(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6895951
(24)【登録日】2021年6月10日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】粒子を検出する方法、および検出装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/17 20060101AFI20210621BHJP
G01N 21/45 20060101ALI20210621BHJP
G01N 27/447 20060101ALI20210621BHJP
G01N 30/60 20060101ALI20210621BHJP
G01N 30/74 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
G01N21/17 D
G01N21/45 Z
G01N27/447 331K
G01N27/447 315K
G01N30/60 K
G01N30/74 A
【請求項の数】37
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2018-512247(P2018-512247)
(86)(22)【出願日】2015年9月7日
(65)【公表番号】特表2018-527573(P2018-527573A)
(43)【公表日】2018年9月20日
(86)【国際出願番号】EP2015001804
(87)【国際公開番号】WO2017041809
(87)【国際公開日】20170316
【審査請求日】2018年7月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】512247223
【氏名又は名称】マツクス−プランク−ゲゼルシヤフト ツール フエルデルング デル ヴイツセンシヤフテン エー フアウ
【氏名又は名称原語表記】MAX−PLANCK−GESELLSCHAFT ZUR FOeRDERUNG DER WISSENSCHAFTEN E.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100105360
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 光治
(74)【代理人】
【識別番号】100145023
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 学
(72)【発明者】
【氏名】サンドグダール,ヴァヒード
(72)【発明者】
【氏名】ピリアリク,マレク
(72)【発明者】
【氏名】ケーニヒ,カタリーナ
【審査官】
平田 佳規
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0257057(US,A1)
【文献】
特表2007−533971(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/081284(WO,A1)
【文献】
特開2013−238463(JP,A)
【文献】
Marek Piliarik et al.,Direct optical sensing of single unlabelled proteins and super-resolution imaging of their binding sites,Nature Communications,2014年,Vol. 5,p. 1-8
【文献】
Alonso Castro et al.,Single-Molecule electrophoresis,Analytical Chemistry,1995年,Vol. 67, No. 18,p. 3181-3186
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 − 21/01
G01N 21/17 − 21/61
G01N 15/00 − 15/14
G01N 27/447
G01N 30/00 − 30/96
G01N 33/00 − 33/98
G01B 7/00 − 7/34
G01B 11/00 − 11/30
G01B 21/00 − 21/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子(1)を検出する方法であって、
− 分離経路(11)の供給源側に、検出対象の粒子(1)を含む試料物質(2)を供給する工程と、
− 前記分離経路(11)に沿ってその下流標的側に向けて前記粒子(1)が移動するように、前記試料物質(2)に分離力を作用させる工程と、
を含み、
前記粒子(1)は前記分離経路(11)に沿って互いに分離され、前記粒子は前記下流標的側における特定の到達時間を有し、前記到達時間は粒子特徴および前記分離力に応じて決まり、
− さらに、検出領域(30)において前記粒子(1)を検出する工程
を含み、
特徴として、
− 前記検出する工程は、前記検出領域(30)における個々の前記粒子(1)によって形成される一連の単一光散乱事象の干渉計検出を含み、
− 前記粒子(1)は、前記検出する工程の期間中に、前記検出領域(30)の検出面(31)に結合されまたは前記検出領域(30)中を通って移動するようにされ、
− 前記粒子(1)の特定の特徴を得るために、前記干渉計検出で得られた散乱光信号が分析され、
前記単一光散乱事象の前記干渉計検出は、
− 可視、紫外または赤外の領域の100nm乃至2000nmの波長を有する照射光を、前記検出面(31)および/または前記検出領域(30)に照射し、
− 前記検出面(31)および/または前記検出領域(30)において反射されまたは前記検出面(31)および/または前記検出領域(30)中を透過する前記照射光の背景参照部分と、前記粒子(1)によって生成された前記照射光の散乱部分との重合せをそれぞれ含む前記照射された検出面(31)または前記照射された検出領域(30)の一連の干渉計画像を収集する
ことによって得られ、
− 特定の粒子到達時間で得られた前記干渉計画像は、前記粒子(1)の前記特定の特徴を得るために分析される前記散乱光信号を供給するものである、
方法。
【請求項2】
− 前記粒子(1)が前記検出する工程の期間中に前記検出領域(30)の前記検出面(31)に結合され、
− 前記検出面(31)は、前記下流標的側にある前記分離経路(11)の開口端部(14)から或る距離を置いて配置されるものである、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
− 前記粒子(1)は、前記分離力および拡散の作用によって前記検出面(31)に移動し、
− 前記開口端部(14)から前記検出面(31)までの前記距離は、前記粒子(1)の前記拡散の作用が前記分離力の作用よりも支配的であるように選択されるものである、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記検出面(31)の裏側に配置されたゲート電極(33)によって形成される電気的駆動力の作用によって、前記粒子(1)が前記開口端部(14)から前記検出面(31)へ向けて駆動される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ゲート電極(33)に交流電圧が印加される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
− 前記粒子(1)が前記検出する工程の期間中に前記検出領域(30)の前記検出面(31)に結合され、
前記単一光散乱事象の前記干渉計検出は、
− 可視、紫外または赤外の領域の100nm乃至2000nmの波長を有する照射光を、前記検出面(31)に照射し、
− 前記検出面(31)で反射されまたは透過される前記照射光の背景参照部分と、前記粒子(1)によって生成された前記照射光の散乱部分との重合せをそれぞれ含む前記照射された検出面(31)の一連の干渉計画像を収集する
ことによって得られ、
− 前記干渉計画像は、前記粒子(1)の前記特定の特徴を得るために分析される前記散乱光信号を供給するものである、
請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
− 前記散乱光信号を分析する工程が、背景減算手順、背景補間手順、動的濾波手順、および相関性に基づいた変調背景の抽出、の中の少なくとも1つを含み、
その際、各現在の干渉計画像には少なくとも1つの前の干渉計画像が参照されて、これらの干渉計画像における時間的強度変動に基づいて前記粒子(1)が検出される、
請求項6に記載の方法。
【請求項8】
− 前記粒子(1)が前記検出する工程の期間中に前記検出領域(30)の前記検出面(31)に結合され、
− 前記検出する工程は、前記検出面(31)上の粒子の結合事象および離脱事象のうちの少なくとも一方を検出することを含むものである、
請求項1乃至7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
− 前記粒子(1)が前記検出する工程の期間中に前記検出領域(30)の前記検出面(31)に結合され、
− 前記検出する工程は、前記検出面(31)上の前記粒子の運動特性を検出することを含むものである、請求項1乃至8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
− 前記粒子(1)は、前記検出する工程の期間中に前記検出領域(30)中を通って移動するようにされ、
− 前記検出領域(30)は前記分離経路(11)の一部分であり、前記粒子(1)は前記分離力の作用によって前記検出領域(30)中を通って移動するようにされるものである、
請求項1に記載の方法。
【請求項11】
− 前記粒子(1)は、前記検出する工程の期間中に前記検出領域(30)中を通って移動するようにされ、
− 前記粒子(1)の前記到達時間は、前記分離力の変調によって調整され、
− 前記干渉計光検出で得られた前記散乱光信号は、前記変調を考慮して分析されるものである、
請求項1または10に記載の方法。
【請求項12】
− 前記粒子(1)は、前記検出する工程の期間中に前記検出領域(30)中を通って移動するようにされ、
前記単一光散乱事象の干渉計検出は、
− 可視、紫外または赤外の領域の100nm乃至2000nmの波長を有する照射光を、前記検出領域(30)に照射し、
− 前記検出領域(30)において反射されまたは前記検出領域(30)中を透過する前記照射光の背景参照部分と、前記粒子(1)によって生成された前記照射光の散乱部分との重合せを含む前記照射された検出領域(30)の一連の干渉計画像を収集する
