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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896062
(24)【登録日】2021年6月10日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】検査装置および検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/04 20180101AFI20210621BHJP
   G01N 23/20 20180101ALI20210621BHJP
   G01V 5/08 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   G01N23/04
   G01N23/20
   G01N23/20 380
   G01V5/08
【請求項の数】15
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-508181(P2019-508181)
(86)(22)【出願日】2017年9月28日
(65)【公表番号】特表2019-532266(P2019-532266A)
(43)【公表日】2019年11月7日
(86)【国際出願番号】CN2017103972
(87)【国際公開番号】WO2018103434
(87)【国際公開日】20180614
【審査請求日】2019年2月14日
(31)【優先権主張番号】201611116487.5
(32)【優先日】2016年12月7日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】502192546
【氏名又は名称】清華大学
【氏名又は名称原語表記】Tsinghua University
(73)【特許権者】
【識別番号】503414751
【氏名又は名称】同方威視技術股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(72)【発明者】
【氏名】康 克軍
(72)【発明者】
【氏名】程 建平
(72)【発明者】
【氏名】陳 志強
(72)【発明者】
【氏名】趙 自然
(72)【発明者】
【氏名】李 君利
(72)【発明者】
【氏名】王 学武
(72)【発明者】
【氏名】曽 志
(72)【発明者】
【氏名】曽 鳴
(72)【発明者】
【氏名】王 義
(72)【発明者】
【氏名】張 清軍
(72)【発明者】
【氏名】顧 建平
(72)【発明者】
【氏名】易 茜
(72)【発明者】
【氏名】劉 必成
(72)【発明者】
【氏名】徐 光明
(72)【発明者】
【氏名】王 永強
【審査官】 田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2016/0216398(US,A1)
【文献】 国際公開第2015/178986(WO,A2)
【文献】 特表2012−501450(JP,A)
【文献】 特表2010−508522(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0170072(US,A1)
【文献】 特開2016−180664(JP,A)
【文献】 特表2015−529821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 23/00−23/2276
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線で被検体を走査して被検体の画像を生成するステップと、
前記被検体の画像を分割して少なくとも2つの関心領域を確定するステップと、
宇宙線と前記2つの関心領域との相互作用を検知して検知値を取得するステップと、
前記2つの関心領域のサイズ情報および前記検知値に基づいて、前記2つの関心領域のうちの1つにおける宇宙線の散乱特性値を計算し、前記2つの関心領域のうちのもう1つにおける吸収特性値を計算するステップと、
前記散乱特性値及び前記吸収特性値を用いて、前記2つの関心領域のそれぞれの材料属性を認識するステップと、
を含む、検査方法。
【請求項2】
前記被検体の画像は、単一エネルギー透過画像、減衰係数画像、CT値画像、電子密度画像、原子番号画像のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項3】
ノンパラメトリック検定を実行することによって、前記関心領域に核物質が含まれているか否かを判断するステップをさらに含む、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項4】
パラメータを用いて前記被検体の三次元画像を再構成するステップをさらに含む、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項5】
前記被検体の材料属性が所定の条件を満たす場合、警報信号を発する、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項6】
前記散乱特性値及び前記吸収特性値を用いて、前記2つの関心領域のそれぞれの材料属性を認識するステップは、
予め作成された分類プロファイル又はルックアップテーブルを利用し、前記散乱特性値及び前記吸収特性値によって、前記2つの関心領域のそれぞれにおける材料の原子番号値を確定するステップを含む、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項7】
前記被検体の運動軌跡を監視し、前記運動軌跡に基づいて、宇宙線と被検体との相互作用の結果を示す検知値を計算するステップをさらに含む、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項8】
