(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6895969
(24)【登録日】2021年6月10日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】受動熱管理手段を備える少なくとも1つのインダクタを含む電子デバイス
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20210621BHJP
H01F 17/06 20060101ALI20210621BHJP
H01F 27/22 20060101ALI20210621BHJP
H01F 27/24 20060101ALI20210621BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20210621BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F17/06 F
H01F27/22
H01F27/24 E
H01F27/24 H
H01F41/02 D
H01F41/04 B
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2018-531622(P2018-531622)
(86)(22)【出願日】2016年12月16日
(65)【公表番号】特表2019-503073(P2019-503073A)
(43)【公表日】2019年1月31日
(86)【国際出願番号】EP2016081391
(87)【国際公開番号】WO2017103078
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2019年12月4日
(31)【優先権主張番号】1562600
(32)【優先日】2015年12月17日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】502124444
【氏名又は名称】コミッサリア ア レネルジー アトミーク エ オ ゼネルジ ザルタナテイヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ジェラール・デレット
(72)【発明者】
【氏名】ピエール・ぺリション
【審査官】
井上 健一
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0160595(US,A1)
【文献】
特開平10−242339(JP,A)
【文献】
特開2014−161119(JP,A)
【文献】
特開2000−284027(JP,A)
【文献】
特開平06−112655(JP,A)
【文献】
特開昭60−090868(JP,A)
【文献】
特開平04−209509(JP,A)
【文献】
特開2012−239283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 17/06
H01F 27/22
H01F 27/24
H01F 41/02
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリア(2)と、少なくとも1つの能動部品(4)と、少なくとも1つのインダクタ(6)とを備える電子デバイスであって、前記インダクタ(6)が、磁気コア(10)と、前記磁気コアの少なくとも一部を取り囲む電気導体(12)とを備え、前記磁気コア(10)が、磁束線が流れる磁路の少なくとも一部を区切り、前記磁気コア(10)が、前記キャリア(2)の一側に配置され、かつ前記磁路の2つの連続する領域を画定する少なくとも1つの第1の部分(P1,P5)および1つの第2の部分(P4,P4,P6,P8)を備え、第1の部分(P1,P5)および第2の部分(P4,P4,P6,P8)の各々がその長さおよび幅に対して薄い厚さを有するストリップの形状を有し、第1の部分(P1,P5)および第2の部分(P4,P4,P6,P8)の各々が前記磁路の方向に対する側面を含み、前記側面が長さ×幅に等しい大きな面積を有する2つの表面と、厚さ×長さに等しい小さい面積を有する2つの表面とを含み、前記第1の部分(P1,P5)がその側面の一部を介して前記キャリアと直接接触し、かつ前記電気導体(12)によって囲まれており、前記第2の部分(P4,P4,P6,P8)が、その側面が前記キャリア(2)と接触しないように前記キャリア(2)に対して配置されており、第1の部分(P1,P5)および第2の部分(P4,P4,P6,P8)の各々において、厚さ対長さの比が1/200から1/10の間であり、厚さ対幅の比が1/20から1の間である、電子デバイス。
