(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の湿式集塵機においては、含塵気流は、S字状インペラを通過する際に一次側の液体を巻き上げて、当該液体と接触する。すなわち、気液接触が一次側の液体を巻き上げながら行われる。このため、一次側の液位を厳格に管理する必要がある。また、空気より重い液体を巻き上げなければならないので、S字状インペラでの圧力損失が増大し、大きなエネルギー(動力)が必要となる。
【0008】
本発明は、上記の点に鑑み、液位を厳格に管理する必要がなく、かつ少ない圧力損失で高い捕集効率が得られる湿式集塵機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る湿式集塵機は、液体が貯溜される貯溜部と、含塵気流が導入される一次側の第1空気室と、集塵後の気流を排出する二次側の第2空気室と、第1空気室と第2空気室とを仕切る第1隔壁とを備え、第1空気室から第2空気室へ流れる含塵気流を貯溜部の液体に接触させて、当該含塵気流中の粉塵を液体中に捕集する湿式集塵機であって、貯溜部を、第1空気室に連通する第1貯溜部と、第2空気室に連通する第2貯溜部とに分ける第2隔壁と、第1隔壁と第2隔壁との間に形成された第1狭窄部とをさらに備えている。含塵気流が第1空気室から第1狭窄部を通って第2空気室へ流れる際に、第1空気室と第2空気室の圧力差によって第2貯溜部からオーバーフローした液体と、第1狭窄部を通過した含塵気流とが接触して、当該含塵気流中の粉塵が液体中に捕集される。
【0010】
このような構成によれば、二次側において、第1狭窄部を通過した含塵気流がオーバーフローした液体を噴き上げながら気液接触が行われるため、一次側の液位を厳格に管理する必要がない。また、二次側においても、第2貯溜部の上下位置を適切に設定することで、オーバーフローする液体の必要量を確保できるので、二次側の液位も厳格に管理する必要がない。さらに、気液接触にあたって液体を巻き上げる必要がなく、一次側と二次側の圧力差(静圧)で液体をオーバーフローさせるので、少ない圧力損失で高い捕集効率が得られる。
【0011】
本発明の好ましい実施形態によれば、第2隔壁の上端は、第2貯溜部の液体が前記圧力差によって持ち上げられたときの液面よりも低い位置に設定されており、第2隔壁の上端と前記液面の高さの差に応じた常に一定量の液体が、第2貯溜部からオーバーフローする。
【0012】
本発明において、第1隔壁および第2隔壁は、たとえば中空の筒状体からなり、第1隔壁の外部が第1空気室で、内部が第2空気室であり、第2隔壁の外部が第1貯溜部で、内部が第2貯溜部であってもよい。この場合、気流は外側から内側へ流れる。あるいは、これとは逆に、第1隔壁の内部が第1空気室で、外部が第2空気室であり、第2隔壁の内部が第1貯溜部で、外部が第2貯溜部であってもよい。この場合、気流は内側から外側へ流れる。
【0013】
本発明において、第1隔壁および第2隔壁は、それぞれ板体であってもよい。この場合、第1隔壁を挟んで、一方側が第1空気室で、他方側が第2空気室である。また、第2隔壁を挟んで、第1空気室側が第1貯溜部で、第2空気室側が第2貯溜部である。
【0014】
本発明において、第1隔壁および第2隔壁は、第1狭窄部を挟んで対向する部分に襞部を有していてもよい。
【0015】
本発明において、含塵気流と接触して飛散した液体を、第1貯溜部へ戻すためのリターンパイプを設けてもよい。
【0016】
本発明の好ましい実施形態によれば、第2貯溜部の上方に、含塵気流と接触して飛散した液体を受け止めるバッフルが設けられる。また、このバッフルの上方に、液体の飛沫を受け止めるデミスタが設けられる。
【0017】
本発明において、バッフルの下方に、当該バッフルと対向する位置に開口部を有する開口プレートを設け、この開口プレートの開口部周縁とバッフルとの間に、第2狭窄部が形成されていてもよい。
【0018】
本発明において、第2隔壁は、上下方向にずれて配設された上部第2隔壁および下部第2隔壁からなり、第1狭窄部は、第1隔壁と上部第2隔壁との間に形成された上部第1狭窄部と、第1隔壁と下部第2隔壁との間に形成された下部第1狭窄部とからなっていてもよい。また、第2貯溜部は、上部第2隔壁により形成される上部第2貯溜部と、下部第2隔壁により形成される下部第2貯溜部とからなっていてもよい。この場合、含塵気流は、下部第1狭窄部を通過した後、下部第2貯溜部からオーバーフローした液体と接触し、続いて、上部第1狭窄部を通過した後、上部第2貯溜部からオーバーフローした液体と接触する。
