(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
複数のスイッチング素子を有して回転電機に交流電力を供給する電力変換器と、上記複数のスイッチング素子をスイッチング制御して上記電力変換器を出力制御する制御装置とを備える電力変換装置において、
上記制御装置は、
上記回転電機の速度指令に基づいて、上記電力変換器の電圧指令を演算する電圧指令演算部と、
上記電圧指令に基づいて、予め設定された複数のスイッチングパターンから1つを抽出して第1スイッチングパターンとする第1スイッチングパターン生成部と、
上記速度指令に基づいて、制御量指令を演算する制御量指令演算部と、
上記回転電機の制御状態を示す制御量を取得し、該制御量が上記制御量指令を含む指令幅に入るように第2スイッチングパターンを生成する第2スイッチングパターン生成部と、
上記第1、第2スイッチングパターンによる各スイッチング状態から1つのスイッチング状態を選択して、上記複数のスイッチング素子へのスイッチング指令を生成する選択部とを備え、
上記選択部は、上記速度指令および上記制御量指令演算部が演算する上記制御量指令を含む上記回転電機の制御状態の指令の内、少なくとも1つの指令と、該指令に対応する制御状態情報との差分情報に基づいて、上記1つのスイッチング状態を選択して上記スイッチング指令を生成する、
電力変換装置。
複数のスイッチング素子を有して回転電機に交流電力を供給する電力変換器と、上記複数のスイッチング素子をスイッチング制御して上記電力変換器を出力制御する制御装置とを備える電力変換装置において、
上記制御装置は、
上記回転電機の速度指令に基づいて、上記電力変換器の電圧指令を演算する電圧指令演算部と、
上記電圧指令に基づいて、予め設定された複数のスイッチングパターンから1つを抽出して第1スイッチングパターンとする第1スイッチングパターン生成部と、
上記速度指令に基づいて、制御量指令を演算する制御量指令演算部と、
上記回転電機の制御状態を示す制御量を取得し、該制御量が上記制御量指令を含む指令幅に入るように第2スイッチングパターンを生成する第2スイッチングパターン生成部と、
上記第1、第2スイッチングパターンによる各スイッチング状態から1つのスイッチング状態を選択して、上記複数のスイッチング素子へのスイッチング指令を生成する選択部とを備え、
上記選択部は、上記第2スイッチングパターン生成部を含んで構成され、
上記第1スイッチングパターンによるスイッチング状態を基準として、スイッチング状態の差分が小さい順に仮スイッチング状態を生成して、該仮スイッチング状態による推定制御量を取得し、上記推定制御量が上記指令幅に入ると、当該仮スイッチング状態を上記1つのスイッチング状態として選択して、上記複数のスイッチング素子へのスイッチング指令を生成する、
電力変換装置。
複数のスイッチング素子を有して回転電機に交流電力を供給する電力変換器と、上記複数のスイッチング素子をスイッチング制御して上記電力変換器を出力制御する制御装置とを備える電力変換装置において、
上記制御装置は、
上記回転電機の速度指令に基づいて、上記電力変換器の電圧指令を演算する電圧指令演算部と、
上記電圧指令に基づいて、予め設定された複数のスイッチングパターンから1つを抽出して第1スイッチングパターンとする第1スイッチングパターン生成部と、
上記速度指令に基づいて、制御量指令を演算する制御量指令演算部と、
上記第1スイッチングパターンによるスイッチング状態を基準として、スイッチング状態の差分が小さい順に仮スイッチング状態を生成して、該仮スイッチング状態による推定制御量を取得し、上記推定制御量が上記制御量指令を含む指令幅に入ると、当該仮スイッチング状態である1つのスイッチング状態を選択して、上記複数のスイッチング素子へのスイッチング指令を生成する選択部とを備える、
電力変換装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1による電力変換装置を図に基づいて以下に説明する。
図1は、この発明の実施の形態1による電力変換装置の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、電力変換装置1は、直流電源2と回転電機3との間に接続され、直流電源2からの直流電力を交流電力に変換して回転電機3に供給して回転電機3を制御する。回転電機3は、供給された交流電力を動力に変換する。
なお、ここで使用される回転電機3は、電動機として説明するが、他の種類の回転電機を用いてもよい。また、回転電機3には回転速度Wreを検出する速度検出部4が設けられる。
【0013】
電力変換装置1は、主回路である電力変換器10と、電力変換器10を出力制御する制御装置11とを備える。制御装置11は、電流検出部12と、電圧指令演算部13と、第1スイッチングパターン生成部14と、制御量指令演算部15と、第2スイッチングパターン生成部16と、選択部17とを備える。
