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特許6896072エネルギー伝送装置、及び、エネルギー伝送方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896072
(24)【登録日】2021年6月10日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】エネルギー伝送装置、及び、エネルギー伝送方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/40 20160101AFI20210621BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20210621BHJP
   H02J 50/60 20160101ALI20210621BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20210621BHJP
【FI】
   H02J50/40
   H02J50/10
   H02J50/60
   H02J50/80
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-522643(P2019-522643)
(86)(22)【出願日】2017年8月8日
(65)【公表番号】特表2019-537411(P2019-537411A)
(43)【公表日】2019年12月19日
(86)【国際出願番号】EP2017070070
(87)【国際公開番号】WO2018077504
(87)【国際公開日】20180503
【審査請求日】2019年4月26日
(31)【優先権主張番号】102016221225.7
(32)【優先日】2016年10月27日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【弁理士】
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】シュマン,フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】エップラー,シュテッフェン
【審査官】 坂東 博司
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/024869(WO,A1)
【文献】 特表2017−525332(JP,A)
【文献】 特表2010−527226(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2016/0079798(US,A1)
【文献】 特開2014−176125(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/40
H02J 50/10
H02J 50/60
H02J 50/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気エネルギーの非接触式伝送のためのエネルギー伝送装置(1、10)であって、
複数の送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)及び複数の受信コイル(4、5、14、15)と、
エネルギー伝送モードにおいて、予め定められた条件を満たす前記複数の送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)を1つずつ連続的に駆動することを繰り返すよう構成され、直近に駆動された前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)と最大の距離間隔を有する送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)を次に駆動するよう構成された制御装置(6、16)と、
を備える、エネルギー伝送装置(1、10)。
【請求項2】
前記制御装置(6、16)は、識別モードにおいて、前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)ごとにそれぞれ、個々の前記受信コイル(4、5、14、15)との結合係数を確認し、前記エネルギー伝送モードで駆動される前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)を、前記結合係数が最も高いコイルの対から開始して、前記結合係数に従って選択するよう構成される、請求項1に記載のエネルギー伝送装置(1、10)。
【請求項3】
前記制御装置(6、16)は、前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)を連続的に駆動させる際には、各前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)を、1秒より短い期間の間駆動するよう構成される、請求項1または2に記載のエネルギー伝送装置(1、10)。