【請求項2】
各部分において、厚さと長さの間の比及び厚さと幅の間の比が少なくとも1/10未満である、請求項1に記載の電子デバイス。
【請求項3】
前記磁気コア(10)が、前記第1の部分(P1,P5)と前記第2の部分(P4,P4,P6,P8)との間にエアギャップを含む、請求項1または2に記載の電子デバイス。
【請求項4】
前記キャリア(2)上に搭載されたパッケージ(8)を備え、前記パッケージ(8)及び前記キャリア(2)が、前記少なくとも1つの能動部品(4)および前記インダクタ(6)が収容される体積を画定している、請求項1から3のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項5】
前記第2の部分(P4,P4,P6,P8)が前記パッケージ(8)の壁に一体化されている、請求項4に記載の電子デバイス。
【請求項6】
前記磁気コア(10)に熱的に接続された少なくとも1つの熱交換プレート(15)を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項7】
前記磁気コア(10)および前記熱交換プレート(15)と接触する少なくとも1つの熱伝導および電気絶縁要素(16)を備える、請求項6に記載の電子デバイス。
【請求項8】
前記熱交換プレート(15)が少なくとも部分的に前記パッケージ(8)の壁を形成する、請求項4と組み合わせた請求項6または7に記載の電子デバイス。
【請求項9】
前記電気導体(12)が、前記キャリア(2)に一体化された部分を含む巻線を形成する、請求項1から8のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項10】
前記キャリア(2)が集積回路である、請求項1から9のいずれか一項に記載の電子デバイス。
【請求項11】
前記能動部品がトランジスタである、請求項1から10のいずれか一項に記載の電子デバイスを少なくとも1つ含む変換器。
【請求項12】
a)キャリアを供給するステップと、
b)能動部品を供給して前記キャリア上に組み立てるステップと、
c)磁気コアを製作するステップと、
d)前記キャリア上に前記磁気コアを組み立てるステップと、
e)巻線を供給し、組み立てるステップと、
を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の電子デバイスの製造方法。
【請求項13】
ステップc)の間に、有利には強磁性材料粉末を含有するスラリのストリップを流し込むことによって、または強磁性材料のストリップを含む供給材料からの粉末の射出成形によって、第1および第2の部分を形成するためのストリップを製造する、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
ステップc)の間に、前記ストリップを所要の形状にする、請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
ステップc)の間に、前記ストリップの少なくとも一部を互いに固定して前記磁気コアの一部を形成する、請求項13または14に記載の製造方法。
【請求項16】
ステップd)の間に、前記ストリップを組み立てて前記磁気コアを形成する、請求項13から15のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記磁気コアを組み立てる前に前記巻線の一部を作製し、前記磁気コアを組み立てた後に残りの部分を作製する、請求項12から16のいずれか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受動熱管理手段を備える少なくとも1つの磁気インダクタを含む電子デバイス、例えば電力変換器に関する。
【0002】
パワーエレクトロニクスの分野では、導電性の巻線で少なくとも部分的に囲まれた強磁性コアを備えるインダクタは、主に電力変換器において受動部品として使用される。電力変換器は、100kHzから10MHzの間の周波数で動作し、0.1kWから100kWの電力を送信することができる。これらの変換器は、特に、エネルギー生産の分野で、電気モータおよび電子システム(電子デバイス、ポータブルコンピュータ)に電力を供給するために使用される。これらの応用分野では、変換器のインダクタンス値は1μHから10mHの間である。
【0003】
インダクタは、コアと、コアの一部の周りにN回巻回して配置される巻線と呼ばれる電気導体とを備える。コアは強磁性材料を含む。動作中、交流が巻線を通過し、コア内に同一周波数の磁気誘導が発生する。磁気誘導の発生とともに損失が現れ、磁気コア内で温度が上昇する。これらの損失は、インダクタの動作周波数に伴って増加し、コアを冷却し、許容できない温度上昇を防止するために約1MHzを超える熱管理が必要とされる。