電流検出部12は電力変換器10の出力電流Iuvwを検出し、電圧指令演算部13は電力変換器10の電圧指令Vrefを演算する。第1スイッチングパターン生成部14は電圧指令Vrefに基づいて第1スイッチングパターンを生成する。制御量指令演算部15は、速度指令Wrefに基づいて制御量指令を演算する。第2スイッチングパターン生成部16は、制御量指令演算部15からの制御量指令に基づいて第2スイッチングパターンを生成する。そして選択部17は、第1、第2スイッチングパターンによる第1、第2スイッチング状態Suvw1、Suvw2から1つのスイッチング状態Suvwを選択して、電力変換器10へのスイッチング指令を生成する。
【0014】
このような電力変換装置1は、
図2で示すハードウェア構成により実現される。
図2に示すように、電力変換器10は、それぞれダイオードが逆並列接続された複数の半導体スイッチング素子SW(Su0、Su1、Sv0、Sv1、Sw0、Sw1)を備えて構成され、直流電源2の直流電力を三相交流電力に変換して、負荷である電動機などの回転電機3を駆動する。
制御装置11は、例えばCT(current transformer)検出器から成る電流検出部12と、プロセッサ50と、記憶装置51とを備えて構成される。
【0015】
プロセッサ50は、記憶装置51から入力されたプログラムを実行する。記憶装置51は補助記憶装置と揮発性記憶装置を備える、補助記憶装置から揮発性記憶装置を介してプログラムがプロセッサ50に入力される。また、プロセッサ50は、演算結果等のデータを記憶装置51の揮発性記憶装置に出力してもよいし、揮発性記憶装置を介して補助記憶装置に演算結果データを保存してもよい。
このようにプロセッサ50および記憶装置51の動作により、
図1で示す電圧指令演算部13、第1スイッチングパターン生成部14、制御量指令演算部15、第2スイッチングパターン生成部16および選択部17での機能を実現する。
【0016】
次に、電力変換装置1の各部の構成および動作について詳細に説明する。
電力変換器10は、選択部17で選択されたスイッチング状態Suvwに基づくスイッチング指令により、各相の半導体スイッチング素子SWがスイッチング制御され、回転電機3に交流電力を供給する。
電流検出部12は、電力変換器10と回転電機3の間の三相交流電流である電力変換器10の出力電流Iuvwを検出し、この検出電流(出力電流Iuvw)を第2スイッチングパターン生成部16に入力する。
電流検出部12には、CT検出器以外に、シャント抵抗等、いずれの電流検出器を用いてもよい。また、電流検出部12は、二相分の電流を検出し、残りの一相分を算出して取得しても良く、さらにまた、1つの検出器にて三相交流電流を復元する1シャント電流検出方式を用いてもよい。
【0017】
速度検出部4にて検出された回転速度Wreは、制御量指令演算部15、第2スイッチングパターン生成部16および選択部17に入力される。ここで速度検出部4には、エンコーダ、レゾルバ、ホールセンサ等、いずれの速度検出器を用いてもよい。この場合、回転電機3の回転速度は直接検出されて、該回転速度を制御装置11が取得しているが、制御装置11は、回転速度を推定して取得しても良い。例えば、選択されたスイッチング状態Suvwと出力電流Iuvwとから回転電機3のオブザーバおよび速度推定器等を用いて回転速度を推定し、その推定速度を用いてもよい。
また、制御装置11には、速度指令Wrefが与えられ、この速度指令Wrefは、電圧指令演算部13と制御量指令演算部15と選択部17とに入力される。
【0018】
電圧指令演算部13は、入力された速度指令Wrefに基づいて電圧指令Vrefを演算して、第1スイッチングパターン生成部14に入力する。電圧指令Vrefは、電力変換器10で出力したい交流電圧の振幅成分と周波数成分をもつ。
第1スイッチングパターン生成部14は、電圧指令Vrefの振幅成分に対応して予め設定された複数のスイッチングパターンを格納したテーブル14Tを有する。このスイッチングパターンは、出力電圧高調波を低減するためのスイッチング位相のパターン、即ち、半導体スイッチング素子SWをオン/オフ駆動する位相の組合せであり、電圧指令Vrefの振幅成分に対応して予め演算されて設定される。この場合、出力電圧高調波が最小となるスイッチング位相のパターンが設定される。そして、電圧指令Vrefの振幅成分とそれに対応するスイッチングパターンとがテーブル14Tに保持される。
【0019】
スイッチング位相をk個(θ1〜θk)有するスイッチングパターンの場合、各電圧指令の振幅成分毎にk個のスイッチング位相の組がテーブル14Tに保持される。例えば、3個のスイッチング位相を有するスイッチングパターンの場合のテーブル14Tを、
図3に示す。
ここで、A〜Eは電圧指令の振幅成分の領域を示す。例えば、振幅成分がC領域にあるとき、スイッチング位相はθ1c、θ2c、θ3cとなる。
【0020】
第1スイッチングパターン生成部14は、電圧指令演算部13から入力された電圧指令Vrefに基づいて、テーブル14Tを参照し、1つのスイッチングパターンを抽出して第1スイッチングパターンとする。
例えば、3個のスイッチング位相を有する第1スイッチングパターン(θ1、θ2、θ3)が決定されると、交流電圧の1周期2πに対して、
