特許第6896139号(P6896139)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6896139
(24)【登録日】2021年6月10日
(45)【発行日】2021年6月30日
(54)【発明の名称】フッ素含有希土類鉱物粒子の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 59/00 20060101AFI20210621BHJP
   C22B 3/08 20060101ALI20210621BHJP
【FI】
   C22B59/00
   C22B3/08
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-500133(P2020-500133)
(86)(22)【出願日】2019年6月21日
(65)【公表番号】特表2021-501828(P2021-501828A)
(43)【公表日】2021年1月21日
(86)【国際出願番号】CN2019092296
(87)【国際公開番号】WO2020052311
(87)【国際公開日】20200319
【審査請求日】2020年2月7日
(31)【優先権主張番号】201811072801.3
(32)【優先日】2018年9月14日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519177448
【氏名又は名称】パオトウ リサーチ インスティチュート オブ レア アース
(73)【特許権者】
【識別番号】519178294
【氏名又は名称】ナショナル エンジニアリング リサーチ センター オブ ルイケ レア アース メタラージー アンド ファンクション マテリアルズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】崔建国
(72)【発明者】
【氏名】王哲
(72)【発明者】
【氏名】侯睿恩
(72)【発明者】
【氏名】李冬
(72)【発明者】
【氏名】徐萌
(72)【発明者】
【氏名】高▲てぃん▼
(72)【発明者】
【氏名】▲はお▼肖麗
(72)【発明者】
【氏名】李波
(72)【発明者】
【氏名】張洋
【審査官】 池ノ谷 秀行
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−090823(JP,A)
【文献】 特開平03−170625(JP,A)
【文献】 中国特許出願公開第106978532(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第107475542(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00−61/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有希土類鉱物粒子の処理方法であって、
1バッチ目のフッ素含有希土類鉱物粒子と第1硫酸溶液とを混合した後、加熱保温して固液反応させ、蒸気を排気システムで凝縮吸収させるステップであって、第1硫酸溶液の硫酸濃度は40〜85wt%であり、前記固液反応は、攪拌し続けながら反応温度120〜180℃、反応時間0.5〜2時間で行われるステップ(1)、
反応終了後、固液分離し、酸濾液と酸ケーキを得るステップ(2)、
前記酸ケーキを水で含浸して硫酸希土類水浸液と水浸スラグを得るステップ(3)、および、
前記酸濾液の硫酸濃度が40〜85wt%となるように、前記酸濾液に第2硫酸溶液を補充し、再度ステップ(1)〜(3)を行って、iバッチ目のフッ素含有希土類鉱物粒子を循環処理するステップであって、iは2以上の自然数であるステップ(4)、
を含み、
1バッチ目のフッ素含有希土類鉱物粒子およびiバッチ目のフッ素含有希土類鉱物粒子は、いずれも焼成分解処理されていない希土類鉱物粒子であり、
前記第2硫酸溶液の補充量は、前回の固液反応における硫酸の実際の消費量に従い、
