(54)【発明の名称】1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と式H2N−(CH2)2−O−(CH2)2−O−(CH2)2−NH2のジアミンから得られる(コ)ポリアミド
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記(コ)ポリアミドが、大気圧下にて、110℃で、5g/Lの濃度で、少なくとも50重量%の水への溶解率を有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の(コ)ポリアミド。
【背景技術】
【0003】
例えば300℃超などの高い融点を有する(コ)ポリアミドは公知であり、文献に記載されている。この種類のポリアミドは特に、Solvay Specialty Polymers USAから、商品名Amodel(登録商標) PPAとして公知である。これらのポリアミドは低い吸水率も示し、これは特には高レベルの湿度であっても得られる強度及び剛性の安定性のため、多くの用途において有用な長所である。
【0004】
しかしながら、下で記述するものなどのいくつかの用途においては、高い融点を示すと同時に、高湿環境に置かれた場合に膨潤又は変形する、更には水に浸漬された場合に溶解することができるなどの、吸水挙動も示す(コ)ポリアミドが必要とされている。出願人の功績により、驚くべきことにそのような有利な特性を示す(コ)ポリアミドを合成するための成分の組み合わせが特定された。より正確には、出願人は今回、そのような(コ)ポリアミドが、式H
2N−CH
2CH
2−O−CH
2CH
2−O−CH
2CH
2−NH
2のジアミンと1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(1,4−CHDA)との縮合により得られることを見出した。
【0005】
複数の先行技術文献は、脂肪族ジアミンと短鎖ジカルボン酸との縮合から得られるポリアミドに関する。
【0006】
それらのうちの1つである米国特許第2,939,862号明細書(Eastman Kodak)は、大部分を占める式NH
2−R−O−R’−O−R−NH
2(Rは3〜6個の炭素原子を含むポリメチレンラジカルである)の二官能性エーテル型ジアミンと、少量の改良ジアミンとを含有する混合物1モルの割合を、1モルの割合のトランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(1,4−CHDA)と縮合することにより得ることができる、融点を有する高分子直鎖繊維形成用コポリアミドに関する。
【0007】
米国特許第4,374,741号明細書(Cincinnati Milacron Inc)は、次式のポリオキシアルキレンジアミンの水溶性ポリアミド誘導体に関する:
(式中、
− Rは、二価の脂肪族;芳香族;アリール脂肪族;アルキル芳香族;脂肪族環;酸素若しくは硫黄ヘテロ鎖原子を有するヘテロ脂肪族;1〜2個の酸素、硫黄、若しくは窒素ヘテロ環原子と5〜6個の環原子とを有するヘテロ環;又は二価のラジカル若しくは前記二価のラジカルのハロゲン化誘導体であり、
− R’は、二価のポリオキシアルキレンホモポリマー又はコポリマーのラジカルであり、
− nは2〜10である)。
この文献の実施例34は、1,4−CHDAとプロピレンオキシド末端ジアミン(すなわちアミン基が式−O−CH
2−CH(CH
3)−NH
2のものであるジアミンであり、アミン基は二級炭素原子に結合している)とのコポリアミドに関する。
【0008】
米国特許第4,946,933号明細書(Texaco Chemical Company)は、3つの成分:(1)ポリオキシエチレンジアミン、(2)ポリマー中に存在する合計のモル数を基準として約5〜40モル%の範囲で存在する36個以上の炭素を有する二量体脂肪酸、及び(3)短鎖ジカルボン酸;の重縮合により合成される熱可塑性接着剤に関する。好ましいポリオキシエチレンジアミンは、式H
2N−(CH
2CH
2O)
n−CH
2CH
2−NH
2(n=2又は3)のものである。短鎖ジカルボン酸は、一般式:HOOC−R’−COOH(式中、R’は、3〜約15個の炭素原子を有する脂肪族、脂環式、及び芳香族の炭化水素ラジカルである)を有する。実施例の全てにおいてアジピン酸が使用されている。
【0009】
米国特許出願公開第2008/0070025号明細書は、エポキシ、イソシアネート、無水物、及びアクリレートからなる群から選択される少なくとも1つであり好ましくは2つ以上の官能基を有する化合物と、ポリアミン化合物との、活性液体存在下での反応生成物である架橋高分子マトリックス、並びに任意選択的な水を含有する、特定のヘアトリートメント/シャンプー組成物に関する。ポリアミンは、通常は、場合により他のジアミンと混合されている過剰のポリエーテルポリアミンと、ポリ酸とを反応させることによって得られるエーテル系ポリアミドポリアミン(「PAPA」)である。室温で固体であるPAPAの中でも、主要な二酸部分の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(1,4−CHDA)と、3種の特定のプロピレンオキシド末端ジアミンの群から選択される化学量論過剰のポリ(アルキレンオキシ)ポリアミン(すなわちアミン基が式−O−CH