【0004】
電力変換器は、仕様に応じて、電力源によって出力された電圧および電流を、分配ネットワークまたは所与の電気システムに電力を供給するように適合させる機能を有する電子デバイスである。変換器は、所定の周波数でスイッチングするスイッチのように動作する能動部品と呼ばれる電子部品を備える。例えばDC/DC変換器の場合、能動部品は、規則的なサイクルで入力電圧を「チョップ」するために使用されるトランジスタである。DC出力電圧を出力するために、インダクタは、各サイクルで電気エネルギーを蓄積して復元し、出力電圧を平均値に平滑化するためにも使用される。これらのいわゆる「受動」部品は変換器の動作に使用されるが、変換器の体積とコストの最大40%を占め得る。
【0005】
変換器の動作周波数は、典型的に、10kHz〜500kHzの範囲内にある。GaN技術によって、非常に高い周波数(例えば、1MHzを超える周波数)でスイッチングすることができるトランジスタを作製することができ、より高い周波数で動作する変換器を作製することができる。
【0006】
第1に、動作周波数の増加は、変換器の受動部品の体積、ひいてはこれらのデバイスの寸法、質量およびコストを低減することを可能にするため特に興味深い。スイッチング周波数を増加させることによって、電気サイクルの数が増加し、したがって、一定時間内に磁気コアによって伝達されるエネルギーが同じ割合で増加する。変換器の電力は一定のままであるので、周波数に反比例して磁気インダクタの体積を減少させることが可能なはずである。
【0007】
磁気コアの体積のこの減少は、より小型で、軽量で、より安価な変換器を製造するのに特に有用である。そのような変換器は、航空分野および自動車分野において望ましい。
【0008】
第2に、100kHzから10MHzの間の周波数および0.1kWから100kWの電力で動作する電力変換器に適合するインダクタは、1μHから10mHの間のインダクタンスLおよび1cm
3を超える体積の値によって特徴付けられる。この範囲の変換器では、10W未満の電力に制限された薄膜または多層LTCC構造に基づく技術とは異なり、最も適合したインダクタはモノリシック型である。
【0009】
モノリシックインダクタは、そのコアを形成する単一片の強磁性材料からなる。この材料は、比透磁率μrの値が高く、例えば50より大きく、飽和磁気誘導Bsが例えば100mTより大きいという特徴を有する。
【0010】
スピネル結晶構造を有するフェライト型酸化物材料は、高い周波数で安定な透磁率の値を有する。このため、特に高周波(100kHz<f<10MHz)での動作において、インダクタコアとして非常に広く使用されている。最も頻繁に使用される配合は、(Mn1−xZnxFe2O4)および(Ni1−xZnxFe2O4)である。これらの材料は、誘導電流による損失を制限する高い電気抵抗率の値を特徴とする。
【0011】
それらの最適化にもかかわらず、これらの強磁性材料は、磁気損失とも呼ばれるエネルギー散逸プロセスの源である。これらの磁気損失は、コアの体積内のすべての点で熱の形で放散される。したがって、周波数の増加により、コアの体積の減少が可能となり、100W/cm
3の比出力を達成することを可能にするにもかかわらず、コア内の過剰な熱の上昇を防止するためにコア内の熱放散を制限することが必要となる。
【0012】
これは、特に、磁気損失が、磁気誘導の周波数およびピーク値とともに増加するためである。
【0013】
さらに、インダクタの体積が小さいと、コア内での加熱が増加する傾向があることが示されている。例えば、5MHzで動作する1kWの変換器(200V/400V)では、10μHのインダクタンスが必要である。小型4F1フェライトコア(タイプE−E)は、インダクタを作製するように設計され得る。100W/cm
3の比出力に対応する10cm
3の体積では、熱を排出する自然対流法を考慮すると、計算されたコア内部温度は210℃に達する。インダクタの体積は、材料に許容される70℃の値まで温度を低減するためには50cm
3に増加しなければならない。
【0014】
コアの表面での熱交換を改善することによって加熱を低減することが提案されている。例えば、熱交換器を含む温度調節システムを使用することができるが、変換器の非小型化およびコストの増加をもたらす。
【0015】
コア内にエアギャップを形成することによって実効透磁率を減少させることは、誘導効果を低減し、加熱を減少させる良好な手段であることも知られている。しかし、エアギャップの追加は、コアのサイズを増大させ、エアギャップ内の磁場の放射によるインダクタの電磁適合性を低下させ得る。
【0016】
