特許第6896102号(P6896102)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896102
(24)【登録日】2021年6月10日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】喫煙物品および喫煙物品のフィルター
(51)【国際特許分類】
   A24D 3/04 20060101AFI20210621BHJP
【FI】
   A24D3/04
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-559995(P2019-559995)
(86)(22)【出願日】2017年12月22日
(86)【国際出願番号】JP2017046187
(87)【国際公開番号】WO2019123645
(87)【国際公開日】20190627
【審査請求日】2020年4月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】音川 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】唐来 博之
(72)【発明者】
【氏名】荒栄 和正
(72)【発明者】
【氏名】屋代 学
【審査官】 木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2016/181843(WO,A1)
【文献】 米国特許第03370594(US,A)
【文献】 特表2015−507935(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 1/00−3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
たばこ刻を含むたばこロッドと、
チップペーパーを介して前記たばこロッドの端部に接続されるフィルターと、を備え、
前記フィルターは、
呈味成分と香料成分のうち少なくとも何れか一方を含む原料粉末を一塊とした粉末含有物であって、外力を加えることで粉末となる粉末含有物と、
前記粉末含有物が配置されたキャビティと、
前記キャビティの下流側に連設され、前記キャビティと吸い口端を連通すると共に前記粉末を前記キャビティから前記吸い口端に供給するための粉末供給路が軸方向に沿って形成された吸い口フィルター部と、
を有し、
前記吸い口フィルター部の横断面において、前記粉末供給路は、前記吸い口フィルター部の横断面中央側に位置する中央接続部と、当該中央接続部から横断面外周側に向けて互いに異なる方向に延びる複数の孔部を含み、前記複数の孔部の基端が前記中央接続部によって互いに接続されることで一繋がりの開口となっており、
前記粉末供給路における前記孔部は、前記吸い口フィルター部の横断面外周側に位置する外周側領域の方が、横断面中央側に位置する中央側領域に比べて開口幅が相対的に大きい、
喫煙物品。
【請求項2】
前記粉末供給路は、3個以上5個以下の前記孔部を含む、請求項1に記載の喫煙物品。
【請求項3】
前記粉末供給路は、複数の前記孔部が前記中央接続部から放射状に延びている、
請求項1又は2に記載の喫煙物品。
【請求項4】
前記吸い口フィルター部の横断面において、前記粉末供給路の前記孔部における先端と前記吸い口フィルター部の巻取紙との間に、当該吸い口フィルター部を形成するフィルター繊維が介在している、
請求項1からの何れか一項に記載の喫煙物品。
【請求項5】
呈味成分と香料成分のうち少なくとも何れか一方を含む原料粉末を一塊とした粉末含有
物であって、外力を加えることで粉末となる粉末含有物と、
前記粉末含有物が配置されたキャビティと、
前記キャビティの下流側に連設され、前記キャビティと吸い口端を連通すると共に前記粉末を前記キャビティから前記吸い口端に供給するための粉末供給路が軸方向に沿って形成された吸い口フィルター部と、
を備え、
前記吸い口フィルター部の横断面において、前記粉末供給路は、前記吸い口フィルター部の横断面中央側に位置する中央接続部と、当該中央接続部から横断面外周側に向けて互いに異なる方向に延びる複数の孔部を含み、前記複数の孔部の基端が前記中央接続部によって互いに接続されることで一繋がりの開口となっており、
前記粉末供給路における前記孔部は、前記吸い口フィルター部の横断面外周側に位置する外周側領域の方が、横断面中央側に位置する中央側領域に比べて開口幅が相対的に大きい、