【0019】
本発明において、含塵気流が第1空気室から第1狭窄部に流入する前に、当該含塵気流を第1貯溜部の液体と接触させるようにしてもよい。
【0020】
本発明において、第1隔壁と第2隔壁との組は、複数設けられていてもよい。
【0021】
本発明の他の形態として、外部から貯留部へ液体を供給することにより、貯留部の液体をオーバーフローさせてもよい。この場合、貯溜部は、液体の注入が可能な容器の内部に形成され、第2空気室と連通して設けられる。また、この貯溜部に液体を供給するための供給路が設けられる。第1隔壁と容器との間には、狭窄部が形成される。
【0022】
液体は、供給路から貯溜部へ直接供給してもよいし、第1供給路と第2供給路とを設け、第1供給路から集塵機内へ供給された液体を、動力源により第2供給路から貯溜部へ供給してもよい。この場合、供給路から貯溜部へ供給される液体は、上水であることが好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、液位を厳格に管理する必要がなく、かつ少ない圧力損失で高い捕集効率が得られる湿式集塵機を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態につき図面を参照しながら説明する。各図において、同一の部分または対応する部分には、同一の符号を付してある。
【0026】
図1は、本発明に係る湿式集塵機の第1実施形態を示している。この湿式集塵機100は、たとえば食品工場において、小麦粉などの粉塵を捕集するために用いられる。湿式集塵機100は、台座1と、この台座1上に設置されたタンク3と、このタンク3の内部と連通する気流導入管9および液体導入管10と、タンク3の上方に設けられた円筒シリンダ4と、この円筒シリンダ4の上方に設けられたデミスタ5と、このデミスタ5の上方に設けられたフィルタ6と、このフィルタ6の上方に設けられた送風機ユニット7とを備えている。台座1の上面にはフレーム2が立設されており、下面には移動用のキャスター8が設けられている。
【0027】
タンク3は、上側が開放された円筒状の容器からなり、上部は集塵部31を構成しているとともに、下部は貯溜部32を構成している。集塵部31には、中空の筒状体からなる外筒33(第1隔壁)と、同じく中空の筒状体からなる内筒34(第2隔壁)と、円盤状に形成された水平板35とが設けられている。外筒33は、
図2(a)に示すように、中空の円筒から構成されている。内筒34は、
図2(b)に示すように、上部に大径部34aを有し、下部に小径部34bを有する2段円筒から構成されている。大径部34aの外径寸法D2は、外筒33の内径寸法D1よりも若干小さくなっている。このため、外筒33の内周面と、内筒34の大径部34aの外周面との間には、
図1に示すように、細隙からなる狭窄部G(第1狭窄部)が形成される。なお、外筒33と内筒34は、円筒に限らず、たとえば、水平断面が四角形や六角形のような多角形の筒状体であってもよい。
【0028】
集塵部31内には、外筒33によって仕切られた第1空気室S1および第2空気室S2が設けられている。外筒33の外部は、第1空気室S1となっており、外筒33の内部は、第2空気室S2となっている。気流導入管9は、その水平中心軸がタンク3の垂直中心軸と交差するように、第1空気室S1と連通して設けられている。貯溜部32には、液体導入管10から供給された液体Wが貯溜されている。液体Wは、ここでは水であるが、水以外に消毒液(たとえば次亜塩素水)や溶剤などであってもよい。内筒34の下部は液体Wに浸漬しており、貯溜部32は、内筒34によって、第1貯溜部P1と第2貯溜部P2とに分けられる。第1貯溜部P1は、内筒34の外部にあって、第1空気室S1に連通しており、第2貯溜部P2は、内筒34の内部にあって、第2空気室S2に連通している。湿式集塵機100が運転されていないときは、第1貯溜部P1と第2貯溜部P2の液面高さは同じである。
【0029】