コアの厚さがその長さおよび幅に対して小さいプレーナインダクタを製造することもまた提案されている。
【0017】
文献US9001524には、フレームを形成するインダクタを備え、コアが平坦でありかつキャリアを取り囲むフレームの形態である、集積回路が記載されている。このインダクタもまた、キャリア上の大きなスペースを占有し、熱交換が最適化されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許第9001524号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2009/0160595号明細書
【特許文献3】米国特許第8940816号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
結果として、本発明の1つの目的は、良好な熱管理を有する、少なくとも1つの能動部品と少なくとも1つのインダクタとを備える非常に小型である電子デバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上述の目的は、キャリアと、キャリア上に固定された少なくとも1つの能動部品と、少なくとも1つのインダクタとを備えるデバイスであって、インダクタが、磁気コアと、コアを部分的に包囲する電気導体とを含み、コアが、非常に低い厚さ対長さの比を有する本体を含む、デバイスを使用することによって達成される。本体は、磁路を少なくとも部分的に画定し、本体は、磁路の2つの連続する領域を画定する少なくとも1つの第1の部分および1つの第2の部分を含み、第1の部分は、キャリアと接触し、第2の部分はキャリアとの接触が少ないように配置される。
【0021】
本出願の目的のために、用語「磁路」は、コアの一部を囲む電気導体内を循環する電流によってコア内に生成される磁束線が通る経路を意味する。磁路は閉磁気回路に従う。磁気回路は、異なる材料からなる部分を含み得、これらの部分は、例えばコアおよびエアギャップであり、それぞれに独自のセクションと長さを有する。
【0022】
したがって、キャリアとの接触が低減される第2の部分の表面は、熱をより効率的に交換し、コアを冷却することができる。したがって、コアの熱管理が容易になる。さらに、この第2の部分のレイアウトは、キャリア上に固定される他の構成要素のためのスペースを解放し、かつ/またはキャリアの面積を縮小することを可能にする。コアの一部は、通常、パッケージによって区切られ、一般に空いているキャリアの上の領域を占有する。したがって、コアの温度上昇を制限しながら、デバイスをより小型化することができる。
【0023】
非常に有利には、コアの第2の部分は、対流によって熱を交換するのにさらに効率的な大きな面積を有する要素、例えばプレートと熱的に接触している。インダクタの熱管理はさらに改善される。パッケージ自体は、コアから熱を排出するのに役立つ。
【0024】
換言すれば、熱交換面積を増加させるためにその一部がキャリアと接触していない三次元構造を形成するように成形および/または配置されたストリップ形状の磁気コアをインダクタが備えるデバイスが製造され、これにより、デバイスの非占有領域を占有することが可能になり、より小型化してコアの加熱を制限することができる。
【0025】
1つの例示的な実施形態では、強磁性コアは、熱交換を改善し、変換器内のインダクタによって占有される体積を減少させるために、コアの体積を減少させるように薄い平面部を含む。コアを形成する平面部は、磁気回路を形成する小さな断面を有する長い3次元構造を形成するように組み立てられ、互いに接続される。3次元構造は、特に利用可能な体積を利用して、変換器内の可能な限り小さな体積を占めるように設計される。
【0026】
本発明の1つの主題は、キャリアと、少なくとも1つの能動部品と、少なくとも1つのインダクタとを備える電子デバイスであって、前記インダクタが、コアと、前記コアの少なくとも一部を囲む電気導体とを備え、前記コアが、磁束線が流れる磁路の少なくとも一部を区切り、前記コアが磁路の2つの連続する領域を画定する少なくとも2つの部分を有する本体を備え、各部分がその長さおよび幅に対して薄く、各部分が磁路の方向に対する側面を含み、その一方の部分がその側面の一部を介してキャリアと直接接触しており、他方の部分はその側面がキャリアと接触しないようにキャリアに対して配置されている、電子デバイスである。
【0027】
有利には、厚さ対長さの比は、1/200から1/10の間であり、厚さ対幅の比は1/20から1の間である。
【0028】
1つの例示的実施形態では、コアは、第1の部分と第2の部分との間にエアギャップを含み得る。
【0029】
