(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリオレフィン樹脂(A)が、エチレン性不飽和カルボン酸又はその酸無水物のうちから選ばれる1種以上で変性されたポリオレフィン樹脂を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の接着剤。
前記ポリオレフィン樹脂(A)は、JIS K 7210−1:2014に準拠し、温度130℃、荷重2.16kgで測定したメルトマスフローレイトが2〜50g/10分である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の接着剤。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載の接着剤層に用いられている変性ポリオレフィン樹脂は、接着剤の塗布や養生の際に、湿度や積層体の各層の厚さ等に起因する接着剤の含水分量の変動の影響を受けやすいものである。また、上記特許文献1及び2に記載の接着剤においては、イソシアネート化合物としては、具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート又はそのポリマー体の1種類のみを用いたものしか開示されていない。このような接着剤では、安定した接着性を得ることが困難であり、積層体の耐電解液性及び耐熱性が必ずしも十分であるとは言えなかった。
【0007】
したがって、電池外装材に用いられる接着剤には、良好な接着性を発現することができ、かつ、耐電解液性及び耐熱性がより優れた積層体を得ることができるものであることが求められている。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、金属箔と樹脂フィルムとのラミネート用接着剤として、良好な接着性を安定して発現することができ、しかも、耐電解液性及び耐熱性がより優れた積層体を得ることができる接着剤を提供することを目的とするものである。
また、本発明は、耐電解液性及び耐熱性に優れた積層体、電池外装材、並びに電池ケース及びその製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ポリオレフィン樹脂及びイソシアネート化合物を含む接着剤において、イソシアネート化合物の種類に着目し、特定の複数種類のイソシアネート化合物を用いることにより、金属箔と樹脂フィルムとのラミネートの際、良好な接着性が得られ、積層体の耐電解液性及び耐熱性を向上させることができることを見出したことに基づくものである。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の[1]〜[16]を提供するものである。
[1]金属箔と樹脂フィルムとのラミネート用接着剤であって、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂(A)、及びポリイソシアネート化合物(B)を含み、前記ポリイソシアネート化合物(B)が、飽和脂肪族ポリイソシアネートの多量体(B1)、飽和脂環式ポリイソシアネートの多量体(B2)、及び芳香族ポリイソシアネートの多量体(B3)を含む、接着剤。
[2]前記飽和脂肪族ポリイソシアネートの多量体(B1)が、飽和脂肪族ポリイソシアネートのアロファネート化多量体、及び飽和脂肪族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体のうちから選ばれる1種以上を含む、上記[1]に記載の接着剤。
[3]前記飽和脂環式ポリイソシアネートの多量体(B2)が、飽和脂環式ポリイソシアネートのアロファネート化多量体、及び飽和脂環式ポリイソシアネートのイソシアヌレート体のうちから選ばれる1種以上を含む、上記[1]又は[2]に記載の接着剤。
[4]前記芳香族ポリイソシアネートの多量体(B3)が、芳香族ポリイソシアネートのアロファネート化多量体、芳香族ポリイソシアネートのイソシアヌレート体、及びポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートのうちから選ばれる1種以上を含む、上記[1]〜[3]のいずれか1項に記載の接着剤。
[5]前記飽和脂肪族ポリイソシアネートの多量体(B1)、前記飽和脂環式ポリイソシアネートの多量体(B2)、及び前記芳香族ポリイソシアネートの多量体(B3)の各イソシアナト基のモル比が、3〜20:1〜6:1である、上記[1]〜[4]のいずれか1項に記載の接着剤。
[6]前記ポリオレフィン樹脂(A)が、プロピレン、エチレン及びブテンのうちから選ばれる1種以上の単量体単位を含む、上記[1]〜[5]のいずれか1項に記載の接着剤。
[7]前記ポリオレフィン樹脂(A)が、エチレン性不飽和カルボン酸又はその酸無水物のうちから選ばれる1種以上で変性されたポリオレフィン樹脂を含む、上記[1]〜[6]のいずれか1項に記載の接着剤。
[8]前記ポリオレフィン樹脂(A)は、JIS K 7210−1:2014に準拠し、温度130℃、荷重2.16kgで測定したメルトマスフローレイトが2〜50g/10分である、上記[1]〜[7]のいずれか1項に記載の接着剤。
[9]前記ポリオレフィン樹脂(A)のカルボキシル基1モルに対する前記ポリイソシアネート化合物(B)のイソシアナト基のモル比率が、0.3〜30である、上記[1]〜[8]のいずれか1項に記載の接着剤。
