(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記テトラカルボン酸二無水物(a)が、ピロメリト酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロオクテンテトラカルボン酸二無水物、及び/又はジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物である、請求項1から7のいずれか1項に記載の方法。
前記基材が金属基材であり、前記ベースコート材料を前記基材に塗布する前に、硬化した電着コーティング系及び任意に硬化したプライマーサーフェーサーコーティングを製造する、請求項1から9のいずれか1項に記載の方法。
前記ベースコート材料を塗布した後、少なくとも1種のクリアコート材料を塗布し、前記ベースコート材料及びクリアコート材料を一緒に硬化する、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
顔料入り水性ベースコート材料
本発明の方法は、特定の顔料入り水性ベースコート材料の使用を必要とする。
【0019】
ベースコート材料は、原則として、自動車の仕上げ及び一般的な産業用コーティングに使用される、色付与性中間コーティング材料のことである。このベースコート材料は一般に、焼き付け(完全硬化)サーフェーサー又はプライマーサーフェーサーで前処理された金属又はプラスチックの基材に塗布され、時折、プラスチック基材に直接塗布される。加えて、前処理(例えば研磨による)を必要とし得る既存の塗装系は、基材として役立ち得る。今日では、1つを超えるベースコート膜を塗布することは、完全に慣例的である。よってそのような場合、第一のベースコート膜は、第二のための基材を構成する。ここで、特に、焼き付けプライマーサーフェーサーのコーティングへの塗布ではなく、第一のベースコート材料を硬化した電着コーティング膜が提供された金属基材に直接塗布し、第二のベースコート材料を第一のベースコート膜(後者は別個に硬化されない)に直接塗布することが可能である。
【0020】
特に環境的影響からの保護を有するベースコート膜を提供するために、少なくとも1つの追加のクリアコート膜がベースコート膜上に一般に塗布される。これは一般にウェットオンウェット法によって行われ、クリアコート材料が、ベースコート膜又は硬化される膜なしで塗布されることを意味する。次いで、硬化は最後に一緒に行われる。また、硬化した電着コーティング膜上にベースコート膜を1つのみ製造し、続いてクリアコート材料を塗布し、次いでこれら2つの膜を一緒に硬化させることも、現在普及している。
【0021】
本発明の方法に特有の特徴は、使用されるベースコート材料が、上述の色付与性コーティング材料の品質を有し、中間コーティング材料としても適している一方で、それにもかかわらず、製造される塗装系の一番上のコーティングを製造するために少なくとも部分的に役立つことである。換言すれば、問題のコーティングは、慣例のやり方で、クリアコート材料で特に再コーティングされない。
【0022】
本発明の方法で使用するための水性顔料入りベースコート材料は、少なくとも1種の特定のカルボキシ官能性ポリエーテル系反応生成物を含む。 この生成物について、まず記述する。
【0023】
使用される反応生成物は、(a)2個の無水物基を架橋する脂肪族、芳香族又は芳香脂肪族ラジカルXを有する環状テトラカルボン酸二無水物を使用して調製し得る。
【0024】
環状テトラカルボン酸二無水物は、既知のように、2個のカルボン酸無水物基を含有することができる有機分子であり、その2個のカルボン酸無水物基の各々は、その分子中の環式基の一部である。従って、分子は少なくとも2個の環式基を有し、いずれの場合も、無水物基がその各々の中に存在する2個の環式基がある。無水物基のこの配置形態は、無水物基の、例えばヒドロキシル基との開環反応が、分子を2つの分子に分解させるのではなく、その代わりに、開環後でも1つの分子しか存在しないことを、自動的に意味する。対応する無水物基を有する典型的且つ容易に入手可能で既知の有機化合物は、まさにこれらの無水物基を5員環の形態で含有することがしばしばある。従って、2個の無水物基が5員環に存在する環状テトラカルボン酸二無水物は、本発明において、論理的に好ましい。ピロメリト酸二無水物、ピロメリト酸の二無水物が、例として挙げられ得る。
【0025】
無水物基を架橋するラジカルXは、本来、脂肪族、芳香族又は芳香脂肪族(芳香族−脂肪族混合)であり得る。そのラジカルXは、環式基中に各々存在する2個のカルボン酸無水物基を架橋し、従って四価のラジカルである。ラジカルXは、好ましくは4〜40個の炭素原子、より具体的には4〜27個の炭素原子を含有する。
【0026】
脂肪族化合物は、芳香族ではなく、芳香脂肪族でもない飽和又は不飽和有機化合物(すなわち、炭素及び酸素を含有する化合物)である。脂肪族化合物は、例えば、排他的に炭素及び水素(脂肪族炭化水素)からなり得、又は炭素及び水素だけでなく、以下で後述する架橋又は末端官能基及び/又は分子部分の形で、ヘテロ原子を含有し得る。さらに、従って、「脂肪族化合物」という用語は、環式及び非環式脂肪族化合物の両方を包含し、本発明において対応する一般用語としても理解される。
【0027】
非環式脂肪族化合物は、直鎖(straight-chain)(直鎖(linear))又は分岐であり得る。この関連における直鎖とは、問題の化合物が炭素鎖に関連して分岐を有さず、その代わりに炭素原子が1つの鎖中に排他的に直鎖状配列で配置されていることを意味する。従って、本発明の目的のための分岐又は非直鎖は、それぞれの化合物が炭素鎖中に分岐を示すことを意味する。換言すれば、その場合、直鎖化合物とは対照的に、問題の化合物中の少なくとも1個の炭素原子は、三級又は四級炭素原子である。環式脂肪族化合物又は環式脂肪族化合物は、分子中に存在する炭素原子の少なくともいくつかが、1つ以上の環を形成するように結合している化合物である。当然のことながら、1つ以上の環に加えて、さらなる非環式直鎖又は分岐脂肪族基及び/又は分子部分が、環式脂肪族化合物中に存在し得る。
【0028】
本発明の目的のための官能基又は分子部分は、ヘテロ原子、例えば、酸素及び/又は硫黄などを含む、又はそれらからなる基についての呼称である。官能基は架橋され得、換言すれば、例えば、エーテル、エステル、ケト又はスルホニル基に相当し得、又は例えば、ヒドロキシル基又はカルボキシル基の場合のように末端であり得る。架橋及び末端官能基が、脂肪族化合物中に同時に存在することも可能である。