ことによって得られ、
− 前記干渉計画像は、前記粒子(1)の前記特定の特徴を得るために分析される前記散乱光信号を供給するものである、
請求項1、10または11に記載の方法。
【請求項13】
前記散乱光信号を分析する工程は或る手順を含み、
その際、各現在の干渉計画像には少なくとも1つの前の干渉計画像が参照されて、これらの干渉計画像における時間的強度変動に基づいて前記粒子(1)が検出される、
請求項12に記載の方法。
【請求項14】
− 前記粒子(1)は、前記検出する工程の期間中に前記検出領域(30)中を通って移動するようにされ、
前記単一光散乱事象の干渉計検出は、
− 前記検出領域(30)における少なくとも1つの焦点位置に集束される照射光を前記検出領域(30)に照射し、
− 前記検出領域(30)において反射されまたは前記検出領域(30)中を透過する前記照射光の背景参照部分と、前記少なくとも1つの焦点位置において前記粒子(1)によって生成された前記照射光の散乱部分との重合せを含む前記少なくとも1つの焦点位置における干渉計光信号を収集する
ことによって得られ、
− 前記干渉計光信号は、前記粒子(1)の前記特定の特徴を得るために分析される前記散乱光信号を供給するものである、
請求項10乃至13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
粒子(1)を検出する方法であって、
− 分離経路(11)の供給源側に、検出対象の粒子(1)を含む試料物質(2)を供給する工程と、
− 前記分離経路(11)に沿ってその下流標的側に向けて前記粒子(1)が移動するように、前記試料物質(2)に分離力を作用させる工程と、
を含み、
前記粒子(1)は前記分離経路(11)に沿って互いに分離され、前記粒子は前記下流標的側における特定の到達時間を有し、前記到達時間は粒子特徴および前記分離力に応じて決まり、
− さらに、検出領域(30)において前記粒子(1)を検出する工程
を含み、
特徴として、
− 前記検出する工程は、前記検出領域(30)における個々の前記粒子(1)によって形成される一連の単一光散乱事象の干渉計検出を含み、
− 前記粒子(1)は、前記検出する工程の期間中に前記検出領域(30)中を通って移動するようにされ、
− 前記粒子(1)の特定の特徴を得るために、前記干渉計検出で得られた散乱光信号が分析され、
− 前記単一光散乱事象の干渉計検出は、
− 前記検出領域(30)における少なくとも1つの焦点位置に集束される照射光を前記検出領域(30)に照射し、
− 前記検出領域(30)において反射されまたは前記検出領域(30)中を透過する前記照射光の背景参照部分と、前記少なくとも1つの焦点位置において前記粒子(1)によって生成された前記照射光の散乱部分との重合せを含む前記少なくとも1つの焦点位置における干渉計光信号を収集する
ことによって得られ、
− 前記干渉計光信号は、前記粒子(1)の前記特定の特徴を得るために分析される前記散乱光信号を供給するものである、
方法。
【請求項16】
前記単一光散乱事象の干渉計検出は、
− 前記検出領域(30)における少なくとも2つの焦点位置に集束される照射光を前記検出領域(30)に照射し、
− 前記少なくとも2つの焦点位置における前記干渉計光信号を収集し、
− 前記干渉計光信号を相関分析させること、
によって得られるものである、
請求項14または15に記載の方法。
【請求項17】
前記分離力は、電気的力、等電集束力、流動力、磁気的力、機械的力および光学的力の中の少なくとも1つを含むものである、請求項1乃至16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記分離経路(11)は、電気泳動分離経路、クロマトグラフィ分離経路、および等電点電気泳動法に適合化されたpH勾配、の中の1つを含むものである、請求項1乃至17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
− 前記試料物質(2)が、生体組織または少なくとも1つの生体細胞またはその一部を含む、および
− 前記試料物質(2)が、前記粒子を含む液体を含む、
という特徴の中の少なくとも1つの特徴を含む、請求項1乃至18のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記粒子(1)の前記特定の特徴は、質量、電荷、化学親和力、および表面上の移動度の中の少なくとも1つを含むものである、請求項1乃至19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記粒子は、ナノ粒子、高分子粒子、二量体、高分子の凝集体、コロイド粒子、無機ナノ粒子、粒子、金属粒子、ポリマー粒子、ウイルス、細胞外小胞、エキソソーム、生体高分子、タンパク質、炭水化物、核酸分子、および照射に使用される波長より短い寸法を有する粒子、の中の一種を含むものである、請求項1乃至20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
粒子(1)を検出するよう構成された検出装置(100)であって、
− 供給源側および下流標的側を有する分離経路(11)と、分離力発生器(12A、12B、13)とを有する分離デバイス(10)を含み、
前記分離経路(11)の前記供給源側は、検出対象の粒子(1)を含む試料物質(2)を収容するよう適合化されており、前記分離力発生器(12A、12B、13)は、前記粒子(1)が前記分離経路(11)に沿って互いに分離されかつ前記粒子が前記下流標的側における特定の到達時間を有するように、前記分離経路(11)に沿って前記下流標的側に向けて前記粒子(1)を移動させる分離力を形成することができ、前記到達時間は粒子特徴および前記分離力に応じて決まり、
− さらに、検出領域(30)において前記粒子(1)を検出するよう適合化された検出デバイス(20)と、
− 前記粒子(1)の特定の特徴を得るよう適合化された分析ユニット(40)と、
を含み、
特徴として、
− 前記検出デバイス(20)は、照射光源(21)、結像光学系(22、24)およびセンサ・デバイス(25)を含み、前記センサ・デバイスは、前記検出領域(30)における個々の前記粒子(1)によって形成される一連の単一光散乱事象を干渉計検出するよう適合化され、
− 前記検出領域(30)は、検出対象の前記粒子(1)を結合するよう配置された検出面(31)を含み、または、前記検出デバイス(20)および前記分離力発生器(12)は、前記粒子(1)が前記検出領域(30)中を通って移動するように、配置され、
− 前記検出デバイス(20)は前記分析ユニット(40)に結合され、前記分析ユニット(40)は、さらに、前記検出デバイス(20)で得られた散乱光信号を分析するよう適合化されるものであり、
− 前記照射光源(21)は、前記検出面(31)および/または前記検出領域(30)に照射光を照射するよう配置され、
− 前記結像光学系(22、24)および前記センサ・デバイス(25)は、前記検出面(31)および/または前記検出領域(30)において反射されまたは前記検出面(31)および/または前記検出領域(30)中を透過する前記照射光の背景参照部分と、前記粒子(1)によって生成された前記照射光の散乱部分との重合せをそれぞれ含む前記照射された検出面(31)または前記照射された検出領域(30)の一連の干渉計画像を収集するよう配置されるものである、
検出装置。
【請求項23】
− 前記検出領域(30)は、検出対象の前記粒子(1)を結合するよう配置された前記検出面(31)を含み、
− 前記検出面(31)は、前記下流標的側にある前記分離経路(11)の開口端部(14)から或る距離を置いて配置されるものである、
請求項22に記載の検出装置。
【請求項24】
− 前記開口端部(14)から前記検出面(31)までの前記距離は、前記粒子(1)の拡散の作用が前記分離力の作用よりも支配的であるように選択され、
− 前記開口端部(14)は、前記検出面(31)の方を向くテーパ状形状を有し、
− 前記分離経路(11)は、その前記開口端部(14)が前記照射光源(21)の焦点外に配置されるように、配置される、
という特徴の中の少なくとも1つの特徴を含む、請求項23に記載の検出装置。
【請求項25】
− 前記開口端部(14)から前記検出面(31)までの前記距離は、前記粒子(1)の拡散の作用が前記分離力の作用よりも支配的であるように選択され、
− 前記粒子(1)を前記開口端部(14)から前記検出面(31)に向けて駆動する電気的駆動力を形成するように、前記検出面(31)の裏側にゲート電極(33)が配置される、
請求項23または24に記載の検出装置。
【請求項26】
前記ゲート電極(33)が交流電圧源(34)に結合される、請求項25に記載の検出装置。
【請求項27】
− 前記検出領域(30)は、検出対象の前記粒子(1)を結合するよう配置された前記検出面(31)を含み、
− 前記照射光源(21)は、前記検出面(31)に照射光を照射するよう配置され、
− 前記結像光学系(22、24)および前記センサ・デバイス(25)は、前記検出面(31)で反射されまたは透過される前記照射光の背景参照部分と、前記粒子(1)によって生成された前記照射光の散乱部分との重合せをそれぞれ含む前記照射された検出面(31)の一連の干渉計画像を収集するよう配置されるものである、
請求項22乃至26のいずれかに記載の検出装置。
【請求項28】
前記分析ユニット(40)は、前記散乱光信号を、背景減算手順、背景補間手順、動的濾波手順、および相関性に基づいた変調背景の抽出、の中の少なくとも1つで処理するよう適合化される、請求項22乃至27のいずれかに記載の検出装置。
【請求項29】
− 前記分離力発生器は、前記分離力を形成するよう適合化された、供給源側電極(12A)および標的側電極(12B)を含み、
− 前記標的側電極(12B)は、前記検出面(31)上に配置された透明電極、前記検出面(31)を包囲する電極被覆、および前記検出面(31)の上に配置された自立電極の中の1つを含むものである、
請求項22乃至28のいずれかに記載の検出装置。
【請求項30】
− 前記検出デバイス(20)および前記分離力発生器(12)は、前記粒子(1)が前記検出領域(30)中を通って移動するように、配置され、
− 前記検出領域(30)は前記分離経路(11)の一部分である、
請求項22に記載の検出装置。
【請求項31】
前記分離力発生器(12A、12B、13)は前記分離力を変調するよう適合化されるものである、請求項30に記載の検出装置。
【請求項32】
− 前記照射光源(21)は前記検出領域(30)に照射光を照射するよう配置され、