前記被検体を走査することは、
前記被検体に対して後方散乱走査を行うことと、
前記被検体に対して単一エネルギー透過走査を行うことと、
前記被検体に対して単一エネルギーCT走査を行うことと、
前記被検体に対して二重エネルギーX線透過走査を行うことと、
前記被検体に対して二重エネルギーCT走査を行うことと、のうちの少なくとも1つを含む、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項9】
前記2つの関心領域のサイズ情報および前記検知値に基づいて、前記2つの関心領域のうちの1つにおける宇宙線の散乱特性値を計算し、前記2つの関心領域のうちのもう1つにおける吸収特性値を計算するステップは、
散乱特性値を計算することと、阻止能値を計算して吸収特性値とすることとを含み、
前記散乱特性値は、下記式によって計算され、
【数1】
ここで、σθは散乱角の二乗平均平方根であり、Pは入射粒子の平均運動量であり、Lは前記サイズ情報であって、X線走査によって得られた材料の厚さであり、
前記阻止能値は、下記式によって計算され、
【数2】
ここで、Nscatter/(αscatter・tscatter)は、tscatter時間内に、αscatter撮像面積または体積内で検知された、物質と散乱作用が発生した粒子の数Nscatterを示し、Nstop/(αstop・tstop)は、tstop時間内に、αstop撮像面積または体積内で、物質と阻止作用が発生した粒子の数Nstopを示し、Pは入射粒子の平均運動量であり、Lは前記サイズ情報であって、X線走査によって得られた材料の厚さである、
請求項1に記載の検査方法。
【請求項10】
X線を発して被検体を走査するX線源と、
前記被検体を透過したX線を検知し、採集することで検知データを取得する検知・採集手段と、
前記検知データに基づいて前記被検体の画像を生成するとともに、前記被検体の画像を分割して少なくとも2つの関心領域を確定するデータ処理手段と、
宇宙線と前記2つの関心領域との相互作用を検知して検知値を取得するとともに、前記2つの関心領域のサイズ情報および前記検知値に基づいて、前記2つの関心領域のうちの1つにおける宇宙線の散乱特性値を計算し、前記2つの関心領域のうちのもう1つにおける吸収特性値を計算する宇宙線検知手段と、
を備え、
前記データ処理手段は、さらに、前記散乱特性値及び前記吸収特性値を用いて前記2つの関心領域のそれぞれの材料属性を認識するように配置されている、検査装置。
【請求項11】
被検体の運動経路を確定し、前記宇宙線検知手段によって得られた検知値を、前記運動経路と対応させることによって関心領域の検知値を取得する位置決め手段をさらに備える、
請求項10に記載の検査装置。
【請求項12】
前記データ処理手段によって生成された前記被検体の画像は、単一エネルギー透過画像、減衰係数画像、CT値画像、電子密度画像、原子番号画像のうちの少なくとも1つを含む、
請求項10に記載の検査装置
【請求項13】
前記データ処理手段は、ノンパラメトリック検定を実行することによって、前記関心領域に核物質が含まれているか否かを判断する、
請求項10に記載の検査装置。
【請求項14】
前記データ処理手段は、予め作成された分類プロファイル又はルックアップテーブルを利用し、前記散乱特性値及び前記吸収特性値によって、前記2つの関心領域のそれぞれにおける材料の原子番号値を確定する、
請求項10に記載の検査装置。
【請求項15】
前記データ処理手段は、
下記式によって散乱特性値を計算し、
【数3】
ここで、σθは散乱角の二乗平均平方根であり、Pは入射粒子の平均運動量であり、Lは前記サイズ情報であって、X線走査によって得られた材料の厚さであり、
下記式によって阻止能値を吸収特性値として計算し、
【数4】
ここで、Nscatter/(αscatter・tscatter)は、tscatter時間内に、αscatter撮像面積または体積内で検知された、物質と散乱作用が発生した粒子の数Nscatterを示し、Nstop/(αstop・tstop)は、tstop時間内かつαstop撮像面積または体積内で、物質と阻止作用が発生した粒子の数Nstopを示し、Pは入射粒子の平均運動量であり、Lは前記サイズ情報であって、X線走査によって得られた材料の厚さである、
請求項10に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、放射線検知技術に関し、具体的に、コンテナトラックのような被検体を検査する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
世界経済と国際貿易の発展に伴い、コンテナ/車両による貨物輸送は、各国の経済活動において益々広く応用されている。同時に、テロリストが核物質、爆発物、麻薬などの禁制品や危険物を輸送することも便利になり、世界各国の人々の生活にとって深刻な脅威となる。たとえば、核爆弾の原料であるウラン235またはプルトニウム239が所定の量(例えば、12−16kgのウラン、6−9kgのプルトニウム)に達すると、兵器レベルの核爆発が起こるおそれがある。さらに、爆発物や麻薬の不法な拡散による犯罪事件や経済的損失も、個人、家庭、および社会全体に大きな被害をもたらすことになる。したがって、コンテナ/車両による貨物輸送に対する非破壊検査を強化して、上記材料の不法な拡散に対し、厳しい制御及び管理をしなければならない。
【0003】
従来技術における核物質及び/又は麻薬を検査するための技術には、検出精度が低いまたは効率が低いという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術における1つまたは複数の課題に鑑みて、コンテナのような被検体を検査する検査装置及び検査方法を提供する。
【0005】