【請求項4】
各前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)を、500ミリ秒より短い期間の間駆動するよう構成される、請求項に記載のエネルギー伝送装置(1、10)。
【請求項5】
各前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)を、250ミリ秒よりも短い期間の間駆動するよう構成される、請求項に記載のエネルギー伝送装置(1、10)。
【請求項6】
各前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)を、100ミリ秒よりも短い期間の間駆動するよう構成される、請求項に記載のエネルギー伝送装置(1、10)。
【請求項7】
前記エネルギー伝送装置(1、10)は、前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)を駆動するための交流電流を生成するよう構成された交流電流源(19)と、前記交流電流源(19)を、制御可能に前記複数の送信コイルのうちの1つと電気的に結合するよう構成されたスイッチ(20)と、を有し
前記制御装置(6、16)は、前記複数の送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)のうちの1つを駆動するために、前記スイッチ(20)を駆動するよう構成される、
請求項1〜のいずれか1項に記載のエネルギー伝送装置(1、10)。
【請求項8】
前記制御装置(6、16)は、前記予め定められた条件を満たす前記複数の送信コイルを動的に、前記受信コイルの1つとの各前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)の前記結合係数の閾値に基づいて決定するよう構成される、請求項2に記載のエネルギー伝送装置(1、10)。
【請求項9】
コンピュータ装置によって実行される、複数の送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)及び複数の受信コイル(4、5、14、15)を用いた電気エネルギーの非接触式伝送のためのエネルギー伝送方法であって、
エネルギー伝送モードにおいて、予め定められた条件を満たす前記複数の送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)を1つずつ連続的に駆動すること(S2)を繰り返すことであって、直近に駆動された前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)と最大の距離間隔を有する前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)が次に駆動される、ことと、
を有する、エネルギー伝送方法。
【請求項10】
識別モードにおいて、前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)ごとに、個々の前記受信コイル(4、5、14、15)との結合係数が確認され、
前記エネルギー伝送モードにおいて駆動される前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)が、前記結合係数が最も高いコイルの対から開始して、前記結合係数に従って選択される、
請求項に記載のエネルギー伝送方法。
【請求項11】
前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)が連続的に駆動される際には、各前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)は、1秒より短い期間の間駆動される、請求項9または10に記載のエネルギー伝送方法。
【請求項12】
各前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)は、500ミリ秒より短い期間の間駆動される、請求項11に記載のエネルギー伝送方法。
【請求項13】
各前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)は、250ミリ秒よりも短い期間の間駆動される、請求項12に記載のエネルギー伝送方法。
【請求項14】
各前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)は、100ミリ秒よりも短い期間の間駆動される、請求項13に記載のエネルギー伝送方法。
【請求項15】
前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)を駆動するための交流電流を生成することと、
前記交流電流と、前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)のうちの1つと、を電気的に結合することと、
を有する、請求項14のいずれか1項に記載のエネルギー伝送方法。
