(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896081
(24)【登録日】2021年6月10日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】弁
(51)【国際特許分類】
F16K 31/06 20060101AFI20210621BHJP
F16K 39/02 20060101ALI20210621BHJP
F16K 1/00 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
F16K31/06 305N
F16K39/02
F16K1/00 A
【請求項の数】16
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-534386(P2019-534386)
(86)(22)【出願日】2017年12月13日
(65)【公表番号】特表2020-502453(P2020-502453A)
(43)【公表日】2020年1月23日
(86)【国際出願番号】EP2017082715
(87)【国際公開番号】WO2018114547
(87)【国際公開日】20180628
【審査請求日】2019年7月9日
(31)【優先権主張番号】102016226127.4
(32)【優先日】2016年12月22日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】519031896
【氏名又は名称】ヴィテスコ テクノロジーズ ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】Vitesco Technologies GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ロザリオ ボナンノ
【審査官】
大内 俊彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−83339(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2015/0122352(US,A1)
【文献】
特開平11−230374(JP,A)
【文献】
実開平3−98377(JP,U)
【文献】
国際公開第2016/102242(WO,A1)
【文献】
特開2012−102875(JP,A)
【文献】
国際公開第2016/041659(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/06−31/11,
F16K 1/00− 1/54,39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシングと、該ケーシング内に配置されたソレノイドと、該ソレノイドによって可動のピンと、該ピンに結合されたピストンと、シールと、を備えた弁であって、
前記ピストン(8)は金属製であると共に、該ピストン(8)とは異なる材料から成るシール(14)を有しており、該シール(14)は前記ピストン(8)の底部領域に配置されており、前記ピストン(8)の金属は、0.3mm〜0.8mmの厚さを有しており、前記シール(14)は、環状に形成されておりかつそのシール面(15)とは反対の側に少なくとも3つの一体成形部(22)を有しており、これらの一体成形部(22)は、前記ピストン(8)の底部(12)に配置された切欠き(23)を貫通している、ことを特徴とする、弁。
【請求項2】
前記ピストン(8)は、特殊鋼製である、請求項1記載の弁。
【請求項3】
前記ピストン(8)は、クロムニッケル鋼製である、請求項2記載の弁。
【請求項4】
前記シール(14)は、ゴム製またはプラスチック製である、請求項1から3までのいずれか1項記載の弁。
【請求項5】
前記シール(14)は、EPDM製またはPPA製である、請求項4記載の弁。
【請求項6】
前記シール(14)は、4〜12の一体成形部(22)を有している、請求項1から5までのいずれか1項記載の弁。
【請求項7】
前記シール(14)は、5〜8の一体成形部(22)を有している、請求項6記載の弁。
【請求項8】
前記一体成形部(22)は、その自由端部に、前記シール(14)の製造に伴ってまたは後から行われる熱かしめによって形成される材料集積部(29)を有しており、該材料集積部(29)は、前記ピストン(8)の各前記切欠き(23)に対してアンダカットを形成している、請求項1から7までのいずれか1項記載の弁。
【請求項9】
前記ピストン(8)は、前記底部(12)の領域に内向きの縁曲げ部(26)を有しており、該縁曲げ部(26)に前記シール(14)が当接しており、該シール(14)の、前記縁曲げ部(26)とは反対の側に、前記ピストン(8)の前記底部を形成する金属部材(12)が当接しており、該金属部材(12)は前記ピストン(8)に結合されている、請求項1から8までのいずれか1項記載の弁。
【請求項10】
前記ピストン(8)の外側に位置するシール部分(21)が、0.5mm〜10mmの厚さを有している、請求項1から9までのいずれか1項記載の弁。
【請求項11】
前記ピストン(8)の外側に位置するシール部分(21)が、1mm〜5mmの厚さを有している、請求項10記載の弁。
【請求項12】
前記ピストン(8)は、前記金属部材(12)に溶接されている、請求項9記載の弁。