電子デバイスは、キャリア上に搭載されたパッケージを備え、前記パッケージおよびキャリアは少なくとも1つの能動部品およびインダクタが収容される体積を画定し得る。
【0030】
好ましくは、少なくともインダクタの第2の部分は、前記体積に適合するように成形される。
【0031】
1つの例示的実施形態では、第2の部分はパッケージの壁に一体化される。
【0032】
1つの非常に有利な実施例では、デバイスは、コアに熱的に接続された少なくとも1つの熱交換プレートを備え得る。例えば、デバイスは、コアおよび熱交換プレートと接触する少なくとも1つの熱伝導および電気絶縁要素を備える。
【0033】
1つの例示的実施形態では、電気導体は、キャリアに一体化された部分を含む巻線を形成する。
【0034】
好ましくは、キャリアは集積回路である。
【0035】
本発明の別の主題は、能動部品がトランジスタである、本発明による少なくとも1つの電子デバイスを備える変換器である。
【0036】
本発明の別の主題は、
a)キャリアを供給するステップと、
b)能動部品を供給してキャリア上に組み立てるステップと、
c)インダクタコアを製作するステップと、
d)キャリア上にコアを組み立てるステップと、
e)巻線を供給し、組み立てるステップと、
を含む、本発明による電子デバイスの製造方法である。
【0037】
ステップc)の間に、強磁性材料粉末を含有するスラリのストリップを流し込むことによって、または強磁性材料のストリップを含む供給材料から粉末の射出成形によって、第1および第2の部分を形成するためのストリップが製造され得る。
【0038】
ストリップは、ステップc)の間に所望の形状に作製され得る。
【0039】
ステップc)の間に、例えばストリップの少なくとも一部は互いに固定されてコアの一部を形成する。
【0040】
ステップd)の間に、ストリップは、コアを形成するように組み立てられ得る。
【0041】
1つの有利な実施形態では、巻線の一部は、コアが組み立てられる前に作製され、残りの部分はコアが組み立てられた後に作製される。
【0042】
本発明は、以下の説明および添付図面を読むことによってより深く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明による電子デバイスの例示的な実施形態の斜視図である。
【
図2】別の例示的な実施形態による電子デバイスの製造の詳細の上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、本発明による電子インダクタデバイス、例えば電力変換器の一例を示す。
【0045】
図1の装置は、薄い矩形板からなるキャリア2と、キャリア2に固定された、例えばトランジスタである少なくとも1つの能動部品4と、少なくとも1つのインダクタ6と、パッケージ8とを備える。キャリア2は、面01内に延在する。面01におけるキャリアの寸法は、d
1およびd
2で示されている。キャリアは、例えば、集積回路であってもよく、少なくとも1つの能動部品4は、回路に一体化され得る。
【0046】
インダクタ6は、磁気コア10と、コア10の少なくとも一部を取り囲む電気導体12または巻線とを備える。
【0047】
巻線12内を電流が循環すると、磁束線は磁路に沿ってコア内を循環する。長方形のフレームの形態のコアの場合、磁束線は閉ループを形成する。磁束線は、コアの全長に沿って延びる磁路に沿って流れる。
【0048】
磁気コア10は、連続ストリップまたは一連のストリップから形成された本体14を含む。コアの本体は、例えば、NiZn及びMnZnなどのスピネルフェライト、例えばNiZn4F1から作製され得る。
【0049】
各ストリップは、厚さe、幅Lおよび長さlを有する。積e×Lは、コアの磁気セクションAとも同等のコアのセクションに相当する。
【0050】
厚さeは、幅Lおよび長さlよりもずっと小さく、好ましくは少なくとも10分の1である。
【0051】
こうして形成されたストリップは、より厚いバーでは不可能である、非平面に合致するように、例えば湾曲またはエンボス加工などの成形を行うことができるため、ストリップの寸法におけるこれらの比率はコアの一体化を容易にする。
【0052】
例えば、eは1mmから5mmの間、Lは5mmから20mmの間、lは50mmから200mmの間、e/L=1/10、e/l=1/100である。
【0053】
コアの寸法(すなわち、厚さおよび/または幅)は、磁路の長さに沿って変化することが想定され得る。
【0054】
ストリップは、直方体形状を有するストリップの場合、L×lに等しい大きな面積を有する2つの長方形の表面と、e×lに等しいより小さい面積を有する2つのより小さい長方形の表面とを含む側面を含む。
【0055】