1バッチ目のフッ素含有希土類鉱物粒子及びiバッチ目のフッ素含有希土類鉱物粒子は、(A)四川冕寧バストネサイト及び(B)白雲鄂博混合型希土類精鉱からなる群から選択され、前記第1硫酸溶液における硫酸と四川冕寧バストネサイトとの重量比が3.4〜3.8:1であるか、または前記第1硫酸溶液における硫酸と白雲鄂博混合希土類精鉱との重量比が4〜5:1である、方法。
【請求項2】
前記フッ素含有希土類鉱物粒子の粒子径が150メッシュ未満であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記フッ素含有希土類鉱物粒子の粒子径が200メッシュ未満であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(1)において、第1硫酸溶液の硫酸濃度が50〜85wt%であり、かつ、
ステップ(4)において、前記酸濾液の硫酸濃度が50〜85wt%となるように、第2硫酸溶液を前記酸濾液に補充することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(1)において、第1硫酸溶液の硫酸濃度が60〜75wt%であり、かつ、
ステップ(4)において、前記酸濾液の硫酸濃度が60〜75wt%となるように、第2硫酸溶液を前記酸濾液に補充することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(3)において、前記硫酸希土類水浸液において、希土類酸化物REOとして計算される希土類硫酸塩の濃度が20〜45g/Lであることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フッ素含有希土類鉱物粒子の処理方法に関し、特に、バストネサイト含有希土類鉱物粒子の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
希土類鉱物は、主として、バストネサイト、混合型希土類精鉱(バストネサイトとモナザイト)、ビーチプレイサ(モナザイト)、及び風化溶脱タイプ希土類鉱等の形で存在する。バストネサイトは、米国モンティングパス(Montting pass)鉱、中国四川冕寧希土鉱、山東微山湖鉱などに代表され、混合型希土類鉱物の典型となる代表的なものとして、中国モンゴルの包頭地域にいる白雲鄂博希土類鉱物がある。このため、バストネサイトの製錬分離技術を検討することは重要な意味を持つ。現在、バストネサイトや混合型希土類鉱物のうちバストネサイトの製錬技術が注目されている。
【0003】
一方、希土類資源の抽出には、空気酸化焼成分解−塩酸溶解技術を用いることができる。バストネサイト鉱物は酸化焼成によりフッ化希土類と酸化希土類に分解され、焼成用鉱を優先的に塩酸で溶解するとき、塩酸濃度と添加過程を制御して三価希土類を抽出し、かつ、四価セリウムと予備分離することを実現できる。フッ化セリウム、セリア等の成分残渣は、低級フェロシリコン合金の製造に使用してもよいし、4価セリウムをチオ尿素還元剤の作用下に濃塩酸で抽出してもよい。このプロセスは、四川冕寧のバストネサイトの処理に広く利用されており、簡便かつ低コストで有価希土を回収することができる。しかし、前述した方法は、フッ素資源の有効利用が図れず、希土類資源の抽出が不完全となるという問題がある。
【0004】
一方、希土類資源の抽出には、空気酸化焼成分解−硫酸溶解技術を用いることができる。CN1683568Aには、バストネサイトおよびセリウムを分離する方法が開示され、当該方法は、まず、バストネサイト精鉱を300〜1000℃で酸化焼成してバストネサイト焙砂を得、次いで、バストネサイト焙砂の希土類を硫酸で含浸させ、さらに配位沈殿剤による分離、還元工程を経て、3価の希土類元素と4価の希土類元素、及びセリウムとトリウムの4価の元素の分離を行う方法である。このため、バストネサイト精鉱を高温で酸化焼成する必要があり、工程が煩雑であるという問題がある。
【0005】
また、混合型希土類鉱物の中にも多量のバステナサイトが含まれており、このうち、混合型希土類鉱物の90%は濃硫酸高温焼成分解プロセスを採用している。混合型希土類鉱物と濃硫酸とを500〜1000℃の高温で焼成すると、希土類鉱物と濃硫酸との接触反応の過程で、固液混合相から固相への転化が早く、反応効率が極めて高いため、鉱物原料の粒子径に対する要求が高く、鉱物粒子径が200メッシュを超えると、表層反応終了後、反応速度が急速に低下または停止する。また、反応過程で鉱物中のフッ素、ケイ素元素及び硫酸分解後の硫黄酸化物が排ガス系に持ち込まれ、フッ素資源のリサイクルが困難になった。