【請求項13】
前記ピストン(8)は、前記ピン(7)に溶接されている、請求項1から12までのいずれか1項記載の弁。
【請求項14】
前記ピストン(8)は、前記ピン(7)にリベット締結されている、請求項1から11までのいずれか1項記載の弁。
【請求項15】
前記ピストン(8)の金属は、0.4mm〜0.6mmの厚さを有している、請求項1から14までのいずれか1項記載の弁。
【請求項16】
前記ピストン(8)の金属は、0.5mmの厚さを有している、請求項15記載の弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、ケーシングと、ケーシング内に配置されたソレノイドと、ソレノイドによって可動のピンと、ピンに結合されたピストンと、を備えた弁である。
【背景技術】
【0002】
このような弁は、惰行運転中に吸込み側に対してバイパスを解放するために、とりわけ自動車のターボチャージャにおけるブローオフバルブとして使用され、したがって公知である。ターボチャージャの激しい制動を防止するため、しかしまた迅速な始動をも保証するためには、弁の迅速な開閉が重要な前提条件になる。特に閉鎖時には、弁座にピストンが当接することによる即時閉鎖が重要である。よって、重量の理由から、ピストンはプラスチックから形成されている。弁座はターボチャージャのケーシングにより形成され、ケーシングには弁がフランジ締結される。耐用年数にわたって必要とされる多数の閉鎖サイクルと、運転に起因する熱負荷とに基づき、ピストンのプラスチックおよび特にシール縁部の領域の構成には、構成部材に対する高度な要求が課される。このようなピストンには相応してコストがかかる。さらに、個々のケースでは、耐用年数にわたってシール作用の弱まりが生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって、本発明の根底を成す課題は、改良されたシール機能を耐用年数にわたって備える弁を提供することにある。この場合、弁は廉価であることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、ピストンが金属製であると共に、ピストンとは異なる材料から成るシールを有しており、シールはピストンの底部領域に配置されていることによって解決される。
【0005】
ピストンを、底部領域に配置されたシールを備えて金属から形成することは、本来のピストンからの、シール機能の分離を可能にする。これは、唯一シール機能だけに合わせたシールの構成を可能にし、これによりシール機能が改良されることになる。同時に、これにより、ピストンをより簡単に形成することができるので、その製造が廉価になる。特に底部領域においてピストンの複雑さが大幅に低減されることで、深絞りによるピストンの製造が可能になる。さらに、金属ピストンは、耐熱性がより高いという利点を有しており、したがって、本発明による弁は、特により高い温度で、より広範な使用分野をカバーすることができる。
【0006】
ピストンが特殊鋼製、好適にはクロムニッケル鋼製である場合、腐食性媒体に対するより大きな耐久性ひいてはより長い耐用年数が与えられる。良好な媒体耐久性は、シールにおいて、シール材料としてゴム、好適にはエチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)が、またはプラスチック、好適にはポリフタルアミド(PPA)が用いられることによって達成される。ゴムとプラスチックとは両方共、金属の弁座に対するシール用に良好に適しており、さらに、製造誤差に基づくまたは耐用年数にわたる位置の不正確さを補償することができる。
【0007】
有利な構成では、ピストンとのシールの結合部は、シールが環状に形成されており、かつそのシール面とは反対の側に少なくとも3つ、好適には4〜12、特に5〜8の一体成形部を有しており、これらの一体成形部が、ピストンの底部に配置された切欠きを貫通している場合に、特に簡単に形成される。シール材料の弾性に基づき、一体成形部は、シール取付け時に一体成形部が貫通する切欠きよりも僅かに大きな横断面を有することができる。このようにして、シールをピストンに結合することができ、さらにピストンにおいて確実に保持されるようになっている。
【0008】
別の有利な構成では、一体成形部がその自由端部に、シールの製造、特に射出成形または加硫に伴ってまたは後から行われる熱かしめによって形成される材料集積部を有していることによって、ピストンからのシールの離脱に対するより確実な保護手段が実現され、この場合、材料集積部は、ピストンの各切欠きに対してアンダカットを形成している。
【0009】
別の構成では、ピストンが底部領域に内向きの縁曲げ部を有しており、この縁曲げ部にシールが当接しており、シールの、縁曲げ部とは反対の側に、ピストンの底部を形成する金属部材が当接しており、金属部材はピストンに結合されていることにより、シールをピストンの底部に配置することができる。これとは関係無く、金属部材とピストンとの結合は、プレスまたは溶接により行うことができる。
【0010】
シール要求および取付け箇所に応じて、シールを的確に適合させることができる。これは、シール本体の厚さにより簡単に行うことができ、この場合、シール本体とは、ピストンの外側に配置されたシール部分を意味する。この場合、0.3mm〜5mm、好適には0.5mm〜3mmの厚さが有利であることがわかった。
【0011】