図1に示す例では、コアの本体14は、P1、P2、P3、P4、P5、P6、P7、P8で示される8つの直線部分を含む。8つの部分は、磁束線が内部で循環するループを画定する。8つの部分は、図示の例では直線形であり、長手方向の軸に沿って延び、それぞれが2つの長手方向の端部を含む。
【0056】
図示の例では、部分P1およびP5は、その側面の一部を介してキャリア2と接触している。示された例では、部分P1およびP5は、より大きな面積の表面のうちの1つを介してキャリアと接触している。
【0057】
変形例として、キャリアと接触するコアの部分P1およびP5は、より小さい面積の表面の1つを介してキャリア上に配置され得る。
【0058】
部分P1およびP2は、最初にキャリア上にインダクタを固定し、次にデバイスの他の構成要素との電気的接続を行う。示された例では、部分P5の配置はまた、巻線をキャリアに一体化させることを可能にする。巻線12は、部分P5の一部の周りに配置され、その製造については後述する。この一体化された実施形態は、インダクタの寸法をさらに低減する。しかし、部分P2からP4ならびにP6からP8の少なくとも1つを特に囲む連続導線から巻線が構成されるインダクタは、本発明の範囲外ではないことが理解されよう。
【0059】
部分P1および部分P5は、互いに平行に配置され、キャリアの全長d1にわたって延在する。
【0060】
部分P2、P3、P4は、Uの底部を形成するP3と、Uの脚部を形成する部分P2およびP4とを有する逆U字を形成するように互いに対して配置される。このように形成されたUは、面01に直交する。Uは、部分P1およびP5に対して、Uの脚部が部分P1およびP5に接続されるように配置される。部分P6、P7、およびP8の構成は、部分P2、P3およびP4の構成と同様であり、平面01に直交し、部分P2、P3およびP4を含む平面に平行な平面内に配置される。
【0061】
好ましくは、2つの連続するコア部分の間にエアギャップが設けられる。コアを平坦な部分から作ることができるので、インダクタの製造が簡略化される。変形例として、いくつかの部分が互いに接触することが可能であり、または全ての部分が接触して閉鎖コアを形成することさえも可能である。変形例として、1つまたは複数のエアギャップが部分P1および/または部分P5に設けられ得る。
【0062】
部分P2、P3、P4およびP6、P7、P8の側面は、キャリアと接触せず、対流によって外部環境と熱を交換することができる。コアは、部分P2、P3、P4、およびP6、P7、P8の全側面と、部分P1およびP5の側面の大部分を含むので、非常に大きな熱交換面積を有する。キャリアと接触する部分P1およびP5の側面の一部は、伝導によってキャリアと熱交換し、コアの冷却に関与することに留意すべきである。
【0063】
さらに、コアは、キャリア上の空間を解放するかまたはキャリアの表面積を減少させ得る、キャリアの上方に位置する体積の一部を占有する。有利には、コアは、パッケージの内部体積に適合するように成形され、したがって、一般に使用されない体積を占有する。
【0064】
1つの非常に有利な実施形態では、パッケージの壁をコアの一部を収容するように成形することができる。例えば、部分P2、P3、P4およびP6、P7、P8は、パッケージの壁の厚さに一体化することができ、コアの空間フットプリントをさらに低減し、外部との熱交換を促進する。
【0065】
巻線は、例えばマイクロエレクトロニクス技術を使用して、例えば、基板内に第1の半巻線、第1の半巻線上にコアの一部、およびコアの一部上に第2の半巻線を、完全な巻線を形成するように形成することによって作製され得る。そのような方法の一例は、例えば文献US2009/0160595に記載されている。このようなインダクタは、より小さな体積を占有する。
【0066】
部分の数および形状は変更可能であることが理解されるであろう。側壁の一部がキャリアと接触する部分の数も変更可能である。例えば、部分のすべてまたは一部は湾曲され得る。3次元形状を有する単一の部分でコア本体を作製することが想定され得る。
【0067】
さらに、互いに対する部分の相対的な配置も変更可能である。例えば、側壁がキャリアと接触していない部分は、キャリアの平面に対して傾斜され得る。
【0068】
好ましくは、本体の形状は、面01上への投影がキャリアの投影内に含まれ、デバイス全体がキャリアを覆うパッケージに統合され得るような形状である。
【0069】
図示された例では、コアは面01に直交する面に関して対称であるが、これは限定的なではなく、キャリア上の空間を最適に占有する長い磁路を提供することができる任意の他の形状が使用され得る。
【0070】
有利な一例では、コアの一部を熱交換手段に連結して、コア内で発生する熱の排出を改善することが可能である。