本発明の一形態では、X線で被検体を走査して被検体の画像を生成するステップと、前記被検体の画像を分割して少なくとも1つの関心領域を確定するステップと、宇宙線と前記関心領域との相互作用を検知して検知値を取得するステップと、前記関心領域のサイズ情報および前記検知値に基づいて、前記関心領域における宇宙線の散乱特性値及び/又は吸収特性値を計算するステップと、前記散乱特性値及び/又は吸収特性値を用いて、前記関心領域の材料属性を認識するステップと、を含む検査方法を提供する。
【0006】
一部の実施例において、前記被検体の画像は、単一エネルギー透過画像、減衰係数画像、CT値画像、電子密度画像、原子番号画像のうちの少なくとも1つを含む。
【0007】
一部の実施例において、前記散乱特性値を用いて1つの関心領域の材料属性を認識し、吸収特性値を用いてもう1つの関心領域の材料属性を認識する。
【0008】
一部の実施例において、前記検査方法は、ノンパラメトリック検定を実行することによって、前記関心領域に核物質が含まれているか否かを判断するステップをさらに含む。
【0009】
一部の実施例において、前記検査方法は、パラメータを用いて前記被検体の三次元画像を再構成するステップをさらに含む。
【0010】
一部の実施例において、前記被検体の材料属性が所定の条件を満たす場合、警報信号を発する。
【0011】
一部の実施例において、前記散乱特性値及び/又は吸収特性値を用いて、前記関心領域の材料属性を認識するステップは、予め作成された分類プロファイル又はルックアップテーブルを利用し、前記散乱特性値及び/又は吸収特性値によって、前記関心領域における材料の原子番号値を確定するステップを含む。
【0012】
一部の実施例において、前記検査方法は、前記被検体の運動軌跡を監視し、前記運動軌跡に基づいて、宇宙線と被検体との相互作用の結果を示す検知値を計算するステップをさらに含む。
【0013】
一部の実施例において、前記被検体を走査することは、
前記被検体に対して後方散乱走査を行うことと、
前記被検体に対して単一エネルギー透過走査を行うことと、
前記被検体に対して単一エネルギーCT走査を行うことと、
前記被検体に対して二重エネルギーX線透過走査を行うことと、
前記被検体に対して二重エネルギーCT走査を行うことと、のうちの少なくとも1つを含む。
【0014】
一部の実施例において、前記関心領域のサイズ情報および前記検知値に基づいて、前記関心領域における宇宙線の散乱特性値及び/又は吸収特性値を計算するステップは、散乱特性値を計算することと、阻止能値を計算して吸収特性値とすることとを含み、前記散乱特性値は、下記式によって計算される。
【0015】
【数1】
【0016】
ここで、σθは散乱角の二乗平均平方根であり、Pは入射粒子の平均運動量であり、Lは前記サイズ情報であって、X線走査によって得られた材料の厚さである。前記阻止能値は、下記式によって計算される。
【0017】
【数2】
【0018】
ここで、Nscatter/(αscatter・tscatter)は、tscatter時間内に、αscatter撮像面積または体積内で検知された、物質と散乱作用が発生した粒子の数Nscatterを示し、Nstop/(αstop・tstop)は、tstop時間内に、αstop撮像面積または体積内で、物質と阻止作用が発生した粒子の数Nstopを示し、Pは入射粒子の平均運動量であり、Lは前記サイズ情報であって、X線走査によって得られた材料の厚さである、
を含む。
【0019】
本発明の別の形態では、X線を発して被検体を走査するX線源と、前記被検体を透過したX線を検知し、採集することで検知データを取得する検知・採集手段と、前記検知データに基づいて前記被検体の画像を生成するとともに、前記被検体の画像を分割して少なくとも1つの関心領域を確定するデータ処理手段と、宇宙線と前記関心領域との相互作用を検知して検知値を取得するとともに、前記関心領域のサイズ情報および前記検知値に基づいて、前記関心領域における宇宙線の散乱特性値及び/又は吸収特性値を計算する宇宙線検知手段と、を備え、前記データ処理手段は、さらに、前記散乱特性値及び/又は吸収特性値を用いて前記関心領域の材料属性を認識するように配置されている検査装置を提供する。
【0020】
一部の実施例において、前記検査装置は、被検体の運動経路を確定し、宇宙線検知手段によって得られた検知値を、前記運動経路と対応させることによって関心領域の検知値を取得する位置決め手段をさらに備える。
【0021】
上記発明によれば、検査の正確性および検査効率を向上させることができる。
【0022】
本発明をよりよく理解するために、以下の図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本開示の実施例による検査装置を示す構成模式図である。
図2図1に示された計算手段を示す構成模式図である。
図3A】本開示の実施例による検査装置を示す側面図である。
図3B】本開示の実施例による検査装置を示す上面図である。
図3C】本開示の実施例による検査装置におけるX線走査サブシステムの概略図である。
図4A】本開示の実施例による検査装置における宇宙線検知器を示す構成模式図である。
図4B】本開示の別の実施例による宇宙線検知器を示す側面模式図である。
図4C】本開示の別の実施例による宇宙線検知器を示す左側面視図である。
図4D】本開示の別の実施例による宇宙線検知器を示す別の左側面視図である。
図5】本開示の実施例による検査方法を模式的に示すフローチャートである。
図6】本開示の実施例による別の検査方法を模式的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の具体的な実施例を詳細に説明するが、ここで説明する実施例は例示的なものに過ぎず、本発明を限定するためのものではない。以下の説明において、本発明に対する理解を深めるために、特定な細部を多く説明する。しかしながら、これらの特定な細部を用いて本発明を実行することは、必ずしも必要ではないことは、当業者にとって自明なことである。他の実施例において、本発明を混乱させないために、公知の構造、材料または方法については具体的に説明していない。