【0029】
よって脂肪族基は、脂肪族化合物について上述した条件を満たす基であるが、分子の一部にすぎない。
【0030】
脂肪族化合物と脂肪族基との間の区別は、以下の理由により、より明確で、よりはっきりした定義のために使用される。
【0031】
脂肪族ラジカルが前記環状テトラカルボン酸二無水物(a)中のラジカルXとして選択される場合、上記の定義によるこのラジカルは、成分(a)に関して、明らかに脂肪族化合物である。しかしながら同様に、化合物の状態が、環構造に各々配置された2個の無水物基からなる、並びに無水物基の間に配置された脂肪族ラジカルからなる成分(a)に起因することも可能である。化合物をとらえる二番目の手段は、いずれの場合も必ず存在する基、現在はそれぞれ環構造に各々配置された2個の無水物基を明確に命名できるという利点を有する。この理由から、この形態のとらえ方と命名は、成分(a)の定義においても選択されている。
【0032】
芳香族化合物は、既知であるように、少なくとも1つの芳香族系を有する環状で平面的な有機化合物であり、従って、Hueckelの芳香族性基準に従って、完全共役π系を有する少なくとも1つの環系を含有する。それは、例えば純粋な炭化水素化合物(例えばベンゼン)であり得る。或る特定のヘテロ原子が環構造に組み込まれることも可能である(ピリジンが一例である)。1つ以上の芳香環系だけでなく、芳香族化合物は、芳香族化合物の一部として、さらなる直鎖及び/又は分岐炭化水素基、並びに架橋及び/又は末端官能基も(それらが完全共役π系の一部を形成するという条件で)含有し得る。例えば、ケト基又はエーテル基によって結合された2つのフェニル環は、同様に芳香族化合物である。
【0033】
よって本発明の目的のために、芳香族基は、芳香族化合物についての上記の規定を満たす基であるが、分子の一部にすぎない。一例として、成分(a)の芳香族基Xが参照され得る。
【0034】
芳香脂肪族化合物は、芳香族及び脂肪族分子部分を含む有機化合物である。よってこの種の混合芳香族−脂肪族化合物は、芳香族基と脂肪族基の両方を含有しなければならない。
【0035】
よって本発明の目的のための芳香脂肪族基は、芳香脂肪族化合物に関する上記の規定を満たす基であるが、分子の一部にすぎない。例として、成分(a)の芳香脂肪族基Xが参照され得る。
【0036】
成分(a)のラジカルXは、例えば、5個以下、より好ましくは3個以下、より具体的には2個以下の架橋官能基、例えばエーテル、エステル、ケト又はスルホニル基を含有することが好ましい。
【0037】
同様に、成分(a)のラジカルXが、環状カルボン酸無水物の開環をもたらし得る末端官能基を含有しないことが好ましい。従って、成分(a)のラジカルXは、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアミノ基からなる群から選択される末端官能基を含有しないことが好ましく、末端官能基を全く含有しないことがより好ましい。
【0038】
成分(a)の特に好ましいラジカルXは、2個以下の架橋官能基を含有し、末端官能基を含有しない。
【0039】
環状テトラカルボン酸二無水物は、好ましくは、ピロメリト酸二無水物、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロオクテンテトラカルボン酸二無水物、又はジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、あるいは4,4‘−(4,4‘−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(フタル酸無水物)又は4,4‘−オキシジフタル酸無水物である。ピロメリト酸二無水物が特に好ましい。
【0040】
本発明の反応生成物は、一般構造式(II)
【化2】
(式中、RはC
3〜C
6アルキルラジカルである)の少なくとも1種のポリエーテル(b)を使用して調製することができる。指数nは、いずれの場合も、前記ポリエーテルが500〜5000g/molの数平均分子量を持つように選択されるべきである。好ましくは、そのポリエーテルは650〜4000g/mol、より好ましくは1000〜3500g/mol、及び非常に好ましくは1500〜3200g/molの数平均分子量を持つ。数平均分子量は、例えば、1000g/mol、2000g/mol、又は3000g/molであり得る。
【0041】
本発明の目的のための数平均分子量は、特に他に明記しない限り、蒸気圧浸透によって決定される。本発明において測定は、蒸気圧浸透圧計(Knauer社からのモデル10.00)を使用し、成分の濃度系列について、50℃のトルエン中での調査において、使用した測定機器の実験的較正定数を決定するための較正物質としてベンゾフェノンを使用して、行った(較正物質としてベンジルを使用した、E.Schroeder,G.Mueller,K.−F.Arndt,「Leitfaden der Polymercharakterisierung」,Akademie−Verlag、ベルリン、47−54頁、1982年による)。
【0042】
既知であるように、そして上記で既に明瞭にしたように、数平均分子量は、常に統計的平均値である。従って、式(II)中のパラメータnについても同じことが当てはまらなければならない。成分(b)について選択された呼称ポリエーテルは、この関連において明瞭化が必要であり、以下のように理解される。ポリマー、例えばポリエーテル(b)は常に、異なる大きさの分子の混合物である。これらの分子の少なくとも一部又は全部は、一連の同一又は異なるモノマー単位(反応形態のモノマーとしての)によって区別される。従って、ポリマー又は分子混合物は、原則として、複数の(すなわち少なくとも2個の)同一又は異なるモノマー単位を含有する分子を含む。当然のことながら混合物内に、ある割合のモノマー自体、換言すれば、それらの未反応形態が存在し得る。これは、既知であるように、単純に調製反応、すなわちモノマーの重合、によって支配され、これは一般に分子の均一性を伴って進行しない。従って、特定のモノマーには個別の分子量を割り当てることができる一方、ポリマーは常に、その分子量が異なる分子の混合物である。従って、ポリマーは、個別の分子量によって記述することはできず、その代わりに、既知であるように、すべての場合において平均分子量が割り当てられ、一例は上記の数平均分子量である。
【0043】
