特許第6896096号(P6896096)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6896096軌道を定義するパラメータ値の有効期間の延長のサポート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896096
(24)【登録日】2021年6月10日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】軌道を定義するパラメータ値の有効期間の延長のサポート
(51)【国際特許分類】
   G01S 19/27 20100101AFI20210621BHJP
【FI】
   G01S19/27
【請求項の数】21
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2019-553630(P2019-553630)
(86)(22)【出願日】2017年12月6日
(65)【公表番号】特表2020-502546(P2020-502546A)
(43)【公表日】2020年1月23日
(86)【国際出願番号】EP2017081715
(87)【国際公開番号】WO2018114339
(87)【国際公開日】20180628
【審査請求日】2019年8月19日
(31)【優先権主張番号】15/385,174
(32)【優先日】2016年12月20日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517222096
【氏名又は名称】ヘーレ グローバル ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ペッカ・ヘンドリック ニエメンレフト
【審査官】 東 治企
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−052306(JP,A)
【文献】 特開2011−047922(JP,A)
【文献】 特開2009−204337(JP,A)
【文献】 特開平11−064481(JP,A)
【文献】 LEPPAKOSKI HELENA; ET AL,"EXTENDED PREDICTION OF QZSS ORBIT AND CLOCK",2016 INTERNATIONAL CONFERENCE ON LOCALIZATION AND GNSS (ICL-GNSS),IEEE,2016年 6月28日,pp.1-7,URL,http://dx.doi.org/10.1109/ICL-GNSS.2016.7533689
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 19/00−19/55
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置によって実行される、
衛星ナビゲーションシステムの衛星の軌道を有効期間の間定義するパラメータの値を受信するステップと、
前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が飽和状態かどうかを判断するステップと、
前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が、前記パラメータの受信値の前記有効期間を延長するプロセスにおいて飽和状態であると判断されたかどうかを考慮に入れるステップと、
を含む方法であって、
前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が、前記パラメータの受信値の前記有効期間を延長するプロセスにおいて飽和状態であると判断されたかどうかを考慮に入れるステップが、
前記有効期間の延長を初期化するために、前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの飽和状態値を含むパラメータの受信値を使用するステップ、および、或る有効時間を、非飽和状態のパラメータ値に対し初期化された延長の有効時間に比べて短縮された前記延長に関連付けるステップ、または
前記有効期間の延長を初期化するために、前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの飽和状態値を含むパラメータの受信値を使用するステップ、および、或る有効時間を、非飽和状態のパラメータ値に対し初期化された延長の有効時間に比べて一定量分短縮された前記延長に関連付けるステップ、または
前記有効期間の延長を初期化するために、前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの飽和状態値を含むパラメータの受信値を使用するステップ、および、或る有効時間を、非飽和状態のパラメータ値に対し初期化された延長の有効時間に比べて短縮された前記延長に関連付けるステップであって、前記短縮の量は、値が飽和状態の前記パラメータの所定のセットのパラメータの構成に基づいて選択される、前記関連付けるステップ、を含む、
方法
【請求項2】
前記衛星が、準天頂衛星システムの衛星であり、前記パラメータの値が前記衛星に対するエフェメリスデータに属する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記パラメータの所定のセットが、
軌道モデルの全パラメータを含むか、または
軌道半径に対する余弦調和補正項の振幅、および/または軌道半径に対する正弦調和補正項の振幅、および/または計算値からの平均動き差分、および/または傾斜角の割合の任意の組合せを含む、軌道モデルの全パラメータのサブセットを含むか、または
軌道半径に対する余弦調和補正項の振幅、および/または軌道半径に対する正弦調和補正項の振幅、および/または計算値からの平均動き差分、および/または傾斜角の割合の任意の組合せを含む、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が、飽和状態であるかどうかを判断するステップが、
前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つの前記パラメータの受信値を、少なくとも1つの所定の閾値と比較するステップ、または
前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が、所定の最大値、または所定の最小値に達しているかどうかを判断するステップ、または
前記パラメータの所定のセットのどのくらい多くのパラメータに対し、前記受信値が所定の最大値、または所定の最小値に達しているかどうかを判断するステップ、または
前記パラメータ所定のセットのどのパラメータに対し、前記受信値が所定の最大値、または所定の最小値に達しているかどうかを判断するステップ、または
前記パラメータの受信値が、少なくとも1つの前記パラメータの受信値は飽和状態であるとの受信された表示に、関連付けられているかどうかを判断するステップ、
を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が、前記パラメータの受信値の前記有効期間を延長するプロセスにおいて飽和状態であると判断されたかどうかを考慮に入れるステップが、
残りの有効時間が所定の時間量をまだ超えている、前記衛星に対するパラメータの受信値の有効期間の以前に決められた延長がない場合、前記パラメータの受信値によって定義される前記軌道の展開を初期化するための前記パラメータの受信値を用いることによって、前記パラメータの受信値の前記有効期間を延長するステップ、および/または
前記衛星に対する以前に受信されたパラメータの値の有効期間の以前に決められた延長が、前記パラメータの所定のセットの前記パラメータの少なくとも1つの値が飽和状態であると判断されたパラメータ値によって初期化されている場合、前記パラメータの受信値によって定義される前記軌道の展開を初期化するための前記パラメータの受信値を用いることによって、前記パラメータの受信値の前記有効期間を延長するステップ、
を含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記パラメータの値を受信するステップが、前記パラメータの値を、前記衛星から、または地上のワイヤレス通信ネットワークを介してサーバから受信するステップを含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記衛星の位置を見積もり、前記装置の位置を見積もるために前記衛星の前記見積もられた位置を用いるために、前記パラメータの受信値の延長された有効期間を使用することをさらに含む、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記衛星の位置を見積もり、前記装置の位置を見積もるために前記衛星の前記見積もられた位置を用いるために、前記パラメータの受信値の延長された有効期間を前記使用することは、前記パラメータの所定のセットの前記少なくとも1つのパラメータのいずれの受信値も飽和状態でないと判断された場合に対する第一分岐と、前記パラメータの所定のセットの前記少なくとも1つのパラメータの少なくとも1つの受信値が飽和状態であると判断された場合に対する第二分岐とを有する劣化モデルを用いて計算されるユーザ活動範囲精度値を考慮に入れる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つの装置に、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法のアクションを実行させるための手段を含む、装置。
【請求項10】
前記装置が、移動デバイス、移動通信デバイス、ナビゲーションデバイス、静止デバイス、およびデバイスのためのモジュール、のうちの1つである、請求項に記載の装置。
【請求項11】
少なくとも1つのプロセッサ、およびコンピュータプログラムコードを包含する少なくとも1つのメモリを含む装置であって、前記少なくとも1つのメモリおよび前記コンピュータプログラムコードが、前記少なくとも1つのプロセッサと相まって、少なくとも1つの装置に、少なくとも、
衛星ナビゲーションシステムの衛星の軌道を有効期間の間定義するパラメータの値を受信し、
前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が飽和状態かどうかを判断し、且つ
前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が、前記パラメータの受信値の前記有効期間を延長するプロセスにおいて飽和状態であると判断されたかどうかを考慮に入れる、
ことを実行させ、
前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が、前記パラメータの受信値の前記有効期間を延長するプロセスにおいて飽和状態であると判断されたかどうかを考慮に入れるステップが、