タンク3の上部には、円盤状の開口プレート42を介して、円筒シリンダ4が配置されている。開口プレート42は、円筒形の大径のパイプ36と、このパイプ36と連通する開口部(図示省略)とを有している。パイプ36は、第2空気室S2に臨んでいて、第2空気室S2内の気流を円筒シリンダ4の内部空間へ導く。開口プレート42の周縁部には、後述するリターンパイプ11が複数設けられている。リターンパイプ11の上下端は開放されていて、上端は円筒シリンダ4の内部空間に臨んでおり、下端は液体Wに浸漬している。
【0030】
円筒シリンダ4の内部空間には、湿式集塵機100の運転時に第2空気室S2から飛散した液体を受け止めるバッフル41が備わっている。本実施形態では、バッフル41は有底円筒からなり、開口側が下となるように、支持部材43により円盤状の支持板44に取り付けられている。支持板44の中央部には、気流が通過できる開口部(図示省略)が形成されている。
【0031】
円筒シリンダ4の上方にはデミスタ5が配置されており、そのさらに上方にフィルタ6が配置されている。デミスタ5は、たとえばビニール製のメッシュを幾重にも重ねて構成されており、メッシュを気流が通過する際に、液体の飛沫を受け止めて大粒の液滴に凝集する。凝集された液滴は下方へ落下し、気流から分離される。フィルタ6は、気流中の微粒子をほぼ完全に除去するためのフィルタであり、一般の集塵フィルタのほか、HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)や、ULPAフィルタ(Ultra Low Penetration Air Filter)のような高性能フィルタを用いることもできる。
【0032】
送風機ユニット7は、フレーム2の上方に設置されている。送風機ユニット7の内部には、ファン71と、このファン71を回転させるモータ72とからなる送風機70が収納されている。また、送風機ユニット7には、送風機70から送出される清浄気流を排出する排出孔73が設けられている。
【0033】
図3は、上述した湿式集塵機100内の気流の流れを示した図である。矢印で示すように、粉塵を含んだ含塵気流は、気流導入管9から第1空気室S1へ導入された後、外筒33と内筒34との間の狭窄部Gを通過して、第2空気室S2に流入する。このとき、第1空気室S1と第2空気室S2の圧力差により、第2貯溜部の液体Wが内筒34の上部からオーバーフローして含塵気流と接触することで(気液接触)、粉塵が液中に捕集されるが、これについては、後で詳細に説明する。
【0034】
粉塵が捕集された気流は、パイプ36を通って円筒シリンダ4の内部空間へ流入し、支持板44の開口部を通ってデミスタ5とフィルタ6へ向かう。このとき、第2空気室S2での気液接触によって、円筒シリンダ4内へ飛散した液体は、バッフル41に衝突して受け止められ、バッフル41で反射して下方へ落下する。そして、落下した液体の一部は、リターンパイプ11(
図1)を通って第1貯溜部P1へ戻る。リターンパイプ11は、液体を循環させることで、液体が汚濁するのを防止する役割を果たしている。
【0035】
円筒シリンダ4の内部空間から出た気流は、まずデミスタ5を通過する。このとき、バッフル41で受け止められずに気流中に混入した液体の飛沫が、デミスタ5によって受け止められ除去される。デミスタ5を通過した気流は、次にフィルタ6を通過する。このとき、気流中に残存している粉塵の微粒子は、フィルタ6によってほぼ完全に除去される。フィルタ6を通過した気流は、清浄気流となって送風機ユニット7へ流入し、ファン71の回転により排出孔73から排出される。
【0036】
次に、
図1のA部における気液接触について詳細に説明する。
図4は、A部を拡大した図である。前述したように、外筒33と内筒34(大径部34a)との間には、狭窄部Gが設けられている。また、外筒33の下端と水平板35との間には、含塵気流の入口37が設けられている。
図4は、湿式集塵機100が運転されていない状態であり、この状態では第1空気室S1と第2空気室S2の気圧差がないため、第1貯溜部P1の液面Lと第2貯溜部P2の液面Lとは、同じ高さになっている。
【0037】
湿式集塵機100の運転が開始されると、送風機70(
図1)が駆動され、ファン71の回転とともに、気流導入管9から第1空気室S1へ含塵気流が導入される。第1空気室S1へ導入された含塵気流は、