【0025】
明細書全体において、「一実施例」、「実施例」、「1例示」または「例示」に言及する場合は、当該実施例または例示に関連して記載された特定的特徴、構造、または特性が本発明の少なくとも1つの実施例に含まれることを意味する。したがって、明細書全体の各箇所に記載の「一実施例において」、「実施例において」、「1例示」、または「例示」という語句は、必ずしも同一の実施例または例示を指すとは限らない。なお、何らかの適当な組み合わせ及び/又はサブコンビネーションによって、特定的特徴、構造、又は特性を1つまたは複数の実施例や例示において、組み合わせることができる。なお、当業者であれば理解できるように、ここで使用する「及び/又は」という用語は、1つまたは複数の列挙された関連項目の任意及び全ての組み合わせを含む。
【0026】
従来技術における1つまたは複数の問題について、本開示の実施例は、X線および宇宙線を用いてコンテナ車両を検査する方法を提供する。本実施例によれば、X線撮像システムで被検体を走査して、内部の物体の構造、厚さ、階調などの情報を取得する。そして、宇宙線システムを用いて被検体を検知する。宇宙線システムに用いられる線源は、天然宇宙線であり、天然宇宙線は、強い透過力を有し、外部付加の放射線源を必要とせずに重い核物質を透過して検知することができる。宇宙線の撮像効果が、深さ方向における材料の厚さによって大きく影響されるという問題に対して、本開示の実施例において、X線撮像システムによって提供された厚さおよび階調を先験的情報として取り入れ、宇宙線撮像/材料識別プロセスを行う。このような実施例によれば、宇宙線撮像技術に基づく物質に対する分類効果を向上させることができ、その中に含まれる重い核物質、爆発物、および麻薬などの危険物または禁制品をより正確に判断することができる。
【0027】
通常、X線を用いて被検体を検査することができる。X線は透過能力が強く、測定時間が短く、分解能が高いので、空港、税関などの場所でのコンテナ貨物に対する検査によく使われ、例えばX線透過撮像、後方散乱撮像、X−CT走査などが使われる。しかしながら、高Z(原子番号)材料、例えば、鉛で遮蔽された放射線源、遮蔽されたまたは遮蔽されていない核材料などの場合、厚さが数センチメートルの鉛遮蔽層であれはX線を阻止でき、従来のX線は、重い核物質を透過して識別することができない。
【0028】
本開示の実施例では、宇宙線によって生成された二次粒子を用いて被検体を検査することが提案される。宇宙線が大気層を透過して海面に達したときの主な粒子は、ミューオン(μ)及び電子(e)であり、数の比が約10:1である。ミューオンは、平均エネルギーが大きく、約3/4GeVであり、質量が負の電子の約206倍であり、フラックスが約10000/(minute*m)である。測定によれば、エネルギーが4GeVであるミューオンは、鉛などの高Z(原子番号)材料に対して、最大透過深さが1mを超えることができ、エネルギーが更に高いミューオンは、数十メートルの岩石および金属を透過することができるので、宇宙線のミューオンは、コンテナ車両/貨物に存在可能な重い核物質を透過して検出することができる。
【0029】
また、本開示の実施例によれば、ミューオンが物質を透過する際に多重クーロン散乱が発生し、元の軌道からずれることとなり、散乱角度と物質の原子番号とが対応関係を有するので、ミューオンが物質を透過した後の散乱角分布を測定することによって、材料の識別を行うことができる。宇宙線における電子は、散乱作用が顕著であり、検知領域において、一定の厚さの中・低Z物質を透過する際に大きな角度で偏向するまたは吸収されることが容易に発生し、麻薬/爆発物などの低Z物質の分布状況を分析することができる。例えば、散乱角度及び/又は吸収特性と各種原子番号の物質との間の対応関係又は分類プロファイルを予め作成しておき、そして、実際の検査過程において採集して得られた被検体の散乱角度及び/又は吸収特性によって、対応する原子番号を取得して、被検体の中の材料属性を確定することができる。
【0030】
図1は本開示の実施例による検査装置を示す構成模式図である。図1に示すように、検査装置100は、X線源110と、X線検知・データ採集手段130と、制御器140と、計算手段160と、監視手段150と、宇宙線検知・データ採集手段170とを含む。コンテナトラックのような被検体120に対して、例えば、その中に核物質及び/又は麻薬などの禁制品が含まれているか否かの安全検査を実行する。この実施例では、X線検知器とデータ採集手段とが一体化されてX線検知・データ採集手段と呼ばれているが、X線検知器とデータ採集手段とを別個に形成することは当業者であれば想到し得ることである。同様に、この実施例では、宇宙線検知器とデータ採集手段とが一体化されて宇宙線検知・データ採集手段と呼ばれているが、宇宙線検知器とデータ採集手段とを別個に形成することは当業者であれば想到し得ることである。
【0031】
一部の実施例によると、上記のX線源110は同位体であってもよく、X線光機器または加速器などであってもよい。実行される走査方式は、透過であってもよく、後方散乱、またはCTなどであってもよい。X線源110は、単一エネルギーであってもよく、二重エネルギーであってもよい。このようにして、X線撮像システムによって被検体120を初検査する。例えば、被検体120の走行中、オペレータは、計算手段160のマンマシンインターフェースを利用して、制御器140を通じてコマンドを送信し、放射線を発するようにX線源110に命令する。放射線は被検体120を透過した後、X線検知・データ採集手段130に受けられ、速やかに被検体120の画像を取得することができ、さらに、構造及び/又はサイズなどの情報を取得することができ、後続の宇宙線システムの検査プロセスに先験的知識を提供する。同時に、X線減衰/階調/原子番号によって、得られた透明度階調画像に対して、疑わしい領域(関心領域とも呼ばれる)、例えば、X線が透過できない高Z領域及び/又はX線の分解能が限られている爆発物/麻薬といった低Z領域を分割する。