喫煙物品のフィルター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、喫煙物品および喫煙物品のフィルターに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルター内の粉末を吸引することで、味や香り、又はその両方を楽しむシガレットが知られている。例えば、特許文献1には、呈味成分と香料成分とのうち少なくとも何れか一方を含む原料粉末を一塊とした粉末含有物であって、外力を加えることで粉末となる粉末含有物と、当該粉末含有物が配置されたキャビティと、当該キャビティと吸口端とを連通して粉末が通る流路を、含むフィルターを備えた喫煙物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2016/181843号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているフィルターにおいては、粉末の流路の内径を、一塊の粉末含有物の外径よりも小さくすることで、製造時や輸送時など、意図しないタイミングで粉末がこぼれてしまう粉こぼれを抑制できる。
【0005】
ここで、フィルターにおける粉末の流路の横断面積を増やすほど、粉末のデリバリー量(供給量)を増やす観点からは有利である。これに対して、特許文献1には、吸い口側のフィルターに複数の流路を軸方向に貫通させる態様が開示されている。たしかに、フィルターに対して複数の流路を配置することで、粉末の流路の総断面積が増えるため、粉末のデリバリー量を確保しやすくなる。しかしながら、フィルターの横断面に複数の流路を独立して配置するには、複数のマンドレルを使用してフィルターを製造する必要があり、各マンドレル間にフィルター繊維を均一に充填することが困難となり、フィルターの製造品質が不安定になる虞がある。
【0006】
なお、上記課題は、シガレットに限られず、葉巻、シガリロ、電子デバイス加熱又は炭素熱源などの喫煙具、および非加熱型でたばこの喫煙具を含む喫煙物品全般についてもあてはまる。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑み、呈味成分と香料成分のうち少なくとも何れか一方を含む粉末を吸引することができる喫煙物品のフィルターに関し、吸引時における粉末のデリバリー量を確保しつつ非吸引時における粉こぼれを抑制することができ、且つ、フィルターの製造品質を安定させることのできる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上述した課題を解決するため、呈味成分と香料成分のうち少なくとも何れか一方を含む原料粉末を、外力を加えることで粉末となる、一塊の粉末含有物とし、吸い口フィルター部に形成される粉末供給路を、吸い口フィルター部の横断面中央側に位置する中央接続部と、当該中央接続部から横断面外周側に向けて互いに異なる方向に延びる複数の孔部を含んで形成するようにした。
【0009】
より詳細には、本発明に係る喫煙物品は、たばこ刻を含むたばこロッドと、チップペーパーを介して前記たばこロッドの端部に接続されるフィルターと、を備え、前記フィルターは、呈味成分と香料成分とのうち少なくとも何れか一方を含む原料粉末を一塊とした粉末含有物であって、外力を加えることで粉末となる粉末含有物と、前記粉末含有物が配置されたキャビティと、前記キャビティの下流側に連設され、前記キャビティと吸い口端を連通すると共に前記粉末を前記キャビティから前記吸い口端に供給するための粉末供給路が軸方向に沿って形成された吸い口フィルター部と、を有し、前記吸い口フィルター部の横断面において、前記粉末供給路は、前記吸い口フィルター部の横断面中央側に位置する中央接続部と、当該中央接続部から横断面外周側に向けて互いに異なる方向に延びる複数の孔部を含む。
【0010】
喫煙物品には、シガレット、葉巻、シガリロ、電子デバイス加熱又は炭素熱源などによりたばこの喫味や香味、又はその両方を吸引する喫煙具、および非加熱型でたばこの喫味や香味、又はその両方を吸引する喫煙具が例示される。
【0011】
また、前記粉末供給路における前記孔部は、前記吸い口フィルター部の横断面外周側に位置する外周側領域の方が、横断面中央側に位置する中央側領域に比べて開口幅が相対的に大きくても良い。
【0012】
また、前記粉末供給路は、3個以上5個以下の前記孔部を含んでいても良い。
【0013】
また、前記粉末供給路は、複数の前記孔部が前記中央接続部から放射状に延びていても良い。
【0014】
また、前記吸い口フィルター部の横断面において、前記粉末供給路の前記孔部における先端と前記吸い口フィルター部の巻取紙との間に、当該吸い口フィルター部を形成するフィルター繊維が介在していても良い。
【0015】