2−CH(CH
3)−NH
2のものであるジアミンであり、アミン基は二級炭素原子に結合している)との反応から得られるPAPAが挙げられている。
【0010】
欧州特許出願公開第1857097A1号明細書は、少なくとも1種以上のポリ(アルキレンオキシ)ジアミン(PAODA)と、1種以上の二酸とを含む反応混合物から形成されるエタノール可溶性若しくは分散性のポリエーテルアミドポリマーに関し、これは毛髪固定用組成物(例えばヘアスプレー配合物)などのパーソナルケア組成物における用途を有している。典型的なPAODAは全てプロピレンオキシド末端ジアミンである。すなわち、アミン基が式−O−CH
2−CH(CH
3)−NH
2(アミン基は二級炭素原子に結合している)のものであるジアミンである。
【0011】
上で列挙した文献のいずれにも、例えば、式H
2N−CH
2CH
2−O−CH
2CH
2−O−CH
2CH
2−NH
2のジアミンと1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(1,4−CHDA)との縮合により得られる式(I):
の繰り返し単位を少なくとも60モル%含む(コ)ポリアミドは記載されていない。出願人は、驚くべきことに、そのような(コ)ポリアミドが高い融点(すなわち260℃超)を示すだけでなく、吸水挙動、更には110℃未満の温度での水への溶解性も有することを見出した。そのような技術的特徴によって、これらは高温用途、又は水分に曝された際の十分な膨潤若しくは変形が必要とされる用途のみならず、高温耐性と水分に曝された際の十分な膨潤若しくは変形との両方が必要とされる用途(例えばオイル及びガスの抽出、3D印刷)においても使用が可能である。
【0012】
発明の開示
本発明は、式(I):
の繰り返し単位(R
PA)を少なくとも60モル%(mol%)含む(コ)ポリアミドに関する。
【0013】
「(コ)ポリアミド」又は「ポリアミド」という表現は、本明細書においては、
− 式(I)の繰り返し単位(R
PA)を実質的に100モル%含むホモポリアミド、及び
− 例えば少なくとも約65モル%、少なくとも約70モル%、少なくとも約75モル%、少なくとも約80モル%、少なくとも約85モル%、少なくとも約90モル%、少なくとも約95モル%、又は少なくとも約98モル%などの、少なくとも約60モル%の式(I)の繰り返し単位(R
PA)を含むコポリアミド、
を指すために使用される。
【0014】
本発明の(コ)ポリアミドは、例えば2000g/モル〜35000g/モル、又は4000〜30000g/モルなどの1000g/モル〜40000g/モルの範囲の数平均分子量M
Nを有し得る。数重量平均分子量は、ポリスチレン標準物質を用いて、ASTM D5296を使用してゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定することができる。
【0015】
本発明のある実施形態によれば、(コ)ポリアミドは:
− 式(II)
の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、
− 式(III)
H
2N−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−NH
2 (III)
のジアミン、
− 式(II)の二酸とは異なる任意選択的な少なくとも1種の二酸[酸(DA)](又はその誘導体)、及び
− 式(III)のジアミンとは異なる任意選択的な少なくとも1種のジアミン[アミン(NN)](又はその誘導体)、
を含む混合物の縮合生成物である。
この実施形態によれば、二酸[酸(DA)]は、少なくとも2個の酸部位−COOHを含む様々な脂肪族若しくは芳香族成分の中から選択することができ、またこれは特にはヘテロ原子(例えばO、N、又はS)を含んでいてもよい。この実施形態によれば、ジアミン[アミン(NN)]は、少なくとも2個のアミン部位−NH
2を含む様々な脂肪族若しくは芳香族成分の中から選択することができ、またこれは特にはヘテロ原子(例えばO、N、又はS)を含んでいてもよい。
【0016】
本発明の(コ)ポリアミドは、式(I)の繰り返し単位(R
PA)とは異なる少なくとも1種の繰り返し単位(R
PA*)を約40モル%未満含んでいてもよい。
【0017】
本発明のある実施形態によれば、繰り返し単位(R
PA*)は次のものからなる群から選択される:
(式中、
− 各炭素原子上の各R
i、R
j、R
k、及びR