[10]金属カルボン酸塩(C)をさらに含む、上記[1]〜[9]のいずれか1項に記載の接着剤。
【0011】
[11]金属箔と樹脂フィルムとが、上記[1]〜[10]のいずれか1項に記載の接着剤を用いてラミネートされた積層体。
[12]前記金属箔がアルミニウム箔であり、前記樹脂フィルムが熱融着性樹脂フィルムである、上記[11]に記載の積層体。
[13]前記金属箔の厚さが10〜100μmであり、前記樹脂フィルムの厚さが9〜100μmである、上記[11]又は[12]に記載の積層体。
【0012】
[14]上記[11]〜[13]のいずれか1項に記載の積層体が用いられている、電池外装材。
[15]上記[14]に記載の電池外装材が用いられている、電池ケース。
[16]上記[14]に記載の電池外装材を深絞り加工又は張り出し加工により成形する工程を有する、電池ケースの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の接着剤によれば、金属箔と樹脂フィルムとのラミネートにおいて、良好な接着性を安定して発現することができ、耐電解液性及び耐熱性に優れた積層体を得ることができる。このため、該接着剤を用いて形成される積層体は、各層の接着性が良好であり、耐電解液性及び耐熱性に優れており、電池外装材に好適である。
したがって、このような電池外装材を用いた電池ケースは、寿命の長い安全な二次電池の製造にも寄与し得るものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書中の「x〜y」との数値範囲の表記は、「x以上y以下」であることを意味する。また、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートのうちのいずれか1種以上を指す。また、「単量体単位」とは、重合により樹脂を得る際の原料単量体を指す。
【0015】
[接着剤]
本発明の接着剤は、金属箔と樹脂フィルムとのラミネート用接着剤である。そして、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂(A)、及びポリイソシアネート化合物(B)を含み、ポリイソシアネート化合物(B)が、飽和脂肪族ポリイソシアネートの多量体(B1)、飽和脂環式ポリイソシアネートの多量体(B2)、及び芳香族ポリイソシアネートの多量体(B3)を含むことを特徴としている。
接着剤の主剤であるカルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂に対して、硬化剤であるポリイソシアネート化合物として、上記のような所定の複数種類のものを併用することにより、金属箔と樹脂フィルムとのラミネートにおいて、接着性を向上させることができ、耐電解液性及び耐熱性に優れた積層体を得ることができる。
【0016】
(ポリオレフィン樹脂(A))
本発明の接着剤の構成成分であるポリオレフィン樹脂(A)は、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂であれば、特に限定されるものではない。
【0017】
ポリオレフィン樹脂(A)におけるポリオレフィン骨格の単量体単位としては、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、4−メチル−1−ペンテン等のモノオレフィン;シクロペンテン、シクロヘキセン等の脂環族オレフィン;1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、ジビニルベンゼン、1,3−シクロペンタジエン、1,3−シクロヘキサジエン、5−ビニル−2−ノルボルネン等の鎖状又は環状のポリエン等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、被接着物である樹脂フィルム、特に、ポリオレフィン樹脂フィルムに対する接着性の観点から、エチレン、プロピレン及びブテンが好ましい。
【0018】
ポリオレフィン樹脂(A)が有するカルボキシル基、すなわち、ポリオレフィンに結合する置換基であるカルボキシル基は、カルボン酸由来のものであっても、カルボン酸無水物由来のものであってもよい。
カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂(A)としては、変性されたポリオレフィン樹脂が挙げられる。このような変性ポリオレフィン樹脂としては、例えば、カルボキシル基を有する単量体をポリオレフィンにグラフト重合させたグラフト重合体、カルボキシル基を有する単量体とオレフィンとの共重合体、また、前記グラフト重合体の部位と前記共重合体の部位とを有するもの等が挙げられる。
【0019】
上記のような変性ポリオレフィン樹脂に用いられるカルボキシル基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸等のエチレン性不飽和カルボン酸;無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸等のエチレン性不飽和カルボン酸無水物;(メタ)アクリル酸β−カルボキシエチル等のカルボキシル基含有エチレン性不飽和カルボン酸エステル等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、エチレン性不飽和カルボン酸又はその酸無水物が好ましく、中でも、エチレン性不飽和カルボン酸無水物がより好ましく、さらに好ましくは無水マレイン酸が用いられる。