ここで、本発明は、上述した喫煙物品のフィルターとして特定してもよい。具体的には、本発明に係る喫煙物品のフィルターは、呈味成分と香料成分とのうち少なくとも何れか一方を含む原料粉末を一塊とした粉末含有物であって、外力を加えることで粉末となる粉末含有物と、前記粉末含有物が配置されたキャビティと、前記キャビティの下流側に連設され、前記キャビティと吸い口端を連通すると共に前記粉末を前記キャビティから前記吸い口端に供給するための粉末供給路が軸方向に沿って形成された吸い口フィルター部と、を備え、前記吸い口フィルター部の横断面において、前記粉末供給路は、前記吸い口フィルター部の横断面中央側に位置する中央接続部と、当該中央接続部から横断面外周側に向けて互いに異なる方向に延びる複数の孔部を含む。
【0016】
なお、本発明における課題を解決するための手段は、可能な限り組み合わせて採用することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、喫煙者が任意のタイミングで呈味成分と香料成分とのうち少なくとも何れか一方を含む粉末を吸引することができる喫煙物品のフィルターに関し、吸引時における粉末のデリバリー量を確保しつつ非吸引時における粉こぼれを抑制することができ、且つ、フィルターの製造品質を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施形態1に係るシガレットの外観斜視図を示す図である。
図2図2は、実施形態1に係るシガレットの要部の縦断面図を示す図である。
図3図3は、実施形態1に係る吸い口フィルター部の横断面における粉末供給路の断面形状を示す図である。
図4図4は、実施例および比較例に係る粉末デリバリー量および粉こぼれ量の評価試験の結果を示す図である。
図5図5は、実施例および比較例に係る粉末供給路の形状を示す図である。
図6図6は、実施例および比較例において粉末デリバリー量の測定に使用する喫煙器を示す図である。
図7図7は、実施形態2に係るシガレットの要部の縦断面図を示す図である。
図8図8は、実施形態3に係るシガレットの要部の縦断面図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る喫煙物品の一例であるフィルター付きシガレットの実施形態について、図面を参照して詳しく説明する。本実施形態に記載されている構成要素の寸法、材質、形状、その相対配置等は、特に特定的な記載がない限りは、発明の技術的範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0020】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係るシガレット1の外観斜視図である。図2は、実施形態1に係るシガレット1の要部の縦断面図である。シガレット1は、たばこロッド2と、このたばこロッド2の一端にチップペーパー3を介して接続されたフィルター4とを備えるフィルター付きシガレットである。
【0021】
たばこロッド2は、たばこ刻21を巻紙22で巻き取って円柱状(棒形状)に成形したものである。フィルター4は、シガレット1の喫煙時に発生する主流煙を通過させた際に、主流煙に含まれる煙成分を濾過するための部材であり、たばこロッド2と実質的に同径の円柱状に成形されている。
【0022】
フィルター4は、巻取紙45およびチップペーパー3によって巻かれており、チップペーパー3を介して、たばこロッド2の後端側に接続されている。チップペーパー3は、たばこロッド2の端部とフィルター4を一体に巻き取ることで、これらを接続(連結)する。以下、たばこロッド2の長手方向(軸方向)において、フィルター4と接続される方の端部を「後端」と呼び、それとは反対側の端部を「前端」(先端)と呼ぶ。また、フィルター4の長手方向(軸方向)において、たばこロッド2と接続される方の端部を「前端」と呼び、前端と反対側の端部を「吸い口端」と呼ぶ。また、シガレット1(たばこロッド2、フィルター4)の長手方向(軸方向)に沿った断面を「縦断面」と定義し、それとは直交する方向の断面を「横断面」と定義する。また、「上流」および「下流」は、主流煙の流れを基準とした相対的な位置関係を意味する。なお、図2に示す符号CLは、シガレット1(たばこロッド2、フィルター4)の中心軸を示す。
【0023】
フィルター4は、たばこロッド2の後端側に接続された上流フィルター部41、吸い口端側に位置する吸い口フィルター部42、上流フィルター部41と吸い口フィルター部42との間に形成された空洞状のキャビティ43、キャビティ43に収容された粉末含有物44を含む構成である。粉末含有物44は、呈味成分と香料成分とのうち少なくとも何れか一方を含む原料粉末を一塊としたものであり、喫煙者によって圧壊されることで粉末となる。
【0024】
