(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6895979
(24)【登録日】2021年6月10日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】隘路から逆戻りするためのトレーラ牽引支援
(51)【国際特許分類】
B62D 13/06 20060101AFI20210621BHJP
B60W 30/095 20120101ALI20210621BHJP
B62D 6/00 20060101ALI20210621BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
B62D13/06
B60W30/095
B62D6/00
G08G1/16 C
【請求項の数】4
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2018-536812(P2018-536812)
(86)(22)【出願日】2017年1月13日
(65)【公表番号】特表2019-509203(P2019-509203A)
(43)【公表日】2019年4月4日
(86)【国際出願番号】US2017013344
(87)【国際公開番号】WO2017123876
(87)【国際公開日】20170720
【審査請求日】2018年9月10日
【審判番号】不服2020-1168(P2020-1168/J1)
【審判請求日】2020年1月28日
(31)【優先権主張番号】62/278,903
(32)【優先日】2016年1月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】313005662
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティブ システムズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CONTINENTAL AUTOMOTIVE SYSTEMS, INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ブランドン ハーゾグ
(72)【発明者】
【氏名】ジェレミー ジェイ. マクレイン
(72)【発明者】
【氏名】アイブロ ムハレモヴィック
【合議体】
【審判長】
一ノ瀬 覚
【審判官】
佐々木 一浩
【審判官】
氏原 康宏
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2014/185828号(WO,A1)
【文献】
特開2014−141175号公報(JP,A)
【文献】
特開平10−167103号公報(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D13/00
B62D 6/00
G08G 1/16
B60W10/00-50/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両−トレーラユニットを制御するための方法であって、
トレーラアシストシステムのための電子制御ユニットを用いて、前記車両−トレーラユニットの複数の操作を、進行の本来の向きにおいて各操作が実行されたときに記録し、
前記トレーラアシストシステムのための隘路逆戻り機能の開始に応答して、前記記録された複数の操作を検索し、
センサ及びカメラからの情報を使用して、近傍の障害物の位置を特定し、本来の向きでの進行を実現できる、前記障害物からの間隔を確認し、前記車両−トレーラユニットが前記本来の向きでの継続的な進行が可能な状況であることを前記トレーラアシストシステムが決定するまで、前記電子制御ユニットが、前記検索された、記録された複数の操作を、該操作が記録されたときの進行の向きとは逆の向きかつ逆の順序で実行するように車両システムに指示する
ことを含む、車両−トレーラユニットを制御するための方法。
【請求項2】
前記記録された複数の操作の各々は、進行の向き、移動距離、およびステアリング角度を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
車両−トレーラユニットのためのトレーラアシストシステムであって、
前記トレーラアシストシステムは、電子制御ユニットを備え、該電子制御ユニットは、
前記車両−トレーラユニットの複数の操作を、進行の本来の向きにおいて各操作が実行されたときに記録するための命令と、
隘路逆戻り機能の開始に応答して、前記記録された複数の操作を検索するための命令と、
センサ及びカメラからの情報を使用して、近傍の障害物の位置を特定し、本来の向きでの進行を実現できる、前記障害物からの間隔を確認して、前記車両−トレーラユニットが前記本来の向きでの継続的な進行が可能な状況であることを前記トレーラアシストシステムが決定するまで、前記検索された、記録された複数の操作を、該操作が記録されたときの進行の向きとは逆の向きかつ逆の順序で実行するように車両システムに指示するための命令と、
を用いて構成されていることを特徴とする、トレーラアシストシステム。