【0020】
ポリオレフィン樹脂(A)は、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂であるが、これを構成する単量体単位としては、カルボキシル基を有しないエチレン性不飽和カルボン酸エステルを含んでいてもよい。カルボキシル基を有しないエチレン性不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のカルボキシル基を有しないアルコールとのエステル化物が挙げられ、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸へキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0021】
ポリオレフィン樹脂(A)は、JIS K 7210−1:2014に準拠して、温度130℃、荷重2.16kgの条件で測定したメルトマスフローレイト(MFR:melt mass-flow rate)が、2〜50g/10分であることが好ましい。MFRは、3〜45g/10分であることがより好ましく、さらに好ましくは8〜40g/10分である。
MFRが2g/10分以上であれば、該接着剤により形成される接着剤層の接着性が、電解液に接した場合であっても低下し難いため好ましい。また、MFRが50g/10分以下であれば、該接着剤の塗工性が良好である。
【0022】
ポリオレフィン樹脂(A)の酸価は、カルボキシル基の含有量の指標となるものであり、接着剤の接着性の観点から、3〜60mgKOH/gであることが好ましく、より好ましくは4〜30mgKOH/g、さらに好ましくは5〜15mgKOH/gである。
酸価が3mgKOH/g以上であれば、該接着剤により形成される接着剤層の接着性が、電解液に接した場合であっても低下し難いため好ましい。また、60mgKOH/g以下であれば、該接着剤の塗工性が良好である。
なお、本明細書中における「酸価」とは、JIS K 0070:1992に準拠して測定した値を指す。
【0023】
(ポリイソシアネート化合物(B))
本発明の接着剤の構成成分であるポリイソシアネート化合物(B)は、ポリオレフィン樹脂(A)に対する硬化剤として作用するものであり、飽和脂肪族ポリイソシアネートの多量体(B1)、飽和脂環式ポリイソシアネートの多量体(B2)、及び芳香族ポリイソシアネートの多量体(B3)の3種類を含むものである。
ポリイソシアネート化合物として、このような3種類の多量体を用いることにより、金属箔と樹脂フィルムとのラミネートの際、耐電解液性及び耐熱性に優れた積層体を得ることができる。
【0024】
ポリイソシアネート化合物(B)は、(B1)〜(B3)の多量体以外に、例えば、(B1)〜(B3)の多量体の構成単位である単量体等の他のイソシアネート化合物を含んでもよい。この場合、ポリイソシアネート化合物(B)中の(B1)〜(B3)の多量体の合計含有量は、これらの多量体によって、金属箔と樹脂フィルムとのラミネートの際、耐電解液性に優れた積層体を得る観点から、80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、よりさらに好ましくは98質量%以上である。
【0025】
飽和脂肪族ポリイソシアネートの多量体(B1)としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネートの多量体が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
多量体の形態としては、例えば、アロファネート化多量体、イソシアヌレート体、ビウレット変性物等が挙げられる。これらのうち、アロファネート化多量体及びイソシアヌレート体が好ましく、より好ましくはイソシアヌレート体が用いられる。
【0026】
飽和脂環式ポリイソシアネートの多量体(B2)としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジイソシアネート等の飽和脂環式ジイソシアネートの多量体が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
多量体の形態としては、例えば、アロファネート化多量体、イソシアヌレート体、ビウレット変性物等が挙げられる。これらのうち、アロファネート化多量体及びイソシアヌレート体が好ましく、より好ましくはイソシアヌレート体が用いられる。
【0027】
芳香族ポリイソシアネートの多量体(B3)としては、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(モノメリックMDI)、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシリレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートの多量体や、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(ポリメリックMDI)が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。なお、本発明においては、「芳香族ポリイソシアネート」とは、構造式中のいずれかに芳香環を有するポリイソシアネートを指す。