【0006】
CN106978532Aには、濃硫酸でフッ素含有希土類鉱物から希土類、フッ素およびトリウムを抽出する方法が開示され、当該方法は、フッ素含有希土類鉱物と濃硫酸とを混合することを含み、1種類のフッ素含有希土類鉱物または混合した希土類精鉱は、質量分率50〜70%で希土類酸化物を含有し、濃硫酸におけるHSOの質量分率>90%、フッ素含有希土類鉱物と濃硫酸との重量比は1:0.6〜1.0であり、混合物を120〜180℃の条件で120〜300min燃焼反応を行い、燃焼後の反応生成物を水に含浸し、水浸液をpH 3.5〜4.5に中和し、硫酸希土類溶液および鉄−ツリウム富化物を形成する。前述した構成は、非常に低い酸鉱比(0.6〜1.0:1の酸鉱比)および非常に低い反応温度(120〜180℃の温度)で固液相から固固相への転化が達成され、反応時間が長くなり、バストネサイト物の優先分解が実現された。しかし、上記の構成はまだ次の問題がある。1つ目は、反応プロセス中の固固相反応の終点制御が難しく、未分解の鉱物を回収することで希土類鉱物の分解速度を確保する必要があり、2つ目は、制御が不適切である場合、焼成鉱石の残留酸の酸性度が大きいまま反応が終了し、水含浸による不純物除去工程には大量の中和剤が必要、かつ硫酸の無駄を引き起こす。
【0007】
CN102534269Aには、フッ素含有希土類原料と硫酸とを混練し、混練中に形成されたフッ化水素ガスを利用して氷晶石又はフッ化水素を製造するステップaと、混練したものを水に含浸させて硫酸希土類溶液を得るステップbとを含むフッ素含有希土類原料から各希土類を総合的に回収利用する方法が開示されている。上記方法において、ステップaにおける硫酸は、98%よりも大きい濃度を有する硫酸であり、フッ素含有希土類原料中の希土類酸化物と硫酸との重量比が1:1.5〜2である。前記ステップbにおいて、含浸工程における水の添加量は、含浸した後の溶液中の希土類濃度が90〜110 g/Lとなるように制御することが好ましい。フッ素含有希土類原料及び硫酸は、混練中に激しい反応と発熱により物料が半乾剤状になっている。前述した方法において、(1)硫酸濃度が高すぎて、濃硫酸とバストネサイトが混練により激しく反応し、反応速率が大きく変化し、反応の制御が困難であり、(2)フッ素含有希土類原料と硫酸は、混練して半乾状になり、硫酸の回収利用が容易でなく、および、(3)焼成またはほかの反応などにより既に活性化したバストネサイトのみを処理できるものであり、未活性のバストネサイトや混合型希土類精鉱を処理できないという問題があった。
【0008】
このような従来技術の欠点に鑑み、比較的低濃度の硫酸溶液を用いて、比較的低温で液固相混合反応によりフッ素含有希土類鉱物粒子を分解反応させるフッ素含有希土類鉱物粒子の処理方法を開発し、フッ素含有希土類鉱物粒子の急速な分解を実現し、反応制御を容易にし、同時に残酸資源のリサイクルを実現することが必要となる。
【発明の概要】
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、絶対的に過剰な低濃度の硫酸溶液を用いて、比較的低温で液固相混合反応によりフッ素含有希土類鉱物粒子を分解反応させることにより、フッ素含有希土類鉱物粒子の急速な分解を実現し、反応制御が容易で、かつ残酸資源のリサイクルを実現できるフッ素含有希土類鉱物粒子の処理方法を提供することを目的とする。
【0010】
本発明は、上記目的を達成するために以下の構成を採った。
本発明は、
(1)第1フッ素含有希土類鉱物粒子と第1硫酸溶液とを、硫酸と第1フッ素含有希土類鉱物粒子との重量比が2〜10:1となるように混合した後、加熱保温して固液反応させ、蒸気を排気システムで凝縮吸収させるステップであって、第1硫酸溶液の硫酸濃度は40〜85wt%であるステップ、
(2)反応終了後、固液分離し、酸濾液と酸ケーキを得るステップ、