図4に示すスイッチングパルスのパターン14uが生成される。この場合、U相のパターン14uのみ図示しているが、2π/3ずつずれた位相で各相(U相、V相、W相)のパターンが生成される。なお、パターン14uにおいて、縦軸はU相電圧レベルを示し、1のとき上アームの半導体スイッチング素子Su0がオンし、0のとき下アームの半導体スイッチング素子Su1がオンすることを示す。
【0021】
そして、第1スイッチングパターン生成部14は、入力された電圧指令Vrefの周波数成分に基づいて、第1スイッチングパターンの各スイッチング位相を、対応する時刻に置き換えて、第1スイッチングパターンによる三相のスイッチング状態を第1スイッチング状態Suvw1として出力する。三相のスイッチング状態は、各相を0または1とした3つの数字の組み合わせで表すことができる。
【0022】
制御量指令演算部15は、入力された速度指令Wrefと回転速度Wreとに基づいて、制御量指令としてのトルク指令Trefおよび磁束指令Ψrefを演算する。この場合、回転電機3の制御状態を示す制御量としてトルクTeおよび磁束Ψeを用いる。
【0023】
第2スイッチングパターン生成部16には、検出された出力電流Iuvwと、選択部17で選択されたスイッチング状態Suvwと、回転速度Wreとが入力される。そして、第2スイッチングパターン生成部16は、回転電機3のトルクTeと磁束Ψeとを算出し、トルクTeおよび磁束Ψeが、制御量指令演算部15で演算したトルク指令Tref、磁束指令Ψrefにそれぞれ制限幅ΔTref、ΔΨrefを設定した指令幅内に収まるように、第2スイッチングパターンである第2スイッチング状態Suvw2を出力する。
【0024】
なお、第1スイッチングパターン生成部14は、スイッチング位相の組み合わせによる第1スイッチングパターンを生成し、それに基づいて第1スイッチング状態Suvw1を生成するものであったが、これに対し第2スイッチングパターン生成部16は、直接三相のスイッチング状態である第2スイッチング状態Suvw2を第2スイッチングパターンとして生成する。
【0025】
第2スイッチングパターン生成部16の動作、即ち第2スイッチングパターン(第2スイッチング状態Suvw2)の生成について、
図5、
図6に基づいて以下に説明する。
電力変換器10のスイッチング状態は、V0(000)〜V7(111)の8通りである。例えばV1(100)は、U相では上アームの半導体スイッチング素子Su0がオン、V相、W相では下アームの半導体スイッチング素子Sv0、Sw0がオン、である状態を示す。
【0026】
第2スイッチングパターン生成部16は、トルク指令Tref、磁束指令Ψrefにそれぞれ制限幅ΔTref、ΔΨrefを設定した指令幅内に、トルクTeと磁束Ψeとが収まるように第2スイッチング状態Suvw2(Vx)を出力する。この第2スイッチング状態Suvw2(Vx)は、次に出力すべきスイッチング状態をV0〜V7の中から選択することで生成される。なお、
図5に示されるトルクTe、磁束Ψeは、実際には予測トルク、予測磁束である。
図5に示す例では、まずスイッチング状態V1が選択されている。スイッチング状態V1を続けると、磁束Ψeが指令幅の上限(Ψref+ΔΨref)を超えるタイミングt1がある。そして、第2スイッチングパターン生成部16は、次に出力すべきスイッチング状態であるV2を生成して、タイミングt1で第2スイッチングパターン(第2スイッチング状態Suvw2)としてV2を出力する。
【0027】
次に出力すべきスイッチング状態(この場合V2)は、以下のように生成される。第2スイッチングパターン生成部16は、V1以外の各スイッチング状態V0、V2〜V7を、タイミングt1で出力した場合におけるタイミングt1以降のトルクTeと磁束Ψeとを、回転電機3の状態方程式を用いて算出することにより予測する。そして、予測されたトルクTe、磁束Ψe、およびV1からのスイッチング状態の変化量に基づいて、次に出力すべきスイッチング状態を選択する。この場合、タイミングt1以降で磁束Ψeが低減し、V1(100)からのスイッチング状態の変化量が1であるV2(110)が選択されている。
このように、第2スイッチングパターン生成部16は、モデル予測を用いてトルクTeと磁束Ψeとを直接制御するもので、回転電機3と電力変換器10との状態に応じてスイッチング状態を更新する周期が短くなり、より高い制御応答性が得られる。さらに、次のスイッチング周期の制御対象の推定値をモデル予測するため、スイッチング状態を選択する際の精度が向上する。
【0028】
この動作を繰り返すことで、タイミングt2でトルクTeを低減させる第2スイッチング状態V7に切り換え、タイミングt3でトルクTeを増大させる第2スイッチング状態V2に切り換える。このように、トルクTeと磁束Ψeとがそれぞれ指令幅内に収まるように第2スイッチング状態Suvw2(Vx)が生成される。
なお、指令幅を生成するための各制限幅ΔTref、ΔΨrefは、電流高調波成分とスイッチング周波数の所望値とから設定され、トルク指令Tref、磁束指令Ψrefに対する例えば5%等で設定される。あるいは、制御量指令(トルク指令Tref、磁束指令Ψref)に依存せずにそれぞれ一定値としても良い。
【0029】
また、現在の制御量(トルクTe、磁束Ψe)もしくは制御量指令(トルク指令Tref、磁束指令Ψref)が急変し、現在の制御量が指令幅から外れると、指令幅内に戻るように第2スイッチング状態Suvw2(Vx)を生成する。