多量体の形態としては、例えば、アロファネート化多量体、イソシアヌレート体、ビウレット変性物、ポリメリックMDI等が挙げられる。これらのうち、アロファネート化多量体、イソシアヌレート体及びポリメリックMDIが好ましく、より好ましくはポリメリックMDIである。なお、ポリメリックMDIは、モノメリックMDIを含むポリメリックMDI混合物としても好適に用いられる。
【0028】
ポリイソシアネート化合物(B)中の飽和脂肪族ポリイソシアネートの多量体(B1)、飽和脂環式ポリイソシアネートの多量体(B2)、及び芳香族ポリイソシアネートの多量体(B3)の配合比は、各多量体のイソシアナト基のモル比が、3〜20:1〜6:1であることが好ましく、より好ましくは5〜20:1.5〜6:1、さらに好ましくは8〜12:2〜4:1である。
(B1)〜(B3)の各多量体をこのような配合比とすることにより、該接着剤により形成される接着剤層において、飽和脂肪族ポリイソシアネートの多量体(B1)による優れた接着性を保持しつつ、飽和脂環式ポリイソシアネートの多量体(B2)及び芳香族ポリイソシアネートの多量体(B3)によって、耐電解液性及び耐熱性をバランスよく向上させることができる。
【0029】
ポリイソシアネート化合物(B)のイソシアナト基は、ポリオレフィン樹脂(A)のカルボキシル基1モルに対して、モル比率(以下、「NCO/COOH比」と表記する。)が0.3〜30であることが好ましく、より好ましくは5〜25、さらに好ましくは10〜20である。
NCO/COOH比が0.3以上であれば、該接着剤により形成される接着剤層の接着性、特に樹脂フィルムに対する接着性が良好となり、さらに、10以上であれば、前記接着剤層の耐熱性もより優れたものとなる。また、NCO/COOH比が30以下であれば、該接着剤により形成される接着剤層の接着性が、電解液に接した場合であっても低下し難いため好ましい。
【0030】
なお、ポリオレフィン樹脂(A)のカルボキシル基のモル数は、上述した酸価から求めることができ、また、ポリイソシアネート化合物(B)のイソシアナト基のモル数は、JIS K 6806:2003に準拠した方法で求めることができる。
また、ポリオレフィン樹脂(A)の構成単量体からNCO/COOH比を算出する場合においては、ポリオレフィン樹脂(A)がカルボン酸無水物由来のカルボキシ基を有するときは、該カルボン酸無水物1モルがカルボキシル基2モルに相当するものとみなして計算する。
【0031】
(金属カルボン酸塩(C))
本発明の接着剤は、ポリオレフィン樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)以外に、金属カルボン酸塩(C)を含んでいてもよい。
金属カルボン酸塩(C)は、ポリオレフィン樹脂(A)とポリイソシアネート化合物(B)との反応を促進する作用を奏するものであり、該接着剤により形成される接着剤層の接着性の発現の促進の観点から、接着剤中に配合することがより好ましい。
【0032】
金属カルボン酸塩(C)としては、例えば、金属酢酸塩、金属ヘキサン酸塩、金属2−エチルヘキサン酸塩等の金属オクタン酸塩、金属ネオデカン酸塩、金属ラウリン酸塩、金属ステアリン酸塩、金属オレイン酸塩等の金属カルボン酸塩;金属アセチルアセトナート等が挙げられる。金属カルボン酸塩(C)の金属としては、周期表の第7族、第12族及び第14族のうちから選ばれる1種以上の金属であることが好ましい。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、該接着剤により形成される接着剤層が電解液に接した場合の接着性の観点から、スズ、亜鉛及びマンガンのうちのいずれかのカルボン酸塩並びにアセチルアセトナートがより好ましい。
具体的には、ネオデカン酸亜鉛、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジオクチルスズ、二酢酸ジオクチルスズ、ビス(ネオデカン酸)亜鉛、ビス(2−エチルヘキサン酸)亜鉛、ジステアリン酸亜鉛、亜鉛(II)アセチルアセトナート、ビス(2−エチルヘキサン酸)マンガン等が挙げられる。これらのうち、該接着剤により形成される接着剤層の接着性、耐電解液性及び耐熱性のバランスの観点から、ジラウリン酸ジブチルスズ、ジラウリン酸ジオクチルスズがより好ましい。
【0033】
接着剤中の金属カルボン酸塩(C)の配合量は、特に限定されるものではないが、ポリオレフィン樹脂(A)100質量部に対して、金属成分換算で0.0001〜5質量部であることが好ましく、より好ましくは0.0005〜3質量部、さらに好ましくは0.001〜1質量部である。
0.0001質量部以上であれば、該接着剤により形成される接着剤層が電解液に接した場合においても、より優れた接着性を得られる。また、5質量部以下であれば、該接着剤により形成される接着剤層の常態で優れた接着性が得られる。
なお、金属カルボン酸塩(C)は、ポリオレフィン樹脂(A)に、その製造時に添加してもよく、あるいはまた、接着剤の調製時に添加してもよい。
