(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の実施形態による空気調和機を説明する。なお、各図は、本発明を十分に理解できる程度に概略的に示してあるに過ぎない。よって本発明は、図示例のみに限定されるものではない。
【0013】
≪第1実施形態≫
<空気調和機の構成>
図1は、第1実施形態に係る空気調和機100が備える室内機10、室外機30、及びリモコン40の正面図である。
空気調和機100は、冷凍サイクル(ヒートポンプサイクル)で冷媒を循環させることによって、空調を行う機器である。
図1に示すように、空気調和機100は、室内に設置される室内機10と、屋外に設置される室外機30と、ユーザによって操作されるリモコン40と、を備えている。
【0014】
室内機10は、リモコン送受信部11と、室内温度センサ24aとを備えている。
【0015】
室内温度センサ24aは、例えば、室内機10の筐体内部の図示した位置に設置され、室内機10に吸い込まれる空気の温度に基づいて室内の温度を検出するセンサである。室内温度センサ24aの詳細な位置等については
図2で後述する。
【0016】
リモコン送受信部11は、赤外線通信等によって、リモコン40との間で所定の信号を送受信する。例えば、リモコン送受信部11は、運転/停止指令、設定温度の変更、運転モードの変更、タイマの設定等の信号をリモコン40から受信する。また、リモコン送受信部11は、室内温度の検出値等をリモコン40に送信する。
【0017】
なお、
図1では省略しているが、室内機10と室外機30とは冷媒配管を介して接続されるとともに、通信線を介して接続されている。
【0018】
図2は、前面パネル17(
図3参照)を外した室内機10の仰視図である。
室内機10は、前記したリモコン送受信部11(
図1参照)の他に、フィルタ16を備えている。フィルタ16は、室内機10に取り込まれる空気から塵埃を除去するものである。
室内温度センサ24aは、フィルタ16よりも空気吸込側に設置されている。室内温度センサ24aを、このような位置に設置することで、後述のように室内熱交換器12(
図3参照)の温度を上昇させるとき、室内熱交換器12(
図3参照)からの熱輻射の影響によって室温の検出に誤差が生じることを抑制できる。
【0019】
図3は、室内機10の縦断面図である。
室内機10は、前記したリモコン送受信部11(
図1参照)とフィルタ16と、の他に、室内熱交換器12と、ドレンパン13と、送風ファン14と、筐体ベース15と、前面パネル17と、左右風向板18と、上下風向板19と、を備えている。
【0020】
室内熱交換器12は、伝熱管12gを通流する冷媒と、室内空気と、の熱交換が行われる熱交換器である。
ドレンパン13は、室内熱交換器12から滴り落ちる水を受けるものであり、室内熱交換器12の下側に配置されている。なお、ドレンパン13に落下した水は、ドレンホース(図示せず)を介して外部に排出される。
【0021】
送風ファン14は、例えば、円筒状のクロスフローファンであり、送風ファンモータ14a(
図5参照)によって駆動する。
筐体ベース15は、室内熱交換器12や送風ファン14等の機器が設置される筐体である。
【0022】
フィルタ16は、室内熱交換器12(
図3参照)の上側・前側に設置されている。前面パネル17は、前側のフィルタ16を覆うように設置されるパネルであり、下端を軸として前側に回動可能になっている。なお、前面パネル17が回動しない構成であってもよい。
【0023】
左右風向板18は、室内に向けて吹き出される空気の通流方向を、左右方向において調整する板状部材である。左右風向板18は、送風ファン14の下流側に配置され、左右風向板用モータ21(
図5参照)によって左右方向に回動するようになっている。
【0024】
上下風向板19は、室内に向けて吹き出される空気の通流方向を、上下方向において調整する板状部材である。上下風向板19は、送風ファン14の下流側に配置され、上下風向板用モータ22(
図5参照)によって上下方向に回動するようになっている。
【0025】
そして、空気吸込口h1を介して吸い込まれた空気が、伝熱管12gを通流する冷媒と熱交換し、熱交換した空気が吹出風路h2に導かれるようになっている。この吹出風路h2を通流する空気は、左右風向板18及び上下風向板19によって所定方向に導かれ、さらに、空気吹出口h3を介して室内に吹き出される。
