制御部50に接続され、制御部50により、正回転、逆回転の双方の回転駆動が制御される。クロージャモータ75は、本発明の「駆動部」に対応する。
【0042】
ここで、ロック機構70における動作の一例について説明する。まず、ロック機構70がフルラッチ状態からアンラッチ状態に遷移する際の動作について説明する。
【0043】
図3Aに示すように、ポール74が第1位置のとき、フルラッチ状態のラッチ71における第2アーム71Cの先端とポール74とが当接する。これにより、ラッチ71の回動が規制されてラッチ71のフルラッチ状態が維持される。
【0044】
図3Bに示すように、ポール74が第1位置から時計回り方向に回動すると、第2アーム71Cとの当接が解除される。ラッチ71は、クロージャモータ75の駆動力により時計回り方向に回動する。
【0045】
図3Cに示すように、ポール74がさらに回動して第2位置に位置すると、ポール74とラッチ71の第1アーム71Bとが当接する。このとき、ラッチ71は、ハーフラッチ状態の位置であり、ラッチ71の回動がポール74により規制されることにより、ラッチ71の位置がハーフラッチ状態の位置に維持される。
【0046】
図3Dに示すように、ポール74がさらに回動して第3位置に位置すると、ポール74とラッチ71の第1アーム71Bとの当接が解除される。これにより、ラッチ71は、クロージャモータ75の駆動力により時計回り方向に回動して、アンラッチ状態の位置に位置する。すなわち、ラッチ71とストライカ72との係合が完全に解除される。
【0047】
また、ポール74を第2位置から回動させなくても、ハーフラッチ状態のときのラッチ71とストライカ72との係合力は、フルラッチ状態のときと比べて弱くなっている。そのため、移動モータ33の駆動力により、移動体20を開方向に移動させる力によって、ラッチ71とストライカ72との係合を解除させることも可能である。
【0048】
次に、ロック機構70がアンラッチ状態からフルラッチ状態に遷移する際の動作について説明する。まず、
図3Cおよび
図3Dに示すように、ラッチ71をアンラッチ状態の位置に位置させた状態で、移動体駆動部30による移動体20の移動により、ラッチ71の凹部71Dにストライカ72が入る。そして、クロージャモータ75の駆動力により、ラッチ71が反時計回りに回動する。これにより、ロック機構70がハーフラッチ状態となる。また、移動体駆動部30による移動体20の移動により、ラッチ71をアンラッチ状態の位置からハーフラッチ状態の位置に強制的に移動させても良い。
【0049】
そして、クロージャモータ75の駆動力により、
図3Aおよび
図3Bに示すように、ラッチ71が反時計回り方向に回動して、ラッチ71の凹部71D内にストライカ72を引き込むようにしてロック機構70がフルラッチ状態となる。
【0050】
なお、ロック機構70は、クロージャモータ75により駆動可能な構成であれば、どのような構成であっても良い。
【0051】
[制御系の構成]
図4は、移動体移動装置1の制御系を示すブロック図である。
移動体移動装置1において、制御系は、制御部50と、移動体検知部60と、位置検知部80と、電圧検知部90とを備える。移動体移動装置1の制御系は、移動モータ33を備える移動体駆動部30により駆動される移動体20を制御する。
【0052】
[移動体検知部]
移動体検知部60は、例えば移動体駆動部30の動作を検知することで、移動体20の位置の移動を検知し、その検知結果である移動体20の移動情報を制御部50に出力する。
【0053】
例えば、移動体検知部60は、ホール素子を含み、移動モータ33の回転状態を磁気的に検知することで、移動体駆動部30の動作ひいては移動体20の位置の移動を検知する。この場合、移動モータ33の回転軸に設けた円盤に、磁石を周方向に異なる間隔で配置し、これに対向する位置に、移動体検知部60のホール素子を配置する。ホール素子により、移動モータ33の回転軸の回転に伴って移動する磁石を捕捉してパルスを発生させる。制御部50は、このパルスをカウントしたカウント値により、移動体20の位置を算出し、カウント値の変化により、移動体20の駆動速度を算出する。
【0054】
移動体検知部60は、捕捉したパルスをカウントし、制御部50は、カウント値を移動体20の移動情報として、制御部50における移動体20の位置および駆動速度の算出にパルスのカウント値を使用できるようにする。なお、移動体検知部60が、パルスのカウントだけでなく、そのカウント値に基づく移動体20の位置および駆動速度の算出をも行ったうえで、その算出結果を制御部50へと出力するようにしても良い。
【0055】