− 前記結像光学系(22、24)および前記センサ・デバイス(25)は、前記検出領域(30)において反射されまたは前記検出領域(30)中を透過する前記照射光の背景参照部分と、前記検出領域(30)において前記粒子(1)によって生成された前記照射光の散乱部分との重合せを含む前記照射された検出領域(30)の一連の干渉計画像を収集するよう配置されるものである、
請求項30または31に記載の検出装置。
【請求項33】
− 前記照射光源(21)は前記検出領域(30)における少なくとも1つの焦点位置に照射光を照射するよう配置され、
− 前記結像光学系(22、24)および前記センサ・デバイス(25)は、前記検出領域(30)において反射されまたは前記検出領域(30)中を透過する前記照射光の背景参照部分と、前記少なくとも1つの焦点位置において前記粒子(1)によって生成された前記照射光の散乱部分との重合せを含む前記少なくとも1つの焦点位置における干渉計光信号を収集するよう配置されるものである、
請求項31に記載の検出装置。
【請求項34】
粒子(1)を検出するよう構成された検出装置(100)であって、
− 供給源側および下流標的側を有する分離経路(11)と、分離力発生器(12A、12B、13)とを有する分離デバイス(10)を含み、
前記分離経路(11)の前記供給源側は、検出対象の粒子(1)を含む試料物質(2)を収容するよう適合化されており、前記分離力発生器(12A、12B、13)は、前記粒子(1)が前記分離経路(11)に沿って互いに分離されかつ前記粒子が前記下流標的側における特定の到達時間を有するように、前記分離経路(11)に沿って前記下流標的側に向けて前記粒子(1)を移動させる分離力を形成することができ、前記到達時間は粒子特徴および前記分離力に応じて決まり、
− さらに、検出領域(30)において前記粒子(1)を検出するよう適合化された検出デバイス(20)と、
− 前記粒子(1)の特定の特徴を得るよう適合化された分析ユニット(40)と、
を含み、
特徴として、
− 前記検出デバイス(20)は、照射光源(21)、結像光学系(22、24)およびセンサ・デバイス(25)を含み、前記センサ・デバイスは、前記検出領域(30)における個々の前記粒子(1)によって形成される一連の単一光散乱事象を干渉計検出するよう適合化され、
− 前記検出デバイス(20)および前記分離力発生器(12)は、前記粒子(1)が前記検出領域(30)中を通って移動するように、配置され、
− 前記検出デバイス(20)は前記分析ユニット(40)に結合され、前記分析ユニット(40)は、さらに、前記検出デバイス(20)で得られた散乱光信号を分析するよう適合化されるものであり、
− 前記検出領域(30)は前記分離経路(11)の一部分であり、
− 前記照射光源(21)は前記検出領域(30)における少なくとも1つの焦点位置に照射光を照射するよう配置され、
− 前記結像光学系(22、24)および前記センサ・デバイス(25)は、前記検出領域(30)において反射されまたは前記検出領域(30)中を透過する前記照射光の背景参照部分と、前記少なくとも1つの焦点位置において前記粒子(1)によって生成された前記照射光の散乱部分との重合せを含む前記少なくとも1つの焦点位置における干渉計光信号を収集するよう配置されるものである、
検出装置。
【請求項35】
− 前記照射光源(21)は、前記検出領域(30)における少なくとも2つの焦点位置に照射光を照射するよう配置され、
− 前記結像光学系(22、24)および前記センサ・デバイス(25)は、前記少なくとも2つの焦点位置おける前記干渉計光信号を収集するよう配置され、
− 前記分析ユニット(40)は、前記干渉計光信号を相関分析させるよう適合化されるものである、
請求項33または34に記載の検出装置。
【請求項36】
− 前記分離力発生器(12)は、電気的力、等電集束力、流動力、磁気的力、機械的力および光学的力の中の少なくとも1つを生成するよう適合化される、請求項22乃至35のいずれかに記載の検出装置。
【請求項37】
前記分離経路(11)は、電気泳動分離経路、クロマトグラフィ分離経路、および等電点電気泳動法に適合化されたpH勾配、の中の1つを含むものである、請求項22乃至35のいずれかに記載の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、分離プロセスによって試料から得られる、例えばタンパク質または炭水化物または核酸分子のような生体高分子、のような粒子を検出する方法に関する。さらに、本発明は、分離デバイス(装置)および検出デバイス(装置)を含む、粒子を検出する検出装置に関する。
【0002】
本発明の適用例は、例えば、化学、材料科学、生物学または医学におけるような、試料を分析する分野で利用可能である。
【背景技術】
【0003】
本明細書では、特に従来技術の分離および検出技術に関して、従来技術を例示するために挙げる以下の刊行物が参照される。
[1]Z. Wang et al., "Electrophoresis" vol.24, 2003, p.865、
[2]A. J. Hughes et al., "PNAS" vol.109, 2012, p.21450、
[3]A. J. Hughes et al., "Nature Methods" vol.11, 2014, p.749、
[4]A. Castro et al., "Anal. Chem." vol.67, 1995, p.3181、
[5]A. Bossi et al., "Journal of Chromatography A" vol. 892, 2000, p.143、
[6]G. Chen et al., "Microchim Acta" vol.150, 2005, p.239、
[7]米国特許第7074311号、
[8]K. Lindfors et al., "PRL" vol.93, 2004, p.037401、
[9]P. Kukura et al., "Nano Letters" vol.9, 2009, p.926、
[10]M. Celebrano et al., "Nature Photonics" vol.5, 2011, p.95、
[11]M. Piliarik et al., "Nature Communications" vol.5, 2014, p.4495、
[12]V. Jacobsen et al., "Optics Express" vol.14, 2006, p.405。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7074311号
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Z. Wang et al., "Electrophoresis" vol.24, 2003, p.865
【非特許文献2】A. J. Hughes et al., "PNAS" vol.109, 2012, p.21450
【非特許文献3】A. J. Hughes et al., "Nature Methods" vol.11, 2014, p.749
【非特許文献4】A. Castro et al., "Anal. Chem." vol.67, 1995, p.3181
【非特許文献5】A. Bossi et al., "Journal of Chromatography A" vol. 892, 2000, p.143
【非特許文献6】G. Chen et al., "Microchim Acta" vol.150, 2005, p.239
【非特許文献7】K. Lindfors et al., "PRL" vol.93, 2004, p.037401
【非特許文献8】P. Kukura et al., "Nano Letters" vol.9, 2009, p.926
【非特許文献9】M. Celebrano et al., "Nature Photonics" vol.5, 2011, p.95
【非特許文献10】M. Piliarik et al., "Nature Communications" vol.5, 2014, p.4495
【非特許文献11】V. Jacobsen et al., "Optics Express" vol.14, 2006, p.405
【発明の開示】
【0006】
分離および検出の方法による多数の高分子種(macromolecular species)を含む複雑な試料の分析は、生物学的研究における一般的な課題である。それぞれ電界または分離流の適用によって混合物から高分子を分離する
電気泳動法または
液体クロマトグラフィは、生体分子を分類および同定するために利用される。電気泳動法において、高分子は、分離媒体(媒質)の一端部に配置されて、電流が流される。異なる高分子が、混合媒体中で、分離媒体の性質および高分子の特性に応じて、異なる速度で移動する。電気泳動または液体クロマトグラフィ技術は、例えば、サイズ、質量、形状、電荷および/または親和性(親和力)に基づく分類およびその後の個々のバンド(帯)の同定のために、例えば、核酸、タンパク質、ペプチドおよび炭水化物を含む、任意の高分子の分離に適用することができる。
【0007】
通常の電気泳動技術には、例えば、ポリアクリルアミド・スラブ・ゲル電気泳動(PAGE)法またはキャピラリ電気泳動法が含まれる。PAGE法では、分子は、ゲル層内で空間的に分離され、例えば、紫外線吸収測定、可視光における染色分子の直接観察、または例えばウェスタン・ブロット法において蛍光標識(ラベル)された抗体を用いた選択生体分子種の特定のブロッティング、によって検出される。電気泳動読取りの感度は、(i)染色またはブロット効率によって、および(ii)染色画像化の感度によって、制限される。通常の方法では、単一バンドを読み取るのに必要な分子の総質量は、ナノグラム範囲内にある。この量は、エレクトロフェログラムの単一バンド内に存在するのに必要な数十億個の分子に相当する。従って、一般的な欠点として、通常の方法は、検出対象の分子を濃縮するための試料調製をしばしば必要とする。
【0008】
キャピラリ電気泳動法は、スラブ・ゲル電気泳動法の代替法であり、それによって、分離マトリックスに印加される電位を高くすることができ、従って分離時間をより短くすることができる。分離媒体は、ゲルまたは緩衝液で満たされた数μm乃至100μmの範囲の内径のキャピラリであり、またはマイクロ流体流路(チャネル、通路)である。キャピラリ電気泳動法は、例えば、分子の紫外線吸収度または蛍光を測定することによって、キャピラリにおける固定位置を通る分子のバンドの通過(渡過)を検出するインライン(直列、直線状)読取りを使用する。紫外線(UV)吸収度測定の感度は、単一のタンパク質の吸収断面積によって制限される。この場合も同様に、各バンド内で、典型的にはマイクロモル範囲の、高い濃度が必要である。通常の構成では、これは、フェムトモル範囲(1fmolは検出バンド内の6×10