(3)前記酸ケーキを水で含浸して硫酸希土類水浸液と水浸スラグを得るステップ、および、
(4)前記酸濾液の硫酸濃度が40〜85wt%となるように、前記酸濾液に第2硫酸溶液を補充し、再度ステップ(1)〜(3)を行って、i番目のフッ素含有希土類鉱物粒子を循環処理するステップであって、iは2以上の自然数であるステップ、
を含む、フッ素含有希土類鉱物粒子の処理方法であって、
ここで、第1フッ素含有希土類鉱物粒子および第iフッ素含有希土類鉱物粒子は、いずれも焼成分解処理されていない希土類鉱物粒子である方法。
【0011】
本願発明によれば、ステップ(1)において、前記固液反応は攪拌し続きながら、反応温度100〜180℃、反応時間0.5〜5時間で行われることが好ましい。
【0012】
本願発明によれば、ステップ(1)において、前記固液反応は攪拌し続きながら、反応温度120〜180℃、反応時間0.5〜2時間で行われることが好ましい。
【0013】
本願発明によれば、ステップ(1)において、硫酸と第1フッ素含有希土類鉱物粒子との重量比は3〜8:1であることが好ましい。
【0014】
本願発明によれば、前記のフッ素含有希土類鉱物粒子は、(A)バストネサイト、(B)バストネサイトとモナザイトとの混合型希土類精鉱から選択される1種または2種であることが好ましい。
【0015】
本願発明によれば、前記フッ素含有希土類鉱物粒子の粒子径が150メッシュ未満であることは好ましい。
【0016】
本願発明によれば、前記フッ素含有希土類鉱物粒子の粒子径が200メッシュ未満であることは好ましい。
【0017】
本願発明によれば、ステップ(1)において、第1硫酸溶液の硫酸濃度が50〜85wt%であり、かつ、ステップ(4)において、前記酸濾液の硫酸濃度が50〜85wt%となるように、第2硫酸溶液を前記酸濾液に補充することが好ましい。
【0018】
本願発明によれば、ステップ(1)において、第1硫酸溶液の硫酸濃度が60〜75wt%であり、かつ、ステップ(4)において、前記酸濾液の硫酸濃度が60〜75wt%となるように、第2硫酸溶液を前記酸濾液に補充することが好ましい。
【0019】
本願発明によれば、ステップ(3)において、前記硫酸希土類水浸液において、希土類酸化物REOとして計算される希土類硫酸塩の濃度が20〜45g/Lであることが好ましい。
【0020】
本発明は、絶対的に過剰な低濃度の硫酸溶液を用い、比較的低温での液固相混合反応によりフッ素含有希土類鉱物粒子を分解し、フッ素含有希土類鉱物粒子の急速な分解を実現し、反応の制御を容易にし、同時に残酸資源のリサイクルを実現できるものである。本発明は、未活性化のバストネサイトや混合型希土類精鉱を、固液反応により直接循環分解して、希土類抽出コストを著しく低減するものである。本発明の好ましい態様によれば、硫酸とフッ素含有希土類鉱物粒子との重量比が3〜5:1であり、絶対的に過剰な比較的低濃度の硫酸溶液を用いて、濃硫酸とバストネサイトとの反応速度の変化が大きく、制御が難しいという技術的課題を解決するものである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、具体的な実施例を照らして本願発明をさらに説明するが、本願発明は、これらの実施例に限られたものではない。
【0022】
本願発明において、「から選択されたもの」や「から選ばれたもの」とは、選択された1種類の成分または2種類(またはそれ以上の種類)の成分の組み合わせを意味する。
【0023】
本願発明のフッ素含有希土類鉱物粒子の処理方法は、第1フッ素含有希土類鉱物粒子と第1硫酸溶液とを固液反応させるステップ(1)、固液分離し、酸濾液と酸ケーキを得るステップ(2)、酸ケーキを処理するステップ(3)、および、前記酸濾液に第2硫酸溶液を補充した後、再度ステップ(1)〜(3)を行って、i番目のフッ素含有希土類鉱物粒子を循環処理するステップであって、iは2以上の自然数であるステップ(4)を含む。
【0024】