ポリエーテルにおいて、すべてのnラジカルRは同じであり得る。しかしながら、異なる種類のラジカルRが存在することも可能である。好ましくは、すべてのラジカルRは同じである。
【0044】
Rは、好ましくはC
4アルキレンラジカルである。より好ましくは、それはテトラメチレンラジカルである。
【0045】
非常に好ましくは、ポリエーテルは、平均してジオール性である直鎖ポリテトラヒドロフランである。
【0046】
反応生成物の調製に特殊性はない。成分(a)及び(b)は、ヒドロキシル基と無水物基との周知の反応を介して互いに結合している。反応は、例えば、典型的な有機溶媒を用いてバルクで又は溶液中で、例えば、100℃〜300℃の温度、好ましくは100℃〜180℃の温度、特に好ましくは100℃〜160℃の温度で、行い得る。典型的な触媒、例えば硫酸、スルホン酸及び/又はテトラアルキルチタネート、亜鉛及び/又はスズアルコキシレート、及びジアルキルスズオキシド、例えばジ−n−ジブチルスズオキシドなどを用いることも、当然のことながら可能である。カルボキシ官能性反応生成物を製造しなければならないことは、当然のことながら念頭に置くべきである。成分(b)を過剰に用いるので、結果として得られる生成物中に特定の所望量のカルボキシル基が確実に残留するように注意すべきである。無水物の開環後に形成される又は残留するカルボキシル基が、平均して保持され、さらに反応しない場合が好ましい。これは、温度変化を介して、進行中の反応の終了を引き起こすことにより、当業者は容易に達成することができる。反応の過程で、対応する測定を通して酸価を観察することは、所望の酸価に達したときに反応を制御された手段で停止させることを可能にする−例えば、反応がもはや起こることができない温度まで冷却することによる。無水物とヒドロキシル基との全開環変換反応は、カルボキシル基とヒドロキシル基との顕著な縮合反応がないような低温で、まさにこのようにして実施することができる。
【0047】
この場合、成分(a)及び(b)は、0.7/2.3〜1.6/1.7、好ましくは0.8/2.2〜1.6/1.8、及び非常に好ましくは0.9/2.1〜1.5/1.8のモル比で使用される。さらに特に好ましい比の範囲は、0.45/1〜0.55/1である。
【0048】
反応生成物はカルボキシ官能性である。反応生成物の酸価は、5〜80mgKOH/g、好ましくは10〜70mgKOH/g、特に好ましくは12〜60mgKOH/g、及び非常に好ましくは15〜55mgKOH/gである。酸価は、DIN53402に従って決定され、当然のことながら各場合とも生成物それ自体に関連する(そして、存在する溶媒中の生成物のいかなる溶液又は分散液の酸価にも関連しない)。本発明が公的規格に言及する場合、規格の有効版は当然のことながら、出願日に有効であったもの、又はその時点で有効版がなかった場合は、最新の有効版である。
【0049】
結果として得られる反応生成物は、1500〜15000g/mol、好ましくは2000〜10000g/mol、及び非常に好ましくは2200〜7000g/molの数平均分子量を持つことが好ましい。
【0050】
本発明に従って使用するための反応生成物は一般にヒドロキシル官能性、好ましくは平均してジヒドロキシル官能性である。従ってそれは、好ましくは、ヒドロキシル官能基とカルボキシル官能基の両方を持つ。
【0051】
特に好ましい反応生成物は、(a)2個の無水物基を架橋するための脂肪族、芳香族又は芳香脂肪族ラジカルXを有する少なくとも1種の環状テトラカルボン酸二無水物と、(b)650〜4000g/molの数平均分子量を有するジオール、直鎖ポリテトラヒドロフランとの反応によって調製できる。この成分(a)及び(b)は、0.45/1〜0.55/1のモル比で使用し、その反応生成物は、10〜70mgKOH/gの酸価並びに1500〜10000g/molの数平均分子量を有する。
【0052】
必要な場合、本発明に従って使用するためのすべての反応生成物を、微細に分かれた水性分散液を製造するために混ぜ合わせ得る。これは、この組成物が水性コーティング配合物に添加できるよう、予め溶解しておいたポリマーにN,N−ジメチルエタノールアミンと水を30℃で徐々に添加することによる。
【0053】
本発明の使用のためのすべての反応生成物の、顔料入り水性ベースコート材料の総質量に対する質量パーセンテージ画分の総合計は、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは0.5〜15質量%、及び非常に好ましくは1.0〜10質量%、又はさらには1.5〜5質量%である。
【0054】
本発明の反応生成物の量が0.1質量%未満である場合、機械的特性、特に接着性及びストーンチップ耐性におけるいかなる改善も、もはや存在しない可能性があり得る(ストーンチップ耐性それ自体は、実際には、本発明が焦点を当てている領域、換言すれば、車体の内部における主要な関連の特性ではないが、それでもストーンチップ耐性は、日常の運行の機械的課題に対するコーティングした表面の耐性に関する有用な情報を提供する)。量が20質量%を超える場合、或る特定の状況においては、湿気の影響を受けやすい、又は極性が原因で生じる結露など不利があり得る。
【0055】
好ましい反応生成物を特定の比率範囲で含むベースコート材料に対する可能な特殊化の場合においては、以下が適用される。好ましい群内に入らない反応生成物も当然のことながら、ベースコート材料中にやはり存在し得る。その場合、特定の比率範囲は、反応生成物の好ましい群に対してのみ適用される。それにもかかわらず、好ましい群からの反応生成物及び好ましい群内に入らない反応生成物からなる総画分に、特定の比率範囲が同様に適用されることが好ましい。
【0056】
従って、0.5〜15質量%の比率範囲、及び反応生成物の好ましい群に対する制限がある場合、この比率範囲は、明らかに、まずは反応生成物の好ましい群に対してのみ適用される。しかしながら、この場合も同様に、好ましい群からの反応生成物及び好ましい群に入らない反応生成物からなる、すべての元来包括された反応生成物が、0.5〜15質量%存在することが好ましくあり得る。従って、好ましい群の反応生成物が5質量%使用されている場合、好ましい群ではない反応生成物は10質量%以下で使用し得る。
【0057】
本発明の目的のために、述べた原則は、ベースコート材料のすべての述べた成分について、及びそれらの比率範囲について、例えば顔料、結合剤としてのポリウレタン樹脂について、あるいはメラミン樹脂などの架橋剤について適用される。
【0058】