また、移動体検知部60は、移動体20の位置の移動に関する情報を検知可能であれば、どのような構成であっても良く、例えば、移動体駆動部30の動作を検知することなく直接的に移動体20の位置の移動を検知しても良い。検知の方式は、ホール素子を用いて磁気的に行うものに限られず、移動体20の位置に応じたカウント値を生成可能であれば、どのような方式であっても良い。また、ここでは移動体検知部60を、後述する制御部50とは別々に設けられるものとして説明したが、移動体検知部60は、制御部50に組み込まれたものであっても良い。
【0056】
なお、移動体検知部60がカウント値ではない出力値を制御部50に出力する場合、例えば移動体検知部60の出力結果に応じて、予め設定されたカウント値を制御部50が記憶部等から取得するようにしても良い。
【0057】
[位置検知部]
位置検知部80は、ラッチ71の位置を検知する。具体的には、位置検知部80は、例えば、ロック機構70に設けられ、ロック機構70のアンラッチ状態を検知して、その検知結果を制御部50に出力する。位置検知部80は、例えば、ラッチ71の回動状態に基づいて、ラッチ71がストライカ72に係合したか否かを検知する。
【0058】
位置検知部80は、ラッチ71がストライカ72と係合してない状態の位置、つまり、
図3Dの状態のとき、OFF状態に遷移し、ラッチ71がストライカ72と係合した状態の位置、つまり、
図3A〜
図3Cの状態のとき、ON状態に遷移するような検知スイッチを含む。具体的には、ロック機構70には、図示しないリンク機構が設けられ、当該リンク機構を介することにより、ラッチ71の回動状態に応じて、検知スイッチがON状態とOFF状態とに切り替わる。これにより、後述する制御部50が、位置検知部80が出力する、ON状態時の信号およびOFF状態時の信号に基づいて、ラッチ71がストライカ72に係合しているか否かについて判定する。
【0059】
また、位置検知部80は、アンラッチ状態やフルラッチ状態を検知可能なスイッチを含んでいても良い。
【0060】
また、位置検知部80は、ロック機構70のラッチ状態を検知可能であれば、どのようなものであっても良い。
【0061】
また、位置検知部80は、移動体移動装置1に設けられていなくても良い。この場合、移動体移動装置1が、外部からラッチ状態の検知信号を取得できるようにすれば良い。
【0062】
[電圧検知部]
電圧検知部90は、クロージャモータ75に印加される電圧値を測定する。具体的には、電圧検知部90は、例えば制御部50内に設けられる電圧検知回路であり、クロージャモータ75の端子等から、クロージャモータ75に印加される電圧値を測定する。なお、電圧検知部90は、クロージャモータ75に印加される電圧値を測定可能であれば、どのようなものであっても良い。
【0063】
[制御部]
制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備える。CPUは、ROMから処理内容に応じたプログラムを読み出してRAMに展開し、展開したプログラムと協働して移動体移動装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部(図示略)に格納されている各種データが参照される。記憶部(図示略)は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。制御部50は、例えば、車両の各部を制御するECU(Electronic Control Unit)に組み込まれても良く、また、移動体駆動部30に搭載されていても良い。
【0064】
制御部50は、移動体20が開状態と閉状態との間で移動するように、移動体駆動部30を制御する。また、制御部50は、クロージャモータ75によるラッチ71とストライカ72との係合作動と解除作動とを制御する。制御部50は、一体で有る必要はなく、制御部50を構成する複数の制御要素が、それぞれ移動体駆動部30とロック機構とを制御してもよい。
【0065】
まず、ラッチ71とストライカ72との解除作動の制御と、移動体20の移動制御について説明する。
【0066】
制御部50は、移動体20を閉状態から開状態に遷移させる場合、ラッチ71とストライカ72との解除作動を制御する。具体的には、制御部50は、ラッチ71とストライカ72との係合が解除するようにロック機構70の制御を行う。制御部50は、ラッチ71を、
図3Aに示すフルラッチ状態の位置から
図3Dに示すアンラッチ状態の位置に移動させるように、クロージャモータ75を制御する。制御部50は、位置検知部80の検知結果に基づいて、移動体20を開状態に向けて移動させるように移動モータ33を制御する。
【0067】
クロージャモータ75の駆動により、ラッチ71が
図3Aに示す位置から、