【0034】
<溶剤(D)>
本発明の接着剤は、粘性の調整や取り扱い性等の観点から、必要に応じて、溶剤(D)を含んでいてもよい。溶剤(D)は、ポリオレフィン樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)及び金属カルボン酸塩(C)を溶解又は分散可能なものであれば、特に限定されるものではない。例えば、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式系有機溶剤;n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル等のエステル系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン等のケトン系有機溶剤、その他ミネラルスピリット等が挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらのうち、ポリオレフィン樹脂(A)の溶解性の観点から、トルエン、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、メチルシクロヘキサン及びメチルエチルケトンが好ましく、トルエン、酢酸エチル及び酢酸ブチルがより好ましい。なお、ミネラルスピリットは、金属カルボン酸塩(C)の市販品に含まれていることがある。
【0035】
接着剤中の溶剤(D)の含有量は、ポリオレフィン樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、金属カルボン酸塩(C)及び溶剤(D)の合計100質量%中、30〜95質量%であることが好ましく、より好ましくは40〜90質量%、さらに好ましくは50〜90質量%である。
含有量が30質量%以上であれば、該接着剤の塗工性が良好となる。また、95質量%以下であれば、該接着剤を用いてラミネートされた積層体の厚さ制御性が良好である。
【0036】
(添加剤)
本発明の接着剤は、ポリオレフィン樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、金属カルボン酸塩(C)及び溶剤(D)以外に、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲内で、任意の添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、反応促進剤、粘着付与剤、可塑剤等が挙げられる。これらのうち、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
接着剤が添加剤を含む場合、ポリオレフィン樹脂(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、金属カルボン酸塩(C)及び溶剤(D)の合計含有量は、接着剤におけるこれらの(A)〜(D)の各成分の働きが十分に発揮されるようにする観点から、80質量%以上であることが好ましく、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、よりさらに好ましくは98質量%以上である。
【0037】
反応促進剤としては、金属カルボン酸塩(C)と同様の機能を有する化合物として、例えば、2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、p−トリルジエタノールアミン等の第三級アミンが挙げられる。これらは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。この反応促進剤は、金属カルボン酸塩(C)に代えて用いてもよく、あるいはまた、金属カルボン酸塩(C)と併用してもよい。
【0038】
粘着付与剤は、特に限定されるものではない。例えば、ポリテルペン系樹脂、ロジン系樹脂等の天然系のもの;ナフサの熱分解より副生する留分である脂肪族(C5)系樹脂、芳香族(C9)系樹脂、C5とC9との共重合系樹脂、脂環族系樹脂等の石油系のもの等が挙げられる。また、これらの樹脂の二重結合部分を水素化した水添樹脂も挙げられる。これらは1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0039】
可塑剤も、特に限定されるものではなく、そのうちの1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。例えば、ポリイソプレン、ポリブテン等の液状ゴム;プロセスオイル等、また、ポリオレフィン樹脂(A)以外のポリオレフィン樹脂、その他の熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー等が挙げられる。熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマーとしては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−エチルアクリレート共重合樹脂、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)共重合樹脂、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレン(SEPS)共重合樹脂等が挙げられる。