図6では、トルク指令Trefが急変した場合を示す。
図6に示すように、スイッチング状態V7が選択されている間のタイミングt3においてトルク指令Trefが急変する。これによりトルクTeが指令幅から外れるため、指令幅内に戻すように第2スイッチング状態Suvw2(V2)が生成されて出力される。
【0030】
このように、回転速度Wreおよび出力電流Iuvwをフィードバックして第2スイッチング状態Suvw2が生成される。また、第2スイッチング状態Suvw2を用いた制御では、スイッチング状態を切り換えて制御量(トルクTe、磁束Ψe)を直接増減させる制御となるため、高い制御応答性が得られる。また現在の制御量(トルクTe、磁束Ψe)もしくは制御量指令(トルク指令Tref、磁束指令Ψref)が急変するような過渡状態においても高い制御応答性が得られる。
またこの場合、次に出力すべきスイッチング状態を生成して、トルクTeまたは磁束Ψeが指令幅を超えるタイミングで、生成されたスイッチング状態(第2スイッチング状態Suvw2)を出力して、トルクTeおよび磁束Ψeを指令幅内に保つようにするため、高速高精度で信頼性の高い制御となる。
【0031】
選択部17は、速度指令Wrefと回転速度Wreとに基づいて、第1スイッチングパターン生成部14で生成した第1スイッチングパターンによる第1スイッチング状態Suvw1と、第2スイッチングパターン生成部16で生成した第2スイッチングパターン(第2スイッチング状態Suvw2)とから、1つのスイッチング状態Suvwを選択して出力する。このスイッチング状態Suvwは、電力変換器10の各相の半導体スイッチング素子SWへのスイッチング指令として出力される。
【0032】
図7は、選択部17の構成を示す図である。
図7に示すように、選択部17は、減算器21と、abs部22と、速度コンパレータ23と、スイッチング状態選択部24とを備える。
速度指令Wrefと回転速度Wreとの速度誤差ΔWreが減算器21にて演算され、abs部22に入力される。abs部22では、速度誤差ΔWreの絶対値|ΔWre|が演算され、絶対値|ΔWre|は速度コンパレータ23に入力される。速度コンパレータ23は、速度誤差の絶対値|ΔWre|と、設定された基準(設定差分量)とに基づいて、0、1いずれかの出力Wを生成して、スイッチング状態選択部24に出力する。|ΔWre|が小さい領域ではW=0が出力され、|ΔWre|が大きくなるとW=1が出力される。
スイッチング状態選択部24には、第1スイッチング状態Suvw1と第2スイッチング状態Suvw2と、速度コンパレータ23の出力Wとが入力され、W=0のときは第1スイッチング状態Suvw1を、W=1のときは第2スイッチング状態Suvw2を選択し、スイッチング状態Suvwとして出力する。
【0033】
これにより、回転速度Wreが速度指令Wref付近である定常状態運転時には、第1スイッチング状態Suvw1が選択され、即ち、電力変換器10の出力電圧の高調波成分が小さく、電流高調波も小さい。これにより駆動騒音の小さい回転電機3の制御が可能となる。また、スイッチング回数が抑制されるため、電力変換装置1の損失低減化、半導体スイッチング素子SWの長寿命化も図れる。
そして、回転速度Wreが速度指令Wrefから離れた過渡状態運転時には、第2スイッチング状態Suvw2が選択され、即ち、回転速度Wreが速度指令Wrefに追従するように高い制御応答性を有する回転電機3の制御が可能となる。
このように、定常状態運転時と過渡状態運転時のそれぞれに最適なスイッチング状態を用いることができ、損失低減および高調波成分の抑制が可能で、かつ安定して高い制御応答性を得ることができる。
【0034】
以上のように、この実施の形態1では、第1スイッチングパターン生成部14が、予め設定された複数のスイッチングパターンから1つを抽出して第1スイッチングパターンを生成し、第1スイッチングパターンによる第1スイッチング状態Suvw1を生成する。また第2スイッチングパターン生成部16は、制御量(トルクTe、磁束Ψe)が、速度指令Wrefに基づく制御量指令(トルク指令Tref、磁束指令Ψref)を含む指令幅に入るように第2スイッチングパターン(第2スイッチング状態Suvw2)を生成する。そして、選択部17は、第1スイッチング状態Suvw1と第2スイッチング状態Suvw2とから、1つのスイッチング状態Suvwを選択して半導体スイッチング素子SWへのスイッチング指令として出力する。
【0035】
第1スイッチング状態Suvw1を用いた制御では最適化パルスパターン制御が可能であり、第2スイッチング状態Suvw2を用いた制御では過渡状態にも高い応答性が可能となる。そして、選択部17は、第1、第2スイッチング状態Suvw1、Suvw2から1つのスイッチング状態Suvwを選択してスイッチング指令を生成する。
定常状態運転時において第1スイッチング状態Suvw1が選択されると、スイッチング回数を抑制でき、電流高調波成分も小さいものとなる。このため、電力変換装置1の損失低減化、半導体スイッチング素子SWの長寿命化、さらに低騒音化が図れる。そして、過渡状態運転時に第2スイッチング状態Suvw2が選択されると、高い制御応答性が得られる。このため、損失低減および高調波成分の抑制が可能で、かつ安定して高い制御応答性を得ることができる。