上流フィルター部41および吸い口フィルター部42は、例えば、アセテート等のフィルター繊維を円柱状に成形したものであり、巻取紙45によって、上流フィルター部41と吸い口フィルター部42が一体に巻き取られている。フィルター4に使用する巻取紙45は、一般的な製品に使用される通気性を有する巻取紙でもよく、また、通気性を有しないものでもよい。巻取紙45の材質には、一般的には植物性の繊維で作製された紙が用いられるが、ポリマー系(ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンなど)の化学繊維を用いたシート又はポリマー系のシートを用いてもよく、また、アルミ箔のような金属箔を用いてもよい。なお、フィルター4には、所謂ノンラップフィルターを用いてもよい。ノンラップフィルターとは、フィルター材と、このフィルター材を円筒状に成形する外皮層とを有し、この外皮層はフィルター材の熱成形により得ることができる。ノンラップフィルターを用いた場合には巻取紙は省略することができる。
【0025】
吸い口端側に位置する吸い口フィルター部42には、粉末供給路421が吸い口フィルター部42を軸方向に貫通するように設けられており、この粉末供給路421によってキャビティ43と吸い口端が連通されている。また、フィルター4は、チップペーパー3によって巻き取られることで、たばこロッド2と一体に連結されている。
【0026】
チップペーパー3には、一般的には植物性の繊維で作製された紙が用いられるが、ポリマー系(ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロンなど)の化学繊維を用いたシート又はポリマー系のシートを使用してもよいし、アルミ箔のような金属箔を用いてもよい。なお、フィルター4は、メンソールなどの香料を含有するものでもよい。香料の加香方法は特に限定されてないが、例えば香料を吸着させた、ひも状の物質をフィルター4に配置する、あるいはフィルター4の充填物に香料を含有させる、あるいはカプセルなどの香料を固定化した材料をフィルター4に配置する方法が知られている。
【0027】
チップペーパー3のうち、キャビティ43に対応する位置には、ベンチレーション用の空気(外気)をフィルター4内に導入して主流煙を希釈する複数の通気孔(以下、「キャビティ領域通気孔」という)31が環状に形成されている。この場合、巻取紙45については、通気度の高い適宜の巻取紙を用いることで、チップペーパー3のキャビティ領域通気孔31を通じて外部から取り込まれる空気を、キャビティ43内側へ透過させることができる。これにより、巻取紙45の強度が増大し、折れにくくなるという利点がある。但し、巻取紙45は、通気性を有しない、或いは、通気度の低いものを用いても良い。その場合、巻取紙45において、キャビティ領域通気孔31に対応する位置に通気孔を開口させると良い。なお、本実施形態においては、チップペーパー3に予めキャビティ領域通気孔31が形成されたプレ開孔チップペーパーを用いることが好ましい。これにより、例えばオンマシンレーザーによってキャビティ領域通気孔31を形成する場合に比べてキャビティ43に配置された粉末含有物44にダメージを与える虞がない。また、キャビティ領域通気孔31の開口面積(複数のキャビティ領域通気孔31を配置する場合には総開口面積)を調整することでVf値(全通気流量に占めるフィルターからの空気流入量の割合)を調節することができる。シガレットのタール値をVf値によって設計し、粉末含有物44を圧壊することで形成された粉末を最大限デリバリーさせることができる。
【0028】
キャビティ43は、フィルター4の内部に形成された空間であり、詳細には、上流フィルター部41の後端の面と吸い口フィルター部42の前端の面と巻取紙45によって囲まれた円柱状の空間である。キャビティ43は、粉末含有物44を設置できる大きさを有していればよい。粉末含有物44を複数設置する場合、キャビティ43は、複数の粉末含有物44を設置できる大きさとする必要がある。また、キャビティ43の形状は特に限定されない。
【0029】
粉末含有物44は、原料粉末を一塊とした球状であり、外力を加えることで粉末となる。外力とは、例えば、製造時や輸送時にかかる力よりも強い力や、喫煙する際の吸引力よりも強い力である。外力には、喫煙者が指で加える力(潰す力)が例示される。例えば、粉末含有物44が粉末となる破壊強度は、5N以上60N以下である。好ましくは、粉末含有物44が粉末となる破壊強度は、20N以上30N以下、より好ましくは、20N以上25N以下である。また、粉末含有物44の形状は特に限定されず、楕円体、円柱、中空円筒、円錐、角錐、トーラス体、立方体や直方体といった多面体、又はそれらの形状を組み合わせてもよい。また、粉末含有物44を構成する原料粉末は、少なくとも一部が粉末供給路421を通過可能な粒子径を有している。例えば、原料粉末の粒子径は、10μm〜300μmの範囲で設定されていてもよい。
【0030】