【0032】
図2は、図1に示された計算手段を示す構成模式図である。図2に示すように、X線検知器130によって検知された信号はデータ採集器により採集され、データはインタフェースユニット167およびバス168を介してメモリ161に記憶される。読出専用メモリ(ROM)162には、コンピュータデータプロセッサの配置情報及びプログラムが記憶されている。ランダムアクセスメモリ(RAM)163は、プロセッサ165の動作中に各種データを一時記憶するためのものである。また、メモリ161には、データ処理を行うためのコンピュータプログラムがさらに記憶されており、例えば、物質識別プログラム及び画像処理プログラムなどが記憶されている。内部バス168には、上記のメモリ161、読出専用メモリ162、ランダムアクセスメモリ163、入力手段164、プロセッサ165、表示手段166、及びインタフェースユニット167が接続されている。
【0033】
ユーザーがキーボード、マウスなどの入力手段164で操作命令を入力した後、コンピュータプログラムのコマンドコードは、予定のデータ処理アルゴリズムを実行するようにプロセッサ165に命令し、データ処理結果を取得した後、それをLCDディスプレイなどの表示手段166に表示し、あるいはプリントなどのハードコピーの形式で処理結果を直接に出力する。
【0034】
X線検知・データ採集手段130によって取得されたデータは、計算手段160に記憶されて画像処理などの操作が行われ、例えば、関心領域(高Z領域、または低Z領域、または透過困難な領域など)のサイズおよび位置などの情報を確定し、後続に行う宇宙線検知に先験的情報を提供する。他の実施例によれば、上記のX線システムをX線CT装置または二重エネルギーシステムに置き換えてもよく、このようにすると、被検体120の原子番号画像/減衰係数画像/電子密度画像/CT値画像などを取得することができる。例えば、二重エネルギーCTシステムの場合、X線源110は高エネルギー放射線および低エネルギー放射線の両方を発することができ、検知器130を用いて異なるエネルギーレベルの投影データを検知した後、計算手段160のプロセッサ165によって二重エネルギーCT再構成を実行し、被検体120の各スライスの等価原子番号および密度データが得られる。この場合、計算手段160は、被検体120の画像情報を取得でき、かつそれに基づいて分割を行って関心領域(高Z領域、または低Z領域、または透過困難な領域など)のサイズおよび位置などの情報を取得でき、後続の宇宙線検査により正確な位置基準および他の先験的情報を提供する。
【0035】
図3Aは、本開示の実施例による検査装置を示す側面図であり、図3Bは、本開示の実施例による検査装置を示す上面図である。図3Cは、本開示の実施例による検査装置におけるX線走査サブシステムの概略図である。図3Aに示すように、被検体120は、左から右へ検査領域を通過し、制御ボックス190内の制御器140および計算手段160の制御の下で、まずX線走査処理が行われ、次に宇宙線走査処理が行われる。図3Cに示すX線走査では、X線源110とX線検知・データ採集手段130とを含む透過走査システムが使用されているが、当業者であれば想到し得るように、上記の透過走査システムをCT走査システムまたは後方散乱走査システムに置き換えてもよい。
【0036】
車両の走行中、カメラのような監視手段(図1における150、図3A、3Bにおける151、152)は、被検体120の移動経路を監視することができる。車両の周囲に配置された宇宙線検知・データ採集手段170は、被検体を透過する宇宙線の情報、例えば位置、時間、強度などを検知して、車体/貨物の全体を検査してもよく、X線撮像システムによって提供された疑わしい領域に対して深く分析してもよい。本開示の実施例によれば、宇宙線撮像に用いられる宇宙線はミューオン及び/又は電子である。コンテナ車両検査用の大面積位置検知器には、用いられる宇宙線荷電粒子検知器が、ドリフトチューブまたはドリフトチャンバー、RPC(Resistive Plate Chamber:抵抗プレートチャンバー)、MRPC(Multi-gap Resistive Plate Chamber:マルチギャップ抵抗プレートチャンバー)、シンチレータまたはシンチレータファイバなどを含む。図3Aに示すように、本開示の実施例における宇宙線検知器は、上検知板171と下検知板172とを含み、下検知板172は、地面195の下例えば地面における溝内に配置される。上検知板171は、支持構造体181、182に支持されており、垂直方向において、下検知板172とともに、被検体120が通過可能な検査空間を形成している。
【0037】
通常、短い時間範囲において、所定の距離で離れている2層、3層、または数層の宇宙線荷電粒子検知器にともに受け取られる粒子は、同じ荷電粒子であり、このような所定の距離で離れている2層、3層、または数層の検知器を1組とする。一般的に、宇宙線検知器は、上面および底面における一組ずつの検知器171および172を含む。受け取った粒子の位置、受け取り時間、エネルギーなどは、電子システム、例えばデータ採集手段によって記録され、受け取り時間の差の分析を行うことによって粒子移動軌跡および作用位置を計算する。例えば、異なる検知器が非常に短い時間(例えば1ナノ秒)内に受け取った2つの粒子は同じ線源に属すると考えられる。さらに、一側の検知器によって粒子の入射軌跡を確定するとともに、被検体の他側の検知器によって粒子の出射軌跡を確定して、入射軌跡および出射軌跡に基づいて被検体の宇宙線に対する位置および散乱角度を確定する。
【0038】