【請求項16】
前記予め定められた条件を満たす前記複数の送信コイルは動的に、前記受信コイルの1つとの各前記送信コイル(2、3、11、12、13、30、31、32)の前記結合係数の閾値に基づいて決定される、請求項10に記載のエネルギー伝送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気エネルギーの非接触式伝送のためのエネルギー伝送装置、及び、対応するエネルギー伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、以下では主に、携帯電話、タブレットPC等の携帯可能な電子機器の充電に関して記載される。しかしながら、本発明は上記の適用には限定されず、電気エネルギーが伝送されるところではどこでも、例えば電気自動車の充電の際に利用されうる。
【0003】
例えば携帯電話等の電子機器は、通常では、当該電子機器の駆動のために必要な電気エネルギーを供給する電池を有している。電池が空の場合には、充電する必要がある。
【0004】
ケーブルを介して電子機器と接続されており、電池を充電するための充電電圧を提供するケーブル接続された充電装置が、通常では利用される。ケーブルは非実用的であるため、無線による、特に誘導的な充電方法もますます使用されている。
【0005】
誘導的な充電方法の場合、電池を充電するための電気エネルギーは、一次側とも称される送信コイルから、二次側とも称される受信コイルへと伝送される。送信側と受信側とでコイルがそれぞれ利用される際には、これらのコイルは互いに正確に位置決めされる必要がある。即ち、自由に配置することは可能ではない。
【0006】
自由に配置することを可能とするために、一次側/二次側で複数のコイルを利用し、結合係数が最も高いコイルの対を、エネルギー伝送のために使用することが可能である。
【0007】
その際に、コイルの間に存在する金属物が加熱される可能性があることに注意されたい。
【0008】
従って、金属物を検知し、そのような物が検出された場合には充電を止める金属体検出システムが利用されうる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、請求項1の特徴を備えるエネルギー伝送装置と、請求項7の特徴を備えるエネルギー伝送方法と、を開示する。
【0010】
本発明によれば、電気エネルギーの非接触式伝送のためのエネルギー伝送装置であって、複数の送信コイル及び複数の受信コイルと、エネルギー伝送モードにおいて所定数の送信コイルを連続的に駆動するよう構成された制御装置と、を備える、上記エネルギー伝送装置が構想される。
【0011】
さらに、電気エネルギーの非接触式伝送のためのエネルギー伝送方法であって、複数の送信コイル及び複数の受信コイルを準備することと、エネルギー伝送モードにおいて、所定数の前記送信コイルを連続的に駆動することと、を有する、上記エネルギー伝送方法が構想される。
【0012】
本発明に係るエネルギー伝送装置は例えば、携帯電話、タブレットPC等の携帯機器を充電するために利用されうる。しかしながら、エネルギー伝送装置は、例えば、車両等の誘導的な充電のためにも利用されうる。
【0013】
送信コイルとして、エネルギー伝送装置では、一次側又はエネルギー源の側に、即ち、電気供給ネットワーク若しくはコンセントの側に配置されたコイルとして理解される。受信コイルは、エネルギー伝送装置では、受信側、即ち二次側に配置されるコイルを意味する。従って、送信コイルは、例えば電磁場の形態により電気エネルギーを送信する。受信コイルは、この電気エネルギーを受信して各機器へと転送する。
【0014】
エネルギー伝送モードにおける駆動においては、制御装置は、送信コイルに、例えば交流電流又は交流電圧を供給し、従って、送信コイルは所望の電磁場を形成する。受信側では、個々の受信コイルが、例えば整流器と結合されており、従って、整流された電流又は整流された電圧が供給され、この整流された電流又は整流された電圧は、受信者側では、例えば、電池を充電するために利用されうる。
【0015】
複数の送信コイルと複数の受信コイルとは、送信側及び受信側でそれぞれ所謂マルチコイル(Multi‐Coil)・コイルシステムを形成する。このようなシステムによって、受信コイルに対して送信コイルを自由に配置することが可能となる。従って、受信側マルチコイル・コイルシステムに対する送信側マルチコイル・コイルシステムの位置に従って、様々なコイルの対が発生する。
【0016】
公知のシステムでは、結合係数が最も高い1つのコイル対が、疑似連続駆動(Quasi‐Dauerbetrieb)により駆動される。即ち、個々のコイルが、通常では数秒の期間に亘ってフルパワーで駆動される。金属物がコイルの間に存在する場合、この金属物は、先に既に解説したように加熱される可能性がある。
【0017】
これに対して、本発明では、個々のコイルは、疑似連続駆動では駆動されない。むしろ、複数のコイル対が選択され、この複数のコイル対が連続的に、即ち交互に又は相前後して駆動される。従って、各個別コイルは短い期間だけ駆動されるが、総計では永続的に、電気エネルギーが送信コイルと受信コイルとの間で伝送される。