粉末含有物44は、原料粉末としての核剤に水を適量加え混合後に成形し、乾燥させることで製造することができる。また、粉末含有物44の原料としてバインダーを加えてもよい。また、核剤に対して、水と共に香料を加えてもよい。核剤としては、単糖・二糖・多糖類又はその誘導体が使用できる。例えば、ケトトリオース(ジヒドロキシアセトン)、アルドトリオース(グリセルアルデヒド)、ケトテトロース(エリトルロース)、 アルドテトロース(エリトロース、トレオース)、ペントース ケトペントース(リブロース、キシルロース)アルドペントース(リボース、アラビノース、キシロース、リキソース)、デオキシ糖(デオキシリボース) ケトヘキソース(プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース)、アルドヘキソース(アロース、アルトロース、グルコース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース)、デオキシ糖(フコース、フクロース、ラムノース)、セドヘプツロース、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、ツラノース、 セロビオース、ラフィノース、 メレジトース、 マルトトリオース、アカルボース、 スタキオース、グルコース、デンプン(アミロース、アミロペクチン)、セルロース、デキストリン、グルカン、フルクトース等が挙げられる。これらの単糖、二糖、多糖類又はその誘導体は、単独で用いてもよく、また混合して用いてもよい。核剤は、口腔内で実質的に溶解可能であることが好ましい。
【0031】
また、バインダーとしては、水溶性ポリマー、例えば、デキストリン、ゼラチン、アラビアガム、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース等を用いることができる。バインダーの添加量としては、核剤に対し10wt%以下であることが好ましい。
【0032】
核剤に加える香料は特に限定されず、既存の香料を使用できるが、粉末香料および油性香料が特に適している。主な粉末香料としては、カモミール、フェヌグリーク、メンソール、ハッカ、シンナモン、ハーブ等を粉末にしたものが挙げられる。また、主な油性香料としては、ラベンダー、シンナモン、カルダモン、セレリー、チョウジ、カスカリラ、ナッツメグ、サンダルウッド、ベルガモット、ゼラニウム、ハチミツエッセンス、ローズ油、バニラ、レモン、オレンジ、ハッカ、ケイ皮、キャラウエー、コニャック、ジャスミン、カモミール、メントール、カシヤ、イランイラン、セージ、スペアミント、フェンネル、ピメント、ジンジャー、アニス、コリアンダ、コーヒー等が挙げられる。これらの粉末香料および油性香料は、単独で用いてもよく、また混合して用いてもよい。粉末香料を用いる場合、その粒径は500μm以下であることが好ましい。香料は、液体もしくは口腔内で実質的に溶解可能であることが好ましい。また、香料成分の添加量は、核剤に対し10wt%以下であることが好ましい。
【0033】
呈味成分としては、クエン酸、酒石酸、グルタミン酸Na、ネオテーム、ソーマチン、ステビア、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、アスパルテーム、ルチン、ヘスぺリジン、シュウ酸、タンニン酸、カテキン、ナリンジン、キニーネ、キナ酸、リモニン、カフェィン、カプサイシン、ビタミン類、アミノ酸類、ポリフェノール類、アルギン酸、フラボノイド、レシチン、等が挙げられる。呈味成分は、液体もしくは口腔内で実質的に溶解可能であることが好ましい。呈味成分の添加量は、核剤に対し10wt%以下であることが好ましい。なお、粉末含有物44は、粉末を内包するプラスチックカプセル、打錠成形体、顆粒としてもよい。
【0034】
ここで、図3は、実施形態1に係る吸い口フィルター部42の横断面における粉末供給路421の断面形状を示す図である。図3に示すように、本実施形態における粉末供給路421の横断面は、全体で一つの風車形状を有する開口として形成されている。より具体的には、吸い口フィルター部42の横断面において、粉末供給路421は、吸い口フィルター部42の横断面中央側に位置する中央接続部4210と、この中央接続部4210から吸い口フィルター部42の横断面外周側に向けて延びる複数の孔部4211から形成されている。ここで、各孔部4211の開口面積は、中央接続部4210の開口面積に比べて相対的に大きい。
【0035】