前記有効期間の延長を初期化するために、前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの飽和状態値を含むパラメータの受信値を使用するステップ、および、或る有効時間を、非飽和状態のパラメータ値に対し初期化された延長の有効時間に比べて短縮された前記延長に関連付けるステップ、または
前記有効期間の延長を初期化するために、前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの飽和状態値を含むパラメータの受信値を使用するステップ、および、或る有効時間を、非飽和状態のパラメータ値に対し初期化された延長の有効時間に比べて一定量分短縮された前記延長に関連付けるステップ、または
前記有効期間の延長を初期化するために、前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの飽和状態値を含むパラメータの受信値を使用するステップ、および、或る有効時間を、非飽和状態のパラメータ値に対し初期化された延長の有効時間に比べて短縮された前記延長に関連付けるステップであって、前記短縮の量は、値が飽和状態の前記パラメータの所定のセットのパラメータの構成に基づいて選択される、前記関連付けるステップ、を含む、
装置。
【請求項12】
前記衛星が、準天頂衛星システムの衛星であり、前記パラメータの値が前記衛星に対するエフェメリスデータに属する、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記パラメータの所定のセットが、
軌道モデルの全パラメータを含むか、または
軌道半径に対する余弦調和補正項の振幅、および/または軌道半径に対する正弦調和補正項の振幅、および/または計算値からの平均動き差分、および/または傾斜角の割合の任意の組合せを含む、軌道モデルの全パラメータのサブセットを含むか、または
軌道半径に対する余弦調和補正項の振幅、および/または軌道半径に対する正弦調和補正項の振幅、および/または計算値からの平均動き差分、および/または傾斜角の割合の任意の組合せを含む、
請求項11または12に記載の装置。
【請求項14】
前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が、飽和状態であるかどうかを判断するステップが、
前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つの前記パラメータの受信値を、少なくとも1つの所定の閾値と比較するステップ、または
前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が、所定の最大値または所定の最小値に達しているかどうかを判断するステップ、または
前記パラメータの所定のセットのどのくらい多くのパラメータに対し、前記受信値が所定の最大値または所定の最小値に達しているかどうかを判断するステップ、または
前記パラメータの所定のセットのどのパラメータに対し、前記受信値が所定の最大値または所定の最小値に達しているかどうかを判断するステップ、または、
前記パラメータの受信値が、少なくとも1つの前記パラメータの受信値が飽和状態であるとの受信された表示に、関連付けられているかどうかを判断するステップ、
を含む、請求項1113のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が、前記パラメータの受信値の前記有効期間を延長するプロセスにおいて飽和状態であると判断されたかどうかを考慮に入れるステップが、
残りの有効時間が所定の時間量をまだ超えている、前記衛星に対するパラメータの受信値の有効期間の以前に決められた延長がない場合、前記パラメータの受信値によって定義される前記軌道の展開を初期化するための前記パラメータの受信値を用いることによって、前記パラメータの受信値の前記有効期間を延長するステップ、および/または
前記衛星に対する以前に受信されたパラメータの値の有効期間の以前に決められた延長が、前記パラメータの所定のセットの前記パラメータの少なくとも1つの値が飽和状態であると判断されたパラメータ値によって初期化されている場合、前記パラメータの受信値によって定義される前記軌道の展開を初期化するための前記パラメータの受信値を用いることによって、前記パラメータの受信値の前記有効期間を延長するステップ、
を含む、請求項1114のいずれか一項に記載の装置。
【請求項16】
前記パラメータの値を受信するステップが、前記パラメータの値を、前記衛星から、または地上のワイヤレス通信ネットワークを介してサーバから受信するステップを含む、請求項1115のいずれか一項に記載の装置。
【請求項17】
前記少なくとも1つのメモリおよび前記コンピュータプログラムコードが、前記少なくとも1つのプロセッサと相まって、前記少なくとも1つの装置に、
前記衛星の位置を見積もり、前記装置の位置を見積もるために前記衛星の前記見積もられた位置を用いるために、前記パラメータの受信値の延長された有効期間を使用させるようにさらに構成される、請求項1116のいずれか一項に記載の装置。
【請求項18】
前記少なくとも1つの装置に、前記衛星の位置を見積もり、前記装置の位置を見積もるために前記衛星の前記見積もられた位置を用いるために、前記パラメータの受信値の延長された有効期間を前記使用させることは、前記パラメータの所定のセットの前記少なくとも1つのパラメータのいずれの受信値も飽和状態でないと判断された場合に対する第一分岐と、前記パラメータの所定のセットの前記少なくとも1つのパラメータの少なくとも1つの受信値が飽和状態であると判断された場合に対する第二分岐とを有する劣化モデルを用いて計算されるユーザ活動範囲精度値を考慮に入れる、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記装置が、移動デバイス、移動通信デバイス、ナビゲーションデバイス、静止デバイス、およびデバイスのためのモジュール、のうちの1つである、請求項1118のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
少なくとも1つのプロセッサによって実行されると、少なくとも1つの装置に、請求項1〜のいずれか一項に記載の方法のアクションを遂行させるように構成されたコンピュータプログラムコード。
【請求項21】
中にコンピュータプログラムコードが格納される、非一時的コンピュータ可読ストレージ媒体であって、前記コンピュータプログラムコードは、プロセッサによって実行されると、少なくとも1つの装置に、
衛星ナビゲーションシステムの衛星の軌道を有効期間の間定義するパラメータの値を受信し、
前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が飽和状態かどうかを判断し、且つ
前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が、前記パラメータの受信値の前記有効期間を延長するプロセスにおいて飽和状態であると判断されたかどうかを考慮に入れる、
ことを実行させ、
前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が、前記パラメータの受信値の前記有効期間を延長するプロセスにおいて飽和状態であると判断されたかどうかを考慮に入れるステップが、
前記有効期間の延長を初期化するために、前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの飽和状態値を含むパラメータの受信値を使用するステップ、および、或る有効時間を、非飽和状態のパラメータ値に対し初期化された延長の有効時間に比べて短縮された前記延長に関連付けるステップ、または
前記有効期間の延長を初期化するために、前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの飽和状態値を含むパラメータの受信値を使用するステップ、および、或る有効時間を、非飽和状態のパラメータ値に対し初期化された延長の有効時間に比べて一定量分短縮された前記延長に関連付けるステップ、または
前記有効期間の延長を初期化するために、前記パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの飽和状態値を含むパラメータの受信値を使用するステップ、および、或る有効時間を、非飽和状態のパラメータ値に対し初期化された延長の有効時間に比べて短縮された前記延長に関連付けるステップであって、前記短縮の量は、値が飽和状態の前記パラメータの所定のセットのパラメータの構成に基づいて選択される、前記関連付けるステップ、を含む、
非一時的コンピュータ可読ストレージ媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星信号ベースの測位の分野に関し、さらに具体的には、衛星の軌道を定義するパラメータ値の有効期間の延長をサポートすることに関する。
【背景技術】
【0002】
衛星信号ベースの測位は、例えば、全地球測位システム(GPS)、GLONASS、ガリレオ、北斗衛星導航系統(BDS)、準天頂衛星システム(QZSS)等、またはこれらの任意の組合せなど、任意の種類の、現在および/または将来の衛星ナビゲーションシステム(SNS)に基づくことができる。
【0003】
SNSでは、衛星は、レシーバが、自分の位置を計算するために使用が可能な信号を送信する。衛星によって送信された信号は、メッセージを伝達し、そのメッセージの一部は、軌道モデルのパラメータの値のセットを含み、これらの値は、当該衛星の軌道を限定された期間の間定義する。かかるパラメータ値は、いくつかのSNSでは、放送エフェメリス(BE)と言われる。これらは、レシーバによって、例えば、地球中心地球固定(ECEF)座標系における衛星の位置を計算するために用いることができる。レシーバは、複数の衛星の見積もり位置および信号の伝搬時間に基づいて、自分の位置を計算することが可能である。この伝搬時間は、メッセージ中に示された衛星信号の送信時間と、測定された、レシーバへのその衛星信号の到着時間とから見積もることができる。
【0004】
それぞれのSNSの管理部門は、少なくとも1つの衛星に対するエフェメリスデータを生成し、そのデータを当該衛星に配信することができる。エフェメリスデータは、或る特定の限定された有効期間を有し、その期間の間は、当該衛星の位置は、望まれる精度で見積もることが可能である。エフェメリスデータの経年数が増えるにつれ、測位の精度は低下し、やがては、レシーバは、測位を続けることができるように、前もって新規のエフェメリスデータを受信しなければならない。かかるデータの典型的な寿命は、SNSによって変わるが、ざっと2〜4時間であり得よう。
【0005】
エフェメリスデータの使用性をそれらが意図された寿命を超えて延長することが可能である。対応する方法は、エフェメリス延長(EE)と称することができる。これは、通常、レシーバにおいてオンデバイスで、外部支援データの利用ありまたはなしで行われる。