lは、水素、ハロゲン、アルキル、アルケニル、エーテル、チオエーテル、エステル、アミド、イミド、アルカリ若しくはアルカリ土類金属スルホネート、アルキルスルホネート、アルカリ若しくはアルカリ土類金属ホスホネート、アルキルホスホネート、アミン、四級アンモニウム、及びこれらの任意の組み合わせから独立して選択され;
− mは、0〜10の整数であり;
− nは、6〜12の整数である)。
【0018】
別の実施形態によれば、コポリアミドは:
− 式(II):
の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と、
− 式(III):
H
2N−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−NH
2 (III)
のジアミンと、
− 脂肪族二酸(DA
al)若しくはその誘導体(酸ハロゲン化物、特には酸塩化物、酸無水物、酸塩、酸アミド)、又は
− 芳香族ジアミン(NN
ar)若しくはその誘導体、のうちの少なくとも1種と、
を含む混合物の縮合生成物である。
【0019】
この実施形態によれば、コポリアミドは、例えば1,4−CHDA(II)と、式(III)のジアミンと、少なくとも1種の脂肪族二酸(DA
al)と、少なくとも1種の芳香族ジアミン(NN
ar)とを含む混合物の縮合生成物であってもよい。
【0020】
別の実施形態によれば、コポリアミドは、
− 式(II):
の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と、
− 式(III):
H
2N−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−NH
2 (III)
のジアミンと、
− 芳香族二酸(DA
ar)若しくはその誘導体、又は
− 脂肪族ジアミン(NN
al)若しくはその誘導体、のうちの少なくとも1種と、
を含む混合物の縮合生成物である。
【0021】
この実施形態によれば、コポリアミドは、例えば1,4−CHDA(II)と、式(III)のジアミンと、少なくとも1種の芳香族二酸(DA
ar)と、少なくとも1種の脂肪族ジアミン(NN
al)とを含む混合物の縮合生成物であってもよい。
【0022】
芳香族ジアミン(NN
ar)の非限定的な例は、特には、m−フェニレンジアミン(MPD)、p−フェニレンジアミン(PPD)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル(3,4’−ODA)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(4,4’−ODA)p−キシリレンジアミン(PXDA)及びm−キシリレンジアミン(MXDA)である。
【0023】
脂肪族二酸(DA
al)の非限定的な例は、特には、シュウ酸(HOOC−COOH)、マロン酸(HOOC−CH
2−COOH)、コハク酸[HOOC−(CH
2)
2−COOH]、グルタル酸[HOOC−(CH
2)
3−COOH]、2,2−ジメチル−グルタル酸[HOOC−C(CH
3)
2−(CH
2)
2−COOH]、アジピン酸[HOOC−(CH
2)
4−COOH]、2,4,4−トリメチル−アジピン酸[HOOC−CH(CH
3)−CH
2−C(CH
3)
2−CH
2−COOH]、ピメリン酸[HOOC−(CH
2)
5−COOH]、スベリン酸[HOOC−(CH
2)
6−COOH]、アゼライン酸[HOOC−(CH
2)
7−COOH]、セバシン酸[HOOC−(CH
2)
8−COOH]、ウンデカン二酸[HOOC−(CH
2)
9−COOH]、ドデカン二酸[HOOC−(CH
2)
10−COOH]、及びテトラデカン二酸[HOOC−(CH
2)
11−COOH]である。
【0024】
脂肪族ジアミン(NN
al)の非限定的な例は、特には1,2−ジアミノエタン、1,2−ジアミノプロパン、プロピレン−1,3−ジアミン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン(プトレシン)、1,5−ジアミノペンタン(カダベリン)、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、3−メチルヘキサメチレンジアミン、2,5 ジメチルヘキサメチレンジアミン、2,2,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチル−ヘキサメチレンジアミン、1,7−ジアミノへプタン、1,8−ジアミノオクタン、2,2,7,7−テトラメチルオクタメチレンジアミン、1,9−ジアミノノナン、5−メチル−1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12 ジアミノドデカン、及びN,N−ビス(3−アミノプロピル)メチルアミンである。