8分子に対応する)における検出限界に対応する。マイクロ(微小)流体型の電気泳動法では、感度を、100amolレベル(文献[1])に向けて押し上げ、または蛍光免疫ブロッティングと組み合せることによって10
4分子のオーダ(桁)(文献[2])にまで押し上げることができる。マイクロ流体ウェスタン・ブロッティングを使用して達成される最高の感度によって、数千分子という小さい組合せ(アンサンブル)を達成(解決)することができる(文献[3])。今日まで、電気泳動ゲル中の単一分子拡散を観察する唯一の方法は、蛍光によるものである(文献[4])。しかし、分子標識(ラベル)は、被調査タンパク質分子の挙動、電荷、サイズおよび他の特性を変化させ、それによって、単一分子感度でのウェスタン・ブロット(法)は固有(native)蛍光分子のみに制限される。
【0009】
ゲルまたはキャピラリ電気泳動法および他のクロマトグラフィ法(例えば液体クロマトグラフィ)と、電気化学的、水晶振動法、または光バイオセンサに基づく検出法との組合せが以前報告された(文献[5]、[6]、[7])。この組合せによって、紫外線吸収に基づく通常のキャピラリ電気泳動読取り法と比較して、改良された検出自動化、リアルタイム電子読取り、有用性および再現性およびより高い感度が実現される。
【0010】
現在の生化学および医学では、例えば“単細胞オミックス”およびCTC(循環腫瘍細胞)のような領域における調査のために、生理学的試料中の極少量のタンパク質の測定に対するニーズ(必要性)があり、ここで、タンパク質プロファイル(プロフィール)はピコリットル量の試料において極低量レベルで存在していても検出されなければならない。そのような試料中に存在する生体分子材料の総量(例えば10
−20モル)は、しばしば通常の分離方法の感度(例えば10
−12モル)よりはるかに少ない。しかし、今日までのところ、数個または1つの単一高分子のレベルに対して電気泳動読取り感度をかなり改善するであろう技術は存在しない。
【0011】
ナノ粒子(文献[8]、[12])、量子ドット(文献[9])、色素分子(文献[10])および単一非標識タンパク質(文献[11])の画像化および分光法について記載されている所謂
干渉計散乱検出(interferometric scattering detection)
(iSCAT)の技術を用いて、単一非標識粒子の検出が実証された。
【0012】
iSCAT技法は、以下の考慮に基づくものである。散乱は、光−物質相互作用における最も基本的なプロセスであり、有限サイズの任意の物体が電磁線(electromagnetic radiation)に対して有限な散乱断面積を有する。散乱源の消滅測定は、例えばタンパク質分子のような散乱源によって散乱された光が入射ビームまたは反射ビームと干渉することから得られる。透過または反射強度の変化は、物体の存在に関する情報を伝える。対象物のサイズに対応して、干渉信号は極めて小さくてもよく、この小さい信号の検出可能性は信号対雑音比(SNR)にのみ依存する。
【0013】
光ビームがガラス基板の表面を照射する場合、光ビームは、基板界面で部分反射され、また、基板上に吸着された例えばナノ粒子または分子のような粒子によって散乱される。関心の対象となる信号は、次式で光強度I
intの部分によって与えられる。
I
int=2|E
ref||E
sca|cosφ
【0014】
これ(光強度)は、反射光場と散乱光場のビート(うなり)現象に対応する。ここで、E
refとE
scaはそれぞれ反射成分と散乱成分の電界を記述し、φは散乱過程または伝搬過程の期間中に獲得される位相シフト(移相)である。基板上の散乱物体は、散乱光場の変化ΔE
scaを生じさせ、その結果として干渉信号の相対的な変化ΔI
intが生じる。従って、ショット・ノイズ限界検出(shot-noise-limited detection)の場合、ΔI
intのSNRはSNR〜(ΔN
sca)
0.5で近似することができる。ここで、ΔN
scaは検出器上で干渉する散乱光子の数の変化を記述する。しかし、実際には、幾つかの他のノイズ源および系統的(体系的)影響(systematic effects)が考慮される。
【0015】
図7に示されているように、文献[11]に記載されている単一タンパク質検出装置(設定)は、光源21’、結像光学系22’、24’、ビーム・スプリッタ(分割器)23’およびセンサ・デバイス(素子)25’を有するホモダイン干渉計20’を含んでいる。光源21’からの平面波レーザ・ビームは、ガラス基板の表面31’によって制限される水充填検出領域30’を照射する。基板と水の界面(表面31’)におけるこのビームの部分反射は、ホモダイン検出の参照(基準)として使用される。表面31’上に吸着されまたは表面31’に近接して検出領域30’中を通過するタンパク質分子1’は、表面粗さと共に散乱放射を形成し、それが結像光学系の高NA油浸顕微鏡(high-NA(Numerical Aperture:開口数)oil immersion microscope)の対物レンズ22’によって集められる。参照光および散乱光は、参照ビームが平面波としてセンサ・デバイス25’に近づく形態で、結像レンズ24’を介してセンサ・デバイス25’(例えば、CMOSカメラ)上に結像され、一方、分子の散乱光は収束性の球面波である。これら2つの光場は、コヒーレントであり、従って(互いに)干渉して干渉信号ΔI
intを生成することができる。
【0016】
表面粗さに関連する背景が静的なので、表面31’への分子の着地の前後に捕捉された各フレームを減算すると、差分(または増分もしくはインクリメント)画像(イメージ、像)から粒子を表す所望の信号(干渉信号ΔI
intの変化分)を抽出することができる。この結像モードにおける波面波形の影響を除去するために、その試料の横方向の位置を、圧電スキャナを使用して数百nmだけ調節することができる。高速CMOSカメラと、同期式ロックイン検出を用いて、センサ表面の散乱に対応する画像が抽出される。
【0017】
従来技術のiSCAT技術は、過去に、複数の単一分子を検出することによって極めて高い検出感度を証明するための実証試験が行われた。iSCAT技術の適用は、調査中の1つの単一粒子タイプの検出、例えば或るタンパク質の複数分子の検出、に制限されていた。その際、その粒子は、例えばマイクロピペットを使用して、所定の堆積方式(スキーム)でセンサ表面上に供給された。iSCAT検出の1つの課題は、例えば1kDa乃至1MDaの多様な分子量と、最高で8のオーダの大きさまでの濃度差とを含む高分子粒子の複雑な混合物の分析である。多い(大きい)高分子種および高濃度に達する種の検出に起因する強い干渉計信号によって、より弱い干渉計信号を有するおよび/またはより低い濃度で到達するより小さい粒子の検出が、課題となる。
【0018】
発明の目的
本発明の目的は、通常の技術の制限を回避することができる、改良された粒子の検出方法を実現することである。本発明の別の目的は、通常の技術の制限を回避することができる、粒子を含む試料物質を分析するための改良された検出装置を実現することである。特に、その検出方法および検出装置では、通常の分離技術と比較して、単一生体分子の検出が可能な感度の向上および/または試料調製要求の低減が得られることとなる。
【0019】
発明の概要
上述の目的は、それに対応して、各独立請求項の特徴をそれぞれ含む、粒子を検出するための方法および装置によって達成(解決)される。本発明の有利な実施形態および適用例は、従属請求項に記載されている。
【0020】
本発明の第1の一般的態様によれば、上述の目的は、その特定の特徴、例えば、電荷、サイズ、形状、密度、に基づいて粒子を分離し、個々の粒子によって形成される一連の単一光散乱事象として粒子を検出する方法によって達成(解決)される。検出対象の粒子を含む試料物質が分離経路の供給源側に設けられ、その試料物質は分離力を受けて、その粒子が分離経路に沿って、例えば特定の粒子速度でまたは特定の位置に、移動するようにされ、また、それらの粒子は分離経路に沿って空間的に互いに分離されて、それらの粒子が分離経路の下流の標的側での特定の
到達時間(到着時間
)を有するようにされ、その分離された粒子は検出領域内で個々に検出される。その到
達時間は、粒子の特徴および使用される分離力に応じて決まる。一例として、到
達時間は、分離経路に沿った異なる粒子速度によって決定される。本発明によれば、その検出工程は、検出領域において結合されまたは通過する(transient:過渡的)個々の粒子によって形成される一連の単一散乱事象の干渉計検出を含んでいる。その際、干渉計検出で得られる、散乱光信号の複数のパラメータ、例えば干渉計コントラストが、分析されて、特定の粒子特徴、例えば、粒子のサイズ、質量、形状、電荷、および/または親和力が得られるようにされる。
【0021】
本発明の第2の態様によれば、上述の目的は、好ましくは本発明の上述の第1の一般的態様による方法を用いて、粒子を検出するよう構成された検出装置によって達成(解決)される。その検出装置は、供給源側および下流の標的側を有する分離経路と、分離力発生器とを有する分離デバイスを含んでいる。その際、分離経路の供給源側は、検出対象の粒子を含む試料物質を収容するよう適合化され、分離力発生器は、試料物質から分離経路に沿って標的側に向けて粒子を移動させる分離力を生成することができる。その検出装置は、さらに、検出領域における粒子を、散乱光に基づいて検出するよう適合化された検出デバイスを含んでいる。本発明によれば、検出デバイスは、可視光、紫外線または赤外線の領域の波長の、好ましくは100nm乃至2000nmの波長の、電磁線を特に放射する照射光源と、結像光学系と、検出領域における個々の粒子によって形成された一連の単一散乱事象を干渉計検出する(interferometric sense)よう配置されたセンサ・デバイスと、を含んでいる。その検出デバイスは、その検出デバイスで得られた散乱光信号を分析しその粒子の特定の粒子特徴を得るよう適合化された分析ユニット、に結合される。
【0022】
その分離工程は、一般的に、電気的力、等電集束力(isoelectric focusing force)、流動力、磁気的力、機械的力および光学的力の中の少なくとも1つを含む特定の分離力の作用によって、粒子を分離することを含んでいる。その粒子の分離には、1つの粒子タイプの粒子を、少なくとも1つの他の粒子タイプの粒子からおよび/または試料物質の残り成分から分離することを含んでいる。