粉末供給路421における複数の孔部4211は、それぞれ羽根形状を有しており、中央接続部4210から互いに異なる方向に放射状に延びている。また、各孔部4211における先端(中央接続部4210とは反対側に位置する方の端部)は、吸い口フィルター部42の巻取紙45とは離間した位置に配置されており、各孔部4211の先端と巻取紙45の間に、吸い口フィルター部42を形成するフィルター繊維が介在している。また、図3に示す例では、粉末供給路421は、中央接続部4210から3個の孔部4211が外周側に向かって放射状に延びている。また、粉末供給路421における各孔部4211は、基端(中央接続部4210に接続される方の端部)側から先端側に向かって徐々に開口幅が広がっている。よって、粉末供給路421における各孔部4211は、吸い口フィルター部42の横断面外周側に位置する外周側領域4211aの方が、横断面中央側に位置する中央側領域4211bに比べて開口幅が相対的に広く(大きく)なっている。
【0036】
<効果>
本実施形態に係るシガレット1においては、吸い口フィルター部42の粉末供給路421は、塊状の粉末含有物44が通過できない横断面を有している。そのため、キャビティ43に配置されている塊状の粉末含有物44が粉末供給路421を通過することがなく、塊状の粉末含有物44が粉末供給路421を通じてフィルター4の外に放出されることを抑制できる。一方、喫煙者が外力を加える等して塊状の粉末含有物44を圧壊し、粉末含有物44が粉末形態となることで、粉末含有物44の粉末が粉末供給路421を通過することができるようになる。その結果、喫煙者は、任意の好きなタイミングで粉末を容易に吸引することができ、呈味成分による味や香料成分による香り、又はその両方を得ることができる。
【0037】
更に、本実施形態における粉末供給路421によれば、吸い口フィルター部42の横断面中央側に位置する中央接続部4210を起点として外周側に向けて複数の孔部4211を互いに異なる方向に延在させている。ここで、粉末供給路421の横断面積を大きくするほど、喫煙者の吸引時における粉末のデリバリー量(供給量)を増やす観点からは有利であるが、単に粉末供給路421の横断面積を大きくしたのでは、喫煙者が吸引していないときにおける意図しない粉末のこぼれ(粉こぼれ)も起こり易くなってしまう。上述した意図しない粉こぼれとは、例えば、喫煙者がフィルター4を咥えていない状態で、フィルター4の吸い口側を下方に向けた姿勢に把持した際に、粉末供給路421を通じて粉末が外部にこぼれ落ちてしまうことなどが挙げられる。
【0038】
これに対して、本実施形態の粉末供給路421によれば、吸い口フィルター部42の横断面中央側に位置する中央接続部4210から外周側に向けて複数の孔部4211を互いに異なる方向に延在させることで、吸い口フィルター部42の横断面において開口領域を一カ所に集中させずに、外周側に分散して配置することができる。これによれば、塊状の粉末含有物44を圧壊して粉末状にした後、吸引時における粉末のデリバリー量(供給量)を十分に確保するだけの総開口面積を確保しつつ、非吸引時における意図しない粉末の粉こぼれを抑制することができる。特に、本実施形態における粉末供給路421は、中央接続部4210から複数の孔部4211を外周側に向かって放射状に延設するようにしたので、吸い口フィルター部42の横断面において開口領域をより好適に分散して配置することができ、粉末含有物44の粉砕後における意図しない粉こぼれを好適に抑制すると共に、吸引時における粉末のデリバリー量をより一層確保しやすくなる。
【0039】
ここで、喫煙者がシガレット1のフィルター4を咥えて吸引する際、キャビティ43における粉砕後の粉末含有物44の粉末は、キャビティ43の外周側に(巻取紙45)に積もっている。従って、粉末供給路421の開口領域を、吸い口フィルター部42の外周側に多く分散させた方が、吸引時における粉末のデリバリー量を増やす観点から有利である。これに対して、本実施形態の粉末供給路421によれば、中央接続部4210を相対的に小さくすると共に各孔部4211の開口面積を中央接続部4210よりも大きく形成するようにしたので、吸引時における粉末のデリバリー量を増やすことができる。更に、粉末供給路421における各孔部4211は、外周側領域4211aの方が、中央側領域4211bに比べて開口幅が相対的に広くなっているため、吸い口フィルター部42の横断面外周側における開口面積の大きさを確保しやすくなる。その結果、吸引時における粉末のデリバリー量をより一層増やすことができる。
【0040】
次に、粉末供給路421における孔部4211の数について説明する。ここで、孔部4211の数を3個以上とすることで、喫煙者がフィルター4を把持する姿勢に起因する吸引時における粉末のデリバリー量のばらつきを低減することができる。つまり、中央接続部4210から3つ以上の孔部4211を延設することにより、どのような姿勢でフィルター4を把持しても、吸引時に粉末を安定してデリバリーすることができる。また、本実施形態の粉末供給路421において、各孔部4211は、吸い口フィルター部42の周方向における一定角度(120°)毎に設けられている。言い換えると、各孔部4211が吸い口フィルター部42の周方向に等間隔で中央接続部4210から放射状に延びている。これによれば、喫煙者がフィルター4を把持する姿勢に因らず、吸引時に粉末を安定してデリバリーすることができる。