【0025】
脂肪族ジアミン(NN
al)は、ポリエーテルジアミンの群の中で選択することもできる。ポリエーテルジアミンは、エトキシレート化(EO)主鎖及び/又はプロポキシレート化(PO)主鎖を主体としていてもよく、これらはエチレンオキシド末端、プロピレンオキシド末端、又はブチレンオキシド末端のジアミンであってもよい。そのようなポリエーテルジアミンは、例えばJeffamine(登録商標)及びElastamine(登録商標)(Hunstman)という商品名で販売されている。そのようなポリエーテルジアミンの具体例は、式(IV):
H
2N−(CH
2)
3−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
3−NH
2 (IV)
のジアミンである。
【0026】
芳香族二酸(DA
ar)の非限定的な例は、特には、イソフタル酸(IPA)及びテレフタル酸(TPA)などのフタル酸、ナフタレンジカルボン酸(例えばナフタレン−2,6−ジカルボン酸)、2,5−ピリジンジカルボン酸、2,4−ピリジンジカルボン酸、3,5−ピリジンジカルボン酸、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)プロパン、ビス(4−カルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−カルボキシフェニル)ケトン、4,4’−ビス(4−カルボキシフェニル)スルホン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)プロパン、ビス(3−カルボキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−カルボキシフェニル)ケトン、ビス(3−カルボキシフェノキシ)ベンゼンである。
【0027】
本発明のある実施形態によれば、(コ)ポリアミドは:
−式(II):
の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸と、
−式(III):
H
2N−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−NH
2 (III)
のジアミンと、
− 1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,10−ジアミンデカン、H
2N−(CH
2)
3−O−(CH
2)
2−O(CH
2)
3−NH
2、及びm−キシリレンジアミンからなる群から選択されるジアミン(NN)、又は
− アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、及び5−スルホフタル酸からなる群から選択される二酸(DA)、
のうちの少なくとも1種と、
を含む混合物の縮合生成物である。
【0028】
この実施形態によれば、コポリアミドは、例えば、1,4−CHDA(II)と、式(III)のジアミンと、アジピン酸、セバシン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、5−ヒドロキシイソフタル酸、及び5−スルホフタル酸からなる群から選択される少なくとも1種の二酸(DA)と、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,10−ジアミンデカン、H
2N−(CH
2)
3−O−(CH
2)
2−O(CH
2)
3−NH
2、及びm−キシリレンジアミンからなる群から選択される少なくとも1種のジアミン(NN)とを含む混合物の縮合生成物であってもよい。
【0029】
ある実施形態によれば、モル比n
二酸/n
ジアミンは0.8〜1.2の範囲である。本発明との関係において、用語「n
二酸」は、例えば縮合プロセスの中に含まれる二酸種の総モル数を意味する。同様に、用語「n
ジアミン」は、例えば縮合プロセスの中に含まれるジアミン種の総モル数を意味する。例として、縮合プロセスが式(II)の1,4−CHDAに加えて1つの追加的な二酸種を含む場合、n
二酸=n
1,4−CHDA+n
DAである。本発明によれば、モル比n
二酸/n
ジアミンは、0.8〜1.2、0.9〜1.1、0.95〜1.05、又は0.98〜1.02の範囲であってもよい。
【0030】
ある実施形態によれば、本発明の(コ)ポリアミドは、ASTM D3418に従って決定される少なくとも約260℃の融点を有する。この実施形態によれば、本発明の(コ)ポリアミドは、例えば少なくとも約270℃、少なくとも約280℃、又は少なくとも約290℃の融点を有していてもよい。
【0031】