図5の矢印で示すように、外筒33と水平板35との間の入口37を通って、狭窄部Gへ入る。この狭窄部Gを含塵気流が通過する際に生じる圧力損失により、第2空気室S2の気圧は第1空気室S1の気圧よりも低くなる。すなわち、第1空気室S1と第2空気室S2との間で圧力差(静圧)が生じる。
【0038】
この圧力差のために、第1貯溜部P1の液面はL1まで下降する一方、第2貯溜部P2の液面はL2まで上昇する。すなわち、第2貯溜部P2の液体Wが、圧力差によって持ち上げられる。ここで、内筒34の大径部34aの上端は、液体Wが持ち上げられたときの液面L2よりも低い位置Xに設定されている。その結果、L2とXの高さの差に応じた常に一定量の液体Wfが、第2貯溜部P2からオーバーフローする。このオーバーフローした液体Wfは、狭窄部Gを通過する上向きの気流のために、狭窄部Gへ流下することができない。
【0039】
このため、狭窄部Gを通過した含塵気流は、オーバーフローした液体Wfと接触して、液体Wfを攪拌し始める。このときの液体Wfは、
図6に示すように、噴水が噴き上がる初期段階のような状態を呈する。そして、定常状態においては、
図7に示すように、狭窄部Gを連続的に通過する含塵気流によって、オーバーフローした液体Wfはさらに攪拌され、高く噴き上がった噴水のような状態となる。これにより、含塵気流と液体Wfとの間で十分な気液接触が行われて、気流中の粉塵が液中に捕集される。なお、捕集された粉塵は、タンク3(
図1)の底部に沈殿し、タンク3の洗浄時などに排出される。
【0040】
以上のように、第1実施形態の湿式集塵機100では、第2空気室S2つまり二次側において、狭窄部Gを通過した含塵気流がオーバーフローした液体Wfを噴き上げながら気液接触が行われるので、特許文献1のように一次側の液体を巻き上げながら気液接触が行われるものと比べて、一次側の液位(第1貯溜部P1の液位)を厳格に管理する必要がない。また、二次側においても、内筒34の上端位置Xを適切に設定することで、気液接触に必要な一定量の液体Wfを確実にオーバーフローさせることができるため、二次側の液位管理は実質的に不要となる。したがって、本実施形態によれば、厳格な液位管理をしなくても、粉塵を効率良く捕集することが可能となる。なお、本発明は、一次側や二次側に液位調整手段を設けることを排除するものではなく、必要に応じて液位調整手段を設けてもよい(たとえば後述の
図12参照)。
【0041】
また、特許文献1では、気液接触にあたって、S字状インペラの一次側で空気より重い液体を巻き上げねばならないので、S字状インペラでの圧力損失が増大する。これに対して、本実施形態では、気液接触にあたって、液体を巻き上げる必要がなく、一次側と二次側の圧力差(静圧)で液体をオーバーフローさせるので、狭窄部Gでの圧力損失が小さい。したがって、本実施形態によれば、S字インペラ型の湿式集塵機よりも少ない圧力損失で、同等以上の捕集効率を得ることができる。
【0042】
さらに、食品工場の製造現場では、衛生安全面の観点から調理用タンクなどを丸洗いすることが常態となっており、集塵機に対しても、装置全体を丸洗いできるものが求められている。しかしながら、S字状インペラを用いた湿式集塵機では、本体内部の構造が複雑であるため、内部の洗浄がやりにくく、丸洗いは事実上不可能である。しかるに、本実施形態の湿式集塵機100では、複雑な形状のS字状インペラを用いないので、内部の洗浄を容易に行うことができ、丸洗いも可能である。
【0043】
図8は、本発明の第2実施形態を示した概略断面図である。
図8では、
図1と同等の機能を有する部分に、
図1と同じ符号を付してある(
図9以下においても同じ)。本実施形態では、バッフル41と開口プレート42とが近接して配置されており、開口プレート42の開口部42aの周縁とバッフル41との間に、狭窄部G’(第2狭窄部)が形成されている。その他の構成については、
図1と基本的に同じである。
【0044】
図8において、気流導入管9から第1空気室S1へ導入された含塵気流が、外筒33と内筒34との間の狭窄部G(第1狭窄部)を通過して、オーバーフローした液体Wfと接触する点は、
図1の第1実施形態と同じである。第2実施形態では、狭窄部Gを通過して気液接触が行われた気流を、さらに狭窄部G’を通過させて気液接触を行わせる。前述したように、バッフル41に衝突した液体は反射して下方へ落下するので、気流が狭窄部G’を通過する際に、当該気流と落下する液体とが接触する。本実施形態によると、気液接触が2段階で行われるため、捕集性能を向上させることができる。