【0023】
利点として、利用可能な分離方法および分離装置が使用され、その際、分離経路は、分離媒体、例えば液体またはゲル、によって形成され、分離力発生器は、分離力を生成するよう適合化される。本発明の特に好ましい適用例によれば、本発明では、電気泳動法、例えばキャピラリ電気泳動法またはゲル電気泳動法、またはクロマトグラフィ分離、または等電点電気泳動法(isoelectric focusing:等電点分画法)が使用される。その分離経路は、電気泳動分離経路、またはクロマトグラフィ分離経路、または等電点電気泳動法に適合化されたpH勾配をそれぞれ含んでいる。その電気的分離力は、電気泳動分離経路の供給源側および標的側上の電極によって形成され、一方、流動力および/または別の機械的力、例えば重力は、クロマトグラフィ分離経路に沿って形成される。さらに、他の分離方法への検出方式の拡張は、例えば、高速(高性能)液体クロマトグラフィ(HPLC)、サイズ排除(size exclusion)クロマトグラフィ、カラム・クロマトグラフィ、または薄層クロマトグラフィ、との組合せで直に利用可能である。本発明の追加的なまたは代替的な適用例では、分離経路としてマイクロ流体流路(チャネル)を用い、磁気的力および/または光学的力を用いて粒子を分離することができる。
【0024】
“粒子”という用語は、一般的に、ナノ粒子、高分子粒子、単一高分子(または分子)、二量体(ダイマー)、高分子の凝集体、コロイド粒子、無機ナノ粒子、照射波長未満の寸法を有する粒子、金属粒子、ポリマー粒子、ウイルス、細胞外小胞、エキソソーム、および生体高分子、特に、タンパク質、炭水化物または核酸分子、の中の少なくとも1つを含む任意の粒子を指す。検出対象の粒子は、典型的には、特徴的な寸法を有し、共振(共鳴)を回避するために、好ましくはλ/2未満(ここで、λは干渉計検出に使用される光の波長である)の、例えば直径または伸長(長さ)を有する。より小さいサイズの制限(限界)は、粒子密度、分極率、および結果的に散乱断面積に依存し、典型的には1nmのオーダであり、または例えば水溶液中のタンパク質のような弱く散乱する粒子に対するものであり、特に散乱断面(サイズ)10
−12μmに対応する3nmの粒子に対するものである。さらに、粒子は、10kDa乃至10MDaの範囲の質量および/または所定の分極率を有することが、好ましい。しかし、検出のサイズ制限は、主として、使用される電子機器のノイズ特性に依存し、また、より小さい分子を検出することは、将来の技術進歩の結果として可能である。その結果、実際の物理的制限は、粒子が耐えることができる最大パワーであり、これ(最大パワー)は、種によって異なり得るものであり、例えば単一タンパク質のような非吸収性粒子では粒子に密接に集中する(密集する)数ワットほどの高さであり得る。
【0025】
“試料物質”という用語は、一般的に、分離されて検出される粒子を含む試料を指す。1つの単一粒子タイプの粒子、例えば、1つの単一化学組成物および/または幾何学的構成の粒子、または異なる粒子タイプの粒子、例えば複数の化学組成物および/または幾何学的構成の粒子を、試料物質に含ませることができる。試料物質は、粒子を含む液体を含むことが好ましい。液体は、例えば、調査中の有機体(生命体)から体液(身体流体)を、供給し、任意に精製しおよび/または濃縮する別個の調製工程において、得ることができる。しかし、本発明による技術の高い感度に起因して、試料物質は、必ずしも精製しおよび/または濃縮する工程を必要としない。従って、本発明の特に好ましい適用例によれば、試料物質は、分離経路の供給源側に配置される、生体組織またはその一部または少なくとも1つの生体細胞またはその一部を含んでもよい。
【0026】
一連の単一散乱事象の干渉計検出は干渉計散乱検出(iSCAT)を含み、干渉計散乱検出は、特に、検出領域に照射光を照射し、散乱源によって、即ち個々の粒子によって散乱された光と、反射または照射された光との干渉(重合せ)を繰返し検出すること、を含んでいる。干渉の検出は、検出領域の一連の干渉画像または検出領域における少なくとも1つの焦点位置における一連の干渉強度を含む散乱光信号、を収集することを含んでいる。利点として、散乱光信号は、粒子の特定の粒子特徴を与える。粒子特徴は、例えば、散乱光信号中の散乱源のスポットのサイズおよび/またはコントラストより得られる粒子質量または体積、および/または散乱光信号における散乱源の到
達時間より得られる粒子電荷および/または濃度、および/または例えばリガンド官能化表面を用いた親和性に基づく検出で得られる粒子タイプ(粒子の化学的組成)を含んでいる。その粒子の特徴は、そのような散乱光信号から直接的に得られ、または散乱光信号における散乱源寄与分を識別する散乱光信号の時間的変動から得られる。時間的変動は、直列的に収集された散乱光信号(差分または増分の散乱光信号)の増分によって与えられる。
【0027】
本発明の重要な利点として、干渉計散乱検出は、粒子分離との組合せで単一粒子検出システムを形成する。利点として、単一分子感度と、例えばエレクトロフェログラム読取りとの組合せによって、商業的実装と比較して6オーダ(桁)より大きい大きさだけ、および最高感度の研究室実績と比較して4オーダの大きさだけ、検出限界を増大させる機会が与えられる。本発明によって、例えば単一分子感度を有する複雑な生体分子試料の、分離および読取り、および、僅か1つの単一粒子、例えばタンパク質、を含む個々のバンドの特定の検出、が可能になる。
【0028】
別の基本的な利点として、数オーダの大きさだけ低く濃縮された試料を分析することによって、天然(自然)の試料を直接使用することができる試料調製が簡単に行える。これは、濃縮工程なしでタンパク質溶液をまたはPCR増幅なしでDNA試料を分析すること、を意味する。タンパク質の発見および薬剤開発では、もはや制限された感度に苛まれることがなくなるであろうし、通常の検出方法の検出限界より低くてよいバイオマーカ(生物指標化合物)の範囲を検出できる。さらに、単一DNA感度でのクロマトグラフィ手法によって、単一DNA配列決定のための新しい展望が開ける。
【0029】
従って、10
−23モル乃至10
−12モルの検出範囲に対応する極少体積および濃度の試料溶液に直接適用可能な粒子の複合混合物の定量分析のための新しい無標識(ラベルなし)分析方法が実現される。本発明による方法は、試料物質の各成分を分離し、それと同時に、単一粒子の最小検出限界で試料溶液に含まれる全ての粒子種の量または濃度の絶対的な測定値または尺度を検出する。それと同時に、この方法は、粒子の電気的分極率の振幅によって全ての検出粒子の分子サイズの絶対的な測定値または尺度を検出することができる。最後に、この方法では、例えば、電荷、形状、pIまたは親和力のような、通常の分離方法を用いて一般的にアクセス可能な他のパラメータ、を検出することができる。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、検出領域は、分離経路の下流標的側にまたは分離経路の一部分として好ましくは配置される検出面を含んでいる(本発明の第1の実施形態)。検出対象の粒子は、検出工程の期間中に検出領域の検出面に結合される。検出面は、標的側にある分離経路の開口端部から或る距離で配置されることが、好ましい。粒子は、分離力の作用および検出領域中を通る粒子の拡散によって、検出面へと移動される。検出面と開口端部の間のその距離は、拡散の作用が分離力の作用よりも支配的(優位)であるように、選択されることが、好ましい。
【0031】
本発明の他の変形例によれば、分離経路の開口端部は、検出面に方向付けられたテーパ状(先細)の形状を有し、および/または、分離経路は、開口端部が照射光源の焦点外に配置されるように、配置される。利点として、これらの特徴によって、検出面に任意に近接するように粒子を供給することができ、粒子結合の確率を最大化することができる。
【0032】
本発明の第1の実施形態の別の変形によれば、粒子は、検出面の裏面に配置されたゲート電極によって形成される電気的駆動力の作用によって、検出面に向けて駆動することができる。任意に、交流(AC)電圧源の交流電圧をゲート電極に印加することができる。交流電圧は、荷電分子を検出面に引き寄せ、および、未結合のまたは緩く結合した分子種およびイオンを、検出面から離れるように周期的に押す、のに役立つ。
【0033】
複数の単一散乱事象の干渉計検出は、以下の諸工程によって得られることが、好ましい。検出面は、照射光で、例えば連続波またはパルス・レーザ光のような、好ましくはコヒーレントな照射光で照射される。照射された検出面の一連の干渉計画像(フレーム)が収集される。各フレームは、検出面において反射または透過された照射光の背景参照部分と、粒子によって生成された照射光の散乱部分との重合せによって、決定される。検出面の画像の時間的変動は、例えば個々のタンパク質分子または他の粒子を、検出面に対する結合または離脱(結合解除)に関連付けることができる。さらに、発明者たちは、分離工程で得られる粒子供給および結合の速度(レート)が充分に緩慢で(遅くて)、1つのフレーム(1つの差分散乱光信号)を捕捉する時間の期間中に数個の粒子だけが結合するようなもの(充分緩慢)であること、を見出した。その1フレームの捕捉時間は、少なくとも1μs、特に少なくとも100μs、および/または、最大で数時間、特に最大で10s(秒)である。これは、装置の結像特性で知られる光の回折によって制限されるスポット内での空間的に局所的な変動によって、明らかになる。干渉計画像(結像)は、粒子の特定の粒子特徴を得るために分析される散乱光信号を供給しまたは与える。
【0034】
散乱光信号の分析には、複数のフレームを、背景減算手順、背景補間手順、動的濾波手順、および相関性に基づく変調(modulate:変化、調整、調節)された背景の抽出、の中の少なくとも1つで処理すること、が含まれることが好ましい。背景減算手順では、各現在の干渉計画像が、少なくとも1つの前の干渉計画像を参照するようにされ(基準とし、と関連付けられ)、干渉計画像における時間的強度変動に基づいて粒子が検出される。背景補間手順は、背景画像を予測するモデル関数を使用し、背景画像の静的またはゆっくりと変化する特徴を適合させ(調整し)、各現在の干渉計画像に複数の背景のモデル関数の中の少なくとも1つを参照するようにされる(基準にする)。相関性に基づく抽出では、外力を使用して、背景画像の特徴を変調し(変化させ)、例えばその横方向位置または焦点平面を、または粒子の特徴を、例えば変調分離力による粒子の軌跡を変調し(変化させ)、干渉計画像において検出された変化を変調周波数および位相と相関させる。時間的強度変動は、各差分(微分)散乱光信号を統計的に処理することによって、得ることができる。