ある実施形態によれば、本発明の(コ)ポリアミドは、少なくとも2重量%の、23℃の水の中への浸漬による飽和での吸水率を有する。この実施形態によれば、本発明の(コ)ポリアミドは、例えば23℃の水の中への浸漬による飽和での吸水率が少なくとも3重量%、少なくとも4重量%、少なくとも5重量%、又は少なくとも10重量%であってもよい。23℃での吸水率は、例えばISO527に従って成形したその乾燥状態(0.2重量%未満の含水率)の試験片を準備し、これを一定重量になるまで23℃の脱イオン水の中に浸漬することによって決定することができる。吸水率は次式に従って計算される:
(式中、W
前は元の乾燥状態の成形された試験片の重量であり、W
後は吸水後の成形された試験片の重量である)。
【0032】
ある実施形態によれば、本発明の(コ)ポリアミドは、大気圧下にて、110℃で、5g/Lの濃度で、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、又は100重量%の水への溶解率を有する。この実施形態によれば、本発明の(コ)ポリアミドは、例えば大気圧下にて、90℃で、5g/Lの濃度で、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、若しくは100重量%の水への溶解率、又は、大気圧下にて、70℃で、5g/Lの濃度で、少なくとも50重量%、少なくとも60重量%、少なくとも70重量%、少なくとも80重量%、少なくとも90重量%、若しくは100重量%の水への溶解率を有していてもよい。
【0033】
上述した縮合混合物に、1種以上のエンドキャッピング剤が使用及び添加されてもよい。キャッピング剤は、例えば1つのカルボキシル官能基のみを含む酸と、1つのアミン官能基のみを含むアミンからなる群から選択することができる。エンドキャッピング剤の例は、酢酸、プロピオン酸、安息香酸、ベンジルアミン、1−アミノヘキサン、及び1−アミノドデカンである。
【0034】
本発明のある実施形態によれば、(コ)ポリアミドは、36個以上の炭素原子を有する二酸を含まないあるいは、(コ)ポリアミドを合成するために使用した総モル数を基準として5モル%、4モル%、又は3モル%を超えない量でそのような二酸を含む。
【0035】
本発明の(コ)ポリアミドは、例えば溶液の中での熱的重縮合による任意の従来の方法によって合成することができる。
【0036】
ポリアミド組成物
ポリアミド組成物(C)は、上述した本発明の(コ)ポリアミドを含有する。
【0037】
(コ)ポリアミドは、組成物(C)の中に、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として30重量%超、35重量%超、40重量%超、又は45重量%超の合計量で存在していてもよい。(コ)ポリアミドは、組成物(C)の中に、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として90重量%未満、80重量%未満、70重量%未満、又は60重量%未満の合計量で存在していてもよい。
【0038】
(コ)ポリアミドは、例えば組成物(C)の中に、ポリアミド組成物(C)の総重量を基準として35〜60重量%、例えば40〜55重量%の範囲の量で存在していてもよい。
【0039】
組成物(C)は、補強剤、強化剤、可塑剤、着色剤、顔料、帯電防止剤、染料、潤滑剤、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、造核剤、及び酸化防止剤からなる群から選択される1種の成分も含有していてもよい。
【0040】
幅広い選択肢の補強剤(補強繊維又はフィラーとも呼ばれる)を、本発明の組成物に添加することができる。これらは、繊維及び粒子状の補強剤から選択することができる。繊維状補強フィラーは、平均長さが幅と厚さの両方よりもかなり大きい、長さ、幅及び厚さを有する材料であると本明細書ではみなされる。一般に、そのような材料では、長さと最大の幅及び厚さとの間の平均比として定義されるアスペクト比が、少なくとも5、少なくとも10、少なくとも20、又は少なくとも50である。
【0041】
補強フィラーは、鉱物フィラー(タルク、マイカ、カオリン、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム等)、ガラス繊維、炭素繊維、合成ポリマー繊維、アラミド繊維、アルミニウム繊維、チタン繊維、マグネシウム繊維、炭化ホウ素繊維、ロックウール繊維、スチール繊維、及びウォラストナイトから選択されてもよい。
【0042】
繊維状フィラーの中でもガラス繊維が好ましく、これらには、Additives for Plastics Handbook,2nd edition,John Murphyの5.2.3章、43〜48頁に記載されているチョップドストランドA−、E−、C−、D−、S−、及びR−ガラス繊維が含まれる。好ましくは、フィラーは繊維状フィラーから選択される。高温用途に耐えることができる補強繊維がより好ましい。
【0043】