本願発明のステップ(1)において、第1フッ素含有希土類鉱物粒子と第iフッ素含有希土類鉱物粒子は、いずれも、(A)バストネサイト、(B)バストネサイトとモナザイトとの混合型希土類精鉱から選択される1種または2種である。第1フッ素含有希土類鉱物粒子と第iフッ素含有希土類鉱物粒子は、いずれも、焼成分解処理されていない希土類鉱物粒子である。本願発明の方法は、焼成分解処理を受けていないフッ素含有希土類鉱物粒子に適しているため、希土類抽出のコストを大幅に削減することができる。
【0025】
本願発明のステップ(1)において、混合原料は第1フッ素含有希土類鉱物粒子と第1硫酸溶液である。第1硫酸溶液の硫酸濃度は40〜85wt%であり、好ましいは、第1硫酸溶液の硫酸濃度が50〜85wt%であり、より好ましいは、第1硫酸溶液の硫酸濃度が60〜75wt%である。混合比率は、第1硫酸溶液の硫酸(つまり、溶質)と第1フッ素含有希土類鉱物粒子との重量比は2〜10:1であり、好ましいは、第1硫酸溶液の硫酸と第1フッ素含有希土類鉱物粒子との重量比が3〜8:1であり、より好ましいは、第1硫酸溶液の硫酸と第1フッ素含有希土類鉱物粒子との重量比が3〜5:1である。本願発明の1つの実施形態によれば、硫酸と四川冕寧バストネサイトとの重量比が3.4〜3.8:1である。本願発明のもう1つの実施形態によれば、硫酸と白雲鄂博混合希土類精鉱との重量比が4〜5:1である。
【0026】
本願発明のステップ(1)において、固液反応は、攪拌し続きながら行われ、通常の機械的撹拌を選択することができる。固液反応の温度は100〜180℃であり、好ましいは、固液反応の温度が120〜180℃であり、より好ましいは、固液反応の温度が130〜180℃である。固液反応の時間は0.5〜5時間であり、好ましいは、固液反応の時間が0.5〜3時間であり、より好ましいは、固液反応の時間が0.5〜2時間である。固液反応において、蒸気が発生し、蒸気には大量のフッ化水素ガスが含まれ、フッ化水素ガスは排気ガスシステムに凝縮吸収されてフッ化水素製品が得られる。本願発明の1つの実施形態によれば、固液反応の温度は140〜150℃であり、反応時間は1〜1.5時間である。本願発明のもう一つの実施形態によれば、1バッチ目の白雲鄂博混合希土類精鉱の固液反応の温度は170〜180℃であり、反応時間は0.5〜1時間であり、2バッチ目の白雲鄂博混合希土類精鉱の固液反応の温度は150〜160℃であり、反応時間は1〜1.5時間であり、3バッチ目の白雲鄂博混合希土類精鉱の固液反応の温度は130〜135℃であり、反応時間は1.5〜2時間であり、その後、15回の循環処理を行い、毎回あたりの固液反応の温度は130〜135℃で、反応時間は1.5〜2時間です。
【0027】
本願発明のステップ(2)において、固液反応終了後、固液分離し、酸濾液と酸ケーキを得る。酸ケーキを処理して希土類製品を得る。固液反応では、絶対的に過剰な比較的低濃度の硫酸溶液を用い、硫酸溶液を大過剰にし、硫酸溶液がフッ素含有希土類鉱物粒子を完全に浸漬し、反応終了後に硫酸溶液を多く残留させ、残りの硫酸溶液(酸濾液)をリサイクルして利用することができる。本願発明の1つの実施形態によれば、1バッチ目の四川冕寧バストネサイトの処理において、反応終了後、固液分離し、1バッチ目の酸濾液と1バッチ目の酸ケーキを得る。本願発明のもう1つの実施形態によれば、1バッチ目の白雲鄂博混合希土類精鉱の処理において、反応終了後、固液分離し、1バッチ目の酸濾液と1バッチ目の酸ケーキを得る。
【0028】
本願発明のステップ(3)において、酸ケーキを水で含浸し、硫酸希土類水浸液と水浸スラグを得る。フッ素含有希土類鉱物粒子がバストネサイトである場合、水浸スラグ中の希土類酸化物REOとして計算されるバストネサイトの分解率が95%以上である。フッ素含有希土類鉱物粒子がバストネサイトとモナザイトとの混合型希土類精鉱である場合、水浸スラグ中のF含有量として計算されるバストネサイト分解率が95%以上である。本発明の1つの実施形態によれば、フッ素含有希土類鉱物粒子は、四川冕寧バストネサイトであり、水浸スラグ中の希土類酸化物REOとして計算される、複数の循環処理におけるバストネサイト分解率が96%以上である。本発明の別の実施形態によれば、フッ素含有希土類鉱物粒子は白雲鄂博混合希土類精鉱であり、水浸スラグ中のF含有量として計算される複数の循環処理におけるバストネサイトの分解率が96%以上である。
【0029】