【0018】
電気エネルギーは、常に他のコイル対によって、これにより様々な場所で伝送されるため、金属物が上記コイル対のうちの1つのコイル対の間に存在する場合には、僅かにしか加熱されない。
【0019】
従って、本発明によって、金属検出が行われないエネルギー伝送装置を提供することが可能であり、同時に、受信コイルに対する送信コイルの自由な配置が可能となる。
【0020】
有利な実施形態及び発展形態が、従属請求項及び以下の明細書の記載から、図面を参照して明らかとなろう。
【0021】
一実施形態において、制御装置は、識別モードにおいて、送信コイルごとにそれぞれ、個々の受信コイルとの結合係数を確認し、エネルギー伝送モードで駆動される送信コイルを、送信コイル及び受信コイルから成るコイル対であって、結合係数が最も高い上記コイル対から開始して、結合係数に従って選択するよう構成されうる。即ち、任意のコイル対がエネルギー伝送のために選択されるわけではない。むしろ、結合係数が最も高いコイル対がエネルギー伝送のために選択され、これにより、エネルギー伝送の効率が最大化される。
【0022】
一実施形態において、制御装置は、送信コイルを連続的に駆動させる際には、直近に駆動された送信コイルとの最大間隔を有する送信コイルを次に駆動するよう構成されうる。その際に、例えば各周期で、選択された全送信コイルが厳密に1回駆動され、その後、この周期が繰り返される。送信コイルが駆動される順序は上記間隔から決定される。金属物がコイルの間に存在する場合には、金属物が局所的に、可能な限り互いに遠く離れた場所で加熱されることが保証される。送信コイルを切り替えることによって、即ち連続的な駆動によって、金属部の内部には僅かな熱しか生じない。
【0023】
当然のことながら、個々の送信コイルが駆動される際には他の順序も選択されうる。例えば、送信コイル間の平均間隔が最大化されてもよい。このためには例えば、送信コイルを駆動するための各可能な順序が調査されうる。
【0024】
一実施形態において、制御装置は、送信コイルを連続的に駆動させる際には、各送信コイルを、1秒より短い期間、特に、500ミリ秒より短く、250ミリ秒よりも短く、又は、100ミリ秒よりも短い期間の間駆動するよう構成されうる。(存在する場合に)金属物が、送信コイルの1つの電磁場により長く晒されるほど、より強度に加熱される。各個々の送信コイルが駆動される時間は、上記コイルの電流の他に、局所的に送信コイルの上方の金属物の内部で生じる熱に影響を与える。上記の期間によって、適用に従って、制御装置がどのくらい速さでコイルを切り替えるかが選択される。
【0025】
追加的又は代替的に、計算装置は、上記期間を動的にも、相前後して駆動されるコイルの間隔に基づいて決定することが可能であり、間隔が大きいほど上記期間は長い。
【0026】
更なる別の追加的又は代替的な実施形態において、個々の送信コイルを駆動する電流のための最大値が予め設定されてもよい。この場合、上記期間、及び、上記電流のための最大値は、各送信コイルの上方に場合により存在する金属体への最大エネルギー入力に従って選択されうる。
【0027】
結合係数が高いコイルでは、同じ電流で、結合係数がより低いコイルよりも多くの電気エネルギーが伝送される。従って、個々の送信コイルを駆動する電流が、送信コイルごとにその結合係数に応じて、最大エネルギー入力のための限界値を超過しないように最大化される。個々の送信コイルが駆動される期間は、場合によって変更可能であり、従って、金属物への平均エネルギー入力が所定の限界値を超過しない。
【0028】
一実施形態において、エネルギー伝送装置は、送信コイルを駆動するための交流電流又は交流電圧を生成するよう構成された交流電流源又は交流電圧源と、交流電流源又は交流電圧源を、制御可能に送信コイルの1つと電気的に結合するよう構成されたスイッチと、を有しうる。制御装置は、送信コイルの1つをそれぞれ駆動するために、スイッチを駆動するよう構成されうる。即ち、1つの電源によって複数の送信コイルを駆動することが可能である。例えば、2つの電源が存在してもよく、又は、スイッチが、交流電流源又は交流電圧源を同時に、送信コイルのうちの2つに結合してもよい。2つより多い送信コイルが利用可能である場合には、例えば2個のコイルが、電気エネルギーを伝送するために同時に利用されてもよい。2個のコイル対の利用の前に、例えば、各コイル対の間の間隔が十分に大きいか(所定の閾値よりも大きいか)が検査されてもよい。
【0029】
一実施形態において、上記所定数は動的に、受信コイルの1つとの各送信コイルの結合係数のための限界値に基づいて決定されうる。即ち、その結合係数が所定の限界値を上回るコイル対が全て連続的に駆動される。例えば2、3、4、5、6、又はそれより大きな数等の固定の数の送信コイルの代わりに、幾つの送信コイルが利用されるかが動的に決定される。例えば、10個の送信コイル及び10個の受信コイルが存在しており、これらのコイルがそれぞれ対単位で直接的に重なり合っており、即ち高い結合係数を有する場合には、10個のコイル対の全てがエネルギー伝送のために利用されてもよい。