補強剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として、15重量%超、20重量%超、25重量%超、又は30重量%超の合計量で組成物(C)の中に存在していてもよい。補強剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として、65重量%未満、60重量%未満、55重量%未満、又は50重量%未満の合計量で組成物(C)の中に存在していてもよい。
【0044】
補強フィラーは、例えばポリアミド組成物(C)の総重量を基準として、20〜60重量%、例えば30〜50重量%の範囲の量で組成物(C)の中に存在していてもよい。
【0045】
本発明の組成物(C)は、強化剤も含有していてもよい。強化剤は、一般的には、低いガラス転移温度(T
g)のポリマーであり、例えば室温未満、0℃未満、更には−25℃未満のT
gを有する。その低いT
gの結果として、強化剤は典型的には室温でエラストマー性である。強化剤は官能基化されたポリマー主鎖であってもよい。
【0046】
強化剤のポリマー主鎖は、ポリエチレン及びそれらのコポリマー、例えばエチレン−ブテン;エチレン−オクテン;ポリプロピレン及びそれらのコポリマー;ポリブテン;ポリイソプレン;エチレン−プロピレン−ゴム(EPR);エチレン−プロピレン−ジエンモノマーゴム(EPDM);エチレン−アクリレートゴム;ブタジエン−アクリロニトリルゴム、エチレン−アクリル酸(EAA)、エチレン−ビニルアセテート(EVA);アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム(ABS)、ブロックコポリマースチレンエチレンブタジエンスチレン(SEBS);ブロックコポリマースチレンブタジエンスチレン(SBS);メタクリレート−ブタジエン−スチレン(MBS)タイプのコア−シェルエラストマー、又は上述のものの1種以上の混合物;を含むエラストマー主鎖から選択することができる。
【0047】
強化剤が官能基化されている場合、主鎖の官能基化は、官能基化を含むモノマーの共重合、又は追加的な成分を用いたポリマー主鎖のグラフト化により行うことができる。
【0048】
官能基化された強化剤の具体的な例は、特には、エチレンとアクリル酸エステルとグリシジルメタクリレートとのターポリマー、エチレンとブチルエステルアクリレートとのコポリマー;エチレンとブチルエステルアクリレートとグリシジルメタクリレートとのコポリマー;エチレン−無水マレイン酸コポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたEPR;無水マレイン酸でグラフトされたスチレン−マレイミドコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたSEBSコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたスチレン−アクリロニトリルコポリマー;無水マレイン酸でグラフトされたABSコポリマーである。
【0049】
強化剤は、組成物(C)の総重量を基準として、1重量%超、2重量%超、又は3重量%超の合計量で組成物(C)の中に存在していてもよい。強化剤は、ポリマー組成物(C)の総重量を基準として、30重量%未満、20重量%未満、15重量%未満、又は10重量%未満の合計量で組成物(C)の中に存在していてもよい。
【0050】
組成物(C)は、可塑剤、着色剤、顔料(例えばカーボンブラックやニグロシンなどの黒色顔料)、帯電防止剤、染料、潤滑剤(例えば直鎖低密度ポリエチレン、ステアリン酸カルシウム若しくはマグネシウム、又はモンタン酸ナトリウム)、熱安定剤、光安定剤、難燃剤、造核剤、及び酸化防止剤などの、当該技術分野で一般的に使用されている他の従来の添加剤も含有していてもよい。
【0051】
組成物(C)は、本発明の(コ)ポリアミドとは異なる1種以上の他のポリマー、好ましくは(コ)ポリアミドも含有していてもよい。特には、脂肪族ポリアミド、半芳香族ポリアミド、及び、より一般的には、芳香族若しくは脂肪族飽和二酸と脂肪族飽和若しくは芳香族一級ジアミン、ラクタム、アミノ酸又はこれらの異なるモノマーの混合物との、重縮合によって得られるポリアミドなどの、半結晶性若しくはアモルファスのポリアミドを挙げることができる。
【0052】
組成物(C)の合成
本発明は、更に、(コ)ポリアミドと特定の成分(例えばフィラー、強化剤、安定化剤、及び任意の他の任意選択的な添加剤)とを溶融混合することを含む、上で詳述した組成物(C)の製造方法にも関する。
【0053】