【0006】
典型的なEEシステムでは、衛星の軌道は、当該衛星に対して定義された力モデルの出力値を統合することによって予測される。この力モデルは衛星に対し働く力をモデル化する。理想的には、この力モデルは衛星に影響を与える全ての力を含む。しかしながら、実際上は、全ての力をモデル化することは実行可能でなく、通常、この力モデルは4つの主たる力、すなわち、地球、太陽、および月の引力、ならびに太陽輻射圧、のみを含む。力モデルに基づいて算定される軌道伝播のため、放送エフェメリスデータによって算定が可能な最新の信頼可能な衛星の位置を、軌道の初期状態として用いることが可能である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
衛星ナビゲーションシステムの衛星の軌道を有効期間の間定義するパラメータの値を受信するステップを含む方法が説明される。本方法は、パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が飽和状態であるかどうかを判断するステップをさらに含む。本方法は、パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が、パラメータの受信値の有効期間を延長するプロセスにおいて飽和状態であると判断されたかどうかを考慮に入れるステップをさらに含む。本方法のアクションは、装置によって実行される。
【0008】
さらに、述べられた方法のいずれかの提示された実施形態のアクションを少なくとも1つの装置に実行させるための手段を含む、第一装置が説明される。
【0009】
この装置の手段は、ハードウェアおよび/またはソフトウェアで実装することができる。これら手段は、例えば、必要な機能を実現するためのコンピュータプログラムコードを実行するプロセッサ、プログラムコードを格納するメモリ、またはその両方を含んでよい。あるいは、これらは、例えば集積回路などのチップセットまたはチップ中に実装された、例えば必要な機能を実現するように設計された回路構成を含むことができよう。この装置は、全ての機能に対する単一の手段、全ての機能に対する共通の複数の手段、または異なった機能に対する複数の異なる手段を含むことが可能である。
【0010】
さらに、少なくとも1つのプロセッサ、およびコンピュータプログラムコードを包含する少なくとも1つのメモリを含む第二装置が説明され、この少なくとも1つのメモリおよびコンピュータプログラムコードは、該少なくとも1つのプロセッサと相まって、少なくとも1つの装置に、少なくとも、述べられた方法のいずれかの提示された実施形態のアクションを実行させるように構成される。
【0011】
さらに、コンピュータプログラムコードが中に格納される非一時的コンピュータ可読ストレージ媒体が説明される。このコンピュータプログラムコードは、プロセッサによって実行されると、少なくとも1つの装置に、述べられた方法のいずれかの提示された実施形態のアクションを実行させる。
【0012】
このコンピュータ可読ストレージ媒体は、例えば、ディスクまたはメモリなどとすることができよう。このコンピュータプログラムコードは、コンピュータ可読ストレージ媒体に符号化された命令の形で、コンピュータ可読ストレージ媒体中に格納することができよう。このコンピュータ可読ストレージ媒体は、コンピュータの内部または外部ハードディスクなどのデバイスの動作の一部として意図されてもよく、または、光ディスクなどによるプログラムコードの配信として意図されてもよい。
【0013】
また、コンピュータプログラムコード自体も、同様に本発明の実施形態と見なさなければならないことを理解すべきである。
【0014】
述べられた装置のいずれも、示されたコンポーネントだけを、または1つ以上の追加のコンポーネントを含み得る。
【0015】
一実施形態において、述べられた方法は情報提供の方法であり、述べられた第一装置は情報提供の装置である。一実施形態において、述べられた第一装置の手段は処理手段である。
【0016】
述べられた方法のいくつかの実施形態において、該方法は、パラメータ値の有効期間の延長をサポートする方法である。述べられた装置のいくつかの実施形態では、該装置は、パラメータ値の有効期間の延長をサポートための装置である。
【0017】
或る特定の例示的な実施形態に対して提示された何らかの機能は、また、いずれかのカテゴリのいずれか他の述べられた例示的な実施形態と組み合わせて類似の仕方で使用され得ることを理解すべきである。
【0018】
さらに、本セクション中の本発明の提示は、単なる例示であり、非限定的であることも理解すべきである。
【0019】
本発明の他の特徴は、以下の説明を添付の図面と併せ考察することによって明らかになろう。但し、これら図面は例示目的だけのためにデザインされており、本発明の限定の定義ではないことを理解すべきであり、該定義については添付の特許請求の範囲を参照すべきである。諸図面は一定の縮尺で描かれてはおらず、これらは、本明細書で説明される構造および手順を単に概念的に図示することを意図されていることをさらに理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明による、或る装置の実施形態の一例の概略ブロック図である。
図2図1の装置におけるオペレーションの一例を表すフローチャートである。
図3】本発明による、或る装置の例を含むシステムの実施形態の一例の概略ブロック図である。
図4図3のシステムにおけるオペレーションの例を表すフローチャートである。
図5】CRC値の進展の一例を表す図である。
図6】CRS値の進展の一例を表す図である。
図7】iドット値の進展の一例を表す図である。
図8】デルタN値の進展の一例を表す図である。
図9図3のシステムにおけるオペレーションの別の例を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明によるいずれかの装置の実施形態の一例の概略ブロック図である。装置100は、プロセッサ101、およびプロセッサ101に連結されたメモリ102を含む。メモリ102は、衛星の軌道を定義するパラメータ値の有効期間の延長をサポートするためのコンピュータプログラムコードを格納する。プロセッサ101は、装置に所望のアクションを遂行させるため、メモリ102中に格納されたコンピュータプログラムコードを実行するように構成される。メモリ102は、しかして、非一時的コンピュータ可読ストレージ媒体の実施形態の一例であり、その中に本発明によるコンピュータプログラムコードが格納される。
【0022】
装置100は、移動している時も同様に動作可能なように構成された任意の種類の移動デバイスとすることができよう。移動デバイスの例は、携帯通信デバイス、スマートフォン、ナビゲーションデバイス、カメラ、携帯コンピューティングデバイス、またはラップトップなどであってよい。これは、ハンドへルドデバイス、またはより大きな移動エンティティの中に組み込むことが意図されたデバイス、例えば、車両の中に組み込むことのできるナビゲーションデバイスなどのデバイスであってよい。また、装置100は、静止デバイスであってもよく、これは静止しているときにだけ動作するように構成される。静止デバイスの一例はサーバとすることができよう。装置100は、また、任意の移動デバイスまたは静止デバイスに対するチップ、チップ上の回路構成またはプラグイン基板などのコンポーネントとすることもできよう。随意的に、装置100は、サーバまたは任意の他のデバイスとのデータの交換を可能にするように構成されたデータインターフェース、衛星信号レシーバ、タッチスクリーンなどのユーザインターフェース、追加のメモリ、追加のプロセッサなど、様々な他のコンポーネントを含むことができよう。
【0023】
ここで、図2のフローチャートを参照しながら装置のオペレーションを説明することとする。このオペレーションは、本発明による方法の実施形態の一例である。プロセッサ101およびメモリ102中に格納されたプログラムコードは、該プログラムコードがメモリ102から読み出されてプロセッサ101に実行されると、装置にこのオペレーションを遂行させる。オペレーションを遂行させられる装置は、装置100、または、例えば何らかの他の装置、しかし必ずしも装置100を含まないデバイス、とすることができる。
【0024】
この装置は、衛星ナビゲーションシステムの衛星の軌道を有効期間の間定義するパラメータの値を受信する(アクション201)。これらパラメータ値は、しかして衛星のナビゲーションデータまたはエフェメリスデータに属し得る。有効期間は、所定の長さの期間、例えば、パラメータ値のセットに基づいて計算された衛星の位置が、望ましい精度を有することが予期される期間とすることができる。
【0025】
本装置は、パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が飽和状態であるかどうかをさらに判断する(アクション202)。或る値は、その値が、値があてがわれるフォーマットによってサポートされる所定の最大値または最小値に一致したとき、飽和状態と見なすことができる。パラメータの所定のセットは、当該軌道に対する軌道モデルのパラメータの1つ、複数、または全てを含んでよい。
【0026】
この装置は、パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が、パラメータの受信値の有効期間を延長するプロセスにおいて飽和状態と判断されたかどうかをさらに考慮に入れる(アクション203)。パラメータの受信値の有効期間を延長することは、例えば、衛星の軌道を定義するモデルに対するベースとして、パラメータ値の当初の有効期間を超えて延長された有効期間を持つ値を使用することを含んでよい。これら受信値は、例えば力モデルなどのサブシステムまたはサブコンポーネントの初期化を含め、例えば、軌道伝播または予測の計算を遂行する役割を担うシステムまたはコンポーネントを初期化するために使用することができる。
【0027】
本発明は、互換性の理由で、一部のSNSが、パラメータ値を送信するために、別のSNSとりわけ全地球的ナビゲーション衛星システム(GNSS)に対し定められたのと同じフォーマットを使うことがある、ということへの考察に基づいている。但し、このフォーマットの一部のパラメータの数値域は、全ての状況におけるSNSの数値を収容するのに十分なほどの幅がないことがあり得る。時として、これらのパラメータは、望まれるフォーマットにマップされたとき飽和状態になるほど極端な値を受信することがある。飽和状態のパラメータ値は、計算された衛星の位置および速度の精度に悪影響を与える。具体的には、飽和状態のパラメータ値による軌道モデルを使って算定された衛星の位置および速度が、軌道展開モデルに対するベースとして用いられた場合、その軌道展開モデルを使って得られた軌道は不十分な品質になり得る。
【0028】
したがって、本発明のいくつかの実施形態は、衛星の軌道を所定の期間の間定義するパラメータの有効期間を延長するプロセスを、パラメータ値が飽和状態かどうかによって別様に進めることが可能なように、設定している。