【0036】
また、第1スイッチングパターン生成部14は、予め設定された複数のスイッチングパターンを保持するテーブル14Tを備え、この複数のスイッチングパターンは、電力変換器10の出力電圧高調波を低減するためのスイッチング位相のパターンである。即ち、最適化パルスパターン制御を行うためのスイッチングパターンを予め設定しているため、上述した効果を確実に得ることができる。
【0037】
また選択部17は、速度指令Wrefと、対応する制御状態情報である回転速度Wreとの差分情報である速度誤差ΔWreに基づいてスイッチング状態Suvwを選択する。このため、定常状態運転時と過渡状態運転時とでスイッチング状態Suvwの選択を確実に変更することができる。
また選択部17は、速度誤差ΔWreの絶対値が設定差分量より大きいときに第2スイッチング状態Suvw2を選択するため、定常状態運転時において第1スイッチング状態Suvw1が、過渡状態運転時のみに第2スイッチング状態Suvw2が、それぞれ確実に選択され、損失低減および高調波成分の抑制、かつ安定して高い制御応答性を得ることの双方の効果が確実に得られる。
【0038】
なお、上記実施の形態1では、第2スイッチングパターン生成部16は、出力電流Iuvwと、スイッチング状態Suvwと、回転速度Wreと、トルク指令Tref、磁束指令Ψrefとが入力されて第2スイッチング状態Suvw2を生成するものとしたが、回転速度Wreを用いず第2スイッチング状態Suvw2を生成しても良い。この場合、
図8に示すように、第2スイッチングパターン生成部16は、出力電流Iuvwと、スイッチング状態Suvwとに基づいて、回転電機3のトルクTeと磁束Ψeとを算出し、トルクTeおよび磁束Ψeが、トルク指令Tref、磁束指令Ψrefに基づく指令幅内に収まるように第2スイッチング状態Suvw2を生成して出力する。
この場合も、トルク指令Tref、磁束指令Ψrefの生成のために回転速度Wreがフィードバックされているため、回転速度Wreおよび出力電流Iuvwがフィードバックされて第2スイッチング状態Suvw2が生成され、上記実施の形態1と同様に、高い制御応答性が得られる。
【0039】
実施の形態2.
次に、この発明の実施の形態2による電力変換装置について説明する。
図9は、この発明の実施の形態2による電力変換装置1Aの構成を示すブロック図である。
図9に示すように、電力変換装置1Aは、主回路である電力変換器10と、電力変換器10を出力制御する制御装置11Aとを備える。制御装置11Aは、電流検出部12と、電圧指令演算部13aと、電流指令演算部18と、第1スイッチングパターン生成部14と、制御量指令演算部15と、第2スイッチングパターン生成部16と、選択部17aとを備える。
【0040】
上記実施の形態1では、電圧指令演算部13が、入力された速度指令Wrefに基づいて電圧指令Vrefを演算するものを示したが、この実施の形態2では、電圧指令演算部13aは、前段に電流指令演算部18を有し、電圧指令演算部13aおよび電流指令演算部18を、電圧指令Vrefを演算する電圧指令演算部とする。また、スイッチング状態Suvwを選択する選択部17aも上記実施の形態1と異なり、選択の基準に用いる差分情報として、速度誤差ΔWreに加えて電流誤差ΔIを用いる。
その他の構成は、上記実施の形態1と同様であり、実施の形態1と同一あるいは相当部分は、同一の符号を付している。
なお、第2スイッチングパターン生成部16は、
図8で説明したものを用いたが、
図1で説明したものでも良い。
【0041】
以下、実施の形態1との差異を中心に説明する。
電流指令演算部18には、速度指令Wrefと速度検出部4で検出された回転速度Wreとが入力される。そして、電流指令演算部18は、回転速度Wreが速度指令Wrefに追従するように電流指令Irefを生成する。
電圧指令演算部13aは、電流指令演算部18からの電流指令Irefと、電流検出部12で検出した出力電流Iuvwとが入力され、出力電流Iuvwが電流指令Irefに追従するように電圧指令Vrefを生成する。
電圧指令Vrefは、電力変換器10で出力したい交流電圧の振幅成分と周波数成分をもち、第1スイッチングパターン生成部14に入力される。
【0042】
第1スイッチングパターン生成部14は、上記実施の形態1と同様に、電圧指令Vrefの振幅成分に対応して予め設定された複数のスイッチングパターンを格納したテーブル14Tを有し、入力された電圧指令Vrefに基づいて第1スイッチングパターンを生成する。
図10は、この実施の形態による第1スイッチングパターンの生成を説明する図である。
図10は、電流指令Iref(Iref、Iref1)の更新を基本波周期Tで実施し、電圧指令Vref(Vrefa、Vrefb、Vrefc、Vrefd、Vref1)の更新を1/4周期で実施する例を示している。