【0035】
本発明の第1の実施形態の別の変形例によれば、検出工程は、検出面上での粒子の結合および/または離脱事象を検出することを含んでいる。利点として、変化を検出することができる。特定の表面結合の場合、離脱事象の検出までの平均時間が、相互作用の親和力を示すので、離脱は重要であり得る。従って、特定の粒子、例えば分子に関する別の分析情報が得られる。
【0036】
粒子は、検出面上での結合状態で、別の活性(活動性)を有することができる。従って、本発明の第1の実施形態の別の好ましい変形形態では、検出工程は、検出面上の粒子の運動特性を検出することを含んでいる。一例として、粒子は、分離力または拡散の作用によって、検出面に限定された検出領域中を通って移動することができる。分子に結合する検出面は、例えば、荷電した非結合面、特に2次元脂質膜(lipid membrane)を含み得る。利点として、生体分子を、例えば脂質膜上で検出し、その拡散または他の動きを追跡することが、可能である。これによって、同じプロセスにおける例えば拡散性または親和性のような分子の追加的パラメータを測定することが可能になる。特に、粒子のコントラスト(サイズ)および到
達時間(サイズ/電荷/移動度の測定値)に関する情報に加えて、粒子に関連する拡散率または他の移動度を測定することができる。これは、特に、各ナノ粒子、各単一分子または各小胞(vesicles)で得ることができる。
【0037】
本発明の代替実施形態によれば、検出対象の粒子は、検出工程の期間中に検出領域中を通って移動するようにされる(本発明の第2の実施形態)。分離読取りに取り組むこの手法は、例えばキャピラリ電気泳動装置の、例えばキャピラリまたはナノ流体チャネル(流路)の内部に位置する検出領域中を通過する非結合粒子の直接的観測に基づくものである。iSCAT画像の焦点深度は、典型的には、1波長(例えば300nm)未満に制限される。さらに、散乱物体のコントラストは、この焦点深度にわたって、最大の建設的(強め合う)干渉(ピーク)から最大の相殺(弱め合う)干渉(ディップ)まで変化する。検出領域中を通過する粒子を閉じ込め、通過する(過渡的)粒子に対して単一粒子感度を達成するために、照射方向に沿った同等の深さ(例えば100nm乃至500nm)のチャネル(流路)、例えば、ナノ流体チャネル(流路)、ナノキャピラリ、または局部的にテーパ状のキャピラリの中の少なくとも1つ、が使用されることが、好ましい。従って、キャピラリ、テーパ状キャピラリまたはナノ流体チャネルの検出領域は、ナノチャネル(ナノ流路)として表示される。本発明の第2の実施形態では、検出器デバイス(iSCAT検出器)は、ナノチャネル内の個々の粒子の1次元運動によって生じる散乱信号の差分を画像化して(結像して)追跡する。単一粒子散乱の干渉計検出の基本原理は、第1の実施形態を参照して先に説明した手法と同じである。しかし、この手法では、粒子は、検出面上で不動状態になる(固定される)のではなくて、一次元運動状態に閉じ込められる。
【0038】
利点として、第2の実施形態によって、粒子のインライン検出と、本発明の実装に対する利用可能な分離デバイスの容易な適合化とが可能になる。個々の粒子が、検出領域において例えば拡散および/または外力によって移動している間に、複数の単一光散乱事象の干渉計検出が得られる。検出領域は分離経路の一部分であり、粒子は分離力の作用によって検出領域中を移動することが、好ましい。検出領域として設けられた分離経路のその部分は、例えば分離経路の半分の長さまたは下流の半分に位置する。粒子の到
達時間は、分離力の変調によって変調する(変化させる)ことができ、干渉計検出で得られた散乱光信号は、その変調に応じてロックイン技術によって分析される。この有利な実施形態によれば、散乱光信号の検出におけるSNRを改善することができる。
【0039】
本発明の第2の実施形態の好ましい変形例によれば、複数の単一散乱事象の干渉計検出は、検出領域に照射光を照射し被照射検出領域の一連の干渉計画像を収集すること、によって得られる。その一連の干渉計画像は、検出領域でまたは検出領域中で反射されまたは透過した照射光の背景参照部分と、粒子によって生成された照射光の散乱部分との重合せを含んでいる。干渉計画像は、粒子の特定の粒子特徴を得るために分析される散乱光信号を供給する。散乱光信号の分析が背景減算手順を含み、ナノチャネルの各現在の干渉計画像には少なくとも1つの前の干渉計画像を参照するようにされ、粒子が複数の干渉計画像における時間的強度変動に基づいて検出されること、が好ましい。
【0040】
ナノチャネル内で移動する単一粒子の検出の問題が一次元の問題であるとき、共焦点構成のレーザ・ビームの単一の密集した焦点を通過する複数の粒子によって生成されるiSCAT信号の時間的変動を監視することによって、単一点検出を直ぐに達成することができる。従って、本発明の第2の実施形態の別の変形例によれば、複数の単一散乱事象の干渉計検出は、検出領域内の少なくとも1つの焦点位置に集束された照射光を検出領域に照射しその少なくとも1つの焦点位置における干渉計光信号を収集することによって、得られる。その干渉計光信号は、検出領域で反射されまたは検出領域中を透過した照射光の背景参照部分と、少なくとも1つの焦点位置で粒子によって生成された照射光の散乱部分との重合せを含んでいる。干渉計光信号は、複数の単一粒子通過(transitions:渡過、推移)の痕跡および粒子の特定の粒子特徴を得るために分析される複数の時間系列の散乱光変動を供給する。
【0041】
検出領域において少なくとも2つの焦点位置を照射することができ、干渉計光信号は少なくとも2つの焦点位置で収集され、その干渉計光信号に対して相関分析が行われることが、好ましい。
【0042】
高分子または他の粒子の複雑な混合物の定量分析のための本発明による分析方法は、複数の単一粒子の位置決め(localization:局在化)および追跡のためのiSCAT検出と、例えば電気泳動分離のような粒子分離技術との組合せ効果に基づくものである。その検出および分析は、例えばキャピラリ電気泳動法またはPAGE法を用いた、高分子分離および検出の利用可能な市販の溶液と比較して、6のオーダの大きさより高い感度がある。それと同時に、高分子試料の超高感度検出のための手段を提供するiSCAT検出は、例えば、非常の多様な濃度で異なるサイズの範囲を特徴とする高分子粒子の複雑な混合物などにおいて、使用することができるであろう。天然の試料は、通常の電気泳動法を用いた分析には、しばしば薄すぎるので、分離前にタンパク質試料を濃縮するのに、例えば、凍結乾燥(lyophilization)、スピン濃縮器、透析(dialysis)、または沈降のような方法が用いられる。濃縮工程を回避することが可能であることによって、より簡単で、より高速で、より安価な分析法が提供され、さらに、予備処理プロトコル(手順)が被調査タンパク質試料の機能を阻害(干渉)し得るような多数の問題が解決される。各検出粒子の散乱断面を画像化する検出方法によって、各分子の絶対的サイズが独立の方法によって決定されるような本来の(固有の、本質的)較正が可能になる。試料消費量は基本的に低減される。即ち、感度向上の結果として、各分離作業に必要な材料が数オーダ(桁)の大きさで少なくなる。これは、例えば、単細胞生物学、科学捜査(forensic science)、考古生物学(archaeobiology)等のような試料収量が極めて低い適用例において有用である。究極的な限界において、提案された方法によって、例えば、1つの単一染色体試料のDNA配列決定を行うための充分な感度が提供される。最後に、粒子は、分子標識なしで検出すること(標識を用いない分離および検出)ができる。
【0043】
本発明の他の詳細および利点を、図面を参照して以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】
図1は、キャピラリ電気泳動構成を含む、本発明の第1の実施形態による検出装置の概略図である。
【
図2】
図2は、
図1による検出装置で得られた実験結果のグラフ図である。
【
図3】
図3は、ゲル電気泳動構成を含む、本発明の第1の実施形態による別の検出装置の概略図である。
【
図4】
図4乃至6は、インライン検出構成を有する、本発明の第2の実施形態による検出装置の概略図である。
【
図7】
図7は、好ましくは本発明に従って使用される、通常の干渉計散乱検出デバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本発明の好ましい実施形態
本発明の好ましい実施形態を、キャピラリ電気泳動法またはゲル電気泳動法に基づく分離と、干渉計散乱検出との組合せを例示的に参照して、以下で説明する。本発明の実装は、説明する分離方法の適用例に限定されることなく、むしろ、他の電気泳動分離、クロマトグラフィ分離、pH勾配における等電点電気泳動による分離、異なる分子電荷の加速に基づく分離および/または他の磁気的または光学的分離方法を含めた他の分離技術でも、可能であること、を強調する。さらに、参照文献[11]に記載され
図7に示されたようなiSCAT技術の適用例を、例示的に参照する。本発明の実装は、この特定のiSCAT設定に限定されることなく、例えば参考文献[8]〜[10]および[12]に記載されているような、干渉計散乱検出の変形形態でも可能である。さらに、例えば、適切な照射光(波長、強度)の選択、結像光学系の構成またはセンサ・デバイスの構成のような、iSCAT設定の特定の特徴は、本発明を適用する特定の(具体的)条件に応じて選択される。
【0046】
分離技術の詳細、例えばキャピラリ電気泳動法またはゲル電気泳動法、例えば適切な分離媒体(媒質)の選択、分離経路の長さの寸法調整、および分離電圧の制御は、通常の分離技術で知られている限り、説明しない。特に、分離ゲルおよび緩衝液(バッファ)は、検出対象の粒子のタイプ(種類)に応じて選択することができる。一例として、電気泳動法、等電点電気泳動法、2次元(2D)電気泳動法、等で知られているように、アガロース・ゲルを使用することができる。
【0047】
粒子の分離および検出を以下で参照して説明する。本発明の実装は、例えば単一高分子粒子のような或る粒子タイプに限定されることなく、むしろ特に上述の粒子タイプでも可能であることを、強調する。
【0048】