【0029】
本発明のいくつかの実施形態は、延長された有効期間の間に、飽和状態のパラメータ値によって得られた可能性のある衛星位置の品質の低下を、緩和取り組みによって限定できる、という効果を有し得る。また、その結果として、かかる衛星位置に基づく、移動デバイスに対する位置見積もりの品質を向上することが可能である。
【0030】
図1中に示された装置100、および図2中に示された方法は、様々な仕方で実装し、改良することができる。
【0031】
いくつかの実施形態において、受信パラメータ値の有効期間を延長することは、所望の目標時間までの衛星の軌道を予測することと、その予測に基づいて新規のパラメータ値を導出することとを含んでよい。この予測は、例えば、衛星の位置および速度によって初期化された力モデルを使った運動方程式に基づくことができ、この位置および速度は、受信パラメータ値を用いて、当初の有効期間内の或る時点に対して計算される。但し、この予測に基づいて新規のパラメータ値を導出することは必須ではないことを理解すべきである。また、衛星の位置を計算するために予測それ自体を直接用いることが可能である。
【0032】
考慮対象の衛星ナビゲーションシステムは任意の種類であってよい。具体的に、これは地域の衛星ナビゲーションシステムであってよいがこれに限らない。具体的に、以下に限らないが、GPS、GLONASS、またはガリレオなどの任意の現在、将来の全地球ナビゲーション衛星システムに対する、衛星ベースの補強システムであってもよい。
【0033】
或る実施形態の例において、衛星は、QZSSの衛星であり、パラメータの値はその衛星のエフェメリスデータに属する。
【0034】
QZSSはGPSに対する衛星ベースの補強システムである。その主たる目的は、アジア太平洋地域における、なかでもとりわけ日本のアーバンキャニオンにおけるGPSの利用性を向上することである。このシステムは、最終的に3つの衛星配置を持つことを最初の目的とし、2013年からは最終的に4つの衛星配置を持つことを目的として、2010年に1つの衛星で開始された。QZSSは地域システムであり、このことは、その衛星が或る特定の地域の上方に留まることを意味する。これは、傾斜対地同期軌道(IGSO)を使用することによって達成できる。QZSS衛星の地上航跡は、日本およびオーストラリアの上方での8の字またはアナレンマに類似している。これに対してGPS衛星は、中軌道(MEO)上にだけ配置される。かかる軌道上の衛星は、特定の領域の上方に留まることはない。QZSSは、GPSに対応しているほとんどの移動デバイスによって使用できるように、GPSと完全に互換性があるように計画されている。例えば、ナビゲーションデータのフォーマットは、GPSによって使用されているものと同一である。但し、いくつかのGPSエフェメリスパラメータの数値域は、全ての状況におけるIGSOパラメータの数値を収容するのに十分な幅はない。すなわち、QZSSのパラメータ値は時として飽和状態になり得る。
【0035】
エフェメリスデータは、或る特定の時点での衛星の位置を、その時点が定められた有効期間内にある限り、正確に計算するために使用することができる。この定められた有効期間は、衛星ナビゲーションシステムの種類の如何による。これは、例えばおおよそ4時間とすることができる。
【0036】
或る実施形態の例において、パラメータの所定セットは、軌道モデルの全パラメータを含む。パラメータの受信値は、軌道モデルに適用されたときその軌道を定義することができる。別の実施形態の例において、パラメータの所定のセットは、軌道モデルの全パラメータの何らかのサブセットから成る。これは、これらのパラメータのどれかの値が飽和状態であるかどうかを判断する処理の負荷量が軽減される効果を有し得る。かかるサブセットは、例えば、軌道半径に対する余弦調和補正項の振幅、および/または軌道半径に対する正弦調和補正項の振幅、および/または計算値からの平均動き差分、および/または傾斜角の割合、の任意の組合せを含んでよい。あるいは、パラメータの所定のセットは、軌道半径に対する余弦調和補正項の振幅、および/または軌道半径に対する正弦調和補正項の振幅、および/または計算値からの平均動き差分、および/または傾斜角の割合、の任意の組合せから成る。経験から、大方においてこれらの4つのパラメータが飽和状態の値を経験していることが示されている。ほとんどの状況において、効率上の理由から、これら4つのパラメータをチェックすれば十分であり得る。
【0037】
或る実施形態の例において、パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が飽和状態であるかどうかを判断することは、そのパラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値を、少なくとも1つの所定の閾値と比較することを含む。この少なくとも1つの所定の閾値は、異なるパラメータに対しては別様に設定することができる。或る実施形態の例において、パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が飽和状態であるかどうかを判断することは、そのパラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が、所定の最大値、または所定の最小値に達しているかどうかを判断することを含む。これは、相反対方向の極端な値を検討することができるという効果を有し得る。また、一部のパラメータに対しては、最大値だけまたは最小値だけを、他のパラメータに対しては、最大値および最小値の両方をチェックすることも可能であることを理解すべきである。別の実施形態の例において、パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が飽和状態であるかどうかを判断することは、パラメータの所定のセットのどのくらい多くの、および/またはどのパラメータに対し、受信値が、所定の最大値または所定の最小値に達しているかどうかを判断することを含む。これは、相異なる構成の飽和状態パラメータ値を別様に処理できるという効果を有し得る。別の実施形態の例において、パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が飽和状態であるかどうかを判断することは、パラメータのそれら受信値が、少なくとも1つのパラメータの受信値が飽和状態であるとの受信された表示に関連付けられているかどうかを判断することを含む。かかる表示は、例えば、管理センタによって提供されてよく、該センタは衛星による送信のためのパラメータ値を集合整理する。所定の最大値および最小値は、それらが当該パラメータに対する可能な最大値または最小値に等しいか近似するように選択することができ、所定の最大値または最小値に達したパラメータ値は、その値が該パラメータに対する可能な最大値または最小値に等しいか近似していることを意味し得る。
【0038】
実施形態の一例では、パラメータの受信値の有効期間を延長するプロセスにおいて、パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が飽和状態にあるかどうか判断されることを考慮に入れることは、有効期間の延長を初期化するために、パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの飽和状態値を含むパラメータの受信値を使用することと、有効時間を、非飽和状態のパラメータ値に対し初期化された延長の有効時間に比べて短縮された延長に関連付けることとを含む。これは、少なくとも1つの飽和状態パラメータ値に起因して低い品質を有する軌道をもたらすことが予期され得るパラメータ値の延長有効期間をより短くすることができるという効果を有し得る。有効時間は、例えば、一定量で短縮することが可能であり、あるいは、この短縮の量は、パラメータの所定のセットの値が飽和状態のパラメータの構成に基づいて選択することが可能である。非飽和状態のパラメータ値に対し初期化される延長の有効時間は、あらかじめ定めておいてもまたは可変としてもよい。この短縮された有効時間は、例えば、単一の所定の短縮有効時間、もしくは複数の所定の短縮有効時間の1つを選択することによって、または、非飽和状態のパラメータ値に対し初期化された延長有効時間から減らすことによって、例えば所定の短縮量を選択することによって、個別に決めることが可能である。
【0039】
上記に換えてまたは加えて、パラメータの受信値の有効期間を延長するプロセスにおいて、パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が飽和状態にあるかどうか判断されることを考慮に入れることは、パラメータの所定のセットのパラメータの少なくとも1つの値が飽和状態と判断された場合、当該パラメータの受信値を棄却することを含む。受信パラメータ値の棄却は、追加の基準に依拠してもしなくてもよいことを理解すべきである。実施形態の一例では、パラメータの受信値の有効期間を延長するプロセスにおいて、パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が飽和状態にあるかどうか判断されることを考慮に入れることは、パラメータの所定のセットのパラメータの少なくとも1つの値が飽和状態であると判断された場合であって、且つ、パラメータの所定のセットのどの値も飽和状態とは判断されていない、当該衛星に対するパラメータの前回受信された値の延長有効期間の残り時間が所定の時間量を超えている場合には、当該パラメータの受信値を棄却することを含む。これは、少なくとも、高品質の軌道を定義すると予期できるデータがまだ有効な場合は、受信されたパラメータ値を使わなくてもよいという効果を有し得る。
【0040】
上記に換えてまたは加えて、パラメータの受信値の有効期間を延長するプロセスにおいて、パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が飽和状態にあるかどうか判断されることを考慮に入れることは、残りの有効時間が所定の時間量をまだ超えている、衛星に対するパラメータの受信値の有効期間の以前に決められた延長がない場合、パラメータの受信値によって定義される軌道の展開を初期化するための該パラメータの受信値を用いて、パラメータの受信値の有効期間を延長することを含む。上記に換えてまたは加えて、パラメータの受信値の有効期間を延長するプロセスにおいて、パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が飽和状態にあるかどうか判断されることを考慮に入れることは、衛星に対する以前に受信されたパラメータの値の有効期間の以前に決められた延長が、パラメータの所定のセットのパラメータの少なくとも1つの値が飽和状態であると判断されたパラメータ値によって初期化されている場合、パラメータの受信値によって定義される軌道の展開を初期化するための該パラメータの受信値を用いて、パラメータの受信値の有効期間を延長することを含む。これら両方の選択肢は、高品質の軌道モデルを定義することが期待できるデータが入手できない場合に、少なくとも1つの飽和状態値があっても受信パラメータ値を使用できるという効果を有し得る。