図3Dに示す位置まで回転すると、位置検知部80の信号が、上述のON状態からOFF状態に切り替わる。移動体20は、位置検知部80の信号がON状態からOFF状態に切り替わったことをもって開状態に向けて移動するように制御される。
【0068】
次に、ラッチ71とストライカ72との係合作動の制御と、移動体20の移動制御について説明する。
【0069】
制御部50は、移動体20を開状態から閉状態に遷移させる場合、ラッチ71とストライカ72との係合作動を制御する。具体的には、制御部50は、ラッチ71とストライカ72とが係合するようにロック機構70の制御を行う。制御部50は、移動体20を閉状態に向けて移動させるように移動モータ33を制御する。
【0070】
なお、移動体20が開状態であるとき、ラッチ71の位置が、アンラッチ状態以外の待機位置で待機している場合、制御部50は、ラッチ71をアンラッチ状態の位置に移動するようにクロージャモータ75を制御しても良い。その後、制御部50は、移動体20を閉状態に向けて移動させるように移動モータ33を制御する。
【0071】
待機位置は、例えば
図3Dに示す位置よりも時計回り方向の下流側の位置であり、ラッチ71の凹部71Dがストライカ72を受入不能、かつ、係合不能な位置である。ラッチ71のアンラッチ状態の位置は、例えば、フルラッチ状態の位置と待機位置との中間の位置とすることができる。
【0072】
移動体20が移動してストライカ72がアンラッチ状態のラッチ71の凹部71Dに入り込んだ後、制御部50は、クロージャモータ75を駆動させて、ラッチ71をアンラッチ状態からフルラッチ状態に遷移させる。これにより、移動体20が閉状態でロックされる。
【0073】
また、制御部50は、移動体20の移動に起因して、ラッチ71がアンラッチ状態からハーフラッチ状態に強制的に移動するような場合、位置検知部80の検知結果に基づいて、クロージャモータ75を駆動させても良い。具体的には、ストライカ72がラッチ71の凹部71Dに入り込んで、ラッチ71を押圧することで、ラッチ71がアンラッチ状態からハーフラッチ状態に遷移する。
【0074】
そうすると、位置検知部80の信号が、OFF状態からON状態に切り替わる。これにより、ラッチ71がハーフラッチ状態からフルラッチ状態になるようにクロージャモータ75が制御される。なお、制御部50は、位置検知部80の検知結果ではなく、移動体検知部60の検知結果に基づいて、クロージャモータ75を制御しても良い。
【0075】
また、制御部50は、ラッチ71の移動開始位置から所定位置までの移動において、予め設定された駆動時間に基づいて、クロージャモータ75を制御する。具体的には、制御部50は、ラッチ71が、移動開始位置から所定位置まで移動するのに必要となる駆動時間だけ、クロージャモータ75を制御する。
【0076】
ラッチ71の移動開始位置は、移動体20が閉状態である場合、フルラッチ状態の位置である。ラッチ71の移動開始位置は、移動体20が開状態である場合、アンラッチ状態の位置であっても良いし、上記の待機位置であっても良い。
【0077】
所定位置は、ラッチ71の移動開始位置がフルラッチ状態の位置、または、待機位置である場合、ラッチ71がストライカ72を開放可能、または、受入可能な位置であるアンラッチ状態の位置とすることができる。また、所定位置は、ラッチ71の移動開始位置がアンラッチ状態の位置である場合、例えば、フルラッチ状態の位置とすることができる。なお、所定位置は、任意に定めた位置であっても良い。
【0078】
そして、制御部50は、ラッチ71の移動開始位置から所定位置までの移動において、位置検知部80が異常であると判断した場合、ラッチ71の位置を調整するようにクロージャモータ75を制御する。
【0079】
位置検知部80が異常であるとは、例えば、位置検知部80の信号が変動しないことにより、位置検知部80が故障したと判断可能な場合が挙げられる。
【0080】
例えば、ラッチ71がフルラッチ状態の位置とアンラッチ状態の位置との間を移動した際、位置検知部80が正常である場合、位置検知部80の信号がON状態とOFF状態との間で切り替わる。しかし、ラッチ71がフルラッチ状態の位置とアンラッチ状態の位置との間を移動した際、位置検知部80が故障している場合には、位置検知部80の信号に変動がない。そのため、位置検知部80の信号が変動しないことをもって、位置検知部80が故障したと判断することも可能である。
【0081】
また、位置検知部80が異常であるとは、例えば、移動体移動装置1の周囲の温度や、移動体移動装置1の作動環境によって、クロージャモータ75の電圧が変化して、ラッチ71が所定位置に移動していないと判断可能な場合も挙げられる。