【0045】
図9は、本発明の第3実施形態を示した概略断面図である。本実施形態では、内筒が、上下方向にずれて配設された上部内筒341(上部第2隔壁)と下部内筒342(下部第2隔壁)とからなる。外筒33と上部内筒341との間には、上部狭窄部Ga(上部第1狭窄部)が形成されており、外筒33と下部内筒342との間には、下部狭窄部Gb(下部第1狭窄部)が形成されている。また、第2貯溜部は、上部内筒341により形成される上部貯溜部P2a(上部第2貯溜部)と、下部内筒342により形成される下部貯溜部P2b(下部第2貯溜部)とからなる。その他の構成については、
図1と基本的に同じである。
【0046】
図9において、気流導入管9から第1空気室S1へ導入された含塵気流は、下部狭窄部Gbを通過した後、下部貯溜部P2bからオーバーフローした液体Wfと接触し、続いて、上部狭窄部Gaを通過した後、上部貯溜部P2aからオーバーフローした液体Wfと接触する。すなわち、第3実施形態においても、気液接触が2段階で行われるため、捕集性能を向上させることができる。
【0047】
図10は、本発明の第4実施形態を示した概略断面図である。本実施形態では、気流の流れが、第1〜第3実施形態の場合と逆になっている。このため、
図8等の気流導入管9が気流排出管9’に、外筒33が内筒33’に、内筒34が外筒34’に、それぞれ置き換わっている。内筒33’は、本発明における「第1隔壁」に相当し、外筒34’は、本発明における「第2隔壁」に相当する。内筒33’の内部は、第1空気室S1となっており、内筒33’の外部は、第2空気室S2となっている。第1貯溜部P1は、外筒34’の内部にあって、第1空気室S1に連通しており、第2貯溜部P2は、外筒34’の外部にあって、第2空気室S2に連通している。
【0048】
第1空気室S1へ導入された含塵気流は、矢印で示すように、内筒33’と外筒34’との間の狭窄部Gを通過して、第2貯溜部P2からオーバーフローした液体Wfと接触する。この点は、第1実施形態と同じである。気液接触により粉塵が捕集された気流は、デミスタ5を通った後、気流排出管9’から流出する。この第4実施形態によると、気流が内側から外側に向かって流れ、外側に行くほど流速が低下するので、液体Wの飛沫が発生するのを抑制できるなどの利点がある。
【0049】
図11は、本発明の第5実施形態を示した概略断面図である。本実施形態では、第1実施形態で用いられていた水平板35(
図1)が省略されている。このため、気流導入管9から第1空気室S1へ導入された含塵気流は、狭窄部Gに流入する前に、第1貯溜部P1の液体Wと接触し、一次側において1回目の気液接触が行われる。その後、気流は狭窄部Gを通って第2空気室S2に流入し、二次側において2回目の気液接触が行われる。したがって、本実施形態においても、気液接触が2段階で行われるため、捕集性能を向上させることができる。
【0050】
図12は、本発明の第6実施形態を示した概略断面図である。本実施形態では、一次側の液位を管理するための液位調整手段が設けられている。液位調整手段は、オーバーフロー管60と水封装置61とからなる。一次貯溜部P1に液体導入管10(
図1参照)から液体Wが供給されて、一次貯溜部P1の液面Yが上昇し、液面Yがオーバーフロー管60の上端位置Hを越えると、オーバーフロー管60内に液体が流入し、水封装置61を介して余剰の液体が機外へ排出される。このため、一次貯溜部P1の液面Yを、常にオーバーフロー管60の上端位置H以下に保つことができる。このように、液位調整手段を設ける場合でも、従来のように一次側の液面を厳格に管理する必要がないため、本実施形態のような簡単な液位調整手段を設ければ十分である。
【0051】
図13は、本発明の第7実施形態であって、(a)は湿式集塵機100の外観図、(b)は湿式集塵機100の内部を示した斜視図、(c)は断面図である。湿式集塵機100は、箱形のタンク80と、このタンク80の内部と連通する気流導入管84および気流排出管85を備えている。本実施形態では、第1実施形態の外筒33と内筒34の替わりに、板体からなる仕切り板81、82が設けられている。仕切り板81は本発明における「第1隔壁」の一例であり、仕切り板82は本発明における「第2隔壁」の一例である。
【0052】