【請求項4】
前記記録された操作の各々は、進行の向き、移動距離、およびステアリング角度を含む、請求項3記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年1月14日に出願された、米国仮特許出願第62/278,903号の利益を主張するものであり、参照により本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本発明は、自動車に関し、より詳細には自動車のための先進運転支援システムに関する。
【背景技術】
【0003】
トレーラは、一般的に、トレーラヒッチを介して牽引車両に連結されている。トレーラヒッチによって、トレーラはヒッチを軸にして水平方向に旋回することができ、それによって車両−トレーラユニットはコーナを曲がることができる。車両−トレーラユニットが旋回する際、トレーラは車両が辿る経路よりも短い経路を辿る。ホイールベースが長くなるほど、旋回中にトレーラホイールが辿る経路は短くなる。つまり、トレーラの旋回半径は小さくなる。短い旋回経路を補償するために、車両−トレーラユニットは、より大きく旋回しなければならない。車両−トレーラシステムの操作に不慣れな人間は、トレーラの経路を正確に制御することに関して何らかの問題を抱える可能性がある。
【0004】
さらに、車両−トレーラユニットが後退移動する際には、車両−トレーラユニットの操作がより一層困難になる。車両が後退する際、車両によってトレーラが押される。運転手は、トレーラの向きを所望の向きに変更するためには車両ステアリングホイールをどちらの方向に回せばよいのかが分からなくなることが多い。また、不正確なステアリング角度で車両が操作されると、車両−トレーラユニットがくの字に折れ曲がり(jack-knife)、トレーラ自体が進路から逸れてしまうか、または車両およびトレーラがその状況からどうやって抜け出せるかが分からなくなる状況へと車両トレーラが操作されてしまう可能性がある。
【0005】
上記した背景技術に関する説明は、本開示のコンテキストを一般的に表すためのものである。この背景技術の項に記載されている限りでの本願に挙げられた発明者の研究、ならびに出願時点において先行技術と認定されることはない本願の種々の態様は、明示的にも暗示的にも本発明についての先行技術とは認められない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
1つの例示実施形態では、車両−トレーラユニットを制御するための方法が、トレーラアシストシステムのための電子制御ユニットを用いて、車両−トレーラユニットの複数の操作を、進行の本来の向きにおいて各操作が実行されたときに記録することを含む。また本方法は、トレーラアシストシステムのための隘路逆戻り機能の開始に応答して、記録された複数の操作を検索することを含む。本方法はさらに、検索された、記録された複数の操作を、それらの操作が記録されたときの進行の向きとは逆の向きかつ逆の順序で実行するように車両システムに指示することを含む。
【0007】
別の例示実施形態では、車両−トレーラユニットを制御するための方法が、トレーラアシストシステムの電子制御ユニットを用いて、進行の現在の向きでの継続的な移動によって障害物との衝突が生じる可能性があるかを求めることを含む。また本方法は、電子制御ユニットを用いて、進行の本来の向きにおいて車両−トレーラユニットが進行しても衝突は生じないと考えられる新たな位置を求めることを含む。本方法はさらに、電子制御ユニットを用いて、車両−トレーラユニットを新たな位置まで移動させるために、逆向きの進行における車両トレーラユニットの少なくとも1回の操作を計算することを含む。本方法はまた、車両−トレーラユニットが新たな位置に到達するまで、逆向きの進行で少なくとも1回の操作を実行することを車両システムに指示することを含む。
【0008】
1つの例示実施形態では、車両−トレーラユニットのためのトレーラアシストシステムが電子制御ユニットを備える。電子制御ユニットは、車両トレーラユニットの複数の操作を、進行の本来の向きにおいて各操作が実行されたときに記録するための命令、隘路逆戻り機能の開始に応答して、記録された複数の操作を検索するための命令、および検索された、記録された複数の操作を、それらの操作が記録されたときの進行の向きとは逆の向きかつ逆の順序で実行するように車両システムに指示するための命令を用いて構成されている。
【0009】
本開示は、詳細な説明および添付の図面からより完全に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明のトレーラ後退システムを有している、車両およびトレーラアセンブリの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下の記述は、単に例示的な性質のものに過ぎず、本開示、その用途、または使用を制限することを一切意図していない。明確にするために、図面においては、類似の要素を識別するために同一の参照番号を使用する。