本発明に従って使用するベースコート材料は、着色及び/又は効果顔料を含む。この種の着色及び効果顔料については当業者に既知であり、例えばRoempp−Lexikon Lacke und Druckfarben,Georg Thieme Verlag,Stuttgart,New York、1998年、176及び451頁に記述されている。顔料の割合は、顔料入り水性ベースコート材料の総質量に対して、例えば1〜40質量%、好ましくは2〜30質量%、より好ましくは3〜25質量%の範囲に位置し得る。
【0059】
本発明の目的のための好ましいベースコート材料は、その結合剤として、物理的に、熱的に又は熱的及び化学線(actinic radiation)の両方で硬化が可能なポリマーであるベースコート材料である。本発明において、関連するDIN EN ISO 4618に従って、結合剤とは、顔料及び充填剤を伴わない、コーティング組成物の不揮発性画分を指す。よって特定の結合剤はまた、以下でこの表現が主に、物理的に、熱的に又は熱的及び化学線の両方で硬化が可能な特定のポリマーに関して使用されるが、例えば典型的なコーティング添加剤、本発明の反応生成物、又は以下で後述する典型的な架橋剤を含み、例として特にポリウレタン樹脂が挙げられる。
【0060】
本発明の反応生成物の他に、本発明の顔料入り水性ベースコート材料は、特に好ましくは、反応生成物とは異なる、結合剤としての少なくとも1種のさらなるポリマー、より具体的には、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート及び/又は述べたポリマーのコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のポリマーを含み、特に好ましくは、いずれの場合も、それらポリマーは必ずしも排他的ではないが、少なくとも1種のポリウレタンポリ(メタ)アクリレートである。
【0061】
本発明において、用語「物理的硬化」は、ポリマー溶液、又はポリマー分散液からの溶媒の損失を介する膜の形成を意味する。典型的には、この硬化のためには、架橋剤は必要ではない。
【0062】
本発明において、用語「熱硬化」は、別個の架橋剤、あるいは自己架橋性結合剤のいずれかが親コーティング材料中に用いられる、コーティング膜の熱開始架橋を意味する。架橋剤は、結合剤に存在する反応性官能基に相補的な反応性官能基を含有する。これは、一般的に、当技術分野では、外部架橋と称される。相補的反応性官能基、又は自己反応性官能基、すなわち、同種の基と反応する基が、結合剤分子中に既に存在する場合、存在する結合剤は、自己架橋性である。適した相補的反応性官能基、及び自己反応性官能基の例は、ドイツ特許出願DE19930665A1、第7頁第28行〜第9頁第24行から既知である。
【0063】
本発明の目的のため、化学線は、電磁放射線、例えば近赤外線(NIR)、UV照射、より具体的にはUV照射、及び微粒子照射、例えば電子放射を意味する。UV照射による硬化は、一般的にラジカル又はカチオン光開始剤によって開始される。熱硬化、及び化学光(actinic light)による硬化が併せて使用される場合、「二重硬化(dual cure)」という用語も使用される。
【0064】
本発明において、物理的に硬化可能なベースコート材料と、熱的に硬化可能なベースコート材料の双方が好ましい。熱的に硬化可能なベースコート材料の場合には、当然のことながら、常にある割合の物理的硬化も存在する。しかしながら、理解を容易にするために、そのようなコーティング材料は単に熱的に硬化可能と称する。
【0065】
好ましい熱的硬化するベースコート材料は、結合剤としてポリウレタン樹脂、及び/又はポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、好ましくはヒドロキシル含有ポリウレタン樹脂及び/又はポリウレタンポリ(メタ)アクリレートを含み、架橋剤としてアミノプラスト樹脂、又はブロック化又は非ブロック化ポリイソシアネート、好ましくはアミノプラスト樹脂を含むものである。アミノプラスト樹脂の中で、メラミン樹脂が好ましい。
【0066】
すべての架橋剤、好ましくはアミノプラスト樹脂及び/又はブロック化及び/又は非ブロック化ポリイソシアネート、より特に好ましくはメラミン樹脂の、顔料入り水性ベースコート材料の総質量に対する質量パーセンテージ画分の総合計は、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは1.5〜17.5質量%、非常に好ましくは2〜15質量%、又はさらに2.5〜10質量%である。
【0067】
好ましく存在するポリウレタン樹脂及び/又はポリウレタンポリ(メタ)アクリレートは、イオン的及び/又は非イオン的に親水性に安定化され得る。本発明の好ましい実施形態では、ポリウレタン樹脂及び/又はポリウレタンポリ(メタ)アクリレートは、イオン的に親水性に安定化される。
【0068】
適した飽和、又は不飽和ポリウレタン樹脂、及び/又はポリウレタンポリ(メタ)アクリレートは、例えば、
−ドイツ特許出願DE19914896A1、第1欄、第29〜49行、及び第4欄、第23行〜第11欄第5行、
−ドイツ特許出願DE19948004A1、第4頁第19行〜第13頁第48行、
−ヨーロッパ特許出願EP0228003A1、第3頁第24行〜第5頁第40行、
−ヨーロッパ特許出願EP0634431A1、第3頁第38行〜第8頁第9行、
−国際特許出願WO92/15405、第2頁第35行〜第10頁第32行、又は
−ドイツ特許出願DE4437535A1
に記述されている。
【0069】
好ましく存在するポリウレタン樹脂及び/又はポリウレタンポリ(メタ)アクリレートは、例えば0〜250mgKOH/gの、だがより具体的には20〜150mgKOH/gのヒドロキシル価を持つ。酸価は、好ましくは5〜200mgKOH/g、より具体的には10〜40mgKOH/gである。ヒドロキシル価は、本発明において、DIN53240に従って決定される。
【0070】
結合剤としてのさらなるポリマー、より具体的にはポリウレタン樹脂及び/又はポリウレタンポリ(メタ)アクリレートの量は、いずれの場合もベースコート材料の膜形成固体に対して、好ましくは5〜80質量%の間、より好ましくは8〜70質量%の間、及び非常に好ましくは10〜60質量%の間である。
【0071】