できるだけ多くの宇宙線粒子を集めるために、検知器組を被検体の両側、更には前面および後面にそれぞれ配置して、複数の面における検知器、例えば、4組(上面、下面、両側面)、6組(上面、下面、両側面、表面、裏面)による測定方法を採用してもよい。図4Aに示すように、検知器組は、被検体120の周囲に配置された上検知器410、下検知器411、左検知器412、右検知器413、前検知器415、後検知器414を含む。宇宙線430は、図4Aに示すように、上検知器410を透過した後、さらに被検体120を透過し、下検知器411によって検知される。粒子検知の効率を高めるために、上面および下面の検知器を水平または斜めにし、両側の検知器を地面に対して一定の角度をなす(外向きのU字状に配置)ように、検知器を配置してもよい。
【0039】
他の実施例では、検査効率を向上させるために、被検体120を、速やかに走査通路を通過させ、走行方向において連続的な大面積検知器を用いることによって、十分な粒子情報を得ることができる。被検体120が通路の入り口に入る時間をtで示し、出口から出る時間をtで示し、車両の全長をlで示し、車両の速度がvメートル/秒程度に維持され、通路の全長が約(v・(t−t)+2・l)である。また、図4B図4C、および図4Dに示すように、小面積の検知器またはセグメント型の検知器を用いて、被検体の指定された領域に対して駐車検査を実行することができる。まず、X線撮像結果に基づいて不審物121の位置を判断し、そして、被検体120を測定領域に停止させて検査する。例えば、検査を容易にするように、不審物121を、ちょうど小面積の上検知器420と小面積の下検知器421との間に位置させる。
【0040】
図4Cおよび図4Dに示すように、小面積の検知器421またはセグメント型の底面検知器422、423、および424を地下に埋め込んでもよく、被検体の疑わしい領域121は、ちょうど上面検知器420と底面検知器421との間に位置する。また、底面検知器422、423、および424を、地面に突出させ、ちょうど車輪部分によって分離されるように配置してもよい。このような小面積またはセグメント型の検知器を用いる場合、採集されたデータの量は、連続的な大面積検知器ほど完全ではないかもしれないが、検知器設計、システムの構築および保守の困難性を低減し、システムの構造を簡素化し、ハードウェアおよびソフトウェアコストを減らすことができる。
【0041】
一部の実施例では、連続的な大面積位置検知器によって、移動する車両の軌跡を検知する。車両が検査通路内で移動しているので、検知器によって検知された宇宙線粒子の位置に合わせるために、監視手段150を用いて車両の走行軌跡を記録する必要がある。通常の方法として、ビデオ位置決め、光路位置決め、および圧力センシングなどがある。車両が緩やかに走行し、路線がほぼ直線であるので、監視手段150に対する要求は特に高くなくてもよい。複数のカメラによってビデオ追跡を行う場合、上面カメラがあれば位置決めの要求を満たすことができる。他の実施例では、光路位置決めが採用される場合、車両の一側に1列の光路のみを配置すればよい。
【0042】
本開示の実施例によれば、走査中に生成された大量のデータを、無線伝送、またはケーブル若しくはネットワーク回線などを介する有線伝送によって、後段のデータ処理ワークステーションに送信することができる。無線伝送方式よりも、有線伝送方式を採用することが好ましい。有線伝送方式は、データ伝送の速度を保証でき、伝送過程における信号の損失を低減でき、信号伝送の耐干渉能力を改善できるとともに、データ採集の技術的な困難性およびコストを大幅に低減できる。
【0043】
本開示の実施例によれば、移動車両に対する検査プロセスは、機械的制御、電気的制御、データ採集、画像再構成、材料識別、結果表示、および危険警報などを含んでもよく、いずれも主制御センタの制御ボックス(図3Aの190)によって制御される。使用される処理装置165、例えばプロセッサは、高性能の単一のPCであってもよく、ワークステーションまたは一群の機器であってもよい。ディスプレイは、従来のCRTディスプレイであってもよく、液晶ディスプレイであってもよい。
【0044】
図5は、本開示の実施例による検査方法を模式的に示すフローチャートである。図5に示すように、ステップS510において、X線で被検体を走査して被検体の画像を生成する。例えば、図1に示すシステムによって、被検体120を透過走査またはCT走査/二重エネルギーCT走査し、被検体120の画像を取得し、さらに、内部構造情報およびサイズ情報などを取得する。まず、X線撮像システムによって車両/貨物を走査し、物体の概略の構造および寸法情報、特に深さ方向の材料の厚さを取得する。
【0045】
ステップS520において、前記被検体の画像を分割して少なくとも1つの関心領域を確定する。例えば、X線撮像の階調画像と原子番号の変化規律とは略類似しているので、階調画像によって、例えば、X線が透過できない高Z領域及び/又はX線の分解能が限られている爆発物/麻薬といった低Z領域などの疑わしい領域を分割して、関心領域とする。
【0046】
ステップS530において、宇宙線と前記関心領域との相互作用を検知して検知値を取得する。例えば、宇宙線粒子が媒体を透過するとき、その材料の種類によって異なる散乱および吸収特性を示す。検知器170は、入射粒子および出射粒子の数、受け取り時間、検知位置、およびエネルギーなどの情報を検知する。
【0047】
ステップS540では、前記関心領域のサイズ情報および前記検知値に基づいて、前記関心領域における宇宙線の散乱特性値及び/又は吸収特性値を計算する。例えば、前記検知値と関心領域のサイズ情報とを用いて、高Z領域及び/又は低Z領域などの関心領域の特性パラメータ、例えば散乱密度値、阻止能値をそれぞれ計算する。
【0048】