【0030】
当然のことながら、エネルギー伝送のために少なくとも利用されるコイル対の最小数も予め設定されてもよい。例えば、常に少なくとも2つのコイル対が、その結合係数が限界値を下回っていたとしても、エネルギー伝送のために利用されなければならないことが予め設定されうる。
【0031】
十分な結合係数(例えば、所定の最小結合係数)を有する2つのコイルが見つからない場合にも、受信コイルを送信コイルに対して新たに位置決めする必要があることが、例えば表示されうる。
【0032】
一実施形態において、制御装置は、個々の送信コイルごとの送信側又は一次側の結合係数を、以下のことで決定するよう構成され、即ち、制御装置が、順々に各送信コイルを所定の電流、特に交流電流により通電し、得られた電流を各受信コイルで測定することで、決定するよう構成されうる。結合係数の測定時の電流は、エネルギー伝送時の電流よりも特に小さくてもよい。結合係数は、厳密に決定される必要はない。むしろ、結合係数を定量的に決定するだけで十分である。即ち、どの受信コイルでそれぞれ最大電流が測定されるかを確認するだけで十分である。送信コイルと受信コイルとが同一であり、即ち、特に同じインダクタンスを有する場合には、結合係数は、近似的に、送信コイルの電流に対する送信コイルの電流の比として計算されうる。送信コイルと受信コイルでインダクタンスが異なる際には、この異なるインダクタンスが、計算の際にも同様に考慮されうる。
【0033】
一実施形態において、制御装置は、受信コイルが開放された状態(offen)及び受信コイルが短絡した状態で送信コイルのインダクタンスを測定することで、個々の送信コイルごとの送信側又は一次側の結合係数を決定するよう構成されうる。このために、制御装置は、受信側又は二次側に切り替え装置を有することが可能であり、切り替え装置は、受信コイルを個別に又は同時に開放するよう構成され、即ち、受信コイルの接点を他の構成要素と結合させず受信コイルを短絡させるよう構成される。この場合に、結合係数は、1−各送信コイルのインダクタンス(短絡/解放)の比の平方根として決定されうる。この場合、上記インダクタンスはそれぞれ、例えば、公知の容量を有する発振回路の共振周波数の測定値に基づいて決定されうる。
【0034】
一実施形態において、制御装置は、2つの個別計算装置、例えばコントローラを有しうる。計算装置の一方は例えば一次側に配置され、計算装置のもう一方は、二次側に配置されうる。2つの計算装置は、例えば、無線通信インタフェースを介して互いに通信接続していてもよい。従って、二次側の計算装置は、一次側の計算装置に対して、例えば、どの受信コイルでどの時点に最大電流が測定されたか、及び/又は、測定された電流はどのくらいの大きさなのかについて報知することが可能である。さらに、一次側の計算装置は、二次側の計算装置に対して、例えば、いつ、どの受信コイルが開放又は短絡されるべきか、及び、最終的にはどのコイル対を介してエネルギー伝送が実行されるのかについて報知することが可能である。
【0035】
上記の構成及び発展形態は、有効である限り任意に互いに組み合わせられうる。本発明の他の可能な構成、発展形態、及び実現は、本発明の実施例に関して前述又は以下に後述される特徴同士の明示的に挙げられない組み合わせも含む。特に、当業者は、個々の観点も、本発明の各基本形態に対する改良又は補完として追加するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
以下では、本発明が、図面の概略図に示される実施例によって詳細に解説される。
図1】本発明の一実施形態に係るエネルギー伝送装置のブロック図を示す。
図2】本発明の他の実施形態に係るエネルギー伝送装置のブロック図を示す。
図3】本発明の一実施形態に係るエネルギー伝送方法のフロー図を示す。
図4】本発明の一実施形態に係るエネルギー伝送装置の送信コイルの駆動を説明するための図を示す。
【0037】
全ての図において、同一又は機能的に同一の構成要素及び装置には、他に特に記載しない限り、同じ符号が付される。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1は、例えば電子機器内の電池を充電するための、電気エネルギーの非接触式伝送のためのエネルギー伝送装置1を示している。
【0039】
エネルギー伝送装置1は、一次側、即ち送信側15に送信コイル2、3を有する。分かり易さのために、第1の送信コイル2、最後の送信コイル3のみ符号が付されている。送信コイルは、3×5のマトリクス状に配置され、即ち、送信コイル2、3が3行及び5列に配置されている。この配置は、単に例示的なものとして理解されたい。当然のことながら適用に従って、他の数による送信コイル2、3、又は他の配置による送信コイル2、3が選択されうる。受信側又は二次側の受信コイル4、5が、送信コイル2、3の配置に類似して提示されている。ここでも、分かり易さのために、第1の受信コイル4、第2の受信コイル5のみ符号が付されている。