図10に示すように、第1スイッチングパターン生成部14は、各電圧指令Vref(Vrefa、Vrefb、Vrefc、Vrefd)に応じて基本波周期Tの1/4周期のスイッチング位相(θ1a〜θ3a、θ1b〜θ3b、θ1c〜θ3c、θ1d〜θ3d)を決定して第1スイッチングパターンを生成する。このように、交流電圧の1周期2πに対して、例えばU相のスイッチングパルスのパターン14uが生成される。そして、上記実施の形態1と同様に第1スイッチング状態Suvw1が生成される。
【0043】
選択部17aは、速度指令Wrefと回転速度Wreと、さらに電流指令Irefと出力電流Iuvwとが入力され、第1スイッチングパターン生成部14で生成した第1スイッチングパターンによる第1スイッチング状態Suvw1と、第2スイッチングパターン生成部16で生成した第2スイッチングパターン(第2スイッチング状態Suvw2)とから、1つのスイッチング状態Suvwを選択して出力する。このスイッチング状態Suvwは、電力変換器10の各相の半導体スイッチング素子SWへのスイッチング指令として出力される。
【0044】
図11は、選択部17aの構成を示す図である。
図11に示すように、選択部17aは、減算器31、31a、31bと、座標変換を行うuvw/dq部35a、35bと、abs部32、32a、32bと、加算器36と、乗算器37と、評価値コンパレータ33と、スイッチング状態選択部34とを備える。
速度指令Wrefと回転速度Wreとの速度誤差ΔWreが減算器31にて演算され、abs部32に入力される。abs部32では、速度誤差ΔWreの絶対値|ΔWre|が演算される。
【0045】
また、電流指令Irefおよび出力電流Iuvwは、それぞれuvw/dq部35a、35bにおいて座標変換されてdq軸成分が生成される。即ち、d軸電流指令Idref、q軸電流指令Iqref、およびd軸出力電流Id、q軸出力電流Iqが生成される。d軸電流指令Idrefとd軸出力電流Idとのd軸電流誤差ΔIdが減算器31aにて演算され、abs部32aに入力される。abs部32aでは、d軸電流誤差ΔIdの絶対値|ΔId|が演算される。また、q軸電流指令Iqrefとq軸出力電流Iqとのq軸電流誤差ΔIqが減算器31bにて演算され、abs部32bに入力される。abs部32bでは、q軸電流誤差ΔIqの絶対値|ΔIq|が演算される。
そして、|ΔId|と|ΔIq|との合計である電流誤差の絶対値|ΔI|が加算器36にて算出され、乗算器37にて、速度誤差絶対値|ΔWre|と電流誤差絶対値|ΔI|が乗算された評価値Cが出力される。
【0046】
評価値コンパレータ33は、評価値Cと、設定された基準(設定差分量)とに基づいて、0、1いずれかの出力Ccを生成して、スイッチング状態選択部34に出力する。評価値Cが小さい領域ではCc=0が出力され、評価値Cが大きくなるとCc=1が出力される。
スイッチング状態選択部34には、第1スイッチング状態Suvw1と第2スイッチング状態Suvw2と、評価値コンパレータ33の出力Ccとが入力され、Cc=0のときは第1スイッチング状態Suvw1を、Cc=1のときは第2スイッチング状態Suvw2を選択し、スイッチング状態Suvwとして出力する。
【0047】
これにより、回転速度Wreが速度指令Wref付近で、かつ出力電流Iuvwが電流指令Iref付近である定常状態運転時には、第1スイッチング状態Suvw1が選択される。そして、回転速度Wre、出力電流Iuvwが、それぞれの指令(速度指令Wref、電流指令Iref)から離れた過渡状態運転時には、第2スイッチング状態Suvw2が選択される。
【0048】
この実施の形態においても、上記実施の形態1と同様に、定常状態運転時において第1スイッチング状態Suvw1が選択され、スイッチング回数を抑制でき、電流高調波成分も小さいものとなる。このため、電力変換装置1の損失低減化、半導体スイッチング素子SWの長寿命化、さらに低騒音化が図れる。そして、過渡状態運転時に第2スイッチング状態Suvw2が選択され、高い制御応答性が得られる。このため、損失低減および高調波成分の抑制が可能で、かつ安定して高い制御応答性を得ることができる。
【0049】
また、第1スイッチングパターンによる第1スイッチング状態Suvw1を生成する際に、回転速度Wreおよび出力電流Iuvwをフィードバックして電圧指令Vrefを生成し、この電圧指令Vrefに基づいて第1スイッチング状態Suvw1が生成される。このため、第1スイッチング状態Suvw1が選択される定常状態運転時にも、定常誤差および緩やかな変化への制御応答性の向上が図れる。
さらに、スイッチング状態Suvwを選択する選択部17aは、選択の基準として、速度誤差ΔWreに加えて電流誤差ΔIを用いるため、より正確に第1スイッチング状態Suvw1と第2スイッチング状態Suvw2との切換え判断を実施することができ、スイッチング状態Suvwの切換え精度が向上できる。これにより、電力変換装置1の損失低減化、半導体スイッチング素子SWの長寿命化、さらに低騒音化に優れる第1スイッチングパターンをより多くの状況で出力することが可能となる。
また、制御装置11Aが電流指令演算部18を備えているため、選択部17aが用いる電流指令Irefは容易に取得できる。
【0050】