【0041】
或る実施形態の例において、パラメータの値を受信することは、パラメータの値を、衛星から、または地上のワイヤレス通信ネットワークを介してサーバから受信することを含む。しかして、装置は、例えば、該装置の衛星信号レシーバを使って、または、該装置を含むデバイスの衛星信号レシーバを介して衛星から直接にパラメータ値を受信することができる。あるいは、該装置は、パラメータ値を別のエンティティ、例えば測位支援サーバから受信することも可能である。たとえ最適の信号状態においても、軌道を定義するパラメータ値を衛星から受信するには、30〜40秒までかかり得る。弱い信号状態では、これより長くかかるかまたは受信不可能となる。しかして、接続が可能な場合はネットワーク情報源から衛星の軌道を定義するパラメータ値を取得する方が、昨今ではワイヤレスおよび移動データネットワークは、ほとんど何処でも利用可能なので、より迅速でより実際的であり得る。ネットワーク情報源からこれらパラメータ値を入手可能にするために、支援データサービスのプロバイダは、衛星によるパラメータ値の放送を取得するためモニタリングステーションネットワークを用いることが可能である。これらパラメータ値は、それが受信され検証されたならば、サーバによってナビゲーションデータの形で利用可能にすることができる。
【0042】
実施形態の一例において、パラメータの受信値の延長された有効期間は、当該衛星の位置を見積もるための使用に付される。衛星の見積もり位置は、次いで、従来式の仕方で当該装置の位置を見積もるために使用することが可能である。この後者の見積もりにおいては、加えて他の衛星の位置も検討され得ることを理解すべきである。或る特定の時点での衛星の位置を計算するために、受信されたパラメータ値に基づいて、初期の位置を計算することができ、次いで、これを、運動方程式または力モデルを使って該特定の時点での位置を予測するための開始点として用いることができる。衛星の位置および装置の位置は、ユーザ活動範囲精度値を考慮して見積もることができる。ユーザ活動範囲精度値は、衛星の軌道を定義するパラメータの値の品質の指標、しかしてそれらのパラメータ値を使って見積もられた衛星位置の品質の指標を提供する。ユーザ活動範囲精度値は、パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータのいずれの受信値も飽和状態でないと判断された場合に対する第一分岐と、パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの少なくとも1つの受信値が飽和状態であると判断された場合に対する第二分岐とを有する劣化モデルを用いて計算することが可能である。第一分岐は、ユーザ活動範囲精度値の従来式の計算を可能にすることができる。第一分岐の代わりに第二分岐を使う場合、ユーザ活動範囲精度値は、時間経過とともにより速く劣化し得る。ユーザ活動範囲精度値は、衛星の位置が、パラメータの受信値に基づいて見積もられるべきかどうか、見積もられた衛星の位置が装置の位置を見積もるための計算に入れられるべきか、および/または衛星の見積もられた位置は装置の位置を見積もるためにどの程度計算に入れられるべきか、を決めるための考慮に入れることができる。
【0043】
図3は、本発明による、システムの実施形態の例の概略ブロック図である。本システムは、或るSNSの衛星の軌道を限定された期間の間定義するパラメータ値の有効期間の延長をサポートする。
【0044】
本システムは、移動デバイス300、衛星310、管理センタ320、および、随意的にモニタリングステーション330を含む。
【0045】
移動デバイス300は、例えば、スマートフォンなどの移動通信デバイス、もしくは車両に組み込まれたナビゲーションデバイス、または測位の必要のあり得る任意の他の移動デバイスであってよい。移動デバイス300は、第一メモリ302と、第二メモリ304と、SNSレシーバ306と、通信インターフェース307とに連結されたプロセッサ301を含む。
【0046】
プロセッサ301は、移動デバイス300に望まれるアクションを行わせるために、メモリ302中に格納されたコンピュータプログラムコードを含め、コンピュータプログラムコードを実行するように構成される。
【0047】
メモリ302は、エフェメリスデータを受信するためのコンピュータプログラムコードと、エフェメリスデータ中のパラメータ値が、および随意的にどのパラメータ値が、飽和状態であるかを判断するためのコンピュータプログラムコードと、直近に受信されたエフェメリスデータの有効期間を延長すべきかどうかを決めるためのコンピュータプログラムコードと、有効期間を延長するためのコンピュータプログラムコードと、延長されたエフェメリスデータの有効時間を設定するためのコンピュータプログラムコードと、衛星の位置および移動デバイス300の位置を計算するためのコンピュータプログラムコードと、を格納する。このコンピュータプログラムコードは、例えば、メモリ102と類似のプログラムコードを含むことができる。さらに、メモリ302は、他の機能を実現するように構成されたコンピュータプログラムコード、例えば、移動デバイス300の計算された位置を利用するアプリケーションのためのプログラムコードを格納することができよう。加えて、メモリ302は他の種類のデータも格納できよう。
【0048】
プロセッサ301およびメモリ302は、随意的に、チップまたは集積回路303に属することが可能で、これは、さらに様々な他のコンポーネント、例えば、追加のプロセッサまたはメモリを含んでよい。該チップは、例えば、プロセッサ301のための作業メモリを含むことも可能である。
【0049】
メモリ304は、データ、例えば、様々な衛星に対する最新のエフェメリスデータのセット、および延長モデルに対する、例えば力モデルに対するパラメータ値を格納するように構成される。
【0050】
SNSレシーバ306は、GPS衛星およびQZSS衛星からの信号を受信するように構成される。これは、これらの衛星の信号の測定を行い、エフェメリスデータを含むナビゲーションメッセージを抽出し、そのナビゲーションメッセージを復号するように構成される。SNSレシーバ306は、例えば包括的なレシーバとすることができ、これは、プロセッサおよび適切なソフトウェアを使って受信された衛星信号を処理することが可能である。あるいは、該レシーバは、例えばハードウェアコンポーネントだけを含んでもよく、これは、プロセッサ301によって、該プロセッサがメモリ302からの対応するプログラムコードを実行するときに制御されてよい。移動デバイス300は、GPS衛星およびQZSS衛星からの信号を受信し処理するための別個のSNSレシーバを含んでもよいことを理解すべきである。
【0051】
通信インターフェース(I/F)307は、例えばデータインターフェースであってよい。これは、セルラ通信ネットワークを介する、またはワイヤレスローカルエリアネットワークなどを介する通信を可能にできる。移動デバイス300が複数の種類の通信インターフェースを含むことが可能なことを理解すべきである。通信インターフェース307は、例えば、セルラエンジンおよび関連トランシーバなど、包括的な通信コンポーネントであってよい。あるいは、該インターフェースはトランシーバだけを含むこともでき、これは、プロセッサ301によって、メモリ302からの対応するプログラムコードを実行するときに制御されてもよい。
【0052】
コンポーネント303または移動デバイス300は、本発明による装置の実施形態の一例であるとしてよい。
【0053】
衛星310はQZSS衛星である。衛星310は、エフェメリスデータを含むナビゲーションメッセージを放送する。このシステムが、利用可能な場合、1より多いQZSS衛星を含むことも可能であろうことを理解すべきである。このシステムがさらに、複数のGPS衛星(図示せず)をさらに含むことが可能であることを理解すべきである。
【0054】
管理センタ320は、QZSS衛星310により放送されることになるナビゲーションメッセージのためのデータを生成し、そのデータをQZSS衛星310に配信するように構成されたサーバとしてもよい。
【0055】
モニタリングステーション330は、QZSS衛星の信号を受信し、それに包含されたナビゲーションメッセージを復号し、そのナビゲーションメッセージからエフェメリスデータを抽出するように構成されたレシーバ、を含むことが可能である。該ステーションは、分散された、同じ様なモニタリングステーションのネットワークに属してもよい。モニタリングステーション330は、支援データを、任意の適切な通信ネットワークを介して移動デバイスに提供するように構成されたサーバであっても、これを含んでも、またはこれに連結されてもよい。該ステーションは、例えば、インターネットを介し、さらに任意の種類のワイヤレスリンクを介して、エフェメリスデータを移動デバイスに提供するように構成することができる。あるいは、これは、例えばセルラネットワークの一部としてもよく、これを介してデータを送信することもできよう。これは、1つ以上の衛星に対するエフェメリスデータだけを提供することもできようが、同様に他のデータ、とりわけ、電離層補正など他の支援データも提供できよう。
【0056】
随意的に、モニタリングステーション330、またはモニタリングステーション330に連結された測位支援サーバは、メモリ102中のプログラムコードと類似のコンピュータプログラムコードを格納するメモリと、モニタリングステーション330または測位支援サーバにエフェメリスデータの有効期間を延長するためのアクションを遂行させるため、該メモリ中のプログラムコードを実行するように構成されたプロセッサと、を含むことができる。
【0057】
本例のシステムは、コンポーネントを追加、省略、および/または修正することによって、多くのやり方で変更が可能なことを理解すべきである。
【0058】
図3のシステムにおけるオペレーションの例を、図4図8を参照しながら、以下に説明することとする。
【0059】
図4は、移動デバイス300でのオペレーションを表すフローチャートである。プロセッサ301およびメモリ302中に格納されたプログラムコードの一部は、プログラムコードがメモリ302から読み出されてプロセッサ301によって実行されたとき、移動デバイス300に提示されたオペレーションを遂行させる。図5図8は、考慮しなければならない可能性のあるいろいろなパラメータの値の例を表す図である。
【0060】