【0040】
さらに、制御装置6が示されており、この制御装置6は、エネルギー伝送モードにおいて送信コイル2、3を駆動するため又は送信コイル2、3に交流電流若しくは交流電圧を供給するために、送信コイル2、3と結合されている。しかしながら、制御装置6は、全ての送信コイル2、3を駆動するわけではなく、又は偶然選択された送信コイル2、3を駆動する。むしろ、制御装置6は、所定数の送信コイル2、3を連続的に、即ち順々に駆動する。このことによって、送信コイル2、3と受信コイル4、5との間で電力が永続的に伝送される。同時に、電気エネルギーが伝送される場所が継続的に変更される。送信コイル2、3と受信コイル4、5の間に金属物が存在する場合に、この金属物は、次の送信コイル2、3が駆動するまで、局所的にかつ短時間だけ加熱される。
【0041】
特に、例えばスマートフォン等の携帯機器の場合、正確に送信コイル2、3の上方に配置されておらず、これにより、送信コイル2、3及び受信コイル4、5も正確には重なり合っていないということが起こりうる。即ち、コイルの形状的マトリクス配置において同じ箇所に存在しない送信コイル2、3と受信コイル4、5とが互いに強度に結合している可能性がある。
【0042】
エネルギー伝送を可能な限り効率良く形成するために、識別モードにおいて、制御装置6は、送信コイル2、3ごとに、受信コイル4、5の1つとの結合係数を決定することが可能である。この場合、制御装置6は、エネルギー伝送のために、結合係数が最も高い送信コイル2、3を利用することが可能である。使用される送信コイル2、3の数は、例えば予め設定されてもよい。例えば、一適用において、4個の最大結合係数を有する4個の送信コイル2、3が、エネルギー伝送のために利用されることが予め設定されうる。代替的に、利用される送信コイル2、3の数が個別に決定されてもよい。例えば、その結合係数が所定の閾値を上回る全ての送信コイル2、3が利用されることが予め設定されうる。結合係数として、実際の結合係数についての定量的な記述を可能とするいずれの値も扱われうる。例えば、送信コイル2、3での電流が分かっている場合には、受信コイル4、5で測定された電流が、結合係数と称されうる。
【0043】
金属物での局所的なエネルギー入力、及び、これにより、金属物の加熱を可能な限り僅かに保つために、制御装置6は、送信コイル2、3を連続的に駆動させる際に、その都度、直近に駆動された送信コイル2、3との最大間隔を有する送信コイル2、3を次に駆動することが可能である。このことにより、2つより多い送信コイル2、3がエネルギー伝送のために提供される場合に互いに最も離れた送信コイル2、3の間を行ったり来たりして飛ぶことが意図されていないと理解されたい。むしろ、計算装置6は、送信コイル2、3の駆動のための順序を決定することが可能であり、従って、直接的に相前後して駆動される送信コイル2、3が、互いに可能な限り遠くに離れており、又は、相前後して駆動される送信コイル2、3の間の平均間隔が最大化される。ここで、制御装置6は、各送信コイル2、3を所定の期間の間、例えば、1s又は500msよりも短く、250msより短く、又は100msより短い期間の間駆動しうる。
【0044】
代替的に、計算装置6は、上記の期間を動的にも、相前後して駆動されるコイルの間隔に基づいて決定することが可能であり、間隔がより大きい場合には、上記の期間がより長くなる。
【0045】
図2は、本発明に基づくエネルギー伝送装置10を示しており、このエネルギー伝送装置10は、エネルギー伝送装置1に基づいている。15個の送信コイル(そのうちの3つに符号11、12、13が付されている)及び受信コイルに加えて、エネルギー伝送装置10は、交流電流19と、スイッチ20と、を有する。交流電流源19は、例えば、インバータ(Inverter)又は逆変換装置であってもよい。交流電流源19は、例えば、ネットワーク電圧を必要な電圧に変圧し対応する電流調整器を有する変圧器であってもよい。
【0046】
さらに、制御装置16は2つに分かれている。ここで、計算装置17が、送信側又は一次側に配置されている。第2の計算装置18は、受信側又は二次側に配置されている。2つの計算装置17及び18は、無線で互いに通信することが可能である。このために、例えば、送信コイル11、12、13を駆動する交流電流を変調させることが可能である。代替的に、別体の通信インタフェース、例えば、NFC、Bluetooth(登録商標)、WLAN等が設けられてもよい。
【0047】
計算装置17は、スイッチ20を駆動し、従って、それぞれ所望の送信コイル11、12、13に対して電気エネルギー、即ちここでは交流電流源19の交流電流が供給される。スイッチ20は、図面では、送信コイルのうちの3つの送信コイル11、12、13と結合されている。スイッチ20は、全ての送信コイル11、12、13を駆動するよう構成されていると理解されたい。さらに、スイッチ20は、複数の送信コイル11、12、13を同時に駆動するようにも構成されうる。例えば、マトリックスの隅の4個の送信コイルは高い結合係数を有していることもある。このような場合に、互いに対向する2つの送信コイルが同時に駆動されることもある。