本発明のステップ(3)において、酸ケーキを水で含浸するとき、水の使用量は第1フッ素含有希土類鉱物粒子重量の10〜50倍であり、好ましいは水の使用量が第1フッ素含有希土類鉱物粒子重量の10〜35倍であり、より好ましくは、水の使用量が第1フッ素含有希土類鉱物粒子重量の15〜25倍である。本発明の1つの実施形態によれば、固液反応は、四川冕寧バストネサイトを循環分解し、1バッチ目の酸ケーキを水1500〜2000mlで含浸し、水の使用量が四川冕寧バストネサイト重量の15〜20倍である。本発明のもう1つの実施形態によれば、固液反応は白雲鄂博混合希土類精鉱を循環分解し、1バッチ目の酸ケーキを水1500〜2000mlで含浸し、水の使用量が第1の白雲鄂博混合希土類精鉱重量の15〜20倍である。
【0030】
硫酸希土類水浸液において、希土類酸化物REOとして計算される希土類硫酸塩の濃度は20〜45g/Lであり、好ましいは25〜40g/Lであり、より好ましいは30〜35g/Lである。本発明の1つの実施形態によれば、固液反応は、四川冕寧バストネサイトを循環分解し、1バッチ目の酸ケーキを水1500〜2000mlで含浸し、硫酸希土類水浸液において、希土類酸化物REOとして計算される希土類硫酸塩の濃度が25.0〜26.7g/Lであり、2バッチ目の酸ケーキを水1500〜2000mlで含浸し、硫酸希土類水浸液において、希土類酸化物REOとして計算される希土類硫酸塩の濃度が28.0〜30.2g/Lであり、3バッチ目の酸ケーキを水1500〜2000mlで含浸し、硫酸希土類水浸液において、希土類酸化物REOとして計算される希土類硫酸塩の濃度は32〜34.7g/Lであり、4バッチ目の酸ケーキを水1500〜2000mlで含浸し、硫酸希土類水浸液において、希土類酸化物REOとして計算される希土類硫酸塩の濃度が32〜33.6g/Lであり、引き続き4〜10回循環処理し、硫酸希土類水浸液において、希土類酸化物REOとして計算される希土類硫酸塩の濃度が32.5〜33g/Lである。本発明のもう1つの実施形態によれば、固液反応は白雲鄂博混合希土類精鉱を繰り返処理し、1バッチ目の酸ケーキを水1500〜2000mlで含浸し、硫酸希土類水浸液において、希土類酸化物REOとして計算される希土類硫酸塩の濃度が22〜23.3g/Lであり、2バッチ目の酸ケーキを水1500〜2000mlで含浸し、硫酸希土類水浸液において、希土類酸化物REOとして計算される希土類硫酸塩の濃度が28.0〜30.7g/Lであり、3バッチ目の酸ケーキを水1500〜2000mlで含浸し、硫酸希土類水浸液において、希土類酸化物REOとして計算される希土類硫酸塩の濃度が32〜34.5g/Lであり、引き続き15〜18回循環処理し、硫酸希土類水浸液において、希土類酸化物REOとして計算される希土類硫酸塩の濃度が32.5〜33g/Lである。
【0031】
本発明のステップ(4)において、第2硫酸溶液を前記の酸濾液に補充した後、再度ステップ(1)〜(3)を行って、第iのフッ素含有希土類鉱物粒子を循環処理する。iは2以上の自然数であり、例えば2、3、4、5、6、7、8……である。各回の固液反応前の硫酸溶液の初期質量分率は40〜85wt%であり、好ましくは、各回の固液反応前の硫酸溶液の初期質量分率が50〜85wt%であり、より好ましくは、各回の固液反応前の硫酸溶液の初期質量分率が60〜75wt%である。第2硫酸溶液を補充するとき、第2硫酸溶液の補充量は、前回の固液反応における硫酸の実際な消費量に従い補充される。第2硫酸溶液は、硫酸濃度≧90wt%以上であり、好ましくは、第2硫酸溶液の硫酸濃度≧95wt%、より好ましくは第2硫酸溶液の硫酸濃度≧98wt%である。本発明の1つの実施形態によれば、2バッチ目のバストネサイト100gを循環処理することを基準として計算すると、1バッチ目の酸濾液に98wt%の濃硫酸を60〜72g補充する。3バッチ目のバストネサイト100gを循環処理することを基準として計算すると、2バッチ目の酸濾液に98wt%の濃硫酸を60〜68g補充する。4バッチ目のバストネサイト100gを循環処理することを基準として計算すると、3バッチ目の酸濾液に98wt%の濃硫酸を65〜72g補充する。その後の4〜8バッチの循環処理において、iバッチ目のバストネサイト100gを循環処理することを基準として計算すると、前回の酸濾液に98wt%濃硫酸を53〜55g補充する。