膜形成固体(最終的に結合剤画分に対応する)とは、顔料及び場合によっては充填剤を含まないベースコート材料の不揮発性質量画分を意味する。膜形成固体は、次のようにして決定することができる:顔料入り水性ベースコート材料の試料(約1g)を50〜100倍量のテトラヒドロフランと混合し、次いで約10分間撹拌する。次いで、不溶性顔料及び任意の充填剤を濾過により除去し、残渣を少量のTHFですすぎ、結果として得られた濾液から回転式蒸発装置でそのTHFを除去する。濾液の残渣を120℃で2時間乾燥し、結果として得られる膜形成固体を秤量することによって得る。
【0072】
結合剤としてのすべてのさらなるポリマー、より具体的にはポリウレタン樹脂及び/又はポリウレタンポリ(メタ)アクリレートの、顔料入り水性ベースコート材料の総質量に対する質量パーセンテージ画分の総合計は、好ましくは2〜40質量%、より好ましくは2.5〜30質量%、及び非常に好ましくは3〜20質量%である。
【0073】
好ましくは、増粘剤も存在する。適した増粘剤は、フィロシリケートの群からの無機増粘剤である。しかしながら、無機増粘剤だけでなく、1種以上の有機増粘剤を使用することも可能である。これらは、好ましくは、(メタ)アクリル酸−(メタ)−アクリレートコポリマー増粘剤からなる群、例えば市販品Rheovis AS S130(BASF)、及びポリウレタン増粘剤からなる群、例えば市販品Rheovis PU 1250(BASF)から選択される。使用する増粘剤は、使用する結合剤とは異なる。
【0074】
さらに、顔料入り水性ベースコート材料は、少なくとも1種の補助剤をさらに含み得る。そのような補助剤の例は、残渣を伴わないか、又は残渣を実質的に伴わない、熱的に分解することが可能な塩、物理的に、熱的に、及び/又は化学線により硬化することができ、上記のポリマーとは異なる、結合剤としての樹脂、さらなる架橋剤、有機溶媒、反応性希釈剤、透明顔料、充填剤、分子的に分散して溶解する染料、ナノ粒子、光安定剤、抗酸化剤、脱気剤、乳化剤、スリップ添加剤、重合抑制剤、ラジカル重合の開始剤、接着促進剤、流れ調整剤、膜形成助剤、垂れ抑制剤(SCA)、難燃剤、腐食防止剤、ワックス、乾燥剤、殺生物剤、及びつや消し剤である。増粘剤、例えば、フィロシリケートの群からの無機増粘剤、又は有機増粘剤、例えば(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤、あるいは使用する結合剤とは異なるポリウレタン増粘剤も存在し得る。
【0075】
前述の種類の適した補助剤は、例えば、
−ドイツ特許出願DE19948004A1、第14頁第4行〜第17頁第5行、
−ドイツ特許DE10043405C1、第5欄、段落[0031]〜[0033]
から既知である。それらは、慣例且つ既知の量で使用される。
【0076】
本発明のベースコート材料の固形分含量は、進行中の事例の要件に応じて変わり得る。固形分含量は、塗布、より具体的にはスプレー塗布に必要とされる粘度によって主に左右され、当業者の一般的な技術的知識に基づき、任意に2〜3の探索的試験で補助し、調整し得る。
【0077】
ベースコート材料の固形分は、好ましくは5〜70質量%、より好ましくは8〜60質量%、及び非常に好ましくは12〜55質量%である。
【0078】
固形分(不揮発分率)とは、特定条件下で蒸発時の残渣として残留する質量画分を意味する。本出願において、固形分は、他に明確に示さない限り、DIN EN ISO3251に従って決定する。これは、ベースコート材料を130℃で60分間蒸発させることにより行われる。
【0079】
他に示さない限り、この試験方法は、例えば、ベースコート材料の様々な成分の画分をベースコート材料の総質量の割合として決定するために、同様に用いられる。よって、例えば、ベースコート材料に添加されるべきポリウレタン樹脂の分散液の固体は、このポリウレタン樹脂の画分を組成物全体の割合として確認するために対応して決定され得る。
【0080】
本発明のベースコート材料は、水性である。「水性」という表現は、これに関連して、当業者に既知である。その言い回しは原則として、排他的に有機溶媒をベースとしない、すなわち、その溶媒として排他的に有機系溶媒を含有しないが、代わりに、対照的に、溶媒として著しい画分の水を含むベースコート材料を指す。本発明の目的のため、「水性」は、好ましくは、問題のコーティング組成物、より具体的にはベースコート材料が、いずれの場合も存在する溶媒(すなわち、水、及び有機溶媒)の総量に対して、少なくとも40質量%、好ましくは少なくとも50質量%、非常に好ましくは60質量%の画分の水を有することを意味するものと理解されるべきである。次いで好ましくは、水の画分は、いずれの場合も存在する溶媒の総量に対して、40〜90質量%、より具体的には50〜80質量%、非常に好ましくは60〜75質量%である。
【0081】
本発明に従って用いられるベースコート材料は、ベースコート材料を製造するための慣例且つ既知の混合部品(assemblies)、及び混合技術を使用して製造され得る。
【0082】
本発明の方法、及び本発明のマルチコート塗装系
基材上に塗装系を製造するための本発明の方法では、上記のベースコート材料を使用した。
【0083】
従って、この方法は、上述の顔料入り水性ベースコート材料を基材に塗布した後、続いてそのベースコート材料を硬化させることによって、基材上に硬化したベースコート膜を製造することを含み、
その硬化したベースコート膜は、製造された塗装系の一番上のコーティングに少なくとも部分的に相当する。
【0084】
本発明に従って使用するための顔料入り水性ベースコート材料は、一般的に、サーフェーサー又はプライマーサーフェーサーによって前処理された金属又はプラスチック基材に塗布される。前記ベースコート材料は、任意に直接プラスチック基材に塗布し得る。
【0085】
金属基材がコーティングされる場合、その金属基材は、サーフェーサー又はプライマーサーフェーサーを塗布する前に、電着コーティング系でさらにコーティングすることが好ましい。当然のことながら、本発明の使用のためのベースコート材料は、硬化した電着コーティング膜に対して直接塗布し得る。他の可能性は、第1のベースコート材料を電着コーティング膜に塗布し、このベースコートを本発明の使用のためのベースコート材料で再コーティングし、次いで2つのベースコート膜を以下後述のように一緒に硬化することである。
【0086】
プラスチック基材がコーティングされる場合も、サーフェーサー又はプライマーサーフェーサーを塗布する前に、前処理することが好ましい。このような前処理に最もよく用いられる技術は、火炎処理、プラズマ処理及びコロナ放電の技術である。火炎処理が好ましく使用される。