【0071】
図2および
図3は、そのような手段を使用するコアの詳細の例示的実施形態を示す。
【0072】
この例は、部分P2、P3、P4からなるU字形状のコアの一部を含む。プレート15は、各側のUにおいてUによって区切られた空間内に配置される。プレート15は、低い導電性を有するAlN、または銅などの非常に良好な熱伝導率を有する材料で作られる。
【0073】
示された例では、プレートの外部寸法およびUの内部寸法は、プレートと部分P1、P2、P3との間に接触がないものである。部分とプレートとの間の熱的接続を形成するために、例えばAlN製の熱伝導および電気絶縁要素16が設けられる。プレート15と部分との間の隙間を使用して、例えば、脚部の1つの周りに巻線を作ることができる。
【0074】
熱伝導および電気絶縁要素は、誘導電流を生成し得るコアの近くでの磁束漏れを防止することができる。
【0075】
したがって、コアで発生した熱は、要素16を通る伝導によって熱交換プレートに伝達され、対流によって熱が排出される。
【0076】
熱交換プレートが電気絶縁材料で作られている場合、
図1に示すように、コアと熱交換プレートとの間の直接的な接触を行うことができ、コアから熱交換プレートへと熱が直接排出される。
【0077】
図示された例では、熱交換プレートは、プレートの縁がセグメントの側面に面するように、コアの部分によって区切られた空間の内側に配置されているが、プレートの一面がコアの部分に面するかまたは直接接触するように配置され得る。一変形例として、単一のプレート15を使用することができる。
【0078】
図1に示すように、熱交換プレートは、例えばパッケージに一体化することができ、例えば、パッケージの壁の一部を形成し得る。これにより、対流による熱交換が改善される。
【0079】
1つの有利な実施例によると、外部との交換面積を増加させるように、1つまたは複数の熱交換プレートをキャリアと接触する部分P1およびP5と熱的に接触させることも可能であり、一方で、コアとプレートとの間の接触がより大きいため、コアからの熱の排出を改善する。例えば、1つのプレートは、キャリアと接触する面と反対側の部分の側面と接触し得る。他の構成要素が通過できるように、プレート内に窓を作ることが可能である。これらのプレートは、熱交換を増加させるように輪郭形成され得る。変形例として、プレートは部分P1およびP5の各側に配置され得る。
【0080】
非常に有利には、熱交換をさらに増加させるために、部分の側面および/またはパッケージ上にフィンを設けることが可能である。好ましくは、フィンは磁束線にほぼ平行になるように向けられる。
【0081】
比較のため、1kWのDC/DC電圧昇圧コンバータ(200/400V)は、5MHzでの動作に10μHのストレージインダクタンスを必要とする。このインダクタンスは、50cm
3の総体積を占有し、200cm
2の交換面積を有する従来技術の2つの標準Eタイプ強磁性部品のアセンブリによって得ることができる。体積がより小さい他のコア形状もあるが、熱交換面積も小さく、その使用はインダクタの動作温度を上昇させ得る。
【0082】
本発明によれば、200cm
2の熱交換面積を維持しながら、10cm
3の体積を有するコアで同じコンバータを作ることができる。例えば、コアは厚さeが4mmと同等で幅Lが9mmと同等のストリップを含む。磁気回路の必要とされる全長lは300mmである。コアは、
図1における回路を形成するように配置された30mmの同一の長さを有する10本のストリップの並置により作製することができる。側面および下面は、200cm
2の全交換面積を形成し得る。
【0083】
次に、本発明によるデバイスの製造方法を説明する。
【0084】
本製造方法は、
a)キャリアを供給するステップと、
b)能動部品を供給してキャリア上に組み立てるステップと、
c)インダクタコアを製造するステップと、
d)キャリア上にコアを組み立てるステップと、
e)巻線を供給して組み立てるステップと、
を含む。
【0085】
ステップa)は、キャリア製造ステップ、例えば集積回路を製造するステップを含み得る。
【0086】
ステップb)は、ステップa)と同時に実施することができ、特に、キャリアが集積回路である場合、例えばトランジスタである能動素子を集積回路と同時に作製することができる。
【0087】
ステップc)は、ステップd)およびe)を含み得る。
【0088】
コア部分は、有利には、例えば1mm程度の薄い部品を製造するために特に適したストリップ成形法によって製造することができる。
【0089】