【0040】
[積層体]
本発明の積層体は、金属箔と樹脂フィルムとが前記接着剤を用いてラミネートされたものである。すなわち、金属箔と樹脂フィルムとが前記接着剤で接着され、前記金属箔及び前記樹脂フィルムの両方の接着面には、前記接着剤により形成された接着剤層が接している。
なお、金属箔同士や樹脂フィルム同士等の接着、すなわち、金属箔と樹脂フィルムとの間以外の接着には、前記接着剤以外の他の接着剤を用いてもよいが、前記接着剤は、これらの間の接着においても、良好な接着性を発現することができる。
【0041】
ラミネートの方法としては、ヒートラミネーション方式やドライラミネーション方式等の公知の方法を用いることができる。
ヒートラミネーション方式とは、溶剤(D)を含まない接着剤を、被接着物の接着面にて加熱溶融、又は被接着物とともに加熱押し出しする方式であり、これにより、金属箔と樹脂フィルムとの間に介在させて接着剤層を形成するものである。
一方、ドライラミネーション方式とは、溶剤(D)を含む接着剤を、被接着物の接着面に塗布し、乾燥させた後、他方の被接着物の接着面と重ね合せて圧着する方式であり、これにより、金属箔と樹脂フィルムとの間に介在させて接着剤層を形成するものである。
【0042】
金属箔には、一般に、純アルミニウム系又はアルミニウム−鉄系合金のO材(軟質材)等のアルミニウム箔が使用され、このようなアルミニウム箔が好適に用いられる。
金属箔の厚さは、加工性及び積層体における酸素や水分の透過を防止するバリア性の観点から、10〜100μmであることが好ましく、より好ましくは30〜50μm、さらに好ましくは35〜50μm、よりさらに好ましくは40〜50μmである。
厚さが10μm以上であれば、成形時における金属箔の破断や、ピンホールの発生により該積層体を酸素や水分が透過することを十分に抑制することができる。また、100μm以下であれば、積層体の総厚さや質量等の適度な調整を行いやすい。
なお、金属箔には、樹脂フィルムとの接着性向上や耐食性向上等のため、シランカップリング剤やチタンカップリング剤等のアンダーコート処理;クロメート処理等の化成処理を施しておくことが好ましい。
【0043】
樹脂フィルムは、ヒートシール性を有し、優れた耐電解液性を得る観点から、その材質としては、熱融着性樹脂であることが好ましく、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン−アクリレート共重合体、アイオノマー樹脂等が挙げられる。樹脂フィルムは、単層であってもよく、また、共押出し等による複数層で構成されていてもよい。複数層の場合、各層の材質は、同一であっても、各層ごとに異なっていてもよい。
樹脂フィルムの厚さは、9〜100μmであることが好ましく、より好ましくは20〜90μm、さらに好ましくは40〜80μmである。
厚さが9μm以上であれば、ラミネートにより金属箔との十分な接着性が得られ、フィルム自体の強度も十分であり、優れた耐電解液性が得られる。また、100μm以下であれば、良好な成形性が得られる。
【0044】
積層体は、その用途は特に限定されないが、例えば、包装材として好適に用いることができる。被包装物としては、例えば、酸、アルカリ、有機溶媒等が含まれる液状物が挙げられる。具体的には、厚づけパテ、薄づけパテ等のパテ;油性塗料等の塗料;クリヤーラッカー等のラッカー;溶剤系の自動車用コンパウンド;リチウムイオン電池等の二次電池の電解液等が挙げられる。
【0045】
[電池外装材]
前記積層体は、電池外装材に好適に用いることができる。上述したように、前記積層体は、リチウムイオン電池等の二次電池の電解液に対する耐電解液性に優れていることから、電池外装材は、前記積層材の好適な用途である。
電池外装材は、金属箔の外側面に樹脂フィルムが設けられた構成を有する積層体であることが好ましい。電池外装材は、必要に応じて、機械的強度や耐電解液性等をより向上させる観点から、前記積層体の層構成以外に、中間樹脂層や外層、さらにコート層等を有する構成であってもよい。例えば、下記(1)〜(4)に示すような層構成が挙げられる。なお、下記例示において、接着剤層とは、本発明の接着剤により形成された層を指す。
(1)外層/金属箔/接着剤層/樹脂フィルム
(2)外層/中間樹脂層/金属箔/接着剤層/樹脂フィルム
(3)コート層/外層/金属箔/接着剤層/樹脂フィルム
(4)コート層/外層/中間樹脂層/金属箔/接着剤層/樹脂フィルム
【0046】
外層は、通常、樹脂フィルムにより形成され、耐熱性、成形性及び絶縁性等の観点から、例えば、ポリアミド(ナイロン)樹脂、ポリエステル樹脂等の延伸フィルム等が好適に用いられる。
外層の厚さは、9〜50μmであることが好ましく、より好ましくは10〜40μm、さらに好ましくは20〜30μmである。
厚さが9μm以上であれば、電池外装材の成形時の樹脂フィルムの伸びを十分に確保され、金属箔のネッキングが抑制され、成形性が良好である。また、コストを考慮すれば、50μm以下の厚さで十分な耐熱性及び絶縁性が得られる。
【0047】
外層に使用する樹脂フィルムが延伸フィルムである場合、より良好な成形性を得る観点から、延伸方向に対して0°、45°、90°の各3方向のいずれの方向においても、引張強さが150N/mm
2以上であることが好ましく、より好ましくは200N/mm