【0087】
本発明の顔料入り水性ベースコート材料の塗布は、硬化した電着コーティング系及び/又はサーフェーサーを有する上記のような既にコーティングされた金属基材に対し、自動車産業において慣例の膜厚で、例えば5〜100マイクロメートル、好ましくは5〜60マイクロメートル(乾燥膜厚)の範囲で、行われ得る。これは、スプレー塗布方法、例えば、圧縮空気スプレー塗り、エアレススプレー塗り、高速回転、静電スプレー塗布(ESTA)などを、単独で、又は例えば熱気スプレー塗りなどの熱スプレー塗布と併せて使用し、行われる。
【0088】
顔料入り水性ベースコート材料は、塗布後、既知の方法によって乾燥させることができる。例えば、好ましい(1成分)ベースコート材料は、室温で1〜60分間フラッシュした後、続いて好ましくは30〜90℃という任意に僅かに高くした温度で乾燥させることができる。本発明におけるフラッシュ及び中間乾燥は、有機溶媒及び/又は水の蒸発を意味し、この結果、塗装はより乾燥するが、硬化には至らないか、又は完全に架橋されたコーティング膜の形成には至らない。
【0089】
その後続いて、少なくとも1つのさらなるコーティング組成物、例えば市販のクリアコート材料が、同様に一般的な方法で、ベースコート膜の一部に塗布され得る。膜厚はやはり慣例の範囲であり、例えば5〜100マイクロメートルの範囲である。しかしながら、本発明の目的のために、ベースコート膜が、製造される塗装系又はマルチコート塗装系の一番上のコーティングに少なくとも部分的に相当することが重要である。
【0090】
任意のクリアコート材料が塗布された後、それは、例えば室温で1〜60分間フラッシングし、任意に乾燥させることができる。次いでクリアコート材料は、塗布された顔料入りベースコート材料と共に硬化される。この手順の過程で、例えば、架橋反応が生じ、基材上に本発明のマルチコート着色及び/又は効果塗装系が製造される。硬化は、70〜200℃の温度で行なわれ得る。
【0091】
しかしながら、本発明において特定の利点は、基材の系全体及びコーティング系の少なくとも一部が、硬化したベースコート膜が製造される塗装系の一番上のコーティングに相当するような構成を有するという事実にもかかわらず、120℃以下の比較的低い温度で硬化させることができ、それにもかかわらず硬度及び接着性の点で仕様を満たす系全体が製造されるということである。
【0092】
よって、本発明において、塗布されたベースコート材料は、好ましくは70〜120℃、より好ましくは75〜110℃、非常に好ましくは75〜100℃で硬化される。
【0093】
この場合、塗布されたベースコート材料は、単独で硬化される(例えば、予めサーフェイサーが塗布され別個に硬化されており、他のコーティング組成物が部分的に塗布されていない場合)か、又は他のコーティング組成物と共に硬化される(例えばクリアコート材料が未硬化のベースコート膜に比例して塗布されている場合、又は別個に硬化していない異なるコーティング層がベースコート材料の下に製造されている場合)。
【0094】
プラスチック基材のコーティングは、基本的に金属基材の場合と同じ手段で行われ、当然のことながら、硬化温度が基材の完全性を保つのに十分に低いことを確実にすることが必要である。これに関連する利点は、対応して、本発明の方法である。
【0095】
これに関連した本発明の方法の1つの利点は、例えば比例的にプラスチックからなり、比例的に金属からなる基材でさえも、一回の操作でコーティングと硬化が可能なことである。その理由は、低い硬化温度は、プラスチック基材が変形を受けず、その代わりにその構造的完全性を保持することを意味するからである。
【0096】
本発明の他の主題は、当然のことながら、本方法を適用した結果として得られる塗装された基材、並びにその方法によって製造された塗装系である。
【0097】
本発明のさらなる態様は、顔料入り水性ベースコート材料を、記述のように、ベースコート材料を使用して製造され、低温硬化に供される塗装系の、機械的安定性、特に接着性を改善するために使用する方法である。
【0098】
低温硬化は当業者によく知られている用語である。 それは、120℃未満、好ましくは100℃未満の温度での硬化を好ましくは指す。
【0099】
本発明を実施例により以下に明瞭化する。
【実施例】
【0100】
数平均分子量の決定
数平均分子量は、蒸気圧浸透によって決定される。測定は、蒸気圧浸透圧計(モデル10.00、Knauer社より)を使用し、成分の濃度系列について、50℃のトルエン中での調査において、使用した機器の実験的較正定数を決定するためにベンゾフェノンを較正物質として用いて、行った(E.Schroeder,G.Mueller,K.−F.Arndt,「Leitfaden der Polymercharakterisierung」,Akademie−Verlag、ベルリン、47−54頁、1982年による。較正物質としてベンジルを使用する点で異なる)。
【0101】
本発明の使用方法のための反応生成物ERの調製
アンカスターラー、温度計、凝縮器、及びオーバーヘッド温度測定用の温度計を備えた4リットルのステンレス鋼反応器中に、128.1gのピロメリト酸二無水物(CAS No.89−32−7、Lonza社)(0.5873mol)及びOH価(DIN53240に従って決定されるOH価)56.1mgKOH/g(1.1750mol)を有する2349.9gの直鎖ポリTHF2000(BASF SE社)、及び50.0gのシクロヘキサンを、2.0gのジ−n−ブチルスズオキシド(Axion(登録商標)CS 2455、Chemtura社)の存在下で、製品温度130℃まで加熱し、その温度で維持した。
【0102】
約3時間後、反応混合物は透明であり、酸価を初めて決定した。酸価が26.3mgKOH/g(理論値:26.6mgKOH/g)になるまで、混合物をさらに3時間、130℃に保った。シクロヘキサンを、減圧下130℃で撹拌しながら、蒸留により除去した。ガスクロマトグラフィーにより、シクロヘキサン含有量が0.15質量%未満であることが見出された。
【0103】
3日後、最初は室温で液体であったポリマーが結晶化し始めた。固体ポリマーは、80℃の温度で容易に融解することができ、室温で少なくとも2時間液体のままでもあるので、この状態でコーティング配合物に容易に添加することができた。
【0104】
固形分(130℃、60分、1g):99.9%
酸価:26.3mgKOH/g