管理センタ320は、例えば1日1回など定期的に、QZSS衛星310に対するエフェメリスデータのセットを生成し、集合整理する。エフェメリスデータの各セットは、例えば、それぞれ4時間の有効時間とし、2時間間隔で送信するように集合整理することができる。しかして、日ごとに12セットのエフェメリスデータが必要となる。エフェメリスデータの各セットは、QZSS衛星310の軌道をそれぞれ限定された期間の間定義するパラメータの値を含む。これらのパラメータは、例えば、データエフェメリスの発行番号(IODE)、基準時刻エフェメリス(toe)、計算値からの平均動き差分(ΔnまたはデルタN)、基準時刻での平均近点角(M)、離心率(e)、軌道長半径の平方根(A1/2)、週次エポックにおける軌道面の昇交点黄経(ΩまたはオメガA)、基準時刻での傾斜角(i)、近地点引数(ω)、昇交点赤経の時間変化量(▲Ω▼またはオメガドット)、エフェメリス傾斜角の割合(▲i▼またはiドット)、緯度引数に対する余弦調和補正項の振幅(Cuc)、緯度引数に対する正弦調和補正項の振幅(Cus)、軌道半径に対する余弦調和補正項の振幅(Crc)、軌道半径に対する正弦調和補正項の振幅(Crs)、傾斜角に対する余弦調和補正項の振幅(Cic)、および傾斜角に対する正弦調和補正項の振幅(Cis)を含む。これらのパラメータ値は、各パラメータに対するビットの規定数、および各パラメータに対する規定スケーリングを含め、GPS規格中に定義されたフォーマットを使って集合調整される。生成された値のいずれかが、これらのビットの数および所与のスケーリングで表され得る最大値または最小値に達している場合、それらの値は飽和状態と見なされ、そのそれぞれの最大値または最小値が用いられる。生成されたエフェメリスデータのセットが飽和状態のパラメータ値を含んでいる場合は、管理センタ320は、常に、パラメータ値のセット全体がQZSS衛星310の軌道をできるだけ十分に表現するように、飽和状態のパラメータを補償するため他のパラメータの値を再計算することが可能である。管理センタ320は、エフェメリスデータに加え、例えば、特定の信号および衛星によって取得可能な測距精度の統計的インジケータである、少なくとも1つのユーザ活動範囲精度値を含む、様々な他のデータを算定し提供することが可能である。通常、この少なくとも1つの値は、時間の関数としての、軌道およびクロック予測精度の平均劣化度に基づいて算定される。
【0061】
管理センタ320は、エフェメリスデータおよび何らかのさらなる規定データの集合整理されたセットを、例えば1日1回、QZSS衛星310に送信する。複数のQZSS衛星310が利用可能な場合は、管理センタ320は、それら衛星の各々に対し、エフェメリスデータを集合整理し送信することが可能なことを理解すべきである。
【0062】
QZSS衛星310は、受信された、エフェメリスデータおよび何らかのさらなる望まれるデータのセットを、2時間の間、ナビゲーションメッセージの中で繰り返し送信する。次いで、エフェメリスデータの次の受信されたセットが、送信のために選ばれる。
【0063】
少なくとも1つの他の管理センタが対応するエフェメリスデータを全ての活動中のGPS衛星に提供していること、およびそれらのGPS衛星が、受信されたエフェメリスデータを含むナビゲーションメッセージを繰り返し送信していることを理解すべきである。
【0064】
移動デバイス300は、SNSレシーバ306を介して、QZSS衛星310が可視の場合、該衛星によって送信される信号、および全ての可視のGPS衛星によって送信される信号を受信する。SNSレシーバ306は、それぞれの衛星の衛星IDを取得し且つナビゲーションメッセージの到着時間を算定するために、信号に対する測定を行う。しかしながら、処理電力を節減するため、または低い信号強度のゆえに、当該衛星のエフェメリスデータの現在のセットを含むナビゲーションメッセージの内容は、時々復号するだけでよい(アクション401)。
【0065】
また、別例において、ワイヤレス通信ネットワークを介して必要な接続性が利用可能でありさえすれば、エフェメリスデータは、モニタリングステーション330の1つから定期的に受信することが可能である。随意的に、SNSレシーバ306のオペレーションは、1つ以上のモニタリングステーション330に関連付けられたサーバによって提供することが可能な、任意の種類の支援データによって、さらにサポートされてよい。
【0066】
移動デバイス300は、取得されたエフェメリスデータおよび測定の結果を用いて、従来式の仕方で、諸衛星の位置を算定し、その衛星の位置に基づいて自分の位置を見積もることができる。この位置はECEF座標系の中で見積もることが可能である。但し、他の座標系も全く同様に使用可能であることを理解すべきである。移動デバイス300は、GPS衛星の位置を計算するため、およびQZSS衛星310の位置を計算するために、GPSインターフェース管理文書(ICD)中に提示されたアルゴリズムを使用することができる。
【0067】
たとえ或る特定の衛星の信号がまだ検出可能であっても当該衛星に対するエフェメリスデータの直近のセットの有効期間が期限切れになりかけている場合、その衛星がエフェメリスデータの更新なしにより長い間位置確認できることを確実にするために、例えば力モデルを用いて、該エフェメリスデータの有効時間を延長することは有用であり得る。
【0068】
QZSS衛星310に対するエフェメリスデータの場合、移動デバイス300は、最初に、最新のエフェメリスデータのセット中のパラメータCRC、CRS、デルタN、およびiドットのいずれかの値が飽和状態かどうかをチェックすることができる(アクション402)。
【0069】
図5は、2015年の年間のパラメータCRCの値の進展を、例として表す図である。破線で示されているように、このパラメータに対する可能な値は、[−32768,32767]*2−5(m)に限定される。使われているフォーマットは「[最小,最大]*スケール(単位)」であり、スケールは、実際の値の限度を得るために最大および最小に乗じられる倍率を指す。下側限度は、パラメータCRCの真値によって繰り返し超過されており、このエフェメリスデータ中に飽和状態の値をもたらしている。
【0070】
図6は、2015年の年間のパラメータCRSの値の進展を、例として表す図である。破線で示されているように、このパラメータに対する可能な値は、同じく[−32768,32767]*2−5(m)に限定される。上側限度および下側限度は、両方ともパラメータCRSの真値によって時々超過されており、このエフェメリスデータ中に飽和状態の値をもたらしている。
【0071】
図7は、2015年の年間のパラメータiドットの値の進展を、例として表す図である。破線で示されているように、このパラメータに対する可能な値は、[−8192,8191]*π*2−43(ラジアン/s)に限定される。上側限度および下側限度は、両方ともパラメータiドットの真値によって時々超過されており、このエフェメリスデータ中に飽和状態の値をもたらしている。
【0072】
図8は、2015年の年間のパラメータデルタNの値の進展を、例として表す図である。破線で示されているように、このパラメータに対する可能な値は、[−32768,32767]*π*2−43(ラジアン/s)に限定される。図から見取れるように、値が極端な値に達しているものの、限度には達しておらず、しかして、この年には、飽和状態のデルタN値はなかった。
【0073】
しかして、2015年には、移動デバイス300は、取得されたQZSS衛星のエフェメリスデータのパラメータCRC、CRS、および/またはデルタNの値が飽和状態にあることを時々検出していたかもしれない。
【0074】
現在、飽和状態のパラメータ値が存在しないと判断した場合(アクション403)、移動デバイス300は、QZSS衛星310の最新の位置および速度を算定し、これは直近に受信されたエフェメリスデータのセットを使って、信頼可能に算定することができる。次いで、これらの値は、力モデルを利用する、QZSS衛星310に対する運動方程式のための直接的および/または間接的なベースとして提供される。この運動方程式は、例えば、地球、太陽、および月の重力に起因する加速、および太陽輻射圧に起因する加速の形で、力モデルによって定義される衛星310に対し働く力に基づいて、衛星310の算定された位置および速度を時間経過に沿って調整することを可能にする。この力モデルは、QZSS衛星310と諸天体との間の距離を考慮に入れることが可能なので、QZSS衛星310の測定された最新の位置は、例えば、さらに、QZSS衛星310が測定された位置に所在していた時の上記距離を算定するためにも使用することができる。これら加速に対して必要な変数は、例えば、メモリ304中に格納されたテーブルから取り出すことができ、これは、測位支援サーバによって時折更新することが可能である。移動デバイス300は、規定有効時間を力モデルによって定義された軌道に関連付ける。この規定有効時間は、あらかじめ決めておいてもよく、または、例えば、管理センタ320によってエフェメリスデータ中に含められた少なくとも1つの値に応じて、所定の仕方で変更されてもよい(アクション404)。
【0075】
反対に、移動デバイス300が、少なくとも1つの飽和状態のパラメータ値が存在すると判断した場合(アクション403)、移動デバイス300は、所定の期間の間まだ有効であり、且つ非飽和状態のパラメータ値の有効期間を延長する、以前に算定された軌道の定義が存在するかどうかをさらに判断する(アクション405)。
【0076】
上記に該当しない場合、移動デバイス300は、有効期間内の直近に受信されたエフェメリスデータのセット中の少なくとも部分的に飽和状態のパラメータ値を使って算定が可能な、QZSS衛星310の最後の位置および速度を算定する。次いで、この位置およびこの速度は、運動方程式における直接的および/または間接的な使用のために提供することができ、この方程式は、アクション404に関連して示したように、衛星310上に働く力に基づいて、衛星310の算定された位置および速度を時間経過に沿って調整するのに適している(アクション406)。
【0077】
但し、この場合、移動デバイス300は、力モデルによって定義された軌道に対しては規定有効時間に比べ短縮された有効時間をさらに算定する。この短縮の量は、飽和状態の値を有するパラメータの構成の如何による。例えば、この短縮は、パラメータCRCの値だけが飽和状態の場合は、パラメータCRCの値とパラメータCRSの値とが飽和状態である場合などに比べて小さくされてよい。例えば、飽和状態値を持つパラメータのいかなるあり得る構成に対しても、或る定められた短縮有効時間があってもよく、または、飽和状態値を持つパラメータのいかなるあり得る構成に対しても、それぞれの短縮有効期間の計算を可能にする、あらかじめ定められた規定有効期間の短縮に対する指示があってもよい。後者の場合、規定有効期間は、アクション404に関連して示したように、再度あらかじめ決めるかまたはフレキシブルとすることができる(アクション407)。
【0078】
選択可能な短縮の量は、例えば、予備実験に基づいてよい。このエフェメリス延長方法は、各飽和状態パラメータの予測精度に対する影響を解明するため、データのいろいろなセットを使って、前もってテストすることができる。次いで、その情報を使って、値が飽和状態の可能性のあるパラメータの各有り得る構成に対し、適切な短縮有効時間、しかして、力モデルベースの軌道に対する最大の長さを決めることが可能である。また、選択可能な短縮の量はより分析的なアプローチに基づくことが可能であることを理解すべきである。例えば、実験により分析的アプローチの展開を得ることが可能で、これにより、移動デバイス300が、所定の値から選択をするのではなく、むしろそれぞれの短縮の量を計算できるようにすることも可能である。