2以上、さらに好ましくは250N/mm
2以上である。また、破断までの伸びが80%以上であることが好ましく、より好ましくは100%以上、さらに好ましくは120%以上である。
なお、本明細書で言う「引張強さ」及び「破断までの伸び」は、前記3方向の延伸方向を長さ方向として、長さ150mm×幅15mm×厚さ9〜50μmの試料フィルムを切り出し、引張速度100mm/分で引張試験を行い、試料フィルムが破断した時の強度及び伸びの値とする。
【0048】
上記層構成(2)及び(4)における中間樹脂層の材質としては、電池外装材の機械的強度の向上の観点から、例えば、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエチレン樹脂等が挙げられる。中間樹脂層は、単層の樹脂フィルムであってもよく、あるいはまた、複層の共押出し樹脂フィルム等であってもよい。中間樹脂層の厚さは、特に限定されないが、通常、0.1〜30μm程度である。
【0049】
上記層構成(3)及び(4)におけるコート層は、通常、水蒸気及びその他のガスに対するガスバリア性を付与する観点から設けられるものであり、公知の材質で形成することができる。例えば、ガスバリア性を有するポリマーを塗布したり、アルミニウム等の金属や、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の無機酸化物を蒸着や塗布したりすることにより形成することができる。
【0050】
[電池ケース]
前記電池外装材は、耐電解液性や耐熱性、ガスバリア性等に優れていることから、二次電池、特にリチウムイオン電池の電池ケースとして好適に用いることができる。
また、前記電池外装材は成形性に優れているため、公知の方法での成形により、電池ケースを簡便に製造することができる。成形方法は、特に限定されるものではないが、複雑な形状や高い寸法精度に対応する観点からは、深絞り加工又は張り出し加工により成形することが好ましい。
【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0052】
[ポリオレフィン樹脂(A)の合成]
下記表1に示すポリオレフィン樹脂(A1)〜(A8)を、それぞれ、以下の合成例1〜8により製造した。
(合成例1)
メタロセン触媒を重合触媒として用いて製造した、プロピレン−エチレンランダム共重合体(プロピレン−エチレンモル比97:3、MFR10g/10分)100質量部、無水マレイン酸0.5質量部、メタクリル酸ラウリル1質量部、及びジ−t−ブチルパーオキサイド1.5質量部を、シリンダー部の最高温度を170℃に設定した二軸押出機を用いて混練して反応させた。その後、押出機内を減圧脱気し、未反応残留物を除去して、カルボキシル基を有するポリオレフィン樹脂(A1)を得た。
【0053】
(合成例2〜5)
合成例1において、下記表1に示すようなMFR値が異なるプロピレン−エチレンランダム共重合体を用い、それ以外は合成例1と同様にして、ポリオレフィン樹脂(A2)〜(A5)を得た。
【0054】
(合成例6〜8)
合成例1において、プロピレン−エチレンランダム共重合体に代えて、下記表1に示すようなプロピレン−ブテンランダム共重合体(A6)、プロピレン重合体(A7)、又はプロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体(A8)を用い、それ以外は合成例1と同様にして、ポリオレフィン樹脂(A6)〜(A8)を得た。
【0055】
上記において合成した各ポリオレフィン樹脂(A)について、下記のようにして、酸価及びMFRを測定した。これらの測定結果を表1にまとめて示す。
<酸価>
JIS K 0070:1992に準拠して、水酸化カリウムエタノール溶液で中和滴定して酸価を求めた。
<MFR測定>
JIS K 7210−1:2014に準拠して、温度130℃、荷重2.16kgの条件で測定した。
【0056】
【表1】
【0057】
[接着剤の調製]
金属箔と樹脂フィルムとのラミネート用接着剤を、以下のようにして調製した。各接着剤に配合した化合物を以下に示す。
<ポリオレフィン樹脂(A)>
上記合成例1〜8で製造したポリオレフィン樹脂(A1)〜(A8)
<ポリイソシアネート化合物(B)>
(B1)ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体:「デュラネート(登録商標)TKA−100」、旭化成株式会社製;イソシアナト基含有量21.7質量%
(B2)イソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート体:「デスモジュール(登録商標)Z 4470 BA」、コベストロ社製;酢酸ブチル溶液(濃度70質量%);イソシアナト基含有量8.3質量%
(B3)ポリメリックMDI:「スミジュール(登録商標)44V40」、コベストロ社製;モノメリックMDIとの混合物(モノメリックMDI含有量32.0質量%);イソシアナト基含有量30.0質量%
【0058】
<金属カルボン酸塩(C)>
(C1)ネオデカン酸亜鉛:「BiCAT(登録商標)Z(M)」、シェファードケミカル社製、金属(亜鉛)含有量19質量%
(C2)ジラウリン酸ジブチルスズ:「KS−1260」、堺化学工業株式会社製