数平均分子量(蒸気圧浸透):4100g/mol
粘度(樹脂:ブチルグリコール(BASF SE社)=2:1):3100mPa・s、
(23℃でBrookfield製の回転式粘度計、CAP 2000+モデルを用いて、スピンドル3、剪断速度:2500s
−1で測定した)。
【0105】
水性ベースコート材料及び塗装系の製造、及び前記系の調査
以下の表に示す配合物構成成分及びその量に関しては、以下に注意すべきである。市販品又は他の場所に記述されている調製プロトコルについて言及する場合、いずれの場合もその構成成分について選択された主な呼称に関係なく、その言及は特にその市販品又は特に言及されたプロトコル内で調製された製品についてである。
【0106】
従って、配合物構成成分が主な呼称「メラミン−ホルムアルデヒド樹脂」を持つ場合、及び市販品がそれについて特定している場合には、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂はまさにその市販品の形態で使用される。従って、活性物質(メラミン−ホルムアルデヒド樹脂)の量について結論を出すのであれば、その市販品中に存在する溶媒などの任意のさらなる構成成分を考慮に入れなければならない。
【0107】
それ故、配合物構成成分について調製プロトコルが参照される場合、及びこの調製の結果として、例えば規定の固形分を有するポリマー分散液が得られる場合、まさにその分散液が使用される。選択された主な呼称が「ポリマー分散液」のものであるのか、又は例えば「ポリマー」、「ポリエステル」もしくは「ポリウレタン修飾ポリアクリレート」などの活性物質のみのものであるのかは、重要ではない。活性物質(ポリマー)の量について結論を出すのであれば、これを考慮に入れなければならない。
【0108】
表に示すすべての割合は質量部である。
【0109】
黒色金属水系ベースコート材料V1の製造
表Aの「水相」の下に列挙した成分を、述べた順序で撹拌しながら混ぜ合わせて水性混合物を形成した。次の工程において、「有機相」の下に列挙した成分から有機混合物を調製した。有機混合物を水性混合物に添加した。結果として得られた混合物を、次いで10分間撹拌し、脱イオン水及びジメチルエタノールアミンを使用してpH8に、及び回転粘度計(Mettler−Toledo社製の機器Retomat RM 180)を用いて測定して1000s
-lの剪断荷重下で100mPasのスプレー粘度に調整した。
【0110】
【表1】
【0111】
カーボンブラックペーストの調製
カーボンブラックペーストは、25質量部の、国際特許出願WO91/15528の結合剤分散液Aにより調製したアクリル化ポリウレタン分散液、10質量部のカーボンブラック、0.1質量部のメチルイソブチルケトン、1.45質量部のジメチルエタノールアミン(脱イオン水中10%)、2質量部の市販のポリエーテル(BASF SE社製Pluriol(登録商標)P900)、及び61.45質量部の脱イオン水から調製した。
【0112】
青色ペーストの調製
青色ペーストは、69.8質量部の、国際特許出願WO91/15528の結合剤分散液Aにより調製したアクリル化ポリウレタン分散体、12.5質量部のPaliogen(登録商標)Blue L 6482、1.5質量部のジメチルエタノールアミン(脱イオン水中10%)、1.2質量部の市販のポリエーテル(BASF SE社製Pluriol(登録商標)P900)、及び15質量部の脱イオン水から調製した。
【0113】
本発明の黒色金属水系ベースコート材料E1〜E4の製造
水系ベースコート材料E1:
表Bの「水相」の下に列挙した成分を、述べた順序で撹拌しながら混ぜ合わせて水性混合物を形成した。次の工程において、「有機相」の下に列挙した成分から有機混合物を調製した。有機混合物を水性混合物に添加した。結果として得られた混合物を、次いで10分間撹拌し、脱イオン水及びジメチルエタノールアミンを使用してpH8に、及び回転粘度計(Mettler−Toledo社製の機器Retomat RM 180)を用いて測定して1000s
-lの剪断荷重下で100mPasのスプレー粘度に調整した。
【0114】
【表2】
【0115】
水系ベースコート材料E2を表Bにより製造したが、4.09質量部ではなく6.82質量部のメラミン−ホルムアルデヒド樹脂(BASF社製Luwipal(登録商標)052)を使用し、及び32.33質量部ではなく25.95質量部の、WO2015/091204A1の実施例A(第72頁第8行〜第75頁第11行)により調製したポリウレタン系グラフトコポリマーを使用した。
【0116】
水系ベースコート材料E3を表Bにより製造したが、3.15質量部ではなく5.25質量部の反応生成物ERを使用し、及び32.33質量部ではなく25.95質量部の、WO2015/091204A1の実施例A(第72頁第8行〜第75頁第11行)により調製したポリウレタン系グラフトコポリマーを使用した。
【0117】
水系ベースコート材料E4を表Bにより調製したが、0.67質量部のNacure 2500(King Industries社)を添加した。
【0118】
水系ベースコート材料V1及びE1〜E4との間の比較:
ストーンチップ耐性:
以下の一般的なプロトコルに従ってマルチコート塗装系を製造することにより、ストーンチップ耐性を決定した。
【0119】
使用した基材は、CEC(陰極電着コーティング)でコーティングした10×20cmの寸法を有する鋼パネルであった。
【0120】
このパネルに最初に空気圧で塗布したのは、20マイクロメートルの目標膜厚(乾燥膜厚)を有するそれぞれのベースコート材料(表1参照)であった。ベースコートは、室温で1分間フラッシュした後、強制空気オーブン中70℃で10分間、中間乾燥させた。中間乾燥した水系ベースコート膜上に、40マイクロメートルの目標膜厚(乾燥膜厚)を有する慣例の二成分クリアコート材料(BASF Coatings GmbH社製のProgloss(登録商標)372)を塗布した。結果として得られたクリアコート膜を、室温で20分間フラッシュした。その後、水系ベースコート膜及びクリアコート膜を、強制空気オーブン中で様々な温度で30分間硬化させた(表1参照)。
【0121】
さらなる実験において、室温でのフラッシュ及び強制空気オーブン中70℃で10分間のベースコート材料の中間乾燥の後に得られたコーティング系を、クリアコートでさらにコーティングせずに、強制空気オーブン中で様々な温度で30分間、直接硬化させた(表1参照)。
【0122】