図1は、車両10およびトレーラ11を示す。車両10は、自動車、トラック、トラクタなどであってよい。トレーラ11は、車両10に制御可能に固定されて、車両−トレーラユニット12を形成する。車両−トレーラユニット12は、本発明のトレーラアシストシステム14を使用する。
【0012】
トレーラアシストシステム14は、電子制御ユニット(ECU)22を備えている。ECU22は、車両−トレーラユニット12の操作を記録する。ECU22は、他の車両システム24、例えばステアリングシステムおよびブレーキングシステムと通信することができる。ECU22は、車両−トレーラユニット12を操作するために他のシステム24に命令を送信することができ、かつ/または、システム24からの信号を受信して、車両操作者による入力として、車両−トレーラユニット12の操作を記録することができる。
【0013】
車両−トレーラユニット12の後退を支援するために、トレーラアシストシステム14を使用することができる。そのような場合、ECU22は、所望の後退操作を介して車両−トレーラユニット12を移動させるために必要なステアリングおよび/またはブレーキングを求め、計算された操作を完結させるための命令を含む信号を他の車両システム24に送信することもできる。
【0014】
車両−トレーラユニット12を操作する際、前方に向かって牽引が行われるか、または後方に向かって後退する状況において、操作者は、自身が「隘路(tight spot)」にいて、近傍に位置する障害物および衝突の可能性に起因して、現在の向きにおいては前方にも後方にも継続的に進行することがもはや不可能な状況に陥っていることに気付く場合がある。そのような隘路にいる状況では、車両操作者が、車両−トレーラユニット12をその隘路から脱出させるために反対の向きへの操作を行わなければならない。しかしながら、隘路から脱出するための反対の向きへの車両−トレーラユニット12の操作は、車両操作者にとって単純に困難であるか、または本来の操作よりも困難になる可能性がある。そのような状況において、車両操作者は、トレーラアシストシステム14を起動させて、隘路逆戻り機能16を開始することができる。
【0015】
隘路逆戻り機能16の実施時に、ECU22は、車両−トレーラユニット12の記録された操作を検索し、それらの操作が実行された順序とは逆の順序でそれらの操作を実行するように、車両−トレーラユニット12に指示を出すことができる。記録された操作は、進行の向き(例えば、トランスミッションの現在のギア)、移動距離、ステアリング角度などを含むことができる。このことは、車両−トレーラユニット12の本来の操作の経路、および出発位置27まで戻るために隘路を逆戻りしている間に逆向きに車両−トレーラユニット12が進行する経路を表す線26によって示されている。
【0016】
この例示実施形態では、トレーラアシストシステム14が、逆の順序での操作を、事前設定された数だけ一度に実行することができ、例えば記録された最後の3つの操作を実行することができる。代替的に、ECU22は、逆の順序での操作を一度に1つ実行することもできる。車両操作者は、本来の向きでの進行を快適に継続することができる状況に車両−トレーラユニット12が達したと思うまで、逆の順序での操作を実行することを、トレーラアシストシステム14に要求し続けることができる。
【0017】
代替的に、本来の向きでの継続的な進行が可能になる状況に車両−トレーラユニット12が達したことをトレーラアシストシステム14が確認するまで、トレーラアシストシステム14は、逆の順序での操作を実行することができる。そのような状況においては、トレーラアシストシステム14は、他の車両システム24、センサおよびカメラからの情報を使用して、近傍の障害物48の位置を特定し、また本来の向きでの進行を実現できる、それらの障害物48からの間隔を確認することができる。
【0018】
隘路逆戻り機能16を使用する別の実施形態では、ECU22が、隘路から車両−トレーラユニット12を逆戻りさせるための一連の新たな操作を計算することができる。この実施形態では、一連の新たな操作は、車両−トレーラユニット12の最後の幾つかの操作を再現する必要はなく、むしろ、一連の新たな操作は、隘路にいる状況からの車両−トレーラユニット12の効率的な脱出であってよい。このことは、車両−トレーラユニット12が、参照番号29が付された隘路から新たな位置へと移動する線28によって示されている。車両−トレーラユニット12は、新たな位置から別の操作経路30を取ることによって、より容易に障害物48を通過することができる。
【0019】
このようにして、トレーラアシストシステム14の隘路逆戻り機能16は、操作者が進行の現在の向きでは移動を継続できないか、またはどのように移動を継続すればよいか分からないという状況から抜け出すために、車両−トレーラユニット12を操作することができ、したがって操作者は移動の継続に再度挑戦することができる。
【0020】
本発明を実施するための最善の方式を詳細に説明したが、本開示の実際の範囲はこれに限定されるものではない。何故ならば、本発明に関連する分野に精通するものであれば、添付の特許請求の範囲内で本発明を実施するために、種々の代替的な設計および実施形態を認識できるからである。