本発明に関してのポリマー成分及び非ポリマー成分を混合するために、任意の溶融混合方法を用いてもよい。例えば、一軸スクリュー押出機若しくは二軸スクリュー押出機、撹拌機、一軸スクリュー若しくは二軸スクリューニーダー、又はバンバリーミキサーなどの溶融ミキサーにポリマー成分及び非ポリマー成分を供給してもよく、添加工程は、全ての成分の同時の添加であってもバッチ式での段階的な添加であってもよい。ポリマー成分及び非ポリマー成分がバッチ式に徐々に添加される場合には、ポリマー成分及び/又は非ポリマー成分の一部が最初に添加され、次に、十分に混合された組成物が得られるまで、その後に添加される残りのポリマー成分及び非ポリマー成分と溶融混合される。補強剤が長い物理的形状(例えば、長いガラス繊維)を示す場合、延伸押出成形を使用して補強された組成物を調製してもよい。
【0054】
物品
本発明は、上述した本発明の(コ)ポリアミド又は上述した本発明の(コ)ポリアミド組成物を含む物品にも関する。
【0055】
ある実施形態によれば、本発明の組成物(C)の本発明の(コ)ポリアミドを含む物品は乾燥状態で提供され、これは物品の総重量に対して0.5重量%未満、又は0.2重量%未満の含水率を有する。
【0056】
物品は、特には、例えば地中の圧力を上昇させるために坑井の中に挿入されるオイル及びガスの抽出で使用される破砕ボール(fracking ball、facturing ball、又はfrac ball)であってもよい。これらは様々な条件に置かれ、特に高い温度及び圧力に耐える必要がある。破砕ボールは、地下層のゾーンにおける亀裂の形成方法において使用することができる。
【0057】
本発明の(コ)ポリアミド又は(コ)ポリアミド組成物から製造される物品は、例えば吸収性縫合糸又は溶解性移植片として、医療分野で使用することもできる。
【0058】
物品は、本発明の(コ)ポリアミド又は(コ)ポリアミド組成物から、例えば押出、射出成形、ブロー成形、回転成形、又は圧縮成形などの、熱可塑性樹脂に適した任意の方法によって成形することができる。
【0059】
本発明の(コ)ポリアミド又は(コ)ポリアミド組成物から製造される物品は、3D印刷法(例えば熱溶解積層法)において使用される糸又はフィラメントの形態であってもよい。
【0060】
(コ)ポリアミド、組成物(C)、及び物品の使用
本発明の(コ)ポリアミド又は(コ)ポリアミド組成物は、3D部品を印刷するための支持材料として使用することができる。支持材料は、3D印刷時に高温部品材料に必要とされるより高い運転条件で縦方向及び/又は横方向に支えるために必要とされる(例えばPEEKは約360〜400℃の処理温度を必要とする)。3D印刷支持材料は高温耐性を示し、そのため高温運転条件下で軟化しない。支持材料は、水分に曝された際に、十分な膨潤及び変形が可能な吸水挙動も示す。高い運転温度での熱安定性及び印刷された部品から取り外すための十分な水への溶解性を示す本発明の(コ)ポリアミドは、3D印刷の取り外し可能な支持材料を作製するために使用される材料として特に適している。
【0061】
本発明の(コ)ポリアミド又は(コ)ポリアミド組成物は、例えば、高い運転温度での耐熱性、及び例えば抽出後のプロセス中に必要とされる場合に溶解させるべき水の中への十分な溶解性を示す物品を作製するためなどの、オイル及びガスの抽出用途において使用することができる。
【0062】
本発明の(コ)ポリアミド又は(コ)ポリアミド組成物は、例えば高分子繊維(例えばポリアミド繊維)又は炭素繊維を処理/被覆するためなどの、サイジング剤として使用することもできる。
【0063】
本発明の(コ)ポリアミド又は(コ)ポリアミド組成物は、例えば糸又は埋め込み可能な物品の形態などの、例えば吸収性材料又は溶解性材料を作製するために、医療分野においても使用することができる。
【0064】
参照により本明細書に組み込まれる特許、特許出願、及び刊行物のいずれかの開示が用語を不明瞭にさせ得る程度まで本出願の記載と矛盾する場合は、本記載が優先するものとする。
【実施例】
【0065】
原材料
次式で示されるJeffamine(登録商標)EDR−148ポリエーテルアミン、2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン):
H
2N−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
2−NH
2
次式で示されるJeffamine(登録商標)EDR−176ポリエーテルアミン、エチレングリコールビス(3−アミノプロピル)エーテル:
H
2N−(CH
2)
3−O−(CH
2)
2−O−(CH
2)
3−NH
2
次式で示されるJeffamine(登録商標)D−230ポリエーテルアミン、ポリ(プロピレングリコール)ビス(2−アミノプロピルエーテル):
(式中、xは2.5である)。
テレフタル酸(Flint Hills Resources)
1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(Eastman Chemical Products)
アジピン酸(Koch Industries)
セバシン酸(Aldrich Chemical Company)
イソフタル酸(Flint Hills Resources)