なお、選択部17aは、選択の基準として、速度誤差ΔWreに加えて、d軸電流とq軸電流との双方の電流誤差ΔIを用いたが、電流誤差としてd軸電流、q軸電流のいずれか一方の誤差を用いても良い。また、選択部17aは、速度誤差ΔWreを必ず用いる必要は無く、電流誤差ΔIのみを選択の基準としても良く、さらに、d軸電流、q軸電流のいずれか一方の誤差のみを選択の基準としても良い。いずれの場合も、差分情報が設定差分量より大きいとき、選択部17aは、第2スイッチング状態Suvw2を選択する。
【0051】
さらに、スイッチング状態Suvwを選択する選択部は、速度誤差ΔWre、電流誤差ΔIに限らず、回転電機3の他の制御量(制御状態情報)、例えばトルクTe、磁束Ψeと指令(トルク指令Tref、磁束指令Ψref)との差分情報を、選択の基準に用いる事もできる。これらの差分情報を単独で用いても、また2以上を組み合わせて用いても良い。
【0052】
なお、
図11で示す選択部17aの構成、さらに上述した選択部の変形例は、上記実施の形態2に限らず、上記実施の形態1にも適用できる。
【0053】
また、選択部は、2つのスイッチング状態(第1、第2スイッチング状態Suvw1、Suvw2)の間の誤差と、速度誤差ΔWreとの双方からスイッチング状態Suvwを選択しても良い。この場合、2つのスイッチング状態の間の誤差が、三相のスイッチング状態のうち一相のみであれば、速度誤差ΔWreが比較的小さくても、第2スイッチングパターンの第2スイッチング状態Suvw2を出力する。二相、三相とスイッチング状態の誤差が大きくなるにつれて、スイッチング状態選択の為に設定された基準(設定差分量)を大きくする。これにより大きなスイッチングの変化の発生頻度を抑制できる。
【0054】
この場合、差分情報として速度誤差ΔWreを用いたが、回転電機3の他の制御量(制御状態情報)、例えば電流誤差ΔI、あるいはトルクTe、磁束Ψeと指令(トルク指令Tref、磁束指令Ψref)との差分情報と、2つのスイッチング状態Suvw1、Suvw2の間の誤差とを、選択の基準に用いる事もできる。また、これらの差分情報を単独で用いても、また2以上を、2つのスイッチング状態Suvw1、Suvw2の間の誤差と共に用いても良い。
【0055】
さらに上記実施の形態1、2では、第2スイッチングパターン生成部16は、制御量としてトルクTeおよび磁束Ψeを用い、制御量指令演算部15は、トルク指令Trefおよび磁束指令Ψrefを制御量指令として演算したが、制御量として出力電流(d軸出力電流Id、q軸出力電流Iq)を用い、制御量指令として、d軸電流指令Idref、q軸電流指令Iqrefを演算して用いても良い。
【0056】
実施の形態3.
次に、この発明の実施の形態3による電力変換装置について説明する。
図12は、この発明の実施の形態3による電力変換装置1Bの構成を示すブロック図である。
図12に示すように、電力変換装置1Bは、主回路である電力変換器10と、電力変換器10を出力制御する制御装置11Bとを備える。制御装置11Bは、電流検出部12と、電圧指令演算部13と、第1スイッチングパターン生成部14と、制御量指令演算部15と、選択部19とを備える。
【0057】
上記実施の形態1では、第1スイッチング状態Suvw1を生成する第1スイッチングパターン生成部14と第2スイッチング状態Suvw2を生成する第2スイッチングパターン生成部16とが独立して設けられたが、この実施の形態2では、選択部19が、第1スイッチング状態Suvw1に基づいて第2スイッチング状態Suvw2を生成する機能を有して、1つのスイッチング状態Suvwを選択する。即ち、選択部19は、制御量が制御量指令を含む指令幅に入るように第2スイッチングパターンを生成する第2スイッチング生成部の機能を併せ持つ構成となる。
その他の構成は、上記実施の形態1と同様であり、実施の形態1と同一あるいは相当部分は、同一の符号を付している。
【0058】
以下、実施の形態1との差異を中心に説明する。
選択部19には、第1スイッチングパターン生成部14で生成した第1スイッチングパターンによる第1スイッチング状態Suvw1と、制御量指令演算部15からのトルク指令Trefおよび磁束指令Ψrefとが入力され、さらに、検出された出力電流Iuvwと、選択部19で選択された現在のスイッチング状態Suvwと、回転速度Wreとが入力される。
選択部19は、トルク指令Tref、磁束指令Ψrefに基づく指令幅内に、トルクTeと磁束Ψeとが収まるようにスイッチング状態Suvwを選択する。この選択は、第1スイッチング状態Suvw1を初めとして、第1スイッチング状態Suvw1を基準にしたスイッチング状態を、第1スイッチング状態Suvw1との差分が小さいものから順次生成して、各スイッチング状態によるトルクTeおよび磁束Ψeを予測して行う。
【0059】
選択部19の動作を、
図13に示すフローチャートに基づいて以下に説明する。
まず、選択部19は、第1スイッチングパターン生成部14で生成した第1スイッチングパターンによる第1スイッチング状態Suvw1を出力した場合のトルク予測値Tpre、磁束予測値Ψpreを算出する。このように、選択部19は、スイッチング状態を出力したと仮定してトルク予測値Tpre、磁束予測値Ψpreを算出する際、選択部19が、仮スイッチング状態を仮選択すると称す。このステップでは、第1スイッチング状態Suvw1との差分が0である仮スイッチング状態が仮選択される(ステップST1)。