仕切り板81を挟んで、一方側は第1空気室S1、他方側は第2空気室S2となっている。気流導入管84は第1空気室S1と連通し、気流排出管85は第2空気室S2と連通している。また、仕切り板82を挟んで、第1空気室S1側が第1貯溜部P1、第2空気室S2側が第2貯溜部P2となっている。仕切り板82は、上部に仕切り板81側へ突出するL字形の屈曲部82aを有しており、この屈曲部82aと仕切り板81との間に、狭窄部Gが形成されている。
【0053】
この第7実施形態の湿式集塵機100においても、第1実施形態と同じ原理により、気流導入管84から流入して狭窄部Gを通過した含塵気流は、第1空気室S1と第2空気室S2との圧力差によって第2貯溜部P2からオーバーフローした液体Wfと接触し、粉塵が捕集される。集塵後の気流は、気流排出管85を通って、図示しないバッフルやフィルタなどが設けられた空間へ流出する。
【0054】
図14は、本発明の第8実施形態を示している。本実施形態は、タンク3、円筒シリンダ4、およびデミスタ5を含むブロックと、フィルタユニット90および送風機ユニット7を含むブロックとを分離して設けた例である。気流導入管9から導入された含塵気流は、タンク3から円筒シリンダ4、デミスタ5、およびダクト91を通ってフィルタユニット90に流入し、フィルタ6で粉塵が除去されて清浄気流となり、送風機ユニット7の排出孔73から排出される。なお、この第8実施形態の変形例として、ダクト91を通って流れてきた気流を、最初に送風機ユニット7へ導入し、その後フィルタユニット90へ流出させるようにしてもよい。この場合は、排出孔73がフィルタユニット90に設けられる。
【0055】
図15は、本発明の第9実施形態を示した概略断面図である。前述した各実施形態では、第1空気室S1と第2空気室S2の圧力差(静圧)を利用して液体をオーバーフローさせたが、第9実施形態では、貯溜部に液体を供給することで液体をオーバーフローさせる。
【0056】
図15において、外筒33の内部に、側壁39aおよび底壁39bを有する有底円筒形の容器39が設けられている。容器39は、上面が開口していて、上方から液体の注入が可能であり、内部は第2空気室S2と連通する貯溜部Pとなっている。外筒33と容器39の側壁39aとの間には、狭窄部Gが形成されている。また、外部から貯溜部Pへ液体を供給するための供給路62が、第2空気室S2と連通して設けられている。湿式集塵機100の運転時には、貯溜部Pから液体が常時オーバーフローするように、供給路62から貯溜部Pへ液体を供給する。これにより、オーバーフローした液体Wfと、狭窄部Gを通過した含塵気流とが接触して、含塵気流中の粉塵を液体中に捕集することができる。
【0057】
第9実施形態によれば、空気室S1、S2の圧力差(静圧)に依存せずに、供給路62からの液体の供給量を調整することによって、常に一定量の液体Wfをオーバーフローさせることができる。また、液体として上水を供給すれば、集塵機内の水の汚れを抑制することができる。
【0058】
図16は、本発明の第10実施形態を示した概略断面図である。本実施形態は、上述した第9実施形態の変形例である。
図16においては、液体の供給路が、第1供給路64と、第2供給路65とからなる。第1供給路64は、外部から第1空気室S1を通して集塵機内へ液体W(たとえば上水)を供給する。第2供給路65は、第1供給路64から供給された液体Wを、ポンプなどの動力源66により貯溜部Pへ供給する。
【0059】
第10実施形態によれば、空気室S1、S2の圧力差(静圧)に依存せずに、動力源66からの液体の供給量を調整することによって、常に一定量の液体Wfをオーバーフローさせることができる。また、動力源66を用いることで、容器39の高さを任意に設定することができる。
【0060】
図17は、外筒33および内筒34の他の例であって、(a)は斜視図、(b)は上面図、(c)は側面図、(d)は(c)のB−B断面図を示している。
図17では、外筒33および内筒34が、狭窄部Gを挟んで対向する部分に襞部Zを有している。このような襞部Zを設けることにより、狭窄部Gにおける気流の通過面積が大きくなって風量が増大し、外筒33と内筒34を円筒状にした場合と比べて、同じ装置寸法で多風量を処理することができる。なお、
図13の仕切り板81、82にも、上記と同様の襞部Zを設けることができる。
【0061】