【0026】
図4は、空気調和機100の冷媒回路Qを示す説明図である。
なお、
図4の実線矢印は、暖房運転時における冷媒の流れを示している。
【0027】
また、
図4の破線矢印は、冷房運転時における冷媒の流れを示している。
【0028】
図4に示すように、室外機30は、圧縮機31と、室外熱交換器32と、室外ファン33と、室外膨張弁34(第1膨張弁)と、四方弁35と、を備えている。
【0029】
圧縮機31は、圧縮機モータ31aの駆動によって、低温低圧のガス冷媒を圧縮し、高温高圧のガス冷媒として吐出する機器である。
室外熱交換器32は、その伝熱管(図示せず)を通流する冷媒と、室外ファン33から送り込まれる外気と、の間で熱交換が行われる熱交換器である。
【0030】
室外ファン33は、室外ファンモータ33aの駆動によって、室外熱交換器32に外気を送り込むファンであり、室外熱交換器32の付近に設置されている。
室外膨張弁34は、「凝縮器」(室外熱交換器32及び室内熱交換器12の一方)で凝縮した冷媒を減圧する機能を有している。なお、室外膨張弁34において減圧された冷媒は、「蒸発器」(室外熱交換器32及び室内熱交換器12の他方)に導かれる。
【0031】
四方弁35は、空気調和機100の運転モードに応じて、冷媒の流路を切り替える弁である。すなわち、冷房運転時(破線矢印を参照)には、圧縮機31、室外熱交換器32(凝縮器)、室外膨張弁34、及び室内熱交換器12(蒸発器)が、四方弁35を介して環状に順次接続されてなる冷媒回路Qにおいて、冷凍サイクルで冷媒が循環する。
【0032】
また、暖房運転時(実線矢印を参照)には、圧縮機31、室内熱交換器12(凝縮器)、室外膨張弁34、及び室外熱交換器32(蒸発器)が、四方弁35を介して環状に順次接続されてなる冷媒回路Qにおいて、冷凍サイクルで冷媒が循環する。
すなわち、圧縮機31、「凝縮器」、室外膨張弁34、及び「蒸発器」を順次に介して、冷凍サイクルで冷媒が循環する冷媒回路Qにおいて、前記した「凝縮器」及び「蒸発器」の一方は室外熱交換器32であり、他方は室内熱交換器12である。
【0033】
図5は、空気調和機100の機能ブロック図である。
図5に示す室内機10は、前記した構成の他に、環境検出部24と、室内制御回路25と、を備えている。
【0034】
環境検出部24は、室内の状態や室内機10の機器の状態を検出する機能を有し、
図1、
図2で記載した室内温度センサ24aと、湿度センサ24bと、室内熱交換器温度センサ24cと、を備えている。
室内温度センサ24aは、前述のように、室内の温度を検出するセンサであり、室内熱交換器12からの熱輻射の影響の及びづらい位置、すなわちフィルタ16(
図3参照)よりも空気吸い込み側に設置されている。
【0035】
湿度センサ24bは、室内の空気の湿度を検出するセンサであり、室内機10の所定位置に設置されている。
室内熱交換器温度センサ24cは、室内熱交換器12(
図3参照)の温度を検出するセンサであり、室内熱交換器12に設置されている。
【0036】
室内温度センサ24a、湿度センサ24b、及び室内熱交換器温度センサ24cの検出値は、室内制御回路25に出力される。
室内制御回路25は、図示はしないが、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、各種インタフェース等の電子回路を含んで構成されている。そして、ROMに記憶されたプログラムを読み出してRAMに展開し、CPUが各種処理を実行するようになっている。
【0037】
室内制御回路25は、記憶部25aと、室内制御部25bと、を備えている。
記憶部25aには、所定のプログラムの他、環境検出部24の検出結果、リモコン送受信部11を介して受信したデータ等が記憶される。
【0038】
室内制御部25bは、記憶部25aに記憶されているデータに基づいて、所定の制御を実行する。なお、室内制御部25bが実行する処理については後記する。
室外機30は、前記した構成の他に、室外温度センサ36と、室外制御回路37と、を備えている。
【0039】
室外温度センサ36は、室外の温度(外気温)を検出するセンサであり、室外機30の所定箇所に設置されている。なお、
図5では省略しているが、室外機30は、圧縮機31(
図3参照)の吸入温度、吐出温度、吐出圧力等を検出する各センサも備えている。室外温度センサ36を含む各センサの検出値は、室外制御回路37に出力される。