(C3)ビス(2−エチルヘキサン酸)亜鉛:「ヘキソエート亜鉛15%」、東栄化工株式会社製;ミネラルスピリット溶液(濃度65質量%);金属(亜鉛含有量15質量%)
(C4)ジステアリン酸亜鉛:「エフコ・ケム ZNS−P」、株式会社ADEKA製
(C5)亜鉛(II)アセチルアセトナート:試薬、東京化成工業株式会社製
(C6)ビス(2−エチルヘキサン酸)マンガン:「ヘキソエートマンガン6%」、東栄化工株式会社製、ミネラルスピリット溶液(濃度42質量%);金属(マンガン含有量6質量%)
<溶剤(D)>
トルエン−酢酸エチル混合溶媒(混合質量比9:1)
【0059】
(実施例1)
ポリオレフィン樹脂(A1)15.00gを、溶剤(D)85.0g中に溶解した。次いで、ポリイソシアネート化合物(B)として、(B1)2.96g、(B2)2.29g、及び(B3)0.21gを加えて撹拌混合し、金属箔と樹脂フィルムとのラミネート用接着剤を調製した。
【0060】
(実施例2〜8)
実施例1において、ポリオレフィン樹脂(A1)に代えて、それぞれ、(A2)〜(A8)を用い、それ以外は実施例1と同様にして、各接着剤を調製した。
【0061】
(実施例9〜13)
実施例6において、原料として、さらに、金属カルボン酸塩(C1)〜(C5)をそれぞれ0.02質量部添加し、それ以外は実施例6と同様にして、各接着剤を調製した。
【0062】
(比較例1〜6)
実施例6において、ポリイソシアネート化合物(B)の配合組成を、それぞれ、下記表3に示すように変更し、それ以外は実施例6と同様にして、各接着剤を調製した。
【0063】
上記実施例及び比較例で調製した接着剤について、下記のようにして、NCO/COOH比を求めた。
なお、上記実施例及び比較例においては、NCO/COOH比が、いずれも、14.0となるように、ポリオレフィン樹脂(A)及びポリイソシアネート化合物(B)の配合組成を調整した。
<NCO/COOH比>
JIS K 6806:2003に準拠した方法により、ポリイソシアネート化合物(B)中のNCO量を求め、イソシアナト基のモル数を算出した。
また、上記において求めたポリオレフィン樹脂(A)の酸価から、ポリオレフィン樹脂(A)中のカルボキシル基のモル数を算出した。
そして、イソシアナト基のモル数をカルボキシル基のモル数で除して、NCO/COOH比を求めた。
【0064】
[電池外装材の製造]
上記実施例及び比較例の接着剤を用いて、ドライラミネーション方式で、外層/中間樹脂層/アルミニウム箔/接着剤層/樹脂フィルムの層構成を有する電池外装材を製造した。なお、ラミネート後の養生及び乾燥条件は、温度40℃、湿度5%RH、5日間とした。
電池外装材の各層の材料は以下のとおりである。
<外層>
ポリエチレンテレフタレート/延伸ポリアミド積層フィルム;厚さ27μm;延伸方向に対して0°、45°、90°の各3方向いずれの方向においても引張強さ270N/mm
2、破断までの伸び150%
<中間樹脂層>
ウレタン系ドライラミネート用接着剤:「AD−502/CAT10L」、東洋モートン株式会社製;塗布量3g/m
2(塗布時)
<アルミニウム箔>
アルミニウム−鉄系合金のアルミニウム箔:AA規格8079−O材;厚さ40μm
<接着剤層>
上記実施例及び比較例で調製した接着剤;塗布量:乾燥後の厚さ2μm
<樹脂フィルム>
未延伸ポリプロピレンフィルム;厚さ80μm
【0065】
[電池外装材の評価]
上記において製造した各電池外装材について、下記に示す条件でのT形剥離強度試験により、接着性、耐電解液性及び耐熱性の評価を行った。これらの評価結果を表2及び3にまとめて示す。
<T形剥離強度試験>
・測定試料:電池外装材から、長さ150mm×幅15mmのサイズに切り出した試験片
・測定装置:精密万能試験機;「オートグラフAG−X」、株式会社島津製作所製
・剥離部位:測定試料のアルミニウム箔と樹脂フィルムとの間
・剥離速度:100mm/分
(1)接着性
温度23℃、湿度50%RH(常態)にて測定した、アルミニウム箔と樹脂フィルムとの常態T形剥離強度により評価した。
(2)耐電解液溶性
電解液溶媒(プロピレンカーボネート/ジエチルカーボネート混合液;混合質量比50:50)に測定試料を浸漬して、85℃雰囲気下に1日間放置した後、取り出して、前記(1)同様にして測定した、アルミニウム箔と樹脂フィルムとの浸漬後T形剥離強度により評価した。
(3)耐熱性
85℃雰囲気下に測定試料を3分間放置して、測定試料表面が85℃になったことを確認した後、前記(1)と同様にして測定した、アルミニウム箔と樹脂フィルムとの高温(85℃)T形剥離強度により評価した。
【0066】
【表2】
【0067】
【表3】
【0068】
表2及び3に示した結果の対比から分かるように、ポリイソシアネート化合物(B)として所定の3種類を用いた接着剤(実施例1〜13)によれば、T形剥離強度がいずれも十分に高く、良好な接着性が得られ、かつ、耐電解液性及び耐熱性にも優れた積層体を得られることが認められた。
一方、ポリイソシアネート化合物(B)として前記3種類のうちのいずれか1種又は2種しか用いていない接着剤(比較例1〜6)では、常態T形剥離強度、電解液溶媒浸漬後のT形剥離強度、及び高温(85℃)T形剥離強度のうちのいずれか、又はいずれもが十分であるとは言えず、上記の接着性、耐電解液性及び耐熱性のすべての効果において優れているものはなかった。