図18は、外筒33(第1隔壁)および内筒34(第2隔壁)の他の例を示した概略断面図である。(a)は、内筒34を漏斗状にして、狭窄部Gを形成した例である。(b)は、内筒34を単純な円筒形にして、狭窄部Gを形成した例である。(c)は、外筒33の下部を小径にして、狭窄部Gを形成した例である。(d)は、内筒34の上部に間隙調整用のリング部材Kを嵌着して、狭窄部Gを形成した例である。厚みdの異なるリング部材Kを用いることで、狭窄部Gの間隙寸法δを調整することができる。
【0062】
図19は、本発明の第11実施形態による湿式集塵機200を示した側面図(部分断面図)である。
図20は、
図19の要部の概略平面図である。前述した各実施形態では、外筒33と内筒34の組が1つだけ設けられていたが、第11実施形態では、外筒33と内筒34の組が複数設けられている。
図20の例では、リターンパイプ11の周りに、外筒33と内筒34の組が4つ設けられている。また、バッフル41も、これらの組に対応して、4つ設けられている(
図19では、2つのみ図示)。なお、液体Wを貯溜したタンク3と、リターンパイプ11とは、外筒33と内筒34の各組に対して共通に、それぞれ1つだけ設けられている。
【0063】
さらに、
図1においては、送風機70を収容した送風機ユニット7が湿式集塵機100上部に設けられていたが、
図19においては、送風機ユニット7が湿式集塵機200の下部に設けられている。そして、湿式集塵機200の上部と下部とにまたがって、ダクト18が設けられている。なお、本実施形態では、送風機ユニット7を下部に設けることは必須ではなく、
図1と同様に、湿式集塵機200の上部に送風機ユニット7を設けても差支えない。この場合は、ダクト18は不要である。
【0064】
図19において、気流導入管9から導入された含塵気流は、外筒33と内筒34との間の狭窄部Gを通過して、前述した原理により粉塵が除去され、バッフル41とデミスタ5、および図示しないフィルタを通過した後、清浄気流となってダクト18に流入する。そして、この清浄気流はダクト18内を下降し、基台19の内部空間を通って送風機ユニット7内に流入し、ファン71の回転により排出孔73から排出される。
【0065】
第11実施形態によれば、外筒33と内筒34との間の狭窄部Gが複数箇所に設けられているため、狭窄部Gを通過する気体の量が多くなって、風量を増やすことができる。また、送風機ユニット7を湿式集塵機200の下部に設けたことで、上方からのメンテナンス作業(フィルタ交換など)がしやすくなるという利点がある。なお、前述した第1ないし第8実施形態においても、第11実施形態と同様に、外筒33と内筒34の組を複数設けてもよい。
【0066】
本発明では、以上述べた実施形態以外にも、以下のような種々の実施形態を採用することができる。
【0067】
図9の実施形態では、2つの内筒341、342を設けて、気液接触が2段階で行われるようにしたが、内筒を3つまたはそれ以上設けて、気液接触が多段階で行われるようにしてもよい。
【0068】
また、
図8の実施形態と、
図9の実施形態とを組み合わせた構造とすることで、気液接触が多段階で行われるようにしてもよい。その他にも、上述した各実施形態は、適宜組み合わせることができる。
【0069】
図1の実施形態では、バッフル41から落下する液体を回収するためのリターンパイプ11を設けた例を示したが、このリターンパイプ11は省略してもよい。リターンパイプ11がない場合でも、バッフル41で反射した液体の一部は、パイプ36を通って第2貯溜部P2へ回収される。
【0070】
図1の実施形態では、気流導入管9の水平中心軸がタンク3の垂直中心軸と交差する例を示したが、気流導入管9の水平中心軸をタンク3の垂直中心軸からずらせて、気流導入管9とタンク3との接合部分の連通口をいわゆる接線インレットとすることで、導入気流に遠心力を付与してもよい。
【0071】
図1の実施形態では、バッフル41が有底円筒からなる例を示したが、バッフル41は傘形などの他の形状に形成されていてもよい。
【0072】
図15および
図16の実施形態では、容器39が有底円筒形である例を示したが、容器39の形状はこれに限らず、たとえばボウル状の形状であってもよい。
【0073】
前記の各実施形態では、食品業界向けの湿式集塵機100を例に挙げたが、本発明は、食品以外の業界で使用される湿式集塵機にも適用することができる。