【0040】
室外制御回路37は、図示はしないが、CPU、ROM、RAM、各種インタフェース等の電子回路を含んで構成され、室内制御回路25と通信線を介して接続されている。
図5に示すように、室外制御回路37は、記憶部37aと、室外制御部37bと、を備えている。
【0041】
記憶部37aには、所定のプログラムの他、室外温度センサ36を含む各センサの検出値等が記憶される。
室外制御部37bは、記憶部37aに記憶されているデータに基づいて、圧縮機モータ31a、室外ファンモータ33a、室外膨張弁34等を制御する。以下では、室内制御回路25及び室外制御回路37を「制御部K」という。
【0042】
<カビ抑制運転の方法>
図6は、空気調和機100の制御部Kが実行するカビ抑制運転のフローチャートである(適宜、
図4、
図5を参照)。なお、
図6の「カビ抑制運転開始」時までは、冷房運転等が行われていたものとする。まず、制御部Kは、送風ファン14だけを運転する第1送風運転を行うことが望ましい(ステップS101)。
【0043】
第1送風運転を行う理由は以下である。「カビ抑制運転開始」時まで行われていた冷房運転等を停止し、暖房運転で室内熱交換器12の温度を上昇させるとき(S103)、制御部Kは、冷房運転等時とは逆向きに冷媒が流れるように四方弁35を制御する。ここで、冷媒の流れる向きを急に変えると、圧縮機31に過負荷がかかり、冷凍サイクルの不安定化を招く可能性がある。また、冷房運転等で冷却された直後に室内熱交換器12の温度を暖房運転で上昇させるより、室温に近づけてから上昇させる方が、エネルギー効率においても優れている。
以上の理由から、本実施形態では、冷凍サイクルを安定させ、かつ室内熱交換器12を室温に近づけるために第1送風運転を行う。第1送風運転は、その開始から第1所定時間が経過し、第1送風運転終了予定時刻に達した後(ステップS102:Yes)、終了する。第1所定時間は、空気調和機100の仕様に応じて適宜設定されるものとする。
【0044】
第1送風運転の後、制御部Kは、暖房運転を開始する(ステップS103)。暖房運転において、制御部Kは、室内熱交換器12の温度を40℃以上の温度まで上昇させる。室内熱交換器12をこのような温度とするため、カビ抑制運転時の暖房運転における圧縮機31の吐出温度は、通常の暖房運転における圧縮機31の吐出温度より高温であることが望ましい。暖房運転における圧縮機31の吐出温度をこのようにすることで、カビ類の繁殖を効果的に抑制することができる。制御部Kは、室内熱交換器12をこの温度で維持するように圧縮機31の回転を制御する。
室温が所定の温度以上に上昇しない場合であれば(ステップS104:No)、制御部Kは、冷房運転等の停止から所定時間が経過して暖房終了予定時刻に到達したときに(ステップS105:Yes)、暖房運転を停止する。
【0045】
暖房終了予定時刻は、冷房運転等の停止から所定時間が経過した時であり、つまり、本実施形態における該所定時間とは、カビ抑制運転時の第1送風運転および暖房運転の運転時間の合計である。この所定時間についても、空気調和機100の仕様に応じて適宜設定されるが、前記所定時間の内の暖房運転の時間については、例えば10分以上とすることができる。暖房運転停止後(ステップS105:Yes)、制御部Kは第2送風運転を開始する(ステップS107)。
【0046】
ただし、室内機10の設置された部屋が狭い場合等は、室内熱交換器12の温度を維持するために圧縮機31を回転させていても、室温が過度に上昇してしまうことがあり得る。よって、制御部Kは、室温が所定の温度に達した場合(ステップS104:Yes)、暖房終了予定時刻より前であっても暖房運転を途中で停止する。所定の温度とは、室内の使用者が不快感を覚え始める程度の温度である。所定の温度としては、出荷時の設定を用いても、リモコン40によってユーザが入力した設定を用いてもよい。このように暖房運転を途中停止することにより、暖房運転により室内機10内のカビの繁殖を抑制しつつ、使用者の不快感も低減させる事ができる。
【0047】