【0082】
例えば、移動体移動装置1の周囲の温度が低くなると、クロージャモータ75に印加される電圧が低くなる。また、移動体移動装置1においては、車体内でのエアコンの作動など、移動モータ33やクロージャモータ75以外の部分でバッテリーの電力を消費する場合がある。この場合、相対的にクロージャモータ75に印加される電圧が低くなる。
【0083】
このように、クロージャモータ75に印加される電圧が変化すると、予め設定された駆動時間におけるクロージャモータ75の駆動量に基づくラッチ71の移動量が変化する。その結果、ラッチ71が想定した位置にラッチ71が移動しない状況が発生する。具体的には、ラッチ71がフルラッチ状態の位置からアンラッチ状態の位置に移動する際、アンラッチ状態の位置への移動量が不足するような場合、位置検知部80からの信号は当然変化しない。このような場合、ラッチ71が所定位置に移動していないと判断可能である。
【0084】
また、ラッチ71が、上記の待機位置からアンラッチ状態の位置に移動する際、ラッチ71がアンラッチ状態の位置を通り越してハーフラッチ状態の位置まで移動すると、位置検知部80の信号がON状態となる。すなわち、この場合についても、ラッチ71が所定位置に移動していないと判断可能である。
【0085】
これらの場合、制御部50が位置検知部80の検知結果により、ラッチ71の位置がアンラッチ状態の位置ではないと判断するため、移動体20を移動させるための判断基準を満たすことができなくなる。
【0086】
そこで、本実施の形態では、制御部50により、位置検知部80が異常であると判断した場合、ラッチ71の位置が調整される。
【0087】
具体的には、制御部50は、ラッチ71の移動開始位置から現在位置までの移動した際、当該移動開始位置での、クロージャモータ75における第1初期電圧と、基準電気量と、から必要駆動時間を算出する。
【0088】
第1初期電圧は、ラッチ71が移動開始位置から現在位置まで移動する際における、当該移動開始位置でクロージャモータ75に印加された初期電圧であり、電圧検知部90の検知結果に基づく値である。
【0089】
基準電気量は、ラッチ71の移動開始位置から所定位置までの過去の移動に要した時間に対して、当該移動の際の移動開始位置でのクロージャモータ75における第2初期電圧を乗じた電気量である。
【0090】
また、上記の過去の移動は、例えばラッチ71の過去の移動履歴のうち、位置検知部80が異常ではないときにおける、最新の移動であることが好ましい。これにより、クロージャモータ75等の経年劣化を考慮した基準電気量を算出することができる。また、過去の移動履歴がない場合、予め設定された基準電気量の初期値を用いても良い。なお、基準電気量は、上記の過去の移動に限定されず、上記の初期値であっても良い。
【0091】
制御部50は、位置検知部80が異常であると判断したタイミングで、基準電気量を算出しても良いし、当該過去の移動時のタイミングで算出しても良い。制御部50は、算出した基準電気量を、例えば図示しない記憶部等に記憶させる。
【0092】
制御部50は、第1初期電圧と、移動開始位置から現在位置までラッチ71が移動する間のクロージャモータ75の駆動時間とを乗じた現在移動電気量と、基準電気量との差分値を算出する。そして、当該差分値と、第1初期電圧とに基づいて、制御部50は、ラッチ71が現在位置から、本来ラッチ71が位置すべき所定位置まで移動するのに必要となる、クロージャモータ75の必要駆動時間を算出する。
【0093】
そして、制御部50は、その必要駆動時間だけクロージャモータ75を駆動させる。これにより、ラッチ71は、現在位置から所定位置まで移動する。具体的には、制御部50は、ラッチ71の移動が不足している場合、ラッチ71を不足分だけ移動させるように、クロージャモータ75を駆動させる。また、制御部50は、ラッチ71の移動が過剰である場合、ラッチ71が所定位置を通り越した分だけ、戻し移動させるように、クロージャモータ75を駆動させる。
【0094】
このようにすることで、位置検知部80の異常に起因して、ラッチ71が所定位置に移動していないような場合でも、ラッチ71を所定位置に移動させることができる。そのため、クロージャモータ75に印加される電圧が変化した場合でも、クロージャモータ75によって駆動するロック機構70のラッチ71が所定位置に位置するように制御することができる。
【0095】
また、必要駆動時間が0付近の値となる場合、ラッチ71は略所定位置であることが考えられる。この場合、制御部50は、位置検知部80が故障していると判定しても良い。このようにすることで、位置検知部80が故障の有無を正確に判断することができる。また、この場合、制御部50は、位置検知部80が故障していることを周囲に報知するための報知指令を出力するようにしても良い。このようにすることで、ユーザに位置検知部80の故障を迅速に知らせることができる。