図1は本発明の第1の実施形態による検出装置100を概略的に示している。検出装置100は、分離デバイス(器、手段)10、検出デバイス(器、手段)20、検出領域(volume:立体空間、容積部)30、分析ユニット(部、装置)40、および制御デバイス(器、装置)50を含んでいる。本発明の実際の実装では、構成要素(部品)10乃至50は、共通の筐体に収容されたコンパクトな実験室装置(デバイス)として一体化することができる。代替形態として、検出装置100のモジュール構造体を設けることができ、例えば、検出デバイス20を異なるタイプの分離デバイス10と組み合わせるために、構成要素10と30を入れ替えることができる。制御デバイス50は、特に分離デバイス10の分離力発生器をおよび分析ユニット40で検出デバイス20を制御するために、検出装置100のコンピュータに基づく制御手段を含んでいる。分析ユニット40と制御デバイス50の双方は、共通のコンピュータ・ユニットで実装することができる。
【0049】
分離デバイス10は、分離経路11および分離力発生器12A、12B、13を含んでいる。分離経路11は、試料容器15内に位置する供給源側から標的容器32内に位置する標的側まで伸びるキャピラリである。そのキャピラリは、緩衝液(液体バッファ)またはゲル・マトリックスで満たされ、キャピラリ・ゾーン電気泳動法で知られているように、ポリマーまたは他の低結合性被覆をその壁部上に有することができる。キャピラリの内径および長さは、適用条件に応じて選択される。実際の例では、内径は50μmであり、長さは50cmである。
【0050】
調査対象の粒子を含む試料物質2は、分離経路11の供給源側に位置する。試料物質2は、試料容器17内に含まれる、例えば、異種の、タンパク質、DNA分子、炭水化物または他の複雑な生体分子を含む溶液を含んでもよい。代替形態として、試料物質2は、試料容器17中のキャリア(担体、支持体)上に位置する生体細胞、細胞群または組織を、培養媒体(媒質、培地)に含んでもよい。分離経路11の供給源側端部は、試料容器17内で浸漬されて、試料物質2と分離経路11内の緩衝液またはゲルとの間の流体接続が得られるようになる。
【0051】
分離経路11の他端部は、検出領域(空間)30を含む標的容器32中に、その検出面31に近接して、浸漬される。分離経路11のキャピラリは、分離経路11の標的側に先端(tip:チップ)形状を有するテーパ状(先細)の開口端部14を有する。従って、小さい検出領域に、より正確に到達することができる。さらに、分離経路11の分離媒体から出た各粒子は、検出面31の近傍で検出領域30に入る。
【0052】
分離力発生器は、分離電圧源13に接続された2つの電極12A、12Bを含んでいる。第1の電極12A(通常は陽極)は、試料物質2および分離経路11中の分離媒体に電気的に接続された分離経路11の供給源側に、配置される。典型的には、第1の電極12Aは、試料容器17内の液体中に浸漬される。第2の電極12B(通常は陰極)は、分離経路11の標的側に配置される。第2の電極12Bは、例えば標的容器32内で浸漬された自立電極として、検出面31の近傍に配置される。代替形態として、第2の電極12Bは、検出面31に直接配置された透明電極(例えばITO)、または検出面31に近接した表面上に堆積(被着)された金属被覆とすることができる。
【0053】
検出領域30は、例えば水または緩衝液のような液体で満たされた、例えばキュベットのような標的容器32によって形成される。標的容器32は、例えばガラスまたはプラスチック製の、透明な底壁部を有する。標的容器32の底壁部は、特異的または非特異的に検出領域30で検出される粒子1を結合する検出面31を形成する。
【0054】
図1に示された任意の特徴として、検出領域には、ゲート電圧源34に接続されたゲート電極33を設けることができる。ゲート電極33は、検出面31と検出デバイス20の間に配置され、例えば、透明電極(例えばITO)またはリング(環状)電極を含んでもよい。ゲート電極33に電圧を印加することによって、粒子1を開口端部14から検出面31に向けて駆動することができる。交流電圧がゲート電極に印加された場合、未結合または緩く結合した粒子を検出面31から離して移動させることが容易に行える。
【0055】
検出デバイス20は、照射光源21、結像光学系22、24、ビーム・スプリッタ23およびセンサ・デバイス25を含んでいる。構成要素21〜24は、概略的に示されており、
図7に示されおよび/または例えば参照文献[11]に記載されているように配置し設計することができる。文献[11]を、特に、文献[11]における
図1の技術的開示内容およびその記載並びにカメラ信号処理および背景減算の説明に関して、参照により本明細書に組み込む。検出デバイス20は、例えば単一タンパク質感度のような単一粒子感度での測定の期間中に検出面31に結合する検出領域30における全ての粒子1を、以下のように検出する。
【0056】
照射光源21、例えば連続波またはパルス状レーザは、ビーム・スプリッタ23および結像光学系の顕微鏡対物レンズ22を介して検出面31に方向付けられる(指向される)単色光または多色光の平行ビームを生成する。標的容器32の底壁部の上側の検出面31が照射されて、検出面31に結合された複数の粒子1において散乱が生じるようにされる。顕微鏡対物レンズ22と、ビーム・スプリッタ23とセンサ・デバイス25の間に結像レンズ24とを含む結像光学系は、検出面31の散乱光の画像をセンサ・デバイス25の2次元(2D)センサ・アレイ(例えばCMOSカメラ)上に投射する。検出面から反射された光放射は、センサ・デバイス25上で、検出面31で散乱された光放射と重なり合って干渉する。従って、センサ・デバイス25は、干渉計画像(干渉計像)を収集する。その干渉計画像は、検出面31で反射された参照波と、粒子1で形成され、特に所謂グイ(Gouy)位相で供給される散乱波との間の位相シフト(移相)によって決定される。
【0057】
図1による検出装置100を用いて粒子1を検出する本発明による方法を実行するために、試料物質2が試料容器15に配置される。電極12A、12Bの間の電流を介して分離力を加えることによって、荷電粒子または分極性粒子が、試料物質2から抽出され、分離経路11を通して検出領域30まで駆動される。検出領域30に入った粒子は、第2電極12Bに向かって移動し、検出領域30内でランダム(無秩序)に拡散する。検出領域30内に入る粒子の総数に対する、検出面31に結合され検出面31で検出される粒子1の割合は、検出領域30の幾何学的形状および第2電極12Bの位置に依存する。検出面31に結合する粒子1の最高の収率は、粒子の電界ドラッグ移動度(electric field drag mobility:電界抗力移動度、電界引き込み移動度)よりも拡散が支配的(優勢)である構成において、達成することができる。検出領域30内の液体中を通る物質移行(移送、輸送)速度によって検出粒子の量が制限される場合(例えば、その制限が電極12A、12Bの間のより高い分離電圧の必要性に起因する場合)、ゲート電極33を使用して、粒子を検出面31に向けてさらに駆動することができる。
【0058】
センサ・デバイス25で収集された干渉計画像は、分析ユニット(装置)40で処理される。1つの時系列の干渉計画像における時間的な特殊な変動は、分析ユニット40のコンピュータ回路において実行されるソフトウェアで処理される。検出面に記録された個々の結合事象の統計に基づいて、
図2に示されているようなエレクトロフェログラム(電気泳動図)が得られる。エレクトロフェログラムは、粒子の到
達時間、および粒子の分子量に比例する粒子散乱断面積の絶対的測定値(尺度)の関数、として構築または形成される。例示された実験結果では、各垂直バンド(帯)は、例えば分離経路11中を通って同じ速度で伝搬(伝播)する1つの時間フレーム内で検出されるタンパク質に対応し、垂直位置は、散乱によって測定されたタンパク質分子のサイズの独立した(別個の)情報を保持する。到
達時間は、タンパク質分子サイズ以外のキャピラリ電気泳動法における幾つかの要因に依存するので、単一粒子検出から複数のタンパク質分子の特徴(特性)、例えば分子量および電荷、を同時に(並行して)抽出することができる。
【0059】
図3は、ゲル電気泳動法に基づく分離に適合化された、本発明の第1の実施形態による代替的な検出装置100の特徴を概略的に示している。検出装置100は、
図1を参照して説明したように、分離デバイス10、分析ユニット40を有する検出デバイス20、検出領域30、および制御デバイス50を含んでいる。
図1とは異なり、分離デバイス10は、分離経路11を含み、これ(経路)は、電気泳動緩衝液(running electrophoresis buffer)で覆われたカラムに閉じ込められたゲル層によって形成される。
【0060】
より詳細に説明すると、分離経路11は、垂直に配向され固定相(stationary phase)としての電気泳動ゲル16が充填されたカラムを含んでいる。分離経路11の開口端部14には、透過性支持膜(メンブレン)17が設けられている。電気泳動ゲル16は、試料物質2を支持する、例えば、ポリアクリルアミド・ゲル、アガロース・ゲルまたは類似のゲル分離マトリックス、を含んでいる。分離経路11におけるゲル層の厚さは、分離される粒子の分離電圧およびサイズ範囲に依存して変化してもよい。透過膜17は、例えば、細孔(pores)のアレイを有する窒化ケイ素膜、タンパク質分離膜または別の多孔質層、フリットまたは他のプラグを含み、それが固定相(stationary phase)の消失を防止する。
【0061】
図3の実施形態における分離力発生器は、分離経路11内に配置された第1の電極12Aと、標的容器32内に配置された第2の電極12Bとを含んでいる。電極12A、12Bは、制御デバイス50に接続された分離電圧源13によって給電される。
図1を参照して説明したように、第2の電極12Bは、検出面31に直接配置された透明電極、検出面31に近接した金属被覆、または標的容器32内の自立した電極位置とすることができる。分離経路11の標的側は標的容器32内で吊り下げられていて(suspended:浮遊状態にあって)、開口端部14が検出デバイス20の顕微鏡対物レンズ22の焦点外に配置されるようになっている。
【0062】
検出領域30は、
図1を参照して上述したように設けられる。検出面31は、粒子1を特異的または非特異的に結合する。開口端部14から検出面31に向かう粒子の拡散は、任意のゲート電極33の作用によって支援することができる。結合された粒子1は、上述したような検出器デバイス20を用いて干渉計画像化を用いて検出される。この場合も同様に、検出面31に記録された個々の結合事象の統計から、到
達時間 および粒子散乱断面積の絶対的測定値の関数として、エレクトロフェログラムが構築される。さらに、上述のように、単一粒子検出から2次元タンパク質の特徴を抽出することができる。
【0063】