【0032】
本発明のステップ(4)において、毎回の循環処理において、固液反応の温度は100〜180℃であり、より好ましくは120〜180℃であり、より好ましくは130〜180℃である。毎回の循環処理において、固液反応の時間は0.5〜5時間であり、好ましくは0.5〜3時間であり、より好ましくは0.5〜2時間である。毎回の循環処理において、循環処理における固液反応にあたり蒸気が発生し、この蒸気中にフッ化水素ガスが多量に含まれ、このフッ化水素ガスを排気システムで凝縮吸収してフッ化水素製品を得る。毎回の循環処理において、固液反応終了後、固液分離し、酸濾液と酸ケーキを得る。酸ケーキを処理して希土類製品を得る。
【0033】
本発明のフッ素含有希土類鉱物粒子の処理方法は、さらにフッ素含有希土類鉱物粒子の破砕を含む。
【0034】
フッ素含有希土類鉱物粒子の破砕工程において、フッ素含有希土類鉱物粒子を粒子径150メッシュ未満に破砕し、好ましくは、フッ素含有希土類鉱物粒子を粒子径200メッシュ未満に破砕する。これにより、フッ素含有希土類鉱物粒子の分解を促進することができる。フッ素含有希土類鉱物粒子の粒子径が150メッシュ未満である場合、破砕処理を行わずにそのまま破砕工程を省略することもできる。本発明の1つの実施形態によれば、バストネサイトを粒子径150メッシュ未満に破砕し、バストネサイト粒子を得る。本発明のもう1つの実施形態によれば、バストネサイトとモナザイトとの混合型希土類精鉱の粒子径は、200メッシュ未満である。
【0035】
実施例1
四川冕寧バストネサイトの破砕:四川冕寧バストネサイト(REO含有量:68.2wt%)を粒子径150メッシュ未満に破砕し、バストネサイト粒子を得る。
(1)1バッチ目の四川冕寧バストネサイトの処理
(焼成分解処理されていない)破砕した四川冕寧バストネサイト100gと70wt%硫酸溶液485g(硫酸とバストネサイトとの重量比:3.4:1)を混合し、攪拌し続きながら加熱し、温度を140℃に維持して1時間反応させ、排ガスシステムで蒸気を凝縮吸収させてフッ化水素製品を得た。反応終了後、固液分離し、1バッチ目の酸濾液と1バッチ目の酸ケーキを得た。1バッチ目の酸ケーキを水2000mlで含浸し、水含浸液における希土類硫酸塩は、REOとして計算される濃度が26.7g/Lであり、硫酸希土類水浸液と水浸スラグを得た。水浸スラグにおけるREOとして計算されたバストネサイトの分解率は98.2%であった。
(2)2バッチ目のバストネサイトの処理
攪拌し続きながら1バッチ目の酸濾液に硫酸濃度が70wt%になるように98wt%濃硫酸を72g補充した。2バッチ目の四川冕寧バストネサイト(REO含有量:68.2wt%)100gを循環処理した。酸量、硫酸開始濃度、反応温度、反応時間をそれぞれ1バッチ目の四川冕寧バストネサイトの処理条件と一致させた。反応終了後、固液分離し、2バッチ目の酸濾液と2バッチ目の酸ケーキを得た。2バッチ目の酸ケーキを水2000mlで含浸し、水含浸液における希土類硫酸塩のREOとして計算される濃度は30.2g/Lであり、硫酸希土類水浸液と水浸スラグを得た。水浸スラグにおけるREOとして計算されたバストネサイトの分解率は96.7%であった。
(3)3バッチ目のバストネサイトの処理
攪拌し続きながら2バッチ目の酸濾液に硫酸濃度が70wt%になるように98wt%濃硫酸68gを補充した。3バッチ目の四川冕寧バストネサイト(REO含有量:68.2wt%)を循環処理した。酸量、硫酸開始濃度、反応温度、反応時間をそれぞれ1バッチ目の四川冕寧バストネサイトの処理条件と一致させた。反応終了後、固液分離し、3バッチ目の酸濾液と3バッチ目の酸ケーキを得た。3バッチ目の酸ケーキを水2000mlで含浸し、水含浸液における希土類硫酸塩のREOとして計算される濃度は34.7g/Lであり、硫酸希土類水浸液と水浸スラグを得た。水浸スラグにおけるREOとして計算されたバストネサイトの分解率は96.3%であった。
(4)4バッチ目のバストネサイトの処理