次に、選択部19は、算出されたトルク予測値Tpreとトルク指令Trefとのトルク誤差ΔT、および、算出された磁束予測値Ψpreと磁束指令Ψrefとの磁束誤差ΔΨが、それぞれ設定値(ΔTref、ΔΨref)内に収まるか判定し(ステップST2)、設定値内に収まる場合は、仮選択された仮スイッチング状態である第1スイッチング状態Suvw1をスイッチング状態Suvwとして選択される。
【0060】
ステップST2において、トルク誤差ΔT、磁束誤差ΔΨが、設定値(ΔTref、ΔΨref)内に収まらない場合、選択部19は、第1スイッチング状態Suvw1のスイッチング状態を1相分のみ変更した仮スイッチング状態を生成して仮選択する。三相の電力変換器10の場合、3つの仮スイッチング状態Suvw2a、Suvw2b、Suvw2cを生成し、それぞれトルク予測値Tpre、磁束予測値Ψpreを算出する(ステップST3)。
次に、選択部19は、3組のトルク予測値Tpre、磁束予測値Ψpreについて、トルク予測値Tpreとトルク指令Trefとのトルク誤差ΔT、および、磁束予測値Ψpreと磁束指令Ψrefとの磁束誤差ΔΨが、それぞれ設定値(ΔTref、ΔΨref)内に収まるか判定する(ステップST4)。
【0061】
トルク誤差ΔT、磁束誤差ΔΨが設定値内に収まる組がある場合、選択部19は、トルク誤差ΔT、磁束誤差ΔΨが最小となる組に対応する仮スイッチング状態Suvw2をスイッチング状態Suvwとして選択して出力する(ステップST5)。なお、トルク誤差ΔT、磁束誤差ΔΨが設定値内に収まる組が1組のみである場合は、その組の仮スイッチング状態Suvw2が選択される。
【0062】
ステップST4において、トルク誤差ΔT、磁束誤差ΔΨが、設定値(ΔTref、ΔΨref)内に収まらない場合、選択部19は、第1スイッチング状態Suvw1のスイッチング状態を2相分で変更した仮スイッチング状態を生成して仮選択する。この場合も、3つの仮スイッチング状態Suvw2d、Suvw2e、Suvw2fを生成し、それぞれトルク予測値Tpre、磁束予測値Ψpreを算出する(ステップST6)。
次に、選択部19は、ステップST4と同様に、3組のトルク予測値Tpre、磁束予測値Ψpreについて、トルク予測値Tpreとトルク指令Trefとのトルク誤差ΔT、および、磁束予測値Ψpreと磁束指令Ψrefとの磁束誤差ΔΨが、それぞれ設定値(ΔTref、ΔΨref)内に収まるか判定する(ステップST7)。
【0063】
そして、ステップST5と同様に、トルク誤差ΔT、磁束誤差ΔΨが設定値内に収まる組がある場合、選択部19は、トルク誤差ΔT、磁束誤差ΔΨが最小となる組に対応する仮スイッチング状態Suvw2をスイッチング状態Suvwとして選択して出力する(ステップST8)。この場合も、トルク誤差ΔT、磁束誤差ΔΨが設定値内に収まる組が1組のみである場合は、その組の仮スイッチング状態Suvw2が選択される。
【0064】
ステップST7において、トルク誤差ΔT、磁束誤差ΔΨが、設定値(ΔTref、ΔΨref)内に収まらない場合、選択部19は、第1スイッチング状態Suvw1のスイッチング状態を3相分全て変更した仮スイッチング状態Suvw2gを生成して仮選択し、トルク予測値Tpre、磁束予測値Ψpreを算出する(ステップST9)。
次に、選択部19は、トルク予測値Tpreとトルク指令Trefとのトルク誤差ΔT、および、磁束予測値Ψpreと磁束指令Ψrefとの磁束誤差ΔΨを算出し、それまで仮選択された全ての仮スイッチング状態(Suvw1、Suvw2a〜Suvw2g)におけるトルク誤差ΔT、磁束誤差ΔΨが最小となる仮スイッチング状態をスイッチング状態Suvwとして選択して出力する(ステップST10)。
【0065】
以上のように、この実施の形態では、選択部19が、第1スイッチングパターンによる第1スイッチング状態Suvw1を基準にして、できるだけスイッチング状態の差分が小さく、かつトルク誤差ΔT、磁束誤差ΔΨが設定値内に収まる、即ち、制御量が制御量指令を含む指令幅に入るようにスイッチング状態Suvwを生成して出力する。
【0066】
このため、上記実施の形態1と同様に、定常状態運転時において第1スイッチング状態Suvw1が選択され、スイッチング回数を抑制でき、電流高調波成分も小さいものとなる。このため、電力変換装置1の損失低減化、半導体スイッチング素子SWの長寿命化、さらに低騒音化が図れる。
そして、過渡状態運転時にスイッチング状態を切り換える際に、第1スイッチング状態Suvw1と差分の小さいスイッチング状態を優先的に選択される。このため、高い制御応答性が得られるだけでなく、過渡状態運転時にもスイッチング回数を抑制できる。
【0067】
このため、上記実施の形態1と同様に、定常状態運転時と過渡状態運転時のそれぞれに最適なスイッチング状態を用いる効果に加え、過渡状態運転時に切り換えたときにもスイッチング回数の抑制が可能になり、電力変換装置1の損失低減化、半導体スイッチング素子SWの長寿命化が可能になる。
【0068】
なおこの発明は、発明の範囲内において、各実施の形態を自由に組み合わせたり、各実施の形態を適宜、変形、省略することが可能である。