【0096】
[移動体移動装置におけるラッチの駆動制御]
図5は、移動体移動装置1におけるラッチ71の駆動制御の説明に供するフローチャートである。なお、
図5における制御は、例えば移動体20を移動させるための動作指示を受けたときに実行される。
【0097】
図5に示すように、制御部50は、ラッチ71を駆動させるようにクロージャモータ75を制御する(ステップS101)。次に、制御部50は、位置検知部80に異常があるか否かについて判定する(ステップS102)。
【0098】
判定の結果、位置検知部80に異常がない場合(ステップS102、NO)、本制御は終了する。一方、位置検知部80に異常がある場合(ステップS102、YES)、制御部50は、基準電気量を算出する(ステップS103)。
【0099】
次に、制御部50は、算出した基準電気量に基づいて、クロージャモータ75の必要駆動時間を算出する(ステップS104)。そして、制御部50は、算出した必要駆動時間だけラッチ71を駆動するようにクロージャモータ75を制御する(ステップS105)。その後、本制御は終了する。なお、ステップS105の後、移動体20の移動制御や、ラッチ71をフルラッチ状態の位置等に移動させる制御が適宜行われる。
【0100】
以上のように構成された本実施の形態によれば、位置検知部80の異常に起因して、ラッチ71が所定位置に移動していないような場合でも、ラッチ71を所定位置に移動させることができる。すなわち、クロージャモータ75に印加される電圧が変化した場合でも、クロージャモータ75によって駆動するロック機構70のラッチ71が所定位置に位置するように制御することができる。その結果、ラッチ71とストライカ72との係合作動および解除作動を精度良く行うことができる。
【0101】
また、基準電気量を、ラッチ71の過去の移動履歴のうち、位置検知部80が異常ではないときにおける、最新の移動に要した時間に基づいて算出するので、クロージャモータ75の経年劣化を考慮した基準電気量を算出することができる。その結果、正確な必要駆動時間を算出することができる。
【0102】
また、必要駆動時間を算出することにより、位置検知部80が故障しているか否かを正確に判定することができる。
【0103】
なお、上記実施の形態では、位置検知部80がアンラッチ状態の位置のみを基準とした信号変動に基づいて位置検知部80の異常を判断していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、位置検知部80が、アンラッチ状態の位置、ハーフラッチ状態の位置およびフルラッチ状態の位置の1つ以上を基準とした信号変動に基づいて位置検知部80の異常を判断しても良い。
【0104】
また、上記実施の形態では、ラッチ71の移動開始位置がフルラッチ状態の位置、または、待機位置である場合の制御について例示したが、本発明はこれに限定されず、ラッチ71の移動開始位置がアンラッチ状態の位置であっても良い。
【0105】
この場合、位置検知部80は、ロック機構70がフルラッチ状態であるか否かを検知可能であれば良い。ラッチ71がアンラッチ状態の位置からフルラッチ状態の位置に移動する際、クロージャモータ75に印加される電圧が変化した場合、ラッチ71のフルラッチ状態の位置への移動が不足すると、移動体20の開口部材10に対するロックが緩くなってしまう。
【0106】
ラッチ71がフルラッチ状態の位置に移動していないため、位置検知部80の信号が変動しない。そのため、制御部50は、位置検知部80が異常であると判断し、現在位置から所定位置までの必要駆動時間を算出する。そして、制御部50は、その必要駆動時間だけクロージャモータ75を駆動させることにより、ラッチ71を所定位置(フルラッチ状態の位置)まで移動させる。これにより、ラッチ71の移動の精度を向上させることができる。
【0107】
また、上記実施の形態では、制御部50が、移動体駆動部30およびロック機構70を制御していたが、本発明はこれに限定されず、複数の制御部が、移動体駆動部およびロック機構のそれぞれを別々に制御する構成であっても良い。
【0108】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0109】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成や各部分の形状についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。