ステップS550において、前記散乱特性値及び/又は吸収特性値を用いて、前記関心領域の材料属性を認識する。本開示の実施例によれば、ミューオンが物質を透過する際に多重クーロン散乱が発生し、元の軌道からずれることとなり、散乱角度と物質の原子番号とが対応関係を有するので、ミューオンが物質を透過した後の散乱角分布を測定することによって、材料の識別を行うことができる。宇宙線における電子は、散乱作用が顕著であり、検知領域において、一定の厚さの中・低Z物質を透過する際に大きな角度で偏向するまたは吸収されることが容易に発生し、麻薬/爆発物などの低Z物質の分布状況を分析することができる。例えば、いくつかの物質の散乱特性値及び/又は吸収特性値(例えば阻止能値)と原子番号との間の対応リストを測定しておき、リストを参照することで関心領域の原子番号を確定して材料属性を確定する。
【0049】
一部の実施例では、宇宙線荷電粒子が媒体を透過するとき、その材料の種類によって異なる散乱および吸収特性を示す。上記の特性に関する物理量において、検知器システムによって測定できる入射粒子および出射粒子の数、受け取り時間、検知位置、およびエネルギーのほかに、深さ方向の材料の厚さもパラメータの計算にとって重要である。したがって、本開示では、まずX線撮像システムによって物体の構造および材料の厚さ情報を取得し、次に物質が宇宙線粒子に対する散乱および吸収特性を計算して材料を認識する。直接的に宇宙線撮像を採用する方法よりも、物質識別及び位置決めの効果はより優れている。
【0050】
また、低Z物質が宇宙線に対する吸収作用(または阻止作用と呼ぶ)による区別可能性が顕著である一方、高Z物質が放射線に対する散乱作用による区別可能性が顕著であるので、区間に分けて、それぞれ低Z物質と高Z物質とを認識する必要がある。これに先立って、物質の原子番号を低Z領域または高Z領域に分けて関心領域とする必要があり、この過程は、X線撮像システムによっても実現可能である。
【0051】
図6は、本開示の実施例による別の検査方法を模式的に示すフローチャートである。図6に示すように、ステップS611において、車両のような被検体120は、検査領域において先ずX線撮像装置によって初検査され、そして、ステップS612において、コンテナ内の物体の構造画像及び/又は厚さ情報を速やかに取得して、宇宙線システムの二次検査に先験的知識を提供する。ステップS613において、例えば、階調によって、例えば、X線が透過できない重い核物質の高Z領域及び分解能が限られている爆発物/麻薬といった低Z領域などの疑わしい領域を分割する。他の実施例では、関心領域の分割は、原子番号/電子密度/線形減衰係数などによっても実行され得る。
【0052】
次に、ステップS614において、被検体120が宇宙線検査通路に入り、2組の大面積位置検知器によって移動車両を検査することを例として、上面および底面の位置検知器のそれぞれが個別に宇宙線粒子の信号を記録する。同時に、当該通路内に監視手段150が配置され、検査される車両の位置を刻々と記録して、時間-位置情報を制御センタに送信し、後続の運動軌跡に対応させる。
【0053】
ステップS615において、データ採集回路などの記録検知器170が粒子を受け取った位置、受け取り時間、エネルギーなどを用いて、計算手段160によって、受け取り時間の差の分析を行い、粒子移動軌跡および作用位置を計算して、監視システムの時間-位置情報に対応させる。ある粒子が短時間で入射検知器に検知されると共に受信検知器にも受信された場合、当該粒子が散乱粒子と考えられる;測定領域に入ったが、入射検知器のみに検知され、受信検知器が情報を受信しなかった場合、当該粒子が被阻止粒子と考えられる。
【0054】
ステップS616において、X線階調画像によって高Zおよび低Zの疑わしい領域を分割し、関心領域のサイズおよび宇宙線検知器170によって得られた検知値に基づいて、散乱密度および阻止能をそれぞれ計算する。例えば、X線撮像システムによって車両/貨物を走査し、物体の概略の構造および寸法情報、特に深さ方向の材料の厚さを取得する。X線撮像階調画像と原子番号変化規律とは略類似しているので、階調画像によって、X線が透過できない高Z領域及び分解能が限られている爆発物/麻薬といった低Z領域などの疑わしい領域を分割する。以下の方法によって、高Z領域及び低Z領域の特性パラメータをそれぞれ計算する。
【0055】
高Z領域について、散乱密度(scattering density)を計算し、かかわる宇宙線粒子は主にミューオンである。
【0056】
【数3】
【0057】
ここで、σθは散乱角の二乗平均平方根であり、Pは入射粒子の平均運動量であり、LはX線撮像システムによって得られた材料の厚さである。例えば、異なる検知器が非常に短い時間(例えば1ナノ秒)内に受け取った2つの粒子が同じ線源に属すると考えられる。さらに、一側の検知器によって粒子の入射軌跡を確定するとともに、被検体の他側の検知器によって粒子の出射軌跡を確定して、入射軌跡および出射軌跡に基づいて被検体の宇宙線に対する位置および散乱角度を確定する。また、例えば、上記の平均運動量は、検知器の検知値によって、計算により得られる。
【0058】
低Z領域の材料について、阻止能(stopping power)を計算し、かかわる宇宙線粒子はミューオンおよび電子を含む。
【0059】
【数4】
【0060】
ここで、Nscatter/(αscatter・tscatter)は、tscatter時間内に、αscatter撮像面積または体積内で検知された、物質と散乱作用が発生した粒子の数Nscatterを示し、Nstop/(αstop・tstop)は、tstop時間内に、αstop撮像面積または体積内で、物質と阻止作用が発生した粒子の数Nstopを示し、Pは入射粒子の平均運動量であり、LはX線撮像システムによって得られる材料の厚さである。ある粒子が短時間で入射検知器に検知されると共に受信検知器にも受信された場合、該粒子が散乱粒子と考えられる;測定領域に入ったが、入射検知器のみに検知され、受信検知器が情報を受信しなかった場合、被阻止粒子と考えられる。
【0061】
ステップS617において、計算された阻止作用を利用して、低Z領域に対して材料属性の認識を行う。例えば、いくつかの物質の阻止能値と原子番号との間の対応リストを測定しておき、リストを参照することで関心領域の原子番号を確定して材料属性を確定する。