【0079】
アクション404またはアクション406で新規軌道が定義されたならば、移動デバイスは、運動方程式を使って、初期の位置および速度が有効である時間から選択された有効時間の終了までの、QZSS衛星310のいくつかの位置を予測する。選択された有効時間の開始点は、受信パラメータ値の直近の有効期間の終了点と合致してよい。衛星310の予測された位置は、この選択された有効時間の間の軌道を定義する新規のエフェメリスパラメータ値を導出するために用いることが可能である(アクション408)。結果として、受信されたエフェメリスパラメータ値の有効期間は延長されている。
【0080】
アクション405で、移動デバイス300が、所定の期間の間まだ有効で且つ非飽和状態のパラメータ値の有効期間を延長する、以前に算定された軌道の定義が存在すると判断した場合(アクション405)、移動デバイス300は、直近に受信されたエフェメリスデータのセットを棄却し、以前に算定され延長された軌道モデルの使用を継続する(アクション409)。直近に受信されたエフェメリスデータのセットは、規定有効期間が終了するまではQZSS衛星310の位置を算定するために使用が可能で、その後でだけ棄却されることを理解すべきである。
【0081】
移動デバイス300は、直近に導出されたエフェメリスパラメータ値を用いてQZSS衛星310の位置を計算することができる。この計算は、例えば、移動デバイス300の或る特定のアプリケーションのために必要な限りにおいて定期的なベースで、または、移動デバイス300のアプリケーションによる個別の要求に応じて行われてもよい(アクション410)。移動デバイス300は、QZSS衛星310の位置を計算するために、GPSインターフェース管理文書(ICD)中に提示されているのと同じアルゴリズムを再使用してよい。導出されたパラメータ値は、それらが有効である限り、またはQZSS衛星310に対する新規エフェメリスデータが、アクション401で受信されるまで使用することができる。いかなる有効なパラメータも利用可能でない場合、QZSS衛星310のいかなる新しい位置も見積もられない。
【0082】
その後、移動デバイス300は、いつでも必要な場合は、見積もられた衛星の位置を使って、移動デバイス300の現在の位置を見積もることが可能である(アクション411)。このために、移動デバイス300は、GPS衛星からの信号の測定に基づいて見積もられているこれらGPS衛星の位置を併せ検討することを理解すべきである。有効データの欠如に起因して、アクション410で新規の位置が算定されなかった場合、移動デバイス300の位置を計算する際にQZSS衛星310は無視されてよい。
【0083】
図9は、図3のシステム中の移動デバイス300における別のオペレーションを表すフローチャートである。このオペレーションは、図4中のものと類似であるが、いくつかの可能な違いを提示している。プロセッサ301およびメモリ302中に格納されたプログラムコードの一部は、プログラムコードがメモリ302から読み出されプロセッサ301によって実行されたとき、移動デバイス300に提示されたオペレーションを同様に遂行させる。
【0084】
管理センタ320は、図4に関連して説明したように、例えば1日1回、QZSS衛星310に対するエフェメリスデータのセットを再集合整理する。随意的に、該センタはまた、エフェメリスデータの各セットに対する劣化モデルへの少なくとも1つのパラメータ値も設定する。管理センタ320は、エフェメリスデータの集合整理されたセットおよび関連するURAパラメータ値を、例えば1日1回、QZSS衛星310に送信する。複数のQZSS衛星310が利用可能な場合、管理センタ320は、これらの衛星の各々に対してデータを集合整理し送信することが可能なことを理解すべきである。
【0085】
QZSS衛星310は、エフェメリスデータのセットおよび関連するURAパラメータ値を、ナビゲーションメッセージの中で、新規のセットを用いて例えば2時間ごとに送信する。
【0086】
移動デバイス300は、SNSレシーバ306を介して、可視の場合、QZSS衛星310によって、および全ての可視のGPS衛星によって送信された信号を受信する。SNSレシーバ306は、それぞれの衛星の衛星IDを取得しナビゲーションメッセージの到着時間を算定するために、諸信号の測定を行う。衛星のエフェメリスデータの現在のセットおよび関連するURAパラメータ値を含むナビゲーションメッセージの内容は、時々復号するだけでよい(アクション901)。
【0087】
移動デバイス300は、取得されたエフェメリスデータおよび測定の結果を用いて、従来式の仕方で、諸衛星の位置を算定し、その衛星の位置に基づいて自分の位置を見積もることができる。さらに、必要な場合は何時においても、GPS衛星に対するエフェメリスデータの有効期間は従来式の仕方で延長することが可能である。
【0088】
たとえ当該衛星の信号がまだ検出可能であっても、QZSS衛星310に対するエフェメリスデータの直近のセットの有効期間が期限切れになりかけている場合、移動デバイス300は、最初に、直近に受信されたエフェメリスデータのセットの中で、パラメータの所定のセットのいずれかのパラメータの値が飽和状態かどうかをチェックすることができる(アクション902)。このパラメータの所定のセットは、例えば、これも同様に、CRC、CRS、デルタN、およびiドット、またはパラメータの何らかの他の組合せを含むことが可能で、これらの値は、おそらくはエフェメリスデータ中の他のパラメータ値と相まって、QZSS衛星310の軌道モデルを定義する。
【0089】
飽和状態のパラメータ値がないと判断された場合(アクション903)、移動デバイス300は、衛星310の最新の位置および速度を算定し、これは直近に受信されたエフェメリスデータのセットを使って信頼可能に算定することができる。次いで、これらの値は、力モデルを使った運動方程式の中での直接的および/または間接的な使用のために提供されてよい。この運動方程式は、図4のアクション404に関連して説明したように、衛星310に働く力に基づいて、衛星310の算定された位置および速度を時間経過に沿って調整するために用いることが可能である。この運動方程式は、受信されたエフェメリスパラメータ値を使って起算されているので、受信されたエフェメリスパラメータ値の有効期間がしかして延長される。移動デバイス300は、或る規定有効時間を、力モデルによって定義されたQZSS衛星310の軌道に関連付ける。随意的に、だが必須ではなく、この規定有効時間はあらかじめ定めておいてもよい。
【0090】
反対に、移動デバイス300が、少なくとも1つの飽和状態のパラメータ値が存在すると判断した場合(アクション903)、移動デバイス300は、非飽和状態のパラメータ値の有効性を延長する有効な軌道定義が存在するかどうかをさらに判断する(アクション905)。
【0091】
上記に該当しない場合、移動デバイス300は、直近に受信されたエフェメリスデータのセット中の少なくとも部分的に飽和状態のパラメータ値を使って算定が可能な、QZSS衛星310の位置および速度を算定する。位置および速度が算定される時点は、運動方程式による軌道予測の役割を担うコンポーネントに対する最も正確な初期化値を得るために、有効期間内に、随意的にはその有効期間の開始時になるように選択される。移動デバイス300は、当該パラメータ値の有効期間内である限りにおいて、或る過去の時点を選択することさえ可能にされてよい。次いで、算定された位置および速度は、図4のアクション404に関連して示したように、運動方程式中での直接的および/または間接的な使用のために提供することが可能である(アクション906)。或る有効時間を、運動方程式によって定義された軌道に関連付けることができ、この時間は、所定の値分短縮された規定有効時間に対応する。この実施形態では、しかして、飽和状態の値を有するパラメータの相異なる構成に対する短縮時間の間の区別をなくすことができる。
【0092】
かかる単一の所定短縮時間を用いることは、予備の実験においてより少ない計算作業でこれを決めることができるという効果を有し得る。この短縮値は、エフェメリステストデータの2つのセットを検討することによって算定することができる。第一セット中には、飽和状態のパラメータ値は存在しない。エフェメリスデータの他方のセット中には、いずれかの数の飽和状態のパラメータ値が存在する。各セットについて、力モデルが算定され、時間経過に伴う予測精度の差が算定される。予測精度における容認可能な最大劣化が、少なくとも1つの飽和状態パラメータ値を含むセットによって達成されるように、短縮値を選択することが可能である。
【0093】
また、アクション906の別形においては、いかなる飽和状態のパラメータ値を包含するエフェメリスデータを棄却することも可能であろう。この場合、QZSS衛星310に対する新規のエフェメリスデータが受信されるまでは、その衛星の位置を算定することはできないことになろう。
【0094】
移動デバイス300が、アクション905において、非飽和状態のパラメータ値の有効性を延長する有効な軌道定義が存在すると判断した場合、移動デバイス300は、直近に受信されたエフェメリスデータのセットを棄却し、以前に算定された軌道の定義の使用を継続する(アクション907)。この軌道は、力モデルによっても同様に定義することもできる。
【0095】
移動デバイス300は、力モデルベースの軌道の定義に基づいて、QZSS衛星310の位置を計算することが可能である。この計算は、例えば、移動デバイス300の或る特定のアプリケーションのために必要な限りにおいて定期的なベースで、または、移動デバイス300のアプリケーションによる個別の要求に応じて行われてよい(アクション908)。移動デバイス300は、力モデルから直接に衛星の位置を計算することが可能で、これにより、新規のエフェメリスパラメータ値の中間的計算は必要がなくなる。直近の力モデルは、該モデルによって定義された軌道が、関連付けられた有効時間の観点から有効である限り、またはQZSS衛星310に対する新規のエフェメリスデータが受信されるまで使用されてよい。
【0096】
移動デバイス300は、時間の関数としての、軌道およびクロック予測精度の平均劣化度に基づいて、URA値をさらに計算することができる(アクション909)。URA値は、QZSS衛星310の位置を計算するときの、延長されたエフェメリスデータの品質を示す。移動デバイス300は、このために、2つの異なる分岐を備えるURA劣化モデルを使用する。これら分岐の1つは、非飽和状態の場合に対し、別の1つは飽和状態の場合に対し設けられる。後者の分岐では、エフェメリスデータの品質は、標準的な場合よりもより速く劣化すようにモデル化される。随意的に、このURA劣化モデルは、URAパラメータ値を含み、これに対しては、アクション901において、ナビゲーションメッセージ中で受信されたURAパラメータ値が適用される。