これは、有機結合剤および溶媒中に分散された強磁性材料粉末を含む調製物を利用する。この調製物はスラリと呼ばれる。スラリは、例えば、ブレードが取り付けられたパッドを使用して、平面キャリア上に広げられる。ブレードの移動は、その上に堆積したスラリのせん断および平滑化を引き起こし、良好な平面および均質な堆積物を提供する。こうして形成されるストリップの厚さは、ブレードの高さを調節することによって制御することができる。こうして形成されたストリップには、次いで、異なる蒸発および乾燥処理が施され、いくつかの溶剤が除去される。このストリップ成形方法は、当業者には公知である。この段階では、ストリップは柔軟性があり、容易に操作することができる。特に、古典的な切削工具を使用して特定のパターンに容易に切削することができる。
【0090】
また、この段階で、その上にプロファイルを与えるキャリア上でストリップを折り畳むかまたは湾曲させることも可能である。
【0091】
本発明では、このようにしてコアの部分のいくつかが形成され得る。例えば、必要なプロファイルを有する、例えばアルミナ製のテンプレートが使用され得る。例えば、テンプレートは機械加工によって作製され得る。ストリップはテンプレート上に堆積され、その後、形状に合致するように機械的な力を印加することによって曲げられる。アセンブリは、ストリップを焼結するために高温で熱処理される。焼結は、10%〜15%程度の全ての方向における材料の収縮を伴い、未焼成ストリップの切断寸法およびテンプレートの寸法は、この収縮を考慮する。
【0092】
1つの変形実施形態では、強磁性材料を含むストリップは、熱伝導要素および巻線の一部を形成するようにその特性が決定される、異なる材料で作られた他のストリップと組み立てられ溶接され得る。次に、このアセンブリは、インダクタの全部または一部を作るために共焼結される。
【0093】
別の例示的な実施形態によると、インダクタコアの部分は、粉末射出成形(PIM)によって作られる。
【0094】
PIMプロセスの第1段階は、目的の用途に適合した原料を得ることである。原料は、最終的な部分を形成する有機材料(またはポリマーバインダ)と無機粉末(金属またはセラミック)との混合物からなる。次いで、原料は、当業者に知られている技術を用いて、射出プレスで熱可塑性材料として射出される。成形は、粉末とともに注入されたポリマーをキャビティ内に溶かし入れ、必要な形状を混合物に与える。冷却の間に、混合物は固化し、型によって与えられた形状を維持する。
【0095】
型から取り出した後、有機相を除去するために、異なる熱または化学処理が部品に適用される。このステップの間の脱バインダと呼ばれる有機相の排除は、ブランク中に30%から50%の空隙率のための余地を残す。特許文献US8940816B2は、供給材料を調製する方法およびPIMによる製造の場合に脱バインダする方法を記載している。
【0096】
脱バインダ後、多孔質ブランクは、無機材料の粉末のみを含む。このブランクは、最終的な高密度部分を形成するために高密度化される。多孔質ブランクは、使用される材料の種類に適した雰囲気下で操作される炉内で、例えば1000℃を超える高温焼結によって固結される。最適密度が達成されると、部品は周囲温度に冷却される。
【0097】
ステップc)の間に、本発明による三次元コアを形成するために、その後に互いに組み立てられ、かつ/または互いに配置されるストレートストリップを製造するか、またはキャリア上にコアを組み立てるための少なくとも1つの部分を含む単一部品でコアを製造することが可能である。
【0098】
この段階で、焼結されたストリップは、操作可能な剛性部材を形成する。これらの部材は特に安定であり、例えば数MPaの機械的応力、数百度程度の温度上昇に曝露され得る。ストリップは、例えば熱伝導性接着剤を用いて接着することによって組み立てることができる。例えば、ストリップは、キャリアおよび/またはパッケージ内の対応する形状を有するハウジングに組み立てて挿入することができる。
【0099】
例えば、これらのハウジングは、パッケージおよび/またはキャリアがプラスチック製である場合には成形によって作製することができる。ストリップは機械的手段によって、例えばクリンピングにより、または例えばエポキシ樹脂を用いて接着することにより定位置に保持することができる。
【0100】
ステップe)は、上記の文献US2009/0160595に記載の技術を用いて行うことができる。この場合、ステップd)およびe)は同時に行われる。
【0101】
本発明は、インダクタがコアの加熱を非常に効率的に制限することができるので、高周波数で動作する小型電力変換器の製造に特に適している。
【符号の説明】
【0102】
2 キャリア
4 能動部品
6 インダクタ
8 パッケージ
10 磁気コア
12 電気導体
15 プレート
16 熱伝導電気絶縁要素