【0062】
ステップS618において、計算された散乱密度値を利用して、高Z領域に対して材料属性の認識を行う。例えば、いくつかの物質の散乱特性値と原子番号との間の対応リストを測定しておき、リストを参照することで関心領域の原子番号を取得して材料属性を確定する。
【0063】
ステップS619では、ノンパラメトリック検定法によって迅速に判断することができる。例えば、高Z領域及び/又は低Zのいくつかの点の原子番号に基づいてノンパラメトリック検定、例えば、KS検定、カイ二乗検定などを行い、禁制品が含まれているか否かを確定する。禁制品があると判断された場合、パラメータ再構成アルゴリズムを用いて、疑わしい領域について物質識別および三次元空間位置決めを実行する。パラメータ再構成アルゴリズムとして、軌跡フィッティング再構成に基づくPoCAアルゴリズム、最尤反復再構成に基づくMLSD-OSEMアルゴリズム、または先験的推定に基づく最可能確率軌跡法などが採用され得る。
【0064】
撮像品質が宇宙線粒子の増加に伴って改善されるので、優れた信号対雑音比および画像品質を得るために、十分なデータを一度で採集して一括処理してもよく、または、新しいデータをリアルタイムに追加して段階的に処理してもよい。測定すべき車両の体積が大きくて、優れた空間分解能を有する画像を得るためには計算量が多いことを考えれば、撮像速度を上げるためのいくつかの加速の方法が必要とされる。また、複数の有効軌跡が互いに独立しているため、再構築プロセスを並列に実行でき、マルチコアCPU、マルチスレッドGPU、またはその他の加速の方法を用いて並列化できる。
【0065】
ステップS620において、ディスプレイによって検知結果を提示する。重い核物質、爆発物、麻薬などの禁制品がない場合、車両は正常に通過できる;禁制品がある場合、危険警報をオンにして警告を発するとともに、禁制品の種類および位置、更には宇宙線によって再構築された三次元画像又はそれとX線撮像画像との融合画像をディスプレイに表示する。
【0066】
本開示の上記実施例は、X線撮像技術と宇宙線撮像技術とを組み合わせて、被検体の2モード走査により、従来の宇宙線撮像技術による重い核物質に対する識別効果を改善しただけでなく、中・低Z材料、例えば麻薬、爆発物などの危険物および禁制品に対する識別の正確度を向上させた。X線撮像技術によると、車両/貨物の概略の構造、厚さおよび諧調情報を速やかに取得でき、後続の再構成に先験的知識を提供できる。宇宙線撮像技術は、強い透過力を持つ天然宇宙線を利用して、高密度かつ厚い材料を透過できる。X線撮像システムによって提供された厚さおよび階調に関する先験的情報に基づいて、宇宙線撮像システムは、中・低Z材料の分類に対しても優れた撮像効果が得られる。重い核物質などの高Z材料および爆発物/麻薬などの中・低Z材料に対して、安全で効果的な検査手段を提供することができる。
【0067】
以上の詳細な説明は、模式図、フローチャート及び/又は例示を用いることで、検査装置及び検査方法の多くの実施例を既に説明した。このような模式図、フローチャート及び/又は例示に1つまたは複数の機能及び/又は操作を含む場合、当業者であれば理解できるように、このような模式図、フローチャート又は例示における各機能及び/又は操作は、各種の構造、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、又は実質的にそれらの任意の組み合わせによって単独及び/又は共同に実現され得るものである。一実施例において、本発明の実施例に記載の主題のいくつかの部分は、専用集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、又は他の集積方式によって実現され得る。しかしながら、当業者であれば理解できるように、ここで開示された実施例の一部は、全体又は部分的に、集積回路内で均等に実現することができ、一台または複数台のコンピュータにより実行される1つまたは複数のコンピュータプログラムであるように実現し(例えば、一台または複数台のコンピュータシステムにより実行される1つまたは複数のプログラムであるように実現する)、1つまたは複数のプロセッサにより実行される1つまたは複数のプログラムであるように実現し(例えば、1つまたは複数のマイクロプロセッサにより実行される1つまたは複数のプログラムであるように実現する)、ファームウェアであるように実現し、あるいは実質的に上記方式の任意の組み合わせであるように実現する。さらに、当業者は本開示に基づき、回路及び/又は書き込みソフトウェア及び/又はファームウェアコードを設計することができるであろう。また、当業者であれば理解できるように、本開示に記載の主題の方法は、多種の形式のプログラム製品として配布することができ、かつ実際に配布を実行する信号担持媒体の具体的な類型に関係なく、本開示に記載の主題の例示的な実施例の全てが適用される。信号担持媒体の例示は、例えばフロッピー、ハードディスクドライブ、コンパクトディスク(CD)、デジタルユニバーサルディスク(DVD)、デジタル磁気テープ、コンピュータメモリなどの記録型媒体、及びデジタル及び/又はアナログ通信媒体などの伝送型媒体(例えば、光ファイバケーブル、導波、有線通信リンク、無線通信リンクなど)を含むが、それらに限定されるものではない。
【0068】
複数の典型的な実施例を参照しながら本発明を説明したが、理解できるように、使用した用語は、説明又は例示的なものであり、限定的な用語ではない。本発明は発明の精神又は実質を逸脱することなく多種の方法で具体的に実施することができるため、理解できるように、上記実施例は前述した何れかの細部に限定されず、添付された請求項の精神及び範囲内において、広く解釈されるべきであるため、請求項又はその均等の範囲内に含まれる全ての変化及び変形はいずれも添付された請求項にカバーされるべきである。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6