【0097】
その後、移動デバイス300は、必要な場合は何時においても、QZSS衛星310の見積もられた位置を使って、移動デバイス300の現在位置を見積もることができる(アクション910)。このために、移動デバイス300は、GPS衛星からの信号に対する測定に基づいて見積もられているこれらGPS衛星の位置を併せ検討することを理解すべきである。アクション908で新規の位置が算定されなかった場合、移動デバイス300の位置を計算する際に、QZSS衛星310は無視されてよい。
【0098】
QZSS衛星310の見積もられた位置は、どの場合も、関連するURA値が所定の閾値を超えている場合だけ、アクション910において使用されてよい。逆に、関連するURA値が所定の閾値に達しない場合、十分な数のGPS衛星(または、十分な数の、閾値を超える関連URA値を備える他のQZSS衛星)の位置が利用可能である限り、QZSS衛星310の見積もられた位置は、移動デバイス300の位置の見積もりのため考慮されなくてもよい。一般に、移動デバイス300の位置に見積もりにおいて用いられることになる全ての衛星の見積もり位置は、関連するURA値の増加とともに増大する重み付けで考慮に入れられてよい。これについては、飽和状態の値を持つエフェメリスパラメータは、延長の長さが増すにつれ、より速いペースで劣化するという前提が考慮されてよい。
【0099】
URA値は、また、受信されたエフェメリスデータの有効時間の間に見積もられた各QZSS衛星の位置に対する品質の表示として算定し用いるのも可能なことを理解すべきである。この計算では、飽和状態パラメータ値の場合と非飽和状態パラメータ値の場合との間を区別してもしなくてもよい。また、URA値は、受信されたGPSのエフェメリスデータの規定のまたは延長された有効時間の間に見積もられた各GPS衛星の位置に対する品質の表示として算定し用いることも可能である。
【0100】
提示された例示の諸オペレーションは、多くの仕方で変更が可能なことを理解すべきである。
【0101】
例えば、アクションの順序を修改することができよう。例として挙げれば、図4のアクション406とアクション407とは逆順にできよう。
【0102】
例えば、図9の実施形態において、短縮時間を算定するために、飽和状態の値を持つパラメータの異なった構成の間で区別することも同様に可能であろう。
【0103】
例えば、図9の実施形態において、アクション908とアクション909の順序を入れ替えることが可能である。この場合、計算されたURAの値に基づいて、衛星の位置を実際に見積もるかどうかを決めることができる。
【0104】
また、例えば、前述したように、エフェメリスデータは、移動デバイス300においてモニタリングステーション330の1つから受信することも可能である。このため、モニタリングステーション330は、ナビゲーションメッセージを受信、復号し、その内容を、定期的にワイヤレス通信ネットワークを介して様々な移動デバイス300に配信することができる。この場合、移動デバイス300は、衛星信号の測定だけを行うが、エフェメリスデータおよび一切の他のあり得る支援データはモニタリングステーション330から得ればよい。この場合、エフェメリスデータへのアクセスはより良好になり得るが、一部の地域では、ワイヤレス通信ネットワークの制限された接続により、依然として制限される。モニタリングステーション330を用いる場合、モニタリングステーションは、移動デバイスに規定の軌道モデルパラメータ値を提供するだけではない。代わりに、該ステーションは、さらに、図4のアクション401〜409(または図9のアクション901〜907)に関連して説明した計算を引き受け、エフェメリスデータの当初のセットを、新規の軌道を定義するパラメータ値と、おそらくは2分岐アプローチで計算されたURA値とともに、移動デバイス300および/または任意の他のデバイスに配信することができる。このアプローチによって、図4のアクション408中の変換は、移動デバイス300が、力モデルに基づいて、衛星の位置を算定できるように構成されなくてもよいという効果を有し得る。
【0105】
また、図2図4、および図9は、衛星の位置の見積もりをサポートするためのコンピュータプログラムコードの例示的な機能ブロックを表すと理解することも可能である。
【0106】
要約すれば、本発明のいくつかの実施形態は、利用可能なエフェメリスデータの高品質な延長を可能にすることができる。一般に、エフェメリスの延長を用いることは、現代の送信速度に比べ遅い、衛星により放送される無線信号中のナビゲーションデータの取得を待つ必要がないこと、および、中でもとりわけ国外と交信するときのネットワーク課金への影響を与え得る、ネットワーク接続を介するナビゲーションデータの取得の必要がないこと、の効果を有し得る。一般に、エフェメリスの延長を用いることは、弱い信号状態のみならず、またネットワーク接続が利用可能でないときも作動が可能であること、利用可能な延長されたエフェメリスが、デバイスの位置を直接計算するために使用することが可能で、これが初期位置算出時間(TTFF)を短縮すること、および/または、デバイスのレシーバが、延長されたエフェメリスにより信号周波数および符号位相を予測することによって、弱い衛星レンジング信号を取得でき、これもTTFFを短縮すること、の効果をさらに有し得る。飽和状態のパラメータ値を考慮することは、加えて、低品質のエフェメリスデータの検出が可能なこと、衛星の位置を十分な品質で算定可能にすることを確実にするため、延長の長さを制御できること、エフェメリスの延長の初期化のために低品質のエフェメリスデータを使えないようにすること、計算の観点から、標準的場合と飽和状態の場合とを別個に検討可能なこと、十分な品質の延長エフェメリスが用いられた場合、測位の精度がさほどの影響を受け得ないこと、および/または、望まれれば、移動デバイスの位置を計算する際に、品質上の理由で得策な場合、可視の衛星を無視してもよいこと、の効果を有し得る。
【0107】
説明された諸実施形態中の一切の連結は、関与するコンポーネントが動作可能に連結されると理解されるべきである。しかして、これら連結は、直接的連結、または仲介素子の任意の数の組合せによる間接的連結とすることができ、これらコンポーネントの間が単なる機能的な関係であることもある。
【0108】
さらに、本文中での使用において、用語「回路構成」は、以下のいずれかを指す。(a)ハードウェアだけの回路実装(単なるアナログおよび/またはデジタル回路構成での実装など)、および(b)(適用される場合)(i)プロセッサの組合せ、または(ii)携帯電話またはサーバなどの装置に様々な機能を遂行させるために協働する、プロセッサ/ソフトウェア(デジタル信号プロセッサを含む)、ソフトウェア、およびメモリの部分などの、回路およびソフトウェア(および/またはファームウェア)の組合せ、ならびに、(c)たとえソフトウェアまたはファームウェアが物理的に存在しない場合でも、オペレーションのためにソフトウェアまたはファームウェアを必要とする、マイクロプロセッサまたはマイクロプロセッサの部分などの諸回路。
【0109】
回路構成のこの定義は、一切の特許請求項を含め、本出願中のこの用語の全ての使用に適用する。さらなる例として、本出願での使用において、用語、回路構成は、単にプロセッサ(もしくは複数のプロセッサ)、または、プロセッサおよびそれ(もしくはそれら)に付随するソフトウェアおよび/またはファームウェアの部分の実装も含む。また、用語、回路構成は、例えば、特定の請求要素に該当する場合、ベースバンド集積回路もしくは携帯電話用のアプリケーションプロセッサ集積回路、または、サーバ、セルラネットワークデバイス、もしくは他のネットワークデバイス中の類似の集積回路も含む。
【0110】
本文中で述べたいずれのプロセッサも、任意の適切な種類のプロセッサであってよい。いずれのプロセッサおよびメモリも、以下に限らないが、1つ以上のシングルコアプロセッサ、1つ以上のデュアルコアプロセッサ、1つ以上のマルチコアプロセッサ、1つ以上のマイクロプロセッサ、1つ以上のデジタル信号プロセッサ、付随するデジタル信号プロセッサを備える1つ以上のプロセッサ、付随するデジタル信号プロセッサを持たない1つ以上のプロセッサ、1つ以上の特殊用途コンピュータチップ、1つ以上のフィールドプログラム可能ゲートアレイ(FPGAS)、1つ以上のコントローラ、1つ以上の特殊用途向け集積回路(ASICS)、または1つ以上のコンピュータを含んでよい。関連する構造体/ハードウェアは、述べられた機能を実行するような仕方でプログラムされている。
【0111】
本文中で述べられたいずれのメモリも、単一のメモリとして、または複数の個別のメモリの組合せとして実装されてよく、例えば、読取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ、またはハードディスクドライブメモリなどを含んでよい。
【0112】
さらに、本明細書で説明または例示されたいずれのアクションも、汎用プロセッサまたは特殊用途プロセッサ中で実行可能命令を使って実装が可能であり、かかるプロセッサによって実行されるため、コンピュータ可読ストレージ媒体(例えば、ディスク、メモリなど)に格納される。「コンピュータ可読ストレージ媒体」への言及は、FPGA、ASIC、信号処理デバイス、およびその他のデバイスなど、特殊化された回路を包含すると理解すべきである。
【0113】
メモリ102と共同してプロセッサ101によって、もしくはメモリ302と共同してプロセッサ301によって、またはコンポーネント303によって例証された機能は、衛星ナビゲーションシステムの衛星の軌道を有効期間の間定義するパラメータの値を受信するための手段、パラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が飽和状態であるかどうかを判断するための手段、およびパラメータの所定のセットの少なくとも1つのパラメータの受信値が、パラメータの受信値の有効期間を延長するプロセスにおいて飽和状態であると判断されたかどうかを考慮に入れるための手段、と見なすことができる。
【0114】
また、メモリ102またはメモリ302中のプログラムコードも、機能モジュールの形でかかる手段を含むと見なすことができる。
【0115】
当然のことながら、全ての提示された実施形態は、単なる例示であり、これら実施形態の諸機能は、省略または代替することができ、他の機能を付加することも可能である。どの述べられた要素、およびどの述べられた方法ステップも、他の全ての述べられた要素、および他の全ての述べられた方法ステップと各々任意に組合せて用いることが可能である。したがって、本明細書に添付の特許請求の範囲に示されたようにだけに限定されることが本意図である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9