5−ヒドロキシイソフタル酸(Aldrich Chemical Company)
5−スルホイソフタル酸、ナトリウム塩(Aldrich Chemical Company)
5−スルホイソフタル酸、モノリチウム塩(Aldrich Chemical Company)
【0066】
(コ)ポリアミドの合成
全ての(コ)ポリアミドC1〜C3及び1〜8は、スターラーと、圧力調整バルブを装着した蒸留ラインと、を備えた電気加熱式反応器の中で同様のプロセスに従って合成した。組成物1については、反応器に9.08g(0.053モル)の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、7.86g(0.053モル)の2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)、0.0052gのH
3PO
3、及び11gの脱イオン水を入れた。反応器を密封し、圧力開放バルブを17barに設定し、反応混合物を260℃で45分間加熱した。内部温度を300℃まで上げながら圧力を大気圧まで徐々に低下させた。反応混合物を300℃で15分間保持し、次いで1時間以内に200℃まで冷却し、その後室温まで冷却した。
【0067】
組成物9は、ダブルヘリコンリボン攪拌機を備えたジャケット付きステンレス鋼製の反応器の中で製造し、Therminol66を循環させることによって加熱した。反応器に、1.876kg(12.66モル)の2,2’−(エチレンジオキシ)ビス(エチルアミン)、1.525kg(8.857モル)の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、0.555kg(3.798モル)のアジピン酸、及び1.726kgの水を入れ、窒素でパージし、圧力開放バルブを17barに設定して220℃に加熱した。17bar及び213℃に到達した後、温度を100分以内に280℃まで上昇させた。その後、圧力を大気圧まで低下させ、35分かけて温度を295℃まで上昇させた。真空を10分かけて導入し、次いで反応混合物を400mbarで20分間保持した。ドライアイス上で冷却されているステンレス鋼製のトレーの上にポリマーを取り出して急冷することで、3.3kgのポリマーを得た。固化したポリマーを粉砕し、90℃で16時間、真空下で乾燥させた。ポリマーを、DSM XPlore(登録商標)ミニコンパウンダー及び微細成形装置を使用してレオロジーディスクへと成形した。
【0068】
試験
融点(Tm)
様々な(コ)ポリアミドの融点は、20℃/分の加熱及び冷却速度を用いて、ASTM D3418に従って示差走査熱量分析を使用して測定した。各DSC試験について3回のスキャン:330℃までの最初の加熱、引き続き50℃までの最初の冷却、引き続き330℃までの2回目の加熱;を使用した。Tmは、融解の吸熱のピーク温度として2回目の加熱から決定した。本発明及び比較例の(コ)ポリアミドについての融点は表1及び2で一覧にされている。
【0069】
溶解性試験
溶解性は、溶液の透明性によって、又は微粒子の懸濁液としての顕著なポリマー分散液によって示した。
【0070】
溶解性試験は、3種類の溶媒:蒸留水、0.1MのH
3PO
4を添加した水、及び0.1MのNaOHを添加した水;の中で行った。0.05gのサンプルを、3種の溶媒のうちの1種10mLと共に、還流冷却管及び磁気撹拌子を備えたシンチレーションバイアルの中に入れた。室温で30分間撹拌を行った後に、目視で検査した。その後、温度を10℃上げてから目視検査を行った。これらの工程を、サンプルが完全に溶解する、又は加熱ブロック温度が110℃に到達するまで繰り返した。溶液が透明になるあるいは、微細な懸濁粒子で濁った場合に溶解が完了したとみなした。
【0071】
結果
【0072】
【0073】
【0074】
テレフタル酸とEDR−148から合成されたC1のポリアミドは、蒸留水中、大気圧下にて、110℃で、5g/Lで100%の溶解率を示したが、融点は260℃未満である。1,4−CHDAとEDR−176から合成されたC2のポリアミドは、260℃未満の融点を示す。1,4−CHDAとD−230から合成されたC3のポリアミドは、260℃よりも著しく低い融点を示し、また大気圧下にて、110℃で、5g/Lで蒸留水中に不溶である。ポリアミドC1、C2、及びC3は、例えばオイル及びガス抽出プロセス(例えば破砕ボール)などの水分に曝された際に十分な膨潤又は変形を必要とする高温用途に適しておらず、又は三次元(3D)部品を印刷するために使用される支持材料として適していない。他方で、ポリアミド1〜9は、260℃より高い融点と、水(蒸留水、0.1MのH
3PO
4を添加した水、及び0.1MのNaOHを添加した水)の中への110℃以下での十分な溶解性との両方を示す。実施例1及び7のポリアミドは、110℃で80重量%溶解できた。実施例1〜9の全てのポリアミドは、前述の用途に良く適している。