【0041】
なお、粉末供給路421における孔部4211の上限数は特に限定されないが、孔部4211を6個以上とすると、吸い口フィルター部42の大部分が開口領域となってしまい、非吸引時における粉こぼれの抑制効果が少なくなってしまう虞がある。そこで、吸引時における粉末のデリバリー量を十分に確保しつつ、非吸引時における意図しない粉こぼれを抑制する観点からは、中央接続部4210から延びる孔部4211の数は3個以上5個以下とすることが好ましい。
【0042】
また、粉末供給路421における各孔部4211の先端が吸い口フィルター部42の巻取紙45と離間しており、各孔部4211の先端と巻取紙45の間にフィルター繊維が存在している。このように、孔部4211の先端を巻取紙45と接するまでは延ばさない態様で孔部4211を形成することで、吸い口フィルター部42の縁部(最外周部)が開口とならないため、非吸引時における意図しない粉こぼれをより一層抑制することができる。
【0043】
また、本実施形態における粉末供給路421は、複数の孔部4211の基端が中央接続部4210によって互いに接続されており、一繋がりの開口となっている。そのため、吸い口フィルター部42の製造時において、単一のマンドレルを使用して吸い口フィルター部42を製造することができ、吸い口フィルター部42の横断面において粉末供給路421を除く領域に対して、フィルター繊維を均一に充填することができる。つまり、吸い口フィルター部42の製造品質を安定することできる。
【0044】
なお、本実施形態におけるフィルター4の円周長さは、16mm〜25mmの範囲とすることが好ましく、22〜25mmの範囲とすることがより好ましい。また、粉末供給路421は、短いほうが粉末を吸引しやすいが、吸い口フィルター部42の長さが過度に短いと、巻取紙45によって上流フィルター部41と一体に連結される際の精度が低下する虞がある。そのため、吸い口フィルター部42の長さは、5mm〜15mmの範囲とすることが好ましく、7〜10mmの範囲とすることがより好ましい。また、上流フィルター部41は、全長(27〜30mm)からキャビティ43の長さと粉末供給路421の長さを差し引いた長さであるが、6mm〜17mmの範囲とすることが好ましく、11〜17mmの範囲とすることがより好ましい。
【0045】
また、キャビティ43に配置する塊状の粉末含有物44の直径は、キャビティ43の直径および長さより小さければ特に限定されないが、キャビティ43の容積に対する塊状の粉末含有物44の容積の比率が大きい方が、塊状の粉末含有物44を潰した際に、粉末をより高く積もらせることができるため、吸引時にデリバリーしやすくなる。そこで、キャビティ43の長さを6mmとした場合、塊状の粉末含有物44の直径を4mm以上6mm未満とする態様が一例として挙げることができる。
【0046】
ここで、フィルター4における各部の長さの組み合わせを幾つか例示すると、フィルター4の全長を27mmとする場合、上流フィルター部41を14mm、キャビティ43を6mm、吸い口フィルター部42を7mmとしても良い。同様に、フィルター4の全長を27mmとする場合に、上流フィルター部41を11mm、キャビティ43を6mm、吸い口フィルター部42を10mmとしても良い。また、フィルター4の全長を30mmとする場合において、上流フィルター部41を17mm、キャビティ43を6mm、吸い口フィルター部42を7mmとしても良い。また、フィルター4の全長を30mmとする場合に、上流フィルター部41を14mm、キャビティ43を6mm、吸い口フィルター部42を10mmとしても良い。
【0047】
また、フィルター4の巻取紙45は、喫煙者が塊状の粉末含有物44に外力を加えて潰す際の、折れやシワが生じにくくなるような仕様を選定することが好ましい。例えば、巻取紙45の坪量は、50〜200g/mであることが好ましく、50〜110g/mの範囲で決定すると、より好ましい。また、巻取紙45の通気度は、1000〜10000〔C.U〕とすることが好ましい。また、チップペーパー3に予めキャビティ領域通気孔31が形成されたプレ開孔チップペーパーを用いる場合、巻取紙45の通気度は200〜3000〔C.U〕とすることが好ましい。
【0048】
<実施例>