暖房運転を途中で停止したとき、制御部Kは、暖房終了予定時刻より前から第2送風運転を開始することが望ましい。(ステップS106)。このように暖房終了予定時刻より前から第2送風運転を開始するのは、室温の過上昇により所定時間の暖房運転を行えなかった分だけ、第2送風運転を長く行うことが望ましいためである。つまり、暖房終了予定時刻より前にカビ抑制運転時の暖房運転を停止させた場合における第2送風運転(ステップS106)の運転時間を、暖房終了予定時刻に該暖房運転を停止させた場合における第2送風運転(ステップS107)の運転時間よりも長くすることが望ましい。このように暖房運転に代替する送風運転(暖房代替送風)を行うことで、暖房運転が本来行うべき時間よりも短縮され、途中で停止されていても、短縮された分だけ室内熱交換器12の乾燥を十分に行い、カビ繁殖の抑制を図ることができる。
【0048】
暖房運転後、室内機10内の空気が、暖房運転で温度が上昇し、飽和水蒸気量が上昇した状態を維持されたまま循環されなかった場合は、室内機10内は残った水分により絶対湿度が上昇した状態にある。この絶対湿度が上昇した状態で、室内機10内の空気を循環させずに室内機10内の温度を低下させると、室内機10内の相対湿度が上昇してしまう。第2送風運転を行うことで、室内機10内の空気を循環させながら、室内機10内の相対湿度を上昇させることなく室内機10内の温度を低下させ、室内機10内を乾燥させることができる。また、第2送風運転は冷凍サイクルの安定化にも寄与する。これについては
図7で後述する。
【0049】
第2送風運転は、その開始から第2所定時間が経過し、第2送風運転終了予定時刻に達した後に終了する(ステップS108:Yes)。第2所定時間は、室内機10内を十分乾燥し、冷凍サイクルを安定化できる程度に、空気調和機100の仕様に応じて適宜設定することができ、例えば15分程度に設定することができる。
【0050】
図7は、空気調和機100の制御部Kが実行するカビ抑制運転を示すタイムチャートである。
図7は、被空調空間が十分に広く、カビ抑制運転時の暖房運転によって室温が所定の温度以上に上昇することのない正常系を示している。
図7の横軸は時刻を示し、縦軸は上から室内温度センサ24aの取得した室温、および、圧縮機31のON/OFF、膨張弁(室外膨張弁34)の全開/制御、上下羽根(上下風向板19)の開/閉、送風ファン14のON/OFFの切り替えを示している。
【0051】
図7に示す例では、冷房運転が時刻t1まで行われており、圧縮機31が駆動され、室外膨張弁34が制御されている。時刻t1〜第1送風運転終了予定時刻t2において、送風1運転(第1送風運転)が行われており、圧縮機31は停止され、室外膨張弁34が全開にされ、送風ファン14が駆動されている。(
図6のステップS101)。
【0052】
第1送風運転終了予定時刻t2において第1送風運転が停止される。第1送風運転終了予定時刻t2〜暖房終了予定時刻t3において、暖房運転が行われており、圧縮機31が駆動され、室外膨張弁34が制御されている(
図6のステップS103)。
暖房終了予定時刻t3において、暖房運転が停止される。このとき、圧縮機31は減速して停止されることが望ましい。暖房運転の停止時、圧縮機31は、高温の冷媒で高圧になっている。高圧になっている圧縮機31を急に停止させると大きな振動が発生し、圧縮機31のみならずこれに接続されたパイプ類までをも傷める恐れがある。圧縮機31を減速して停止させることにより、圧縮機31とこれに接続された周辺の機器を保護することができる。
【0053】
また、暖房運転を停止した後、暖房運転中は制御され絞られていた室外膨張弁34を開くことが望ましい。この理由は以下である。すなわち、暖房運転終了時、室内機内の室内熱交換器12等は熱された冷媒で高温になっている。このまま放置すると暖房運転終了後も室内熱交換器12等の熱によって被空調空間の温度が上昇する。そこで、暖房運転終了後に膨張弁を開くことで、室外熱交換器32の冷熱によって室内熱交換器12等を冷ますことで、暖房運転終了後に室内熱交換器12等の熱によって被空調空間の温度が上昇することを抑制することができる。
【0054】
また、圧縮機31が停止した後も、送風ファン14は回転し続けていることが望ましく、暖房終了予定時刻t3〜第2送風運転終了予定時刻t4において、送風2運転(第2送風運転)が行われている(
図6のステップS107)。このように圧縮機31が停止した後も、送風ファン14が回転し続けていることにより、前述のように高圧になっている室内熱交換器12に熱交換を行わせ、冷媒の不均等をならし、冷凍サイクルを安定化させることができる。
【0055】