攪拌し続きながら3バッチ目の酸濾液に硫酸濃度が70wt%になるように98wt%濃硫酸72gを補充した。4バッチ目の四川冕寧バストネサイト(REO含有量:68.2wt%)を循環処理した。酸量、硫酸開始濃度、反応温度、反応時間をそれぞれ1バッチ目の四川冕寧バストネサイトの処理条件と一致させた。反応終了後、固液分離し、4バッチ目の酸濾液と4バッチ目の酸ケーキを得た。4バッチ目の酸ケーキを水2000mlで含浸し、水含浸液における希土類硫酸塩のREOとして計算される濃度は33.6g/Lであり、硫酸希土類水浸液と水浸スラグを得た。水浸スラグにおけるREOとして計算されたバストネサイトの分解率は96.5%であった。
(5)iバッチ目の循環処理
さらに4回の循環処理を行い、各回の循環処理は、いずれも以下の処理条件で実施した。98wt%濃硫酸の補充量は53〜55gであり、硫酸開始濃度は70wt%であり、反応温度は140℃であり、反応時間は1時間であった。水含浸液における希土類硫酸塩は、REOとして計算される濃度が32.5〜33g/Lであった。
【0036】
実施例2
白雲鄂博混合希土類精鉱:白雲鄂博混合希土類精鉱はREO含有量が61.9wt%であり、粒子径が200メッシュ未満でる。白雲鄂博混合希土類精鉱はバストネサイトとモナザイトとの混合型希土類精鉱であった。
(1)1バッチ目の白雲鄂博混合希土類精鉱の処理
(焼成分解処理されていない)白雲鄂博混合希土類精鉱100gと85wt%硫酸溶液590gとを混合し(硫酸と白雲鄂博混合希土類精鉱との重量比:5:1)、攪拌し続きながら加熱し、温度を180℃に維持して0.5時間反応させ、排ガスシステムで蒸気を凝縮吸収させてフッ化水素製品を得た。反応終了後、固液分離し、1バッチ目の酸濾液と1バッチ目の酸ケーキを得た。1バッチ目の酸ケーキを水2000mlで含浸し、水含浸液における希土類硫酸塩は、REOとして計算される濃度が23.3g/Lであり、硫酸希土類水浸液と水浸スラグを得た。水浸スラグにおけるF含有量として計算されたバストネサイトの分解率は97.5%であった。
(2)2バッチ目の白雲鄂博混合希土類精鉱の処理
攪拌し続きながら1バッチ目の酸濾液に2バッチ目の白雲鄂博混合希土類精鉱(REO含有量61.9wt%)100gを循環処理した。硫酸初期濃度は73wt%であり、反応温度は150℃、反応時間は1時間でした。反応終了後、固液分離し、2バッチ目の酸濾液と2バッチ目の酸ケーキを得た。2バッチ目の酸ケーキを、2000 mlの水で含浸し、水含浸液の希土類硫酸塩は、REOとして計算された濃度が30.7g/Lであり、硫酸希土類水浸液と水浸スラグを得た。水浸スラグにおけるF含有量で計算されたバストネサイトの分解率は、96.2%であった。
(3)3バッチ目の白雲鄂博混合希土類精鉱の処理
攪拌続きながら2バッチ目の酸濾液に3バッチ目の白雲鄂博混合希土類精鉱(REO含有量:61.9wt%)100gを循環処理した。硫酸開始濃度は64wt%であり、反応温度は130℃であり、反応時間は2時間であった。反応終了後、固液分離し、3バッチ目の酸濾液と3バッチ目の酸ケーキを得た。3バッチ目の酸ケーキを、2000 mlの水で含浸し、水含浸液の希土類硫酸塩は、REOとして計算されるREO濃度が34.5g/Lであり、硫酸希土類水浸液と水浸スラグを得た。水浸スラグにおけるF含有量で計算されたバストネサイトの分解率は、97.7%であった。
(4)iバッチ目の循環処理
さらに15回の循環処理を行い、各回の循環処理は、いずれも以下の処理条件で実施した。98wt%濃硫酸の補充量は53〜55gであり、硫酸開始濃度は62wt%であり、反応温度は130℃であり、反応時間は2時間であり、硫酸と白雲鄂博混合希土類精鉱との重量比は2.5:1であった。水含浸液における希土類硫酸塩は、REOとして計算される濃度が32.5〜33g/Lであった。水浸スラグにおけるF含有量として計算されたバストネサイトの分解率は96〜98%であり、白雲鄂博混合希土類精鉱におけるREOの分解率は58〜60%であった。
【0037】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者が思いつく任意の変形、改良、置換等がいずれも本発明の範囲に含まれるものである。