結果として得られたマルチコート塗装系のストーンチップ耐性について調査した。この目的のために、ストーンチップ試験をDIN 55966−1に従って実施した。ストーンチップ試験の結果をDIN EN ISO 20567−1に従って評価した。値が小さいほど、ストーンチップ耐性が優れていることを表す。
【0123】
結果として得られたマルチコート塗装系のクロスカット接着性についても調査した。この目的のために、クロスカットをDIN EN ISO 2409:2013−6に従って実施した。クロスカット試験の結果は、DIN EN ISO 2409:2013−6に従って評価した。低い結果値は改善された接着性を示す。
【0124】
さらに、このように処理された鋼パネルを、DIN 55662:2009−12(方法A)による蒸気ジェット試験に供し、次いで前記DINに従って評価した。
【0125】
結果を表1に示す。水系ベースコート材料(WBM)の表示は、いずれの場合も、どのWBMをそれぞれのマルチコート塗装系で使用したかを示す。CCCは結露調整チャンバー(condensation conditioning chamber)を表し、ストーンチップ及び/又は蒸気ジェット試験に先立つDIN EN ISO 6270−2に従う試験パネルの暴露を示す。
【0126】
【表3】
【0127】
全体として、本発明のWBMは、特に低い硬化温度において、著しく良好な接着特性を示すことが明らかになった。水系ベースコート材料E1及びE4を代表例として選択し、一成分系としては極めて低い焼き付け温度で硬化させた。これは、たった80℃の焼き付け温度でさえ、仕様に準拠した系が達成可能であることを示した。
【0128】
さらに、本発明のすべての水系ベースコート材料を比較例の系と比較すると、本発明の系は、クリアコートを含まない系において、やはり1K系としては非常に低い焼き付け温度である100℃で、非常に良好な結果を示すことが明らかである。一方、比較例の水系ベースコート材料は、クロスカット及び蒸気ジェットについて、許容可能な結果をもはや示さない。
【0129】
赤色金属水系ベースコート材料V2の製造:
表Cの「水相」の下に列挙した成分を、述べた順序で撹拌しながら混ぜ合わせて水性混合物を形成した。次の工程において、「有機相」の下に列挙した成分から有機混合物を調製した。有機混合物を水性混合物に添加した。結果として得られた混合物を、次いで10分間撹拌し、脱イオン水及びジメチルエタノールアミンを使用してpH8に、及び回転粘度計(Mettler−Toledo社製の機器Retomat RM 180)を用いて測定して1000s
-lの剪断荷重下で100mPasのスプレー粘度に調整した。
【0130】
【表4】
【0131】
赤色ペーストの調製:
赤色ペーストは、45.0質量部の、国際特許出願WO91/15528の結合剤分散体Aにより調製したアクリル化ポリウレタン分散体、21.0質量部のPaliogen(登録商標)Red L 3885、0.7質量部のジメチルエタノールアミン、2.5質量部の1,2−プロピレングリコール、及び30.8質量部の脱イオン水から調製した。
【0132】
本発明の赤色金属水系ベースコート材料E5及びE6の製造:
水系ベースコート材料E5:
表Dの「水相」の下に列挙した成分を、述べた順序で撹拌しながら混ぜ合わせて水性混合物を形成した。次の工程において、「有機相」の下に列挙した成分から有機混合物を調製した。有機混合物を水性混合物に添加した。結果として得られた混合物を、次いで10分間撹拌し、脱イオン水及びジメチルエタノールアミンを使用してpH8に、及び回転粘度計(Mettler−Toledo社製の機器Retomat RM 180)を用いて測定して1000s
-lの剪断荷重下で100mPasのスプレー粘度に調整した。
【0133】
【表5】
【0134】
水系ベースコート材料E6を表Dに従って製造したが、3.11質量部ではなく5.18質量部の反応生成物ERを使用し、及び25.57質量部ではなく19.20質量部の、WO2015/091204A1の実施例A(第72頁第8行〜第75頁第11行)により調製したポリウレタン系グラフトコポリマーを使用した。
【0135】
水系ベースコート材料V2及びE5−E6との間の比較:
コーティング材料V2、E5、及びE6の性能について、水系ベースコート材料V1及びE1〜E4との間の比較と同じ手段で調査した。得られた結果を表2に示す。
【0136】
【表6】
【0137】
選択した条件下(特に、1K系としては低い硬化温度を意味する)で、本発明のWBMは著しく良好な接着特性を示すことが、やはり見出された。比較例の系は、その上に配置されたクリアコートを有していても、低温でストーンチップ頑健性に関して弱点を示し、1つの硬化温度で蒸気ジェット曝露に極めて敏感である一方で、本発明の系は非常に良好な特性を示す。
【0138】
さらに、水系ベースコート材料V2及びE5及びE6の異なる基材上でのそれらの接着特性について調査した。
【0139】
サーフェイサー上の水系ベースコート材料V2及びE5からE6との間の比較:
コーティング材料V2、E5、及びE6を使用して、水系ベースコート材料V1及びE1〜E4について上述した調製プロトコルと同様にして塗装系を製造した。しかしながら、以下のように製造した異なる基材を使用した。
【0140】
標準CECでコーティングした10×20cmの寸法を有する鋼パネルを、Hemmerrath製の標準サーフェーサーでコーティングした。水性サーフェイサーを80℃で10分間中間乾燥した後、サーフェイサーを190℃の温度で30分間焼き付けた。
【0141】
次いで、完成した塗装系において、それぞれのベースコートをCEC上に直接配置するのではなく、代わりにサーフェイサーコート上に配置した。
【0142】
得られた結果を表3に示す。
【0143】
【表7】
【0144】
プラスチック基材上のWBM V2及びE5からE6との間の比較
コーティング材料V2、E5、及びE6を使用して、水系ベースコート材料V1及びE1〜E4について上述した調製プロトコルと同様にして塗装系を製造した。しかしながら、プラスチック基材を使用した(Lyondell Basell社製のHifax(登録商標)TRC 221X)。次いで、完成した塗装系において、それぞれのベースコート材料を金属基材上に配置されたCEC上に直接配置するのではなく、代わりにプラスチック基材上に配置した。結果を表4に示す。
【0145】
【表8】
【0146】
結果は、別の基材上でさえも、著しく改善された接着特性の効果が確認されることを示す。