送風ファン14が回転している間、上下風向板19は開いていることが望ましい。上下風向板19が開いていることで、送風ファン14による空気の吸込と吹出とが円滑になる。よって、冷房運転時においては、室内空気を十分に対流させて室内を迅速に冷却することができる。第1送風運転時においては、室内熱交換器12の温度を迅速に室温に近づけることができる。第2送風運転時においては、暖房運転で温度が上昇し絶対湿度が上昇した状態にある室内機10内において、室内機10内の相対湿度を上昇させることなく室内機10内の温度を低下させ、室内機10内を乾燥させることができる。
【0056】
ただし、暖房運転後に行う第2送風運転においては、温風が吹き出すおそれがあるため、上下風向板19の開度は、第1送風運転時よりも小さくすることが望ましい。ただし、使用者に不快感を与えないのであれば、上下風向板19の開度は、第1送風運転時と同程度でもよい。また、第2送風運転における上下風向板19の角度は、使用者に温風を吹き付けない角度とすることが望ましく、例えば水平より上向きに設定することができる。
【0057】
このように、本実施形態においては、一連のカビ抑制運転、つまり第1送風運転開始から第2送風運転終了までの時刻t1〜第2送風運転終了予定時刻t4の間、全ての運転を、上下風向板19を開き、送風ファン14を駆動して行う。カビ抑制運転時の暖房運転を、上下風向板19を開き、送風ファン14を駆動させて行う理由については、次の
図8で述べる。
【0058】
図8は暖房運転時の送風ファン14の運転が室内熱交換器12の温度に及ぼす影響を示すグラフである。縦軸は温度を、横軸は暖房運転時間を示している。
実線のグラフは送風ファン14を運転(駆動)させたまま暖房運転を行った場合における、室内熱交換器12の温度の時間的推移を示している。太い破線のグラフは送風ファン14を停止させたまま暖房運転を行った場合における、室内熱交換器12の温度の時間的推移を示している。細い破線はカビ抑制運転時の暖房運転における室内熱交換器12の目標温度(所定の温度)を示している。
【0059】
一見、送風ファン14を停止させてカビ抑制運転時の暖房運転を行えば、暖房運転による室温上昇を抑制できるとも考えられる。しかし、
図8の太い破線に示したように、送風ファン14を停止させたまま暖房運転を行うと、室内熱交換器12で熱交換が行われないため、室内熱交換器12の圧力が過上昇し、温度も目標温度に対して過上昇してしまう。
【0060】
カビ抑制のために必要なのは、室内熱交換器12の過度な加熱ではなく、室内熱交換器12を一定温度で維持することである。室内熱交換器12の温度が短時間で目標温度より過上昇してしまうことは、カビ抑制のために不要なだけでなく、室温の過度な上昇を引き起こす。
【0061】
以上のことから、カビ抑制運転における暖房運転は、送風ファン14を回転させて行うことが望ましい。送風ファン14を回転させて上記暖房運転を行うことで、室内熱交換器12の過熱と室温の上昇を抑制することができる。暖房運転時の送風ファン14は、室内の空気の対流を抑制するため、低回転で駆動させることが望ましい。このとき、上下風向板19を開き、かつ、その開度は、第2送風運転時以下にすることが望ましい。ただし、使用者に不快感を与えないのであれば、上下風向板19の開度は、第2送風運転時と同程度でもよい。上下風向板19の開度を第2送風運転時以下にして開くことで、送風ファン14を回転させつつ、室内の空気の対流を抑制することができる。また、上下風向板19の角度は、使用者に温風を吹き付けない角度とすることが望ましく、例えば水平より上向きに設定することができる。
【0062】
なお、上記のように上下風向板19は開くことが望ましいが、これはあくまで送風ファン14を回転させ、室内熱交換器12に熱交換を行わせるための措置である。室内機10の筐体の備える隙間の度合いによっては、上下風向板19を閉じたまま送風ファン14を回転させることで適切なカビ抑制運転時の暖房運転を行える場合もある。
【0063】
上下風向板19を開き、送風ファン14を回転させて暖房運転を行うことで、室内熱交換器12で熱交換を適切に実施し、室内熱交換器12を過剰に熱するのではなく、所定の時間、目標温度を維持することができる。このようにして、室温を過度に上昇させることなく効果的にカビ抑制を行うことができる。
【0064】
図9は、空気調和機100の制御部Kが実行するカビ抑制運転を示すタイムチャートである。
図9は、被空調空間が狭く、カビ抑制運転時の暖房運転によって室温が所定の温度以上に上昇してしまった異常系を示している。