次に、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。上述したシガレット1を製作し、吸引時の粉末デリバリー量と非吸引時の粉こぼれ量を測定する評価試験を行った。評価試験に用いたシガレット1のフィルター4は、上流フィルター部41の長さを14mm、キャビティ43の長さを7mm、吸い口フィルター部42の長さを6mmとした。また、粉末含有物44を破砕した後の状態を想定し、粉末含有物44の原料粉末をキャビティ43に収容した。粉末含有物44の原料粉末として、ラクトース50mg(DFE pharma社製Pharmatose100M)を用いた。
【0049】
図4に、実施例および比較例に係る粉末デリバリー量および粉こぼれ量の評価試験の結果を示す。評価試験の対象は、実施例1〜5、比較例1、2とした。図5に、実施例および比較例に係る粉末供給路の形状を示す。比較例1は、吸い口フィルター部が単一の粉末供給路を有するセンターホールフィルターである。比較例2は、吸い口フィルター部に、3本の粉末供給路が軸方向に貫通形成されている。
【0050】
粉末デリバリー量の測定には、図6に示す喫煙器を使用した。本実施例では、Borgwaldt社製一本掛け喫煙器を用い、着火しない状態で吸引実験を行い、粉末デリバリー量を測定した。吸引実験は、吸引流量を35mL/2sec、吸引回数を5回、測定本数を3本として行った。また、粉末デリバリー量は、吸引毎に粉末捕集パッド(ケンブリッジパッド)を取り外し、電子天秤にて重量を測定し、吸引前後の重量差から算出した。また、粉こぼれ量の測定には、水にラクトースを80重量%含有し、重量50mg、直径4.5mmの球状に成形した後、25℃で5分、70℃で4分、200℃で4分、段階的に乾燥させて製造した粉末含有物を使用した。粉こぼれ量の測定試験は、シガレット形態にてフィルター側を下に向け、塊状の粉末含有物44を圧壊後、5回振動をあたえ、粉こぼれ量を電子天秤にて重量を測定した。測定本数は3本として行った。
【0051】
図4の試験結果に示すように、粉末供給路として単一のセンターホールを有する比較例1に比べて、いずれの実施例においても粉こぼれ量は大きな差異は無い一方、粉末のデリバリー量は比較例1よりも実施例の方が多く確保できることが分かった。また、3つの独立した粉末供給路を有する比較例2に対しては、各実施例において粉末のデリバリー量と粉こぼれ量の何れも有意差は見られない。しかしながら、比較例2は、粉末供給路が3つ独立しているため、3個のマンドレルを使用して吸い口フィルター部を製造する必要があり、各マンドレル間にフィルター繊維を均一に充填することが難しいと言える。従って、各実施例は、比較例2に比べて、品質の安定した吸い口フィルター部を提供できるという点で優れている。
【0052】
<実施形態2>
次に、実施形態2に係るシガレット1Aについて説明する。ここでは、図1から図3に示した実施形態1のシガレット1との相違点を中心に説明する。図7は、実施形態2に係るシガレット1Aの概略構成図である。シガレット1Aのフィルター4は、チップペーパー3および巻取紙45のうち、上流フィルター部41に対応する位置に通気孔(以下、「上流フィルター部領域通気孔」という)31Aが貫通して設けられている。
【0053】
<実施形態3>
次に、実施形態3に係るシガレット1Bについて説明する。ここでは、図1から図3に示した実施形態1のシガレット1、および図7に示した実施形態2のシガレット1Aとの相違点を中心に説明する。図8は、実施形態3に係るシガレット1Bの概略構成図である。シガレット1Bのフィルター4は、チップペーパー3に、図2に示したキャビティ領域通気孔31と、図7に示した上流フィルター部領域通気孔31Aが設けられている。
【0054】
本実施形態におけるシガレット1Bのフィルター4は、希釈用空気を取り込む通気孔を、キャビティ43上と上流フィルター部41上の双方に設けたので、これらからの空気流入量のバランスを調整することで、フィルター4全体としてのVf値を変化させずに、粉末含有物44を潰して形成される粉末(例えば、香料粉体)のデリバリー量を変化させることができる。これによれば、例えばシガレット1Bのタール値を一定に保ったまま、香料粉体による味覚(呈味)強度を最適に設計することが可能となる。
【0055】
以上、本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明に係る喫煙物品のフィルターは、可能な限り各実施形態を組み合わせて実施することができる。
【符号の説明】
【0056】
1・・・シガレット
2・・・たばこロッド
3・・・チップペーパー
4・・・フィルター
41・・・上流フィルター部
42・・・吸い口フィルター部
43・・・キャビティ
44・・・粉末含有物
45・・・巻取紙
421・・・粉末供給路
4210・・・中央接続部
4211・・・孔部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8