ピストンとピンとの結合は、溶接またはリベット締結により行われてよい。両結合形式が有する利点は、ピストンを直接に、したがって追加的な構成部材無しで、やはり金属製のピンに結合することができる点にある。ピンとの結合に追加的な結合部材が必要なプラスチックピストンとは異なっている。
【0012】
プラスチックよりも高い金属の安定性に基づき、ピストンの壁厚さを大幅に薄く形成することができる。使用分野に応じて、ピストンの金属が0.3mm〜0.8mm、好適には0.4mm〜0.6mm、特に0.5mmの厚さを有していると有利であることがわかった。この場合、プラスチック製ピストンに比べて薄い金属ピストンの壁厚さに基づき、プラスチックよりも高い金属の密度が相殺されるので、弁の重量に大幅な影響が及ぶことはない。
【0013】
本発明を、一実施例に基づきより詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】本発明による弁のピストンの拡大断面図である。
【
図5】ピストンとのシール結合部の、別の構成を示す図である。
【
図6】ピストンとのシール結合部の、さらに別の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1に示す弁は、弁を電気的に接続するためのソケット2が一体成形されたケーシング1を有している。ケーシング1はさらに、一体成形されたフランジ3と3つの孔3aとを有しており、これらの孔3aを介してケーシング1は、バイパス管路4の領域に設けられたターボチャージャ(図示せず)にフランジ締結されている。ケーシング1内には、コイル6および金属ピン7を備えたソレノイド5が配置されている。金属ピン7は鉢形のピストン8に結合されている。ソレノイド5の非作動状態において、バイパス管路4を閉じるために、ばね9はピストン8に、弁座10に向け予荷重を与えており、したがって、バイパス管路4から管路11内へ媒体が流入することは一切できなくなっている。この場合、ばね9はソレノイド5とピストン8とに支持されており、ピストン8はその底部12に、ばね9のセンタリング用の同心のエンボス部13を有している。ピストン8は、0.5mmの壁厚さを有している。底部12の外面には、軸方向に突出したPPA製の環状シール14が配置されている。図示の閉鎖位置において、シール面15は弁座10に当接している。ケーシング1は、係止結合部17を用いてプラスチック製の保護スリーブ16と結合されている。係止結合部17の領域において、ケーシング1内にはさらにシール18が配置されており、シール18により、ケーシング1はターボチャージャに対してシールされる。保護スリーブ16は、係止結合部17とは反対の側に半径方向内向きのカラー19を有している、実質的に円筒形の構成部材である。カラー19には、V字形の横断面を備え、半径方向を包囲するシール20が載置されている。ソレノイド5からピストン8に向かって延在する、ケーシング1と一体に形成されたブッシングが、シール20をカラー19において所定の位置に保っている。
【0016】
図2に示すクロムニッケル鋼製のピストン8は、リベット結合部18を介してその底部12と円筒形の周面とに結合されていてよい。ピストン8の内部に示すばね9は、エンボス部13によりセンタリングされる。シール14の領域において、底部12はケーシングの方に引っ込んでいる。これにより、軸方向に突出したシール14により、追加的な構成空間が必要になることが回避される。シール14は、シール面15を備えたシール本体21から成る。シール本体21は、全周にわたって均等に配分された複数の一体成形部22を有している。一体成形部22は円筒形状を有しており、ピストン8の底部12に設けられた切欠き23を貫通して突出している。これらの一体成形部22は、熱かしめにより塑性変形させることができ、その結果、切欠き23よりも大きな直径を有する材料集積部が生じることになる。このようにして、シール14はピストン8において確実に保持される。
【0017】
図3には、ケーシングから見たピストン8が、ばね9と、ばね9のセンタリング用のエンボス部13と、金属ピン7と共に示されている。ピストン8の底部12に形成された2つの開口24は、ピストン8の内部とバイパス管路4との間の圧力補償を可能にし、これにより弁の開放が容易になる。半径方向を取り囲む段部25には、均等に配分された8つの切欠き23が配置されており、これらの切欠き23を、シール14の一体成形部22がそれぞれ貫通して、ピストン8の内部に突入している。
【0018】
図4には、別個の底部12としての金属部材とシール14とを備えたピストン8が示されている。ピストン8は実質的に、内向きの縁曲げ部26を備えた円筒形状を有している。縁曲げ部26にはシール14が載置されている。シール14には底部12が被せ嵌められてピストン8と溶接されており、これによりシール14は、底部12とピストン8との間で緊締され、したがって所定の位置に固定される。
【0019】
図5に示すシール14は、基体21と、凹部27を有する複数の一体成形部22とを備えている。まず、底部12に設けられた舌片28をケーシングの方に折り曲げて、シール14の挿入を可能にする。次いで、舌片28’を折り返し、凹部27に係合させ、こうしてシール14を固定する。
【0020】
図6には、熱かしめによるシール14の固定が示されており、この場合、一体成形部22の材料集積部29は、直径が各切欠き23よりも大きくなるように形成される。