【0065】
図9の横軸は時刻を示し、縦軸は上から室内温度センサ24aの取得した室温、および、圧縮機31のON/OFF、膨張弁(室外膨張弁34)の全開/制御、上下羽根(上下風向板19)の開/閉、送風ファン14のON/OFFの切り替えを示している。
【0066】
図9に示す例では、冷房運転が時刻t1まで行われており、圧縮機31が駆動され、室外膨張弁34が制御されている。
時刻t1〜第1送風運転終了予定時刻t2において、送風1運転(第1送風運転)が行われており、圧縮機31が停止され、室外膨張弁34が全開にされている。(
図6のステップS101)。
【0067】
第1送風運転終了予定時刻t2において第1送風運転が停止される。第1送風運転終了予定時刻t2〜時刻t2aにおいて、暖房運転が行われており、圧縮機31が駆動され、室外膨張弁34が制御されている(
図6のステップS103)。
時刻t2aの時点で、室内温度センサ24aの測定した室温が制限以上(所定の温度以上)となってしまい(
図6のステップS104:Yes)、暖房運転が停止される。時刻t2a〜第2送風運転終了予定時刻t4まで、送風2運転(第2送風運転)が行われる(
図6のステップS106)。この第2送風運転の内、時刻t2a〜暖房終了予定時刻t3の間の運転が、
図6で説明した暖房代替送風である。第2送風運転の間、圧縮機31は停止され、室外膨張弁34が全開にされている。
【0068】
一連のカビ抑制運転、つまり第1送風運転開始から第2送風運転終了までの時刻t1〜t4の間、上下風向板19は常に開いており、送風ファン14は常に駆動している。
【0070】
図10は、本発明の第2実施形態の空気調和機100の制御部Kが実行するカビ抑制運転のフローチャートである(適宜、
図4、
図5を参照)。なお、第1実施形態と共通する内容については適宜省略して説明する。
ステップS101〜S102の第1送風運転については、第1実施形態(
図6参照)と同様である。
【0071】
第1送風運転の後、制御部Kは、暖房運転を開始する(ステップS203)。このとき本実施形態においては、制御部Kは、室内温度センサ24aによって、暖房開始時の室温を取得し、記憶しておく。
暖房運転において、制御部Kは、室内熱交換器12の温度を40℃以上の温度まで上昇させる。制御部Kは、室内熱交換器12をこの温度で維持するように圧縮機31の回転を制御し、室温と、ステップS203で取得した暖房開始時の室温との差が所定の値に達するまで室温が上昇しない場合であれば(ステップS204:No)、冷房運転等の停止から所定時間が経過して暖房終了予定時刻に到達したときに(ステップS105:Yes)、暖房運転を停止する。
【0072】
暖房終了予定時刻より前であっても、制御部Kは、室温と、ステップS203で取得した暖房開始時の室温との差が所定の値に達した場合には(ステップS204:Yes)、暖房運転を途中で停止する。所定の値とは、室内の使用者が不快感を覚え始める程度の温度差である。所定の値(所定の温度差)としては、出荷時の設定を用いても、リモコン40によってユーザが入力した設定を用いてもよい。
ステップS106〜S108の第2送風運転については、第1実施形態(
図6参照)と同様である。
【0073】
なお、各実施形態では、室内温度センサ24aで測定された室温を用いてカビ抑制運転時の暖房運転を制御する構成について説明したが、該暖房運転の制御のために、リモコン40から送信された室温も用いてもよい。
【0074】
また、各実施形態では、室内機10(
図3参照)および室外機30(
図3参照)が一台ずつ設けられる構成について説明したが、これに限らない。すなわち、並列接続された複数台の室内機を設けてもよいし、また、並列接続された複数台の室外機を設けてもよい。
【0075】
また、各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に記載したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されない。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0076】
また、前記した機構や構成は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての機構や構成を示しているとは限らない。