図3に示された本発明の第1の実施形態の代替形態として、分離デバイス10は、電気泳動法に基づく分離ではなくて、クロマトグラフィに基づく分離に適合化させることができる。この場合、分離経路11は液体クロマトグラフィ・カラムであり、分離力発生器は、液体クロマトグラフィで知られているような流動源(フロー・ソース)である。粒子は、電圧の代わりに、圧力差によって分離経路11に沿って移動し、分離は、電気移動度ではなくて、分離媒体保持時間(retention time:滞留時間)によって得られる。
【0064】
図4乃至6は、本発明の第2の実施形態を示しており、ここでは、検出対象の粒子が検出の期間中に検出領域30中を通って移動する。検出領域30は、分離経路11の一部分(区画、セクション)であることが好ましい。代替形態として、検出領域は、分離経路11の開口端部14の下流に位置することができる(図示せず)。本発明の第2の実施形態では、個々の粒子によって生成された一連の単一光散乱事象の干渉計検出は、検出領域30を含む分離経路の部分(区画)の一連の干渉計画像を収集すること(
図4)、または検出領域30内の1つ以上の焦点位置で干渉計光信号を収集すること(
図5、6)を含んでいる。
【0065】
図4によれば、本発明による検出装置100は、分離デバイス10、検出デバイス20、検出領域30、分析ユニット40、および制御デバイス50を含んでいる。検出デバイス10は、分離経路11、第1の電極12Aを有する分離力発生器、第2の電極12B、および分離電圧源13を含んでいる。基本的に、分離デバイス10は、
図1を参照して上述したように設計される。試料物質2は、分離経路11の供給源側の試料容器15に供給される。分離後、非固定相(non-stationary phase)が標的容器32内で収集される。
【0066】
分離経路11は、キャピラリ、例えば内径50μmおよび長さ50cmを有するキャピラリである。検出領域30中を通過する粒子を閉じ込めるために、検出領域30において例えば200nmの断面寸法を有する局部的にテーパ状のキャピラリまたはナノキャピラリが使用される。キャピラリ内の分離媒体は、キャピラリ・ゾーン電気泳動法で使用される緩衝液(バッファ)またはゲル・マトリックスである。検出領域30の周りの分離経路11の周囲は、屈折率整合液(剤)、例えば油、に浸漬される。
【0067】
検出デバイス20は、
図1および7を参照して上述したように設けられる。分離経路11内の通過(transient:過渡的)粒子1は、例えばガラス製の透明プレート26およびキャピラリ壁部を通して照射される。透明プレート26は、低反射率(例えば1%未満の反射率)の参照(基準)誘電体ミラーであり、例えば、反射誘電体層で被覆されたカバースリップを含んでいる。参照(基準)波は、透明プレート26の参照ミラー鏡面での反射時に生成され、キャピラリ内部を流れる分析対象(analyte:被分析物、検体)粒子から散乱された光と干渉する。検出領域30と参照ミラー26の間の距離は、入射光のコヒーレンス(干渉)長より短い。別の構成では、誘電体ミラーを有する透明プレート26を分離経路の上に配置することができ、または、透過した放射光を参照波として使用でき、透明プレート26を取り外すことができる(図示せず)。センサ・デバイス25は、キャピラリ壁部を通った散乱光および参照光を収集する。検出領域30中を通る粒子の移動の期間中に、一連の干渉計画像が収集され、それ(画像)が分析ユニット40で処理される。
【0068】
充分低い濃度では、1つだけの分析対象粒子が存在し、例えば分離経路11のナノチャネルを通して移送される1つの分子が存在する、と考えることができる。典型的な1nM濃度の分析対象およびチャネル直径100nmの場合、個々の高分子間の平均距離は約200μmである(濃度に反比例する)。従って、分子は、低いnM濃度範囲、例えば100nM未満の濃度で一度に1つずつ検出領域30中を通過する。より高い濃度の試料は希釈されるであろう。
【0069】
検出領域30中を通る複数の単一粒子の通過(transitions:渡過、推移)を検出するために、粒子の画像が、前述のiSCAT画像化方法を使用して短い露光時間で検出領域30内の各位置に記録される。必要な露光時間は、分子の速度および回折限界スポットのサイズによって制限されるので、典型的には1ms(ミリ秒)未満である。そのような短時間内の露光で充分低いノイズを達成することは、2次元(2D)画像化技術における現在の技術水準では困難であり得るであろう。しかし、2次元CMOSカメラをより簡単でより高速な1次元(1D)フォトダイオード・アレイに置き換えることによって、それを簡単に達成することができる(
図5、6参照)。また、ナノチャネル内の粒子位置の1次元時間追跡によって、粒子の即時の速度の直接測定、従ってその電気移動度が得られる。固定化された分子の検出とは異なり、(短時間の露光の)各フレームにおいて検出ノイズより高い単一分子のコントラストを有する必要がないことは、留意に値する。各粒子が検出領域30中を通って特定の方向に伝播する(および僅かに拡散する)ので、ノイズ・レベル未満のコントラストを有する検出領域30中を通る分子通過(渡過)に関する情報は、隣接ピクセル(画素)の変動の時間的相関性を用いて、平均化することができる。
【0070】
本発明の第2の実施形態によって任意に使用される単一点検出が、
図5および6に示されている。
図5および6によれば、本発明による検出装置100は、分離デバイス10、検出デバイス20、検出領域30、分析ユニット(図示せず)および制御デバイス(図示せず)を含んでいる。
【0071】
図5の変形例では、検出デバイス20は、1つの照射光源21、顕微鏡対物レンズ27および28、およびセンサ・デバイス25を含み、センサ・デバイスには、例えばフォトダイオードまたは平衡検出器のような1つの単一センサ素子が含まれる。センサ・デバイス25は、分析ユニット(図示せず)に接続されている。顕微鏡対物レンズ27および28は、重なり合う焦点35を有する。分離経路11は、第1の電極12Aを有する試料容器15と、第2の電極12Bを有する標的容器32との間に伸びている。キャピラリ電気泳動法によって分離経路11において分離された複数の粒子1(詳細は図示せず)は、検出領域30において、各焦点35の深度と同程度の寸法を有する領域に閉じ込められる。各焦点35のレイリー(Rayleigh)レンジ(range:範囲)に関する(対する)検出領域30の位置は、透過ビームと散乱ビームの間の位相シフトを規定して、検出領域30中を通過する複数の粒子のiSCATコントラストが得られるようにされる。センサ・デバイス25で検出された干渉計光信号(強度)の変動は、通過する(過渡的)複数の単一粒子、例えばタンパク質分子、に対応付けられる。
図5は、透過光および散乱光が顕微鏡対物レンズ28で収集されることを示しており、一方、透過光および散乱光を反射して顕微鏡対物レンズ27で集光するために、例えば分離経路11の上または下のような、焦点35の近傍に配置された鏡面を、設けることができる。
【0072】
図6に示された本発明の変形例によれば、検出器デバイス20は、顕微鏡対物レンズ27上に2つの異なる角度で入射するようにされた2つの照射ビームを生成する2つの照射光源21A、21Bを含んでもよい。顕微鏡対物レンズ28は、2つの焦点35Aおよび35Bからの光放射を、分析ユニット(図示せず)に接続された2つの点検出器25A、25Bにおいて収集して分離する。代替形態として、照射光源21A、21Bは、対物レンズ27に僅かに異なる角度で入射する2つの照射ビームに分割される1つの単一照射光源で、置き換えることができる。2つの重なり合う焦点35A、35Bが、分離経路11の伸長に沿った或る長手方向の距離を隔てて形成される。その2つのレーザ焦点35A、35Bは、検出領域30の同じナノチャネル内で複数μm(例えば、10μm〜100μm)分だけ分離される(離される)。本発明のこの実施形態では、センサ・デバイス25A、25Bで測定された強度変動の自己相関分析によって、偽信号を排除することができ、複数の単一粒子通過(渡過)を背景変動と識別することができる。センサ・デバイス25A、25Bで収集された時系列の干渉計信号は、相関分析を受ける。短い時間間隔内で相関分析を適用することが可能であり、通過粒子の移動度は一定であると仮定することができて、それらの通過の時間プロファイルが互いに相関されるようにされる。
【0073】
時系列の干渉計散乱検出信号の相関性は、通過する(過渡的)粒子の数および2つの焦点35A、35B間におけるそれらの時間遅延、の直接の測定値(尺度)である。従って、この実施形態は、流動(フロー)時間の測定から移動度を直接推定することができるので、検出器デバイスの前に長い分離経路を必要としない。
【0074】
本発明の別の変形によれば、分離電圧源13(例えば
図4参照)で生成された分離電圧は交流(AC)変調を受けることができる。従って、粒子の軌道は変調されて、粒子が、周期的な前後の軌道において結像(画像化)され各焦点を通過するようにされる。検出器デバイス20で収集された干渉計信号は、分離電圧と同じ周波数で変調される。実際の例では、周波数は、例えば1Hz〜1000Hzの範囲で選択される。この範囲は、以下の考察に基づいて得られる。例えば1Hzで変調されたより小さい電界(例えば10V/cm)は、例えばタンパク質分子のような粒子を、数十μmだけ前後に移動させる。1kHzで変調されたより高い電界(例えば100V/cm)は、回折限界スポットのサイズと同等な約300nmだけ前後に粒子を引っ張る。
【0075】
図6に示された二重焦点検出の別の拡張例は、強度変動の自動的自己参照を形成する2つのフォトダイオード25A、25B(35A、35B)の代わりに平衡光検出器を使用するものである。
【0076】
図4乃至6による各単一散乱事象を検出するために、以下の実装形態のうちの少なくとも1つを設けることができる。第1に、検出領域30中を通過する全ての粒子を結像または画像化して追跡することができる。これによって、時間の関数としての通過する(過渡的)粒子の直接的な計数が可能になる。第2に、顕微鏡対物レンズの焦点を通る複数の単一粒子通過(渡過)に関連する複数の強度変動を検出することができる。第3に、顕微鏡対物レンズの2つの空間的に分離された焦点を通る各単一粒子通過に関連する強度変動を検出することができる。その後、粒子の個々の通過の統計から、時間または検出された通過速度の関数として、エレクトロフェログラムを構築することができる。
【0077】
上記の説明、図面および特許請求の範囲に開示された本発明の特徴は、その様々な実施形態における本発明の実現のために、個々に、ならびに組み合わせまたは部分的に重要であり得る。