【0048】
計算装置17は、個々の送信コイル11、12、13ごとの送信側又は一次側の結合係数を、以下のことで決定することが可能であり、即ち、計算装置17は、送信コイル11、12、13に所定の電流、特に交流電流により通電する。同時に、計算装置18は、受信側又は二次側でそれぞれ、個々の受信コイル14、15で電流を測定し、この情報を計算装置17に伝送することが可能である。計算装置17は、上記電流の値によって、最も強度に結合しているコイルの対(複数も含む)を識別する。代替的に、計算装置18は、送信コイル11ごとの結合係数の値についての情報のみを伝送してもよい。結合係数は、上述したように、例えば二次側での電流測定に基づいて、定量的にのみ決定されてもよい。このような定量的な決定は、エネルギー伝送のために利用される送信コイル11、12、13を識別するためには十分である。定量的な決定においては、例えば、受信コイル14、15での電流の値が比較値として利用されうる。
【0049】
代替的に、計算装置17は、個々の送信コイル11、12、13ごとの送信側又は一次側の結合係数を、以下のことで決定することが可能であり、即ち、計算装置17は、受信コイル14、15が開放された状態及び受信回路14、15が短絡した状態で、送信コイル11、12、13のインダクタンスを測定する。このために、計算装置18は、受信側又は二次側に、切り替え装置を有することが可能であり、この切り替え装置は、受信コイル14、15を個別に又は同時に、開放又は短絡させるよう構成される。この場合、結合係数は、1−各送信コイル11、12、13のインダクタンス(短絡/解放)の比の平方根として決定されうる。計算装置17は、インダクタンスを、例えば、公知の容量を有する発振回路の共振周波数の測定値に基づいて決定することが可能である。
【0050】
図3は、電気エネルギーの非接触式伝送のためのエネルギー伝送方法のフロー図を示している。
【0051】
本方法では、複数の送信コイル2、3、11、12、13、30、31、32及び複数の受信コイル4、5、14、15を準備すること(S1)が設けられる。さらに、エネルギー伝送モードにおいて、所定数の送信コイル2、3、11、12、13、30、31、32が連続的に駆動される(S2)。
【0052】
送信コイル2、3、11、12、13、30、31、32が駆動される際には、交流電流又は交流電圧が生成され、周期的又は連続的に、送信コイル2、3、11、12、13、30、31、32のうちの対応する送信コイルでそれぞれ提供されうる。駆動される送信コイル2、3、11、12、13、30、31、32の数は、例えば動的に、受信コイルの1つとの各送信コイル2、3、11、12、13、30、31、32の結合係数のための限界値に基づいて決定されうる。
【0053】
エネルギー伝送ために利用される送信コイル2、3、11、12、13、30、31、32を識別するために、識別モードにおいて、送信コイル2、3、11、12、13、30、31、32ごとにそれぞれ、受信コイル4、5、14、15の1つとのその結合係数が確認されうる。その後、エネルギー伝送モードにおいて、駆動される送信コイル2、3、11、12、13、30、31、32が、結合係数が最も高いコイルから開始して、結合係数に従って選択されうる。
【0054】
送信コイル2、3、11、12、13、30、31、32が連続的に駆動される際に、直近に駆動された送信コイル2、3、11、12、13、30、31、32との最大間隔を有する送信コイル2、3、11、12、13、30、31、32が次に駆動されることで、局所的なエネルギー入力、及び、これにより、金属物の局所的な加熱が最小に抑えられる。送信コイル2、3、11、12、13、30、31、32が連続的に駆動される際には、送信コイル2、3、11、12、13、30、31、32はそれぞれ、1秒よりも短い期間の間、特に、500ミリ秒より短く、250ミリ秒より短く、又は100ミリ秒より短い期間の間駆動されうる。
【0055】
図4は、送信コイル30、31、32の駆動を説明するための図を示している。送信コイル30、31、32が、図1及び図2でも示したような、15個の送信コイルを含むマトリクスにより配置されている。送信コイル30、31、32は、破線で示されており、対応する受信コイルに対する結合係数が最も高い3つの送信コイル30、31、32を表している。
【0056】
送信コイル30、31、32の隣の図には、個々の送信コイル30、31、32がどのように駆動されるのかが示されている。送信コイル30、31、32の1つのみが同時に駆動されることが分かる。最初に、送信コイル30が駆動され、続いて、送信コイル31が駆動され、最後に、送信コイル32が駆動される。このシーケンスが、全充電過程の間に連続的に繰り返される。
【0057】
以上、好適な実施例を用いて本発明を記載してきたが、本発明は上記実施例には限定されず、多様な形態で変更可能である。特に、本発明は、様々なやり方で、本発明の核を逸脱することなく変更又は修正される。
図1
図2
図3
図4